風のグラエナ | #1★2004.07/27(火)09:10 |
---|
第1話 王子誘拐事件 前編 「はぁ。」 レガートは大きく溜息をついた。 何で毎日こんな狭苦しい城に閉じこもってなきゃならんのだろう、俺。 王子って悲しい…。 「レガート様。夕食の時間でございます。」 「今行くさっさと引っ込め大臣。」 しっしと夕食を知らせに来た大臣を右手で追い払い、再びレガートは溜 息をついた。 今までどのくらい城の外の世界にあこがれただろう。 どうして自分は王子に生まれたんだか…。 食事をとる気になれず、レガートは一冊の本を徐に開いた。 そこに書いてあったのは…。 「何かしたいと思うのなら、思うのではなく行動に移すのが大切である。」 リ・レスカナ著の「思う」という本だった。 それを見て、レガートの表情が明るくなる。 何で今まで気づかなかったのだろう、自分の道は自分で切り開くしかな いということに。 「よっしゃ、行動に移してやるかッ!」 レガートは急に元気になって、夕食を食べに広間へダッシュしていった。 「レガート様。」 食事をとっていると、大臣が話しかけてきた。 「何だ?」 「先に無礼をわびて起きますが…あの、その、言葉遣いは直された 方が宜しいかと…。」 「済まんな。」 「1週間後は婚約者のルィアナ姫との対面ですから。」 「ぶっ!?」 …ルィアナ姫とは隣国の姫君だ。 気がついたら、王は何時の間にかレガートとルィアナの婚約を結んでいたのだ。 くそぉっ、オヤジ、許せん。 俺の人生は俺が決めるのにさあ。 「どうかいたしましたか?」 「いや、何でも無い…ご馳走様。」 レガートはふらふらと広間を出て自分の部屋へ歩いて行った。 さて、まずはどうやって王城を抜けるかだ。 王城図と羽ペンを取出して、レガートは考え始めた。 「確かこっちには門番がいて…。」 深夜。 真っ暗になったが…。 「全然いい考えが思いうかばねぇ…。」 レガートは泣きそうになった。 何でこんなに俺頭がわりぃんだよ…。 あれ?何か物音が…。 何の音だろう。まあいいや。今日は寝てしまおう。 「王子はこっちか?」 「ああ…。」 レガートが眠りにつくと、部屋に黒装束を着た誰かが入ってきた。 「王子はぐっすり寝てるな…。」 「よし、つれていけ。」 レガートは自分が浚われるということを知らず、ぐっすり寝入っていた。 |
風のグラエナ | #2★2004.05/28(金)20:49 |
---|
第2話 王子誘拐事件後編 「あれ?ここは…。どこじゃ?」 レガートは目を覚ました。何だか何時もと様子が違う。って当たり前だ。 「静かにしろ。おまえは大切な人質なのだからな。」 「ひ、人質!?」 レガートは何時の間にか人質にされていたらしい。 マジでやべぇ事になった…いや、でもこれを機に逃げ出すという手もアリだぞ? 「さて。王子様の見張りはオマエに任せよう。」 「ガルル。」 レガートの閉じ込められた部屋に入れられたのは1頭のもえるような色の毛皮の生き物。 「オマエは誰?」 怖いもの知らずのレガートは初めて見る生き物に聞く。 何と、その生き物が喋ったのだ! 「我はウインディという。」 「ういんでぃ?あ、聞いたけどポケモンとかいう生き物!?」 「そうだ。初めてか?」 「ああ。ずっと城の中だったし。」 レガートは嬉しそうに自分を見張っている奴と話す。 怖いもの知らずというかなんというか。 「ところで、早くここを出ようぞ。」 ウインディが言う。 レガートはは?という顔をした。 「って…オマエ俺の見張りじゃないの?」 「ええい、そのような事どうでも良いわっ!私はおまえの守護をつかさどる風之君主だっ!」 「言ってる意味が分からん!」 「とにかくこっちへ!」 ウインディは物凄い力で壁を突き破る。そして早く来いというように前足で招いた。 「お、おう!」 レガートは外に出た。 一体こいつ何だ?風の君主?俺の守護?言ってる意味マジわからん。 「さあ、こっちだ!」 ウインディに誘導されて、レガートは出ていった。 |
風のグラエナ | #3☆2004.05/28(金)21:06 |
---|
第3話 イーブイ・ウィリィ 「ど、どこまで走るんだよ!ウインディ!」 「とにかく走れっ!」 レガートは必死にウインディの後を追ったが、城で育った為か体力があ まり無い。 というか、ウインディは元々足が速い。 ついに見失ってしまった。 「あー、俺ってほんと体力ねぇなあ…。」 歩いていればウインディも見つかるだろうと思い、レガートはゆっくり 歩き始めた。 服装は自分を連れ浚った奴等によって勝手に庶民の服装に変えられてい るので別に王子だと他の人々からバレる事を警戒する事は無い。 暫く歩いていると、何かの泣き声がした。 「ぶぃ、ぶぃ…。」 「ん?」 レガートは声のした方向を見る。 そこには箱の中に入れられたちっさな茶色い生き物がいた。 「どうしたんだ?」 …見ればに捨てられたと分かるだろオイ。 茶色いちっさな生き物は答えた。 「僕、捨てられたの。」 「何、捨てられただぁ?」 「君、僕の言う事、分かるの?」 ちっさな生き物は不思議そうにレガートの顔を見上げる。 レガートは頭の上に?マークを出す。 「ああ、分かるよ。誰でも分かるんじゃないの?」 「誰でも分からないよ。分かるのは、心が通じる人だけ。君、心、通じ るんだね。」 「そうみたいだな。ところでおまえは?」 「僕、イーブイ。イーブイってポケモンの種族。君、僕連れてってよ。 じゃないと僕、死んじゃうよ。」 「ああ、いいよ。」 レガートはイーブイをすんなり受け入れた。 旅は道連れ世は情け。 そんな言葉を本で見た事がある。 「君は?」 「俺はレガートっていうんだ。宜しくな。」 イーブイをレガートは抱いた。 イーブイはレガートにせがむ。 「僕、名前が欲しい。イーブイっていうの、種族の名前。」 「名前…じゃ、ウインディからとって…ウィリィでどうだ?」 「ウィリィ?僕ウィリィっ!」 レガートはウィリィを新たに仲間に入れた。 |
風のグラエナ | #4☆2004.06/01(火)21:51 |
---|
第4話 外の世界へ 「ウィル、どう?」 「うんとね。」 ウィリィはくんくんと地面の匂いをかいだ。 ウインディの匂いを探っているのだ。 「こっちこっち。」 ウィルはちょこちょこと走る。 レガートはその後についていった。 ウィルって鼻が利くんだなあ…。 「こっちこっち!」 ウィルは自身満万だ。 途中で、レガートは市場に来た。 「そうだ、ここらでちょっと買い物するかな?」 「御金は?」 「路銀なら一杯あるよ。」 レガートは懐からスカーフを取出す。 そこには一杯金貨や銀貨が入っていた。 ウインディに外に案内される前に、たたんであった王族の服から抜き取 ったものだ。 「城下町にいたら捕まりそうだし、食料買い込んで外に出ようかな?ウ インディも出ていっただろうし。」 「お腹減った。」 ウィリィも何か買おうとズボンを引っ張って催促する。 レガートはにこっと笑うとパンやらを大量に買い込んだ。 俺は当分城に戻る気は無いしな。 「こっち。」 買い物を済ませてから、ウィリィはとことことまた匂いをかいで歩き始めた。 そして辿りついたのが…。 「王国の外に繋がる門、南門か…。」 だったのだ。 レガートにとってはこの上ない好都合。 王国の外に出ないと兵に捕まる可能性も高いのだ。 レガートは生まれて初めて外の世界に出た。 |
風のグラエナ | #5★2004.07/18(日)19:16 |
---|
第5話 風之神話 北風、南風。 それはノースとサウスという風之君主と呼ばれる存在が起こしていると言われる…。 ノースは北風を操って冬の大地の眠りを守り、サウスは南風を操って春 に大地を冷たい眠りから起こしていた。 お互い干渉しあう事も無く、世界には平和な時が流れていたのである。 しかし…。 ある時、ノースは自らの北風を操る力で世界を支配してしまおうと欲に 酔ってしまい、春が来ても北風を吹かせつづけた。 そして、ノースとサウスの「風帝戦争」が始まったのである。 戦いは千年の間続き、その戦いによって大地は朱に染まった。 それを見た空之君主スカイは、ノースを四天王の下に下す事で戦いを終 らせたのである。 そしてサウス自身も、風之四天王がノースに殺られる事無きよう、自ら 下に風之四天王の下に下った。 四天王はノースに自分が命令した時だけ北風をふかす事が出来るようにした。 こうして、世界には再び冬に北風、春に南風が平等に吹くようになったのである。 |
風のグラエナ | #6★2004.08/01(日)16:11 |
---|
第6話 罪 真実を知ったとき、あの子は許してくれるだろうか。 私にはもう、ノースは止められない。 あの子を置いて逝くしかない自分が悔しい。 でも、これはノースを止める事の出来なかった私への罰なのだろう…。 「ふぁーあ。」 レガートは思いきり大きな欠伸をした。 彼の傍らにはウィルとウインディが。 「…探したぞ、レガート。」 ウインディはさぞ不機嫌そうだ。 眉間に三本ぐらい皺がよっている。 「御免御免。ところでさ、ウインディって種族名だろ?俺が何か名前あげよっか?」 レガートはウインディに問うた。 この世界では、ポケモンにもニックネームでなく、正当な名前が与えられるのだ。 イーブイはウィリィという名前を与えられ、ウィルと呼ばれている。 「私には既にサウスと言う名がある…まあ、オマエが好きに呼ぶが良い。」 「んじゃ、サウスでいいや。」 「(…)」 「んで、これからどこ行くの?」 「アルクゼッツの山だ。」 「…死の山って呼ばれてるアルクゼッツ?」 「そういうことだ。」 レガートは身震いした。 サウスは一体自分をどこへ連れて行く気なのだろう。 クレイはアルクゼッツ山の頂にある小屋に来ていた。 そこには1人の人間の遺体が。 風の四天王、ウィルカリアのものだった。 「…北風の君主に、オマエは…。」 ノースにウィルカリアは殺されてしまった。 早く新たな風の四天王をたてなければ。 ノースを制御できるのは風の四天王だけなのだ。 「サウス…早く連絡をよこせ…。」 クレイは一言呟いた。 |
風のグラエナ | #7★2004.06/30(水)20:58 |
---|
第7話 外の世界へ 俺は、アルクゼッツを目指して旅をしている。 何で死の山とか呼ばれてる物騒な所に行くかって? だって、サウスが言うんだしさ。 それに、俺こんなとこいたら城に連れ戻されるし、外の世界のことは知 らないし、サウスに頼るしかないじゃん。 ウィルはウィルで小さいし…。 「…ウィルカリアは、生きているだろうか…。」 サウスは不意に呟いた。 この少年は何れ風の四天王になる身。 ウィルカリアはもうノースの制御が利かなくなってきたと言っていた。 早くこの少年の力を、引き出さねばならぬのだ。 私はこの少年の守護を任されたが、それよりノースの暴走が心配だ…。 「どうした?サウス。」 レガートに不意に声をかけられ、サウスは顔を上げた。 「…何でも無い。」 「何か悩みがあるなら言えよ?」 「…(オマエが言う台詞か…)」 精霊ネイティオ・ティナは大地を見て目を細めた。 「…私もやっと、新たな世界へ転生したか…。」 ティナは嘗て別世界の精霊だったが、大魔法を使い、命を落とした。 そして何百年もの間魂で時をさ迷い、やっとこの世界に転生する事が出来たのだ。 「風が騒いでいる…。」 ティナは風に不吉なものを感じた。 北風が、暴れている。 風の君主が…。 「そろそろ行かねば。」 ティナはスッと風に消えた。 |
風のグラエナ | #8☆2004.07/01(木)17:59 |
---|
第8話 北風の君主 「…ここを上るんですかね?サウス。」 「ああそういうことだ。」 彼等は死の山と称される大山・アルクゼッツ山門に来ていた。 レガートは地面に突っ伏する。 「……俺仮にも王子生活だったんだけど?こんなところ上る体 力あると思ってんのかサウス…。」 「ははは。気力があれば出来ぬことはないぞ。」 「……霊魂だけになって飛んでくよ、俺…。」 てなわけで、彼等は登山を開始した。 ウィルやサウスはポケモンなだけあってひょいひょい進んで行く。 運動神経良すぎ…体力ありすぎ…。 「…あれ?」 レガートはふと足を止めた。 何か嫌な予感を感じる。 「どうしたのだ?レガートよ。」 「…何か来るっ!」 と、次の瞬間恐ろしく冷たい風が凄い勢いで吹いてきた。 更にその上を何かが駆けぬける。 「!!貴様、ノース!」 「久しぶりだな、サウス…。」 「え?え?」 レガートは突如目の前に現われたノースと呼ばれたポケモンを見た。 輝く青い毛並み、白い尾。 確かこれって…!! 「北風の君主!?じゃあサウスは…!」 驚くレガートを無視して2匹は話を続ける。 「ノースよ…オマエはウィルカリアを…!!」 「ああ私は奴を殺った…私を縛っていた者をな!世界は我が物となる!」 ゴオッ!ノースが北風をまとってサウスに突進する。 サウスはそれを受けとめた。 …何かヤバイ事になってるんですけど。 巻き込まれたら俺死ぬよ…。 あ、俺だけじゃない!ウィルは!? アイツはまだ小さい…! 「レガート、伏せて!」 「!?」 不意にウィルの声がしてレガートは体を咄嗟に倒す。 次の瞬間、ノースが放ったらしい風の刃が頬を掠めた。 「…止めなきゃ、この戦い!」 |
風のグラエナ | #9☆2004.07/01(木)18:11 |
---|
第9話 ノースを縛る力 「止めろ、お前等!」 レガートは叫んだ。 ノースは攻撃を止めてじろりとレガートを見る。 「感じる…この少年が、ウィルカリアの……。」 「逃げるのだ、レガートよ!」 サウスの声がノースの言葉を遮った。 次の瞬間、冷たい風の刃が飛んでくる。 「!?」 「危ないっ!」 バシィッ! ウィルの尻尾が一瞬輝いたかと思うと、風の刃が跳ね返された。 「ひゅー、危ねぇ危ねぇ!」 「アイアンテールで何とか弾き返したけど…尻尾…痛い…。」 ウィルは必死に痛さを堪えた。 駄目なんだ、ここで負けちゃ。 サウスは…レガートがウィルカリア様の子供だって言ってた… なら、ノースを制御するのはレガートしかいない…ここでレガート を失ったら行けない!僕が守らなきゃいけないんだっ! ウィルは立ちあがるとノースの首に思いきり噛みついた。 ノースはそれを払う。 「ウィル!」 地面に投げ出されたウィルを、レガートは抱き上げた。 許さない…俺の仲間を、こんなにしやがって……! 「いい加減にしろーっ!」 ガアァッ!青白い光が迸った。 「…うっ!」 ノースが目を伏せる。 「ノース…手前、よくも俺の仲間をっ…!」 これが…次の風の四天王の持つ力…また私は縛られるのか? あのような力に…それは絶対に…ならぬ! ノースは痺れた体を起こして、風のごとく空へ消えた。 |
風のグラエナ | #10★2004.07/27(火)08:56 |
---|
第10話 真実 レガート達はようやくアルクゼッツの山頂に辿りついた。 そこには1つの十字架が立っていた。 それに刻まれた文字を見たとき、サウスは絶句した。 ”風之四天王ウィルカリア ここに眠る”とあったのだ。 間に合わなかった。 間に合わなかったのだ…!! サウスは主人の墓の前で哀しい遠吠えを上げる。 それは、赤く光る黄昏の空に哀しく響いた…。 「なあ、サウス。オマエは何を知ってるんだ?」 すっかり俯いてしまったサウスの首を撫でながら、レガートは言った。 「ウィルカリアは自分からオマエに真実を話すといっていた…だか ら私はオマエをここへ連れてきたのだ…。」 「は?何言ってるか意味わかんねぇよ?」 「…ウィルカリアがこうなってしまった以上、私から話すしかあるまい。」 「え…?」 コイツは一体何を知ってるんだろう。 「ウィルカリアには昔、1人の子供がいた。しかしな、ウィルカリアは その子供を自分の手元から離した。何時ノースが自分の束縛を破るか分 からなかったからだ。兆度その頃、シュライト王国の生まれたばかりの 王子が亡くなってしまっていてな…ウィルカリアはもし、ノースが 自分の束縛を破って次の四天王となる子供まで殺されたらいけないと、 子供の姿をその王子に変えて王へ渡したのだ。その子供がオマエなのだ …レガートよ。私はウィルカリアに命令されて彼から離れ、何時も オマエをオマエ見えないところから見ていた。そしてつい最近、新たに 真実を話すから連れて来いと命令されて、オマエをここまで誘導したのだ。」 「…俺が次の四天王?」 「…そういうことだな。」 |
風のグラエナ | #11☆2004.07/27(火)09:35 |
---|
第11話 これからの道 新たな仲間 「んで、サウス。これからどーすんの?俺四天王なっても別にいいけどさ。」 レガートはサウスに問うた。 真実を話して聞かせたのに、別に大きなショックは受けていないようだ。 「…オマエ、真実を知って何でそこまで平気でいられる?」 「真実を受け入れないでどうするってぇの?俺の愛読書のレスカナさん の本にさ、こう書いてあったし。『真実を受け入れる事は自分を受け入 れる事である。』ってさ。確か…真実は受け入れ辛いものもあるけ ど、それを受け入れる事は…今の自分、嫌な自分とか全部を受け入 れる事と同じなんだってね。」 …レスカナさんの本、俺にいろいろ影響与えてるんだよなあ。 城脱走しようとしたのも「思う」っつぅあの人の本がキッカケだったし。 「で、どうするのさ?」 「とりあえず…四天王協会の方に行く。」 「四天王協会本拠地があんのって、エルザワールの方だっけ?」 「そうだ。そこへ向かう。オマエはギャロップの…シェキにでも乗 っていけば容易いだろう。」 「ぎゃろっぷ?」 「あそこだ。」 サウスは顎である方向を指す。 すると、1頭の燃えるような赤色の鬣と尾を持つ白い毛並みの馬がいた。 あれがギャロップか。 「あれシェキっつぅ名前なんだ。」 「ああ。ウィルカリアの愛馬だった奴だ。シェキ、こっちへ来い。」 するとギャロップは馬小屋の柵を軽く飛び越えて、こっちへ優々と走ってきた。 「初めまして、ギャロップのシェキです。あなたがウィルカリア様の子 レガートさんですね?」 「ああ。」 どうやら♀らしい。 「シェキ、オマエもやはり来るだろう?」 「はい。宜しくお願いします。レガートさん。」 |
風のグラエナ | #12☆2004.08/01(日)16:28 |
---|
第12話 サウスの弱点 四天王協会の本拠地・エルザワールへ向けて旅を続けるレガート達。 彼等が通っている道はウェリッサという森だ。 ここを抜けるのがエルザワールへの最短ルートなのだ。 「なあ、少し休憩しない?」 レガートは言った。 ウィリィは頷く。 「うん、僕も足痛い。」 「私も少し水が飲みたいですね。」 レガートはシェキの背には乗ってない。 その代わりシェキの背には、風之四天王の庵にあった食料がごっそりと 乗せられている。 「なあ、いいだろ?サウス。」 「…エルザワールに早く着かねばならんのだ。もう少し歩いてからにするぞ。」 とサウス。 休む気は無いらしい。 「そんなぁ…。」 レガートは項垂れた。 …そうだ。案外この手は使えるかもしれない。 彼は直ぐに元気を取り戻すと、ウィルにこっそり耳打ちした。 「うんうん…分かった。」 ウィルは1つ頷くと、サウスに話しかけた。 どういう方法だろう。 「ねえ、サウス。僕、もう足痛くて歩けないよぉ。休みたいよぉ。」 「何甘ったれて…。」 サウスはウィルを叱ろうと彼の方へ顔を向けた。 が。 「ねぇ、サウスぅ…。」 ウィルの涙ウルウル目光線。 レガートの作戦はこれだったのだ。 「ヴっ…。」 サウスは言葉が詰まる。 …私も甘いな…。 そして。 「…仕方ない、そこまで言うなら少し休もう……。」 「わあい♪」 レガートの作戦は見事に成功。 可愛いもの。それがサウスの弱点である。 |
風のグラエナ | #13☆2004.08/01(日)16:55 |
---|
第13話 襲撃 前半 「ああ〜!森林浴さいっこぅ!」 レガートは森の中で叫んだ。 …コイツは、自分が四天王になる事をちゃんと認識しているのか。 この重役を、余りにも軽く考えすぎているのではないだろうか。 サウスは重い溜息をつく。 「どうしたの?サウス。」 そんなサウスの様子を見て、ウィルが話しかけてきた。 「ああ…レガートは、四天王という役割を軽く考えすぎているので はないか、と思ってな…。」 ウィルは暫く考えてから答える。 「そんな事は無いと思うよ?レガートは王子様なわけだから、ちゃんと 教えられてるでしょ、そのくらい。只…四天王、っていう重い役割 が不安で堪らなくて、でも皆に心配されたくないから隠してるんじゃないかな?」 「…かもな。」 サウスは苦笑した。 ウィルの言うとおりかもしれない、と。 と、その時! 「おわっ!」 レガートが突然飛びのいた。 それとほぼ同時に、何個かのナイフが落ちてくる。 「なんだなんだなんだっ!」 「大丈夫!?」 ウィルは急いでレガートに駆け寄った。 ウルル! サウスはナイフが飛んできた方向に向かって唸り声を上げる。 「誰だッ!物騒なもん投げてきたのはっ!」 レガートが怒鳴ると、返答は直ぐに帰って来た。 「…俺の事を、覚えていないかな?」 現われたのは…。 「あーっ!俺の事を閉じ込めやがったやつ!最悪!最低!消えろ!」 そう、第2話でサウスにレガートの見張りを頼んだ奴だ。 「…いいたいことをいいたいだけぶちまけやがって。おい、ウイン ディ!オマエ、サウスだとなっ!俺にしたがったフリして、王子の守護 かよ!」 「それがどうした。」 冷静なサウス。 一体どういうことが。 |
風のグラエナ | #14☆2004.08/19(木)17:50 |
---|
第14話 襲撃 後半 「オマエは一体何者だ!何で俺を狙うッ!身代金目当てなら、城に戻っ たら100万でもいくらでも払ってやるよ!」 レガートは思いっきり怒鳴った。 ったく…何だ最近色んな事で頭がこんがらがってんだよっ! 次から次へと全く…。 「俺らの目的は風之四天王を手に入れて空の君主を降ろし、その力で全 てを支配する事だッ!」 「…簡単に喋るなんて相当下っ端だな手前。」 空の君主、レックウザ。 レックウザは風之君主達を風之四天王に制御するよう、命じた。 その代わり空の君主は、風之四天王の守護神となった。 風之四天王の身に何かあれば、必ず現われるのだろう。 「というわけで、王子は俺らが頂くッ!エリーダ、行けッ!」 「サムッ!」 男の背後から現われたのはエリーダと言う名のハッサム。 シェキは前に進み出た。 「私に任せてください。」 「エリーダッ!相手を血祭りに上げろッ!」 「サムゥッ!」 ハッサムが鋼鉄のツメを振り上げてくる。 しかし、シェキは大地を蹴ってジャンプし、それを交わす。 そして炎の渦を吐き出した。 「私を甘く見ないことですッ!」 シェキはそのまま炎の輪を縮めた。 ハッサムは業火に包まれて苦しさに顔を歪める。 「フレイム・リング。」 シェキが唱えると、炎の輪は一段と激しさを増し、遂にはハッサムを締め付けた。 「なっ…エリーダ!」 ドッ! 炎が消えると、ハッサムは大地に倒れた。 「私を甘く見ないことです。レガート様!早く行きましょうッ!」 「おうっ!」 「ま、待てッ!」 「風之舞ッ!」 レガートが唱えると強い風が吹いて追いかけてこようとした男をフッ飛ばした。 「んじゃ、行こうか。」 レガート達の旅は続く。 |
風のグラエナ | #15☆2004.08/19(木)18:08 |
---|
第15話 エルザワール・四天王本拠地へ 「へぇ〜。ここがエルザワールかぁ〜。ところでサウス、四天王協会は 何処?」 「こっちだ。」 サウスの後についてレガート達は歩く。 暫くすると、立派な聖堂のような建物に着いた。 レガートはその建物を一望する。 が、大きくてずっと見上げると首が痛くなった。 「…ここが?」 「ああ、そうだ。」 彼等は門をくぐろうとしたが…。 「止まれ。ここからは関係者以外通行禁止だ。」 槍を持った衛兵に止められてしまった。 その足元ではグラエナが唸り声を上げている。 しかし。 サウスが前に出ると、衛兵達は道を慌てて開けた。 「ご無礼をお許し下さい。風之四天王ウィルカリア様のご子息でしたか。」 「いえ別にいいんすけど…。」 「さっさと行くぞ。」 レガート達は本拠地の中へ。 「ようこそ、ウィルカリアの子息、レガート殿。」 彼を迎え入れたのは燃えるような金髪の若い男だった。 レガートは敬礼を返す。 城でし込まれているので、こういう場でも余り緊張しないのだ。 「突然の訪問お許し頂きたく。実は風之四天王ウィルカリア様が…。」 「既に分かっております。あなたがここへ近々来る事も、分かっておりました。」 男の言葉に遮られて、レガートは続きの言葉を飲み込んだ。 「こちらへどうぞ。」 男に通され、彼等は1つの部屋へ。 そこには―― |
風のグラエナ | #16★2004.08/21(土)15:07 |
---|
第16話 四天王の間 「あれが…。」 四つの豪華な玉座には、3人の四天王が座っていた。 1つだけ、開いているが。 「四天王の者達だ。左から炎を司るリュード、雷を司るシェルニータ、 で、水を司るデュッセラードだ。で、1番右の空いている玉座は、オマ エのものだ。」 「何かすごい…。」 レガート生まれて初めて四天王を目にした。 それぞれ…凄い力秘めてるんだろうなあ。 リュードの隣にはファイヤーが、シェルニータの隣にはサンダーが、デュッセラードの隣にはミロカロスが控えていた。 「君が。」 デュッセラードが徐に口を開いた。 「風之四天王となる者か。」 「は、はい…レガートと申します。」 レガートは敬礼する。 ガラに無く緊張しているレガート。 「そんなに硬くならなくても良いわ、レガート。」 シェルニータの言葉におずおずと敬礼で下げっぱなしだった頭を上げる。 「では、力を拝見させてもらおうか。」 リュードが席から降りてつかつかとこっちに歩いてきた。 レガートはダッシュして逃げ出したい気持ちを堪え、リュードと目を合わせる。 俺は四天王だ。…といっても次だけど。 何で頭をぺこぺこする必要がある? 自分に言い聞かせる。 「手を出してごらん。」 レガートは震える右手を出す。 リュードはその手を握った。 次の瞬間… バチィッ! リュードとレガートの間に、白い光が弾けた。 「うお!?」 「ほぉ…長い間鍛えてきた私の力に逆らえるのか、君の力は。」 驚いたように目を見張るリュード。 あの…何されたかわからないんですけど…。 「相応しい力をあらわした君を風之四天王と認めよう。異存のある者は いないな?」 リュードは後ろのデュッセラードとシェルニータを見たが、二人とも何 も言わなかった。 「さぁ、玉座へ座るがいい。あそこは――君のものだ。」 この日―― レガートは、遂に四天王となった。 |
風のグラエナ | #17☆2004.08/21(土)15:23 |
---|
第17話 王位継承権 「あぁ〜…暇だぁ〜。」 自分にあてがわれた部屋で、レガートは大きな欠伸をした。 ったく、俺は退屈嫌いなんだよぉ〜! 「レガート、ここ脱走しちゃわない?」 とウィル。 「…馬鹿。仮にも俺は四天王なんだぞっ!?王子じゃねぇんだっ!」 レガートは大きな声でわめき散らした。 と、その時。 「レガート、呼ばれてるぞ。」 サウスがドアから顔を出した。 「…誰に?」 「四天王の方々に決まっておろうが。ほら、さっさと着替えて会議室行くッ!」 会議室には既に四天王達が集まっていた。 大分慣れたおかげで、レガートは前よりリラックスして向かい合う事が出来た。 「で…何のお話でして〜?」 「君の王位相続権の問題だ。」 「はぁっ!?」 デュッセラードの言葉にレガートの目が驚きに大きく開かれる。 お、王位相続権の問題っ!? ああ、俺王子でもあったなぁ…。 って王が、俺の義父が死んだとかッ!? 「…王が重い病に倒れたそうだ。多分、君を使ってレックウザを意 のままに操ろうとしている者達の仕業だろう。多分、四天王の君を王を 病に落とす事によって、王位継承権争いに巻き込んでレックウザを呼ぶ つもりなんじゃ…王が掛かっている病は命に関わるほど重いらしいしな。」 とリュード。 「でも、正当な王位継承権は普通王子に渡されるはずでしょ?何でまた…。」 シェルニータが考え込む。 「そこなんだよなあ。」 リュードもこめかみに指を当てた。 レガートには分かった。 リュードの推測が正しい事を。 「…俺さ、小さい頃から命狙われてるんだわ。叔父に。」 「え?」 デュッセラードがこちらを見た。 「叔父のユレイダはオヤジの補佐役の大臣。だから、俺を殺せば王にな れるんだ。それを狙って刺客とか向けられた事何度もあった。」 「そうか…それで…。」 しかし、王が倒れたとなってはレガートは即急に戻らねばならない。 どうする、レガート! |
風のグラエナ | #18☆2004.08/23(月)10:19 |
---|
第18話 シュライト城へ 「シェキ、頼むぜッ!」 「任せてください。」 ウィルはレガートの肩に飛び乗った。 サウスはシェキの後ろにつく。 「気をつけろよ。」 リュードが言う。 レガートは頷いた。 そして彼はシェキのわき腹を軽く右足で押した。 蹄は大地を力強く駆け出す。 それに続いて、サウスも走り出した。 シュライト城を目指して。 「本当に大丈夫ですか?レガート様。」 シェキの言葉にレガートは答えた。 「大丈夫。城に心強い味方がいるから。俺が本当にヤバイって時にだけ 出てきてくれよ。」 「分かった。」 その頃、城では。 「王位は…レガートに……譲る…。」 王が息を引き取ろうとしていた。 「ユレイダよ…レガートを……助けてやって…くれ…。」 「王…。」 哀れみの表情で王を見つめるユレイダ。 その瞳の奥に野望が渦巻いている事に、誰が気づいただろうか。 王は、ついに息を引き取った。 「シュリット。」 王が完全に息を引き取ったのを確認して、ユレイダは口を開いた。 柱の影から、1人の黒髪の男が現われる。 「…王子暗殺の準備は出来ているな?」 「はっ。」 ユレイダは微笑を浮かべて外を見つめる。 他国にまでうわさが伝わっている以上、王子は帰ってこなければならない。 そう、死に向かうためにな。 「もういい!」 レガートはシェキの背から飛び降りた。 ここから先へは、そう、王城にはシェキは進めない。 「レガート様。お気をつけて。」 「大丈夫だって。」 レガートは笑顔でシェキに答える。 「私は姿を隠してオマエについていく。」 とサウス。 「んじゃ僕はレガートのペットっていう事で。ところで、レガート。こ の事件にどうやって決着つけるつもり?」 「腹を割って話し合う。それのみ。俺、四天王だからさ、叔父に王位譲 る。」 「レックウザを狙う奴らがどさくさに紛れてくるかもしれんが?」 「そこらへんは、大丈夫。心強い味方がいるって言ったじゃないか。じゃ、行くぞっ!」 レガートは城へ帰ってきた。 |
風のグラエナ | #19☆2004.08/23(月)10:45 |
---|
第19話 罠の天才 「お帰りなさい、兄上。」 レガートを最初に迎え入れてくれたのは、彼の妹の王宮魔術師・リゼッタだった。 「只今〜。」 「何のんきにそんなこと言ってらして?父上が…。」 「…まさかっ!」 「そのまさか。遺言状には、王位継承権は兄上にあるわ。後はわかって いるわよね、兄上。」 「ああ、分かってる…ちょい人が無いところに行くぞ。」 レガートはリゼッタと共に自分の部屋へ。 「…他の集団に狙われている?」 「あぁ、そういうこと。だから、オマエの魔術で、そいつらを錯乱して 欲しいんだ。」 「何でまた?」 「…声あげるなよ。俺、四天王に即位した。」 「!!」 何とか声を押しとどめたリゼッタ。 驚きの瞳でレガートを見つめる。 「…で、ちょいいろいろあってな…それで狙われてるっつぅわけだ。」 「分かったわ。兄上。で、ユレイダとの決着は…。」 「腹を割って話す。というわけで、オマエにユレイダを武器無しの状態 にして、城の北の塔の方へ、誘導してもらいたい。」 リゼッタは額に指を当てて 「分かったわ。難しそうだけど、しかけてやろうじゃないの。」 リゼッタは罠が好きで、前からたびたび罠を仕掛けてはユレイダのしか けてきた刺客を見事に跳ね除けてレガートを守ってきた。 魔術を使った罠なので、頭が良ければ解けるというものではない。 彼女の持論によると、自分と同じか上回るような魔力と頭脳の持ち主で なければ、彼女の罠を解く事は不可能だそうだ。 「私に任せて。」 リゼッタは兄を見てにやりと笑った。 |
風のグラエナ | #20☆2004.08/24(火)17:44 |
---|
第20話 北の塔へ… 『ウゥ…ウゥルルルル…。』 サウスが唸り出した。 レガートはちらっと自分の影を見る。 「…サウス。形を隠してるから俺にしか今オマエの声は聞こえない けどさ、そんな不吉な唸り声出されると無茶苦茶不安になるんだけど?」 『…近くに刺客がいる。気をつけろ。』 「!!」 レガートは足を止めて辺りを見回した。 が、人影は見当たらない。 その時! 「げぇっ!」 ビュンッ! ナイフが凄い勢いで飛んできた。 レガートが交わすのには時間が持たない。 しかし…。 「アイアンテールッ!」 肩の上に乗っていたウィルが見事にアイアンテールでナイフを弾き返した。 「あー…どうなるかと思った。有り難う、ウィル。」 「いいのいいの。それより、早く北の塔行こう?リゼッタの話しだとも う直ぐなんでしょ?」 「ああ。」 レガート達は北の塔へ。 刺客・シュリットは跡を追っていた。 投げナイフは駄目だ。 あのイーブイは油断無く目を光らせている。 なら。 直接殺るまで。 その時。 「空間相転移〜!」 誰かの声が響いた。 「なっ…。」 ぐにゃり、と空間が歪んでシュリットは気絶した。 シュリットからレガート暗殺の報告が間だ入らない。 戴冠式までに早く済ませねばならないというのに。 ユレイダは1人いらだって廊下を歩いていた。 と、その時。 目の前の空間がぐにゃり、と曲がった。 |
風のグラエナ | #21★2004.08/24(火)18:34 |
---|
第21話 話し合い 「ようこそ。ユレイダ大臣さん。」 レガートはにやりと笑った。 そう、彼は話し合いで決着をつけるつもりなのだ。 「何だ王子この真似はっ!」 「いやちょっと何時もより強い魔術を使ってもらったまで。今回はあな たとじきじきに王位継承権について話し合いたいと思いまして。むざむ ざこんな事で殺されるのは俺も嫌ですから。それに、あなたが俺を殺す までもなく、俺は王になる事は出来ません。そこで、俺はあなたの兄・ イエルニオに地位を譲ろうと思っているのですよ。妹は高い地位はあま り好きでないようなので。イエルニオは、国に尽くす堅臣ですからね。」 「なっ…。」 そして、にっこりと笑ってレガート。 「先ほど、リゼッタが俺にナイフを投げつけた者を縛りつけてあなたが 王子暗殺を自分に依頼した、と吐かせました。これが何よりの証拠。そ して、あなたの処分は俺が次代王となる事を指名したイエルニオ大臣に 任せます。後、刺客の方も。」 「はい、お兄様〜。」 ばん、とドアが開いて魔術で縛られたシュライトとリゼッタ、そしてイ エルニオが入ってきた。 「シュリット」 「この小娘の魔術を私が見縊っておりました…すみません…。」 「ユレイダ大臣。あなたのことを見破っていたのが、レガート様、リゼ ッタ様だけと思っておられたようですね。王子の教育係だった私は、し っかりと見破っておりましたよ。」 「くっ…。」 こうして、事件は幕を閉じた。 |
風のグラエナ | #22☆2004.08/24(火)18:32 |
---|
第22話 真実 「…で?イエルニオ…王。話って何ですか?」 戴冠式も終り、落ち着いたシュライト王国。 レガートは新王に呼び出されていた。 「実はですね…私は、あなたがウィルカリア様のご子息、というこ とは存じてあります。」 「はぁ。」 「今回、それに関連した1つ話しておかなければならない真実があるのですよ。」 「え?」 レガートは目を丸くする。 「実はです…あなたがそのレックウザとやらで世界を支配しようと する輩に狙われている事は存じておりました。王は勿論それをワカって いました。では、何故あなたを王にしようとしたか。王に仕立てる事に よって、あなたの地位を狙うモノが多くなる。そして、レックウザはあ なたを守るために降りてくる…その力を利用して、世界を支配しよ うとしたのです。後、自分が摂政になって世界を自由に操るつもりだっ たのでしょう。そして、王に忠実な大臣、と見せかけていたユレイダ大臣。 それは、あなたのことを知らされていませんでした。只単にあなたを狙 おうとしていただけなのです。そして、シュリットも。 王は何者かに唆されてこのような事をはじめたのでしょう。勉強に追わ れていたあなたはきづかなかったでしょうが、この時城を出入りする黒 い装束を纏った者がいました。その者が来た時は、私ですら王の間に通 されることはありませんでした。多分、そのものが黒幕でしょう。男は 多分、王を後ろから操って世界を支配しようとしたものと思われます。 その証拠に、このような作戦書類が見つかりました。」 イエルニオは書類をレガートに渡した。 それに目を通してレガートは仰天する。 「はぁっ!?今日、王が俺を部屋に呼んで殺そうとする〜!?」 「さすれば、レックウザは間違い無く降りるはずですからね。何も王子 を守るものがいない状態になれば。」 イエルニオはレガートを見つめた。 「風之四天王殿。その者の作戦が崩れた今が、世界を支配しようとする 者達を叩くチャンス。是非、今のうちに。」 「分かった…。」 レガートは頷いた。 「あ、後ルィアナ姫との対面の件は断っておきましたので、ご安心を。」 「あ、有り難う…じゃあ、俺、そろそろ行くよ。」 レガートは、城を出た。 自分の力を狙う者達と、戦うために。 |
風のグラエナ | #23☆2004.08/26(木)16:08 |
---|
第23話 四天王達の話し合い 「…で。君は自ら敵の懐に飛び込むと?」 「相手を油断させてパーッとぶっ飛ばしちゃう作戦。ど?」 四天王達ははぁ、とあきれて溜息をつく。 レガートはその中で1人真顔だった。 「えー!?成せばなるっつぅし、やらなきゃワカンナイじゃん!」 彼ら、現在レックウザを狙う者達を倒す話し合いをしていたらしい。 「んじゃあ、あたし達も一緒にいっちゃわない?その敵の懐に飛び込ん でビビらせてパーッとぶっ飛ばしちゃう作戦。ど?」 「…シェル。オマエもレガートと同じ事言うなッ!」 「同じじゃないわよっ!リュード!四天王が揃えば最強よ!それにあた し最近退屈なのよ!?何か刺激が欲しいわっ!」 がなるシェルニータ。 それを見てデュッセラードが 「おいおい、話しの主旨がずれてるぞ。」 「おお!そりゃいい考えだな!」 「賛成するなレガート!」 …何か言い争いになっているぞオイ。 ファイヤーのウィング、サンダーのライトニング、ミロカロスのエリー ゼ、そしてウインディのサウス、イーブイのウィリィ、即ちウィルは主 達の言い争いに全員はあっと大きく溜息をついた。 「…何か凄い事になってねぇか…?」 ファイヤーのウィングが溜息をついた。 「四天王さんってもっと何か重々しい感じの人達の集団だと思ってた。」 「おいおい、重々しい感じ人達の集団ってどういう感じだよ。」 「お城の王様とか大臣とかそういう集団。」 「ほぉ。行った事あるのか。」 「うん。シュライトに戻った時に。」 とウィル。 「こんなに話しが盛り上がるってのは久しぶりねぇ。」 エリーゼが主を見つめて目を細めた。 「しかし、本当に四天王達はちゃんとした話し合いをしているのか?」 サウスは再び溜息をつく。 「面白けりゃいいんじゃねぇの?」 とライトニング。 「良くないわっ!」 サウスがツッコミをいれた。 「えー?いいんじゃないの?僕、ラグ(ライトニングの愛称)さんの意 見に賛成〜。」 「…ウィル。オマエ、レガートに洗脳されていないか?」 「されてないされてない。」 と、突然レガートの声が上がった。 「うぉっしゃー!決まった!皆で組織を叩きに行くぜッ!」 レガートは、四天王達と共に再び旅立つ事になったのだ。 |
風のグラエナ | #24★2004.08/27(金)15:38 |
---|
第24話 北風之君主を縛れ 前編 「作戦の書類によると奴等の本部は確か、ウィンダーディールか。確か エルニムス王国領だったはずだ。」 「エルザワールはシュライト王国領…ってことは、お隣の国か。」 「そうらしいな。」 旅を続ける四天王達。 彼等はそれぞれギャロップに乗っていた。 「ウィンダーディールに1番早いルートは?」 デュッセラードが口を開いた。 「えーと…この先のリオニール川を下るのが早いわね。」 とシェルニータ。 それにしてもわくわくしちゃうわぁ。 久々に旅、なんてね。 「お腹へったぁ。」 ウィルが今にも泣きそうな顔で言う。 それを見てレガートは 「ほれ。」 と口の中に手持ちの木の実を入れてやった。 それを食べるとやっとウィルは大人しくなる。 「むぐ…。」 「暫く休まないからな、泣き喚くなよ。」 「うん。」 ウィルは頷いた。 それから暫く進む事3時間。 突然目の前に賊が現われた。 「手前ら、持ってる荷物とポケモン全て置いていけッ!」 「やだ。」 即答、レガート。 「じゃねぇといたイ目にあわすぞ!」 なかなか引かない盗賊。 おいおい、四天王相手にあんたら勝ち目あると思ってんの? 「エリーゼ。」 デュッセラードが呟く。 すると、デュッセラードの影に隠形していたミロカロスのエリーゼが己 の力を解放った。 巨大な水柱が上がる。 「うおぉ!?」 盗賊達は皆吹っ飛んだ。 「よし、今だッ!」 レガートはシェキのわき腹を軽く蹴る。 シェキは走ろうとした…その時! 「おお…久しぶりだな…風之四天王よ…。」 目の前に現われた青い生き物。 北風之君主・ノースだった。 |
風のグラエナ | #25☆2004.08/27(金)15:46 |
---|
第25話 北風の君主を縛れ 中編 「ノ、ノース!すっかり忘れてたッ!」 「忘れられていたとはな…この私が。」 「(額に青筋浮かんでるよ、ノース…)」 ウィルはノースの恐ろしい形相を見て一人震えていた。 四天王達は皆身構える。 ノースの事は、彼らも知っているのだ。 「レガートよ!オマエを倒すッ!でなければ、あの御方の野望は実現せぬ!」 「(あの御方…?)」 レガートは一瞬考えた。 が。 ノースが飛びかかってきた。 それに素早く反応して手綱を引いてシェキを下がらせる。 間一髪でノースの攻撃を避けた。 「風よ!我が命に従い、我が目の前の存在を縛れッ!」 レガートは咄嗟に呪文を口にする。 青い光が迸るが、ノースはそれを交わした。 再び襲いかかってくるノース。 シェキは地面を大きく蹴ってジャンプし、それを交わした。 サウスがそこへノースを迎え撃つ。 「エリーゼ!水の波動!」 「はいっ!」 ゴオオッ! 隠形していたエリーゼは姿を現すと同時に波動を放つ。 さすがは四天王の配下のポケモン、物凄い威力だが…。 ノースはそれを風で全て弾いた。 「何だよ!あの御方ってのはっ!」 「シャアアッ!」 「レガート!今のノースはそのあの御方とやらに操られているようだ! まずは呪縛を解けッ!」 サウスの声が響く。 「分かった!」 レガートは返事を返す。 肩からウィルが飛び降りた。 「ウィル!」 「ここは僕等が時間稼ぎするから、頑張って!」 「分かった!」 |
風のグラエナ | #26☆2004.08/27(金)17:06 |
---|
第26話 スノーを縛れ!後編 徐々に力を貯めつつ、呪文を紡いでいくレガート。 解呪の呪文は、とても長いのだ。 「…目の前の存在を縛る呪縛を…。」 シェルニータの張ったバリアも、後幾分持つか。 ノースの攻撃を受けるバリアは少しヒビが入ってきている。 「はいっ!」 ウィルは風の刃をアイアンテールで弾いた。 すかさずノースは空から風の槍を降らしてくる。 「ウィング!」 リュードの声が響く。 「クオォン!」 ウィングが一声泣くと、巨大な火柱が現われた。 それは風の槍とぶつかって瞬時に消える。 「シャアーッ!」 サウスの怒号が響く。 竜巻が巻き起こり、ノースに迫る。 が、ノースはそれを逆回転の竜巻で打ち消した。 「何かによってパワーアップされているようだな。」 「だーから多人数でいくんでしょうが。」 サンダーのライトニングは雄叫びをあげる。 「ガァァァッ!」 ピシャアァン! 目にもとまらぬ速さで雷の槍が落ちてきて、ノースを刺した。 一瞬ノースが怯んだ隙に 「この者を縛る呪力を解放てッ!」 ドォンッ! 青い光がノースにぶつかった。 レガートの解呪の呪文が完成したのだ。 「シャアァッ!?」 ノースの叫びが、辺りに響き渡った。 「…私は…。」 はあはあと荒く息をつくノース。 「私は…一体…。」 「操られてたんだよ。あの御方とかいう意味不明な奴に。じゃ、行くぜ! 風よ、我が命に従い、我が目の前の存在を縛れッ!」 ビシッ! 青く光る縄のようなものが一瞬スノーを縛ったかと思うと、消えた。 「一体…何が…。」 「あ…?オマエ、何も覚えてねぇの?」 レガートの拍子抜けした声が響いた。 |
風のグラエナ | #27☆2004.08/28(土)11:20 |
---|
第27話 真実 「…あ?ノース、何も覚えてねぇの?」 「……誰だ、オマエは。私を縛っていたのはウィルカリアだっ た筈だ…。」 「アンタが殺したんじゃないの?」 「何故私がッ!あれの力には私では叶わない!」 話しがどうもかみ合わぬ事に、レガートは顔を顰める。 「というと、今までオマエは操られていたと?」 サウスが口を出した。 デュッセラードが整理する。 「というと、ウィルカリアを誰かが殺し、解放されたノースを縛ったと。」 「…ウィルカリアを殺したのは私ではないッ!ウィルカリアの力の 束縛から解放されたのを感じて後継者のオマエを殺そうとしたのは覚え ている。しかし、その後何かに縛られて…それ以降の記憶が無い。」 「というと、操られていたと。記憶が無いなら全然手がかりになんねぇ なぁ、ノース。ま、いっか。オトモダチ増えたし。」 …オトモダチかよ。 デュッセラードは溜息をついた。 「ま、とりあえず俺に縛られたんだから、宜しく、ノース。逆らったら レックウザ様が降りてくるから生きて帰れないよ?」 「分かってるわッ!」 とノース。 「多分ノースを操っていたのは…あのレックウザを狙う集団と同じ だろう。ノースがレガートを殺す寸前…本当に危うい時に、レック ウザは現われる。その時を狙ってたのだろうな。」 とリュード。 「さて、推測も終った所で速くウィンダーディールに行こう。」 「だな。」 再びギャロップは走り出した。 ノースは渋々レガートの影に隠形する。 ウィンダーディールでとんでもない戦いが待っている事に、彼等は気づいていなかった。 |
風のグラエナ | #28☆2004.08/29(日)12:47 |
---|
第28話 アジトへGO! 「エルニムスかぁ。久しぶりだな。」 レガートは門をくぐりぬけながら呟いた。 「行った事があるのか?」 リュードの問いにレガートは答える。 「ああ。国際交流パーティに招待されてね。」 「王子だったもんな。」 「も・と・ね。」 彼等は宿にギャロップ達を預けると、城下町にでた。 「確かここらへんにアジトがあるはずなんだけどー。」 シェルニータがこめかみを押さえて書類に載っている地図を見る。 しかし、全くそれらしきものは見当たらない。 と、その時。 「場所を調べる位、どうってことなくってよ?」 レガートにとって聞き覚えのある声がした。 彼が振りかえるとそこには。 「リゼッタ!」 「久しぶりね、兄上。」 そう、リゼッタが来ていたのだ。 「何でまた…。」 「退屈なもので、城を抜け出してきたわ。大丈夫、私の部下たちが私の 分もちゃんとやってくれるから。空間相転移の魔術を使えば直ぐに帰れ るから。」 「というと、助太刀してくれるんだな?」 「当たり前。」 というなり、リゼッタはある建物を指差した。 「?」 「あそこが兄上達が探しているアジト。宿屋『黒骨亭』よ。」 「本当にこんな事やっていいの?」 「強行手段も時たま必要な時がある。」 …宿屋の主人はレガートの拳により一気に伸ばされていた。 ボロボロになった彼の話によると、カウンターの隅に地下へ続く階段が あるらしい。 「じゃ、行かせてもらうよ。」 レガート達は彼を縛り上げて、その階段から地下へと降りて行った。 |
風のグラエナ | #29☆2004.09/05(日)14:57 |
---|
第2部 闇なる世界へ 第29話 彼らの無効に待つ者は 「さっきから誰かに見られてる気がする。」 レガートは呟いた。 リゼッタは 「あら、兄上に人の気配が分かって?四天王になってから随分力が上が ったんじゃないの?」 「それもそうかも。」 そんな事を話しながら彼等は進んでいた。 と。 「行き止まりだ…。」 デュッセラードが呟く。 どうやら、その壁は暗号を解かねば開かないようだ。 が、リゼッタは心配無いというように手をひらひらと振ると、呪文を唱 えはじめた。 「…破壊せよっ!」 ドッコン! 強い衝撃波が壁を打ち砕いた。 「ほーら。」 「無茶すんなぁ…。」 「さっすが我が妹。」 彼等は更に進む。 ゴゴゴ…突然地面が揺れだした。 「うぎゃっ!」 レガートは倒れそうになる。 が、サウスが何とか支える。 暫くして、揺れが収まった。 「一体何だったんだ…?」 「道がふさがってるわ…。」 シェルニータが掠れた声で呟く。 そう…彼らが通ってきた道は、落ちてきた瓦礫で塞がれていたのだ。 「まあいいじゃん。道があるしさ。」 「兄上の言うとおりよ。」 レガートとリゼッタの気楽過ぎる神経に一同は溜息をつきながら、先へ 進み始めた。 …何だ?この感覚。 何か…大きな力が動いている。 レガートが何かを直感した瞬間。 彼等は突如生まれた黒い光に飲み込まれた。 |
風のグラエナ | #30☆2004.09/11(土)14:26 |
---|
第30話 最終決戦 「こ、ここどこだ?」 レガートが立ちあがったのは、真っ黒な黒い闇の中。 時折、藍色の光がボワッと浮かんでは消える。 「どうやら”影の間”のようだな。」 不意に、サウスとノースが前に現われた。 ウィルも一緒だ。 「影の間?」 「闇が巣食う世界だ…どうやら、世界を支配しようとする者は、力 ある者らしい。」 「物凄く暗いよぉ。」 『その通り。』 不意に低い声がした。 レガートは振り向く。 「誰だッ!」 『私はこの”影の間”に住む悪魔・ディスプだ…。』 「でぃすぷ?でぃすぷでぃすぷ…あ、そういえば伝説で確か空の君 主に闇へ返されて封印された…!!」 『その通り。オマエを待っていた…風なる四天王よ…。』 ゆらり、と大きな影が動く。 辛うじてレガートにはそれの形が見えた。 「ここは…?」 リュードは立ちあがる。 真っ暗で何も見えなかった。 「…シェル?デュッセラード?レガート?」 「私はここよぉ…。」 「ったく、いたいな…。」 シェルニータとデュッセラードの声がしたかと思うと、目の前に2人が 現われた。 近くなので、何とかぼんやりと輪郭は見える。 「無事か?」 「ああ。」 「何とかね。物凄く打ったけど。…そういえば、レガートは?」 「俺達と別々に落ちたらしいな。探しに行こう。」 彼等は動き出した。 |
風のグラエナ | #31☆2005.01/01(土)10:18 |
---|
第三十一話 鋼王クレイ レガート…聞こえるか? 私の声が聞こえるか? 私は本来私が果たすべき役目をお前に残してしまった。 それは許してほしい。 しかし、おまえならやり遂げられるはずだ。 私は最後まで見届ける。お前の戦いを。 偉大なる…風之申し子よ…。 「んぁ…?」 レガートは眼を覚ました。 誰かの声が、頭の隅に残っている。 「大丈夫か?」 サウスが心配そうにこちらをのぞきこんでで言った。 レガートはうなずく。 「俺…どうして倒れてんだ…?」 「ディスプの一撃、食らったんだよ。」 とウィル。こっちもぼろぼろだ。 「って大丈夫か?二人とも!」 レガートは急いで癒しの風の呪文をつむいだ。 二人の傷が、一気にふさがる。 「んじゃ、やろうぜ!」 レガートは立ち上がった。 自分は負けられない。 自分に世界の命運はかかっている。 さっきの声は、亡き父ウィルカリアのものなのだろう。 俺は一人じゃない。 皆がいる。 「いくぜ!浄化の風ー!!」 レガートの手から、青白い光が風と混ざってほとばしる。 サウスも火炎柱を勢い良く打ち上げた。 ウィルはアイアンテールで、悪魔の攻撃を防ぐ。 ノースがさらに、氷柱をぶつけた。 「サウス!そういえばレックウザは…。」 そういえば、レックウザがレガートがピンチに陥っていたというのに現れない。 「クレイが止めている!」 クレイ…ってあの有名な鋼の化身を従えるあの鋼王クレイ!? 『くっ…レックウザをとめられたか…ならばせめてお前を食らってやろう!』 ディスプの拳が落ちてきた。 レガートはそれを紙一重で交わす。 「俺たちが、世界を守る!」 |
風のグラエナ | #32☆2005.01/01(土)10:32 |
---|
第三十二話 「レックウザ様。心をお鎮めください!今風之四天王のもとへ行けば、 世界が危ないです!」 『私は空之君主だ!たかが力を失った悪魔など恐るるにたらぬ!』 「しかし、ディスプは…あの闇の世界ではディスプの力があなたに 勝ります!危険です!」 クレイは必死に訴えた。 しかし、レックウザは納得してくれない。 「ラーディン、サーディン、カーディン。鋼の守りを。」 『御意。』 レジアイス、レジロック、レジスチルがそれぞれ鋼の力でレックウザの 行く手を阻む。 『邪魔をするのか!』 「レックウザ様。あなたは風之四天王を信用していらっしゃらないのですか。 あれは新米ですが…それでもウィルカリアが残した子。仲間もいます。 十分戦えるはずです…。」 『む…。』 レックウザがやっと心を静めた。 ちょっと熱くなりすぎていたようだ。 『分かった…任せよう…四天王たちに…。』 「というかこの闇どこまで続くわけ!?マジうざったいわー!」 リゼッタが叫ぶ。 しかし、それは響くことはなかった。 すぅっとおくの闇に吸い込まれるように。 「お兄様にはいつ会えるのかしらぶつぶつ…。」 「別の空間に取り込まれているんじゃないか?あいつの目的はレックウ ザだけだ、できれば他の余計なものは入れたくないだろう。」 とリュード。 「余計なものですって!?ゆっるせないわぁ…!」 キレたリゼッタの手に赤い光がたまる。 空間破壊魔法だ。それでレガートのもとへ行くらしい。 「ちょっと何かいやな予感がするんだけど…。」 シェルニータがつぶやいた直後。 リゼッタを中心にものすごい爆発が起きた。 |
風のグラエナ | #33☆2005.01/01(土)11:26 |
---|
第三十三話 「あーにーうーえー!」 リゼッタの声が響いたかと思うと、さらにドッゴオォン!という物凄い 音が響いた。 「リゼッタ!?」 「兄上、無事でいらして!?よかったわ!ってか誰ですの、ンな黒 ばっかしのつまらぬブラックワールドの主は!?センスに欠けてるわ!?」 怒りの接点が少しずれてる気がする…というのはおいといて。 とりあえず四天王たちも無事だったようだ。 「大丈夫か!?レガート!」 「ああ!」 「こっちは全員無事よ!敵は!?」 「あそこだ!」 レガートが指差した方向に、ディスプの姿があった。 「ああ…空之君主に封印された悪魔か…。確か空之君主自体を 取り込まない限り、封印は解けないんだったな。だからレガートを…。」 とデュッセラード。 『ほう…四天王どもが全員そろったか…。』 ディスプがふっと笑う。 しかし、その眼にはもう余裕の色は浮かんでいなかった。 『全て食らってやる!レックウザを超える力を得れば、それ自体を取り 込まなくとも我は封印を破れる!』 そういうなり、ディスプは襲い掛かってきた。 先ほどとは桁違いの強さだ。本気を出してきたらしい。 「炎よ!我が目の前に在りし存在を、その熱き魂で焼き尽くせ!」 「食らえっ!」 デュッセラードとウィングの炎が飛ぶ。 「兄上!しばらく時間稼ぎ頼むわ!私にいい考えがあるから!」 「分かった!」 レガートが答えるなりリゼッタは呪文の詠唱状態に入った。 かなり長いらしく、彼らが必死に戦っている今も、とまることがない。 「光の王よ…。」 「シェルニータ!そっち黒い玉がきてるぞー!」 「分かってるわ!」 黒い玉がシェルニータめがけて飛んでくる。 しかし、彼女はそれを雷の槍で打ち砕いた。 「風よ!我が目の前に在りし存在をその刃で切り裂くがよい!」 シュゴオォ!レガートから放たれた風の刃が、悪魔を切り刻む。 「「危ないっ!」」 サウスとノースの風が交差して、リゼッタに向けられた悪魔の拳をはじいた。 「エリーゼ!」 「分かってるわ!」 デュッセラードから放たれた水柱を、さらにエリーゼの渦潮が包む。 それがディスプにぶつかった。 『ぐっ…。』 しかし、悪魔はまだまだ倒れない。 攻撃を受けるたび周囲の無限の闇を吸収して傷を癒している。 「リゼッタ!まだなのか!?」 「…光の神よ!闇と戦う我らの為に、光の道を、地上への道を開け!」 上の空間が不意に裂けた。 そこから生まれたあふれんばかりの光が、影の間を照らす。 「光で照らせば闇は消えるわ!」 リゼッタの勝ち誇った声が響く。 『う…ぐあぁっ!』 「おっし!とどめ、いくぜっ! 風よ、我が目の前に在りし存在をその刃で打ち砕け!」 レガートの激しい風の刃に、サウスとノースの竜巻が交じり合う。 「炎よ。我が目の前に在りし存在をその熱き魂で無へと還せ!」 「うおっしゃー!」 ウィングとデュッセラードの炎が交じり合う。 「雷よ。我が目の前に在りし存在をその光の刃で引き裂け!」 ライトニングとシェルニータの雷が交じり合った。 「水よ。我が目の前に在りし存在をその激しき流れで押し流せ!」 エリーゼとデュッセラードの水が交じり合う。 それらは、全て集まって一つになると、光に苦しむディスプに向かった。 『うぐあぁあ!』 悪魔の声が響く。 そこへ、ウィルが渾身の力のアイアンテールを叩き込んだ。 「それぃっ!」 『ぐあぁっ!』 悪魔の断末魔の叫びが響いた。 |
風のグラエナ | #34☆2005.01/01(土)11:47 |
---|
その後の彼ら 「終わったな…。」 青く澄み切った空を見上げて、デュッセラードがつぶやいた。 傍らのエリーゼは目を細めてそれに答える。 「ええ…本当に激しい戦いでしたね。それにいろいろありましたわ…。」 「そうだな…。」 と、そこへシェルニータが現れた。 「なーに二人して黄昏てるのよ!もうすぐよ、パーティは!」 「いや、二人で冒険を振り返っていたのだが…。」 「いいから早く来る!じゃないとアンタの分のご馳走ないわよ!」 シェルニータは先に歩いていった。 デュッセラードはエリーゼを見下ろして言う。 「…俺らも、そろそろ行くか?」 「そうですわね。」 「ウィング!ライトニング!そろそろ戻って来い!そろそろパーティが始まるぞ!」 「うーい。」 リュードの掛け声に、空を舞っていたウィングとライトニングは地上へ戻ってきた。 「焼き鳥でねぇかな♪」 「バーカ、共食いする気かよ。」 そんな会話をするウィングとライトニングを見つめてふっと笑うと、リ ュードは歩き出した。 「いろいろあったわー…外の世界って広いのねー…。」 うっとりと、さっき「いいから早く来る!」と怒鳴った張本人、シェル ニータは四天王の城のバルコニーから外を眺めていた。 いつか脱走して旅に出ようかしら、どっかの元王子みたいに。 そんなことを考えて、彼女は嬉しそうに笑った。 「はぁ〜…いろいろあってマジ疲れたな〜。」 庭園のベンチで空を眺めつつ、レガートはつぶやいた。 その傍らではノースとサウス、ひざの上でウィルが体を丸めている。 「そろそろ行った方がよいのではないか?もうすぐ宴が始まるぞ。」 とノース。 「そうだな…そろそろ行くか。ウィル、おきな。」 「んーう?」 ウィルが一つ大きなあくびをして起きる。 かわいい… 外見に似合わず意外とかわいいもの好きなサウスは思った。 と。 「兄上〜!」 リゼッタの声がした。 「リゼッタ!あ、イエルニオ王!」 彼らと会うのは数週間ぶりだ。 「お久しぶりね、兄上。」 「元気でしたか、風之四天王殿。」 「うん元気元気ー。」 「やっと戦いも終わってひと段落ついたわね…。」 とリゼッタ。 「四天王殿。そろそろ戦いの勝利の宴が開かれます。急いだ方が…。」 「そうだな。」 レガートは駆け出した。 「終わったな…。」 鋼をつかさどる王・クレイは、レックウザとともに四天王の城を眺めてつぶやいた。 彼は宴には参加しない。やるべきことが山積みだからだ。 しかし、それでも、風之四天王のことが心配で、こうして様子を見に来た。 どうやら元気そうだ。よかった。 「もう、行くのか。」 レックウザが言う。 「ああ…まだやるべきことがあるからね。」 そういってクレイは風の中に消えた。 彼らはそれぞれの道を歩み始めた。 いろいろあったが、結局は全て丸く収まった。 そしてこうして今、世界は平和に包まれている。 彼らの戦いは終わった。 また何かの陰謀があれば、再び彼らは戦い始める。 そのときまで、旅の仲間は、一時解散だ。 THE END |
このページは http://www1.interq.or.jp/kokke/pokemon/commu/story/372.htm のアーカイブです。