ぴくの〜ほかんこ

物語

【ぴくし〜のーと】 【ほかんこいちらん】 【みんなの感想】

[57] Τ〜タウ・月と泉の物語〜

鋼彗☆β #1☆2003.10/28(火)19:22
〜プロローグ〜

…西暦2003年。
カントー・セキチクシティ。
カントー南部の半島の先にある、のどかな街。
ヤマブキやタマムシなどの大都市からだいぶ離れているため、空気も澄んでおり、人にとっても、動物にとっても、そしてポケモンにとっても住みよい町であることには相違ない。

…そんなセキチクシティの東郊外。
…ここには、不思議な祠がある。
雪の神、フリーザーを祀るという…
そこを守っているのは…なんと1人の少女。
フリーザーを守るのは…大人ではなかった。
少女の名はクラリス=ジャイクガルハー。
彼女等は先祖代々、フリーザーを祀り、守ってきた。
しかし1年前、先代…つまりクラリスの父親がなくなり、先代に男の子がいなかったため、一人っ子のクラリスが継ぐことになったのだ…

クラリスにとってはかなり重い役目。
しかし…彼女には…心強い友人等がいたから…
同じ役目を背負った心強い友人等が…
陸の神・グラードンを守る、フィアナ=フェランダン。
海の神・カイオーガを守る、ティナ=ルティクミノス。
森の神・セレビィを守る、ターナ=ヴァレニオン。
町の神・ラティアスを守る、イディア=ゲルオベント。
空の神・レックウザを守る、サーナ=ヴェーチェル。
彼女等は…クラリスとは親密な関係であり、心強い味方だ…
これは、そんな彼女等の物語…
たくさんのイベントあり、急展開あり、危機一髪な場面あり、喜怒哀楽も激しい物語が…

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鋼彗☆β #2☆2003.10/29(水)20:04
…えー、本編は余談をバリバリ入れて進めていきます。
すべてが本筋じゃないのでご注意ください。

【みっしょん1/祭りの悪魔を射止めよ!】

…2003年11月。
この時期セキチクの東郊外の集落では、フリーザー祭りが行われる。
この祭りでは、やぐらの上でフリーザーが宿ると云われる水晶球からフリーザーが出され、粉雪をもたらし、幸運を祈るという祭りだ。
このフリーザーを球から出すのは、ずっとクラリスら、ジャイクガルハー家代々の仕事だ。
クラリスは今年初めての舞台。
この初陣をきれいに飾ることが役目なのだ。

クラリスは祭りの準備のときも、水晶から目を離さない。
奪われるとクラリスは責任重大だからだ。
「…あれ?もう始まってた?」
そうこうしているうちに、ティナがルネから駆けつけた。
クラリスの最高のパートナーであるティナ、祭りに来ないわけがない。
「悪いね、ティナ。わざわざルネから…」
クラリスは少しティナを気遣った。しかし…
「いやいや。ネイティオのテレポートがあるから。」
ティナは微笑みながら言った。

そして午後7時、祭り本番。
クラリスは緊張して固くなっていた。
クラリスの初陣…きれいに飾ることができるのか。
それもクラリス自身にかかっている。
さあ、いざ初陣へ…

やぐらの上から人々を見下ろす。
ティナも下で応援している。
そして、水晶に視点を移し、念じる。
呪文を唱える。
「…セキチクの土地よ。我が神・フリーザーよ。今この村に、そしてカントー全土に幸福を与えたまえ。さあ、いざ行かん…我が神フリーザーよ…」
クラリスは緊張しながらも、台詞を言い切った。
すると、水晶の中から、フリーザーの姿が現れた。
クラリスはその後言った。
「さあフリーザー…この村に幸運の粉雪を…」
するとフリーザーは、やぐらから飛び立ち、雪をもたらした。
雪は燈籠の明かりに反射して輝いた。
人々からざわめきが起こった。
フリーザーがもたらした雪に触れんとばかりに…
するとその途中、ハプニングは起きた。

「ああっ!!」
クラリスは叫んだ。
フリーザーが数十頭のカイリューに襲われている。
氷タイプのフリーザーだが、相手は多い。
ここで助太刀をして、フリーザーを守るのがクラリスの使命…
「これではフリーザーが…」
クラリスはモンスターボールからフライゴンを出し、やぐらから飛び立った。
「ティナ!頼む!!」
クラリスは地上のティナに応援を要請した。
「わかった!」
ティナは同意し、クラリスと同じフライゴンをモンスターボールから出し、フリーザーのもとへ向かった。
地上の人々は手を組み、ひざまずき、祈る。

フリーザーは氷タイプ。
何匹か、調子よく倒していく。
「さあ、この矢を射させたまえ!」
クラリスは念じ、矢を放った。
…当たった。
カイリューは力尽き、地へと転落する。
これで、すべてのカイリューを倒しきった。
クラリスは使命を果たしたのだ。
クラリスはその後やぐらに戻った。
「…我が神フリーザーよ…礼を言う。幸運をもたらしていただけたことを…それでは…新たなる長い眠りを与えんと欲す…さあ。」
クラリスがそう唱えると、フリーザーは水晶に戻り、新たなる眠りについた…

「…まあ、初陣は成功…だったかな?」
クラリスは祭りが終わった後、そういう言葉をこぼした。
しかし、これで使命は完了ではない…
明日も平和でありますように。

【続く】


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鋼彗☆β #3☆2003.11/02(日)17:43
【みっしょん2/スーパーで卵をゲットせよ!】

…祭りの日の翌朝。
朝早く起きたクラリスは、新聞の広告に目を通した。
すると…
「…何いいいいいいいい!!」   ←アホ
クラリスは大声を出して叫んだ。
そして、気が変わったかのようにテーブルを叩いて立ち上がった。
「何朝から大声出してんの?」
ティナが寝室から下りてきた。
実はティナ、前夜はクラリスの家に居候していたのだ。
「ほら、見てよコレ!!」
クラリスは寝起きのティナの顔の間近に馬のように突進し、広告を見せようとした。
しかし、力が入って、引っ張った広告はビリッと音を立てて破れた。
(アホかこいつは…)
ティナは顔には出さないがそう思っていた。
「あらら…破けちゃった。」
「どうしたら破けるんだ?!」
ティナは激しいツッコミを見せた。
「まあいいとして…ほら、コレ見てよ!ここ!!」
クラリスはティナにルーペを差し出し、広告を近づけた。
「ルーペはいらんて……へぇ。卵1パック28円。安いね〜〜」
ティナは余り驚かない。
「フッ…そんなくらいでテーブル叩いて何かを発見したオヤジみたいにガーガー言ってるようじゃ、まだまだだね。」
次にティナは、追い討ちするようにこう言った。
「…見たらすぐ行くべし。さあ走れ!!」
ティナはかなりツッコミキャラかと思ったら、天然ボケも混じっていた…
「じゃあ、逝ってくるね〜〜」   ←誤字
「はいはい、勝手に逝ってなさい。(笑)」
クラリスは惜しまれながらも天国へ逝った………
……というのは嘘で、スーパーへ駆け足で行った。
このティナのツッコミは酷すぎる。

午前8時、開店2時間前。
クラリスはピジョットに途中から乗り換えて早めに着いた。
しかし、目の前には長蛇の列。
「アラマー…(マレー語の『あらまぁ』の意)」
トリビアのクセが抜けないクラリス。天然ボケは一生治らない。
クラリスは周りの主婦たちから、別の意味で視線を浴びていた。

…午前10時、開店。
店のドアが開けられると同時に、雪崩のように客が押し入る。
クラリスも遅れながら入る。
「…一歩遅れを取ったか…」
しかし、クラリスは諦めない。諦めが悪いのもクラリスの持ち味だ。
そして、目当ての卵のカートが入ってきた。
主婦たちが歓声を上げながらカートにアリのように群がる。
クラリスは手が届かない。
「ピジョット!」
クラリスはピジョットで低空飛行。
いいのかどうかはわからないが…
そして競争に空から参加し、見事卵をゲットした。

卵をゲットしたクラリスは精算を済ませ、ピジョットで家に戻った。
「ただいま〜……」
クラリスは靴を脱いで上がろうとした…そのとき!
「おっと!!」
………コケた。
クラリスは転び、卵は潰れてしまった。

…ふりだし、もしくはそれ以前に戻る。

【続く】
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
早速余談が入りました。
本筋も進めていきます。
下がやたらと空いてますが気にしないでください。
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鋼彗☆β #4☆2003.11/03(月)20:54
【みっしょん3/モモンとセレビィを全力で死守せよ!】

…力尽きた者が約1名。
それを覗き見した悪魔も約1名。
そして、つぶされて黄色に染まった哀れな卵が1パック。
更に、水の泡と化した28円+消費税。
そんな場に、一本の電話がかかってきた。
力尽きて玄関先で伏せているクラリスの代わりに、ティナが受話器を取った。
「もしもし。」
ティナは普通に対応した。
『あ、もしもし、クラリス……ああ、ティナ?ターナだけど、何でティナが?』
電話の主は、2人の親友で、2人より1歳年上の15歳のターナ。
「ちょっとクラリスがショックで力尽きてるもんでさ…代わりに出たってわけ。私、昨日祭りがあって、クラリスの家に居候してるんだ。」
「ほー、なるほど。…まあそれは置いといて、ティナさ、ちょっと手伝って欲しいんだ。実は…家のモモンがそろそろ収穫時なんだ。だけど、人手が足りなくて…だから…ね。」
ターナは毎年、春のクラボ、夏のパイル、秋のモモンといった3種類の木の実を育てている。まあ、小さな果樹園といった感じだ。
そろそろモモンが収穫の時期らしいが、人手が足りず、クラリスらに手伝って欲しいとのことだ。
「まあ…いいけど。クラリスは今のところ行けるかわかんないけど…フリーザーについては、集落の人に見張ってもらうとかして…私のカイオーガも妹が見張り番してるんだけどね。」
ティナは快く受け入れた。
そして、クラリスの様子を見る。
「クラリス、大丈夫?」
ティナはそう言いながら、クラリスの肩を優しく叩いた。
「…卵…卵おおおおおおおおおおおお…」
クラリスは暗い声でそう呟き続けている。
「これからさ、ターナのとこにモモンの収穫手伝いに行くんだけど…行ける?」
ティナはクラリスの顔を覗きこみながら言った。
「…卵……」
「まあ、行ってくるから。留守番しててね。」
ティナはついにクラリスを見捨てて、1人でターナの住むヒワダへ向かった…

ペリッパーで飛ぶこと3時間。
ティナはやっとこさジョウトの南の町、ヒワダヘ到着。
ターナはこのヒワダのウバメ地区に住んでいる。
「ウバメの森」と呼ばれる深い森の中だ。
セレビィが宿る祠もそこにある。
「あ、来た来た。」
ターナが出迎えてくれた。
「クラリス…ダメっぽかったよ。かなりショック受けてるね。大げさすぎるほどに…」
ティナは事情を話す。
「…ま、いっか。じゃあ、モモンの収穫。」
ターナは果樹園に誘導した。
しばらく歩く。セレビィの祠の脇にモモンの果樹園はあった。
「今年は豊作だよ。結構疲れるね。」
そう言っていると、イディアやサーナ、フィアナも集まり、クラリスを除いて全員集まっていた。
「さあ、始めよう。」
5人は収穫作業を始めた。
…セレビィの祠も脇で近いため、襲うものがあれば、すぐわかる。
万一襲われれば、いつもより人手もいる。
ターナ、ティナ、サーナ、フィアナ、イディアの5人もいるわけだ。

しかし、収穫開始20分、早速敵はふらりと現れた。
ヨルノズクの群れが祠を荒らしている。
20匹くらいのヨルノズクが、祠に群がり、つついている。
「ヨルノズクが…許せん!!」
ターナは怒りの姿勢を見せ、ポケモンを出そうとした。
しかし、ターナのエキスパートは草、飛行タイプのヨルノズクとは相性が悪い。
「ここはウチが相手したるわ。」
そこで、イディアが名乗り出た。
イディアのエキスパートはエスパーと電気だ。
しかし、イディアはポケモンを使わず、剣を抜き、自分で戦うようだ。
「さあヨルノズクどもめ、観念しいや。致命傷は与えへんからな。」
イディアは剣を軽く舐め、構えた。
「覇ッ!!」
イディアはヨルノズクを突いた。
何匹かのヨルノズクは観念したようだ。
しかし、これでは効率が悪すぎる。
「さあ、援護体制!」
サーナがイディアの後ろで、得意の弓矢でカバーする。
「射よ!」
サーナはそう叫び、矢を放った。
矢は見事に命中。ヨルノズクの数はどんどん減っていく。

戦い始めて5分、すべてのヨルノズクを倒しきった。
戦闘に参加したイディアとサーナは、ばてていた。
「まあ、イディアとサーナは少し休んで…収穫再開しよう。」
モモンの収穫はすぐに再開された…

ちなみにその頃のクラリス。
「…卵があああああああ…」

【続く】
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鋼彗☆β #5☆2003.11/11(火)22:14
【みっしょん4/誘導作戦を成功させよ!】

…再開されてから30分、モモンの収穫はすべて終了した。
みんな帰ろうとしたとき、ティナが突然引き止めた。
「…ちょっとセキチクのクラリスのとこに来て。もう本当にヤバそうだから…」
ティナは、皆にクラリスに励ましのエール(?)を送ってもらいたいと考えていたのだ。
ティナはそのことを説明すると、皆了解してくれ、快くついて来てくれた。

……3時間後。5人はセキチクのクラリスの家に到着。
「ただいまー。クラリスー?」
ティナがクラリスを呼んだ。
しかし、返事はない。家の中は静まり返っているような気がするが、やはり物音がする。
「どうせ部屋にこもってるんでしょ、きっと…」
ティナはそう察し、クラリスの部屋のドアを軽くノックした。
「クラリス?入るよ。」
ティナはそう言ってドアを開けた。
するとクラリスはベッドで寝ていた。
「何だ、寝てるの?何か物音がしないと思ったら…」
ティナはクラリスが寝ているのを確認して、ほかの4人を呼びに行った。
「クラリス、寝てたから。ここはクラリスの好物であるシフォンケーキで釣ろう……」
ティナの何か企んでいるような言行。
そう、ティナらはモモンの収穫のとき、一緒にフエン温泉でも行こうと話し合っていたのだ。それにクラリスも連れて行こうと…
「みんな、ちょっと待ってて。シフォンケーキ買ってくる。クラリスのエサにね…」
そういうことで、ティナは近くの洋菓子屋に、シフォンケーキを買いに出向いたのだ…

まあ、こんなことでバカらしいと考えるだろう、普通は。
しかし……
「…ねえクラリス、フリーザーほっぽっといていいの?」
ターナがノンレム睡眠をしているクラリスに問いかけた。
「…というか、私だってセレビィ任せっぱなしなんだけど…」
ターナがそう言った瞬間、
「あ、フリーザーがっ!!」
イディアが大きな声で叫んだ。するとクラリスは気が狂ったかのように起きた。
おかしい。おかしくて周りは笑いの渦が巻き起こる。
「フリーザーが……祠の中で眠ってるなあ。」
「騙すのは戦闘の基本」といつも語るイディアのこと、騙すのは人一倍うまい。
というか、クラリスが騙されやすいだけ。
「もう、あんま騙さないでよ…まあいつものことだからいいけど…」
クラリスはあっさり許した。
そのとき、ティナが洋菓子屋からシフォンケーキを買って帰ってきた。
「あれ、クラリス起きてたの?……チッ、意味なしか…」
ティナは少しガッカリだった。
クラリスはたまに釣ってみると面白いから。
「ほら、あんたの好きなシフォンケーキ買って来たよ。みんなで食べようよ。」
そう言うと、クラリスはティナの持っているケーキの箱に飛びついた。
しかし、力が入りすぎて、箱は吹っ飛んだ。
そして、吹っ飛んだのは思いもよらず先にあった窓から庭へまっさかさま。
「………………………。」
一同、唖然。
クラリスはそれでも、庭に取りに行った。まだ食えるかもと。
しかし、そのケーキは庭にいたクラリスのポケモン達によって完食された。
器用に箱を空け、中身をおいしそうに食う。
クラリスが外に出たときには、ポケモン達が口の周りに白いクリームをつけて待っていた。箱はボロボロに破けている。
「…ノオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
クラリス、また叫び。
ティナは慌てて窓の外に顔を出し、
「あらまあ。仕方ないね、クラリス。」
そう言って見過ごした。
フリーザーもきっと呆れていることだろう。
「シフォン……シ…フォンケーキ…ふふ…ふ…」
クラリスはつらそうな笑みを浮かべた。
クラリス、卵事件の後に戻る。

【続く】
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鋼彗☆β #6☆2003.11/13(木)19:12
……初めてこの物語を目にする方へ。
この物語は、かっこいい題名のわりに、中身はかっこよくないです。中身は強烈なギャグがたくさん詰まってます。決して真面目な小説ではないのでご注意ください。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【みっしょん5/温泉でクラリスを復活させよ!】

……シフォンケーキ、クラリスのポケモン6匹により完食。クラリス呆然、心は灰と化す。
「くっ…食うなよおおおおおおおおおおおお……」
しかし、時既に遅し。
そして、ティナが心配して外に出てきた。
「クラリス、ファイトー。仕方ないよ、こんなことだってあるさ。」
ティナは結構気軽だが、クラリスの心の中は大げさすぎるほど暗い。
「…シ…フォン…ケーキ…ふふ…ふふふ……」
クラリス、かなりヤバイ状態。しかし、いつものことだと、ティナは重要視しない。
「そういえばさ、クラリスにちょっと話があったんだ。あのさ…今度、みんなで温泉行こうって話してたんだけど……」
ティナはシフォンケーキを買った本当の理由を話した。
するとクラリスの反応は…
「温泉?!行こうよ行こうよっ!!明日からでも!!ぜひっ!!」
クラリス、「温泉」と聞いてハイテンション、シフォンケーキのことはすっかり忘れているようだ……
やたらと気まぐれなこと。
クラリスは温泉も大好きなのだ。
「わ、わかった。わかったから放して!」
ティナは比較的あっさりと許可し、明日から温泉へ出発するハメになってしまった…
(チッ…なぜに……)
ティナは少々悔しかった様子。

翌朝。
クラリスらは、フィアナの出身地である、キンセツシティへ集合した。
キンセツからなら、フエンはごく近い。
もう目と鼻の先…と言えるほどではないが、近い。
北の方角には、白い温泉の煙が確認できる。天気も良好だ。
1泊2日の温泉旅行も楽しくなりそうだ。
しかし、神をほかの人に見張っていてもらうのは少し心配だ。
最近ほったらかしにしまくりだから…
「じゃあ、グラードンを頼むよ、みんな。」
フィアナも、近所の人や家族にグラードンをまかっせっぱなし。
一応、キンセツジムのテッセンさんにもお願いしているらしい。
「じゃあ、行こうか。」
フィアナが言い、一同はフエンへの道を歩いた…
「いや〜、神を任せっぱなしで温泉旅行なんて…たまには気分いいね。」
サーナが冒頭からそう言った。
「まあ一応、私妹いるから、ちょっと任せてあるんだけどね…レックウザを。」
サーナには妹がいるため、任せるのにも信用が置けるという。サーナの妹もサーナに劣らない実力の持ち主らしい。
(まあ何か邪魔者が出たら電話で指示くらいは…)
6人の気は意外に軽かった。
まあ、たまには気を軽くするのも大事だが。

…キンセツから北へ向かうこと20km。
電車やロープウェイなどの乗り物を駆使し、ちょっと予定より早めにフエン温泉に到着した。
湯畑の近くでは、硫黄の香りが臭い。
まあ、それもそれで風情があるといえる。
「おっ、温泉饅頭!!」
クラリスは温泉饅頭屋を指差し、叫んだ。
そして、饅頭屋めがけて一直線に猛ダッシュ。しかし……
「…はう゛っ!」
石につまずいて見事に転倒。しかし、これは転倒というより…俗に言う「飛び込み前転」という奴だ。
クラリスは実は、自分の意思で飛び込み前転を…
(フフ…私ってかっこよすぎっ!!)
クラリスの意思はすこしいかれていた。
しかし、周りから変な意味で視線をスポットライトのように浴びた。
ティナらは心持ち他人のフリをし、目を別のところにそらした。
「ううっ…こいつと一緒のグループだとは思われたくない……」
ティナはクラリスに聞こえないように小さな声で言った。
その後クラリスは得意げな顔で戻ってきたので、ティナはかなり恥ずかしかったりする……

夕方、夕日が真っ赤に燃え、フエンの温泉街が全焼してしまいそうな感じの時。
6人は旅館にチェックインした。
「そういえば……宿泊代……誰が払うの?」
ターナがちょっと気に掛かることを言ってきた。
宿泊代…割り勘じゃ面白みがないのが事実。
「じゃあ…温泉から出た後の卓球で、一番負けの人が払うのでいいか?」
ターナは卓球で宿泊代を払う人を決めよう、と言い出した。
卓球…宿泊代が懸かっていると、かなり必死になるはずだ。
宿泊代6人分90000円は誰が払うことに……

【続く】
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鋼彗☆β #7☆2003.11/15(土)17:48
【みっしょん6/卓球で宿泊代を払わせよ!<其の壱>】

…温泉上がり。
6人は浴衣で脱衣所から出てきた。全員温泉を満喫した様子。
「さあ…運命の時間です!」
ターナが早速口にした。宿泊代を賭けた卓球勝負。
「わわ…まだ心の準備が…」
ターナ以外の5人は、まだ心の準備ができていないとあせった。
しかし、卓球場はすぐそこ、ターナは通り過ぎず、中へ入った。
「さあ、どうぞ。」
ターナはヤル気満々、負けそうにない。心の準備がOKの人はターナだけなのだから。というか、ターナが主催者…
ターナを除いた5人も、渋々卓球場に入った。
「もうこっそり予約しておいたんだよ。……この賭け勝負のために!」
ターナは裏まで手を回し、卓球場を借りていたという…
「あの時部屋から離れていたのは、そのためだったのね…」
ティナはつぶやいたが、ターナには聞こえていない様子。
「じゃあ…くじ引きね。もう前々から作っておいたんだから…徹夜で。」
ターナは、旅行に来たら最初からこれをやるつもりだったらしい。さすが6人中イディアに次いで騙しが得意な女、しかも頭脳明晰。
ターナはほかの5人より1歳年上ということもあるが…
「さあ、くじ引いて。トーナメントはこれで決めるからね。文句なしだよ。」
(……文句言いたい……)
ターナと、そしてほかの5人がくじを引いた。
コレでトーナメントが決定する。運も大事なのだ。
「くじの先に描かれているポケモンが一緒の人同士で1回戦は対戦ね。ヒトカゲと、ゼニガメと、ミュウツーのはずだけど…」
「何でヒトカゲ、ゼニガメって来てフシギダネじゃないんだよ!!」
ティナはすかさず突っ込む。
「で、ミュウツーが出たら負けたら直で決勝戦行きね。つまり…ハンデになりかねない……」
(フフフ…私がミュウツーを引くわけないでしょうが…ちゃんと仕組んであるんだから…ミュウツーのときは先に微妙な黒い印が…)
ここでもターナの異様な企みが…
「……あれ?」
ターナ、自爆。ミスって黒い印のついたミュウツーを引いてしまった。ターナもクラリスほどではないが天然ボケが混じっている。
「あれ、私ミュウツーじゃん!!」
クラリスがミュウツーを引き、ターナとクラリスの対戦が決まった。
(…こいつなら…勝てるッ!)
ターナ、ガッツポーズ。周りはよくわからない。
ちなみにフィアナとティナがヒトカゲ、イディアとサーナがゼニガメを引き、同時対戦。
「言い忘れたけど、ルールは公式の卓球と一緒だけど、1セット4点のショートゲーム。時間がそんなにないからね。2セット1ゲームだから、先に2セットとったほうが勝ち。」
ターナのルール説明の裏にも、恐ろしい企みがあった…
(…クラリスは立ち上がりが鈍いという特性があるの。だからさっさとけりをつければ…)
ターナは、クラリスに90000円を払わせようとしているようだ。
「じゃあ、コートも3面とってあるから。試合開始ね。」
ターナは普通に合図をかけた。そして、クラリスの待つミュウツーコートへ……
「じゃあ、ジャンケンでボールとコートを決めよう。コインがちょうどないから…」
ターナの提案で、ジャンケンを施行した。すると…
「あ、勝った勝った。じゃあ、ボール!」
ターナが見事勝利し、サーブ権をゲット。クラリスがコートを選び、試合開始。
「じゃあ、行くよ!!」
ターナは構え、本気でサーブを打とうとする。
「ハッ!!」
ターナは思い切りサーブを放った。サーブは素早くクラリスのコートにバウンドする。
(…返してこようとしたって無駄よ…こちらには…)
ターナはまた何か企んでいるようだ。
「うりゃ!」
クラリスはボールを返球しようとした…が、
「おうっ?!」
クラリスは大げさなほど思い切り空振りし、得点はターナへ。
しかもついでに、ラケットが手から抜け、吹っ飛んだ。そして。ラケットの延長線上にいたサーナに思い切り激突。
「いてっ!!…何だよお、クラリス…」
サーナは振り返り、そう言った。
「いや、ちょっと手のひらに健康エ○ナついてたからさ…」
「健康エ○ナなんて持ってきてないだろ」
クラリスはごまかしがヘタだった…

さあ、ドジから始まった宿泊代賭博卓球大会…
90000円は誰の財布からいなくなるか。
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鋼彗☆β #8☆2003.11/16(日)19:20
【みっしょん7/卓球で宿泊代を払わせよ!<其の弐>】

…90000円は誰の財布から…
1回戦、クラリスとターナの試合…
クラリスはたくさんドジを踏もうとも、ターナはやたらと企みが多かろうとも、どちらかが負ける。
試合はフルセットまで持ち込み、持久戦となったが、ターナの企みの多さは裏目に出た。
ちなみにほかではティナ、サーナの両者が敗北し、負け抜きトーナメントで準決勝へと進出した……
ターナはクラリスに敗れ、準決勝なし、ストレートで決勝戦へ…
ターナは貧乏くじを引いてしまったのだ。
「ヤバイ…ヤバイっ…」
ターナ、嘆き。見くびるんじゃなかった…
クラリスは90000円の支払いを免れて大喜び。

準決勝はティナとサーナの試合。
2人ともフィアナ、イディアのそれぞれに敗北したわけだから、そうレベルの高い試合ではない。
財布から消える90000円はどんどん近くなる。
2人にとって、これは負けることのできない試合だった……

結果はサーナがストレート勝ち、ティナは愕然とした。
「まずい…90000円が…」
これで、ティナかターナのどちらかの財布から90000円は消えうせる。
90000円の支払いは目の前。2人はがけっぷちだ。
そういっているうちに、2人はコートの両端に付き、セットした。
2人の眼差しは熱い。
「私は昔、友人と切磋琢磨して卓球の腕を磨き上げた身……」
ターナはそう言った。しかし、
「ふーん。そのわりには、私に負けたじゃん。」
クラリスは呆れるように言った。鼻で笑うクラリス。
「でっ…でも、あれはフルセットで、デュースまで持ち込んでるわけでしょ?!」
「昔ライバルがいて、ポケモンも卓球も切磋琢磨して磨き上げたんでしょ?ポケモンしか強くなってないじゃん。」
「い、いや…それは…ねえ。向こうも卓球弱くて、切磋琢磨しても余り効果は…」
クラリスとターナで発言の攻防が繰り広げられる。
攻めるクラリス、ごまかすターナ。
「まあ…そんなことは置いといて…いくよ!」
ターナはサーブの姿勢をとり、試合開始。

……そんなこんなでこれもフルセット・デュースまでもつれ込み、2人とも危ない状態となった。
サーブ権はティナの手にある。ターナはどうしてもサーブ権を回さなければならない。
しかし……ティナはうまく攻防を繰り広げる。急に強くなったように…
結果的に、ターナは敗れた。
「そっ…そんなあ……」
ターナ、自分の企みを自分で振りかぶり、自爆。
「ありえない…」
ターナはしばらく嘆く。しかしこれは事実、負けは負け、90000円はターナが払うことに……
そうと決まったとき、1本の電話が、ティナの携帯電話にかかってきた。
「もしもし…ああ……何だって?!…それは大変だ!今すぐ行く!ほかのやつらにはちゃんと伝えておく!わかった!!」
ティナはなにやら深刻そうな顔で電話を切った。
「…大変だ!!…球が…盗まれた!それも…6つとも全部……」
ティナはそう伝えた。
全員びっくりした。球が盗まれたら…神々は怒って、暴れだし、気候を操り、大変な被害を及ぼすだろう……
「行こう!!今すぐ!!」
クラリスが裏表の激しい性格で性格が変わったのか、そう言った。
「いいから早く!!」
ほかの5人もつられて神のもとへ向かう…

神が暴れだした…
次回から、ファイナルバトル、大きな急展開を見せる…
【続く】
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次回からは、かなり真面目になると思います。
笑いはもうないのでご注意を。

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鋼彗☆β #9☆2003.11/17(月)20:48
【みっしょん8/序盤を有利に展開せよ】

…神の宿る球が盗まれた。
神はきっと、いや、絶対暴れだすに決まっている。
異常気象はもちろん、町の全壊だってあり得る、怖い話だ。
クラリスたちの使命は「神を守ること」……
使命を果たさぬことには話にならないのだ。
「……みんな、もう出るよ!」
クラリスはそう言った。
「えっ…でも、今、夜じゃん…チェックアウトは……」
「だから何だって言うの?!使命は果たさなくちゃならないの!!」
クラリス以外の5人は外出を否定するが、クラリスは使命を果たそうと、神のもとへ向かおうとする。
「さあ、行くよ!!」
クラリスは無理矢理ほかの5人を連れ立て、フエンを後にした。
「……きっと…ハナダだろうな。」
クラリスはそう感じる。
…ハナダは海・山・平地が交差する町だ。
北には海、西にはオツキミ山があり、神にとっては絶好の戦場だろう。
6人は真っ先に、空路でハナダへ向かった…
「戦闘準備…ちゃんとしておいてね。」
クラリスはほかの5人を先導するように言った…

空を飛ぶこと約5時間。
周りはすっかり暗くなり、もう丑の刻だ…
深夜のハナダは今、戦場となり、真っ赤な炎と真っ黒な煙で覆われていた…
かなり酷い状況。クラリスらはどうしても手を出さずにはいられない。
「酷い…ここまで酷いとは思ってなかった…」
ティナがつぶやいた。
「まあ…早速戦闘開始!!」
クラリスは叫んだ。この鶴の一声で6匹の神々との戦闘は始まった…
「みんなそれぞれの神を!」
クラリスは叫んだ。
しかし……自分の神を傷つけるなんてできないと…ほかの5人は答えた。
「いいから仕方ないんだよ!この暴動を鎮めるには倒すしか方法はないんだから!!被害を少なくするためにも、神を守るためにも、なるべく手短に片付けなくちゃいけないんだ!!だから全力振り絞って、速攻でかたづけないと!!」
しかしクラリスはそう叫ぶ。クラリスは裏の性格を全開むき出しにしている。
天然ボケで、ドジ踏みまくりで、のほほんとした和やかなクラリスの姿はどこにもなく、かなり真剣で、危険を省みない、少しかっこいいクラリスの姿は今ある。
「いくぞ我が神フリーザーよ!!ここでまた、このクラリス・ジャイクガルハーの手でゆっくり眠らせてやろうぞ!!」
クラリスはまたそう叫び、フリーザーに勇敢に立ち向かった。
直接攻撃を得意とするクラリスは、ピジョットに乗って飛翔し、フリーザーの胸元へ襲い掛かる。
逆に間接攻撃を得意とするイディアやサーナは、地上からピストルや弓矢で狙う。
しかし…サーナが守るレックウザは空中で動くため、空から迎撃するようだ……
「斬!!」
クラリスは叫び、やたらと長い剣でフリーザーを切りつけようとする。
しかし、フリーザーは巧みな動きで斬りをよけ、クラリスを翻弄する。
「…当たらない……やるな。」
クラリスは翻弄され、イライラが募ってくる。
「…心眼なぞ使えない。剣士の末裔ではあるまいし…ここは自力で当てるしかない!!」
クラリスはよくよく叫んで自分を叱り、奮い立て、攻撃に移る。
自分に厳しくするクラリス。しかし、そうすることで「勝利」という光は見え始めてくるのだ。

……戦いはまだまだ序盤。
6人は勝利をつかみ、神々をそれぞれの神聖なる地に返すこと、つまり使命を果たすことができるのか…
【続く】
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鋼彗☆β #10☆2003.11/18(火)19:08
【みっしょん9/中盤で果敢に攻め上げよ!】

…序盤は有利に展開したクラリスたち。
しかし中盤に入ってくると、思わぬトラブルはつき物だ…

「…いけるっ!」
クラリスは焦点を定め、剣を振り、当てようとする。
しかし、何度やっても無駄だ。当たらない。
「…作戦を変えるか…」
クラリスは小さな声でつぶやき、思考を始めた。
しかし今は戦いのさなか、なるべく手短に済まさなければいけない。
クラリスは黙って考えているため、フリーザーへの攻撃をやめている。
………その隙を突かれた。
「クラリス、危ない!!」
近くでカイオーガの相手をしていたティナが、クラリスの危険を察知し、叫んだ。
フリーザーがクラリスの体めがけて、氷の太い矢を発射してきたのだ。
…本当の一瞬だったため、クラリスは氷の矢をよけることができなかった。
クラリスは氷の矢が腹を貫通し、地上にまっ逆さまに落ちてきた。
「クラリス!!」
ティナが心配そうにクラリスのもとに寄った。
しかし、クラリスの服は真っ赤に染まっている。
「ティナ、よけろ!!」
今度はフィアナがティナに言った。
フリーザーは全くこりず、今度はティナに氷の矢を放ってきたのだ。
「まずい!」
ティナはよけようとしたが、うまくよけられず、矢はティナの右の腿に刺さった。
「!!…痛っ……!」
ティナの叫びは声にならない。
しかしティナは痛みにも異常気象にも負けず、立ち続けた。根気で勝負。
「大丈夫か、2人とも!!」
フィアナがクラリスとティナのもとに駆けつけてきた。
グラードンは逃げるフィアナを、素直に追ってこない。
しかし、フリーザーの攻撃は続く。
「…あそこに洞穴がある。一旦避難しないと危険だ!!」
フィアナはフットワークの軽い体を生かして、2人を抱えて目の前の洞穴へ駆け込む。
フリーザーはそれでもしつこく追ってくるのだ。
「…フリーザーが…」
フリーザーは荷を抱えているフィアナにとって目障り。なのでフィアナは、一か八かの作戦に打って出た。
「全員出動!!」
フィアナが口笛で合図をすると、坂の上からフィアナのマルマインの群れが転がってくる。フリーザーもこれには戸惑うだろう。
「行け!!私のマルマイン達よ!!爆弾ボールたちよ……一斉に大爆発!!」
フィアナはとんでもない命令を出した。
……数十匹のフィアナのマルマインの軍団は、しつこくフリーザーを追っていった。
そして……

…フリーザーはフィアナの手によって鎮められた。
そして、フリーザーの身は、セキチクへと帰っていく…
クラリスが守っていた、セキチクの祠へ……
「……まずい、2人の手当てが…」
フィアナはずっとフリーザーに気を取られていたため、2人のことをすっかり忘れていたのだ。
フィアナは急いで洞穴に駆け込んだ。
「…ティナ、怪我はどんな感じなんだ?」
フィアナはティナに聞いた。
「……本当に痛い…立ってられない……」
ティナは恐る恐る、フィアナに腿の傷を見せた。
フィアナの右の腿は真っ赤に染まり、しかも凍傷を起こしていた。
「…コレでは立っていられないはずだ…」
フィアナはかなり深刻そうな表情だ。
もしかしたら、2人とも……

…フィアナは2人の応急処置を行い、焚き木、古新聞、ライターで火を起こし、毛布を預け、戦闘に戻った。
フィアナがいなくなった洞穴で、ティナはポツリとつぶやいた。
「……クラリス…よくやったよね。」
しかし、その言葉はクラリスには届いていない。
ティナの眼にはうっすらと涙が浮かぶ。
…自分の行動に後悔しているのだ。
「……クラリスみたく、勇敢にカイオーガに立ち向かえばよかった…今はもう体は動かないし…凍傷も広がってきてるし……生きる気力さえないなんて…私って…バカだよね……」
ティナは弱々しい声でそうつぶやくが、クラリスの眼は開かない。
そうしているうちに、ターナがフィアナに代わってやってきた。
「…2人とも……」
ターナはかなり心配そうだ。
「…私って…バカだったよね、ターナ…」
ティナの声はもう聞こえないくらい弱くなっていた。
「………そんなことないって。ティナは…」
ターナはティナにそう語り続けた……

…一方、戦闘側。
クラリス・ティナ・そして2人を見ているターナを欠き、かなり辛くなっている戦闘。
しかし、欠いている3人のポケモンは自力で動いている。自分の意志で攻撃・防御・援護している。
…フリーザーはもう鎮められ、残りはカイオーガ・セレビィ・グラードン・レックウザ・ラティアスとなった。
カイオーガは海上からの攻撃となるため、うまく当たらない。
レックウザとラティアスは動きが速く、空中で移動するため、間接攻撃が決め手となる。
グラードンは移動はゆっくりだが、体が大きく打たれ強く、持久力がものを言う戦闘だ。
セレビィは体が小さいため、直接攻撃は有効だ。
さあ、戦闘も中盤を越えた。鎮めてハナダの町と神々を取り戻せ。
次回、感動の最終回!力尽きたクラリスとティナ、見張るターナ、果敢に神々に立ち向かうフィアナ、イディア、サーナの運命は?!
【続く】
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鋼彗☆β #11☆2003.11/19(水)19:08
【ふぁいなるみっしょん/多雨と月光の結晶を創造せよ】

……レックウザの力で風が強く吹き、カイオーガの能力で雨が降ったり、グラードンの力で雨がやみ、熱帯夜になったりする異常気象の深夜は続いている。
そんな中でも、フィアナをはじめとする神々を守る者は、神のためにも、ハナダのためにも戦い続けている。
…しかし、クラリスとティナはもう戦闘不能。
4人でフィアナが鎮めたフリーザーを除いた5匹を相手しなければならないという、過酷な現実だ。
しかし、こちら1人の持ち玉は6匹。一応クラリスとティナ、ターナのポケモンも自主的に動いているため、総勢36匹のポケモンが動いていることになる。
36対5。しかし、それでも苦戦を強いられるほどの攻撃の破壊力を持ち、逃げ足の速さも持っている、味方にすれば非の打ち所のない連中。
でも…敵に回せば厄介、それ以上の能力を持つ手ごわい相手。
特に厄介なのがカイオーガということになるだろう。
カイオーガは海上を移動し、時に海中に潜ることもあるのだ。
しかも、でかい図体しているクセして、動きはラティアスほどではないが速い。
電気を海水に流せれば一発万事休すだが、手持ちにはフィアナのマルマイン軍団はフリーザーのために費やされ、電気ポケモンがいない。電気技を使える奴もいない。
これはピンチだ。ほかの4匹は有利なタイプのポケモンがいるのだが、カイオーガには苦戦しそうだ……
「…冷凍ビームや、ラプラス!!」
イディアはドラゴンタイプのラティアスに対し、有利な氷技で攻めるが、ラティアスの速い動きに翻弄され、なかなか命中しなかった…
しかし、今回は例外……
「……しめたっ!!」
ラティアスに冷凍ビームはうまくロックオンし、命中。
ラティアスは地上に落ち、祠へと戻っていく……

…これでフリーザー・ラティアスは鎮まった。
残るは体は小さいがクセモノのセレビィ、弱点を突けば一発だが高い位置を飛んでいるため攻撃が命中しにくいレックウザ、移動はゆっくりながらもタフなグラードン、そしてもっとも倒すのが困難とされるカイオーガだ。
「……グラードンは?」
イディアがフィアナに聞いた。
「……いい感じで鎮まりかけてる。いけそう。…手伝いはいらない。」
フィアナはそう言い、イディアの手伝いを拒んだ。
「じゃあ、セレビィを頼む。カイオーガは最後に全員の力で鎮める。」
フィアナはそう言い、イディアをセレビィに回させた。
そして……
「…そろそろハイドロポンプも限界か。カイオーガの力で雨も降っているはずだが……」
フィアナのポケモン達にも限界が見え始めた。
今日のフィアナの手持ちは12匹。いつもの6匹に、フリーザーを鎮めるのに使ったマルマイン軍団の6匹だ。
しかし、マルマイン軍団は一気に使い果たしてしまった……
「……何っ!」
フィアナは声を上げた。空から援護するものがいたのだ。
……ティナのペリッパーだった。
ペリッパーは苦戦しているフィアナを見て、援護したのだ。
「……いけるぞ…いける!」
フィアナはつぶやいた。そして……

……グラードンは地に伏せた。
そして、キンセツにある祠へと戻る…
これで、異常気象の日照りはなくなり、暴風雨だけとなった。
「…レックウザはどうだ、サーナ!」
フィアナは地上から空中のサーナに向かって叫んだ。
するとその直後……レックウザも鎮められたのだ。
サーナ、大健闘。
「……聞くまでもなかったな。」
フィアナはそう言い、サーナは地上に降りてきた。
「……イディアを援護しよう。」
サーナは降りてくるなり、言った。
しかし……これもいらなかった。
イディアが得意とする射撃で、セレビィは鎮められた…
かなりの早業、イディアにとっても全力を尽くしたという。
「…じゃあ、これからカイオーガを…」

…風もなくなり、雷もなくなり、天候は雨だけとなった。
「……一応クラリスの剣を借りて、直接攻撃を狙おう。」
イディアはそう考えた。
そして、クラリスが寝かせられている洞穴へ、剣を借りに言った。
「……クラリスとティナは…どうだ?」
フィアナはずっと見張っていたターナに声をかけた。
……ターナは黙って首を横に振った。
ターナの眼からは一筋の涙がこぼれ出る。
「…そうか……」
フィアナは少しためらってから言った。
そして、目的の剣の借用をする。
「あのさ…カイオーガを倒すために、クラリスの剣を借りていきたい……いいか、クラリス…」
フィアナはクラリスに問いかけるが、クラリスはまったく反応しない……
「まあ、平和のため、神のためだ。…ターナにも協力して欲しい……相手は一筋縄ではいかない強敵だ。」
そう言ってフィアナはクラリスの剣を手にかけ、ターナの協力も得て、カイオーガとの戦闘に準備万端だ。

…目の前にはカイオーガがいる。
強敵。こちらはまだ弱輩かもしれない。
しかし、こちらはポケモンを使わず、素手で倒そうとしている。
「…ラプラス、頼む。」
イディアはラプラスにそう言い、荒れた海に出た。
サーナは空中から、フィアナとターナは地上から援護する。
「さあ、いくぞ、カイオーガ!ティナに代わって、このイディア・ゲルオベントが鎮めてやろう!ウチは後戻りはせえへん、絶対に鎮めて楽にしてやる!」
イディアはカイオーガに勝つと誓い、カイオーガに近づいた。
しかし、水しぶきが激しく、うまく近づけない。
「いけッ!!」
イディアは水しぶきを切り裂くように剣を一振り、二振り。
すると、カイオーガの姿は鮮明になってきた。
「追い詰めたぞ、カイオーガ!!」
そう叫んで、イディアはカイオーガの背に乗った。
「さあ、観念しいや!!」
そして……

カイオーガの背に剣は刺さった。
カイオーガは仰向けになり、倒れた。
「うわっ!!」
イディアも同時に振り落とされ、荒れた海に投げ出された。
「イディア!!」
サーナが空中で叫んだ。
そして空から滑空し、イディアを見事、拾い上げた。
「…ふう…なんとか……」
これにはイディアもサーナも安心した……
カイオーガを倒したと……

…空は急に雨がやみ、朝日が東から昇り始めた。
なんとも騒がしい一夜だったことか。
イディアとサーナも海から上がり、一件落着…ではないか。
「そういえば、クラリスとティナは…」
サーナは言った。
すると、4人の目の前に、紅と蒼の、尾の長い神秘的な鳥が現れた。
「……何なんだろう…この鳥は…」
すると、その鳥たちは4人の前でくるくると円を描くように旋廻した。
そしてなんと……目の前にきれいな泉を作り出したのだ…
「…きれい…なんでここに泉が……」
4人はうっとりするような気持ちになった。
泉には戦禍の深夜に現れなかった月光が、反射するように光っていた…月はもう沈んでいるのに。
泉を作り上げると、その鳥は、南と南西を目指し、彼方へと、飛んで行った……
「…あの鳥は…なんだったんだろう…」
鳥を見送った後、クラリスとティナが眠っていた洞穴を訪ねると…
「…あれ?クラリスとティナは……」
そこにはクラリスとティナの姿はなかった。
もしかして……あの鳥はクラリスとティナだったのでは…といううそ臭いことも言い始めた。

…多雨のあとに作られた泉……
この泉は後に「Τ〜タウ・月光の泉〜」という呼称がついた。
きっとあの鳥は…クラリスとティナじゃないのか…
そうだろう。きっと。セキチクとルネに帰ったんだろう。
後で訪れてみよう。2人の故郷へ。
きっとその鳥…泉の創造主もいるはずだ。
……神は鎮まり、元に戻った。
…明日もいつもどおり、平和でありますように。
   【Τ〜タウ・月と泉の物語〜・完】
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ぴくの〜ほかんこ