ぴくの〜ほかんこ

物語

【ぴくし〜のーと】 【ほかんこいちらん】 【みんなの感想】

[574] 夢をのせて〜ドタバタな旅スタート

依乃 #1★2004.12/04(土)11:38
第一話  少女スレン!ワカバタウンで!! 

小鳥の歌声が、町全体を優しく包み込む。
お世辞でも都会とは言えないこの町の名前は「ワカバタウン」。
ベビーグリーンがシンボルカラーの「ワカバタウン」は、小さな町ながらもポケモン研究としての科学が進んだ、「ジョウト地方」の中心部とでも言える町である。
そのワカバタウンに、ポケモンが大好きな1人の少女が住んでいた。
その少女は、ワカバタウンのポケモン研究者「ウツギ博士」に呼び出され「ウツギポケモン研究所」へと足を運んでいた。

  数時間前…

「あれ?ポストに手紙が入ってるわ」
ワカバタウンに住む少女「スレン」は、自宅のポストに入っている一通の手紙に気が付いた。
その手紙には、「ウツギポケモン研究所」と記してあった。
「あら、ウツギ博士からかしら」
スレンはその場で、手紙の口を丁寧に破いていった。
その手紙の内容はつまり、こういう物だった。

<  スレンさんへ
 こんにちは、スレンさん。ボクです、ウツギ博士の助手のグランです。
 実は今日、貴方に研究所に来るように言っておいてくれと、ウツギ博士に頼まれたのです。
 直接言おうと思ったのですが、スレンさんはまだ御休みだったようで。
 そういう訳ですから、是非今日、研究所にいらっしゃって下さい。
 博士も私も、お待ちしております。 
                    グランより>

手紙を読み終わったスレンは、また丁寧に手紙を折り畳んだ。
「ウツギ博士が私に用事?何かしら」
ウツギ博士が呼び出す時は、よっぽどの用だとスレンは知っていた。
今までの例では、研究所のボヤの時や、凶暴なポケモンの脱走だ。
ウツギ博士の研究所では、ロクなことがないのだ。

   現在…

という訳で「今回も大事な用だろう」と判断したスレンは研究所に出向いたのであった。
「でも、そんなに急な用事じゃないのよね…手紙でお報せなんて」
全くその通りである。
ボヤや脱走で、手紙で知らせる訳がない。
実際、今までは扉を叩いて知らされたのである。
いろいろと考えながら、スレンは研究所の扉を開けた。
中では、博士の助手達が、忙しそうに動き回っていた。
その中には、手紙の送り主グランもいた。
「あ、スレンさん!お待ちしておりました!」
お約束のこの言葉が、グランの口から発せられた。
「こんにちは、グランさん。で、ウツギ博士は何処ですか?」
博士の姿を探しながら、スレンは言った。
「博士は奥の準備室にいると思います。悪いのですが、行ってもらえますか?」
そう言い残すと、グランはさっさと行ってしまった。
仕方ないので、スレンは準備室を探してみることにした。
「グランさんもいい加減ね。素人に、準備室の場所なんて分かる訳ないじゃない」
文句を言いながら、スレンは探していた。
スレンは、わがままに思えて実は素直な性格なのだ。
そのときだった。どこかから大きな爆発音と、何かが割れる音が聞こえてきたのは。
そして少し間をおいて、男の人の悲鳴も聞こえてきた。
「なっ、何?!」
その出所はスグに分かった。モクモクと煙が上がっている。
とりあえずスレンは、その部屋に行ってみることにした。
この煙の正体を突き止める為に。
     つづく…
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依乃 #2★2004.12/11(土)17:43
第二話  ウツギ博士のドジっぷり  

スレンは、扉の前に暫く立っていた。
扉には、「準備室」と書かれた紙が貼ってある。
「ここが準備室…まさか、中にウツギ博士が?」
頭の中でそう考えを整えると、スレンはもう一度煙の上がる「準備室」を見た。
生憎、このことには誰も気付いていないらしい。
「こうしちゃいられないっ…えいっ!」
そう意気込むと、スレンは部屋へ飛び込んだ。
「けほっ…スゴい煙。ウツギ博士、居ますかー?」
そう呼びかけると、
「そ、その声はスレンちゃんかい?」
案の定、返答がきた。
その後スレンがきょろきょろしていると、ススだらけのウツギ博士が現れた。
「これはどーゆーコトなの?博士」
「その話は、此処を出てからするよ。さ、こっちへ」
ウツギ博士は、部屋の外へと誘導してくれた。
時間が経つにつれ、煙はどんどん薄れていった。
「いや、悪かったねスレンちゃん。薬の調合をしていたら、失敗して…」
ははは、とウツギ博士は笑う。
「笑い事じゃないですよ、博士!」
スレンは、博士を翡翠色の瞳で睨みつける。
「そういうことは、器用なグランさんにやってもらったらいいのに」
呆れた口調で、スレンは言い捨てた。
「確かにそうなのだが、グランくんも忙しいみたいだったからね」
「…で?私に用って何なの、博士?」
ずっと気になっていたことを、スレンは言った。
その用事の件で、スレンは此処へ来たのだ。
「おっと、忘れていたよ。…ちょっと、こっちへ来てくれるかい?」
スレンは、博士に誘導され「特別室」へと通された。

「特別室?そんなにトクベツなことなんですか?」
「あぁ。これを見てごらん、スレンちゃん」
博士が指差した先には、3つのボールが置いてあった。
「?…これは何ですか?」
「それはモンスターボールと言ってね。ポケモンを持ち歩く為の道具なんだよ」
「ふぅん。で、その『もんすたあぼおる』が何なんですか?」
スレンは、半目で博士を見た。
「このボールの中には、ポケモンが入っている。そのポケモンをスレンちゃんに渡そうと思ってね」
そのとたん、スレンの目が輝いた。
「本当ですかっ、博士!わあ、嬉しいなvサイコー、博士!」
スレンは、傍から見れば大ゲサに喜んだ。
「ワニノコ、チコリータ、ヒノアラシから好きな子を選ぶといいよ」
「えっ…迷うなあ。じゃ、ヒノアラシにしますっ!」
「そうかい。じゃあ…はい」
博士は、左端のボールをスレンに渡した。
「わあ…このコが私のポケモン…」
スレンは、その現実をしみじみと感じていた。
「ヒノアラシと、ご対面してみたらどうだい?」
博士は、スレンにそう勧めた。
「あっハイ!そうですね。出ておいでっ、ヒノアラシ!」
スレンが投げたモンスターボールからは、光を放ちながらヒノアラシが出てきた。
「きゃあ、可愛いvヒノアラシ、私スレンよ。宜しく♪」
スレンが、無邪気に話しかける。言葉が通じないことは、分かっていたが。
…ところが。
『スレン?ヘンな名前だなあ』
「…!?」
     つづく…
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依乃 #3☆2004.12/05(日)10:24
第三話  ヒノアラシの秘密

「ヒノアラシ、貴方…っ!」
「スレンちゃん、ボクは準備室の片付けをしてくるよ。もう帰ってもいいよ。ありがとう」
そう言うと、博士は特別室を出て行ってしまった。
さっきの声には、気付いていないらしい。
「ヒノアラシ、貴方、喋れるの?」
まだ信じられないスレンが言った。
『何だよ、喋っちゃ悪いか?』
ムッとしたように、ヒノアラシは言う。
「そんなこと、誰も言ってないじゃない。それにしても、スゴイなあ」
スレンは、すっかり感心したようだ。
「ポケモンで喋れるコがいたなんてっ!きっと貴方くらいよ」
『そんなことねェよ。喋れるポケモンなんざ、ゴマンといるぜ」
そんなことより、とヒノアラシが言った。
『オマエ、オレのトレーナーなんだな。…今日から』
「え?…えぇ」
『とりあえず、オマエのとこには居てやる。でもな、オレは認めねェぞ』
「ど、どういうこと?」
訳が分からずにいるスレンに、ヒノアラシは言った。
『だーかーら!オレは、オマエをトレーナーとして認めないっつってんだよ』
「言葉使いが悪いコね。それと私の名前はスレン!『オマエ』じゃないのっ」
スレンがヒノアラシを叱る。
「でも、何で?どうして認めてくれないの?」
『オマエ、かなり頼りないしな。もっとシッカリしたら認めてやってもいいぜ』
分かったよ、とスレンは言い捨てた。
「そうだっ!名前を考えなきゃね。んーと…『クロー』なんてどお?」
『…勝手にしろ。それより、早くオレを戻せよ!』
「え?何処に?」
呆れ切った様子の「クロー」は、スレンの握っているボールを突付いた。
「あ、あぁコレね。戻って!」
モンスターボールから赤い光線が出、クローはボールに収まった。
「…これからどうなるのかしら」
スレンは脱力して、ボールを見ながらそう呟くのであった。

  数週間後…

『なあ…オマエ、こんなことしててヒマだと思わねェか?』
マグマラシに進化したクローが、ある日そう切り出した。
「私は『オマエ』じゃないの。…で、何が言いたいの?」
まだスレンのことを『オマエ』と言うクローに、スレンは呆れていた。
『普通さ、ポケモンを持ったトレーナーは旅とかするんじゃねェの?』
「…うん、確かにそうかも。でもさ、旅って、具体的に何するの?」
『そんなの、オレが知るわきゃねェだろ』
そう言うと、クローは家の中に入ろうとした。
「…出ようか、旅」
『…は!?』
簡単に言い出すスレンに、クローは信じられないという表情を向けた。
『簡単に言うなよ…』
「でもさっ!私の両親は外国に行ってて居ないし、それも良いんじゃないかな」
うん、そうだよ!と、スレンは1人で言った。
『オマエがいいんなら、オレも喜んで行くぜ』
「そう?じゃ、とりあえず旅の準備しちゃおう。今日の午後には出発よ!」
『は!?…オマエ、せっかちだなあ』
そう言うが早いが、2人は家の中へ飛び込んで行った。
そしてクローは、スレンの意外な一面を見つけるのであった。
スレンは、わがままで、素直で、せっかちだという。
     つづく…
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依乃 #4★2004.12/11(土)14:27
第四話  いざ、冒険の旅へ!

「これと、これっとー♪」
スレンはお気に入りの水色のカバンに持ち物を詰めていた。
『…オマエ、そんなモノいるのか?』
クローは、スレンが詰めようとしているスケッチブックやコンテに目をやった。
「うんっ♪旅の途中に出会ったポケモンとかをスケッチするんだ♪」
スレンはその後も、キズグスリやらジョウトマップやらを詰めていった。

  数時間後…

「でーきたっ♪」
スレンは、持ち物を詰め終わったカバンを満足そうに持ち上げた。
『やっとかよ。待ちくたびれたぜ』
「よく言うわね。自分は何にもやってないクセに」
スレンは、カバンを首から提げた。
「よしっ!行こ、クロー!」
『…あぁ』
二人は、家を飛び出した。
『なぁ、オマエ、ヨシノシティの町長に呼ばれたって言ってたよな?』
「うん。旅立つときは、必ずそうするようになってるんだってさ」
『ふぅん。んで、時間は?』
「えっとねぇ、確か11時だったよー」
クローは、スレンが付けている腕時計を覗き、「ぎょっ」としたように言った。
『もう、10時50分じゃねぇか!』
「平気よ♪ヨシノシティまでは、走れば10分で着くよ。…行くよっ」
そう言うが早いが、スレンはヨシノまでの一本道を駆け出した。
『おいっ、待てよ!』
クローも、スレンの後を慌てて追いかけた。

  10分後…ヨシノシティ

「11時ジャスト。計算通りね♪」
走りに自信のあるスレンは、息一つ乱していない。
『オマエ…バケモンだな。人間で、10分続けて走れるなんて』
そう言うクローも、きっちりスレンに追い付いていた。
「ふふ♪ありがとうvさてっと、町長さんの家は…すいません」
褒めているワケではないのだが、と思うクローをよそに、スレンは近くを通りかかった少年に声をかけた。
「ん、何だい?」
少年は、足を止めた。
「私はスレン。悪いんだけど、町長さんのお宅を教えてくれない?」
「町長の家は、ココから大分遠いよ。案内する。おいでよ」
そう言うと、少年は駆け出した。
「ちょっ…」
向こうで、少年は手招きしている。
「ボクの名前はステイ。…こっちだよ、スレン、マグマラシクン」
「ステイ」と名乗った少年は、クローにウインクしながらスレンの手を引いて走った。
『けっ…キザな野郎だな』
クローは、二人を追いかけながら呟いた。
そして、何故今回は走ってばかりなのだろうと思うのだった。

   数分後…町長宅

「…さあ、ココだよ」
「どうもありがとう、ステイ君。助かったわ」
スレンは、ステイに頭を下げた。
「大したことしてないさ。あと、ボクのことは呼び捨てでいいよ」
そしてステイは、クローに目をやった。
そのことに気付いたスレンは、
「ステイ、このマグマラシはね、クローっていうのよ」
と、慌てて言った。
クローを見たステイは、急に深刻な目つきになった。
「スレン…『クロー』は、喋れるポケモンだね?」
その言葉を聞いたスレンとクローは、ステイを驚きの目で見つめた。
…いや、クローの場合は睨みつけていたが。
「ステイ…貴方、どうしてそのコトを…」
『ぅわっ、バカっ!!』
「やっぱり、そうなんだね。…驚くことはないさ。だって…」
そこまで言うと、ステイは腰に付けていたモンスターボールを投げた。
中からは、光を放ちながらアリゲイツが出てきた。
『…あれ、ザン!?』
アリゲイツは、驚いた様子で確かにそう言った。
『ゲイル…!?』
「…!」
「気付いたかい、スレン。…そう、ボクのアリゲイツも同類なんだ」
     つづく…
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依乃 #5★2004.12/11(土)17:52
第五話  旅の承諾  

スレンは、ステイの群青色の瞳を見つめる。
「ステイ…そのアリゲイツ、もしかしてウツギ博士に?」
「あぁ。って事はスレンもだろ?」
「(ステイもワカバタウン出身だったのね…)えぇ」
曖昧に答えると、スレンは考えた。
もしかすると、残っていたチコリータも同類なのかもしれない。
言葉を喋ることが出来るのかもしれない。
『それにしても久しぶりだな〜、ザン!』
『だな。…でも今は『ザン』じゃなくて『クロー』だぜ』
どうやら「ザン」とはクローの前の名前らしい。
『へぇ、名前変わったんだ?』
そんな二匹の会話を聞いていたスレンが尋ねた。
「クロー、このコ…ゲイルだっけ?お友達なの?」
『あぁ。ワカバの研究所では、ずっと一緒だったぜ。…チコリータの『レイ』ともな』
「やっぱりなぁ。で、そのチコリータも…」
「喋れるってコトなんでしょ?」
ステイとスレンが意見をまとめる。
『そうだよ。…クロー、ここでキミに会えるとは思わなかったよ』
運命的だよねぇ、とゲイルが笑う。
『そんなの、オレだって一緒の想いさ』
そこで、スレンが「はっ」としたように思い出す。
「そうだ、私たち…町長さんに会いに来たんだったよね」
『あぁ…そうだったな』
「もしかしてキミたち…旅の承諾を貰いに来たのかい?」
「えぇ、そうよ」
『へぇ…これまた運命的。オイラたちもさ』
暫く間をおいて、四人は顔を見合わせて笑った。
スレンとステイは自分のポケモンをボールに戻す。
モンスターボールからは赤い光線が出る。
そして、町長宅の重い扉を開けた。ギィィ…と、扉が悲鳴をあげる。
中は見た目通りゴージャスで、大きな椅子に貫禄のある男性が座っている。
「…おや?どうかしたかな、ボウヤたち」
ステイは「ボウヤ」と呼ばれたことに少しムッとしながら答えた。
「町長さん。実はボクたち、旅に出る事の承諾を貰いに来たんです」
その言葉に、また「おや?」という表情を見せたのは町長だ。
「ボウヤたち…歳はいくつだい?」
「「11歳です」」
二人が声を合わせて言う。
「ホゥ…そうですか。いいでしょう、ちょっと待っていなさい」
そう言うと、町長は引き出しをガサゴソし始めた。
「あったあった。いやぁ、最近旅に出る子供なんて少なくなったからなぁ」
ほっほ、と町長は笑った。
確かにそうかもしれない。旅に出る子供の話など、なかなか聞かない。
町長の手には「旅・承諾書」と書かれた紙が2枚収まっている。
「キミたち、ここに自分の名前を書きなさい」
そう言われ二人は「氏名」と書かれた場所に自分の名前を書いた。
「ふむ…スレンちゃんにステイ君か。大変よろしい」
町長は「何が?」と思っている二人をよそに、同じ引き出しから印鑑を出し承諾書に印鑑を押した。
「これで良し…この承諾書は各々で所持しておくように」
町長は、二人に承諾書を手渡した。
承諾書をまじまじと見たあと二人は、
「「ありがとうございます!!」」
と頭を下げた。
「うむ。では良い旅をな!グッドラック!!」
町長のナウいような古いような言葉に見送られ、二人は町長宅を出たのであった。
二人の手には、出来立ての「承諾書」が握られていた。新たな希望を胸に。
     つづく…
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依乃 #6☆2004.12/12(日)12:31
第六話  ベビーポケモン、誕生! 

「ところでステイ、ステイは何か目的があって旅をするの?」
スレンは、30番道路を歩きながら、隣を歩くステイに尋ねた。
「いや、ボクたちはただ、『旅』を楽しみたかっただけだよ」
「!それなら、私たちと一緒に行かない?流石に心細くってさ」
期待に胸を膨らませながらスレンが言った。
「スレンが良いなら…」
「きゃーっ♪ありがとう、ステイ!」
スレンは大ゲサに喜んだ。
「あ…でもボク、一つウツギ博士に頼まれてる事があるんだ」
そう言うと、ステイは自分の鞄から大事そうに箱を取り出した。
「…?それ、何なの?」
「これはね、ポケモンの卵なんだ。実はこの先に、ポケモンの卵専門の博士がいてさ。この卵を渡すよう、ウツギ博士に言われたんだ」
ステイは、箱を開く。
中には、たくさんの綿に囲まれて、黄色に赤い水玉模様の卵があった。
「わあ…可愛い卵!ねぇ、持ってみてもいい?」
「いいけど…絶対に落としたり割ったりしたらダメだぞ」
「うんっ!分かってるって!!」
スレンは、ゆっくりと卵を取り出す。
「思ったよりも軽いのね。…あらっ」
スレンがそう言った瞬間、卵が明るい光を放ち始めた。
「…卵が孵るぞ!!」
「ええっ」

   ……

そのとき、二人には何が起こったのかさえ分からなかった。
時が止まったように思えた。
しかし、卵があるべき場所に、小さなポケモンがいるという事実は分かった。
卵が孵ったのだ。
赤いほっぺたに、首筋にある黒いギザギサ模様。
そのポケモンは、まだ幼い赤ちゃんピチューだった。
『ピチュー?』
「きゃーっ!かわいーっvv」
ピチューは、じぃっとスレンを見つめている。
「孵っちゃったか…」
ステイは、ふうっと溜息をつく。
一方ピチューはというと…
『ピッチュー♪』
スレンに抱きついている。
どうやら、スレンのことを友達だと思っているようだ。
『お姉ちゃん…一緒に遊ぼ♪』
「「…!!」」
ピチューは言葉を喋った。
驚いたことに、このピチューも、クローたちと同じ仲間らしい。
「ステイ…!」
「赤ちゃんのポケモンまでが喋るのか。一体、どうなってるんだ?」
ステイは指をアゴにあてた。
『どーしたのー?』
「それよりステイ…どうする?孵っちゃったよ」
「仕方ない…ティス博士に説明するしかないさ」
「ティス博士って?」
「さっき言った、ポケモンの卵専門の博士さ。早いとこ説明した方が良さそうだな」
「そうね」
『遊ぼ、遊ぼーっ♪♪』
ピチューに振り回される二人をよそに、ピチューは遊ぶことを催促するのだった。
     つづく…
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依乃 #7☆2004.12/12(日)17:49
第七話  新たな仲間・新たな事件!?  

二人と一匹は、「ティス」と書かれた表札の出された家の前に立っていた。
「怖い人だったらどうしよう」と心配しているスレンとステイ。
そして一方…
『スレン、ステイ、遊ぼーよー!』
すっかり二人の名前を覚えたピチューが、騒いでいた。
「しぃっ!ピチュー、静かにしてよっ」
『えぇーっ』
「…よし、入るぞ」
二人は深呼吸してから「コンコン」と扉を軽く叩いた。
「どうぞ、お入り下さい」
中からは、おだやかな返事が返ってくる。
「「失礼します」」
二人は、ゆっくりと扉を開ける。
スレンの腕の中で、ピチューがゴソゴソしている。
「おや?貴方たちは見かけない顔ですね」
中にいた、いかにも博士らしい博士はそう言った。
「あ、ハイ。実はボクたち、ウツギ博士に頼まれて来たんですけど…」
「あぁ、貴方たちですか。ウツギ君からの使いは」
「(ウ…ウツギ君!?)は…ハイ」
曖昧に、スレンは返事を返す。
「ボクは、ウツギ君の友人なんですよ」
「は、はあ…」
「いや、御苦労様です。ところで、肝心の卵はどこです?」
どう見ても、博士の目は期待で輝いている。
「(うっ…)あ、あの博士…実は」
『おじちゃん、遊ぼー♪』
ステイが言いかけたそのとき、ピチューがティス博士に飛びついた。
「(お、おじちゃんて!)ピ…ピチュー!!ダメでしょっ」
『だってぇー、つまんないよっ』
「なっ、何です?このピチューは。しかも喋っているじゃありませんか」
当然の如く、博士は驚いている。
「博士、実は来る途中に、卵が孵ってしまって。それで、産まれたのがこのピチューなんです」
「ふむ、事情は分かりました。しかし、何故このピチューは喋っているのです」
それ程怖い人ではなかったという事に安心しながら、スレンは言った。
「ハイ…どうやらこの世界には、『言葉を喋るポケモン』が時々いるみたいなんです」
そして、スレンとステイは頷き合い、腰に付けたモンスターボールを投げた。
『ん…何だよ』
『どうかしたの、ステイ?』
クローとゲイルは、見慣れない風景に少し興奮しているようだ。
博士が頷いたのを確認すると、二人はポケモンをボールに戻した。
「分かりました。卵が孵ってしまったのなら、仕方ありません。ピチューは貴方たちに引き取って頂きます」
「は…ハイ」
『『引き取る』?それって楽しいー?』
「その前に、少しピチューをお預かりしてもよろしいですか?」
「ハイっ、モチロンです!」
スレンは、博士にピチューを預けた。
『なになにー?』

   数分後…

「お待たせしました。少しばかり、ピチューのDNAを抜き取らせて頂きました」
「でぃ…『でぃーえぬえー』?」
スレンは、いかにも棒読みの言葉を発した。
「遺伝子のことです。DNAを使えば、喋るポケモンのことが解明するかもしれません」
「なるほど…」
ステイは妙に納得している。
「(私には何にも分かんないよ…)」
「さて、私には他にもやることがあるので。また機会があれば」
「ハイっ、では失礼します」
二人は、頭を下げてティス博士の家を出た。
「さてと。まずはピチューのことね」
「スレンが引き取ってやってくれよ。スレンの方が懐いてるみたいだし」
「OK!まっかせてよ!!」
『まっかせてー♪』
ピチューは嬉しそうだ。意味は分かっていないようだが。
「ピチューの名前を付けなきゃ。んーと…ランなんかどお?」
『ラン、ラーン♪』
意味が分かっているのだろうか、このピチュー…ランは。
「じゃ、よろしくね。ラン」
スレンは、ランをモンスターボールに戻した。
新たな仲間が加わったのだ。
「とりあえず、ウツギ博士に連絡してみるか」
「うん、そうね」
ステイは、ポケギアを取り出し、ウツギ博士へ電話をかける。
《も、もしもし…》
少し間があり、博士が電話に出た。
博士は、何故か動揺しているようだ。
「あ、博士?ティス博士の用事、済ませましたよ。スレンも一緒です」
《そ、そうかい。じゃあ今スグ、二人で研究所に来てくれ!!》
「え…」
《頼むよ!それじゃ!!》

   プツッ…ツーツー…

「博士、何だって?」
「二人でスグ来てくれってさ。慌ててるみたいだったぜ」
「ふぅん。何だろ。じゃ、行こっか!」
二人は、ヨシノシティへと駆けていった。
一体、ワカバの研究所で何が起こったというのか!?
     つづく…
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依乃 #8★2004.12/14(火)17:12
第八話  謎の少年・シーク登場!

ウツギ博士から連絡があったその後のこと。
スレンとステイはヨシノシティに到着していた。
「とうちゃーくっ♪」
スレンは清々しい気持ちで伸びをした。
「そんなことしてる場合じゃないぞ、スレン。早く研究所に行かないと」
「分かってる分かってる!心配性だねぇ、ステイは」
そして二人が先へ進もうとしたその時。
「おいっ!そこのお前ら!!」
赤髪の少年に呼び止められた。目つきは鋭く、人を見下しているようだ。
「ちょっと、貴方!人にモノを頼む時の言い方じゃないわよ!」
「知るかよ!お前らだな、ワカバから旅立ったトレーナーってのは!!」
もともと鋭い目つきをもっと鋭くして少年は言った。
「人のことを訊くときには、自分が先に名乗ったらどうなんだ?」
呆れたように、ステイが言った。
続けてスレンも、そうよ、と頷いている。
「口数の多い奴らだ。オレの名はシーク。世界一強いトレーナーだ」
「何言ってるんだか。口ではいくらでも言えるわね」
貶すようにスレンが言った。
「…言ったな?こっちへ来い。二人ともだ」
シークは顔で、来い、という仕草を見せながら先を歩んで行く。
「<ごにょ…>どーする、ステイ?」
「<ごにょ…>先に進むには、相手をするしかない。…行こう」
二人は、シークの言う通りにするのだった。

   数分後…

三人は、緑豊かな広場へと到着していた。
「ここは?…ここで何をする気なの?」
少し警戒しながら、スレンが言った。
「ここを通してやってもいい。ただし、オレに勝てたら…だ」
「バトルか。面白いじゃないか。受けるよな、スレン?」
「もちろんっ!売られたケンカは買わなきゃね!!」
「決まったな。ダブルバトルで決着をつけるぜ」
シークは、腰に付けていたモンスターボールを高く投げた。
中からはベイリーフとニューラが出てきた。
「お前らは、一人一匹ずつ出せ。一気に片付けてやる」
「いい根性じゃないっ!行くわよ、クロー!!」
「付き合ってやるさ。出て来い、ゲイルっ!!」
『お、やっとオレの出番がきたな…』
『よぉしっ!腕がなるぜ!オイラの実力、赤髪に見せてやるっ!』
気合十分な二匹だったが、次の瞬間、二匹の動きが止まった。
『『…レイ!?』』
そう。
敵のベイリーフは、かつて二匹と共にいたチコリータのレイだったのだ。
『クローに…ゲイル?』
レイの方も驚いているようだった。
『貴方方だったのですね。二人と戦うことになるなんて…』
「フン、顔見知りかよ。レイ、手加減するんじゃねェぞ」
『…』
「クロー、ゲイル…」
スレンが悲しそうに呟いた。
『オレたちもオマエと戦いたくなどない。だが…』
『オイラたちはトレーナーに忠実に従う!』
二匹の気持ちは、同じなようだ。
「お前ら…!」
『私も同様です。どんなカタチであっても、シーク様は私を選んで下さった』
「(どんなカタチであっても…?)」
『クロー、ゲイル…いざ、勝負ですっ!!』
レイは攻撃の態勢になる。
それを見て、クローとゲイルも身構える。
「フッ…戦いの幕が落ちたな。…行くぜッ!」
     つづく…
zaqdb736d86.zaq.ne.jp
[574]

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