ぴくの〜ほかんこ

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[34] 秋桜〜こすもす〜<短編>

アビシニアン #1☆2003.09/05(金)17:39
「もう、この景色ともお別れかぁ…。」
一面のコスモス畑の中で、遙は誰にともなく呟いた。そう、彼女は明日、ここから引っ越していくことになっている。
青い空、白い雲、そして色とりどりのコスモス。遙の一番好きな景色。…
「……。」
真上に広がる空の彼方から、秋風がやって来る。と、遙の目に見慣れないものが映った。それは、紅白の体に琥珀色の瞳。これが話に聞く「ポケモン」なのかな、などと遙が考えているうちに、その「ポケモン」は遙に近づいてきた。
「…あなた、何て云うの?…」
「……きゅぅ〜?」
遙の問いに、「ポケモン」は首を傾げる。
「…まぁ、通じるわけないよね……。」
遙がささやくと、「ポケモン」はゆっくり目を閉じ、そして……
「………?」
彼女の目の前に、ある映像が浮かんできた。それは、ポケモン雑誌の1ページだった。
『…この新種とされるポケモンは「ラティアス」と呼ばれ、各地の上空を飛び回っていると報告されている…」
「…ラティアス?」
「ポケモン」は、ゆっくり、そして深くうなずいた。
「……あたしさぁ、もう明日でこの町とお別れなんだ…ここ、あたしが一番好きな場所なんだ…。あなたも、ここが好きなの?」
「ラティアス」というらしいポケモンは、その一語一語に相づちを打つように遙を見つめていたが、突然遙にぴったりとくっついた。そして、「背中に乗れ」と目で合図する。遙が「ラティアス」の背に乗ると、柔らかな羽毛の感触が気持ちよかった。
また風が吹いてくると、「ラティアス」は遙を乗せたまま飛び上がった。
「ぅわあ……!」
10年以上住んだ町が眼下に広がっている。遙の家…ずっと通っていたトレーナーズスクール…仲の良かった子達の家も…そして、真下には桃色と赤のまだら模様。コスモス畑だ。町の上空を一周すると、「ラティアス」はフワリとコスモスの中に舞い降りた。
「…ラティアス…」
「きゅ?」
「…ありがと。また逢えるといいね。あたし、引っ越したらポケモントレーナーになる!そして、またあなたに会いに来るからね!」
「きゅうぅ〜っv」
…翌日…
彼女はトラックの中に居た。
「あの子…どうしてるかなぁ…?」
                          fin
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