月影 | #1★2004.10/11(月)11:08 |
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暑い夏の午後のことだった。 ホウエン地方の中でも、まずまず人気な港町、カイナシティ。 このカイナシティを、なぜかありえないほどの猛暑が襲っていた。 恐らく誰かのポケモンがにほんばれでも使ったんだろうが。 やりきれない暑さに、人々は街の中を苛立ちながら進んでいった。 肩がぶつかるだけでも、熱気が溢れる。 カイナシティは人が多いため、余計に肩がぶつかりやすい。 おかげで街中の人が苛立ち、気分を悪くする羽目になっていた。 そんなに人々を困らせているトレーナーは一体誰なのか? いくらなんでも暑すぎる。 あまりの暑さに、あの元気いっぱいはずのたんぱんこぞうでさえもめまいがして、思わず地面にしゃがみこんでしまった。 「..これは大変だなぁ。」 そんな悲惨な現状を見て、一人の少女は溜息を吐いた。 まるでガラスのような銀色の髪と、灰色と紫のオッドアイを持つ少女。 一瞬みとれてしまいそうな美しい容姿だが、今はそれどころじゃない。 誰もがフラフラとしてしまう日差しの強さ。 当然少女も例外じゃない。 ちょこちょこと頼りない足取りで歩くが、ふらついた。 「あわわっ?」 少女の視界がぐらっと突然反転した。バランスがくずれる。 ---あ、地面...ぶつかるなー。こりゃ。--- 思わず衝撃に備え眼をぎゅっと硬く閉じる。が。 ポスッ 予想していた効果音とは全く違う効果音にゆっくりと眼をあける。 すると、そこにはパートナーのサーナイトの顔が見えた。 倒れそうになったところを、サーナイトが支えてくれたのだ。 「あ、ナイトか。ありがとう。」 『マスター...大丈夫ですか?怪我は?...あぁ大丈夫ですね。よかった。』 ナイト。とサーナイトの愛称を呼び微笑む少女に、 ほっと溜息を吐くサーナイトは、完璧に少女の保護者に見えた。 少女はにっこり微笑むと、サーナイトの腕から離れた。 (このサーナイトが喋っている理由は、今は伏せておきましょう。) 少女は暑そうにそのセミロングの髪を手でさらさらともてあそびはじめた。 「ナイト....さすがに夏の海の暑さは半端じゃないね。」 『...マスター、これは「異常気象」っていう問題で、海ということに関係は..』 決して咎めるような口調ではなく、穏やかな声だった。 それはこのサーナイト自身の性格が心から穏やかだからなのだろうが...。 少女は「え、そうなの?」と、髪をいじる手を止め、首をかしげた。 「異常気象ねぇ....。だから暑いの?」 『でしょうね。誰かがこの近くでにほんばれでも使ってるとか。』 「あー、にほんばれ!そりゃ暑いわ。」 誰かがにほんばれを使ったかなんて確定できないのに、 じゃぁさすがに暑いよね。なんて頷く少女は普通いないだろう。 他人よりワンテンポずれてる少女だからこそ、可愛げがあるというか....。 まぁ、そのことはいまは考えないことにしよう。 一体誰でしょうね?とつぶやくサーナイトに、少女は思いついた。 「解った!ね、ナイト、犯人捕まえようっ!」 『.....え?』 突拍子のない言葉に、思わずサーナイトは首をかしげた。 『犯人って...誰がです?』 「だからさっ、探して、見つけて、捕まえて、とめさせるのっ!」 誰が犯人かもどんな特徴があるかも分からないのに、すでに捕まえる気満々な少女に、 サーナイトは唖然。としたあと、微笑んだ。 『犯人探し..まるで探偵ですね。楽しそうです。』 「ね、ねっ?こんなに暑くちゃバトルテントに挑戦する気にもならないよっ。 だからさ、犯人捕まえて、涼しくなったら挑戦しようっ!」 ねー?と微笑む少女に、どうしてもサーナイトは弱かった。 それに、サーナイトもどっちにしろこの暑さには参っていたので、了解した。 さぁ、これから少女とサーナイトの犯人探しが始まります...。 |
月影 | #2★2004.10/11(月)11:09 |
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「Let’sGo!」-犯人探して山越えて- 「あなたーに聞きたいことがある♪今すーぐ聞きたいことがある♪」 犯人を探すと決めて、早1時間。今、二人(一人と一匹?)は、 113番道路を歩いているところだった。 少女は某CMの歌を口ずさむほど元気そうだった。 が。 あまりの暑さに少女の足取りがとてつもなく危なっかしいことに、 パートナーのサーナイトは気がつかないわけには行かなかった。 一見歌を口ずさむほど元気がありそうだが、少女はさっきから あっちにフラフラ。こっちにフラフラ。 と、パッチール顔負けのフラフラダンスを披露している。 近くに木があれば、確実にぶつかってしまっているだろう。 『マスター...僕はともかく、貴方は大丈夫ですか....?」 不安そうにたずねるサーナイトに、とてつもなく疲れた笑顔で、少女は微笑み返した。 「大丈夫だよナイト!..だーから野をこえ山越えてあなたの町にやってきた♪」 サーナイトはそう言ってワザと元気に見せるためにフレーズを口ずさんでるとしか思えなかった。 はぁ。と溜息を吐くと、少女の前に立ちふさがった。 突然の事に、少女は足と口ずさむことをとめた。 「......元気ハツラツゥ?」 『この状態で「オフコース!」なんて言えますか?』 突っ込みをいれるところが多少ずれているが、サーナイトは全く気にしていないようだ。 少女は不思議そうな表情を見せ、一歩進もうとするがサーナイトはどかない。少女の表情が曇った。 「ナイト?」 『何でしょう?』 「...どいて?」 『ダメです。』 何で?と聞いても全く動かないサーナイトに、少女は怒った。 「何でさっ!私元気だよ!?暑くないもの、平気だよっ!」 『...あれ?僕、貴方が心配だから通さないなんて言いました? ただ、少しいじわるしてみたかっただけなんですけど?』 「あっ....。」 少女は墓穴を掘ってしまった。と口を押さえた。 なんだかんだいっても、辛かったと思われる。 サーナイトはそんな少女の様子を見て、思わず溜息をもらす。 『ほらマスター。やっぱり暑いし、疲れているのでしょう?』 「う..っ。でも!私達が速くその人を見つけないと、街の人たちが困っちゃ...」 言い終わる前に、少女の体がカクンッと傾いた。 ポスッ 慌ててサーナイトが支えると、少女の意識はすでに無かった。 『....やっぱり辛かったんじゃないですか。全く、貴方って人は。』 あまりの暑さに気を失ってしまった少女を抱き上げ、サーナイトは苦笑まじりでつぶやいた。 『貴方が倒れたら、僕が辛いって事、知ってるんですかね?』 そう言うと、サーナイトは引き返そうとしたが、とまった。 せっかく頑張って暑いのに耐えて、ここまで歩いてきたのに。 それを全てゼロに戻してしまうのは、なぜか気が引けた。 『んー....この辺で少し休憩していきましょうか。』 そういうと、木々が多いところの真中の丸太に少女をおろし、 サーナイトはその隣に座った。 そのすぐ傍の草むらで、何かの影が動いたことに、サーナイトは気づいていなかった...。 |
月影 | #3☆2004.10/05(火)16:38 |
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「Let’s Go!」-犯人発見?不思議大発見☆- 『さて---。僕は何をしていましょうか。』 パートナーの少女を休ませることができたのはいいが、 自分のやることが無い。 サーナイトは溜息を吐くと、あたりを見回した。 今やること、といえば..... 「無防備なパートナーを守ること」 だが、今の様子だと全く野生ポケモンの気配を感じない。 それより、目を覚ました時のために、何か木の実でも探しといた方がいいのでは? そう思うと、サーナイトは丸太から腰をあげた。 気を失ってる、もとい眠ってる少女の頭を少しなで、 『ちょっと出かけてきます。すぐ戻るので、動かないで居てくださいね。』 そう言うと、トッという軽い足音ともに木々の中へ消えていった。 気を失っている少女に言葉は届いたのかどうかは解らないが、まぁいいだろう。 だが、サーナイトは気がつかなかった。 自分のした行動が、かえってパートナーに危険がおよぶ事に。 サーナイトが少女から離れて数分。 気を失っていた少女が目を覚ました。 「う....?暑..ここは...?」 重い瞼をこじ開け、周りの景色を見るが、さっきまでこんなところに居た覚えは無い。 自分が居る場所も、なぜか丸太の上。つまり誰かが運んでくれた。 つまり--- 「あー、私気を失っちゃったのか。で、ナイトが運んでくれた。と。」 天然、もとい危機感がまるで無い、=鈍い子にも理解はできた。 だが、一つ理解できないのは、何故サーナイトがいないのか。 どこにいったのだろう?と少女はあたりを見回すが、見つからない。 「ナイト?ナイトー?」 何度も何度も名前を呼んでも返事が無いのが、少女を不安にしてしまった。 「ひょっとして...喋るポケモンが珍しいから、連れてかれちゃったのか...!?」 だったらどうしよう!と、少女はパニックに陥ってしまった。 パートナー兼保護者的存在のサーナイトがいないのは、少女にとっては耐えられないのだろう。見たところ、他にポケモンを持っていないようだ。 パートナーということで、更に穏やかなサーナイトは、絶対に少女から離れることは無かっただろう。それが逆に少女の不安を逆立てることとなった。さらに知らない場所で一人っきり。ときたらもう限界だろう。 「ナイト...どこ?」 もう少女は自分のほほを伝う涙も止められず、 自分のことよりいなくなったナイトのことが心配でたまらなくなってしまったのだ。 そのとき。 ガサッガサガサッ。 草むらが ゆれた。 少女は、そちらの方向に視点を合わせた。 「ナイト!?」 よかった。と近づこうとした瞬間。 スパンッ 少女の頬を、血が伝った。 突然の事に、少女は驚き、声も出せず、動くこともできなくなってしまった。 そして、影の中から現れたのは.... 黒いツノ。白い毛並み。真っ赤な瞳 見とれてしまいそうな美しいポケモンだが、その名はアブソル。 災いポケモンとして人々に恐れられているポケモンだ。 そして更にアブソルの表情からは怒りのオーラが溢れていた。威嚇しているのだろう。 当然少女も突然の不意打ちに怯え、悲鳴を上げる.... はずだった。 「キャーッ!」 ここまでは、普通だった。 が。 「かっこいい!綺麗!わーっ、何このポケモン!」 ケガをさせられた相手に、何を言っているのか。 そう。この少女に「常識」という物は刻まれていなかった。 アブソルは意外な反応にたじろぐも、すぐにまた威嚇した。 しかし、少女には全く通用していない。 「わぁ、何々!?かっこいーぃっ!」 何だコイツ。アブソルの表情はすでに怒りから呆れに変わっていた。 その時だった。 「マスターっ!?」 さきほどの悲鳴をきいて、サーナイトが現れた。 「ナイト!」 ナイトが無事だったことがわかり、少女は微笑んだ。 その時、ヒュッと音がすると、アブソルは一瞬にして消えた。 しかし、少女は全く気づかずサーナイトに抱きついた。 「よかった、無事だったんだぁ...いないから心配しちゃったじゃんか!馬鹿!」 『マスターこそ...。倒れるほど無理してるほうが心配しますけど?』 「うっ....」 何気ない会話でも、少女はホッとした。が、すぐに思い出した。 「あ、...あのポケモン!」 アブソルは綺麗さっぱり消えていた。 サーナイトは首を傾げた。 『あのポケモン..って...何か居たのですか?』 「うん、綺麗で、毛がフサフサーっとしてるんだ!」 綺麗で、毛がフサフサ...少女が言ってる言葉では、どんなポケモンか理解不能だ。 そして、サーナイトはたずねた。 『ひょっとして...キュウコンですか?』 「キューコン?フサフサしてるならそうかも!」 『じゃあ、暑さの原因は、キュウコンがにほんばれをした..?』 少女の説明力が足りないせいか、見事に勘違いをしている。 サーナイトは、少女の方に手を置いた。 『じゃ、マスター。キュウコンに標準をおいて探しましょうか。』 「あははっ、じゃあ探偵ナイトの出撃だーっ!」 『出撃...出動でしょう?』 こうして勘違いのまま 犯人探しは続く... |
月影 | #4☆2004.10/10(日)12:14 |
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「Let’s Go!」-犯人探して谷越えて- さきほど野生のアブソル(少女の勘違いでキュウコンとなっているが) との接触の後、サーナイトと少女はキンセツシティまで来ていた。 が、少女がここでゲームセンターにはまってしまい、気がつけば時計はとっくに空を指し、星も瞬いていた。 しかし、誰かが起こしたにほんばれはまだ続いているのか。 夜でも暑さが変わることは無かった。 「あー、楽しかったぁ。また行こうねーっ、ナイト!」 『...マスター、普通子供はゲームセンターには行ってはいけませんっ...聞いてますか?』 パートナー兼保護者のサーナイトの心配そうな声をよそに、 少女は勝ち取った技マシンとミズゴロウドールを腕に意気揚揚として、 ポケモンセンターに向かっていた。 (だめだ...聞いてない。) 意気揚揚な少女の後ろで、頭を抱えるサーナイトがいたとかいなかったとか。 そして、ポケモンセンターで朝を迎え、再び二人は歩き出した。 そしてとまった。 少女は地図と町を交互に見つめ、サーナイトは黙り込んだ。 「ナイト。」 『はい。何ですか?』 「東、西、南、北。どこに行けと?」 『.....さぁ。』 そう。キンセツシティは東西南北。どこにでも道がつながっているのだ。 そして道はそれぞれ、 シダケ フエン・ハジツゲ ヒワマキ カイナにつながっている。 先ほどまでカイナの方面に居た少女なら、選択肢は3っつになるが.. 「それでもどれにいけばいいのさ。」 『....そうですねぇ。陽射しのキツそうなあたりでしょうか?』 「どこ?」 『どこも暑いですけど。』 じゃあ解らないじゃんっ!と混乱する少女をよそに、 サーナイトは考えていた。 先日少女を襲ったポケモンがキュウコンだとすれば..... キュウコンの出現する場所はフエン・ハジツゲ方面。 あちらはもともと火山があるから炎タイプが多い。 しかし、キュウコンが何故カイナ方面に降りてきて、少女を襲ったのかが考えにくい。 カイナは海が多いから炎タイプは多くないはずなのに。 それにキュウコンはカイナ方面には生息しないはず。 カイナ方面にも生息して、フサフサしてて、(少女談)するどい爪を持ち、(少女のケガが切り傷だった)にほんばれを起こせる生き物... そう考えると、どのポケモンも当てはまらないのだった。 みよんっ 悩んでいるはずのサーナイトの顔が、突然伸びた。 いや、伸びたんじゃない。伸ばされた。 『ひゃっ!?』 「あははー。ナイトさっきから顔が怖いよー?」 サーナイトの顔を引っ張っているのは、他の誰でもない少女だった。 『ひゃふはーっ、ひゃめてくだひゃい!』 「アハハっ、面白い顔!何て言ってるのか解らないよ。」 『ひゃふはー.....』 「ナイトは笑ってるほうがかっこいいよ?悩まない!ポジティブに行こうよっ!」 にこにこと話す少女に、やっぱりサーナイトは弱かった。 溜息を吐くと、少女の手を引っぺがした。 『マスター...じゃ、どこ行きます?』 「えっとね、じゃぁフエンに行きたい!温泉に入りたい!それで、温泉卵食べて、犯人探すの!」 温泉卵と犯人はどう関係があるのか。 苦笑いしているサーナイトの手を引っ張り、少女は歩き出した。 犯人探しは、まだまだ続く.... (...もう犯人探す気ないんじゃないですか?マスター。(サーナイト)) |
月影 | #5☆2004.10/10(日)17:45 |
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「Let’s Go!!」-犯人探して温泉感染換気扇☆- カイナを突如襲った、謎の異常気象。 そのありえない陽射しをとめるためにサーナイトと少女は旅を続けている。 ...正しく言えば犯人探しだが。 前々回、少女を襲ったアブソルがキュウコンと勘違いされ、 さらにそれが陽射しの原因かもと勘違いされて、 今二人は炎タイプが多く生息するフエンタウンに来ていた。 サーナイトは地図を折りたたみながら。隣を歩く少女に話し掛けた。 『マスター。では、キュウコンなどに重点を置き、探....』 そこでサーナイトの言葉は途切れた。隣を歩いていたはずの少女が居ない。 慌ててあたりを見回すサーナイトに、声がどこからか聞こえた。 「ナイトー。ここだよ、こ、こ!」 ふっと声のしたほうを振り返ると、....居た。 少女の綺麗な銀髪の髪がさらっとゆれた。 そしてその肌の白い手の中に--------- 茶色い丸いものが。 『お....温泉卵じゃないですか...それ....。』 「うんっ。おいしそうだから買ったの!ナイトにもあげる!」 肌の白い手の中から現れるのに、全く似合わない温泉卵。 サーナイトは苦笑いしながら、それを受け取った。 少女は温泉卵がはじめてなのか、不安そうにパリパリと殻をむく。 そして、中身が見えた。 『あ、マスター。もうそのまま食べれ.....』 殻をむいているサーナイトが横目でふと言った瞬間。 じゅっ 「あっつ.....!」 『!』 上のほうをかるくむくだけでいいのに、全体の殻を取ろうとするから、 半熟の温泉卵はどろりと少女の手にかかってしまったのだ。 ぱっと少女は卵を取り落とすが、そんなの気にしてられない。 慌ててサーナイトは卵を置くと、少女の手を見た。 少女の手にかかった温泉卵はとても熱かったのか。 少女の手は火傷を負っていた。 「痛っ...」 『マスター。殻をむき過ぎですよ。』 そう言うと、すぐに少女のいつもしょってるバッグの中からハンカチとチーゴの実を取り出した。 『ポケモンが使うのがほとんどですが...人にも使えるはずです。』 「痛ッ」 ただ、人が食べるのにはちょっと苦すぎますから。 そういうとサーナイトはチーゴの実をすりつぶし、ハンカチにつけ少女の手に縛り付けた。 すると、少女の手の中の火傷の痛みが引いた。 「あ...スッとするよ。コレ。」 『よかった..跡は残りそうに無いですね。』 そういうと、サーナイトは少女の手を引いて歩き出した。 「? どこにいくの、ナイト?」 『キュウコンを探しに。ですよ。犯人調査...するんでしょ?』 今の今まで忘れてた!というような表情になった少女をみて、サーナイトは微笑んだ。 『あれ...?忘れてたんですか?じゃあ僕一人で行きますけど?』 「えぇっ!?わ、忘れてないよ。やだよ、置いてかないで!一緒に行くよぉ。」 そう言って腕にすがり付いてくる少女の頭を軽くなでると、サーナイトは歩き出した。 それにつられて少女も歩き出す。 こうしてまた二人は進む。 次は炎の抜け道だ。 |
月影 | #6☆2004.10/11(月)12:02 |
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「Let’s Go!」-犯人探しで遭難中?- 「暑い、暑い、あっつーいっ!」 この陽射しの犯人を探すため、旅(もとい観光)を続ける少女とサーナイト。そんな二人が次に目指したのは、炎ポケモンが多く生息する 「ほのおのぬけみち」だったが.... 「暑い、暑い、暑い....!」 あまりの洞窟の暑さに苛立ちがピークを越え、すでに暴走している少女の隣では、ポケモンなのでそれなりの暑さなら平気。と涼しげな顔をするサーナイトがいた。 「あー暑いっ。暑すぎて「脱水表情」引き起こしちゃうよっ!」 『マスター。「脱水表情」じゃなくて「脱水症状」です。』 暑さのあまり少女が間違えた言葉も、キッチリとパートナーのサーナイトが直した。 が、そんなこと少女の頭には関係無かった。 「どっちでもいーよっ!」 『よくありませんよ。何ですか脱水表情って。』 「あぁ、余計に暑いぃ!」 『苛々するのはカルシウム不足だからですよ。マスター。』 苛々するのは暑いせいだよ!という少女を軽くあしらうと、サーナイトはまた地図に目を通した。 ほのおのぬけみちは、もうすぐ通りぬけてしまう。 今まで出会った炎ポケモンは、「マグマッグ」「マグカルゴ」が主。 他のポケモンは「ドガース」「ベトベター」「ワンリキー」。 キュウコンとの接触は無かった。 『じゃぁ、次はどこに行きましょうかマ....』 そこで言葉が途切れた。 先ほどまで後ろを歩いていたはずの少女が居ない。 フエンの時と同じだ。 『今度はどこにいったんですか、マスター。』 溜息を吐きながらあたりを見回すが、いない。 一本道だったはずなのに、少女がいない。 さすがに心配になったサーナイトは少し道を引き返してみることにした。 (マスター...どこにいったんですか!?) その頃。 実はサーナイトが地図に真剣になっている間に、実は少女はポケモンに襲われていたのだ。 少女はさっきからずっと来た道を引き返して逃げていた。 サーナイトに気がついてもらえるように、 一応バッグこそ落しておいたが、それどころじゃなかった。 「わあぁん!ベトベター嫌いだよおぉ!」 少女を追っているのは、ベトベター。 ベトベターの癖に(失礼)以外とすばやいやつだった。 ベタベタと、ベトベターが通ってきた道にはヘドロが落ちていて。 余計に少女の吐き気。もとい気持ち悪さが高まった。 「いーやーだぁ!こないでよ馬鹿ーっ!」 そんなこといっても、ベトベターはとまることなく追いかけてくる。 そんなこんなで走りつづけるうちに、少女は逆戻りして、入り口まで戻ってしまった。 しかし、ベトベターはついてくる。 ツルッ 「ふあっ!?」 少女は出たところで何かを踏みつけ滑って転んだ。 そこに、ベトベターが飛び掛る。 「っわあぁ!」 バシンッ 少女の悲鳴と同時に、少女の足元にあったなにかがベトベターをはじいた。ベトベターは一発Koで地面に倒れた。(ってかつぶれた) よくよく見ると、それは真っ白な羽で、少女が座っているのは何やら青い物体であることに気がついた。 「........?」 『うぅ...痛いです...どいてください....!』 青い物体をのぞきこんだとたん、突然声がした。 少女は慌てて飛び上がり、青い物体から離れた。 ふわっとそれは翼を広げ、ポケモンの姿が見えた。 「うわぁっ...可愛いーっ!」 綺麗な青いからだに、美しい白い羽。 ...ただし、羽には少女が踏んづけてしまった靴の後がしっかり残っていた。 『あー...痛かったです。私の名前はリア。チルタリスです。あなたは?』 「え?私...?」 パァンッ、バキッ、ゴンッ、ベチャッ! 私の名前は。と少女が言おうとした瞬間、洞窟のほうからすごい音がした。 そして洞窟の中からは、何やら汚れたバッグを片手にサーナイトが出てきた。 その怒りにまみれた表情は、少女を見るなりぱっと安堵の表情に変わった。 『マスターッ!よかった...無事でしたか。』 「ナイトっ!」 すぐにピョコンッと抱きついてくる少女を、押し返すことなく抱きしめた。 そんな二人を見て、チルタリスはにこっと笑った。 『あぁ、よかったです。パートナーがいたのですね。』 「うん。さっきはありがとう、リア!」 『さっき?』 疑問符を頭に浮かべるサーナイトに、チルタリスはにっこり笑った。 『はい。先ほどベトベターに追いかけられていたんですよ。その子。』 「うん。そこを助けてくれたのがこのリアなの!」 『あぁ..そうなんですか。ありがとうございます。リアさん。』 そこまで言うと、サーナイトの目線がぐるっと切り替わった。 視線の先にあるのは、先ほどのチルタリスの攻撃によりのびているベトベター。 その瞬間、チルタリスは思わずとんでもない量の殺気を感じた気がした。 『うっ....!?』 「? リア、どうしたの?」 それに全く気がつかない少女が羨ましいとチルタリスは思った。 殺気をおさえ、くるりと笑顔でサーナイトは振り返った。 『じゃ、もう一度行きましょうか、マスター。 今度は絶対に貴方を守りますから。』 「うん。頼りにしてるよ。ナイト。」 まるでどこかのお姫様と騎士のようだ。 そんな二人を見て、チルタリスは微笑んだ。 『じゃぁ、私はこれで...』 「あ、ありがとうリア!またどこかで会おうね!」 ふっと笑うとチルタリスは飛び立った。 チルタリスが見えなくなるまで見届けると、二人はまた炎の抜け道に入っていった。 しかし、今度はまったくポケモンが出なかった。 「何で今度はこんなにポケモンに会わないんだろう?」 『...何ででしょうね?』 そういうサーナイトの顔が殺気に満ちていて、 あたりのポケモンが震えていたのはいうまでも無い。 続く。 |
月影 | #7☆2004.10/11(月)13:49 |
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「Let’s Go!」-犯人探して北の国から(誤)- ほのおのぬけみちを楽々と通りぬけた二人。 洞窟から抜けた瞬間、少女ははしゃいだ。 「やった!これで洞窟もさらば!暑かったー!」 『でも、これからも暑いですよ。』 さらりと少女の開放感に釘を刺すサーナイト。(ワザとではない。) 少女は多少落ち込むが、すぐに復活。 ぴんっと背筋を伸ばし、元気に歩き出した。 その後ろを、微笑みながらサーナイトはついていった。 と、少女が立ち止まった。 つられてサーナイトもとまった。 『どうしました、マスター?』 「ナイト...これ、なぁに?」 そういって首を傾げる少女の手のひらには、真っ白な粉が。 ふとサーナイトが空を見上げると、同じく粉がぱらぱらと降ってくる。 サーナイトはすぐに地図を広げ、ハジツゲ方面の案内を見た。 『゛ハジツゲタウンの側では、いつでも火山灰がはらはらと雪のように落ちてくるのがとても有名です。火山灰を集めて、お土産用にガラスに加工してみよう!″...だそうです。』 すらすらとサーナイトが読み上げる文を多少耳に入れながら、少女は火山灰が積もっている所を歩いてみた。 サクッサクッ 「うわぁ....!雪みたい!」 火山灰の上には、少女の歩いた後がしっかりと残っていたが、しばらく眺めているうちにまた新しく灰が積もり、足跡が消えた。 そんな楽しそうな少女を見て、ふっとサーナイトは微笑んだ。 『マスター、火山灰を集めて見ましょうか?ガラスができるそうですよ。』 「え、これがガラスになるの!?ツルツルピカピカのあのガラスに?」 少女は先ほどサーナイトが説明していた文の中にガラスができると書いてあったのにもかかわらず、初めて知ったかのようなそぶりを見せた。 それにサーナイトはかるく苦笑いした。 「わぁ、すっごい!じゃ、集めよ.....って何に入れるの?」 『この近くで火山灰の袋が売っていました。買いに行きましょうか。』 「うん、いくっ!」 二人は火山灰の袋を購入。(一袋500円。案外高いねby少女) 少女はわくわくと火山灰のあるところを歩いた。すると.. 「わぁ、すごいっ。中に火山灰が入ったー!」 『へぇ。これは便利ですね...手が汚れなくてすみますし。』 先ほどまで空っぽだった袋にも、少し歩いただけで灰が入った。 少女は嬉しそうにその辺を走りまわった。 そんな少女を優しそうな目で眺めるサーナイトをみて、 保護者みたいと思った人は少なくなかったらしい。 と、走り回る少女の足が止まった。 「ん?何コレ....。」 足元に、何やら黄色いレンガ模様の物を発見。 突ついてみる。 つんつんっ 反応無し。 「.....?」 もう一度やってみる。 つんつんっ 反応な.... 「キューッ!」 反応ありv 「ってポケモンかいっ!?」 すなねずみポケモンサンドが現れた。 サンドはさっきまでどうやらエサを食べていたらしい。 口の周りに何かついている。 そこをつつかれて邪魔されたので、相当怒っているようだ。 「あ....ごめん...ね...?」 「きゅううっ!」 そんな言葉が通じるはずも無く、サンドは少女に襲いかかった。 ギュッと少女は目を閉じた。 が。 ボスッッ! 「ギュ!」 重いもので何かをひっぱたくような効果音と共に、サンドのつぶれた声。 少女が眼をあけると、目の前にはサーナイトが。 その手にはしっかりと灰がたくさんつまった袋が。 『マスターに手を出そうなんて...一億光年速いですよ。』 「キュウッ!」 酷く怯えた声をあげてサンドは逃げていった。 サンドの顔に袋がたの痣があったことは言うまでも無い。 サーナイトは少女に微笑んだ。 『大丈夫ですか?マスターも、あんまりわからないものを突ついちゃいけませんよ。』 「うん...ごめん。ありがとう!ナイト。」 解ればよろしい。と少女の頭をなでると、サーナイトは歩き出した。 その後ろをちょこちょこと少女がついていく光景は、見ている人にとってとても微笑ましい光景だったとか。 「で、ナイト!私いっぱい火山灰あつま....」 少女の言葉は途切れた。 自分の持ってる火山灰の袋より、サーナイトのほうが一回り大きかったのだ。 どうしました?と首を傾げるサーナイトに、少女の落ち込んでる理由はわからなかった。 二人は、火山灰をガラスにするため、 加工店「びぃどろ屋:ビードロの他に椅子なども」に入った。 入ると同時に、どうやら店長らしい人に声をかけられた。 「いらっしゃーい。ペコペコ!火山灰ビードロにする?ペコペコ」 少女とサーナイトの心が同時に、 ((変な喋り方.....)) と思った。 しかし少女は、あまり気にせず火山灰二人分を差し出した。 「この二つを合わせてビードロにしてください!」 「はいはい。おお、火山灰いっぱいあつまってるよ!ペコペコ。 どのビードロにする?」 「色があるの?」 「そうだよペコペコ。」 そう言うと、店長は見本を持ってきた。 少女はじぃっと色を見つめた。 青、黄色、赤、白、黒.....。 これといって欲しい色が無い。 サーナイトの方を見るが、 好きな色でどうぞ。と微笑むばかり。 そして少女はむーっと悩むと、青を選んだ。 「青でお願いします。」 「青ビードロだね?でもそうなると後もう一色選べるよ。ペコペコ。」 そう言われると、今度はサーナイトに決めるように言った。 サーナイトは、少し悩むと、白ビードロを選んだ。 「じゃ、もう一つは白でお願いします。」 「白だねペコペコ!よぉし、ちょっと待ってておくれ。」 10分後。 「はい、できたよペコペコ。」 そういうと、店長は2種類のビードロを取り出した。 青を少女に、白をサーナイトに手渡す。 「まいどあり。また来てペコペコ!」 店長に見送られ、二人はまた歩き出した。 少女は綺麗な青ビードロにすっかり見とれていた。 「すごいねぇ..。あの灰がこんなに綺麗でツルツルでぴかぴかになるんだよ...。」 『そうですね。本当に綺麗です。』 そういうと、サーナイトはビードロを口に当てた。 ぺこ。ぴこ。-- 音はあまりサーナイトには似合わないが、 可愛い音だった。 少女はにっこり笑うと、 「ガラス細工もゲットしたし、さぁハジツゲに行って手がかりを探そうっ!」 『そうですね。』 そしてまた二人は歩き出す。 次の目的地はハジツゲ-流星の滝だ。 続く。 |
月影 | #8★2004.10/11(月)16:08 |
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「Let’s Go!」-犯人探してちょこっと寄り道- サーナイトと少女は、ハジツゲに到着していた。 少女はポケモンセンターに真っ先に向かった。 サーナイトはそんな少女の後ろを、のんびりと歩きながらついていった。 少女がポケモンセンターに入り、パソコンを使おうとすると、そこにはすでに先客がいた。どうやら女の人だ。 何やらカタカタと...ポケモン預かりシステムを作動しているようだ。 仕方ないので待とうと椅子に座ろうとすると、女の人が少女に気がついた。 「あら...?ごめんなさい。貴方も使いたいの?」 「へ?あ...あぁ、私は後で良いです。貴方が先に使っていたんですし、どうぞ。お気になさらず...。」 そういって断ろうとするが、女の人はにっこり笑った。 「いいえ。私は別にここじゃなくてもできるわ。家で。 わたしはマユミ。ここ、ホウエン地方のポケモン管理システムの確認をしていたの。」 「えぇ、管理人さん!?」 知らなかった!と少女が驚きの声をあげると、女の人はにこっと微笑んだ。まるでナイトみたいだな。と少女は思った。 「いいのよ。私の事知ってる人も少ないし--あ、良ければいつでもいいからうちにもよってね。114番道路に住んでるわ。じゃあね。」 そういうと、マユミはすたすたと出ていってしまった。 一方少女は呆然としてた。まさかポケモン管理システムの管理人さんに会うとは..。 その後、サーナイトがポケモンセンターに入ってきた。 「人生って、何があるかわからないんだね。ナイト。」 『..マスター、何かあったんですか?』 やけにしみじみしてる少女をみて、サーナイトが心配したのは当たり前だった..。 ポケモンセンターで少し休憩を取ると、二人は114番道路に向かって歩き出した。 すると..... 『キャンキャンッ!ガルル....!』 「ひぃあっ!?」 突然ポチエナが現れ、吼えてきた。 危ない!とサーナイトは少女を抱き上げ、ポチエナに飛びつかれない範囲に抱き上げた。俗に言うお姫様抱っこだ。 少女も照れてる場合じゃなかった。 ドロドロしてるのもダメだが、少女はポチエナが苦手だった。 そこに、どうやらトレーナーらしいジェントルマンが走ってきた。 おお慌てでポチエナを抱きかかえると、叱った。 ポチエナはしゅんと尻尾を垂れた(あ、可愛いかもby少女) 「いやはやすまない。私のポチエナが迷惑を..そちらのポケモンに怪我はな...」 そこでジェントルマンの声がとまってしまった。 そりゃ普通はトレーナーがポケモンを抱えるなりモンスターボールに入れるなりするが、それとは逆にポケモンがトレーナーを抱き上げてるなどはじめてみただろう。 それに気がついたのか、慌てて少女はサーナイトの腕から降りた。 「大丈夫です。怪我はしてません。」 「え...あ...。そうか。ならよかった。」 私のポチエナはどうも吼えやすくて。と溜息を吐くジェントルマンに別れを告げ、また二人は進んだ。 次の草むらではハブネークが現れたが、サーナイトがサイコキネシスで捻じ伏せた。 と、ここで少女は思い出した。 「あ...マユミさんの家、ここだ!」 『マユミさん?』 「ポケモン管理システムの人!さっき会ったの!」 『あぁ、それで人生だのなんだの言ってたんですか...。』 そんなこんな言ってるうちに、マユミの家のチャイムを押す。 『はいー..勝手にあけて入ってどうぞー。』 と、ドア越しにくぐもった声が聞こえる。 少女は全くお構いなしに言われたとおりにあけた。 とその時..... 「きゃあぁ!?」 『マスター!』 ドササ、ドサドサッ 本の山が津波のように、なだれのように少女の頭の上に降り注いだ。 それをかばってサーナイトも巻き込まれた。 直後、マユミがおお慌てで二人を発掘した。 「ご、ごめんなさいごめんなさい!あまりにも本に夢中で片付けるのを忘れていて...。」 『まるで某アニメのあの眼鏡さんですね....。』 「平気ですよ。気にしないでください...。」 そういいつつ、少女の頭にはサーナイトのかばいきれなかった本によるたんこぶが一個できていた。 マユミがあまりに謝りつづけるので、サーナイトが溜息まじりにそれを止めた。 『そんなに謝られても..なっちゃったことはしょうがないですし、次から気をつければいいんですよ。』 「はい..すいません..。じゃあ、お詫びに、これを..。」 そういうと、マユミは近くにあった箱を差し出した。 綺麗にラッピングされている。 少女は思わずたずねた。 「これは?」 「このまえ買った、ルリリドールとマリルリクッションです。どうぞいただいてください。」 わーい!とはしゃぐ少女を見て、サーナイトは微笑み、御礼を言った。 マユミはとんでもない!と微笑んだ。 そしてマユミに見送られ、二人は流星の滝へと向かった。 続く。 次は流星の滝でちょっと一波乱。 |
月影 | #9☆2004.10/11(月)16:07 |
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「Let’s Go!」-犯人探して飛び降り自殺(危)- 本当に犯人を追う気はあるのか。と物語の最初から読んでくれている有りがたい方は思ったことだろう。 しかし、大丈夫。ちゃんと探してます(多分) ようやく時計が昼3時を示す頃、二人は流星の滝にたどり着いた。 流星の滝を初めて見た少女は、尻尾があれば千切れそうなくらいに振っているだろうと思うくらいはしゃいでいた。 綺麗な滝で、珍しい月の石や太陽の石がごくたまに取れるので、 一部の人にも多大な評価を得ているそうだ。 サーナイトは地図を丁寧に折りたたむと、少女の持っているバッグにしまった。 『マスター。これが流星の滝だそうですよ。このへんは昔から隕石が多いらしいですし..何か拾えるかもしれませんね。』 「え、ほんとほんとっ!?」 にこにこと目を輝かせる少女は、期待に胸を膨らませた。 そんな少女の笑顔に、やっぱりサーナイトは弱かった。 灰色と紫のオッドアイが、きょろきょろと辺りを伺いはじめた。 『でも、そう簡単に見つかるわけじゃなさそうですよ?』 そう言うと、ふしゅぅっと少女のやる気は抜けていった。 えぇぇ、と落ち込む少女。さきほどから見事な百面相だ。 サーナイトはクスクスわらうと、少女の手を引いて歩き出した。 「ナイトー。見つからないのー?」 『さぁ?頑張れば見つかるんじゃないですか?』 少しそっけなく返事を返したつもりだが、少女は歩きながらもにっこり笑った。 「じゃ、頑張るっ!絶対見つけて見せるもんっ!」 『石に対して頑張るのも良いですけど、犯人探しも忘れちゃいけませんよ?』 「解ってるよー。」 そう言ってはいるものの、少女の視線はさっきから壁から壁へと移りっぱなしだった。 『(こうなったらもうダメだな。)』サーナイトは溜息を吐いた。 そう油断したサーナイトは、うっかり少女の手を離してしまった。 『あっ!』 サーナイトが気がつくときにはもう遅かった。 少女はまさに糸の切れた凧のようにふらふらと歩き出してしまった。 物事に夢中になると、辺りが見えなくなるのが少女の欠点だった。 「素敵な石さんどっこでーすかー♪」 辺りをきょろきょろ見まわしてるから、足元なんてまるで注意がいってない。 滝がある場所のすぐ側は、滝の水がはねて濡れてるから、足元を注意しないとすべるということを少女はまったく知らなかった。 『マスター!勝手に動いちゃ危ないから..もどってください!』 「え?」 サーナイトに声をかけられ、少女は振り向いた。 が、その時、急に方向転換した少女の体は、水で滑った。 「へっ?わっ!」 ツルッ。 少女の体が傾いたほうは--- 運命の神のいたずらか。 滝側。 少女の体は重力に逆らわず、滝壷に向かい真っ逆さまに落ちていった。 『マスターっ!!』 サーナイトも少女めがけて滝から飛び降りた。 すばらしい根性というか度胸というか友情というか.. おっと。そんなことを言っている場合ではなかった。 サーナイトは気を失ってしまった少女をぎゅっと抱きしめると、 衝撃と、死を覚悟して落ちていく。 が、いつまでたっても痛みも、衝撃も現れなかった。 うっすらと眼をあけて、解るのは----- 銀色に輝く、何か。だけ。 そこでサーナイトの意識も途切れた--- 二人を助けてくれたのは一体? ってか滝の側では注意しなきゃ行けません。 続く。 |
月影 | #10☆2004.10/13(水)16:54 |
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「Let’s Go!」-犯人探してデッド・オア・アライブ?-(生か死か?) ドドドド。というすごい勢いで滝の水が流れ落ちていく。 滝の真下に落ちた水は、鋭く急な流れを作る。 さきほど何かの石が落ちたが、あっと言うまに水の底に砕けただろう。 こんな中に飛び込んでいくなんて何を考えているんだ? そういいたそうな表情で一人の青年は気を失っている二人を見ていた。 先ほど間一髪。落ちていくところをポケモンのエアームドで救うことができて、今は自分が先ほどまで居た、石を採るところに適した所に連れて来てあるが.... ふう。と溜息を吐くと、青年はその綺麗な銀色の髪を掻きあげた。 脅威の紐無しバンジーを体験して数分後。 サーナイトはゆっくりと意識を取り戻した。 『....ぅ...ん?』 ゆっくりと瞼をこじ開け、目の前の光景を見る。 壁、岩、ひんやりとした地面------ (あれ?さっきまで確か滝があったところに居たはず... そして、マスターが落....) ハッと、サーナイトは全てを思い出した。 『そうだ。マスターが落ちて、僕も落ちて...マスターはど..』 そこまでいいかけて、腕の中にあるサラッとしたものの感触に気がついた。 慌てて抱きしめている手を解くと、そこからは自分の探した大切な人が居た。綺麗な銀髪がゆれ、今は静かに気を失っている。 滝から落ちたとき、無意識のうちに抱きしめていたのだ。 自分の大切なパートナーの安否が確認出来たところで、サーナイトはゆっくりと体を起こし、改めてしっかりと辺りを見まわした。 気を失うちょっと前に、確かに何か銀色のものを見た。 そのことを思い出し、辺りをさっと見まわす。 その時。 『キシャアッ!』 『うわああっ!?』 バサバサッという音と共に、一匹のエアームドが現れた。 突然現れたので、思わずサーナイトは叫び、腕の中にしっかりと少女を抱きしめた。どうやらエアームドはからかいにきただけらしいが、安心できない。サーナイトは警戒した。 その時。 「やめるんだ、エアームド。」 静かで、それでいてしっかりと通る声が聞こえた。 ふと声の聞こえたほうを見ると、一人の青年が立っていた。 綺麗な顔立ちで、普通の女性ならすぐにまぁ。といいそうな外見だ。 少女と同じ銀色の髪。エアームドはすぐに青年の元へ飛んだ。 しかしサーナイトは警戒を解かなかった。 「すまない。目はさめたかい?」 『.....。』 相手の態度は語り掛けるような安心を持てる態度だったが、 サーナイトは少しも少女を抱きしめる手を緩めなかった。 「はは..無理も無いか。覚えているかい?君は滝から落ちて、 そこを僕達が助けた。と、言うわけなんだけど?」 『....!』 助けてくれたときの銀色は、この人の髪とエアームドの体の色か。 そう考えると合点がいき、サーナイトは警戒を解いた。 少女はまだ目を覚まさない。 助けてくれた恩人の名前は? 続く。 |
月影 | #11☆2004.10/31(日)15:54 |
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「Let’s GO!-犯人探して...貴方誰ですか- 先ほどの脅威の紐無しバンジー(違)を体験した後、サーナイトは青年に対する警戒を解いた。 しかし、まだ完全には解けきっていない。 少しだけパートナーの少女を抱きしめる腕を緩めると、青年をしっかりと見据えた。 『...助けていただいてどうもありがとうございました。』 ペコリ。と頭だけを下げた。 そんなサーナイトの行動が予想外。というように青年の緑色の目が驚きに満ちた。が、すぐにその驚きも消え、柔和な微笑となった。 「いや。別にお礼なんてしなくていい。人を助けることは当然な事だよ。」 そう言うと、照れくさそうに髪の毛に手を伸ばした。 御礼を言われなれてないのだろうか? サーナイトの脳裏をふとそんな疑問がかすめたが、あえて無視した。 『本当にありがとうございました...。で、失礼なことだと思いますが。』 「何だい?」 『貴方は誰ですか?』 一瞬の静寂。 が、すぐに青年の驚いた声がその静寂を破った。 「僕が...誰かって。分かっていたから最初に御礼を言ったんじゃないのか?」 『いいえ。全く知らない人だったんでひとまずお礼をと思ったのですが?』 普通、逆じゃないか...?とクスクス青年は微笑んだ。 別に気に障る微笑み方じゃなかったので、サーナイトは苦笑いした。 で、質問に答えて欲しいんですが?とサーナイトがいうと、 そうだね。と青年も頷いた。 「僕の名前はツワブキダイゴ。デボンコーポレーションの副社長だ。」 『デボンって、あ「でこぽんこっぷれぇと?」....へ?』 サーナイトの言葉の中に、小さな高めの声が混じった。 ふとサーナイトが腕の中を見下ろすと、少女の目がぼんやりと開いていた。まるで寝起きのようだ。 青年、もといダイゴは目がさめたんだね。とにこりと微笑んだ。 「にゃいとぉ...でこぽんこっぷれぇとってなぁに?」 目がさめたばかりのせいか、うまく呂律が回らずまるで小さな子が喋っているようだ。 うー。と少女が目をこすり見上げると、ふとダイゴと目線が合う。 「うー..?おじいちゃん?」 「『 え? 』 」 思わずダイゴとサーナイトの声がハモった。 どこをどうみたらダイゴがおじいちゃんになるのか? ってか血縁者? 「お...おじいちゃ....?」 『マスター...何言って.....!?』 突然の事に混乱する二人(一人と一匹?)を置いて、にこりと少女は微笑んだ。 「おにーちゃん、おじいちゃんみたいに髪がキりゃキラしへて、綺麗なんだー.....。」 ガクンッ。 突然少女の頭がガクンと落ちた...ってか下がった。 あわててサーナイトがもう一度抱き上げると、スヤスヤと寝息を立てていた。 何言ってるんだか....と呆れ顔のナイトと、 不思議な子だね。と面白そうに微笑むダイゴ。 二人を見てるとどうしても少女の保護者に見えると野生のポケモン達は思っていた....。 |
月影 | #12☆2004.11/13(土)16:23 |
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Let’s GO!!-犯人探して.....本当に探してんの?- 少女の目がまたトロンとして、閉じた後。 再びサーナイトのナイトと、ダイゴは話し始めた。 『..で、あの有名なデボンコーポレーションの副社長さんが流星の滝で何をしているんですか?お仕事は?』 サーナイトの質問に、青年は慣れたような口調で話し始めた。 「僕は確かに副社長だ。だが、まだ父も元気で僕の手を借りることも無いし、それに僕はここが好きなんだ。」 『あぁ、この綺麗な滝とかですか? それなら確「いや、ここで手に入る石が綺麗なんだ。」 サーナイトが確かに。と続けようとしたのをさえぎり、 あっさりと石目当てと青年は告げた。 サーナイトは、滝じゃないんですか!?と驚いている。 『へ?...デボンの副社長なんですから、普通滝とかの自然に興味は行きませんか...?』 「いやぁ...実を言うと小さい頃からあまり外に出してもらえなかったからね。自然にそれほど感心は無いんだ。」 『....』 サーナイトはぽかん。としてしまい言葉が出なくなった。 (本当に、この人はあのデボンの副社長か.....!?) そんなサーナイトの心中を察したのか、ダイゴは苦笑いした。 「はは、可笑しいかい?そりゃああの大企業の副社長が石に興味を持ってるなんて、変わってるけどね。」 『あ、いえ....まぁ好みは人それぞれですしね。』 ....... 「でも君の名前も変わってるね。ニャイトだっけ?」 先ほど少女が呂律が回らない状態で口にした名前をそのままいわれ、 サーナイトは違います!と顔を赤らめて叫んだ。 『ニャ..ニャイトって...猫ですか!?僕の名前はk,n,i,g,h,t!! ゛ナイト″です!!』 「ニャイト」があまりにも恥ずかしかったのか、いつにもなく怒ったように叫んだ。青年はあぁ、「ニャ」じゃなくて「ナ」ね。と微笑んだ。 「あぁ、ナイトか。てっきり僕はニャイトかと。」 『....貴方、割と酷いですね。』 そう言って落ち込んだサーナイトを励ます若い御曹司がいたとかいなかったとか。 続く |
月影 | #13☆2004.11/14(日)13:20 |
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Let’s GO!! -何かシリアス..?- 落ち込んでしまったサーナイトがようやくもとの機嫌に戻ったところで、サーナイトは少女を抱き上げ、立ちあがった。 ダイゴは驚いた表情で立ちあがったサーナイトを見上げた。 「どうしたんだい?まだ、その子の目はさめていないのに..いいのか?」 そんな不安げな言葉に対し、サーナイトは笑顔で答えた。 『大丈夫です。マスターが起きてたほうが問題を引き起こしやすいですから。』 さらりと何気に酷いことを言ってのけるサーナイトに、ダイゴはどこか通じるところがあるなと感じた。 サーナイトが少女と荷物を持って歩き出すと、ダイゴが背中越しに声をかけた。 「ちょっと待ってくれ。」 『はい?』 軽く答えはしたものの、サーナイトの足は依然と止まらず、出口へと進みつづける。振り返りもしない。 「その子の名前を教えてくれ。」 しかしダイゴの質問にサーナイトはピタリと足をとめた。 ダイゴは答えてくれないのか?と思いながらも話しかけた。 「さっきから「マスター」と呼んでいるが、その子の本当の名前は何だい?」 『....』 サーナイトは答えずに、また前を向くと進み出した。 その行動に納得がいかず、ダイゴは自分も立ちあがり追いかけようとした。 「待ってくれ。....何故、答えてくれないんだ?」 その言葉に、サーナイトはまた足を止め、 ようやくダイゴのほうをゆっくりと振り返った。 しかし、その紅い瞳には、穏やかな光はなかった。 『今は言えません。いつか機会があれば教えましょう。』 今までの優しそうな声と違い、まるで刺すような鋭い声に、ダイゴの体は無意識のうちにびくりと震えた。 まるでなん人も寄せ付けないような冷たい声だった。 しかし、ダイゴは引かなかった。 「何故だ?僕がデボンの副社長と知ってからやけによそよそしくなったんじゃないか?」 『デボン』『副社長』という言葉にサーナイトの眼の色が変わった。 更にダイゴとサーナイトの間の空間の温度が2〜3度下がった気がした。その場に居合わせているエアームドはなんともいい難い表情のまま二人を見比べていた。 続く |
月影 | #14☆2004.11/14(日)14:44 |
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Let’s GO!! -一触即発?アタシに触れたら火傷するわよ!(爆)- もう何分が過ぎただろうか。 ダイゴの持ちポケのエアームドは穴があったら入りたいくらい気分が悪かった。目の前で自分のトレーナーと見知らぬ相手のポケモンが睨み合ってる。 ポケモン側の立場としてはとっとと和解して欲しい気分だった。 しかし、エアームドはそんなことはできないと解っていた。 何故なら、彼はダイゴのポケモンとして相当ダイゴのことは熟知している。 彼がこういうことになったら、頑固になって意地でも聞き出す。と言うことも。 『(さっきまで仲良かったんじゃないのかよ。)』と、 一人溜息をはくエアームドだった。 そんなエアームドはお構いなしに、先ほどからずっと睨み合い... もとい見詰め合って(誤)いる二人。 サーナイトは依然として冷たい眼を変えぬまま、じっとダイゴを見据え、ダイゴはダイゴで負けじとしっかりと睨んだ。 先にあまりにも重苦しすぎる沈黙を破ったのは、サーナイトだった。 『貴方は...何故。聞きたがるのです。』 「普通は、名前を名乗ったら名乗り返して欲しいものだけどね。」 『僕はもう名乗りましたけど。』 「だから、次はそっちの女の子...君のトレーナーのほうだよ。」 『マスターは寝ています。』 「起きるまで待つ。」 『僕達は急いでいますので。』 「じゃあ代わりに君が答えてくれ。」 ああいえば、こう言う。 まさにそんな言葉が似合うほどのすばらしい声と声の攻防戦が繰り広げられている。 ダイゴの声は話すうちにどんどんと暗く、イライラが混じった声となっていった。 『ですから、何故貴方は聞きたがるのですか。』 「だから、名前を名乗ったら名乗り返して欲しいといっているだろう?」 『だから僕が名乗ったんじゃないですか。』 「いや、だから僕が聞きたいのはそっちのトレーナーの名前だって。」 『マスターは寝ているといってるでしょう』 「で、だから代わりに君に話して欲しいんだが。」 『だから、なんでそうまでして名前を聞きたが...』 さっきから同じような会話の繰り返しだ。 いいかげんに痺れを切らしたのは、会話を続ける二人ではなく、 じっと事の行く末を見ていたエアームドだった。 『キシャアアッ!』 「わっ...!?どうしたんだ、エアームド!」 イライラがたまりすぎたのか、怒って鋭いツメを振りかざすと トレーナーであるダイゴを押しのけサーナイトを攻撃しようとした。 突然の自分のポケモンの暴走に、ダイゴは混乱しつつも、 すぐにエアームドを後ろから押さえ込んだ。 「おい!何をしているんだ、エアームド!やめるんだ!」 しかし、鋼タイプの硬く丈夫な体を人間一人で押さえるのは至難の技だった。ダイゴは弾き飛ばされてしまった。 大きく壁にたたきつけられる。 さすがに先ほどまで口喧嘩(言い争い?)をしていたサーナイトもダイゴを心配した。 『ダイゴさん、大丈夫で..うわああ!?』 駆け寄ろうとする寸前で、エアームドに阻まれてしまった。 そして、そのするどい鉤爪がサーナイトのうでにザックリと深い傷跡を付けた。突然の激痛に、思わず抱き上げていた少女ごと荷物も地面に落してしまった。赤い液体が、ゆっくりと腕を伝い地面に小さな水溜りを作る。 『うぐっ....!』 『キシャアアアっ!!』 攻撃してきても、元はダイゴのポケモンだ。 それにエアームドの暴走は口論が原因だと思うとサーナイトは攻撃ができなかった。 どんどんと、サーナイトの体に切り傷が増えていく。 地面に真っ赤な水溜りが増えていく。 せめて、マスターに攻撃は...!と、少女と自分の居場所を遠くに離れるようにこっそり小さく歩きながら、サーナイトは痛みをこらえつづけた。 ダイゴはたたきつけられた衝撃で、気を失いかけていた。 薄れ行く意識の中で、ダイゴの視界が一瞬で、銀色の光に包まれた。 その時、全ての意識が吹き飛び、ダイゴは気を失った。 一瞬の事だった。銀色の光が部屋を包み込んだ瞬間、サーナイトは何とか気を失わずに痛みにも耐えていた。 エアームドは地面に崩れ落ちた。見たところ何も外傷が無いのに。 しかしサーナイトは理由がわかっていた。 自分の目の前に倒れている少女を抱き上げ、バッグを手にすると、また歩き出す。と、そのまえに一つかいふくのくすりをエアームドのすぐ側においておいた。 これで平気だろう。とつぶやくとサーナイトは流星の滝の出口へと、歩いていった。 一瞬の銀色の光とは、何か? 少女に隠された秘密と、名前は? 次回、少女の謎が明らかに...なるといいなぁ。(溜息) 続く |
月影 | #15☆2004.11/14(日)16:15 |
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Let’sGO!-ようやく抜けたね。流星の滝- 「っ...う..?」 ドドドドド。とうなる滝の音に、ようやくダイゴは目を覚ました。 さきほどの衝撃が残っているせいか、立ち上がることさえも苦しい。 グッと耐え、体を立ちあがらせると視界に入ったのは、まるで死んでしまったかのように動かないで倒れているエアームド。 慌ててダイゴが駆け寄り声をかけると、エアームドはゆっくりと意識を取り戻した。見たところ、怪我も何も無い。ただ一つ違うのは、 「...。あの子達が...いない。」 サーナイトと少女は忽然と姿を消していた。 夢だったのか?と思い頭を揺さぶった瞬間、ダイゴの視界に赤い水溜りと、赤く染まっているエアームドの爪が映り、やはり現実だということを思い知らされた。 ダイゴは、ハッキリいってさっきの言葉は嘘だった。 「名乗ったら、名乗り返して欲しい。」なんてのは、嘘だった。 ダイゴには何か引っかかっていることがあったのだ。 顎に手を当てるとダイゴはつぶやいた。 どうしてもサーナイトの連れていた少女が頭に引っかかる。 「あの、銀色の髪に、紫と灰色の眼---何か..どこかで聞いたんだ...」 しかし、どこをどう探してもそれは思い出せず、ダイゴはふぅと溜息を吐くと、エアームドを連れて滝を後にし、飛び立った。 ----------------------------------------- その頃。 流星の滝を抜けたサーナイトは、115番道路にいた。 先ほどからその辺でトレーニングなどをしているトレーナーからの驚きの視線がすごく嫌そうな表情をしつつ、少女を抱きかかえ歩いていた。 一応流星の滝をこえる最中に、すごい傷薬を体につけといたから一応おおまかな痛みは引いたが、傷はハッキリと残ってしまっている。 ポケモンセンターにでも行かなきゃ治らない傷だが、人々の視線がいや過ぎて歩くのも嫌だ。 しかたがないので、少女が起きるまでその辺で待っていよう。 と、小さな林の中に休憩所みたいな場所を発見しそこに座った。 そして、丸太で作られたベンチの上に少女をゆっくりと寝かせた。 今はゆったりとやすらかな寝顔をしているので安心だが、 ハッキリいってさっきの行為は怖かった。 サーナイトは溜息を吐いた。 ゆっくりと手を伸ばし、少女の綺麗な銀色の髪をもてあそぶ。 サラサラとした銀色の髪は決して絡まらず、流れ落ちて行く。 まだ幼さが残る顔立ちだが、他の人よりははるかに可愛い。身長もそこそこで、高いわけでもないし低いわけでもない。 可愛い事と不思議な眼を除けば、いたって普通な女の子なはずなのに。 それなのに----- サーナイトはゆっくりと少女の頭をなでた。 くるり。と寝返りを打ち、幸せそうな表情で眠りつづける少女を、 サーナイトはとても愛しいと思った。 それと同じに、とても悲しくなってしまった。 『運命は..酷いものですね。何故、あの人とマスターが..会わなければいけなかったのですか....?』 そう呟くとサーナイトは小声で歌った。 ホウエン地方で有名な、昔話の歌。 ゛ ガラスの星 空を伝う 夢を紡ぎ 流れる 生まれるのは 赤き光 永久に 闇を開く 二つの闇が 全てを閉ざしても 決して枯れない 君の為に 歌いつづけるでしょう ″ その歌の意味を知るのは、今はまだ、サーナイトだけ。 続く。 |
月影 | #16★2004.11/22(月)16:21 |
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Let’sGO!-犯人探して..あ、この前の!!- サーナイトが1フレーズ歌い終えたところで、少女はゆっくりと目を覚ました。 「...ナ...イト....?ここは..?」 寝ぼけているのか、あたりをきょろきょろと見まわす少女に、サーナイトは微笑んだ。 『流星の滝を抜けたところの115番道路です。貴方が気を失ってしまったから、勝手に出てしまいましたよ?』 そこまで言うと、少女は突然「えーっ!?」と声をあげた。 「ひどい、ひどい!私、まだ何の石も見つけて無かったのに!」 『石...あぁ。そういえばそうですね。』 「そういえば。じゃないよっ。もう一度入ろう、ね?ねっ?」 サーナイトの手をつかみ、必死に懇願する少女だったが、 サーナイトは首を横に振った。 またすぐに中に入れば、またダイゴ達と接触してしまうかもしれない。 しかし少女はそんなことを全く覚えていないのか、何で?と泣きそうな声で呟いた。 「何で?なんで?なん......ふぇっ....」 『!!』 あまりに悲しすぎたのか。うつむいて、 どんどんと声が小さくなっていき、最後には... 「うわああん!ナイトの馬鹿ぁ!わああん......」 『ご..ごめんなさい、マスター。でも、あの洞窟には入れな...』 サーナイトが慌ててなだめようとするが、少女の耳にはもはや何も届かない。 わーんと泣きじゃくる少女が、ふと顔を持ち上げたとき。 すぐそばの茂みがガサリとゆれ、そこから顔を出したのは--- 「あっ、『キューコン』!」 『え!?』 そこにいたのは、この前に少女と接触し少女の頬を引っかいた.. あのアブソルだった。 『マスター..まさか...キュウコンって....アレ....?』 引きつった笑いでゆっくりとアブソルを指差すサーナイトに、 少女は満面の笑顔で「うん!キューコン♪」と答えた。 サーナイトがよくみれば、たしかに毛がフサフサで、綺麗。 それに少女を引っかくことのできる鋭い鉤爪も持つし、 何より生息地は山岳地帯。自然の多いホウエンでは確かにカイナの側にいることも考えられる。しかし、にほんばれは技マシンじゃないと使えない。 が、その前に。 『マスター...ポケモンはまず色をいってくれないと解らないじゃないですか....!!』 「え?あれ、『キューコン』じゃないの?」 『あれは...「アブソル」っていう全く別のポケモンです...。』 「え?え? そーなの?」 だめだ。これからはこの少女に常識とポケモンについて細かく教えよう。 心に固く誓ったサーナイトだった。 が、アブソルのほうは、サーナイトの姿が見えたとき、逃げようとしたがそれより先に少女が走って---飛びついた。 『ッ!?』 「待ってよアブソルさんっ♪」 『マスター!?Σ(゜□゜‖)』 ぎゅううっと突然人間に抱きしめられ、アブソルは混乱した。 しかもこの前ほっぺを引っかいた相手が普通に抱き着いてくるなど 常識ではありえないだろう。 そう、このアブソルは忘れていた。 この少女に常識は一切無いことを。 それ以前にただでさえ人間になれていなくて警戒心の強いアブソルに突然ダイブしてくる人間なんていないせいか。 アブソルは氷付け状態になったかのように顔を真っ赤にして固まった。 が、少女はまったく気がつかずにサーナイトに声をかけた。 「ナイトー。犯人さん捕まえたよーっv」 『え....ああ、お疲れ様...ってか、マスター。アブソルは犯人じゃありませんってば。』 「え!?違うの?」 そうなのー?とアブソルの顔を少女は覗き込むが、それは完璧に逆効果。 間近で人間の顔を見ることも殆ど無いアブソルは完璧に硬直した。 「ナイトー。アブソルが動かないよー?」 『..あぁ、じゃあほっときませんか?』 さらりと酷いことを言ってのけるサーナイトに対し、少女はむぅと悩み、決断を下した。 「よし、じゃあナイト!」 『何ですか?』 「この子、仲間にしよう!!」 『へ?』 「だって綺麗だし、格好良いし、なんてーか暖かいの。」 そういってむぎゅっと抱きつく辺りの少女は可愛いのだが、 どうしても視界に入ってしまうアブソルが邪魔だとサーナイトは思った。 しかし少女が望むのなら、仕方ないだろう。 『..まぁ、いいんじゃないですか?』 「わーい!じゃあ名前はフェイトね!(fate)」 『...俺の意見は無視か...?』 新たな仲間(ただし意見は無視) が加わり再び少女達は歩き出した。 続く |
月影 | #17☆2004.11/22(月)16:52 |
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Let’sGO!-「マスターに...手を触れるな!」シリアス風?- 前回の冒険(?)により、新たな仲間。アブソルのfate(フェイト) と、パートナーのknight(ナイト)を連れて今日もまた一人の少女がにこにこと115番道路を歩いていた。 「....隣同士ア、ナ、タと あーたしさくらんぼっ♪」 新しい仲間が増えたことに嬉しいのか、うきうきと足取りも軽く幸せそうにぴょんぴょんウサギがはねるように歩く少女。 そんな少女を見て後ろをついていくサーナイトは苦笑い、アブソルは溜息を吐いた。 『...アイツはいつもあぁなのか?』 相当心配そうな声で、アブソルがサーナイトに問う。 サーナイトは笑顔で答えた。 『いつもはまだ大人しいですよ。今日は新しい仲間..フェイト。 貴方が増えたからいつにもまして喜んでいるんでしょう。』 『...そうか。』 マスターが幸せで良かった。と微笑むサーナイトをふい。とアブソルは視界からはずし、少女の後姿を見つめた。 今まで災いポケモンと恐れられていた彼が、仲間として喜ばれることなど滅多に無い..むしろ無かったのだろう。 その分、祝福にもなれていないせいか、少女が少し後ろを振り返り、にこにことアブソルに手を振るだけで、アブソルは顔を背けてしまった。 そんなアブソルを見て、サーナイトはくすくすと楽しそうに笑った。 笑うサーナイトに気が立ったのか、アブソルはうるさい!と叫んだ。 そんなリアクションに更にサーナイトは楽しそうに笑った。 が、その笑いも一瞬で掻き消えた。 「きゃあ!」 アブソルは仰天した。今の今までとても幸せそうで楽しそうに笑っていた奴が、突然のトレーナーの悲鳴が上がっただけで眼の色が変わりトレーナーの方に視線を走らせる。そんなの今まで見たことが無かったのだ。サーナイトの表情は、さきほどの笑顔は消え、いつも少女に向けている表情はどこから作り出しているのか。といいたくなるほどに恐ろしく、鳥肌が立つくらいに冷たい表情となった。 サーナイトの視線の先には、トレーナーでありパートナーである少女がいた。しかし、何か怪しい赤い装束の一味に囲まれている。 周りに居る人数も合わせてせいぜい5〜6人。そんなには多くない。 少女の先ほどまでの幸せそうな笑顔は消え、とても怯えた表情で赤い装束の一味を見上げていた。 赤い装束の一味の中の一人が、少女に近づいた。 どうやら一人だけ風格、服装が違う。幹部。という所だろうか。 「へへ。ようやく見つけたゼ...長い長い追いかけっこだったなア。」 にやり。と意地汚い笑みを浮かべながら少女を見下ろす。 少女は肩が震えている。 アブソルはここでサーナイトの様子がおかしいことに気がついた。 すさまじすぎる怒りが感じ取れ、近くによるだけで肌が痛い。 何やらブツブツと呟いていて、それがだんだんとサーナイトの力を上げていることに気がついた。 『お前...!?何してるんだ、あいつを助けなくていいのか!?』 『......。』 近くに居るアブソルの声も届かないのか、相当集中している。が、その状況の中でも少女だけはしっかり見ていて、目を離さない。 男が、少女に手を伸ばす。少女は恐怖を浮かべ仰け反った。 「逃げるなヨ。お前を連れてかなきゃ、リーダーに怒られるんだからヨ!」 「きゃああ!」 そう言うと、無理やり少女の体を担ぎ上げた。 その瞬間。 アブソルは何が起こったのか理解できなかった。 ただ、目の前で何か閃光が走るような凄さだけは感じた。 我に返るまで数秒かかった。我に返したのは、サーナイトの叫び声だった。 『マスターに...っ手を触れるな!!』 パァンと鋭い閃光が走ると、一瞬にして少女はサーナイトの腕の中に、男の体は空へと舞いあがった。あっけに取られているほかの連中を、全てサイコキネシスで男同様空へと弾き飛ばす。 そして海に全員放りこんだ。 「「「ああぁァァっ!!」」」 バッシャーンという音を立て、真っ赤な装束の一味は全て海に叩き落された。 その光景を見て、ただアブソルは固まるしかなかった。 そして、冷静に分析すると先ほどまで何やらぶつぶついっていたのはサイコキネシスの威力を最大限にあげるための「瞑想」か。 全員が海に沈んだのを見届けると、サーナイトは倒れた。 慌ててアブソルが駆け寄ると、少女もサーナイトも気を失っていた。 その気を失った二人を背中に乗せ必死に運ぶアブソルがいたとかいなかったとか。 続く |
月影 | #18☆2004.11/22(月)22:15 |
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Let’s GO!-犯人探して複雑家庭事情-てか番外編? はぁ。はぁ。とさっきから呼吸が乱れっぱなしだった。 いつものままなら、こんなこと無いのに。 チッと小さくアブソルは舌打ちした。 彼の呼吸が乱れているのも当然だ。 一匹のサーナイトと、一人の少女を背中に乗せ走っているのだから。 元はといえばこちらは仲間になることには同意していないのだから、本来なら置いてきても良いはずの二人だった。 が、しかし。 初めて暖かい歓迎をしてくれた二人を、何故か見捨てることができなかった。 『...俺も、ずいぶんと甘くなったな。』 たった少しの間なのに。と、一言呟くとすぐそばの町を目指して走りつづけた。 --------------------------------------------- サーナイトは気を失っている状態で、夢を見ていた。 いや、むしろ幻なのかもしれない。 何故かサーナイトは、過去の世界に居た。 一つの小さな、研究所。 決して外部に情報が漏れないように、どこかの火山のすぐそばに作ってあった事を、まだ覚えている。 彼はここで生まれたのだ。 忘れもしない。忘れるわけが無い。 決して、忘れてはいけないことがあった。 -自分の存在が 異質であること- 懐かしくも嫌な光景に、サーナイトは思わず目をそむけようとした。 しかし、できない。体が動かない。 『....ずいぶんと嫌な夢を見るんですね。今日は。』 そういうと、悔しそうに溜息を吐いた。 ずっと見たくなかった。最近は、もう見ることの無かった夢だった。 やはり、アイツらとの接触のせいか。 サーナイトの意思はお構いなしに、どんどんと「夢」は進んでいった。 懐かしい。でも決して良い記憶ではない。 サーナイトはようやく体が自由になることに気がついた。 ぴくり。ぴくりと腕が動く。それだけでもずいぶん嬉しい気がした。 ふわりふわりと、まるでチルットのような気分だ。 空を自由に飛びまわる。無性に嬉しい自由感。 すると、一つの部屋が見えた。何かの泣き声が聞こえる。 ゆっくりとその部屋の中に入る。 するとそこには、ラルトスとサーナイト、人間が一人居た。 見たところサーナイトは女で、人間は男だ。 すると真中に居るラルトスは---- 『...僕....か....?』 何度も同じ夢を見たが、この展開は初めて見た。 今生まれた。というように泣き喚く自分。なんて不思議な光景だろう。 ゆっくりと近寄ってみる。やはり、自分は見えていないようだ。 サーナイトはラルトスをあやすのに手一杯。男はすぐに出ていってしまった。そうなると、このサーナイトは彼のお母さん。ということに。 先ほどの男はお父さん。ということになる。 まさか、夢で会うなんて思わなかった。 サーナイトは、父や母と会ったことは無かった。 サーナイトの父と母は、彼が物心つく前に、記憶がちゃんとする前に死んでしまったのだった。当然写真も無い。 だから実物を見るのが初めてだった。 しかし、父と母をもっとよくみようとサーナイトが近づこうとすると、また画面が切り替わった。 ぐらり。サーナイトの視界がゆれ、ようやく安定感を取り戻したときには父も母も居なかった。次には、自分自身が見えた。 まだラルトスで、研究員らしき人間と人語で喋っている。 そう...もう先ほどの説明でお気づきであろう。 サーナイト..ナイトは、人間とポケモンの間に生まれた異質の子だった。 ポケモンの血が濃いためサーナイトの姿だが、言葉はポケモンの言葉より人間の言葉のほうが話せる。今、ラルトスは喋っている。 『僕の名前は...00-1?なぁに、それ。』 「お前の名前だ。お前は研究材料なんだ。余計なことは気にするな。」 『けんきゅーざいりょおってなぁに?』 「...黙っていろ。00-1!」 男は怒り、ラルトスを殴り部屋を出ていった。 男が電気を消すと、ラルトスは一人。真っ暗な部屋の中へ取り残された。 そんな状態を見ていて、サーナイトは今すぐ夢が覚めてくれるよう願った。気分が悪い。頭が痛い。 これ以上見ていたら 自分が自分で無くなりそうだ。 『う...覚めて...お願いだから...』 必死になって頭痛に耐えて、解らない何かに、誰かに頼む。 お願いだから。と。苦しくてたまらない。と。 それでも、無情にサーナイトの記憶は流れた。 その時だった。 苦しんでたサーナイトは、目を見張った。 そうだ。これは.... 久々に見た、記憶だった。 何かの研究会で、どこかの組織とこっちの組織がお互いに、 それぞれの研究成果を発表するための会合があった。 そこで....彼は、会った。 あの人に。 続く。 |
月影 | #19☆2004.11/23(火)17:49 |
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Let’s GO!-犯人探して..「初めまして」- サーナイトは唐突に思い出した。 今までの苦しさも全部吹き飛ぶくらいのショックがたたきつけられた。 でも、決して痛くは無い。むしろ嬉しい。 ここにきて、酷く懐かしく嬉しい感覚が自分の体を駆け巡るのを、サーナイトは感じた。 『まさか...これは...あの時..。』 うわ言の様にブツブツ繰り返すサーナイトの前を一人の研究員が横切った。手に、幼少時代のサーナイト...つまりラルトスを抱きかかえている。ラルトスはそのまま研究員に運ばれると、一つの小さなケースの中に落された。 『わっ。』 「大人しくしているんだ。00-1。もしも逃げたら、十万ボルトの刑だ。」 ぽすっという軽い音を立て、ケースの中に着地する。 下に毛布が敷いてあったため、たいした衝撃はラルトスの体には来なかった。 研究員は、ラルトスが入ったのを見るとすぐに別の研究員の元へ行ってしまった。つまらなそうにラルトスは毛布を腕に巻きつけたりしてひまを潰した。 昔のラルトスの立場からすると、つまらないことこのうえないだろうが、サーナイトの立場からするとすごい光景だ。 幼少期の自分はわからなかったが、よくみるととんでもない会議だ。 何人もの人が大きな研究室に入ったり出たりを繰り返し、 着席する。何か...何か情報が得られるかもしれない。 ぐっと研究者の方へ近づこうとするが、すごい反動がかかり思いっきり地面にたたきつけられてしまった。 『くっ....!?』 一体何故。と思った瞬間に理解した。 今までの光景は全て幼少期、ラルトス時代に見た光景の記憶であり、 ラルトスの視界から外れたものは、見えても近づけないのだ。 悔しそうに握り拳を作った直後、すぐに解いた。 研究員に抱かれた、一人の少女が目に入った。 綺麗な銀色の髪、細めな小さな体。そして----- 『!!』 灰色と、紫の眼。 そう、サーナイトのパートナーである、あの「少女」だ。 少女はゆっくりとラルトスと同じケースに入れられた。 ここで、ラルトスと少女は初めてであったのだ。 ラルトスは、突然来た少女に驚いて小さく叫び声をあげた。 『わっ!...君、誰?』 「私....?」 小さな少女は、ラルトスの反応を全く気にもせず、微笑んだ。 その対応にラルトスはまた驚いた。 「私は、名前が無いみたい。真っ白な人は何も教えてくれないの。」 『ふうん。僕は、00-1。1。だよ。』 「1?...宜しくね。」 『うん、宜しくね。』 そう言ってにこやかに挨拶を交わした二人だったが、先に少女が悲しそうに溜息を吐いた。 「私の言葉は、やっぱりわかるんだね。」 『え?どういうこと?』 「私はちょっと変みたいなの。ポケモンと話せて、言葉がわかるの。」 そう寂しげに言う少女に、ラルトスの口からは思わず言葉が飛び出た。 『え...?それ、僕と一緒だ!』 「え?一緒?」 首をかしげる少女に、ラルトスはにっこり微笑んだ。 少女は不思議そうにまた首をかしげた。 『僕はね、人間と話しが出来て言葉がわかる。』 「私は、ポケモンと話せて、言葉がわかるの。』 お互いに、反対。ということだ。 二人は笑い合った。 不思議だね。可笑しいね。 『「私達、(僕達)、きっと仲良く出来るね!」』 お互いに声を合わせて、幸せそうに笑いあった。 でも、そんな時間は束の間。すぐに時間は過ぎて、お互いの研究発表が終わったようだ。 少女は研究員の腕に抱かれ、連れてかれそうになった。 「さぁ、行くぞ。」 「え...嫌だ!せっかく友達が出来たの。離れたくないよ!」 そういって少女はラルトスの手をしっかりと握って離さない。 そんな少女の手を、ラルトスも強く握り返した。 ギュッと強く結ばれた手は、簡単には外れない。 困り果てている研究員に、ラルトスの世話をしている研究員が策を出した。 「じゃあ、置いていったらどうだ。次の会合にこの子を返そう。」 「...ふむ。それならばいい。いいだろう。」 そう言うと、少女の世話役はパッと手を離していってしまった。 少女とラルトスはにっこり笑って、また話始めた。 〈懐かしい..。昔からあの人はああだったな。〉 そうサーナイトが呟いた瞬間。一気に記憶が全て掻き消され、 気がついたら真っ白な天井が目に入った。 『!?』 慌てて起きあがったサーナイトの側に、アブソルが寄って声をかけた。 『大丈夫か。随分うなされていたから心配したぞ。』 警戒してるような声は無く、本当に心配した。というような少し温かなアブソルの声に、サーナイトは落ち着きを取り戻した。 『フェイト....貴方が僕とマスターをここへ?』 『あぁ。PCまで運ぶのは骨が折れたぞ。町を歩く人間の視線が痛かった。ここはカナズミだ。』 相当町の人の視線がうざったらしかったのか、思い出すだけでも苛々する。といいたげなアブソルの表情に、サーナイトは苦笑いした。 『それはお疲れ様です。ありがとうございました。ところで、マスターは無事ですか!?』 ハッとしたように表情が一気に変わるものだから、アブソルは面食らいながらも笑った。 『大丈夫だ。隣の部屋でジョーイとやらが面倒を見てくれている。 気を失っているだけだ。』 『良かった....。』 ホッと溜息をつくサーナイトを見て、アブソルは呟いた。 小さすぎる声で聞き取れなかったサーナイトは、聞き返した 『何ですか?』 『いや...その..お前等って兄妹みたいだな。と思って..。』 とくに過保護な兄と。と言おうとしたアブソルの声は口を出る直前で押しとどめられた。 サーナイトの表情が一瞬にして凍りついたからだ。 「兄妹」発言にショックを受けているようだ。 『兄....妹...ですか....?』 『!!』 ぎらりとサーナイトの目つきが落ち込みから怒りに変わったのを、アブソルは感じ取った。眼が語っている。 -どこをどう見たらそうなるのかいってみてくださいよ。ねぇ?- 『いや...違う。間違えた。どちらかというと恋人に近い!!』 慌てて言い換えたアブソルの言葉に、サーナイトはまた固まった。 また何か間違えたか!?とアブソルが慌てたときだった。 『やだなぁフェイト、何言ってるんですか?僕とマスターが恋人って..。』 そういうサーナイトの顔が真っ赤なのを見て、アブソルはん?と何かが引っかかった。 まさか、コイツ。本気で..... しかし言うのはやめといた。 先ほど感じたあのまなざしが彼の言葉を止めた。 少女はまだ気を失ったまま。 続く |
月影 | #20★2005.01/01(土)17:12 |
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Let’sGO!-少女お目覚め。ついでに危険迫る- 微かに聞こえた小さな声に、PCの華。某トレーナーの愛のキューピッド。 ジョーイは少女のほうを振り返った。 先ほどまで看病していたものの、一向に目覚める気配が無いのでそっとしておこうと部屋を退室しようとした瞬間だった。 「あの...?起きたの...?」 ジョーイが慌てて駆け寄ると、少女の瞼は少し持ちあがっていた。 綺麗な神秘的な目に、ジョーイは一瞬息を呑む。 「まぁ...、綺麗...カラーコンタクト?」 「!」 そうジョーイがたずねると、少女は体を震わせ布団にもぐりこんだ。 ジョーイは何か悪いことでも聞いてしまったのか。と慌てた。 そこへ、サーナイトのナイトとアブソルのフェイトが入ってきた。 『こんにちは。今までお世話ありがとうございます。』 「え!?..ポケモンが...喋って....!?」 いきなり入ってきて、更に人間語をスラスラ喋るサーナイトに、ジョーイは驚きを隠しきれないで口を覆った。そんなジョーイの反応にサーナイトは苦笑いした。 『はは。気にしないでください。ちょっと人間の言葉を練習しただけです。』 「まぁ。随分と賢いのね!流石エスパータイプだわ!」 サーナイトの小さな嘘に対し、ジョーイはああそう!と簡単に納得してしまった。 その側で随分早い理解だな。とアブソルは呆れた。 「えぇ。もちろん気にしないで。ところで...あの子に眼のことを聞いたら布団に潜ってしまったの。何か悪いことだったら謝るわ。...それじゃあ。」 ジョーイは少し不安そうな顔をして、それでもどこか申し訳なさそうな顔をして部屋を出た。他のポケモンの面倒を見るためだ。 サーナイトはペコリと一礼すると、少女の側に座った。 『マスター。大丈夫ですか?』 「.....。」 狸寝入りをしているのか、全く動こうとしない少女。 きゅぅ。っとシーツの端を強く握り締める少女に、サーナイトは苦笑した。 話し掛けるのを止め、ぽんぽんと少女の頭の位置を少し撫でてあげた。 「.....。」 ようやく少女が布団から顔を除かせた。 布団の中に頭を突っ込んだせいで、髪の毛はいくらかぼさぼさになっていた。気になるのか、髪に手を伸ばそうとする少女に、 サーナイトが櫛を差し出した。 少女はそれを受け取り髪を梳かし始めた。 言葉の無いやり取り。 それでも通じるから凄い。 改めてアブソルは不思議だと思った。 少女が髪を梳かし終えると、 少女は顔を上げずに呟いた。 「変な...夢を見たの。」 『......。』 俯いたまま、今までは全く聞いたことの無い悲しそうな小さな声にまたもやアブソルは驚かされた。 今までの少女のイメージは、明るく元気な常識の無い女。だった。 それがこんなにも切なくて、雪のように消えてしまいそうになるとは思わなかった。 サーナイトは、聞き返すことも無く、驚いたそぶりを見せることも無く、ただ静かに少女のほうを見つめていた。 少女はゆっくりと語り始めた。 ----------------------------------------------------- 昔のことだったんだ 私はお父さんも、お母さんも知らないの。 気がついたら、居なかった。 気がついたら、消えてた。 気がついたら、全部が真っ赤だったの。 最初は皆で仲良く暮らしてたはずなんだ。 そこまでは覚えているの。 でもね、ある日突然何かが起こったんだ。 お母さんとお父さんが、いきなりガクリ。って倒れた。 慌てて近寄ったんだけど、赤いものしかもう見えなかった。 次に見えたのが真っ赤な服と真っ白な服で。 真っ白。は私を抱えた。 真っ赤。は母さんと父さんから何かを取った。 それで、次の日からは全部が真っ暗になった。 -------------------------------------------------------- 普通に聞いていると、全く意味がわからない。 よくわからない。というふうにアブソルは少し難しい顔になった。 しかしサーナイトはそれが何なのかを理解しているかのように、 キュッと口を結ぶと、静かに目を閉じていた。 少女の語りはそこで終わった。 アブソルはずっと語りに集中していて気がつかなかったが、 気がつくと、少女の目からは大粒の涙が溢れていた。 カタカタと肩も震えていて、何かに怯えているようだった。 そんな少女に、サーナイトはハンカチを渡すと、震えている少女の頭をゆっくりと撫でてあげた。 少女は静かに涙をこぼしつづけていた。 ******************************************************* その頃だった。 真っ赤な装束の一団は、火山の秘密基地に集まっていた。 超古代ポケモンのグラードンの復活を目的とする、大地愛好家だ(誤) 何人かはマスクを装着し、そのうち一人はくしゃみをしていた。 それは先ほどサーナイトに海面に叩きつけられた奴らだった。 そのうちの一人の少女を無理やり抱えあげた奴は全身打撲。 会議にさえも参加できない重傷を負っていた。 その時だった。 すこしばかりあったざわめきが、一瞬にして掻き消された。 マグマ団を統べるリーダー、マツブサが立ちあがった。 「お前ら、よく聞け。 先ほど流星の滝に向かった奴らからの連絡だ。 『あの』二人が居たそうだ。」 その言葉と同時に、何人かが驚いたように顔を見合わせた。 それでもマツブサは気にせず話しを続けた。 「アイツらは十分育った。力も発動できるらしい... まぁ、お互いがお互いを護るためにのみ発動するようだが。」 関係の無い第三者からすれば、全く理解できないことだ。 何を話しているかも解らない。誰のことを指しているのかも不明だ。 しかし、団員全てはそれを理解しているようににやり。と笑った。 「お前らの今後の活動は、 『アイツの奪還』と『藍色の玉の回収』。そして.... 『邪魔者の排除』に集中してもらう。いいな?」 「「「「「「おお!!」」」」」」 マツブサの声に、団員は声をそろえて返事を返した。 そして、各自バラバラになり外へと飛び出した。 全員が居なくなった後、マツブサは一人でニヤッと笑った。 「今度は逃がさないぞ...グラードン復活のための生贄達....。」 謎めく不気味な存在、マグマ団! 目的は何だ?生贄とは誰? サーナイト達は、無事に犯人を探し出せるか--!? 続く |
月影 | #21★2005.01/01(土)17:50 |
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Let’s GO!-真相は何?彼らの秘密-前編 どれだけ時間がたったのだろうか? 少女は静かに布団の中で寝息を立て始めていた。 そのすぐそばにはサーナイトとアブソルがいる。 会話の無い静かな時間が流れた。 どうも少女が居ないと会話というものはあまりでないらしい。 カチリ、カチと静かに時を刻んでいく時計の音だけが、 会話の無い部屋に大きく響いた。 『.....なぁ、ナイト。』 『何ですか?』 ようやく静けさを止めたのは、アブソルのフェイトだった。 『そいつも、お前も...何か秘密があるんだろ?』 『....何故、そう思うのですか?』 そいつ。とは少女のことであろう。 そんなことありませんよ。という否定の言葉ではなく、 何故思う。という問いかけに一瞬アブソルの声が詰まりそうになった。 が、出来るだけ平常心を保った。 『理由は三つある。一つは先ほどの赤の集団。 だって、おかしいだろ?長い追いかけっこだったな。なんて。 普通はまず言わない言葉だ。 ...お前等とあの集団に何かしらの関係が無い限りな。』 『....。』 『二つめ。お前のことだ。 俺はポケモンだからお前の言葉がわかって当然だから解らなかった。 だが、ジョーイ。アイツはお前が人間の言葉を喋っていると言った。 つまり、お前は人間と話せる。会話が出来る。』 『.....。』 全て無言でただ聞いているだけのサーナイト。 アブソルは、そんな態度に自分の言動に不安を覚えたが、続けた。 これが決定的。とばかりに。 『そして三つめ。....アイツの事だ。(少女を視線で促した) ジョーイの言ってることが正しいのなら、アイツとお前が話せるのは解る。お前が人間の言葉を喋れるならな。 ...だが、アイツは俺の言葉がわかる。 つまり、アイツもポケモンとの会話が出来るんだ。』 『.....。』 『何があるんだ?お前達とあの赤い集団。 お前達の持ってるその不思議な力と何かあるのか? それに、アイツの夢に出た「赤」ってのも怪しい。 赤。というのはあの赤い集団を指しているんじゃないのか? 更にあの赤い集団は「長い追いかけっこ」と来た。 って事はお前達はあの赤い集団追われているんだろう? つまり、お前達はあの集団の秘密を。自分達の秘密を隠し、 逃げつづけている。....そうじゃないか?』 すべてをアブソルが言い終えた後。 サーナイトはフゥ。と溜息を吐いた。 『凄いですね、貴方は。探偵みたいですよ。』 『話ははぐらかすなよ? 俺は、お前達の秘密について聞きたい。』 話を別の方向に持っていこうとしたサーナイトに、アブソルは追い討ちをかけた。 『...でも...。』 『....俺だってお前達の仲間なんだから。 秘密はあまり作らないでくれ。悩みなら..相談にも乗れるだろ?』 サーナイトは困ったように、でも覚悟を決めていたようにアブソルを見据えた。 『解りましたよ。 全て、話します。』 時計は、狂うことなく時を刻みつづけていた。 続く |
月影 | #22☆2005.01/03(月)11:48 |
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Let’s GO!-真相は何?彼らの秘密-中編 『僕達は、お互いに異質な存在なんですよ。』 二人の秘密についての話は、ここから始まった。 突然「異質」と言われても反応に困る。 そういいたげな表情でアブソルはサーナイトを見た。 サーナイトは、話を続けた。 『僕は、あの赤い集団.... マグマ団の特殊秘密基地の遺伝子操作で生まれたんですよ。』 アブソルは言葉を失った。 遺伝子操作。 そんな凄すぎる事が出てくるとは思わなかった。 唖然としているアブソルを横目で見つつ、 サーナイトは窓の近くに立った。 『僕はその中で、「超古代ポケモン・グラードン」の復活のために。 生贄のような役で造られたんですよ。研究員にね。』 さーっと窓の外から風が流れ、カーテンをひらりと泳がせた。 アブソルは、驚きすぎて言葉も無いようだ。 口を何度も開いては閉じたりすると、ようやく言葉を出した。 『生贄...!?』 『そうです。生贄ですよ。 超古代ポケモン・グラードンの復活には問題があったんですよ。 それはグラードンの制御。彼が暴走してしまっては意味が無い。 忠実にいうことを聞く下僕にする必要がありますからね。 ポケモン、グラードンの言葉が人に伝わるようにする必要がある。 しかし、ポケモンの言葉が話せる人間。 人間の言葉が話せるポケモンなんて本来居ないんだ。』 -この二つを混ぜない限り- ここから先はもう解るでしょう?とサーナイトは微笑んだ。 その表情が淋しすぎて、アブソルは目をそらした。 そして、呟いた。 『つまり..マグマ団の研究員は..。』 『ええ。人間とポケモンの遺伝子を混ぜ、子供を造らせたんですよ。』 辛そうに目をそらすアブソルに、サーナイトは続けた。 『父親を人間、母親をサーナイトとしたんです。 エスパータイプで人型に近いからね。 人間の言葉を理解しやすい。 そして、その二人の間に生まれた子供が僕なんですよ。』 だから、人の言葉を喋ることが出来る。理解が出来る。 だが、当然最初から喋れるわけは無かった。 ただほかのポケモンより理解に優れるだけ。 ただ話すことに関して他のポケモンより上なだけ。 そこから桁違いな拷問のような訓練を受け、今に至る。 『...で、次はマスターについてですか....。』 ここで、ずっと喋りつづけていたサーナイトが溜息を吐いた。 言いづらい。とばかりに首を振った。 しかし、アブソルの真剣な眼に、辛そうに話し始めた。 『彼女もまた.....悲しいくらいに辛い道を歩いてきたんですよ。 下手したら、僕以上に辛い道を。』 サーナイトに隠されていた、悲しい過去。 それ以上に辛いといわれる少女の過去とは....!? 二人の秘密は、どこで糸を結ぶのであろうか.... 続く |
月影 | #23☆2005.01/03(月)13:07 |
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Let’s GO!-真相は何?彼らの秘密-後編 『...マスターのことを説明するのは、気が重いですけど...。』 そう言うと、サーナイトは悩ましく溜息を吐いた。 恐らく言うべきか言わないべきか迷っているのだろう。 そんなサーナイトに、アブソルは促した。 『大丈夫だ。いくらなんでもからかう訳が無いだろう? いいふらしもしない。』 ハッキリと、力強く言うアブソルに、サーナイトは微笑んだ。 『解りました。...では、話してあげますよ。』 また、一瞬の間静けさがアブソルとサーナイトの周りを取り巻いた。 決して心地よいとは言えない感覚だったが、二人とも慣れた。 『マスターも、僕と同じように生まれたんですよ。』 『やはり...。』 先ほどのサーナイトの話を聞いて、 ある程度の予測は出来ていたようだ。 アブソルはサーナイトのときよりは衝撃が少なそうだ。 だが、サーナイトは暗い状態で続けた。 『ですが、マスターと僕とが決定的に違う点が一つあります。』 『何だ?』 決定的に違う点。 それはどういうことなのか。 ポケモンと人間ということに対する差のことなのだろうか。 理解しづらそうに顔をしかめるアブソルに、 サーナイトは一瞬間を置いて、一言言い放った。 『マスターは、故意に遺伝子操作をされたのではなく、 両親自身がポケモンと人間で愛し合ってしまったんですよ。』 この言葉にアブソルは、金槌で頭を殴られたような感覚になった。 サーナイトの時以上にショックを受けたかもしれない。 実験などではなく、両親が愛し合ってしまった。 『そ..そんな感情が普通芽生えるものなのか?』 冷静なアブソルも、流石に冷静さは失った。 多少動揺し始めた。 サーナイトは、目を伏せて呟くように語った。 『マスターの両親は、お互いに研究材料としてマグマ団に誘拐... 捕らえられてきたんですよ。 ♂のサーナイト、人間の女性。 お互いに誘拐された身ということもあって、 仲は他のどんな人より深かった。 そして、それはいつしか愛へと変わった。』 と、ここでアブソルが怪訝そうな表情をした。 視線が訴えている。 「何故、お前はそんなことを知っている?」と。 その視線に、サーナイトは同じく視線で答えた。 「後で説明しますから、聞いててください。」 『そして二人は---脱走した。』 サーナイトの言葉に、アブソルは目を見開いた。 『何でだ?何故突然脱走する?愛し合っ-----』 ここで、アブソルの声が途切れた。 ようやく理解できたようだ。 サーナイトは頷いた。 『ええ。愛し合っていたからこそ、二人で生きたかった。 誘拐されたのなら、また逃げればいい。 そうして二人は無事マグマ団のアジトから脱出した。』 -しかし、それは罠だった- 『マグマ団からしてみれば、実験用の生贄、モルモットなんて 逃げたって構わないんですよ。また別のを捕まえればいい。 そしてその標的となったのが、数年後に生まれる二人の子...』 - マスターだったんですよ。 - 『そうして、あとはマスターの夢で理解できたでしょう?』 そう。 つまり少女のみた夢は、少女を狙いに来たマグマ団達。 彼らが家族で暮らす家に侵入し、少女を攫って行った時の事だった。 『つまり、アイツの両親はあの時に殺されたのか....。 そして、次の日から全てが真っ暗。って事は....。』 『両親を殺され、更にそれが理解できないほど幼かった。 そんな子が親の血だまりに落ちたら、動かない親を見たら、 確実に神経は殆ど狂うでしょうね。 でも、マスターは耐えられた。』 そうだ!とばかりにアブソルが反応した。 『第一、夢のことでアイツが 「真っ赤がお父さんから何かを取った」といっている。 それに、何か関係があるんじゃないか?』 『.....貴方は、本当に賢い。正解です。 マスターは、親からとあるものを受け継いだ。渡された。』 それは父がサーナイトということによる、ポケモン式の技の遺伝。 『マスターは優秀な血からを持つサーナイトの、 エスパータイプの力を受け継いだんですよ。』 『.....!!』 驚愕するあまり、アブソルは声が出なくなった。 サーナイトは続けた。 『そしてもう一つ。 マスターの両親は、脱走する際にとある物を奪い脱走した。 それをマスターは引き継ぎ持っている。』 『...とあるもの?』 尋ねようとするアブソルに、サーナイトは首をふった。 『これは僕も言えません。これだけは、絶対に言えない。 もう少し、もう少し待ってください..........。』 絶対に言う気は無いのだろう。 それに、もう十分過ぎるくらい聞いた。 アブソルは頷いた。 サーナイトはほっとしたように話しを続けた。 『話を戻しますよ。 マスターは誘拐された後、様々な拷問。もとい訓練を受けました。 そして、ある日各自研究の成果の発表会があったんです。 僕はその時まだラルトスでしたが、 研究材料として連れて行かれました。そこで---』 『成る程な。お前達は、そこで出会ったのだろう?』 『...よくわかりますね。本当。 そして、出会った僕とマスターは友達になり、語り合った。 色々とね。 更に僕とマスターの我侭で、マスターは一日だけ。 僕の居るマグマ団のグループにくることになったんです。』 ここまで来ると、解りますよね? サーナイトがそう言うと、アブソルは頷いた。 『お前達は、恐らくその日に二人で脱走したんだろう?』 『ええ。全くもってそのとおりですよ。』 『それで、それ以来ずっと逃げつづけて居ると?』 『はい。そうですよ。』 あっさりとサーナイトは言ってのけるが、 その間には色々とあったのだろう。 いくら能力を持っていても、ラルトスと子供だ。 相当大変な道を乗り越えたのだろう。 『....今日は色々と疲れましたね。眠ってしまいますか?』 『....あぁ。』 残りはお互いに会話も無く、 あっさりと二人ともすぐに眠りに入った。 少女の秘密、サーナイトの秘密。 彼らはお互いに計り知れない壮大な過去を背負っていた。 そんななか、二人を狙うマグマ団。 彼らはマグマ団から逃げ切れるのだろうか? アブソルはどうでる? 次回、マグマ団がついに行動を始める。 続く |
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