え〜ふぃ | #1★2004.10/09(土)11:47 |
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プロローグ ここは水と緑の豊かな町「アクアタウン」。この地方は、晴れと雨が時期によって繰り返され、食べ物も豊富で、人々の暮らしも豊かな町だった。ところが最近、激しい雨が毎日のように続くようになった。この大雨が降り続いて数日、主人公「一狼(いちろう)」のもとに、1匹のポケモンがやってくる事から物語ははじまる。 第1話 朝の日差し ポケモントレーナーとして旅を続けている一狼は、旅の途中、ここアクアタウンに立ち寄った。一狼の相棒は、子どもの頃、初めて自分で捕まえて育てたチコリータの「コリン」だ。一狼たちも、ここ最近続いている大雨にあい、アクアタウンの宿屋に立ち寄ったのだった。 「ふ〜、すごい雨だったな〜、コリン。」 「こり〜」 その時、1匹のポケモンが彼らの前にやって来た。 「これは……、イーブイじゃないか。オレも初めて見るな。」 雨にぬれ、野生のポケモンに襲われたのか、ひどい怪我を負っていた。お腹もすいているのだろう、一狼の前でばったりと倒れこんでしまった。 「ほっといたら死んじまうな、とにかく中に入ろう。」 一狼はイーブイを抱えて宿屋に入った。 「ようこそ、当旅館へ。どうしたんですか、その子。ひどい怪我じゃないですか。」 「そこで倒れこんじまったんで、連れてきたんです。何か手当てするもの貸して下さい。」 一狼はすぐに宿の手配を済ませ、部屋でイーブイの手当てをしてあげた。 「しかし、どうしたんだろうな、このイーブイ。こんなひどい怪我をして。」 コリンも心配そうにイーブイを見つめていた。 「とにかく手当ては終わったし、コリン、疲れたろ。今日はもう休もう。」 コリンはうなずいて、イーブイのそばで眠った。イーブイも、もう眠ってしまったようだ。そしてしばらくして、一狼も睡眠をとった。 次の日。この日は数日振りに快晴となった。 「ん?もう朝か。」 「こり〜〜ん」 「おはよう、コリン」 イーブイはまだ眠っている。よほど疲れていたのだろう。 「こいつが目を覚ましたら、ポケモンセンターでちゃんと診てもらった方がいいな。ちょっとおかみさんに場所聞いて来るよ。」 その時、イーブイが目を覚ました。そして、一狼の方をじーっと見つめた。 「き、気がついたか?オレは一狼。で、こっちは相棒のコリンだ。」 「ちこり〜」 二人が自己紹介すると、イーブイは元気を取り戻したかのように、にっこり笑った。 「今からポケモンセンターに連れてってやるからな。そこで診てもらえばすぐによくなるよ。」 一狼はイーブイを抱きかかえ、ポケモンセンターに向かった。イーブイも一狼が気に入ったのか嬉しそうな表情だった。 「いい天気だな〜、コリン。」 コリンも太陽の光が大好きである。嬉しそうにはしゃいでいた。イーブイも、眩しそうに太陽の方に顔を向けた。その時だった。イーブイの体が少しずつひかりはじめた。 「な、何だ?」 一狼は思わず地面にイーブイを置いた。イーブイはやがて眩しくひかりだし、少しずつ姿を変えていった。そして、やがて光が消え、別の姿となったポケモンがそこにいた。 「イーブイが、エーフィに進化した……。」 一狼はぼーぜんとしていた。イーブイがエーフィに進化するのは、イーブイがトレーナーを認めた証。さらに、あのひどかった怪我もすっかりよくなっている。エーフィのわざ「あさのひざし」の効果であった。 「ふい〜」 「お前、オレと一緒に行きたいのか?」 「ふい」 エーフィは首を縦に振った。 「そうか、よろしくな、エーフィ。」 「こり〜ん」 コリンも嬉しそうだ。 エーフィを仲間に加え、アクアタウンをあとにする一狼とコリン。この1人と2匹には、これから小さな、しかし壮絶な運命が待ち構えている。 続く |
え〜ふぃ | #2★2004.10/09(土)11:49 |
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あらすじ オレは名は一狼(いちろう)。ポケモントレーナーとして修行の旅をしてるんだ。今はここ、キューシュー地方のアクアタウンにいる。そこで重傷を負った一匹のイーブイと出会い、手当してあげたら次の日、エーフィに進化してしまったんだ。エーフィはオレと一緒に旅をしたいといってくれた。相棒のコリン(チコリータ)も嬉しそうだ。これからよろしくな、エーフィ! 第2話 海の化身の伝説 一狼と相棒のコリン、そして新たに仲間として加わったエーフィのイブ(出会った時のイーブイからつけた名前)は、アクアタウンをあとにし、次の町に向かうべく定期船に乗り込んでいた。次の町まで数時間ある。一行はしばしの船旅を楽しんでいた。天気もきわめて快晴である。 「んー、いい天気だなあー。」 太陽の日差しが大好きなコリンとイブも、気持ちよさそうに船のかんばんで日向ぼっこをしている。2匹とも、もうすっかり仲良しになったようだ。 船が出てから数十分後、日向ぼっこをしていたイブが急に一狼のもとに来た。 「ふい〜、ふぃ〜。」 「ん、どうした?イブ。」 一狼はイブが何か話しかけているように思えたが、よく分からなかった。それからすぐに、急に雲行きがあやしくなってきた。そして急に、どしゃぶりの大雨になってしまった。一狼たちは、大慌てで船内に駆け込んだ。 「ふ〜、まいったな。いきなりだもんな〜。」 「ふぃ〜。」 「……、そうか、イブはこれから雨になる事を教えてくれようとしてたんだな。」 イブはうなづいた。エーフィには、大気の流れを感じ取り、天気を当てる能力がある。 「ごめんな、気づいてやれなくて。」 そう言うと、一狼は、コリンとイブのびしょぬれの体をふいてあげた。その時、船内のTVにはこんなニュースが。 「先程からキューシュー地方全域に、原因不明の雨雲が異常発生し、各地で大雨が予想されます。十分な警戒が必要です。」 「雨雲の異常発生か……、妙だな。」 そこに1人の老人が一狼たちのもとにやってきた。 「君、大丈夫だったかね。」 「え?ええ、大丈夫です。ちょっと濡れてしまいましたけど。」 「ならワシの部屋であったまっていかんか。君はみたところトレーナーじゃろ?ワシも退屈しとったんじゃ。」 一狼は老人の船室におじゃまする事にした。老人の話によると、ハギという名で、昔はポケモントレーナーとして、旅をしていたらしい。遠く離れた地、ホウエンというところには、兄弟がいるらしい。そして、昔このあたりの海で見たという”海の化身”の話も……。 「海の化身……、ですか?」 「うむ、このあたりの海には、海の化身と呼ばれる伝説のポケモンが数十年に一度、姿を現すという伝説があるんじゃ。」 一狼は興味津々だった。さらに、ハギ老人の話は続く。 「実はワシも若い頃、一度だけそいつを見た事があるんじゃ。」 「ええっ!」 一狼は思わず声をあげた。そばでハギ老人のキャモメの”おすぎ”と一緒に遊んでいたコリンたちも、一狼に驚いたようだ。 「ちょうど今くらいの時期じゃった。あの時は急に大雨が降り出したり、今もあの時と同じ現象がキューシュー地方に起こっておる。」 「おじいさん、どういう事なんですか?」 「伝説によるとそのポケモンは、水を司る力を持っているらしい。おそらく、今回もそのポケモンの影響じゃろう。」 「じゃあ、そのポケモンが今、雨を降らせていると?」 「おそらくは……。」 「でも、なぜ今に?」 「それはワシにも分からん。」 「そのポケモンには具体的にどの辺りで出会ったんですか?何か覚えてませんか?」 「君はこれから、どこに向かうんじゃ?」 「キューシュー地方のコバルトアイランドです。」 「コバルトアイランドか、あそこも水に囲まれた美しい島じゃ。ワシもその島の海辺で偶然、あのポケモンを見た。」 「そうですか。それならオレ、行ってみます。何か分かるかもしれないし。」 (船内放送)「コバルトアイランドに到着しました。お客様、お荷物等、お忘れ物のないよう、長旅、お疲れ様でした。」 船はコバルトアイランドに着いたようだ。 「おじいさん、ありがとうございました。」 「一狼くん、餞別じゃ。」 そう言うと、ハギは一狼に小さな袋を渡した。何か玉のような物が入っているようだ。 「もし、この先君たちの力ではどうにもならなくなった時、その袋を開けてみなさい。きっと役に立つじゃろう。」 「ありがとうございます。」 「うむ、気をつけてな。」 袋を受け取り、ハギとおすぎに別れを告げ、コバルトアイランドに到着した一狼たち。 「ここが、コバルトアイランドか。」 伝説の海の化身が現れるというコバルトアイランドに着いた一狼たち。しかし、伝説の海の化身を巡って、さらに海の化身との壮絶なバトルが待っているなどとは、この時彼らは知る由もなかった。 続く 特集 ☆一狼の手持ちポケモン紹介☆ ○コリン(チコリータ)…レベル35。くさタイプ。無邪気で活発な性格。日向ぼっこが大好きで、頭の葉っぱは、とてもいいにおいがする。一狼がはじめて捕まえたポケモン。得意技は、葉っぱを使って攻撃する「はっぱカッター」、太陽の光をエネルギーに変えて放つ「ソーラービーム」、太陽の光を吸収して傷を癒す「こうごうせい」など。「ソーラービーム」や「こうごうせい」の効力は、太陽の光の強さに比例して、効力も大きくなる。一狼にとって、コリンは厚い信頼関係で結ばれた、最も大切な相棒。 ○イブ(エーフィ)…レベル30。エスパータイプ。普段はおとなしいが、人なつっこいところもある。アクアタウンで怪我をしているところを、一狼が見つけて保護、翌日エーフィに進化した。知能が高く、大気の流れを読み取り、天気や相手の動きなどを予知する力を持つ。得意技は強力な念力を敵に放つ「サイコキネシス」、太陽の日差しを自らのエネルギーに変換する「あさのひざし」など。「こうごうせい」と同様、「あさのひざし」は日差しの強さに比例して治癒能力も大きくなる。 |
え〜ふぃ | #3☆2004.10/15(金)01:54 |
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あらすじ よう、一狼だ。オレたちはキューシュー地方、コバルトアイランドに到着した。ここには、海の化身が住むという伝説がある。船で知り合ったハギ老人によると、この異常な雨も、そいつが原因らしい。オレたちは、そいつを確かめるため、島の海岸を探索しているんだ。 第3話 海の化身を賭けた勝負 この異常な雨は、なおも続いている。 ハギ老人によれば、ここ、コバルトアイランドの海辺にて、伝説の海の化身がいるという。 しかし、一狼たちは手掛かり一つ見つけられずにいた。 「う〜ん、特に変わった所はない、普通の海岸だなあ。」 一狼たちは、一度島の町に立ち寄るため、引き返す事にした。 来た道をそのまま引き返していると、さっきはいなかった1人の青年が立っていた。何かを探しているようだった。 「あのー、何か探し物ですか?」 一狼がそうたずねると、青年は一狼の方をにらみつけるように振り向いた。 「小僧には関係ない事さ。」 一狼は少しムッとした表情になったが、もう相手にするまいとそのまま歩き出そうとした。 しかし、今度は青年の方から話かけてきた。 「もしかして、お前も探しているのか?」 一狼は青年の方を振り向き、 「何をですか?」 と、少し不機嫌そうに返事を返した? 「カイオーガをさ。」 「カイオーガ?」 「昔、オレの祖父がこの海で見たという、伝説の海の化身……、オレはそいつを探している。」 「なら、オレの探しているものも、そいつかも知れない。」 「何?お前、誰からその事を聞いた?」 青年は驚いたような表情でたずねた。 「さっき知り合った、ハギっていうおじいさんからだ。」 「お前、オレのじじいと会ったのか?」 「じゃあ、あんたはおじいさんの……。」 「…孫さ。」 「あんたが、あのハギさんの孫……?」 お互い少し驚いていた。 「でも、この雨だ。手掛かりも見つからないし、とりあえずオレは町に行くよ。」 一狼はそういうと、青年が呼び止めた。 「お前、本気でカイオーガを探しているのか?」 「……どういう事だ?」 「お前は、カイオーガの事をどれだけ知っているのかと聞いてるんだ。」 「何って、……昔あんたのじいさんが偶然ここで見かけたって事ぐらいしか……。」 それを聞くと、青年は、 「アハハハ、そんな事でやつと戦うつもりだったのか?」 「別に戦うつもりはないさ。ちょっと見てみたいだけだよ。」 「フン、とにかく、お前もカイオーガを探している以上、オレにとってはジャマになりそうだな。もっとも、お前はたいしたやつじゃあなさそうだがな。」 「何だと?」 「オレは昔の文献で、すでにカイオーガの事は知りつくしている。お前じゃあ、やつは倒せない。」 「だから、オレは……そのカイオーガってのと戦う気はないって……」 「信用できんな。やつと戦わないのなら、なんでここにいる必要がある。」 これ以上の話合いは無駄なようだ。一狼は、青年とのバトルを受けて立つ事にした。 「分かった。受けて立つよ。」 「そうこなくっちゃあな。勝った方が、カイオーガをゲットできるってのはどうだ?」 「……いいだろう。」 一狼にとって、本当はカイオーガの捕獲など、興味はなかった。ただ、この異常ともいえる大雨の原因を突き止めたいだけだったのだから。 しかし、もうあの青年は、自分とバトルしない限り、先に通してはくれないだろう。 だから、一狼はあえてバトルを受けて立った。 「オレのポケモンは、コリン、イブ!頼むぜ!」 一狼はコリンとイブを出した。 「なら、オレのポケモンはライボルト!」 青年はライボルトを繰り出した。 「オレのポケモンはこいつ一体で十分だ。お前のその貧弱そうな2匹を倒すのにはなあ。」 「何?」 コリンとイブも構える。 「よし、こっちから行くぞ!コリン、はっぱカッター!」 「こり〜ん!」 はっぱカッターを繰り出すコリン。しかし、ライボルトはいとも簡単に回避した。 「ライボルト、かげぶんしんだ!」 ライボルトは、目にも止まらぬ早さで自らの分身を作っていく! 「く、一度にこれだけの分身を作り出せるのか!?」 これでは、どれが本体なのか分からない。 「イブ、めいそうするんだ。コリンはイブのそばで援護だ。」 イブは眼を閉じ、精神を集中させた。これだけ無数の分身から本体を探すには、イブの気流(空気の流れ)を読み取る能力が頼りである。しかし、激しい雨で気流が乱れているため、かなり本体を探すのは難しい。 「頼むぞ、イブ……。」 一狼は冷静だった。トレーナーのあせりは、それがポケモンたちにも伝わり、敗北を意味する。 「ライボルト、かみなりだ」 「来るぞ、コリン!」 その時、イブの真上からかみなりが落ちてきた。 「上か!コリン、ひかりのかべだ!」 コリンは「ひかりのかべ」を張り、イブを守った。 「フ……、わざがかみなりなら、攻撃の方向は上からしかないからな。」 「なるほど、少しは冷静じゃないか。だが、いつまで持つかな?ライボルト!」 青年の呼びかけで、ライボルトの分身がさらに増えた。 「く…、また増えやがった。」 「次ははずさねえぜ。」 無数のライボルトがコリンたちに近づいてくる。 いや、すでに囲まれてしまった。 「行くぜ、スパークだ。」 スパークは、でんきを身にまとい、体当たりするわざ。 しかも、激しい雨で伝導率が高く、まともに受ければ一撃でやられてしまう。 しかし、その時イブの眼が開いた! 「ふいー!」 イブが本体の位置に「サイケこうせん」を放った。 しかし、ライボルトが強力な電気に覆われていて、効果が薄い。 「よし、位置が分かればこっちのモンさ。コリン!」 コリンも同時にライボルトを攻撃した! 2匹の攻撃には、さすがに耐えられなかったようだ。 ライボルトはかなりのダメージを受け、大きく吹っ飛ばされてしまった。 「……、やるな、いかに2匹がかりとはいえ、オレのライボルトにここまでやるとは、ライボルト、戻れ。」 青年はライボルトをモンスターボールに戻した。 「少々、お前たちをみくびっていたようだ、ならば今度はオレも本気でいかせてもらう。いけ、ヘルガー!」 青年はヘルガーを繰り出した。 「ヘルガー、にほんばれだ。」 ヘルガーは青年の指示で雄叫びをあげた。 すると、しだいに天気が変化していく! 「こ、これは?」 「にほんばれ……、わざかな時間、このわざを使ったポケモンの周囲の天気を晴天にする事ができる、さらにほのおタイプのわざの効果も倍増するのさ。」 「しまった!」 ヘルガーはあく・ほのおタイプ。とても一狼のポケモンたちでは歯が立たない。 「いくぜ、オレは必ずカイオーガをゲットする!ヘルガー、かえんほうしゃ!」 強力な「かえんほうしゃ」だ。まともに喰らえばやられてしまう。 「くっ、コリン、ソーラービームだ!」 「ソーラービーム」で迎え撃つコリン。しかし、ヘルガーの攻撃の方がやはり強い。いかに、「ソーラービーム」の力が100パーセント出せるこの状況でも、やはりほのおとは相性が悪いようだ。 「く…、頑張れ、コリン!」 だが、少しずつ押されていく……。このままでは、もう後がない。 「ははは、勝つのはオレさ。」 「さあ、どうかな?」 「フン、負け惜しみか?この状況で、お前が勝つのは不可能さ。」 「こいつを見ろよ。」 イブは、コリンの攻撃時と同時にすでにめいそうを続けていた。めいそうは、自身の念力を高める効果もある。 「貴様、そのエーフィのめいそうの時間かせぎをしていたのか?」 「それだけじゃないさ、イブ、てだすけだ!」 「ふいー!」 イブは自分の高められた念力をコリンに送り、コリンの「ソーラービーム」の威力をさらに上げた! 「よし、いけるぞ、コリン!」 「こりー!」 ついに、コリンの攻撃がヘルガーの「かえんほうしゃ」の威力を上回った。そして、ヘルガーはまともに、コリンたちの「ソーラービーム」を受けた。ヘルガーは大ダメージを受けた。 「そんな、オレがお前のようなやつに……。」 「よっし、よくやってくれたぞ、コリン、イブ。」 「こり〜ん♪」 「ふい〜♪」 一狼は2匹の頭をなでてあげると、ボールに戻し、立ち去ろうとした。 「待て、カイオーガを探しには行かんのか?」 青年は呼び止めた。 「さっきも言ったろ、オレはカイオーガを捕まえるつもりはないって。」 「……お前、名前は?」 「オレは一狼だ。」 「そうか、いい名だ……、オレはリュウジだ。」 「リュウジ……。」 「カイオーガはお前に譲ってやるよ、お前に勝てないんじゃ、オレにはやつに勝てっこないって事だしな。」 「…いや、あんたも強かったぜ、正直、最初から2匹を一度に出されていたら、オレは……」 「フ……、だが負けは負けだ。いい勝負だったぜ、一狼。」 「ああ。」 「じゃあな。」 リュウジは一狼が来た方向と別方向に去っていった。そして、一狼は町の方へ。 「カイオーガか……、一体どんなやつなんだ?」 すでにリュウジのヘルガーの「にほんばれ」の効果は消え、再び大雨が降り出していた。 ついに明らかとなった、海の化身「カイオーガ」の存在。 一狼たちとカイオーガの戦いは、もうそう遠くないようだ。 続く 特集 ☆リュウジの手持ちポケモン紹介☆ ○ライボルト…レベル35。強力な電気わざを得意とするポケモン。「かげぶんしん」で相手を惑わせ、強力な電撃で攻撃する戦法が得意。 ○ヘルガー…レベル40。強力なほのおわざで相手を圧倒する。わざ「にほんばれ」は雨を降らす能力を持つカイオーガに対し、リュウジが習得させていたわざである。 リュウジはカイオーガがみずタイプである事を知り、この2匹でカイオーガとバトルするつもりだった。 ☆主人公紹介☆ 一狼(16歳) 出身はジョウト地方の小さな田舎町。 小さい頃、チコリータを初めて捕まえて以来、ポケモントレーナーを目指すようになり、10歳で、故郷を離れ、旅立つ。 性格は、基本的に穏やかだが、戦闘時には冷静な判断でコリンたちと戦う。 彼の情緒は不安定であり、つまり喜怒哀楽が極端に激しい。 好きな事は、旅をする事。 ポケモンバトルは、自分から挑む事はしない方。 |
え〜ふぃ | #4☆2004.11/02(火)15:07 |
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あらすじ コバルトアイランドに到着したオレたちは、凄腕のトレーナー、リュウジと出会った。 厳しい勝負だったが、オレはなんとか勝つ事が出来た。 しかし、気になるのは、カイオーガの存在。 一体、どんなポケモンなんだ? 第4話 カイオーガの怒り 一狼とリュウジの勝負からまる1日。 一狼たちは、昨日リュウジとの勝負をした場所を、もう一度訪れていた。 しかし、カイオーガの手掛かりは一切見つからない。 ちょどその頃、アイランドのとある家にハギ老人は住んでいた。 そこに、 「ただいま、じいさん。」 リュウジが戻ってきたようだ。 「おお、リュウジか、今までどこに?」 「ちょっとバトルを一丁な。負けちまって、少し特訓してたのさ。」 ハギは少し驚いた。 「お前ほどの者を負かすとは……、一体誰に?」 「一狼っていうヤツさ。すでにあんたとは知り合いらしいな。」 ハギはさらに驚いた。 「まさか、あの子が……。」 「ああ、なかなか見所のあるヤツだったな。」 「お前を負かすほどの腕前なら、ヤツの事もなんとかしてくれるかもしれん。」 「……、カイオーガの事か?」 「うむ……。」 ここで、少し昔話をしよう。 実は昔、同じような異常気象が起こり、それの原因はカイオーガの怒りであった。 怒りの原因は、人々が海を汚し続けた事への報復。 その怒りを静めたのが、ハギその人であった。 これは、孫のリュウジですら知らぬ事であった。 「だが、ヤツ(カイオーガ)の強さもハンパじゃねえ事は、オレだって分かってるつもりだ。一狼一人に任せてもいいのか?」 「彼にはいざという時のために、いい物を渡してある。」 「いい物だと?」 「彼ならきっとなんとかしてくれるじゃろ。あの子は、昔のワシにそっくりじゃからのう。」 一方、こちらは一狼たち。 「何の手掛かりもないな。今日はこれで引き上げるか。」 今日も相変わらずの大雨である。 しかも、空には雷も走っている。 普通なら、外には出るのは危険なくらいだが、一狼たちには関係ないようだ。 この一人と2匹は、根っからの冒険好きのようである。 仕方なく引き返していると、コリンが何か見つけたようだ。 「こり〜。」 「ん?どうした?」 コリンに案内され、ついていくと、深そうな洞窟があった。 「こんなところに洞窟があったのか。入ってみるか。」 洞窟に入っていく一行。 しかし、野生のポケモンが全く姿を現さない。 こういう洞窟なら、ズバットやヤミラミの1匹くらいは出てくるものだが……。 洞窟は、道が下り気味になっていて、地下に通じているらしい。 しばらくいくと、大きな地底湖があって、そので行き止まりだった。 「ここにも何もなかったか。……、仕方ない、戻ろう。」 その時、急に洞窟全体が揺れだした。 「こり〜?」 「ふい〜?」 「なんだ?地震か?」 すると、湖の中から巨大な姿をしたポケモンが現れた。 全身が青くて、姿形も今まで見た事のないポケモンであった。 「まさか……、こいつがそうなのか?」 その青いポケモンは大きく雄たけびをあげ、再び湖の中に姿を消した。 揺れはさっきより大きくなってきている。 「コリン、イブ。ここはボールの中に戻れ。」 一狼は2匹をボールに戻し、急いで洞窟を脱出した。 「ふう〜、あれがカイオーガか。」 ふと、海の方を見ると、すでにカイオーガが海上に姿を現していた。 「この雨の原因は、あいつだとじいさんが言ってたっけ。でも、何故なんだ?」 カイオーガは、巨大な津波を起こし、アイランド周辺の島を襲い始めた。 「マズイぞ。このままじゃ、その内この島も狙われちまう!」 一狼は海岸に走った。 そして2匹のポケモンを出し、こう呼びかけた。 「やめろ!人が住んでるんだぞ!」 カイオーガはこちらに振り向き、雄たけびをあげながら津波を起こしてきた。 「ヤバいッ、逃げるぞ!」 一行は津波の届かない崖に登って逃げた。 しかし、さっきまで砂浜だった海岸が、水に侵食され、すっかり海になってしまっている。 「なんて事だ。こいつがその気になったら、この島、いや世界中の陸がみんな海になりかねない……。」 カイオーガは一狼たちのすぐ側までやってきた。 「こうなったら戦うしかない。コリン、イブ、準備はいいか?」 「こりん!」 「ふい!」 「よーし、来い!カイオーガ!」 ついに姿を現した伝説の海の化身。 一狼たちに勝機はあるのか? 続く 特集 ☆キューシュー地方のバトルルール☆ トレーナーは一度に2体までのポケモンを出せる。 1体でも構わない。 先に相手の手持ち全てを戦闘不能にした者が勝者となる。 ただし、お互いに手持ちポケモンの数は同じでなければならない。 |
え〜ふぃ | #5☆2004.11/02(火)16:20 |
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あらすじ ついに姿を現した、伝説の海の化身・カイオーガ。 だが、カイオーガは次々に周辺の島を襲いだしたんだ。 このままでは、世界中が海にもされかねない。 コリン、イブ、ヤツをオレと一緒に止めようぜ! 最終回 光と水の完結 ついにその姿を現したカイオーガ。 しかし、一狼たちはひるまない。 「よし、先手必勝だ。コリン、はっぱカッター!イブはサイコキネシスだ!」 2匹は同時に攻撃を放った。 しかし、2匹の攻撃が命中する瞬間巨大な水の壁がカイオーガを包み込み、ガードしてしまった。 「ちっ、水を自在に操るのが、ヤツの能力か。こいつは手強いな。」 カイオーガの攻撃。周囲に水を集め、一気に気化させて放出してきた。 「来るぞ、あれはれいとうビームか?」 一狼と読み通り、「れいとうビーム」が発射された。 巨大なビームが2匹に襲い掛かる! 「1人では無理だ。コリン、イブ2人でひかりのかべを張るんだ。」 2匹は同時に「ひかりのかべ」を張った。 しかし、「れいとうビーム」の威力は予想以上に大きい。 あっという間に、2匹で合わせた「ひかりのかべ」が破壊され、2匹に直撃した。 特にこおりわざが苦手なコリンには、「ひかりのかべ」2匹分でダメージが軽減されたとはいえ、それでもかなり効いているようだ。 「大丈夫か?コリン、イブ。」 2匹とも、まだまだやれそうだ。 しかし、この雨の状況で戦うのは、2匹にとって、あまりに悪条件だった。 この状況では、「ソーラービーム」も回復もロクに行えない。 どうすればいいのか? しかし、カイオーガには容赦の気持ちはないようだ、今度は、先程とは別の、今度は液体状態で水を放出する「ハイドロポンプ」を放ってきた。 「くっ、イブ、コリンをひかりのかべでガードするんだ!(コリンは強がってはいるが、あんな「れいとうビーム」を受けて平気なハズがねえ……。イブ、なんとか頼むぜ……。)」 しかし、「ハイドロポンプ」の威力も、先程の「れいとうビーム」と同等の破壊力があるようだ。 イブ1人ではとても持ちこたえられない。 すぐに壁が破壊され、イブも大ダメージを受けた。 「イブ!大丈夫か!」 イブもさすがにこたえたようだ。 もう、立っているのがやっとの状態である。 そして、コリンもまた「ハイドロポンプ」を受けて、瀕死の状態に。 (もう2匹とも限界だ……。ここは一端引くしかねえのか……。) 「仕方ない、コリン、イブ。ボールに戻れ!一端逃げるぞ!」 しかし、ボールに戻そうとした瞬間、またも「れいとうビーム」が放たれた。 今度受けたら、さすがに2匹とも死んでしまう。 「ちくしょうっ!」 一狼は2匹の前に駆け寄ってかばい、自ら「れいとうビーム」を受けた。 すると、一狼の体が胴から下が全て凍りづけになってしまった。 「くっ、2人とも、今までこんな攻撃を受けてたのか……。ここはオレの事はいいから、早く逃げろ!」 しかし、2匹とも躊躇(ちゅうちょ)した。 「早くいけ!殺されるぞ!オレも必ず後で戻る!」 しかし、2匹とも逃げなかった。 それどころか、一狼の前に立って、逆に守ろうとしている。 すでに立っているのがやっとの状態のハズなのに……。 「お前ら……、なんで?」 2匹は一狼の方を振り向き、体力が限界のハズなのに笑った。 「コリン、イブ……、オレにまだ諦めるなと言ってるのか?」 カイオーガはさらに攻撃を続ける。 2匹は「ひかりのかべ」を同時に張り、一狼をかばった。 「……、すまねえ、2人とも。」 しかし、やはり体力の限界か、簡単に壁は破壊され、2匹とも吹き飛ばされてしまった。 もう、2匹とも動けないようだ。 「すまねえ、コリン、イブ。」 しかし、ふと思いついたハギ老人の言葉。 (もし、この先君たちの力ではどうにもならなくなった時、その袋を開けてみなさい。きっと役に立つじゃろう。) 一狼は、懐からハギから受け取った袋を取り出し、中身を取り出した。 「これは……。そうか!」 それは「マスターボール」だった。 かつて、ハギ老人も「マスターボール」でカイオーガを捕獲し、再び海に返していた。 しかし、怒りを静めるのには長い時間がかかったわけだが……。 「カイオーガ、これが何なのか分かるか?」 ボールを見せた時、カイオーガも昔を思い出したのか、少しひるんだような表情を見せた。 もっとも、これは一狼は知る由もない事だが。 「こいつはマスターボール。いくらお前でも、こいつなら確実に捕獲できるぜ。」 一狼がこういうと、カイオーガの動きが止まった。 やはり、動揺しているようだ。 (この隙に逃げ出したいが、オレの体がこんなんじゃ、やはり無理か……。体さえ動けば……。) その時、イブが目を覚ました。 そして、よろよろと一狼の方へ近づいてきた。 「……、イブ、良かった……無事だったのか。」 しかし、イブの様子がいつもと違っていた。 いつも青い目の色が、赤く光りはじめた。 「フイー!」 イブが叫び声をあげると、少しずつ天気が変化していった。 「これは……、まさかにほんばれか……?しかし、イブもにほんばれが使えたなんて……。」 そして、たちまち天気は快晴となった。 気温もどんどん上がり、まるで真夏のような暑さになり、一狼の氷もあっという間に解けた。 「まさか……、イブにこんな力があったなんて……。」 (これは、イブの潜在能力の一部が開花した瞬間である。今回では、多くは語らないが……。) 「イブ、お前……。」 しかし、イブはもう気を失ってしまったようだ。 「イブ、ありがとう。」 コリンも日差しを浴びて、すっかり体力も回復したようだ。 「コリン、無事だったか。」 「こり〜。」 「よし、今なら十分勝ち目はあるぜ。ソーラービームだ!」 「ソーラービーム」を放つコリン。 カイオーガも「ハイドロポンプ」で迎え撃つが、今ならコリンの攻撃のパワーの方が上だ。 そして、カイオーガの攻撃を突き破り、命中した。 さすがに、カイオーガにもこれにはこたえたようだ。 今ならトドメをさせる。 だが、 「もう、お前は戦える状態じゃない。イブの事もあるし、今回は引き分けって事にしねえか、カイオーガ」 カイオーガは、何も反応を示さなかった。 「お前が何故島を襲ったのかは、オレには分からん。だが、もうこんな事はやめて欲しいんだ。もしそうなったら、今度はこいつを使う事になってしまう。」 一狼はマスターボールを眺めた。 「本当は捕まえたくない。お前だって、この海でひっそりと生きていきたいだろ?」 一狼がそう言うと、カイオーガは少し和らげたような表情を見せ、海の中へと姿を消した。 「……またな、カイオーガ……。」 カイオーガに別れを告げる一狼。 そして傷ついたイブをボールに戻した。 「さあ、町に帰るか。」 「こり〜。」 「ふ、ふい〜。」 一狼は、コリンと一緒に町の方へと歩いていった。 光と水は、生きている者全てに平等に必要なもの。 カイオーガは、何故怒りをあらわにしたのか、一狼は本当は気付いていたのかもしれない。 一狼と、相棒のコリン、イブたちの旅は、果てしなく続く。 続くったら続く♪(シメが……) 第1部 完 特集 ☆カイオーガ☆ レベル70。みずタイプ。 雨を降らし、水を分子レベルで自在に操る力を持つ。 得意技は、「ハイドロポンプ」や「れいとうビーム」など。 本来おとなしいハズのカイオーガだが、これは海に対する環境破壊が、そもそもの原因というのが今回の設定。 |
え〜ふぃ | #6☆2004.11/19(金)16:05 |
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第2部 第1話 イブの過去 一狼たちとカイオーガの死闘から数ヵ月後、一狼たちは相変わらずポケモントレーナーの修行の旅を続けていた。 コリンは現在故郷のジョウト地方の実家に預け、一狼の母親と暮らしている。 久々に故郷に帰り、母親の一人暮らしを寂しく思った一狼に、コリンが自ら申し出た事であった。 今は、エーフィのイブと2人で旅を続けている。 今はジョウト地方の名もなき森の中。 薄暗くなってきたし、今日はここで野宿となりそうだ。 すっかり旅慣れた一狼たちにとって、こういう事はよくある事だった。 小さなテントをはり、焚き木を集めて食事の準備をしたり、いつもと変わらない風景だった。 「よし、もう寝るか〜。今日も一日お疲れ、イブ。」 イブの頭をなでてあげると、一狼は眠りについた。 イブもすぐ側で眠りについた。 〜イブの夢〜 「ほう、こいつが実験用のイーブイか。」 「はい、こいつの遺伝子を利用すれば、すぐにでも最強のポケモンを…」 「そいつは楽しみだな…。そうなれば、世界を我が手中におさめるのもわけもない…。」 イブは、はっと目を覚ました。 一狼はすっかり眠っている。 イブはテントから外に出て、夜空を見上げた。 空には見事な満月が見える…。 その時、近くに何かの気配を感じた。 イブは警戒した。 どこかに野生のポケモンがいるのかもしれない。 今は眠っている一狼を自分が守らねば、そうイブは思った。 しかし、ポケモンではなく、1人の人間だった。 イブはその人物を見て青ざめた。 あの夢に出てきた内の1人。 イブの知っている人物で、最も出会いたくない人間だった。 「ほう、私を覚えているのか…。いや、忘れる事など出来ぬだろうな…。」 イブは凍りついたように動けなかった。 「私が怖いか…、フ…、そうだな、無理もない。私が怖かったから逃げ出したのだろう?」 一狼は目を覚ました。 「何だ?さっきから話し声が…?」 一狼はテントの外に出た。 「…?あんたは?」 「私の名前などどうでもいい。そして、私が用があるのは、そこの実験ネズミだ。」 「な、何を言ってやがる…。イブが実験ネズミだと?」 「まあ、何も知らないのも当然か。私の研究所から逃げ出したのを、お前が見つけて連れていたというわけだったんだからな。」 一狼には何が何だか分からなかった。 ただ1つ言える事、それは目の前にいるヤツが原因で、あの日ひどいケガを負っていたであろうという事。 「そうか、あの時のケガはお前が…。」 「フン、だからどうした?ポケモンと言っても、所詮我々にとっては1つの道具に過ぎん。」 「ケッ、言ってろ。行こうぜイブ。あんなヤツの言う事なんか無視無視。もうお前はオレの相棒なんだからな。」 一狼はイブを側にに連れ、テントをしまおうとした。 「別に連れ帰るつもりはないさ。用があるのはそいつの細胞の方でね。」 「しつこいぞ。イブに指一本でも触れてみ…。」 「触れたら…、どうなるんだね?」 さっきまで側にいたイブがいない? 「な、イブはどこだ?」 「ここさ。」 すでにその男のポケモン・バンギラスとヘルガーによって捕らえられていた。 「く…、いつの間に。」 「フ…、子どもだな。わずかとはいえこの私に背中を向けたのが甘かったのだ。」 「イブを返せ。」 「ああ、返すとも。ただし…」 男がそういうと、バンギラスはイブにかみついた。 「ふいー!」 「やめろ、なんて事を!」 一狼は駆け寄った。 しかし、ヘルガーが「かえんほうしゃ」を一狼に放ってきた。 「うわああ!」 「フ、これでいい。こいつの血液1滴で十分…。」 かみつかれた傷痕(きずあと)から出た血を採取し、バンギラスは無造作にイブを一狼の方に放り投げた。 「…く、イブ!」 火傷を負った体で、なんとかイブを一狼は受け止めた。 イブの傷跡は深い。 すぐに手当てが必要だった。 「く…。」 「フ…、もう私の用は済んだ。だが、貴様とはまた会う事になるだろう。」 「何だと?」 「今はそいつの血液の採取のみが私の任務。次に会う時は、おそらく私にそのエーフィの始末の命令が下されるだろう。」 「…貴様、一体誰だ?」 「それは次に出会った時に教えてやる。だが、これからは私の組織の者が貴様やそのエーフィの命を狙ってくるだろう。それまで生きていられたらなあ。」 男はそういうと、立ち去っていった。 「く…、待ち…やがれ…。」 一狼は火傷がひどくて身動きが取れなかった。 イブの出血もひどい。 (…く…、ここでオレが気を失ったら、イブが死んじまう…。) 一狼はなんとか立ち上がろうとした。 しかし、体がいう事を聞かない。 (ち…く…しょう…。) 一狼も倒れこんでしまった。 イブも、もう意識がない…。 この2人の運命やいかに…!? |
え〜ふぃ | #7☆2004.11/28(日)19:19 |
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あらすじ オレたちとカイオーガとの死闘から数ヵ月後、コリンは実家に預け、今はエーフィのイブと2人で旅を続けていた。 けど、いきなり正体不明の男とそのポケモンに襲われたオレたちは重傷を負ってしまったんだ…。 第2話 光の泉の戦い 「ん…、どこだ…ここは?」 謎の男との戦いから数日が経過していた。一狼はここ数日、ずっと眠ってしまっていたらしい。 気がつくと、全く見知らぬところにいた。 「そうだ、イブは?」 しかし、姿がどこにも見当たらない…。 「…まさか、ヤツに連れて行かれちまったのか…。」 一狼は途方に暮れていた。 自分が油断さえしていなければ、イブも重傷を負う事もなく戦う事も逃げる事も出来たハズなのだから…。 「すまねえ…、イブ…。」 一狼がうつむいていると、誰かが側にやってきたようだ。 「この子は、あなたのポケモンでしょ?」 「え?」 そこには一人の女性がイブを抱いて立っていた。年齢は二十歳くらいだろうか。 「イブ…。無事だったのか…、良かった。でも、あなたは?」 「私はアスカ。この子とあなたの手当てをしたのも私です。」 「え…、そういえば、オレも体の痛みが消えてると思ったら…、そうだったんですか。ありがとうございました。」 「どういたしまして。」 アスカはイブを一狼に返してあげた。 イブはぐっすりと眠っている。 「今は起こさないでおこう。長旅で疲れてるでしょうし。」 「あなたたちはどこから来たの?」 一狼は、今までの旅での出来事をアスカに話してあげた。 そして、先日の事も…。 「…、そう、そんな事が…。」 「ええ、ヤツの正体は分かりません。イブが何か知ってると思うんですが…。」 「…。」 お互い、少し沈黙が続いたが、一狼がさらに話を続ける。 「そういえば、ここはどこなんですか?あの噴水のある泉は…。」 彼らのいる場所には、美しい噴水のある泉のそばだった。 そして、泉の上部には、何やら水晶玉のような物が置かれてある。 「あの泉は『光の泉』と呼ばれています。そして、あの泉のてっぺんにあるのが…。」 その時、一人の男性がやって来た。 「どうした、知り合いかい?」 「あ、シン。」 「…お知り合いですか?」 「ええ、彼は…。」 アスカによると、名前はシン。年は同い年であるという。 「そうか、一狼君か。いい名前だね。」 「こちらこそ、はじめまして。」 「でも、今日ここに来た事は、誰にも言わないでくれるかな?」 「え?」 「ここは本当は誰も入ってきてはいけない場所なの。私たち以外は。」 「ボクらはこの『光の泉』を管理している者なんだ。」 「そうですか…。事情はよく分かりませんが、ここの事は誰にも言いません。イブが目を覚ましたら、もう行かなくては…。」 「…さっきの事ね?」 「はい、またいつあいつみたいなのが来るか分かりませんし、あなた方にご迷惑をかけるワケにもいきませんので…。」 アスカはシンに一狼の事情を話した。 「そういう事だったのか。」 その時、イブが目を覚ました。 「…、イブ。起きたのか?」 「ふい〜♪」 イブもすっかり元気になったようだ。 「なら、もうオレたちは行きます。色々ありがとうございました。」 「待った、一狼君。」 シンが一狼を呼び止めた。 「コレを持っていきなさい。」 シンは泉にあったのと同じ水晶玉を渡した。 「コレって、あの泉の物と同じ物じゃ…。」 「構わないさ…。君は信用出来る子だと分かったし、きっとそれが君の力になってくれると思うよ。お守りさ。」 「…、ありがとうございます。では、お元気で…。」 二人に別れを告げ、その場から立ち去ろうとした時、近くで爆発音がした。 「何だ?」 すると、何やら怪しい集団が現れた。 「ここか…、ついに見つけたぞ、『光の泉』を。」 「何だ、あんたらは。」 「ん?お前は一狼だな?この間オレの仲間がわざわざ見逃したっていう…。」 「そうか…、お前もあいつの仲間か…。」 「オレたちのボスはそのエーフィをもう一度連れて来いと言っている…。『光の泉』を探している途中でお前らを見つけられるとはな…、オレもついてるぜ。」 「ちいっ…、二人とも逃げて下さい。こいつらはオレたちが喰い止めま…。」 振り返ると、二人がいない…。 「…、どこに行ったんだ。」 「さあ、エーフィをおとなしく渡してもらおうか。もう少しそいつが実験で必要だそうでね…。」 「誰がお前らなんかに渡すか!イブ、準備はいいか?」 「ふい!」 イブも元気を取り戻し、やる気まんまんだ。 「オレたちが勝ったら、色々話してもらうぜ。」 「オレとバトルして勝とうってか?出て来い、トドゼルガとボーマンダ!」 「トドゼルガとボーマンダか…。」 (この物語のバトルのルールは前章を参照。) 「トドゼルガ!れいとうビームだ!」 「れいとうビーム」を放つトドゼルガ。 「イブ、ひかりのかべだ!」 「ひかりのかべ」で、イブは「れいとうビーム」を防いだ。 (しかしここは洞窟の中…、空が見えなけりゃ「にほんばれ」は使えないか…、ならば!) 「イブ、ここは速攻でいくぜ!サイコキネシスだ!」 「サイコキネシス」がトドゼルガに当たった。 「ほう、そこそこ鍛えられてはいるようだな。」 当たったものの、まだトドゼルガは余力を十分残しているようだ。 「ボーマンダ!つばめがえしだ!」 ボーマンダがイブに襲いかかって来た! 「来たぞ!リフレクターで防御だ!」 「リフレクター」を張り、防御を試みたが、ボーマンダ素早い動きに間に合わない。 つばめがえしがイブに当たった。 「く…、大丈夫か?」 「ふいー!」 イブもまだまだやれそうだ。 しかし、 「トドゼルガ、なみのりだ。ボーマンダはりゅうのまい!」 トドゼルガのなみのりが襲い掛かる! 「これは避けられそうにねえ。こっちもサイコキネシスだ。」 「サイコキネシス」で水を分散させたイブ。 しかし、ボーマンダの姿がない。 「何?ボーマンダがいない?」 すると、上から急降下でイブに体当たりしてきた! さすがに避けきれない。 「ふい!」 「く…、大丈夫か?…、どういう事だ?さっきよりスピードが増している…。」 「りゅうのまいの効果さ…、一度(ひとたび)踊れば自身の闘争本能を呼び覚ます事が出来るのさ…。」 「ち…、長引くとこっちが不利だ…、イブ、ここは一気にケリをつけるぜ!ボーマンダに攻撃だ!」 しかし、ボーマンダのスピードについていけない。 そこに、トドゼルガの攻撃も来る…、1対2では明らかに不利な状況であった。 少しずつイブの体力も削られていく…。 「ははは、小僧、なす術なしか?」 「諦めるな、イブ!めいそうで集中するんだ。」 「バカめ、戦いの最中に目を閉じるなどと…。」 トドゼルガの「れいとうビーム」がイブに襲い掛かった! 「く…。」 「フ…、終わりだ!」 しかし、イブは向きを変え、何もないところに「サイケこうせん」を放った。 そこに、高速で移動中のボーマンダに命中した。 「く…、もう(空気の)流れを読みやがったか…、だがこれはかわせまい!」 「れいとうビーム」がイブに命中した! しかし、それほどのダメージには至っていない。 「よっし、よく耐えたぞ、イブ!あとはトドゼルガにトドメだ!」 「ちい、トドゼルガ!ふぶきだ!」 イブの「サイコキネシス」とトドゼルガの「ふぶき」がぶつかり合った。 しかし、攻撃のパワーはイブの方が上、「ふぶき」を突き破りトドゼルガに当たった。 「よし、いいぞ、イブ!」 「ふい〜♪」 トドゼルガ、ボーマンダ、戦闘不能。 「まさか、あんな実験用のヤツにオレのポケモンが2体とも…。」 「さあ教えろ、イブに昔何があった!」 「ちっ、仕方ねえ。」 その時、イブが苦しみだした。 「ふ…い…い…。」 「…?どうしたイブ?」 本当に苦しそうだ。症状の検討もつかない。 「一体どうしたってんだ?しっかりしろ!」 「その症状は…、あの時と同じものか?」 「…貴様、何か知ってるのか、イブの過去に関係あるのか?」 「そのイーブイは最強のポケモンをつくり出すために、最初に実験用としてオレたちが上の連中に差し出したポケモンだ。だが、その症状は…。」 イブの目が次第に赤くなっていった。 「これは…、あの時の…。」 以前カイオーガとの死闘の際、赤い目になったイブが、その時はまだ習得していなかった「にほんばれ」を使った事があった。 それも、いつこの症状になるかも予測がつかず、危険性が高すぎると判断した組織のボスが、イーブイ(イブ)を捨てたと男は語った。 「そんな事のために、イブを利用していたのか!」 「だが、そいつがそうなっちゃあ、こっちも危ない。次に会う時は簡単にはいかんぞ。」 「待て、…、だが、今は逃がす他ねえか…。」 イブはいきなり一狼の側を離れ、睨みつけた。 「どうしたんだ、イブ。オレだ、一狼だ。」 イブは正気を失っている。 赤い目でこっちを睨んでいる。 「イブ、しっかりしろ!」 イブは一狼に向かって攻撃してきた。 「うっ、…こ、これは…?」 イブが放ったわざは、先程トドゼルガが使っていた「れいとうビーム」であった。 (エーフィが「れいとうビーム」を使う事はあり得ない…。イブの過去に何があったんだ。) イブが相手では、一狼もなす術がない…。 イブはさらに一狼を攻撃するつもりのようだ…。 どうする、一狼? 続く |
え〜ふぃ | #8★2004.11/30(火)01:44 |
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あらすじ オレたちは「光の泉」という場所で、アスカとシンという二人に助けられた。 けど、またイブを狙って別の刺客が送られてきた。 なんとか勝負に勝ったオレたちだったが、イブの様子が急変、突然オレを襲い出したんだ。 一体どうしちまったんだ、イブ!? 第3話 心の雫 「イブ、オレだ、一狼だ!」 イブは聞く耳を持たないという表情を浮かべている。 そして、再び攻撃を仕掛けて来そうだ。 「く…、イブ…。」 一狼はなす術もなく、ただイブの攻撃を耐え続けるしかない…。 その時、一狼の後方から2体のポケモンが猛スピードで飛んできた。 「?何だ?また別の敵か?」 1体は青い、もう1体は赤いポケモンだった。 今までに見た事もない種類だ。 「く…、イブがこんな状態だって時に…。」 その時、声が聞こえた。 聞き覚えのある声だった。 (案ずるな…、私たちは君たちの敵ではない…。) 「…この声…、どこかで…、…!まさか!」 赤いポケモンが一狼の側に近寄り、うなづいた。 (そう、私たちです。) 「その声は、…アスカさん?」 (これが私たちの本当の姿…、私たちは人間の姿に化ける事が出来ます。) (すまなかったな…、本当は誰にも正体を知られたくなかったんだ…、さっきは急に姿をくらましてしまったが、すまない…。) 「シンさん、アスカさん。でも、どうして…?」 (私たちは、代々この「光の泉」を守護してきました。そして、「光の泉」で起こる災いは、この世の災いを呼び起こすと言われています。) (これからは、私たちも君たちに力を貸そう。まずは、イブの事をなんとかしなくては…。) 「イブは…、助かるんですか?」 (ここは我々に任せて、君は少し離れていなさい…。) 一狼は2体のポケモンたちから距離を取った。 そして、イブも2体を睨みつけている。 青いポケモンと赤いポケモンは、泉にあった玉を念力で呼び寄せた。 「あのわざは…、あの2人もイブ同様、エスパーわざが使えるのか…。」 玉は赤いポケモンが手に取り、2体のポケモンは念力を玉に送り込んでいるようだ。 イブは、今度は2体のポケモンに攻撃を仕掛けた。 「!危ねえ!」 一狼が駆け寄ろうとしたが、急に2体の持つ玉が眩しく輝きはじめた。 イブの攻撃の波動は消滅し、イブの動きも止まった。 「な、何が起こってるんだ。」 玉はだんだん輝きを増し、あたり一面が眩い光に包まれた。 もう、光で何も見えないくらいに…。 やがて、光が少しずつおさまってきた。 「…、一体何がどうなったんだ?イブは?」 ようやく、あたりが見え始めるようになった。 だが、青いポケモンと赤いポケモンがいない。 イブはさっきいた場所に倒れている。 「イブ!」 一狼はイブのもとに駆け寄った。 体を起こして、 「イブ、しっかりしろ!」 イブは眼を開けた。 もとの、いつものイブの眼の色だった。 「イブ、オレが分かるか?」 「ふい?」 イブは特に何も反応をしなかった。 まるで、昼寝から起きた時のような表情だ。 「…イブ…、覚えてないのか?」 「ふい〜?」 「…、いや、何でもない。…行こうか?」 一狼とイブは、外に出るため歩き出した。 「でも、あの2人はどこに行ったんだ?」 (一狼…。) さっきのあの声が聞こえた。 「…!その声は…。」 イブが急に後を向き、声がする方向を一狼に示した。 「…何もないぞ?」 (私たちは、姿を隠す事も出来ます…。でも、イブには見抜かれたようですね。) (我々は、本来人間に姿を見せる事はない種族…。でも、これから君たちに危機が訪れた時は、きっと力になってみせよう…。) 「…、オレの…力に…?」 (私の名はラティオス。) (私はラティアス。) 「ラティオスと…ラティアス。」 (私たちと、あなたに授けた「心の雫」が、きっとあなたの力になってくれるでしょう。) 「心の雫…。さっきもらった玉の事か…。この玉は一体…?」 しかし、その後ラティオスたちの声が聞こえる事はなかった。 イブにも、もうその位置は分からないようである。 「ラティオスと、ラティアス…。そして、心の雫か…。」 一狼はラティアスからもらった「心の雫」を取り出し、まじまじと眺めた。 眩い輝きを放っている。 「…、行くか、イブ。」 「ふい〜。」 2人は歩き始めた。 この「心の雫」と、イブの宿命の物語は、まだ始まったばかりだ…。 続く 特集 ☆ラティアスとラティオス☆ >ラティアス ドラゴン・エスパー。 エスパーわざを得意とする。 人間に姿形を変えるほか、光の屈折を利用して姿をくらます事も出来る。 >ラティオス ドラゴン・エスパー。 人間の言葉を理解でき、自らの考えを相手にテレパシーで伝える能力を持つ。 >物語中の設定 この2体の種族は、「光の泉」を代々守護してきた。 この物語では、2体は夫婦という設定。 これからも、主人公・一狼とイブを助けるために登場します。 |
え〜ふぃ | #9★2005.01/15(土)01:14 |
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あらすじ 様子が急変したイブを助けてくれたのは、伝説のポケモン、ラティアスとラティオスだった。 彼らは、人間の姿を仮の姿として、オレたちを以前にも助けてくれていた。 そして、これからもオレたちの力になってあげると言ってくれた。 ありがとう、ラティアス・ラティオス! 第4話 休息 「光の泉」のあった洞窟、「光の洞窟」から出て、しばらく歩いたところに小さな町があったため、立ち寄った一狼とイブ。 今日はここで宿を取る事にした。 宿の手配を済ませ、部屋に入る一狼とイブ。 2人とも、もうクタクタだ。 「ふう〜、つっかれた〜。今日はもう休もう。」 旅慣れている一狼も、さすがにグロッキー状態のようだ。 イブも眠たそうな顔をしている。 「じゃ、おやすみ…。」 「ふい…。」 二人とも、しばしの休息を取った…。 「何?あのイーブイ、いやエーフィがそこにいたのか?」 「はい…。まさか、あれほどの強さだとは…。」 「…すでに目覚め始めているのかもしれんな…。ヤツの潜在能力…、そして心の雫の2つのパワーがないとアレは完成出来ん…。」 「ならば、今度はお前たち2人で、なんとしてもあのエーフィを捕獲して来い。どんな手段を使ってもだ!前にお前が採取した血液だけでは、やはり不十分だ…。なんとしても、生かしてここに連れて来い! 」 「かしこまりました…。」 翌日…。 「う〜ん…、よく寝たな〜。」 一狼は目を覚ましたが、イブはまだ眠っている。 (よほど疲れてたんだな…。コリンを実家に預けてから、ずっと2人だけで戦ってきたんだからな…。) 一狼は、イブの寝顔を見ながら、今までの事を思い出していた。 初めてイブに出会った日の事…。 カイオーガとの戦いの事…。 (今は、例の連中にイブが狙われてる…。こういう時こそ、オレがしっかりしなくちゃあな…。) 一狼はTVをつけた。 イブが起きないように、音量は小さくしていたが…。 (近頃、「ナイトメア」と名乗るポケモンを使って悪事を働く集団による被害が急増しています。…。) 「ナイトメア…、あいつらの事か…!」 TVに映っている映像に、これまで出会った2人の刺客と同じ服装が映っていた。 「間違いねえ…、ヤツらだ…。またいつここを嗅ぎ付けてくるか分からねえな…。」 その時、イブも目を覚ました。 「…、ん?起きたか?」 そういうと同時に、一狼はTVの電源を切った。 「さて、この町で準備を整えて、次の町にいくか。」 「ふい〜。」 イブも、すっかり疲れが取れた様子だ。 宿を出た2人。 町で買い物を済ませ、次の町にいくため、列車に乗った。 「ここから一番近いのは…ベージュタウンか…。」 ベージュタウン行きの列車に乗る一狼。 イブはボールの中に戻した。 結構満員に近い状況だったからである。 列車が出発して数十分後、ベージュタウンに着いた。 降りる人も結構多い。 「さて、降りるか。」 列車を降りて、再びイブをボールから出した。 イブも相当ヒマだったらしく、あくびをした。 「たいくつだったろ。お疲れさん。」 二人が辿り着いたのはベージュタウン。 ここは華やかな祭りでにぎわう町だという。 続く |
え〜ふぃ | #10★2005.01/16(日)01:36 |
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あらすじ 新たな町、ベージュタウンに辿り着いたオレ達。 とりあえず、ここで旅の支度を整えなくっちゃな…。 だが、今オレ達は「ナイトメア」とかいう連中に狙われている…。 次はいつ現れるのか、全く油断は出来ねえ…。 第5話 ベージュタウン 新たなる町、ベージュタウンに辿り着いた一狼とイブ。 町なかでは、名物の「ベージュ祭り」で賑わっている。 人もポケモンも、仲良く踊りを踊っていて、とても楽しそうだ。 踊り子と踊っているのは、キレイハナであった。 一人と一匹の息がピタリと合った、華麗な舞である。 一狼もイブも、その美しい踊りに見とれていた。 「へえ、これがベージュの踊りか…。見事なモンだ…。」 「ふい〜。」 と、いつまでも祭りを楽しんでいるわけにもいかない。 彼らには、次の目的地を決め、旅の支度を整え、ナイトメアについての情報も集めなければならない。 とりあえず町を一通り探索した後、ポケモンセンターに立ち寄った二人。 イブの疲れを取ってあげるのが先決だ。 「いらっしゃいませ。ようこそ、当ポケモンセンターへ。」 「このエーフィの回復をお願いします。」 一狼は、モンスターボールを女医さんに渡した。 が、女医さんにどこか見覚えがあった。 「…?アレ?確かさっき祭りで踊っていた…方ですか?」 「あ、私の踊りを見てくれたんですか?」 「ええ、素晴らしい踊りでした。」 「ありがとうございます。では、30分くらいしたら、またお越し下さい。」 まさか、踊り子さんが女医さんだったとは、思いもしなかった事だったので、少々驚いた。 最も、たずねられた女医さんも同様だったろうが…。 一狼は、これからの旅に必要な物資の調達に出掛けた。 割と広い町だが、必要な物が買える店は、ポケモンセンターのすぐ近くにあった。 キズぐすり等の治療薬の他に、わざを新たに覚えさせるわざマシンもこの店には揃っている。 一狼は、必要なものを片っ端から買いまくった。 「しめて、10万円になります。」 「じゃ、10万…ね。」 一狼にとって、10万円くらいは駄菓子を買うような金額である。 これまでのトレーナー戦を勝ち抜き、お金は手持ちも銀行にもいくらでも余裕があった。 「さて、そろそろ戻るか。」 店から外に出た一狼。 しかし、何か騒がしい。 よく見ると、イブを預けたポケモンセンターの方向に、煙が上がっているところがある。 「…!まさか…!」 一狼は、ポケモンセンターに急いで戻った。 「な、なんてこった…。」 センターは、何かによって破壊され、ガレキの山になっている。 「イブ!無事かー!」 一狼はイブを呼んでみた。 すると、ガレキの下から何か動くものが…。 「…?」 すると、二又の見慣れたシッポが見える。 「…イブ、そこか?」 ようやく、ガレキの中から出てこれたイブ。 「イブ、無事だったか…。」 イブは、どこもケガはしていなかった。 「そうだ…、他の人たちは…。」 その時、イブは何かの気配を感じた。 別のガレキの下に、何かいるらしい。 「イブ、ねんりきでガレキを。」 イブは頷き、「ねんりき」でガレキを持ち上げる。 「…、あんたは…女医さん。」 最初に出会った女医さんであった。 特に大したケガがなかったのは、幸運としかいえなかったが…。 「あ、ありがとうございます。さっき、エーフィを探しているとかいう二人組が急にセンターに押しかけてきて、ここにいるのは分かっている、出さないとこおを吹っ飛ばすぞ、…って。幸い、他の人達やポケモンの避難は出来たのですが…。」 「それで…、今までイブをかくまっててくれたのか…。…申し訳ない…。」 一狼は、自分の今の事情を話した。 「そうだったんですか…。でも、さすがにあなた達二人じゃ…。」 しかし、一狼は 「大丈夫。二人じゃないさ…。」 と、答えた。 「…え…。」 気がつくと、周りにはヤジウマに混じって警察も駆けつけて来た…。 「今は警察に構っている時間はねえんだ…。色々お世話になりました。…じゃあ。」 そういうと、一狼は警察から逃げるように走っていった。 イブと一緒に…。 「…。」 女医は、何も言わずに二人の後ろ姿を見ていた。 これから、苦しい戦いに身を投じようとする、二人の姿を、ただずっと…。 「ちっくしょ〜。やっぱりイブを狙ってきやがったか…。まだ近くにいるかもしれん。周囲に気を配れ。」 イブは、走りながらも、周囲の気配を感じ取っていた。 「もうこの町には用がねえ…。早いところこの町を出ないと、今度こそ犠牲者が出ちまう…。」 一狼たちは、列車に乗るため、再び駅を訪れた。 (一狼、私の声が聞こえますか…?) 「ん、その声は…。」 (そう、私たちだ。今、遠いところからテレパシーで話しかけている。) 声の主は、ラティアスとラティオスだった。 (今すぐ「星砂(せいじゃ)の砂漠」に向かいなさい…。私たちも、今から向かいます。) (分かった。でも、そこに何があるんだ?) (いけば分かる…。君たちだけでは、おそらくあの者たちには太刀打ち出来ないだろう。いいか、決して自分たちだけで無理はするな…。) (ああ、分かった。「星砂の砂漠」だな。) 「星砂の砂漠」…、「ほしのすな」が取れる事で有名な場所だが、住んでいる人はごく少ない場所だ。 しかし、ナイトメアの情報が何一つつかめない今、ラティアス達の言う通りにするしかない。 そして、いよいよ本当の戦いの時が、刻一刻と迫ってきている…。 続く |
え〜ふぃ | #11☆2005.01/15(土)15:08 |
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あらすじ ベージュタウンのポケモンセンターがナイトメアの連中に襲われたらしい…。 幸い、犠牲者は出なかったようだが、こんな事するなんて許せねえ! 今、オレ達はラティアスたちの言われた通り、「星砂の砂漠」を目指している。 そこには、一体何が? 第6話 星砂の砂漠 ベージュタウンから列車で数時間、ようやく「ほしのすな」が取れるという荒野、「星砂の砂漠」に辿り着いた一狼とイブ。 だが、ここで降りるのは彼らだけであった。 見渡す限り、ただの砂漠。 ここの砂漠には、高価な値がつけられる「ほしのすな」が取れる事で有名だが、このあたりの人口は少ない。 それでも、列車の駅があるのは、人がわずかながら住んでいて、交通に便利だからである。 ここから人の住む町へは、数十分の徒歩が必要である。 「ん?…ほしのすなか。」 早速、一狼は「ほしのすな」を見つけ、拾ってみた。 通常の砂に比べ、少し粒が大きく星型をしているので、地面をよく見れば割と簡単に見つけられる。 だが、この「ほしのすな」を誰も彼もが商売で売るのは、法律で禁止されている。 少し進むと、野生のナックラーやサボネアが、しばしば見かけられるようになった。 彼らも、この厳しい自然環境を生き抜く知恵を知っており、元気に活動している。 ちょうどその時、周りの野生ポケモン達が物陰に隠れ始めた。 そして、少し風邪が吹いてきたようだ。 「何だ?風か…。」 しかし、やがて風は段々と勢いを増していき、砂嵐となった。 「…イブ…。大丈夫か…。とりあえず、オレたちも岩陰に避難しよう。」 二人は、近くの大きな岩陰でやり過ごす事にした。 「…?」 「…、イブ、どうした?」 イブは何かの気配を感じたようだ…。 イブは、シッポで「4」の数字を書いた。 「…、気配が4つ…。野生のポケモンか…。」 気配の主は、どんどん近づいているようだ。 後から、ゆっくり迫ってきているようである。 「…、仕方ない。ここをゆっくりと移動するしかないか…。出来るだけ、息を殺して…な…。」 だが、二人が隠れていた岩が急に何かに砕かれた。 「な、危ねえ…。」 一狼は、砕け散った岩の破片から、イブをかばった。 「…、痛…、何だ…?」 そこには、バンギラスとサイドンが立っていた。 そして、その後には、 「やっと見つけたぜ。」 後の二人は、かつて一狼が戦った二人であった。 「ち、もう見つかったか…。」 「オレたちのボスは、やはりそのエーフィが必要だとおっしゃっている。大人しく渡してもらおうか。」 「何度も同じ事を言わせるなよ。このイブは絶対に渡さない。」 「なら、貴様を殺してそのエーフィは力ずくでもいただく。」 しかしこの砂嵐での戦闘、そして、1対2では明らかに不利である。 (バンギラスにサイドンか…。) 「さあ、どうした…。かかってきたまえ。」 この砂嵐で、エーフィも視界が悪い。 「イブ、にほんばれ!」 イブは「にほんばれ」を使った。 「にほんばれ」の効果で、砂嵐は吹き飛び、天気が快晴になった。 「よし、これで視界が良くなった。次にサイコキネシス。」 イブは、サイドンに「サイコキネシス」を放った。 「フ…、バンギラス、サイドンをガードしろ…。」 バンギラスはあくタイプ、エスパーわざが通じないため、イブの攻撃は全て無効になってしまった。 「ち…。これじゃ、攻撃は入らねえか…。」 これでは、イブの攻撃はほぼ封じられたも同然だった。 「バンギラス、まもる…。」 「サイドン、じしんだ。」 サイドンは、「じしん」を放った。 しかしバンギラスは、わざ「まもる」の効果でサイドンの攻撃の影響を受けない。 サイドンの「じしん」のパワーは凄まじく、かなり広範囲にわたって揺れが起こっている。 一狼たちも、とても立ってはいられない状態だった。 そして衝撃波が、地面を伝わって二人に襲い掛かってきた。 「く…、ヤバイ…、これじゃオレもイブも避けられねえ…!」 だが、急に体が浮かび上がった。 「…え?…、ラティオス!」 よく見ると、イブもラティアスがしっかりと助けている。 (遅れてすまない…。あの2体の相手は、正直君たちでは無理だろう。) (一狼、あなたたちは急いで町に向かいなさい。) 「え?どういう事だ…?」 (彼らの本拠地は、この砂漠の町のどこかにある…。我々も、そこまでしか分からないが、すでに恐ろしい計画が進みつつある。) 「恐ろしい計画…。」 (それを阻止出来るのは、あなたたちだけです。さあ、行きなさい。) (私の背中に乗れ…。…、後は頼むぞ。すぐに戻る。) (気をつけて…。) そして、イブを一狼に手渡し、ラティアスは一人、2体のポケモンの前に、ラティオスは一狼たちを乗せて飛び立った。 「…、すげえスピードだな…。」 ものすごいスピードで飛ぶラティオス。 あっという間に、町が見えてきた。 そして、「もう着いた」という前に、町に到着した。 「…、す、すげえ…。」 「ふい…。」 二人とも、驚いているようだ。 (では、私は急いで戻る。彼女一人ではあの2体の相手は骨が折れそうだ。) 「ああ、ありがとう。」 一狼が礼を言うと、ラティオスは手を差し伸べた。 「…。」 一狼も、手を差し出し、お互いに手を取り合った。 (私たちが手助け出来るのは、もうこれくらいだ…。後の事は、君たちがなんとかしなければならない。これは、君たち人間の問題なのだからな…。) 「…、ああ、色々とありがとう。ラティアスにもよろしく。」 一狼がそう言うと、ラティオスは頷き、そして引き返していった。 ものすごいスピードでたちまち姿が見えなくなった。 「さて、ここに連中の本拠地があるのか…。どこだ…?」 ここは「星砂の砂漠」の真ん中にある、名もなき町。 町と言っても、捨てられた家などが並んでいるだけで、実際に人が住んでいるのは、駅からもっと近い地点である。 確かに、ここなら見つかりにくい、悪党が本拠地を作るのに絶好の場所だろう。 そして、ナイトメアの恐ろしい計画とは、果たして…? 続く |
え〜ふぃ | #12☆2005.01/17(月)12:16 |
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あらすじ 星砂の砂漠に辿り着いたオレたちは、かつて戦ったナイトメアの二人組に出会い、襲われた。 けど、ラティアスたちが助けてくれた。 ラティオスに乗って、一気に敵の本拠地のあるという、名もなき町に着いた。 あとは、オレたちだけで、ヤツらの目的を阻止しなくては…。 第7話 明かされる計画 「星砂の砂漠」の中心の名もなき町。 ここには、古びた家が無造作に並んでいて、全くひとけがない。 人が住んでいるとは思えないような、言わば廃墟のようなところである。 イブは、一人歩き出した。 「…、どうした?イブ。」 しかし、イブは足を止めない。 一狼も、待てよと言いながらイブに付いていった。 しばらく廃墟をいくと、小さな空き地に出た。 「…ふ…い…。」 急に、イブが怯え出した。 「どうした?…、そうか、お前はここに見覚えがあるんだな…。怖いのは無理もねえ…。よっぽど酷い事をされたんだな…。」 一狼は膝を地につけ、イブをそっと抱きしめた。 「…、ゴメン。…ホントはもうここには来たくはなかったんだろ…?」 その時、急に地面が揺れ始めた。 「…!何だ?」 すると、空き地になっていた場所が見る見る地形を変えていく。 「…ここが…、ナイトメアの本拠地か…。」 「…。」 「…イブ、大丈夫か?」 「ふい!」 イブも、もう怖くないようだ。 今は、一狼という頼れるパートナーがいる。 一狼にはイブが、イブには一狼という信頼出来るパートナーがいるのだ。 二人でいれば、何も怖いものなどない。 二人とも、そういう気持ちになっていたのだろう。 中に入る二人。 しかし、警備が薄い…、いや、誰もいないようだ。 「…妙だな…。」 イブも、何の気配も感じないようだ…。 「…何か引っ掛かる…。」 こういう警備が少ないという事は、それだけ強力な守りがどこかに潜んでいるという事。 やがて、一つの大きな扉が見えてきた。 「…開けるぜ。」 イブも頷いた。 扉を、ゆっくりと開ける一狼。 しかし、扉の向こうは、眩しい光によってさえぎられていた。 「…く…、何だこの光は…!」 とても目を開けてはいられないような眩しい光。 一狼も、さすがに目をつぶり、手で防ごうとした。 やがて、気がつくと光は消えた。 「…イブ?…しまった!」 イブがいない! さっきの光は、イブをさらうための罠だったのだ。 「イブ!」 今度は扉を一気に開け、中に入った一狼。 どうやら、中は研究室のようだ。 しかし、イブの姿がない。 「イブー!」 一狼は大声で呼んでみた。 だが、どこにも見当たらない。 「君の探しているものは…、これかな…。」 一狼は、ゾクッとした。 誰の気配もなかったハズ、いや、誰も後にはいないハズであった。 「…誰だ!」 一狼が振り返った時、後には培養液につかっているイブの姿があった。 「イブ…。く…どこだ、出て来やがれ!」 すると、薄暗かった部屋全体が少しずつ明るくなってきた。 「ようこそ…、我が研究室へ…。」 そこには、椅子にすわった人物が一人。 「く、テメエか。ナイトメアのボスは。」 「いかにも。私の目的は、そこのエーフィの遺伝子から最強のポケモンを作る事。」 「何だと!?」 「一度は不必要と思ったので逃がしてしまったが、どうやら潜在パワーが解放され始めてるようなんでね…。」 「…何をわけの分からねえ事を…!」 「いや、用さえ済めば、エーフィは返してやる。ただ、君たちをここから生かしては返さぬがな…。」 「ふ…いい…。」 突然、培養液の中のイブが苦しみ出したようだ。 「イブ…!今出してやる!」 一狼は、近くの機械のスイッチをがむしゃらに押してみた。 「…どれがここから出せるスイッチなんだ?」 「無駄だよ…。もうすぐそのエーフィの遺伝情報が装置に全て遺伝される。」 「何だと!?」 彼は語った。 イブの遺伝情報を装置で読み取り、最強のポケモンを作り出す恐るべき計画について…。 「君も知っているだろう…、ミュウツーというポケモンの名前くらいは…。」 「ミュウツー…?」 ミュウツーとは、数年前カントー地方のあるトレーナーが発見したのを捕獲、現在は「希少ポケモン保護センター」に預けられている。 極めて知能とパワーが高いため、厳重に管理されていると言われるポケモンである。 「そのミュウツーを超えるポケモンを作る事が、私の真の目的…。ミュウの遺伝子はすでに所有していたが、イーブイの遺伝子と融合させる事でそれを超えるモノが出来るとコンピュータがはじき出したんでね…。」 「貴様、そんな事のためにイブを利用していたのか?」 「しかし、それだけでは足りなかった。通常のイーブイでは、優秀な遺伝情報とはなり得ない…。そこで、人工的にミュウの遺伝子を微量に注入して誕生させたのが、そこにいるエーフィだ。」 「…な、何だと?」 さすがに、一狼も驚きを隠せなかった。 幻のポケモン、ミュウの遺伝子がイブにも含まれている。 イブの未知の能力は、ミュウの「ポケモンのわざなら何でも覚える」という特性の影響。 ミュウの遺伝子の力が、通常のイーブイの遺伝によりはるかに強力で、イブの体にこれまで何度か影響してきたというわけである。 その時であった。 イブの入っていた培養液が一人でに割れた。 「な…?」 イブの目が赤い。 (あの目は…、またなのか…?) 「…、やはりまだ装置が完全ではなかったのか…。だが、完全ではないとはいえ、もうすぐ最強のポケモンが誕生する。あと数分もすれば、な。」 ボスはそう言うと、隠し扉を使って姿をくらました。 「な、待ちやが…。」 イブも、今はまだ以前のように暴走状態ではないが、危険な状態である事には違いない…。 「ち…、もうすぐバケモンのおでましか…。イブ、とりあえず戻れ。」 しかし、イブはモンスターボールを受け付けない。 「…どうしたんだ。ボールに戻せねえ…。」 もうすぐ、恐ろしい怪物が誕生してしまう…。 イブと一狼は、この先どうなるのか…。 だが、その時聞きなれない声が聞こえた。 (一…狼…。) 続く |
え〜ふぃ | #13☆2005.01/18(火)20:00 |
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あらすじ ナイトメアの本拠地に辿り着いたオレたち。 そこで、ナイトメアのボスと名乗る男が現れ、イブを捕らえ、恐ろしいポケモンを誕生の秒読みに入ってしまった。 だが、その時…。 第8話 イブの声 (一…狼…。) どこからか、声が聞こえてくる。 ラティアスたちのような、テレパシーだろうか…。 だが、彼らとは全く違う声であった。 (一狼…、私です…。) イブが、一狼の方を振り向いた。 「…まさか、オレに語りかけているのは…。」 一狼がそういうと、イブは頷いた。 (これも、私に生まれつき備えられた能力なのかもしれません…。) 「…。」 (でも、あなたは私を保護し、一緒に旅に連れてきてくれました…。) イブは、今までの旅であった事を語り始めた…。 「いや、お前がどうであろうと、オレの相棒、イブだ…。」 (…ありがとう…。) イブの目は赤い。 だが、以前のような暴走状態ではなかった。 まるで、以前とは別のポケモンのように落ち着いている。 (私は今、全ての記憶を思い出しました。この恐ろしい装置…、私の体内に埋められている装置を破壊すれば、この装置も破壊される仕組みになっています…。) イブは、そう言った。 「…どうすりゃいいんだ…。そんな事…。」 (…私が死ねば、体内の装置も破壊されるようになっています…。) そういうと、イブは「めいそう」で気を高め始めた。 「な、何を言ってるんだ。そんな事…。」 一狼は、イブの言っている事が理解出来なかった。 そして、イブは「サイコキネシス」を装置の中心部分に放った。 強力な防御装置が備えられていて、攻撃がハネ返る仕組みになっているのだ。 「…まさか…。やめろ!」 しかし、遅かった。 攻撃はハネ返り、イブに直撃した。 「イブ!」 強力な防御装置によって威力が倍化されてハネ返る仕組みになっているようだ。 これでは、装置自体を破壊する事も不可能に近かった。 「イブ、しっかりしろ…。」 攻撃を受けて吹き飛んだイブの体をゆっくりと起こす一狼。 イブには、まだ意識があった。 (…一狼…。…私が死なないと…あの装置は…。) 「言うな、何も。もういいんだ…。あの装置は、オレが何とかする。」 (無理です…。決して人間の力で壊せるものでは…。) 「そんな事、やってみなくちゃ…。」 しかし、もう時間はほとんど残されてはいなかった。 (逃げて…、もう時間が…。) 「出来るわけねえだろ!」 一狼は、そういうとイブの体を抱いた。 イブは、もう自分が死ぬ事でしか一狼を助ける事が出来ないと思っていた。 だが、それももう間に合わない…。 イブは、ゆっくりと一狼の体をすり抜けた。 「…イブ?」 イブは、一狼の方を振り向いた。 (さようなら…、一狼。) そう言うと、イブは再び「サイコキネシス」を装置に向けて放った。 攻撃はハネ返り、イブに再び命中する。 「…イブ…!」 先程より気が高まっていたため、攻撃の反射も強力となり研究室の外付近まで吹き飛んでしまった。 「イブー!」 一狼は急いで駆けつけた。 その時、装置の動きが止まった。 「…?装置が止まった…?…という事は。」 一狼は、イブの心臓の部分に手を当てた…。 …心臓の動きが止まっている。 「う…嘘だろ…?」 呼吸も止まっている…。 「そ…そんな…。」 その時、声が聞こえた。 (やはり、未完の装置では破壊されるのがオチか…。まあいい。すでにエーフィの遺伝子はこちらの手にある。もうそのエーフィにも貴様に用はない…。この基地も、あと10分で爆破する…!では、さらばだ…。) どうやら、ボスの放送の声のようだ。 「…。」 一狼は、ただイブの亡骸を見つめているだけだった。 もう、全てを失ったような感覚であった。 イブを残して、一人だけ脱出する事は出来るかもしれない。 だが、もう動く気力さえ出ては来なかった…。 「オレは、今まで何をやってきたんだ…。ただイブを…、最後には…こんな姿にしたのはオレだ…。」 一狼は、ただ目に涙を浮かべ、ひざまずいていた。 そして、爆破まであと5分…。 続く |
え〜ふぃ | #14☆2005.01/21(金)12:56 |
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あらすじ イブは自らの命と引き換えに、オレの命を救い、ナイトメアの野望を阻止してくれた…。 だが、今さらそれがオレにとって何の価値があるって言うんだ…。 イブは、もう帰ってこない…。 オレのしてきた事は…、一体何だったんだ…。 第9話 最後の戦い 爆破まで、あと5分…。 だが、もう一狼は動こうとさえしなかった。 「へ…、今からじたばたしたって、もう間に合わねえんだしな…。」 一狼は、もう何もかもがどうでもよくなっていた。 確かに、故郷に帰れば母親も、そしてコリンもいる。 しかし、目の前で相棒のイブを失った事で、完全にその事が頭から吹き飛んでいるようだった。 一狼は、イブの側で横になった。 「イブ…ゴメンな…。オレもすぐに…。」 だがその時、一狼の懐にしまっていた「心の雫」が光りだした。 「…!?」 やがて、「心の雫」は独りでに中に浮き、輝いたままイブの方に近づいている。 「…何なんだ、これは…。」 「心の雫」は、イブの体に、まるでゆっくりと一体化するように体の中に入っていった。 まるで、目を疑うような光景であった。 「これは…、一体…?」 しばらくすると、イブの体がピクリと動き始めた。 「イブ…、まさか!」 イブの心臓が動き始めている。 「イブ…、どういう事か分からんが…。」 一狼はそういうと、イブをモンスターボールに戻した。 さっきと打って変わって、目つきも鋭い。 「とにかく、ここを脱出するぜ。今度は、オレがイブを助ける番だ。」 そういうと、一狼は研究室を出て、元来た道を全速力で走った。 しかし、かなりの距離がある。 「…まだだ…。諦めねえ!」 爆破まで、もう残り1分を切っている。 それでも、一狼は走り続けた。 すると、目の前に誰かいる…。 「フ…、やはり心の雫のパワーは本当だったか…。」 「お前は…。」 そこには、ボスが立ちふさがっていた。 「どけ!てめえがこの基地ごと吹っ飛ぶのは構わねえが、オレたちはゴメンだぜ!」 「案ずるな…、爆破装置はもう解除してある。私の真の目的は、そのエーフィと心の雫を一体化させる事だったのだ。本当の装置は、別の研究室にある…。」 「何?」 そして、ボスはモンスターボールを取り出した。 「試してみようか、そのエーフィのパワーを…!」 ボスは、メタグロスを繰り出した。 「…もうてめえに、オレのイブは渡さない…。イブ、頼むぜ!」 イブは、すでに意識を取り戻していた。 (一狼…、私は…?) 「ああ、心の雫のおかげで、どうやら命拾いしたらしい…。」 「あとは、貴様のエーフィさえ奪えば、世界を支配できるポケモンをいくらでも量産出来る…!」 一狼は、拳を握り締め、 「やれるモンなら、やってみろ!」 「フ…、エーフィが私のメタグロスに勝てるかな…?」 そして、一狼のイブとボスのメタグロスの戦いが始まった。 「イブ!めいそうで気を高めておけ。」 イブは「めいそう」をした。 「メタグロス…、シャドーボール。」 メタグロスは、「シャドーボール」を繰り出した。 「イブ…。」 イブは、すでにメタグロスの「シャドーボール」を予測していた。 しかも蘇生してからは、格段にレベルが上がっている。 これも、「心の雫」の影響だろうか。 「なるほど…、さすがに一筋縄ではいかないか…。」 イブは、ミュウの遺伝子を組み込まれて誕生したポケモン。 よって、今まで見てきたわざは全て記憶している。 しかし、一狼はイブ自身がこれまでに覚えてきたわざだけを駆使して戦おうと決心していた。 それが、イブへの一狼の愛情であった。 「イブ、サイコキネシス!」 しかし、はがねとエスパータイプを兼ね備えたメタグロスには、イブの「サイコキネシス」もほとんど効果がない。 逆に、メタグロスは強力なわざでイブの弱点をついてくる。 誰が見ても、一狼たちが不利なのは明らかであった。 「どうした…。そのエーフィには、ミュウの遺伝子がある…。そいつは、このメタグロスに有効なわざも習得しているんじゃないのか…。」 「黙ってろ!オレ達は、そんな曲がったものを使わなくても、お前にくらい勝ってみせる。」 一狼はきっぱりと返答した。 「メタグロス、コメットパンチ…。」 メタグロスは、「コメットパンチ」を繰り出す。 しかし強力なわざではあるが、動きの鈍いメタグロスの攻撃は、素早いイブには当たりはしない。 攻撃の効果が薄いものの、着実に体力を削られているには実はメタグロスの方であった。 それでも、イブも少しずつスタミナが減っていく…。 体力の差では、やはり体の小さいイブが不得手である。 「フフ…、ならばこちらも本気でいかせてもらおう…。こうそくいどう…。」 「な、何?」 メタグロスは、「こうそくいどう」により、先程より素早さが増した。 「イブ、動きをよく見るんだ。」 イブの今の能力であれば、メタグロスの素早い動きを見切る事は可能である。 しかし、イブの体力も消耗しつつあった。 「イブ、あさのひざしだ!」 イブは「あさのひざし」により、体力を回復する。 これで、体力的には優位に立った。 しかし、攻撃力とスピードでは相手の方が上である。 そして、この戦いの決着の行方は…。 続く |
え〜ふぃ | #15★2005.01/21(金)13:52 |
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あらすじ 「心の雫」のおかげで、イブが蘇生した。 基地の爆破が近く、脱出を試みたが、ナイトメアのボスが立ちふさがる。 だが、これがオレたちの最後の戦いになる事は知る由もなかった…。 最終話 また会う日まで… 「こうそくいどう」によりスピードを上げたボスのメタグロス。 イブは、「あさのひざし」によって体力を回復した。 (イブ、オレにはもう、ヤツの動きは目では確認出来ない…。) (…おそらく、これが私たちの最後の戦い…。) イブが、またテレパシーで語りかけてきた。 (…え?…どういう事だ…。) 「メタグロス!」 ボスが、メタグロスに攻撃の指示をする。 イブは、空気を読み取る能力で、すでに攻撃を予測しており、難なくかわした。 「…ちいっ…。さらにこうそくいどう!」 メタグロスのスピードが、また格段に上がった。 (おそらく、心の雫が私を生き返らせてくれたのではなく、私が心の雫を呼んだのでしょう…。) (…どういう事だ。) (今ならはっきりと実感出来ます…。心の雫は、命を宿した珠…。その宿った命を、私が今借りているだけにすぎない…。) (そんな…、じゃあ、お前はもう…。) しかし、相手のメタグロスは容赦なく攻撃をしかけてくる。 いかに攻撃を見切る事に長けたイブとはいえ、さすがに体がついてこないようである。 もう、メタグロスのスピードは、イブの能力でも追いつかないほどに上がっているようだ。 なんとか身を交わそうとしたが、やはり交わしきれない…。 「フ…、ここまでスピードを上げれば、さすがにもうどうする事も出来まい…。」 攻撃を受け、大きく吹き飛ぶイブ。 一狼は、イブを受け止め、 「大丈夫か…。」 (…もうあの動きを見切るのは、私の能力でも無理なようです…。) (…ああ、…だが諦めたわけじゃねえんだろ?) イブは、一狼の手を離れて、再び「めいそう」で気を高めた。 「次で終わりだな…。」 「…まださ…。」 (イブ、最後かもしれねえってのに、すまねえ…。) (いいえ、今までお世話になったあなたのためなら…。) (イブ…、今までオレたちはずっと一緒で…楽しかったよな…。) すると、メタグロスはものすごいスピードで攻撃をしかけてくる。 (イブ…、今まで本当にありがとう…。) (私も…、今まで本当に楽しかった。) イブは、体を燃やしながらメタグロスに向かっていった。 「こ、これは…?」 「さっきは使わないと言ったが、…1回だけだ…。最初で最後の攻撃…。お前は、自分がイブにしてしまった事を後悔するんだな…。」 ボスも動揺しているようだ。 「ま、まずい!メタグロス、ここは一端引け!」 しかし、すでにイブの攻撃は…、決まっていた。 「…オーバーヒート…。このわざなら、はがねタイプのメタグロスには最もよく効くわざだ…。」 メタグロスは、一気に戦闘不能に…。 「く…、この…私が…。」 そして、イブは一狼の元に戻ってきた。 「…行こうか…。」 そして二人は、基地の外へ…。 外に出た二人。 一狼は、イブの方に目を向けた。 だが、いつもと変わらない静かな表情のイブ。 だが、もうお別れである。 (一狼、心の雫は、ラティアスたちに返さなければなりません。) (…。) そして、数日後…。 再び光の泉に訪れた二人。 イブの体内にある、心の雫…。 心の雫は、元々ここを守ってきたラティアスたちの所有すべきもの…。 やはり、返さなくてはならないものであった。 (イブ…。) 一狼は、この日の覚悟は決めてここにやってきたつもりだった。 だが、今まで苦楽を共にしてきた最も大切な仲間とここで別れなくてはならない…。 (一狼…。) (…?) ラティアスとラティオスが二人の元へやってきた。 (やはりこういう日が来るだろうと思っていた…。だが、イブは死ぬわけじゃない…、生まれ変わるんだ…。) 「生まれ…変わる…?」 (そう、イブはもう気付いているハズ…。) 「…。」 そして、泉の前に立つイブ…。 (もし、私が生まれ変わっても、また一緒に旅に連れて行ってくれますか?) イブの最後の質問だった。 「…何言ってるんだよ…、当たり前だろ…。またきっと、オレがお前を見つけてみせるさ…!」 (…良かった…。) 「だから、…またな…。」 イブは笑った。 そして、イブの体が輝きだした。 それを見つめる一狼たち。 輝きが消えると、そこには心の雫が1つ落ちているだけだった。 (イブは、今この世界のどこかで新たな生を受け、生まれたハズ…。) (一狼、悲しむ事はありません…。ここから、あなた自身のイブを探す旅が始まるのですから…。) 「ああ、分かっているさ…。」 一狼は泣かなかった。 今はここにはいなくとも、この世界のどこかでイブが生まれ、また自分の元に現れるに違いない。 一狼は確信していた。 次に彼らが出会うのは、いつの日の事であろうか…。 そして、一狼の旅は、これからも果てしなく続く…。 完 |
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