ぴくの〜ほかんこ

物語

【ぴくし〜のーと】 【ほかんこいちらん】 【みんなの感想】

終了[1212] サンドリヨン〜闇の女王と黒い羽〜

ミカゲ #1☆2009.02/06(金)18:44
ここはとある森の奥。
人間などは滅多に足を踏み入れない場所で、辺りにはたくさんのポケモンが住んでいた。
ふと、目の前にいたのは1匹のアゲハチョウのようなポケモン。かのじょの名はアゲハントの「サード」。
色違いなのか、目が赤くて羽根は真っ黒だった。

「フン。所詮、人間など…」

サードは人間が嫌いだ。ポケモンの住処を荒らしたり、せっかく捕まえたポケモンをレベルや能力だけで判断して、弱かったら即捨てる。そんな自分勝手な人間がサードは大嫌いだった。

ガサッ

「!何者だ」

突然、遠くの茂みが揺れる。中からは1人の老人が顔を出した。

「な、何故人間がここにいる…!」

老人はゆっくりと口を動かして答える。

「安心せい。わしはお前を襲ったりはせんよ。じゃが…」

カッ・・!

「なっ!?」

突然、周りが光りだす。あまりのまぶしさにサードは目を瞑った。
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ミカゲ #2☆2009.02/06(金)20:57
「今のままではお前は何も変わりはせん。じゃが、お前が誰か1人、人間を信じることができたら元に戻してやろう・・」

そう言うと老人は静かに去って言った・・。

「う・・あ・・ん?」

サードは自分の手を見てみた。が、目に見えているの細くて長い指に、白い手だ。

「…?」

今度は池に自分の姿を写す。そこでサードは目を疑った。

「な…!?これは一体…」

何と、池に写っていたのは腰まで伸ばした黒い髪、やや釣り上がった目にはルビーのような赤い瞳、そして黒いドレスのような
ものに身を包んだ女性だった。

「私は…人間になってしまったのか・・?」

サードは言葉を失った。するとそこへ…

サードよ…

「!?」

何処からか、あの老人の声が聞こえてきた。

サードよ…お前はもう、サードではない。これからはお前はサンドリヨンという名前だ…

「サンドリ・・ヨン・・?」
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ミカゲ #3★2009.02/07(土)18:28
そう、それがお前の新しい名だ。ただし、アゲハントの頃に持っていた力は使えるようになっておるからな。ではまた…

それだけ言うと、声は消えた。

「はあ…これはまた、随分と面倒なことになってしまったな・・」

サード、いや、サンドリヨンは大きなため息を1つつく。
ただでさえ、人間が嫌いなサンドリヨンにとって、これは決して楽なことではなかった。

「でもまあ…こうなってしまったからにはやるしかない。取り合えず、行くとしよう」

サンドリヨンは歩き出し、そのまま森の出口へと向かった。

…。

「ほう、これは見事なものだな」

森を出たサンドリヨンは、その町並みに感心していた。
丁度そこは、午後の買い物客でにぎわっていたが、周りにいた人間達は何やらサンドリヨンの事を物珍しそうな目で見ている。
こんな目立つ格好をしているので、注目されるのも無理はないが…

「ねえ〜あのお姉ちゃん、面白いの着てるよ〜」
「こら、指をさすんじゃありません!」

(…余計なお世話だ。ほっといてくれないか?)
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ミカゲ #4☆2009.02/07(土)19:13
内心、そう思いながらも歩き続けると、とある場所にたどり着いた。それは…

「ポケモントレーナーズスクール?」

サンドリヨンは知らなかったが、ポケモントレーナーズスクールとは、まだポケモントレーナーになる前の子供たちがポケモンの相性やバトルのしかたなどについて学ぶところである。
最近では多くの子供たちがここに通っているらしい。

「私では絶対に入れんだろうな…!?」

ドンッ!

そんなことを考えていると、突然何かがぶつかってきた。
何かと思って振り向くと…

「いたたた…びっくりした〜」
(…だれ?)

後ろには大体10歳くらいと思われる少年が地面に座り込んでいた。茶色の髪が特徴的で、かなり可愛い子だ。

「…大丈夫か?」
「え…?」

サンドリヨンは手を差し出す。少年は驚いて、顔を上げた。

「あの・・だれ?」
「すまない。私はサンドリヨンだ。お前は?」
「僕は、キルといいます」
「キルか。まあいい、取り合えず立て」
「あ、はい。ありがとうございます」

キルはその優しい手でサンドリヨンの手を取り、立ち上がる。

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ミカゲ #5☆2009.02/23(月)18:14
「サンドリヨンさんって何処から来たんですか?どう見てもこの辺りじゃ見かけない顔ですけど…」
「あ、それはだな…」

一瞬、サンドリヨンは戸惑った。自分は森の奥から来た、と言って信じてくれるだろうか。

「…遠いところから来た、とでも言っておこう」
「そうなんですか?」

キルは問いかけるように言う。それではごまかしただけで、全然
答えになってないのだが…

「ああ。今はまだ、教えられないのだ」
「…そうですか。」

………。

しばらく沈黙が続いた。

「でっ、では僕は帰るので、それじゃ!」
「あっ、ああ…」

キルはその場の空気を振り払うかのように、走り去ってしまった。取り残されたサンドリヨンはしばらく唖然とたちつくしていたが…

「…仕方がない。私も戻ろう」

と、サンドリヨンはやむを得ず、森へ戻るのだった。
何の為に来たんだよ、アンタ…(おぃ)
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ミカゲ #6☆2009.02/23(月)19:03
そして、その夜…

「ふぅ…」

サンドリヨンは森の野原に寝そべって、空の星を見ていた。
アゲハントだった頃は木の上だろうが、川原だろうがどこでも眠れたが、今は人間の体にこの格好だ。とてもそんな所では寝られない。

「キル…」

サンドリヨンはそう一言つぶやき、深い眠りへと落ちていった…
そして、次の朝。

「ん、あ…夢…か?」

眠りから覚めたサンドリヨンは再び(?)自分の手を見てみた。
目に映っていたのは昨日見たのと同じ、人間の手だった。

「…やはり、夢ではなかったのか…」

これは現実だ。目が覚めても何も変わっていなかった。
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ミカゲ #7☆2009.02/23(月)20:03
そして数日後…(え?)

「あ、サンドリヨンさーん!」
「キル…!」
「サンドリヨンさん、僕、ついにスクールを卒業したんです!」

そう言ってキルは笑って見せた。

「そうか、良かったな。」
「はい!トレーナーの免許も取れて、それで…僕、旅に出ようと思うんです」
「え…?」

一瞬、信じられない言葉が出てくる。旅に出るという事は、この街を離れるという事…本気で言っているのだろうか?

「キル…気は確かか?」
「はい、僕は本気です」

キルは真剣な表情で答える。その顔は嘘をついているようには見えなかった。

「…」
「?サンドリヨンさん?」
「…ついて来い」

そう言ってサンドリヨンは歩き出す。キルもその後に続いた。
そして、森の奥まで来た。

「…ここは?」
「キル、ここは私が生まれた場所だ」
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ミカゲ #8☆2009.02/23(月)20:26
「え?」

キルは驚いた表情をしていた。

「キル、信じてもらえないかもしれないが、実は私はポケモンなんだ。」
「ポケモン?サンドリヨンさんが?」
「ああ、何日か前まではそうだったんだ。しかしな、ある日、人間になってしまったんだ。何故だか分かるか?」
「い、いえ…」
「それはだな、私が誰かを信じる事が出来なかったからなんだ」
「…?」

キルは今一状況が飲み込めていないようだ。しかし、サンドリヨンは構わず話を続ける。

「私は今まで人間は嫌い、と思っていた。でもキル、お前と出会ってから私は変わった、いや、変われたんだ。私はお前が強くなって、いつかまた会いに来てくれることを待っているから…」
「サンドリヨンさん…」

サンドリヨンはキルを抱きしめる。2人の目にはそれぞれ涙が浮かんでいた。
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ミカゲ #9☆2009.02/23(月)20:47
「サンドリヨンさん。僕、絶対に強くなってサンドリヨンさんに会いに来ます。だから…待っててください」
「ああ、待ってるさ。いつまでも、ずっと…」

キルは、サンドリヨンの腕から離れ、走り出した。
サンドリヨンもまた、森の奥へと消えていった。

お互い2人はいつか再会することを信じあって、次の道へと進むのだった…

終わり…
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[1212]

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