アビシニアン | #1☆2003.09/05(金)17:39 |
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「もう、この景色ともお別れかぁ…。」 一面のコスモス畑の中で、遙は誰にともなく呟いた。そう、彼女は明日、ここから引っ越していくことになっている。 青い空、白い雲、そして色とりどりのコスモス。遙の一番好きな景色。… 「……。」 真上に広がる空の彼方から、秋風がやって来る。と、遙の目に見慣れないものが映った。それは、紅白の体に琥珀色の瞳。これが話に聞く「ポケモン」なのかな、などと遙が考えているうちに、その「ポケモン」は遙に近づいてきた。 「…あなた、何て云うの?…」 「……きゅぅ〜?」 遙の問いに、「ポケモン」は首を傾げる。 「…まぁ、通じるわけないよね……。」 遙がささやくと、「ポケモン」はゆっくり目を閉じ、そして…… 「………?」 彼女の目の前に、ある映像が浮かんできた。それは、ポケモン雑誌の1ページだった。 『…この新種とされるポケモンは「ラティアス」と呼ばれ、各地の上空を飛び回っていると報告されている…」 「…ラティアス?」 「ポケモン」は、ゆっくり、そして深くうなずいた。 「……あたしさぁ、もう明日でこの町とお別れなんだ…ここ、あたしが一番好きな場所なんだ…。あなたも、ここが好きなの?」 「ラティアス」というらしいポケモンは、その一語一語に相づちを打つように遙を見つめていたが、突然遙にぴったりとくっついた。そして、「背中に乗れ」と目で合図する。遙が「ラティアス」の背に乗ると、柔らかな羽毛の感触が気持ちよかった。 また風が吹いてくると、「ラティアス」は遙を乗せたまま飛び上がった。 「ぅわあ……!」 10年以上住んだ町が眼下に広がっている。遙の家…ずっと通っていたトレーナーズスクール…仲の良かった子達の家も…そして、真下には桃色と赤のまだら模様。コスモス畑だ。町の上空を一周すると、「ラティアス」はフワリとコスモスの中に舞い降りた。 「…ラティアス…」 「きゅ?」 「…ありがと。また逢えるといいね。あたし、引っ越したらポケモントレーナーになる!そして、またあなたに会いに来るからね!」 「きゅうぅ〜っv」 …翌日… 彼女はトラックの中に居た。 「あの子…どうしてるかなぁ…?」 fin |
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