ぴくの〜ほかんこ

物語

【ぴくし〜のーと】 【ほかんこいちらん】 【みんなの感想】

[616] ― Trouble Travel ―

ユークシュッド #1★2005.01/23(日)23:58
この世界にはポケットモンスター、縮めてポケモンという不思議な生き物が住んでいる。
そして、この世界の人々はそのポケモンと一緒に過ごしている、

    ある者はペットとして。
      ある者は仕事仲間として。
        また、ある者は強さを競わせたりしている。

最近は強さを競うばかりではなく、かわいさ、かっこよさなどを競うこともある。
さて、これはとあるトレーナーとポケモン達の物語。

 〜 Trouble Trabel 第1話:とある町の事件 〜
 〜 第1節 頼りないトレーナー? 〜

(うぁっ…。)
「さぁ、これであと1匹でオレの勝ちだからな。」
こういった公園や広場には大体トレーナーがいるものだ、ここも例外ではなく帽子を後ろに被った少年と、首に青いバンダナを巻いた少年がバトルの最中で、ちょうど帽子の少年のニドリーノがバンダナの少年のロコンを倒したところだ。
「くっ…戻れ、セリス!行けっ。アレス!」
バンダナの少年がセリスと呼んだロコンを戻し、カラカラのアレスを出してきた。
「ホネブーメランだ!」
(おう!そーれっ。)
出てきたアレスが一声、気合を入れて持っているホネを投げた。
「来るぞ。避けて、あいつにれいとうビームだ。」
(ああ。簡単な事だぜ…くらえ!)
(何っ!うわあぁぁ…)
軽々と避けられ、相手のニドリーノのれいとうビームで固まってしまった。
「これでオレの勝ちだな。」
「まだやれるよ!」
「…伏せろ、ニドリーノ。」
(ふっ…。)

  ― コツーン! ―

「うあっ!アレス!」
戻ってきたホネまで避けられアレスは固まったまま気絶した…。

  〜 ポケモンセンター 〜

ポケモンセンターにはジョーイがいてポケモンの治療をしているのはだいたいどこも一緒である。
その受付でなにやら大きな話し声がする。
「またアナタ!?今日何度目?」
「だって、ポケモンを強くしたいんだもん…。」
「でも朝も昼も来たじゃないの!バトルのしすぎよ。」
ジョーイに怒られているのは先ほどのバンダナ少年・ススム。トレーナ歴は半年くらい。
「でも、ポケモンの治療が私の仕事。預かるのは、ロコンとカラカラとムウマね。」
「うん…。」
ススムはちょっとうつむいてしまった。ジョーイはその様子を見て少し声を和らげて言った。
「…あのね、あまり急いで育てるのは、お薦めできないのよ。それぞれに合った育て方をしないと。」
「うん…でも、ぼくどう育てるのがいいのか分からないんだ。どうすればいいの?」
「どうするかというより…ポケモンの気持ちを考えながら育てる事ね。とにかく、今日はもうバトルしない事。わかった?」
「うん…。」
その時すでに日が沈んでいた。ススムは朝からバトル続きだったのでいつの間にか寝てしまった。

 その頃…。

 ― 今日はこの町か?この大きさだとすぐ目的は達成できそうだな。 ―
 ― ああっ。それにもし追ってくるやつがいたら…フフフ。 ―
 ― …だな。よし仕事に取り掛かるか。 ―

暗めの服を着た、怪しい2人組が密かに町に消えていた。

  〜 それから数時間後 〜

町の家々についていた明かりがぽつりぽつりと消え始めた。
ススムはポケモンセンターのソファーでぐっすり寝ていた。

  ― ポンッ ポンッ ポンッ ―

(あれ?ススム君寝てますね…。)
最初に出てきたニョロゾのラーナがソファーのススムを覗き込んだ。
(今日は朝からバトル続きだったからね。)
ススムの寝顔を見ながら少し微笑んでいるのはプクリンのウィグリー
(ったく…ポケモンの使い方がヘタなんだよな。)
なんだかムッとしてるのはキレイハナのフルール。
(そういう事あんまり言っちゃダメだよ、フルール。)
ウィグリーの言葉を耳にして目つきを鋭くする。
(だって、あそこでソーラービーム撃たせるか!?普通。…ったく月の光浴びてくる。)
(あっ…待って下さい。)
そのまま外に出て行くフルールをラーナが追いかける。
― じゃあボクもちょっと散歩しよう。ススム、すぐ戻ってくるからね。 ―
ウィグリーはススムの顔を見ながら外へ出て行きかけて…。
(あっ、) ― 分身、置いてこうかな。もし急に起きて誰もいないのまずい気がするし ―
目を閉じて少し力を入れるとウィグリーそっくりの分身が現れた。「みがわり」というワザである。
(それじゃボクの分身、少しの間ススムと一緒にいてね。)
分身が黙ってうなずくのを確認してウィグリーはそっと外に出て行った。
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ユークシュッド #2★2005.01/28(金)20:20

  〜 公園 〜

(ったく…やってらんないよな。)
(勝手に外に出るのまずいんじゃないですか…?)
(お前もついて来たじゃねえか。)
(それはそうですけど…。)
歩いてた2匹は思いもしなかっただろう、この公園に怪しい2人組がいるとは  ・・そしてその方向に向かっているとは。

 〜 Trouble Trabel 第1話:とある町の事件 〜
 〜 第2節 真夜中の魔の手 〜

 ― おいっ。こっちに誰か来るぞ。 ―
 ― 何っ?なんだポケモンが2匹かよ…。 ―
 ― どうやらトレーナーはそばにいないようだな ―
 ― どうするよ? ―
 ― ついでだ、もらってやろう。どっちか片方は捕まえられるだろう。それにもしトレーナーが来ても… ―

そう言うと2人組の背の高い方がモンスターボールに手をかけた。

   ― ガサガサッ ―

(あれっ…なんでしょう?今の音。)
(誰かいるのか!?)
フルールが身構えた瞬間…。
「ああ、いるぜ!ヨルノズク。そっちのニョロゾにとっしんだ。」
(ぶっ飛べ!)

   ― ドスッ! ―

突然出てきた男が出したヨルノズクの勢いでラーナは十数メートル飛ばされた。
「お前ら!イキナリ出てきて、なんのつもりだ!」
フルールは人間の言葉で叫んだ。実はこの辺のポケモンは時々喋れるのがいる。
「ほう…お前は言葉を喋れるのか。しかし人に対して少々口が悪いな。」
背の高い方がクククッと笑いながら言った。
「知るか!質問に答えろ!」
「仕事が終わってさっさと帰るつもりだったが、ちょうどお前らが通りかかったんで、ついでに仲間に入れてやろうと思ってな。」
背の低い方が答える。
(痛いです…。)
フルールの後ろでラーナが頭をおさえて起き上がる。
(ラーナ!早く逃げろ!こいつら普通じゃねえ!)
(え?でも…。)
(いいから!オレは大丈夫だ!)
(うん…。)
ラーナがどこか行ったのを見て背の高い方が余裕たっぷりに言った。
「別れのあいさつは済んだかな?アイツにはもう会えないかも知れないしな…。」
「ったく…やっかいなヤツに会っちまったぜ。」

  〜 ポケモンセンター 〜

(はぁ、はぁ…息が苦しいです…。ススム君!)
あまり走ることに慣れてないラーナだったが、なんとかポケモンセンターまでたどり着いた。

  ― ガチャ!バタン! ―

(ススム君!ウィグリー君!大変なんです!起きてください!)
いまだ寝ているススムとその隣でうとうとしているウィグリー(の分身)を揺する。
「ん?ラーナ何?こんな夜中に。」
(何かあったの?)
ススムは眠い目をこすった。
(はぁはぁ…フルール君が怪しい2人組に襲われてるんです!)
(何だって!)
「ん〜、何があったの?ウィグリー。」
ススムはポケモンが何を喋ってるかよく分からない。
そこで人間の言葉を話せるフルールかウィグリーに通訳をしてもらっている。
「フルールが襲われた!」
「はっ!?」
「あ〜。もういいから早く行くよ!」
(急いでください!)
まだよく状況が分かってないススムを連れて2匹は急いで公園に向かった。

…そのすぐ後

「ただいま。月がキレイで気持ち良くて遅くなっちゃった。あれ?ススムも分身もいない?」
本体のウィグリーが入れ違いで入ってきた。
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ユークシュッド #3★2005.01/28(金)20:29

 〜 Trouble Trabel 第1話:とある町の事件 〜
 〜 第3節 真夜中の魔の手-2 〜

  〜 公園 〜

(くっ…。)
「意外とコイツしぶとかったな…。」
何とかフルールは抵抗していたが相性のせいもあり時間がたつごとに体力が消耗していた。
「…だな。ヨルノズク、さいみんじゅつだ。」
(深く眠ってしまえ。)
「や…やめ…ろ…。」

  ― パタッ… ―

「安心しろ、これからお前をしっかり使ってやるからな。」
軽い音を立ててフルールの意識は深い闇へ沈んでいった。
それを見て背の低い男が手早くフルールを紐で縛った。

「…それとお前のトレーナーはいい実験台にしてやるぜ!」
背の高い男が顔を向けると、向こうからウィグリーとラーナがススムを連れてきた。
「フルールを返せ!」
(そうだそうだ!)
(あなたたち、逃がさないですよ。)
「ククッ、戻ってきたのか。バカなやつらだ、それならその2匹ももらっとくぜ。」
2人はまったく慌てる事も無く、むしろ楽しんでいるようだった。
「おっと、今度はオレも手伝うぜ!行けっサボネア!やつらの逃げ道をふさげ!」
(ふふっ。逃がさないのはお前らの方だからな。まきびし!)
背の低い男はサボネアを繰り出し、ススムたちの後ろにたくさんのトゲをばら撒いた。
(逃げたりなんかしないよ!ボクらで捕まえるんだ!)
ウィグリーはサボネアとの距離を詰めようとした。
「サボネアだけいるわけじゃないぜ。ヨルノズク、とっしん。」
(お前もぶっ飛べ!)
あっさりと攻撃を食らってしまった。滑っていく先では無数のトゲが刺さる。
「トレーナーの指示より前に飛び出てくるとは、信頼されてないのかな。ククッ…。」
「くそっ。ラーナ、行ってくれ!」
(ウィグリー君に何てことするんですか!)
「来たぞ。ニードルアームでトレーナーもろともまとめてやっちまえ。」
(オーケー!まとめてやっつけてやるんだからな。)
飛びかかってきたラーナに素早く2,3発当てたのち、ラーナをススムに向けて飛ぶように思い切り叩いた。
「うわっ!」
ススムは思わずラーナを避けようと動いた時…。
「ヨルノズク、トレーナーを動けなくしろ!」
「サボネア、こいつを針に含ませて打ち出せ!」
ヨルノズクがススムを捕まえ高く飛び、背の低い男がサボネアに茶色い液体の入ったビンを渡した。
「何するんだ、離せ!」
(おっと、暴れると落ちるぜ!)
「サボネア、ミサイルばりだ。よく狙えよ。」
(これを当てるのは慣れてるんだからな。)
サボネアは右手の針に十分液体を含ませ、上空でもがくススムに向けて発射した!
「うわぁぁー!」
(ふふっ。全部命中だからな。)
「ヨルノズク、離してやれ。」
(落ちろ…。)

   ― ドスッ… ―

「ううっ…痛いよ…。」
ススムは落とされた衝撃で動けないでいた。
それを見て背の高い男はススムを覗き込むようにして言った。
「さて、どの程度で今の液体の効果が現れるかな…。」
その横で背の低い男がラーナとウィグリーを縛りながら言う。
「ククッ。次に起きたらビックリするぜ。」
ススムの目の前がだんだん霞んでいく…意識も薄れてきた。

 ― ぼく…どうなっちゃうの…ううっ、目の前が暗くなってきた… ―
遠くでサイレンの音が聞こえてきた。そしてその音が少しづつ近づいているようにも聞こえた。

「…むっ、ホントに記憶が消えてるのか見れないのは残念だがさっさとずらかるか。」
「…だな。しかし追加で1匹と2匹かかるとはな。ついてるぜオレ達。」
「このトレーナーはどうする?」
「ほっとけ。どうせ記憶は消えてるぜ。」

2人組は公園の裏に隠してあったトラックにフルールたちを放り込み、去っていった。
…3匹のうち1匹はみがわりであることは知らなかったが。

  〜 その頃 〜

― 誰も帰ってこない…何かあったのかな。 ―
ウィグリー(本体)は、ポケモンセンターでしばらく待っていたが、誰も帰ってこないので外に出てみる事にした。
すると公園の方から大きなトラックが猛スピードでウィグリーの横を通り過ぎていった。
― こんな時間に?…なんだか嫌な感じがする。 ―
何か冷たいものが通り過ぎていった気がしてウィグリーは急いで公園に向かった。
― みんなどこ行っちゃったんだろ?…んっ、あれは何だろう? ―
(イタッ…何か踏んだ…。)
見るとウィグリーの足にトゲが刺さっている。
― なんでこんなにトゲが落ちてるの?ここで何があったの? ―
疑問と不安を感じながら慎重に見つけたものに近づく。それは…。
(これ…ススムのだよね?なんでこんなところに…って。えぇ!?)

何か大変なものを見つけてしまったようだ。
ウィグリーは見つけたものを抱えて急いでポケモンセンターに戻っていった。
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ユークシュッド #4☆2005.01/24(月)21:41

  〜 翌朝・ポケモンセンター 〜

朝になると町では大変な事になっていた。
夜のうちに数名のトレーナーと十数匹のポケモンが行方不明になってしまったのだ。
そういうわけでポケモンセンターは朝から騒がしかった。

 〜 Trouble Trabel 第1話:とある町の事件 〜
 〜 第4節 ポケモン・トレーナー 〜

(じゃあ、おいら達が預けられてる間にフルールとラーナはいなくなったのか?)
(うん、そうだと思う。ボクの分身もいなくなってたし…。)
ススムのポケモン達もソファーに座って夜の事を話していた。
(ススムも見当たらないのよね…。で、代わりにこの子が服に包まっていたのね。)
ムウマのローブが1匹のイーブイの上でフワフワ浮いている。
(でも、この青いバンダナってやっぱりそうじゃないの?あっ、目を覚ましそう。)
ロコンのセリスが不思議そうな顔でイーブイを覗く。その時ススムがゆっくり目をあけた。
(あれ?なんでぼくの周りにみんながいるんだ?)
(え?公園にキミが倒れてたからボクが運んできたんだよ。)
ウィグリーが目を覚ましたイーブイに優しく言う。それを聞いてススムは不思議そうな顔をした。
(公園?なんでぼくそんなところに?それにウィグリーが運ぶには重くなかった?)
(えっ?軽かったよ。それより、ボクの名前知ってるって事は…。)
(そりゃ知ってるよ、だって名前付けたのトレーナーのぼくだよ。)
それを聞いてセリスは少し大きな声で言った。
(やっぱこのイーブイはススムよ!)
(セリス、なに言ってるんだよ?ぼくはイーブイなんかじゃないよ。)
ちょっとムッとした様子のススム、そこで鏡を持ってきたローブが言った。
(これを見ても?どこから見てもあなたイーブイじゃない。)
(えっ?なんで、どうして!?これホントにぼく?そういえば、みんなの言ってる事が分かるし、ぼくは人間じゃなかったの?)
鏡に映った自分を見てススムはかなり混乱している。
ウィグリーはとりあえず昨日公園に行ったときのことを話した。

−−−−−−−−−−−−

公園に着くと、トゲがいっぱい撒いてあったんだよ。
で、トゲを避けながら行くとススムの服を見つけたんだ。
それで中にあちこちキズだらけのイーブイが丸まっていたんだよ…。
ボクあわててポケモンセンターに連れてきたんだ。

そして、朝早くからトレーナーやポケモン達がこうやって自分の仲間がいなくなったって騒いでるから…
たぶんフルールとラーナも何か事件に巻き込まれたんだと思うんだ。

−−−−−−−−−−−−

(でも、ぼく何があったか覚えてないんだけど…それに事件って…フルールとラーナはどこ行っちゃったの!?)
(それが分かってたらもう探しに行ってるわ。)
(でも、ポケモンになっちゃうなんて不思議な事があるのね。アタシたちの言葉も分かるようになっちゃうし。)
(おいっ!セリス!)
(…あっ。ごめんなさい…。)
アレスに睨まれて少し反省するセリス。
(…で、これからどうするんだ?いつまでもここで困ってもいられないだろう。)
(えっ、どうしよう…。)
(ススムを元に姿に戻すよ!それに犯人を探し出してフルールとラーナも取り戻さないと。)
ウィグリーがススムの代わりに立ち上がって答える。
(やっぱり、ウィグリーのほうがしっかりしてるな。)
(やっぱりって…今まで、ぼくそう思われてたの?)
(ススム、今ごろ気づいたの?)
ススムはみんなに頼りなく思われてたのを知ってちょっとがっかりした…。
(よし、そしたらジョーイさんにススムの荷物をもらって旅立ってもいいか聞かないとね。)
しかし今はトレーナーやポケモンが多く、とてもジョーイと話す余裕は無かった。
結局騒ぎが落ち着いたのは昼になった頃だった。
「ジョーイさん、ジョーイさん。お願いがあるんだけど。」
「えっと…ウィグリー君だったわね。何かしら?」
「やっぱり、あのイーブイはススムだったよ…。」
ジョーイとウィグリーが話しているのを他のポケモン達は黙って聞いている。
「そうなの…実はね、最近人間がポケモンになる事件、それと同時にポケモンが行方不明になる事件があちこちの町で起きてるの。」
「そっか…で、ススムがいつ人間に戻るのか分からないし、フルールとラーナが心配だから旅に出たいの!ねえ。旅に出ていいでしょ?」
ジョーイは首を横に振る。
「トレーナーがあんな状態で旅に出るのは危険よ。もし悪い人にボールを投げられたらどうするの?捕まってしまうかも知れないのよ。」
「でも…でもフルールやラーナのことを思うとじっとなんかしてられないよ。」
その時ススムがジョーイの前におぼつかない足取りで歩み寄ってきて言った。
(ぼくはこんな状態でもいいから!捕まりそうなときはどうにかするよ。とにかく、ぼくもここでじっとしてるのはイヤだ!)
(おいらもじっとしたくないな。)
(アタシも。)
(もちろんわたしもね…。)
― ススム…みんな ―
全員でジョーイに訴えかける。それを見てウィグリーは思い切って言ってみた。
「ジョーイさん、こういうことが色んな町で起きてるんだよね。」
「ええ、そうよ…。」
「1番最初の人は人間に戻れたの?」
「いいえ…戻ったという話は聞いてないわ。今もその町のポケモンセンターにいるわ。」
「待ってても戻らないならボクらは出て行く!自分達で戻る方法を探したい!みんなもそう思うよね!」
ウィグリーの言葉にみんな首を縦に振った。
「それに、悪い人の方こそ動いちゃいけないでしょ?なんで事件にあった人たちが動けないの?」
「…わかったわ、それなら…。」
ジョーイはそう言って空のトレーナーカードを取り出し、コンピュータとつないだ。
「今のままだと、ススム君はトレーナーじゃなくてポケモン扱いになるから特殊ポケモンの登録をするわね。」
(特殊ポケモン?)
「特殊ポケモンってなに?」
「簡単に言うと…人間のトレーナーのように身分証を持つポケモンの事よ。特殊ポケモン証明があれば人間のトレーナーとだいたい同じ扱いなの。時々見かけること無いかしら?」
ウィグリーはそう言われてポケモンだけで旅をしているグループがいるのを思い出した。
「あ、そういえば、見たことある…じゃあ何ですぐに旅立っていいって言わなかったの?」
「いくら扱いが同じでも、ポケモンだからボールで捕まらないわけじゃないの、それなりの危険は覚悟してもらう必要があるのよ。さ、みんなここに右手を出して。」
(わたしの場合は?)
「ムウマのあなたの場合は、いま写真を取るわ。」
言われてそれぞれ右手を出した。すると青い光が手の形をなぞった。見るとなにやら機械が回っている。
ローブの写真も同じように青い光に通す。
「さあ、あとはリーダーになるポケモンの名前を教えて。苗字があればフルネームで。」
ジョーイはススムを見た。しかしススムは少し悩んでウィグリーに顔を向けて言った。
(ウィグリー、たぶん元々ぼくがしっかりして無かったせいだ…しばらくリーダーをまかせたいんだけど。)
「え、でもいいの?…。」
(うん…お願い。)
(今はその方が心強いかもね…。)
頭を下げるススムに小さな声でローブがつぶやいた。
「じゃあ…リーダーはボク、ウィグリー・ヴァンブリッサがやるよ。」
「ウィグリー・ヴァンブリッサね…。はい、これでOKよ。いつも忘れず首から下げててね。
 それと、もしリーダーを代える場合や新しくポケモンが仲間になったときは登録を忘れずにね。」
ジョーイは出てきたひも付きのトレーナーカードをウィグリーに渡した。
「くれぐれも気をつけてね。あとこれは預かってたススム君の荷物よ。」
「うん、ありがとう!さ、みんな行くよ!」
(お〜!)
ウィグリーはカードを首に、ススムの荷物を肩(?)にかけ、元気よく外に出て行った。

― ウィグリー、気合入ってるな…。ぼくも最初はあんな感じだったのかな。 ―
みんなも続いて外に出る。とりあえず。まずは昨日の公園に行ってみることにしたが…。

(…お〜い、ちょっと待ってよ〜。)
ススムがフラフラとしながら言った。
「ん?ススム、どうしたの?」
(まだこの姿に慣れてないからもっとゆっくり歩いて…。)
(そんなに歩きづらいかな〜?)
セリスが首をかしげる。
(じゃあ、おいらの背中に捕まりなよ。すぐそこだし。)
(うん、そうさせてもらう…。)
ススムはアレスに背負われて公園まで行く事になった。
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ユークシュッド #5☆2005.01/25(火)22:29

 〜 Trouble Trabel 第2話:旅の準備 〜
 〜 第1節 まず初めにする事… 〜

  〜 公園 〜

ウィグリー達が外に出るとたくさんの警官が忙しそうにあちこち回っていた。
公園に向かって歩いていると突然呼び止められた。
(そこのポケモン達、トレーナーを置いて来ちゃダメじゃないか!)
向こうから1匹のポケモン、ガーディが走ってきた。後から女の警官、ジュンサーがついてくる。
「あ、えっと、一応今トレーナーはボクなんだけど…。」
(うん?特殊ポケモンか、カードが新しいな。なり立てか?)
「あら、あなたたち特殊ポケモンなの?でも、今はあんまりぞろぞろ歩いちゃダメよ。」
(え〜、なんで〜。)
セリスが不思議そうに聞く。
(いろんな人がいるからな、はぐれちゃうかもしれないだろ?)
「それに今、事件があったばかりだから、はぐれポケモンと勘違いされるわよ。」
(まあ、こんな時だしな、必要も無く出る必要はないだろう。)
(そうだね…じゃあ、みんなボールに入ってもらっていいかな?ススムは…ボクの頭の上かな?)
アレスの一言と共に、ウィグリーは荷物からボールを出して、みんなを中に戻した。ススムはウィグリーの頭に飛び乗る。
「これでいいの?」
「うん、いいわよ。で、今どこに向かおうとしてたの?」
「ん、公園だけど?事件の手がかりないかな〜って」
「あなた達も被害者だったのね。悪いけど、今あそこは調査中で立ち入り禁止なの。」
(え〜、残念だな…。)
(しょうがないだろ、事件あったんだ。)
つぶやきを聞き逃さずガーディは反応した。
「もし事件について何か知ってることがあればいいんだけど…もしかして、記憶消されてる?」
聞かれてススムは悲しげな表情で首を縦に振った。
「やっぱり…、どの被害者に聞いても、事件の夜の記憶が消されてて手がかりがつかめないのよ…。」
(そうなんだ、くやしいなぁ…)
「もう少ししたら調査も終わるから、もしこの事件についてのことを聞きたければここに来てちょうだい。」
そう言ってジュンサーは警察署の地図をウィグリーに渡した。
「うんわかった、ありがとう。」
「それじゃあ、私達はまた仕事に戻るから。」
(お仕事がんばって!絶対手がかり見つけてよ。)
(おう、キミらも気をつけて行けよ。)
ジュンサーとガーディが去った後…。
「ねえススム、これからどうしたらいいかな?」
(そうだな…。お店に行こうか、これからのために色々道具を補充しないといけないからさ。)
(お店!?買い物行くの?ならアタシ外に出ていたいな!)
お店、という言葉を聞いてセリスがボールから飛び出してきた。セリスは買い物が好きなのである。
(さっ、速く行こうよっ!)
(あっ、セリス待ってよ!)
駆け出したセリスを追うようにしてウィグリーはお店に行く事にした。

  〜 フレンドリーショップ 〜

「いらっしゃいませ!おや?ポケモンだけなのかな?」
「うん、そうだよ。」
「へ〜、しかも喋れるポケモンか。おっと、お客様だった…。ごゆっくり買い物をしていって下さいね。」
(ポケモンだけで来ると、喋り方とかがずいぶん違うのね。)
(ぼくも今まで人間相手とポケモン相手じゃ態度違ってたな。今度から少し気をつけよう。)
ススムは店員の態度の違いを見て今までの自分と照らし合わせていた。
「あんまり気にしなくていいよ。そんなことでススムの事イヤになったりしないから。」
(そうそう、アタシたちそんなに心狭くないもん。)
(そう?そう言ってもらえると嬉しいな。)
「それでススム、今、荷物にはこれだけ道具があるんだけど。」
ウィグリーは荷物の中身をススムに見せて言った。
(じゃあ、毒消しとマヒ治しを補充しておいた方がいいね。)
(は〜い、じゃあアタシがかご持つね!お菓子も買ってね。)
(セリス、お菓子はまだ少しあるから、1個だけだよ。)
セリスは買い物かごを口にくわえながら言った。
ウィグリーとススムは色んなものが並んでる棚から必要なもの
それと、セリスがお気に入りのお菓子を見つけてかごの中に入れていった。
だいたい揃ったところでウィグリーがふと気づいたように口を開いた。
「ススム、ボク思ったんだけどさ、眠気覚ましを少し買った方がいいと思うんだ。」
(ん?なんで?)
「今まで結構、バトル中に眠っちゃった時に起きるまで呼びかけるばかりだったでしょ?」
(うん、そうだった。)
「それで何とかなることもあったけどね、判断が鈍るからちゃんと治した方がいいと思うんだ。」
そこにセリスが割り込むように右手を挙げて言った。
(アタシからも1ついいかな。使ってもらえるなら傷薬よりおいしい水がいいな。ちょうどそこに売ってるよ。)
(え?でもまだ傷薬が残ってるよ?)
(この際だから傷薬全部売っちゃっておいしい水に買おうよ!)
(う〜ん…。ウィグリーはどう思う?)
ウィグリーはちょっと考えてから言った。
「ボクもおいしい水がいいな。」
(それなら、眠気覚ましとおいしい水も買おうか!)
(わ〜い、じゃあついでにお菓子をもう1個!)
((それは無しだよ!))
(え〜!?)
ススムとウィグリーの声がシンクロし、セリスも残念そうな声をあげた。
そして、店員に買った物のお金を払い、店を後にした。

「ありがとうございました〜。今後もよろしくね。」
(じゃあ、買い物も終わったし、アタシは戻るね。)
そう言ってセリスは自分でボールのスイッチを押して戻っていった。
(ところで、そろそろ調査終わったよね?警察署に行こうか?)
「うん、手がかりが見つかってるといいんだけど。」
ウィグリーとススムは少しだけ期待を胸に警察署へ向かった。
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ユークシュッド #6☆2005.01/27(木)21:17

 〜 Trouble Trabel 第2話:旅の準備 〜
 〜 第2節 手がかり 〜

 〜 警察署 〜

交通安全やポケモンに関する標語ポスターの掲げられてる入り口を通ると、少し混雑していた。
(う〜ん、なんだか警察署って聞くと緊張するな。)
「そうかな?ボクたち別に悪い事してないでしょ?あの〜。聞きたい事があるんだ。」
事件の相談窓口に足を運んで声をかける。
「はい?あら、ポケモンさんですね。もしかして昨日の事件についてですか?」
「うん、実はボクらの仲間が連れてかれたみたいなんだ、どこ行っちゃったのか何かわからないかな…。」
「そうなんですか…でしたら、少しこちらも聞きたいことがありますので、少しお待ちください。」
すると中からさっき会ったジュンサーさんが出てきた。
(あっ、さっきのジュンサーさん。)
「あなた達、来たのね。じゃあ、話はこっちでしましょう。」
と、仕切りで囲まれた机に案内された。
「あなた達の事はポケモンセンターのジョーイさんから聞いてるわ。あなた達のキレイハナとニョロゾが行方不明なのよね?」
「うん、フルールとラーナって言うんだ…。」
「そして、あなたはイーブイにされてしまった…。」
(うん…。)
「聞いたことあるかも知れないけど、実は同じような事件がこの地域のあちこちで起きてるのよ。しかもポケモンを使ってること以外の証拠があまり出ないの。」
「うん、聞いたことあるかも…。」
「で、もしかして、こんなトラックに乗ってなかったかしら。」
そう言ってジュンサーは1台のトラックの写真を見せた。
「あっ!これって…。」
ウィグリーは思わず声をあげた。昨日見たトラックに描かれていた模様にそっくりだったから。
「見かけたのね?」
「うん、ボクがススムを見つけに外出たとき通り過ぎたんだ…。確かあっちの方に。」
そう言って方角で言えば東の方を指す。
「間違いないわね?」
「うん、間違いないよ。」
ジュンサーの表情が少し変わったように見えた。
「どうしたの?」
「実は事件が起こり始める少し前に、この宅配便トラックが数台盗まれたのよ…。」
ジュンサーは少し間をおいてから口を開いた。
「この先もしこのトラックを見かけたら念のため連絡して。この写真はあなた達が持ってていいから。」
「うん…。わかった。」
「それじゃ、私まだ仕事だからそろそろ戻るわね。」
そう言ってジュンサーは部屋に戻っていった。
(結局、このトラックが怪しいって事だけかぁ…。)
「そうだね…。」

警察署を後にし、外に出るとススムの目に見覚えのある人物が映った。
(あっ、昨日のトレーナー。)
帽子を被ったトレーナー…向こうもこっちの声に気づいた。
「ん?そこのポケモン達、トレーナーは居ないのか?」
「今は一応ボクがトレーナーだけど…。」
「ああ、なら特殊ポケモンとかいうやつだな。そうだ、勝負してくれないか?」
あっちはこちらと昨日会っている事に気づいていない。昨日会ったトレーナーがイーブイの姿じゃ無理も無いのかもしれないが。
「えっ。でも今は…。」
「申し込まれた勝負には応えるのがトレーナーってもんだぜ!それとも、どうしてもダメか?」
「ちょっと待ってね…。」(ススム、どうしよう。)
ウィグリーは右手で待ったのポーズをして、頭の上に乗ってるススムに聞く。
(そうだな…最初だし、1匹勝負でいいか聞いてみれば?)
「うん…。えっと、じゃあ1匹勝負でいいかな?」
「ああいいぜ、じゃあオレが先に出させてもらうぜ…ニドリーノ!」

そう言ってトレーナーはボールを投げる。中から紫色のポケモン、ニドリーノが飛び出てきた。
(おっ、バトルか?相手は誰だ?お前か?)
ニドリーノの目にウィグリーの姿が映って構えた。
「あのプクリンはトレーナーみたいなものだ、攻撃するなよ。」
帽子のトレーナーは注意する。
(へえ、そうなのか?なら早く相手を出してくれよ。)
(そんなに急かさないでよ、今出すから。)
ニドリーノにそう言ってから、みんなの持ってるワザをよく思い出して1つ頷く。
(よし!キミの相手は…。)
ウィグリーは自信を持って1つのボールを手にした。
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ユークシュッド #7☆2005.01/27(木)21:18

(ローブ、お願い!)
ボールから光と共にムウマのローブが飛び出した。
(あら、わたしなの?)

 〜 Trouble Trabel 第2話:旅の準備 〜
 〜 第3節 ポケモンバトル 〜

「よし、それじゃあ、ニドリーノ行け!」
ニドリーノはローブにツノを向けて飛びかかってくる。
(ウィグリー、大丈夫なの?)
ちょっと不安そうなススムにウィグリーはウインクして言った。
「まあ、黙って見ててよ。」(ローブ、まずは相手をビックリさせて。)
(ええ。)
するといきなりす〜っとローブの姿が消える。
(ん?どこに行ったんだ?)
(ふふっ、ここよ!)
キョロキョロするニドリーノの前にイキナリ現われ顔に貼りつく。
(どわ〜っ!?)
思わずニドリーノはのけぞる。
(よし、そのまま大声出して!)
(うん、…わあぁ〜!!)
(だ〜っ!うるさい!)
「剥がせ!ニドリーノ。」
(いつまでくっついてんだ!離れろ!)
ニドリーノは顔を大きく左右に振りムウマを剥がしたが、近距離の鳴き声は結構効いたようだ。
「なかなか面白い事してくれるな。ニドリーノ、毒針だ!」
(お、おう!今度はこっちの番だぜ!食らえ!)
ニドリーノのツノから無数の毒針が飛び出て、引き剥がしたばかりのローブに当たる。
(…チクチクと地味に痛いわ。)
ちょっとだけダメージはあるようだが、反応が薄い。
(ローブ大丈夫?)
(ええ、この位は平気よ。)
「次の攻撃だ!」
(おうっ。)
(そう?あっ来るよ、モヤモヤ〜ってさせて!)
(あれね、わかった。)
ローブの目が怪しく光る。その瞬間ニドリーノの目がうつろになる。
(何だ?…何でこんなにいっぱい居るんだ…?こいつか!?)
ニドリーノは誰もいないところに向かって飛びかかるが、誰もいないので勢い余って地面に激突する。
「お、おいっ。ニドリーノしっかりしろ!相手はあっちだ!」
(くそっ。やってくれるな!)
今の衝撃で混乱が解けたようだ。すぐさまローブとの距離を詰める。
「行け!冷凍ビームだ!」
(おうっ、食らえ!)
ニドリーノの口に冷気が集まる。次の瞬間。
(ローブ!頭から突っ込んで!)
(わかったわ!)
(ええっ!?)
ススムが思わず声をあげる。冷凍ビームを待ち構えて避けると思っていたから。

(「何っ!?向かってきた!」)
 ― ガツゥッン ―

トレーナーとニドリーノの声となんとも表現しにくい激突音が辺りに響く。
(うおっ…)
冷凍ビームを吐きだしながらその場にニドリーノが倒れる。
(寒ぅ、…結構固い頭だったわね。)
吐き出した冷凍ビームで少し震えた声になったローブが言う。
「うわ〜、やられたぜ…。戻れニドリーノ。」
トレーナーは左手で頭を押さえながら、ニドリーノを戻す。
(ローブ、お疲れ様、大丈夫だった?)
(ええ、平気よ。じゃあわたし戻るわね。)
ウィグリーは勝負を終えたローブに声をかける。ローブはなんて事無いという雰囲気でボールに戻った。ちょっと声が嬉しそうだったが。
(すごいね、勝っちゃったよ!)
ススムが喜びながらウィグリーに言う。
「まさか、あそこで突っ込んでくるとは思わなかったぜ。お前、名前何ていうんだ?」
トレーナーがウィグリーに話しかける。
「ん?ボクはウィグリーって名前だよ。」
「へえ、オレはヒトシって言うんだ。お前、指示がうまいな。」
「昨日、キミとボクのトレーナーが戦ってるところ見てたからね。」
「え?昨日?じゃあ今そのトレーナーは?」
(「ここ!」)
ウィグリーが頭上のススムを指すのとススムが自分を指すタイミングが重なった。
「えっ、このイーブイ?」
「うん、ちょっと事件に巻き込まれてね…でも絶対戻してみせるんだ。」
ウィグリーはススムを自分の腕に抱いてそう言った。ススムはなんだか照れくさそうだ。
「そうなのか…オレはがんばれって言う事しかできないけど、戻れるといいな。」
「うん、それじゃボク達行くから。」
「あ〜、待て待て。ホントは昨日登録したかったんだが、ポケナビとかポケギア持ってないか?何かあったら連絡するぜ。」
(ん、ぼくのポケナビ出していいよ。)
「うん、じゃあトレーナーのだけど。」
そう言って荷物からポケナビを取り出し、ヒトシに渡す。すると素早くヒトシはポケナビを操作して…。
「お前のトレーナー、ススムって言うのか…よしっ、登録完了!そっちもいつでもかけてきていいぞ。」
再びウィグリーの手に渡した。
「うん、ありがとう!それじゃボク行くから。」
(さよなら〜。)
「気をつけて行けよ!」
お互いに手を振ってそれぞれの方向に歩いていった。

 ― ツイースタウン (西)← 現在ラミィシティ →(東) カティラタウン ―

町の境目にある看板の前に立つ。
「ススム…。どっちに行こうか?」
(トラックが行った方向に行くよ、だから、目指すはカティラタウン!)
「そうだね!目指せカティラタウン!」
とりあえずウィグリー達はカティラタウンというところを目指す事にした。
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ユークシュッド #8★2005.02/04(金)11:13
― ったく…ここはどこだ?真っ暗じゃねーか。 ―
(ククッ…オレの出番だ!)
― 誰だ!…って何でオレが目の前にいるんだ!? ―
(ぶちのめしてやるぜ!)
「フルール、なんで!?」
― その声はススム!ウィグリー!オレはこっちだ! ―
「どうしたんだよ!目を覚ませ!」
(オレは十分目を覚ましてるぜ!なぁ?)
― オレの姿しやがって何のつもりだ!食らえっ! ―

 ― スカッ ―

― え…? ―
(フルール、ボクたちの事が分からないの!?)
(…ったくうるさいぜ、食らえっ!)
― や…やばい。ススム、ウィグリー逃げろ!! ―
「うわぁぁ〜!」

 〜 Trouble Trabel 第3話:フルールside story 〜
 〜 第1節 逃亡! 〜

(…っ!!)
フルールの目には真っ暗な天井が写った。
― …ったく、夢かよ。 ―
体を起こそうとするがヒモで縛られててうまく動けない。
目で見える範囲の辺りを見回すと同じように縛られてる10匹位のポケモンがいて、その中にウィグリーとラーナの姿があった。
― 結局、あの後戻ってきたのか…ったく ―
(おいっ、2人とも起きろ。)
フルールに呼びかけられてウィグリーとラーナは目を覚ました。
(あ、フルール君、大丈夫ですか?)
(よかった…そんなにひどいケガはしてないんだね。)
(ったく、逃げろって言ったのに…。)
フルールはぷいっとそっぽを向く。
(でも、仲間を置いて逃げるなんてできません…。)
(そうだよそうだよ。)
ふぅ…と1つため息をするとフルールは目だけ2匹に向けて言った。
(…捕まっても、オレ一人だったら逃げ出す自信あったんだよ!お前らまで捕まる必要はねえだろ!)
(…フルール君ひどいです。そんな言い方しなくても…。)
(ひどい!フルール、少しはラーナの気持ちを考えてよ!)
大声を出されたのでラーナは泣いてしまう。周りのポケモン達も目を覚ましていた。フルールは少し後悔した。
(悪いな…つい興奮しちまった。…元はといえばオレが勝手に外出たせいでこうなったんだ…。)
顔をウィグリーの方にちゃんと向けて声を抑えていった。
(フルール…。)
(それに、あのヨルノズク、とてもじゃねえが今のオレたちがかなう相手じゃなかった…だから、せめてラーナは助けてやりたかった…。)
ラーナに目だけ向けてそう言い、少しうつむく。
(フルール君…。)
(ほう…。で、さっきからうるさいのはお前達か?)
不意に向こうの方から声がした、あの男が持っていたヨルノズクのもので、心なしか鼻で笑っているようだった。
(お前!いつから聞いてたんだ!)
フルールの顔がなぜか少し赤い。
(さあな…。だが今騒がれるのはまずい、もう一眠りしてもらうぜ!)
そう言うと皆に催眠術をかけてきた。
(くっ…)
フルール達の意識は再び深い闇に飲まれていった…。

 ― …ここで載せ換えだ。ヨルノズク、捕まえたやつらは動いてないな? ―
 ― 大丈夫そうだ。じゃあ各自、分散して運べよ。 ―
 ― もしバレても絶対アジトの場所は吐くなよ。 ―
 ― まあ、ヒモはきつく結んであるから逃げる事は無いと思うがな…。 ―

― フルール、フルール起きて! ―
意識が戻ってきた頃、ウィグリーの声がしてフルールはしまった!という表情で目を覚ます。
(くっ…また催眠術にかかっちまった…。)
(動けなくって食らったらしょうがないよ…それよりポケモンが少なくなってる。ラーナも居ないんだ!)
(何っ!?)
フルールが見回すと…いや見回すほど広くなかった。自分とウィグリー、そしてもう1匹別のポケモン…両頬にキズのあるピチューが寝ているだけだった。
(さっきはもっと広かったよな?)
(うん、もしかするとボクたち、さっきと違う場所に居るのかも…。)
(そんな事あってたまるか…いや、眠らされてたんだから何があったのかわからないな。)
その時、壁の向こうから自分達をさらった2人組とは違う話し声が聞こえてきた。

 ― こんな林間の山道走らなくてもいいよな。 ―
 ― まあな、でも分散して運べって言うんだからしょうがないだろ。 ―
 ― しかし、アジトに連れて行くまでは言う事きかないのってどうにかならないんだろうか。 ―
 ― まあ元はトレーナーのポケモンだしな…。 ―
 ― でも俺たち記憶を消す薬があるんだから、わざわざアジトに運ばなくても、それ使えば…。 ―
 ― いや、アレで全ては消せないらしい。だから今はあんな大きい機械が必要なんだ。 ―
 ― ふ〜ん…。で、さっきから後ろでポケモンの話し声みたいなのが聞こえるんだが… ―
 ― そろそろ昼だし、目を覚ましたんだろうな。まあヒモがしっかりしてるから逃げはしないだろう ―

(そういう事らしい…このままアジトに連れてかれたらヤバイな…オレらもコイツも。)
フルールは悪夢を思い出しながら、まだ寝ているピチューを見て言う。ウィグリーもそのピチューを見ながら言う。
(そうだね、でも最初の2人とは違うし、ヨルノズクはここに居ないから…。)
(アジトに行く前にこのヒモさえどうにかすれば逃げれるってことだ。)
ウィグリーとフルールはヒモを引きちぎろうと力を入れるが、かなりきつく縛ってあるようで全然外れそうにない。
(…ったく、ホントに生き物を縛るつもりでやってるのか?これは。)
(たぶんそんな風には考えてないんだろうね…う〜ん、あれっ…?。)
ウィグリーに結んであるヒモが急に地面に落ちた。
(おっ、外れたのか?)
(うん…なんでだろう?)
ウィグリーは自由になった自分の手足を見て、何かに気づいた。
 ― あ、そうかボクは… ―
(外れたんだったら、オレのヒモも外してくれよ!もちろんコイツのも。)
(あっ、うん…。)
ウィグリーは結び目を一つずつ解いていく。きつく結んであったが結び目を解いてしまえばもうフルールを縛ることも無い。
続いてピチューのヒモを解こうとした時、ピチューが目を覚ました。
(アイタタ…ここ、どこ?キミ達は?)
(あ、起きたんだね。)
(ここは悪いやつの車の中だ、タイミングを見計らって逃げ出すから静かにしててくれ。)
(うん、わかった…。)
ピチューのヒモを解き終わるとウィグリーは疲れたようにその場に座り込んで手をついた。
(おいっ、大丈夫か?ウィグリー。)
(だいじょうぶ…?)
(う〜ん、もうそろそろ時間みたい…。)
困ったような笑いを浮かべてウィグリーが言った。
(…何を言ってるんだ?)
(実はボク「みがわり」だって事、言い忘れてたよね。)
(え?このプクリン、本物じゃないの…?)
(そうらしいな、…お前の場合みがわりって言わなきゃ、分からねえな。)
(まあ毎回しっかり気合入れてるからね…さて、ボクが消えちゃう前に逃げ出さないと。)
ウィグリーの体が心なしか薄くなってきている。
(ああ、後はこのドアを破るだけだよな。あいにく光がほとんど無いからソーラービームは意味ねえな…。)
(せ〜の、でドアに体当たりするしかないみたいだね…。)
(うん…。)
3匹の視線は荷台のドアに集中する。

 ― そろそろアジトは近いのか? ―
 ― さっき、上りきったから後は下り道だ。 ―
 ― そうか…。ん?何か後ろが騒がしいな。 ―

(せ〜の!) ― バタン! ―

大きな音がして運転席に衝撃が伝わった。
「何だ?今の音?」
「ん?あ!荷台のドアが破られた!」
サイドミラーに映った、逃げる3匹を見て運転してる男は叫んだ。
「どうやってヒモを解いたんだ?かなりきつく縛ってあったのに。」
「知るか!あいつらを逃がしたら俺らクビが飛ぶぞ!」
「もうすぐ俺らにもポケモンが支給されるハズなのに!」
あわてて、2人は狭い道だったが車をUターンさせ、追ってきた。
(追ってくるよ!)
(くそっ、何とか振り切らなきゃいけないんだが…。)
(そうだね、あっ…。)
ウィグリーはつまづいてしまった、さっきよりも体が薄くなってきていた。後ろから2人の車が迫ってくる。
「待て〜!俺のポケモン!」
「逃がしてたまるか!」
思わず2匹は少し先で足を止めてウィグリーを気にする。
(ウィグリー!)
(だいじょうぶ…?)
 ― …せめてフルールとピチューを逃がすまで消えちゃダメだ…。 ―
そう思って起き上がろうとして、今逃げている道の左側にある景色に気づいた。体を起こし叫ぶ。
(フルール、この斜面を降りていって!今ちょっとだけ町が見えたよ!)
(何!?ホントか?)
フルールは左の斜面を見る。下に森が広がっていて、その先に確かに屋根のようなものが見えた。
(あと、ボクはできるだけ時間を稼いでみるから…。本体にあったらよろしく伝えて!ラーナの事が心残りだけどね…。)
(ああ!わかったぜ!今までありがとうな!あと、ラーナのことは気にするな。後でオレが必ず助け出してやるぜ。)
(ねえ、プクリン置いてっちゃうの…?)
(いいんだ!早く行くぞ!)
フルールはピチューの手を引いて斜面を滑るように降りて行った。どんどん自分が居た道が遠くになる。

 ― ウィグリー…もし予感がしてるならあいつを今すぐ自分に戻してやれよ。 ―

上では2人がちょうどウィグリーに追いついたところだった。2人は斜面を下るフルールとピチューを見て車を降りた。
「逃がしてたまるか!追うぞ!」
「ああっ!」
― させない! ―
「うわっ!」
「なんだよ、お前どけ!」
― 絶対、どかないよ! ―
ウィグリーは残りの時間で1人にのしかかり、もう1人の足を必死に掴んでいた。
フルールとピチューの無事を願いながら…。
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ユークシュッド #9★2005.02/03(木)23:23

 〜 Trouble Trabel 第3話:フルールside story 〜
 〜 第2節 森のバトル 〜

斜面を降りたフルールとピチューは森の中を屋根が見えた方角へ少し走った。
(よし、そろそろあいつらも簡単に追って来れないだろうな。)
2人は走るのをやめ歩き始めた。
(そうだね…。でも、ホントに良かったの?)
ピチューが来た道を振り返りながら言った。
(…さぁな。)
(さぁな…って…)
(良くは無いだろうが、気持ちを無駄にするのも問題あるぜ。)
(そういうものなの…?)
(まあ、オレがただ自分勝手なだけかもしれないな。)
フルールは昨日から今までのことを思い返しながら言った。
(そういやお前、名前何て言うんだ?まだ聞いて無かったよな。)
(ライティだよ…。)
(オレはフルールだ。でライティさ、少し気つかって喋ってないか?)
フルールがじっとライティの事を見る。
(え…?)
(いや、何かそんな気がしたんだ。)
(あ〜、そうかも。)
ライティは一つ大きく息をして肩の力を抜くと、今までと違う口調で喋り始めた。
(実は、この前旅に出たばっかりで、あんまり知らないポケモンと喋った事なくてさ。)
(おっ、イキナリ雰囲気変わったな。旅っつうとトレーナーと?)
(いや、トレーナーは居ないんだ、一人旅ってヤツ。)
(へえ。またそりゃ何でだ?)
(ん…まあ…そんな気分になったから。)
フルールは一瞬ライティの顔が曇ったように見えた。
― 何か、ワケありだな。 ―
そう思ったが、深くは追求しない事にした。
(そっか、そういう時あるよな。)
(で、いろいろな場所を回ってて、あの町に着いたら怪しいヤツに捕まったんだ。)
ライティは悔しそうな表情を浮かべた。
(なるほど、まあそのうちヤツらにたっぷり借りを返してやろうぜ。3倍…いや10倍くらいにしてな。)
(うん!)
その時ライティのお腹がグ〜っとなった。フルールが少し笑ったような気がした。
(あ、そういや何も食ってないな。オレもなんだか腹減ったぜ。)
ライティは辺りの匂いを探る。
(くんくん…あっちの方から野イチゴのいい匂いがするな。)
(わかるのか?オレにはこの辺の木とか土の匂いしかしないんだが。)
(これでも旅に出る前は森に住んでたんだ。さあ、行くよ!)
2匹が歩いていくと確かに野イチゴがなっていたが…。
(なんだい?あんまり見かけない顔だね。)
その木の前にエイパムがいた。
(怪しいもんじゃないぜ。それよりその野イチゴを分けてくれないか?)
(別にオイラの物じゃないからね。無くならない程度に食べれば?)
(あ、そうなの、じゃあ少しもらうよ。)
フルールとライティは野イチゴを摘んでは食べ始めた。2匹が食べてる最中その様子をじ〜っとエイパムは横目で見ていた。
(あ〜、食った食った。よし行くか?)
(うん、行こう。)
(ちょっと待った!)
2匹が行こうとするとそれまで様子を見てたエイパムが呼び止めた。
(ん?なんだ?)
(見たところアンタたち遠くから来ただろう?)
(うん、たぶんそうだけど。)
(軽くバトルしてもらえないかな?あんまり無い機会だからさ。)
(フルール、どうする?)
(まあいいぜ、じゃあオレが受けてたとうじゃねえか。)
(決まりだね。それじゃあ…)
フルールとエイパムはお互いに少し距離をとって構える。
(フルール、がんばれよ!)
(おう、いくぜ!)
ライティの声をきっかけに先に動いたのはフルール、葉っぱカッターを打ち出す。そのうち半分くらいがエイパムに当たる。
(うわっとと…速い攻撃だね。)
(まだまだ!)
次々と葉っぱカッターを打ち出す。エイパムは体勢を少し低くしてからニヤリと笑うと。
(でも避けられなくはないね。)
急に動き出した。高速移動を使ってうまく避けてフルールの目の前に来る。
(今度はこっちの番だよ!)
(何っ!?)
手のような尻尾でフルールを捕まえる。そして…。
 ― こちょこちょこちょ… ―
(な…ひゃ…ハ…ヒぃ!)
(くすぐり攻撃!)
両手を素早く動かしフルールを思いっきりくすぐる。くすぐられるのに慣れてないフルールは思わず声をあげる。
(それが攻撃!?)
予想外の事で、ピチューは思わず聞いてしまう。
(ん?これ結構効くんだよ。こちょこちょ〜。)
(こ…うフ…コラ!ひヒ…やめ…やめろ!!…ハ)
ちょっと涙目で体を自由にしようと暴れるが、どうにも尻尾が外れない。さらにエイパムはくすぐり続ける。
― ある意味、すごい攻撃だ… ―
と、ライティは思った。
(どう?ギブアップする?)
(フひ…誰が!…するか…いヒ、カブッ!)
ちょうど自分の目の前にあった尻尾をかじった。
― !!? ―
(オレをなめるな!)
思わずエイパムが一瞬、尻尾を緩めたところを蹴飛ばした。ころころとエイパムが少し転がっていく。
(はぁはぁ…何のつもりなんだよ!)
(イテテ…かみ付くなよ。…でも、だいぶ体力消耗したんじゃない?)
ニヤニヤしながらエイパムは起き上がる。
(くそっ、バカらしいがそのようだぜ…。)
(よ〜し。じゃあ次の攻撃だ。)
そう言うと素早くエイパムは木に登る。
(させるか!)
フルールは葉っぱカッターを何度も打つがエイパムは木から木へと飛び移り全く当たらず、木の葉だけがひらひらと落ちてくる。
(オイラも飛び道具を使わせてもらうよ。)
声と同時に木の間から雨のように星型の弾が飛んでくる。スピードスターなのだろう。
(くっ…。)
両手でガードをするがさっき散々くすぐられたせいで、うまく力が入らない。ジワジワとダメージがたまっていく。
(そろそろ終わりかな?)
(…これだけ落ちてくれば十分だ。)
フルールはガードしてた左手をすっ…と上に向ける。すると風も無いのに地面に落ちている葉っぱが音を立て始めた。
(ん?オイラに葉っぱカッターは当たらないよ!)
(葉っぱカッターじゃないぜ!まとめて食らいな!)
落ちていた葉っぱが一斉に自分がいた木に戻るように飛んでいく。
(わわっ、避けきれない!)
次々と飛んでくる葉っぱにエイパムはバランスを崩し、木から落ちてきた。
(今のはマジカルリーフってやつだ、最後コレで勝負つけるぜ!)
フルールは光を集める。うっすらと体が光に包まれた。
(うわっ…何か大ワザの予感。)
(あわわ、ヤバイな!)
エイパムは落ちながら尻尾と両手で身を守ろうとしたが…。
(ソーラービーム!)
集めた光が右手に集中し、一気に放出された。エイパムの体が宙を舞い木にたたきつけられる。
(ぐぅ…。)
(あ、やべっ。ちょっと威力がでかすぎた。大丈夫か?)
(すごいな…)
ライティは今のソーラービームに目を丸くしている。エイパムは完全に目を回している。
(仕方ねえ…。このまま置いてどっか行っちゃマズイだろうし、目を覚ますまでオレらで看てやろう。)
(そうだな…。)
2匹はエイパムが起きるまでいろいろ手当てをすることにした。
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ユークシュッド #10☆2005.02/04(金)20:06

 〜 Trouble Trabel 第3話:フルールside story 〜
 〜 第3節 ツリーハウス 〜

(ん…。)
(おっ、目を覚ましたよ。)
(大丈夫か?)
エイパムが目を覚ますと体や尻尾に包帯代わりの葉っぱが巻いてあった。
(あっ、オイラ気絶してたの…。)
(悪いな、ちょっと強くやりすぎたみたいだ。)
(あ〜、気にしないで。コレくらいどうってこと無いよ。)
エイパムが笑顔で言う。
(ところで、これからどこに行くつもりだい?)
(ん?とりあえず町に行くつもりだけど?)
(へえ、ここからだと少し回っていく必要があるな。それに…)
そこで言葉を止めて空を見上げる。2匹もつられて空を見る。
(もうかなり日が傾いてるぜ…。)
(意外と時間経ってたんだ…。)
(アンタ達が来たのが昼過ぎだったからな。今から行って夜の森を案内するのは色々危ないから…。)
少しう〜ん…と考えてからエイパムは決めた。
(よし、バトルしてくれたお礼もあるし、今日はオイラの家に泊まりなよ。ついて来て。)
尻尾で2匹を誘うようなしぐさをして、草むらに入っていく。
(フルール、どうする?)
(…ラーナが心配ですぐ動きたいが場所が分かってるわけじゃないしな、しょうがねえから今日はここに泊まるぜ。)
2匹もエイパムの後を追う。いくらか草むらをかき分けていくと葉が生い茂っている少し大きめの木があった。
(オイラの家はこの木のあの辺りなんだ。)
(マジかよ!?)
(木登りか、あのくらいなら大丈夫。)
エイパムが指さした所を見てライティは余裕だったが、フルールはかなり驚いた。
(大丈夫、オイラが上からツルを垂らしてあげるから。)
そう言ってささっと登っていきツルを持って近くの枝に結び付けた。
(先行って、ツルで引きあげるから待ってて。)
ライティもエイパムほどではないが素早く木に登る。
― 木登りなんてほとんどやった事ねえな… ―
そう思いながらフルールはツルをしっかり掴んだ。
(じゃあ離すなよ!よいしょよいしょ…。)
エイパムとライティはゆっくりフルールを引きあげていった。
(ふぅ…やっと着いたぜ。すごいところに住んでるなお前…。)
(森に住んでれば普通だよ?ね?)
(そうそう、じゃあ改めてここがオイラの家だ。)
そこは葉っぱや枝がしっかり敷き詰められていて、意外としっかりしていた。
(登ってみれば結構広いな。)
(まあね。お〜いエイコ、今帰ったよ。)
すると奥から、おかえりの声とともに1匹のエイパムが現われた。エイコという名前らしい。
(散歩にしては遅かったわね。あら?どうしたのその葉っぱ、それにこのポケモンたちは?)
(散歩中に会って少しバトル挑んだらちょっと痛い目にあっちゃって…、このポケモン達はこれから町に行くらしいけど、もう夕方だから泊めようと思って。)
(あらまあ、ウチのエイイチがいきなりバトル申し込んで迷惑じゃなかった?)
(いや、そんなことはねえけどよ…っていうか一人で住んでるんじゃなかったのか。)
フルールはエイパム、もといエイイチがてっきり一人で住んでると思っていた。
(オイラ一人だったらこんな広くないよ。まあゆっくり休んでいきなよ。)
(ああ、ありがとう…おっとまだ名前を言ってなかったな。オレはフルール、こっちがライティだ。)
(フルールにライティか、いい名前だな。)
(そうね。じゃあそろそろ夜ご飯用意するわね。)

食卓に色々な木の実が並ぶ、フルールたちの地域では珍しい木の実もたくさんあり、フレッシュな自然の味そのままという感じだった。
食べ終わる頃、森の夜は早くてあっと言う間に真っ暗になってしまったが、葉と葉の間から見える星や月はとってもキレイだった。
昨日、無理矢理眠らされていた分を消すくらい気持ちの良い夜だった。

翌朝早く、日が登ってくると共に入ってきた光で2匹は自然に目が覚めた。
(ん…朝か。久々によく寝たって感じだぜ。)
(おはよう、フルール。)
(2人とも起きたな?それじゃ、町に案内するよ。)
(うん。)
(ああ、よろしくな。)
(それじゃ、出発!)
エイイチが木を降りようとした時、エイコが止めた。
(ちょっと待って。)
(ん?)
(せっかくだし2人にお土産よ、これ持っていって。)
フルールとライティに大きな葉っぱでできた包みを渡す。
(中には木の実が入ってるわ。2人とも気をつけて旅をしてね。)
(ああ、ありがとな。)
(そっちも元気で!)
(ん、じゃあ改めて出発!)

3匹は昨日張ったツタを使って地面に降りると町に向かって歩き始めようとしたが。
(おい!オレは慣れてないんだってば!)
(あらら…)
フルールが降りてくるまでちょっと時間がかかりそうだ。
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ユークシュッド #11☆2005.02/06(日)21:42

(この姿で歩くのにもそろそろ慣れてきたよ。)
カティラタウンに向かう最中、ススムはウィグリーから下りて自分の足で歩いていた。
だいぶイーブイの姿に慣れてきたようだ。
「そっか、じゃあ次はワザでも覚えてみる?」
ウィグリーはそんなススムを見てなんでか嬉しそうだ。

 〜 Trouble Trabel 第4話:トレーナーズロード 〜
 〜 第1節 甘くないぞ… 〜

(えっ?ぼくが?)
「無理かな?ススムは元々人間だし。でも今はイーブイだからできるかな?」
半分本気、半分冗談…なのだろうか?
(ポケモンのワザが覚えられたら、ぼくもバトルしてみようかな…。)
「ふふっ、そしたらバシバシ指示しちゃうよ。…あっ、そういえば、思ったんだけど。」
いったん微笑んでから思い出したようにススムに問いかける。
(ん?なになに?)
「ボクって今トレーナー代わりだけどバトルに参加できるのかな?」
(あ〜、そういえば聞いてなかったね?ぼくもバトルに参加できるのかも知りたいし。)
ススムも思い出したように言う。
「ジョーイさんに聞けば分かるかな?」
(たぶん、分かるんじゃないかな?ポケモンセンターはいろんな手続きもするしね。)
ラミィシティとカティラタウンを結んでいる道はあまり起伏もなく通りやすい道になっている。
やや急ぎ足で行けば2時間もあれば通れるのだが、ススムが慣れるまでゆっくり歩いていたので、まだ3分の1程度過ぎた辺りである。
(…にしても、フルールとラーナはどこに連れてかれたんだろう…。)
「う〜ん…でも、フルールと一緒なら大丈夫って気がするんだ。」
(どういう意味?)
「何となくね…。でも、ボクの分身がジャマかな?」
ウィグリーは意味ありげな笑いを浮かべる。
(何、ワケ分からない事言ってるんだよ!こんな時に!)
「ゴメンゴメン、とにかくフルール達をそう簡単に捕まえておけないと思う、そんな気がするんだ。」
(そうかな…)
道を進んでいくと、先のほうにトレーナーらしき人物がかなり居る。そのうちの1人がこちらに気づいたようだ。
「ポケモン発見!って…カードぶら下げてるって事は特殊ポケモンか…。」
「あ、なんだか期待させたみたいでゴメンね…。」
「いや、謝る事はないんだけど…どうせバトルしようと思ってたし。2匹のシングルでいいかい?」
「え?えっと…。」(ススム、どうしよう?)
(好きにしていいよ。今はキミがトレーナーだもん。)
「それなら、よろしくね。」(セリス、お願い。)
(負けないからね!)
「ロコンか、よ〜し…ギザ!きみの出番だ。」
(うん、まかせて!)
出てきたのは、ジグザグマ。ギザというニックネームらしい。
「ギザ、体当たり!」
(うん。)
返事を一つしてジグザグに走りながらセリスに向かってくる。
(あっ、え〜っと…セリス、ダッシュでぶつかって!)
(OK、いくよ!)
ウィグリーはちょっと考えながらセリスに電光石火を指示する。お互いにまずは様子見という感じか。
ぶつかり合った反動で少し地面を滑る。
(セリス。火を吐いて!)
(す〜っ…。)
「むっ…。ギザ!地面に潜れ!」
セリスが火炎放射の為に軽く息を吸ったところで、素早くトレーナーが指示する。
(ささっとね!)
(食らえ〜って、潜っちゃったら当たらないよ。)
セリスは火を吐いたがもうすでにギザの姿が無い。
(あっ、まずい!ウィグリー早く戻さないと!)
「残念だったね。真下から飛び出せ!ギザ。」
(とおっ!)
(きゃぁっ!)
― バタッ ―
(くぅ…。)
(うわっ…大丈夫?セリス…。)
(かなり効いたかも…。)
(あらら…休んでていいよ。)
ウィグリーはセリスをボールに戻し、次のポケモンを出す。
(ローブ!お願い。)
(わたしね。セリスの分もがんばるわよ!)
「今度はムウマか…じゃあ、ギザを戻してガウ行って来い!」
(おうっ。相手はお嬢さんか。)
ガウと呼ばれて出てきたのはグラエナだ。
(バトルに性別は関係無いわよ。)
「よしっ、まずは相手のことをかぎわけろ!」
(おうっ)
ガウは鼻をしきりに動かす。ローブのことを色々探っているようだ。
(ローブ、モヤモヤお願い!。)
(わかったわ。)
ローブは怪しい光を放つが…。
「ガウ、目をつぶるんだ!」
ガウは目をつぶって光をかわす。
(何よ、効いてないの?)
「そのまま、突進!」
(お嬢さん!覚悟!)
(ローブ、危ない!宙に避けて。)
慌ててローブは避けるが、少しかする。
(そっちが突進なら…、ローブ、頭から突っ込んじゃって!)
ウィグリーは頭突きを指示するが。
(いくわよ!)
「向かってきたな。うまく噛み付け!」
(へへっ。悪いな!)
(いや〜、噛み付かないで!)
向かっていったがガウの牙を見て少し勢いが止まる。そこを逃すはずも無く。
― ガブッ ―
…っとやられてしまった。
(痛い痛いっ!離して!)
(うわ〜!ローブ!何とか外して!)
(あ〜ん、外れないのよ!)
ローブ、しばらくバタバタ抵抗していたがそのうちあきらめたようにがっくり力を抜いた。
(ギブアップか?)
「勝負アリって感じだな、これ以上は無理だろう?」
(ウィグリー、ぼくらの負けみたいだよ。)
「はぁ…、残念。ローブを離してあげて。」
「ああ、ガウ、もういいぞ。」
(お嬢さんにはちょっときつかったかな?)
ガウはそっとローブをそっと地面に離す。かなりワザが効いてしまったらしくなかなか起き上がれない。
ウィグリーは無言でローブをボールに戻す。
「ちょっと強さに差があったかもしれないな。」
「もうちょっとうまく判断すればよかったかも…。」
ウィグリーは少しがっくりとしている。
(ドンマイ、ウィグリー。)
「これから強くなればいいじゃないか、とにかくバトルしてくれてありがとうな。」
トレーナーはウィグリーの頭をなでる。
「うん。…ねえ、近くにポケモンセンター無いかな?」
「ポケモンセンターならすぐそこにあるよ。ちなみに、ここってちょうど町と町の間だからトレーナーも多いんだ、いろんなトレーナーが居るからこの辺で何度かバトルしていったら?」
「うん…ありがとね。」
ウィグリー達はトレーナーと別れると、とりあえずポケモンセンターに入って一回休憩する事にした。
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ユークシュッド #12☆2005.02/08(火)23:42
「こんにちは、ジョーイさん。」
「あら、ポケモンがトレーナーなのね。もしかしてここの前で勝負を挑まれたの?」
「うん、そうなんだ…。」
ウィグリーはセリスとローブの入ったボールを渡す。
「勝負するのはいいけど気をつけてね。今回復するから少し待ってて。」

 〜 Trouble Trabel 第4話:トレーナーズロード 〜
 〜 第2節 ポケモン&トレーナー 〜

ポケモンセンターに入ったウィグリーとススム、とりあえずセリスとローブの回復を待つ。
(ススム、勝負って難しいね…。)
(いつもうまくいくとは限らないからね…)
ススムはなんとなく首のバンダナを触りながら答える。
(このままじゃ、フルールたちを取り返すの難しいよね…。)
(う〜ん…少しみんなのレベルを上げたほうがいいかもね。)
(…。)
ウィグリーは黙ってしまった。
(元気出して、そうだ。コレ着けなよ、ウィグリーを頼りにしてる証。)
そう言ってススムは自分の首に巻いてあるバンダナを外そうとするが、うまく外せない。
(う〜ん…励まそうとしたのに何だか決まらないなあ…。)
(ふふっ、別にボクそこまで落ち込んでないよ、それにそのバンダナ、ススムに似合ってるからボクはいいよ。)
(う〜ん、じゃあせめて…)
ススムは荷物に顔を突っ込み何かを探る。
(ススム、何を出そうとしてるの?)
(…あった!これをつけてよ。トレーナーは気持ちから入らないとね。)
ススムは若草色のリストバンドを口にくわえていた。
(うん、ありがと。それじゃあ早速。)
ウィグリーはリストバンドを受け取って自分の耳にはめた。
(えっ!?)
(…似合ってるかな?)
つける場所を間違えているが、妙に似合っている。
― それ、手首につけるものなんだけど…ま、いっか; ―
(似合ってるよ。これで気合入ったね。)
(うん、これからがんばるよ!)

「ウィグリー君お待たせしました。回復がすみましたよ。」
「あ、はい。」
受付のジョーイのところに急いで向かう。
「これからも気をつけてね。お大事に。」
ウィグリーはセリスとローブが入ったボールを受け取るとススムを抱えてジョーイに聞いた。
「ねえ、リーダーをしてるボクや、ちょっと前までリーダーだったススムってバトルに出てもいいのかな?」
「ええ。トレーナーでもありポケモンでもあるから、もちろんいいのよ、でも、バトルは気をつけてね。リーダーが倒れた時に代わりのポケモンがいないと大変よ。」
「うん、じゃあ一応バトルに出てもいいんだね。」
「そうよ。でも本当に気をつけてね。」
「ありがとう。さあ、ススム行こう!」
(うん。今度は勝とうね!)

ウィグリーとススムは元気よく外に出て行った。そして、バトルできそうな相手を探し始めた。
歩いているとあちこちでバトルがくり広げられており、見物してるトレーナーも結構多い。キョロキョロしながら歩いていると、何かにぶつかってしまった。
「いたっ、なによ。いきなりぶつかってきて。」
「あ。ゴメン…」
「あら?ポケモン?それに喋ってる。なかなかかわいいじゃないの。」
「えっ?」
「いいわ、バトルをしてくれたら許してあげる。」
(がんばれ〜!ウィグリー。)
「うん。2vs2のシングルでいいかな?」
「あら、よく知ってるわね。いいわよ。じゃあアタシが出すのはココちゃんよ。」
(お相手よろしく〜。)
出てきたのはフワフワしてそうな毛が首の周りに目立つモココ。
「じゃあ、ボクは…お願い、アレス。」
(おうっ、任せろ。)
お互いに構えを取る、先に動いたのは。
「ココちゃん、アイアンテールよ。」
(はいは〜い。)
声に似合わずかなりの勢いで尻尾を振るう。当たったら痛そうだが。
(アレス。ホネで受け止めて!)
(ああっ。コレくらいなんてことない。)
― ガシッ ― と尻尾をホネで弾く。
(そのままホネで叩いて。)
「光の壁!」
(が〜ど!)
今度はモココがアレスのホネこんぼうを光の壁で受け止める。
「これでそっちの攻撃が怖くないわよ。」
(何でもどうぞ〜。)
「あらら、でもアレスに壁やってもダメだよ?」(アレス、思いっきりやって。壁と一緒に相手を叩いて。)
(おうっ。行くぜ!)
持っているホネを両手で上段に構え、一気に振り下ろす。
― バリッ! ―
(きゃぅ!)
振り下ろした一撃は貼っていた壁を突き破りモココの頭に当たり、一つ声をあげて倒れる。
(ま、いわゆる、かわらわりって呼ばれるワザだ。)
「ウソ〜、壁って割れるの!?う〜…次はオッくんよ!」
(ほ〜い。)
出てきたのはヌオー。どうやら少しのんびりした性格らしい。
「コレには弱いはずよ!水鉄砲!」
トレーナーは出てくると同時に指示をした。
(いけ〜!)
(くぅっ…!)
(あ、いけない!アレス!戻っていいよ。)
水で攻撃したのを見てウィグリーは慌ててボールに戻す。ちょっと判断が遅くて結構食らってしまっていたようだ。

「さ、誰を出すの?」
「う〜ん…じゃあ、ボクが出るよ。ススム荷物お願いね。」
(うん、わかった。)
ウィグリーは足元のススムに荷物を任せて、2,3歩前に出る。
「いいの?じゃあ、オッくん水鉄砲!」
(ほ〜い。いけ〜!)
(わっ…冷たい。)
ウィグリーは両手でガードする。
― えっと…。あ、そうか。トレーナーの指示は無いから、ボクが自分で考えてやるんだよね。 ―
(じゃあ、こっちは…え〜い!)
ウィグリーはヌオーと距離を一気につめ飛び上がり、そのままのしかかる。
(う〜。重くは無いけど何かイヤだ〜。)
「オッくん!持ち上げて!」
(ぬ〜!)
(う〜ん!)
少しバタバタしながらヌオーが無理矢理ウィグリーを持ち上げる。
「そのまま、たたきつけるのよ!」
(とりゃ〜!)
(うわっ!イテテ…)
さっきの水鉄砲でかなりゆるくなった地面から水しぶきが上がる。でも地面は意外と固くかなり衝撃は大きい。
ウィグリーは背中をさすりながら起き上がる。かなり泥がついてることに気づくと。
(何するんだよ。泥だらけじゃないか!)
バトル中だが、それとは関係なく思わずヌオーをはたく。
(う〜…コレくらいバトルならしょうがないぞ〜。)
「オッくん、マッドショット!」
(もっと泥だらけなら気にならないぞ〜!そ〜れ!)
大量の泥がウィグリーにかかる。さっきは背中で今度は前の方…。体から泥水が滴り落ちる。
(あ〜。もう全身泥だらけだよ。)
「ふふ。泥だらけね、そろそろ強めに水鉄砲で終わりにするわよ!」
(食らえ〜。)
(ん〜、水なら食らってもいいかもしれないけど、もう食らわないよ!)
ウィグリーはうまく避けて、ぬかるんだ地面を滑らないように距離を詰める。
(ん〜、当たれ〜、当たるんだぞ〜!)
(もう当たらないよ!)
ウィグリーはヌオーの耳元まで距離を詰め、そして!
(す〜…うわぁ〜っ!!)
― キーン! ―
「何よ、この大声!」
(ウィグリー…そのワザは今のぼくだと耳がいたいよ…。)
辺りのトレーナーもビックリするほどの大声、ハイパーボイスを出す。
(…。)― バタッ ―
あまりの大音量を耳元で出されたためそのままヌオーは気絶する。

「そんなのあり〜!仕方ないわね。アタシの負けだわ。」
「やった、勝った〜!」
(やったね。耳がかなり痛いけど…)
ススムは耳を押さえて言う。
「なかなか強いわね。」
「ありがとうね!」
ウィグリーは手を差し出したが。
「ふふ。あなた泥だらけなのよ。洗ってきた方がいいわ。」
「え?あっ、そうだった…」
「ポケモンに洗ってもらってもいいんだけど、気絶しちゃったし…荷物持ってあげるから、一緒にポケモンセンターまで行きましょ。」
(「うん…。」)
ウィグリーとススムの声が一緒になった。
cm107.opt2.point.ne.jp
ユークシュッド #13☆2005.02/12(土)17:31

 〜 Trouble Trabel 第4話:トレーナーズロード 〜
 〜 第3節 フォーアのバトル 〜

ポケモンセンターに戻った後、泥だらけになった体を洗い流す。その後戦ったトレーナーをポケナビに登録した。アリサという名前らしい。
ちなみにススムのポケナビであるが、ウィグリーがリーダーをしている間はウィグリーの名前で使えるようにした。
その後、しばらくいろんなトレーナーと戦って、勝ったり負けたりしていた。
「ふう…。みんな少し強くなったかもね。」
(ウィグリー、ぼくも少しバトルしてみたいな。)
「ススム、ポケモンのワザ使えるの?」
(今から練習しようよ!いいでしょ?)
「う〜ん、もう夕方だけど…そうだね、やろうか。」
(あ、後もう一つお願いなんだけど…)
「うん?何かな。」
(ウィグリーとかローブとかセリスって名前の中に、ススム。じゃ変な気がするからバトル中は別の名前で呼んで。)
「そうかな?で、どんな名前で呼ぶの?」
(そうだね…フォーアって呼んで。)
「じゃあ、改めてフォーアのワザの練習を今からするね。じゃあセリス出てきて。」
ポン!と言う音と共にセリスが出てくる。
(フォーアって面白い名前ね。じゃ尻尾を振ると体当たりの練習しようよ。)
今後、ナレーションでもススムと呼ぶのはトレーナーとして何かを聞くときだけにする。
(うん。)
(えっとね、こうやってかわいく尻尾を振って相手を油断させるの。)
そういって、セリスは前足を伏せて、後ろ足をピンと伸ばし尻尾を振る。
(こう?)
フォーアはセリスのまねをする。
(尻尾の力はもうちょっと抜いてね。)
(こうかな。)
(ん〜。ちょっと違うのよね。)
(元々尻尾がないから難しいな。)
「ボクも尻尾ないけどね;。」
少しずつ、コツを掴んできたようで15分もする頃にはうまく尻尾を振れるようになっていた。
(うんうん、その感じよ。じゃあ、次は体当たりね。試しにアタシがウィグリーに向かってやってみるわね。)
「あ、うん。いつでもいいよ。」
ウィグリーが構えたところでセリスが体勢を低くしてから一気にダッシュしてぶつかる。
「うっ、結構受け止めるのって結構痛い…。」
(今のはホントはちょっと違うワザなんだけど、同じような感じでぶつかれば良いのよ。)
(うん、こんな感じ?)
見よう見まねでウィグリーにぶつかるが、簡単に受け止められる。
「今はススムじゃなくてフォーアなんだしもっと思いっきりやりなよ。」
(そうそう、遠慮はいらないのよ。)
(うん、それじゃ!え〜い!)
「ん、もう少し勢いよくね。」
(え〜い!)
体当たりは最初なかなかウィグリー相手なので勢いに乗れなかったが、何回もやっていくうちに遠慮もなくなり、ワザとして使えるレベルになってきた。
「うん、これならワザとして使えると思うよ。結構痛かったし。」
ウィグリーがお腹のあたりをさすりながら言う。その時向こうの方から男の子が声をかけてきた。
「あの〜、ぼくとバトルしてくれませんか?」
「ん?」
「ぼくの名前はハジメって言うんですけど、まだ旅立ったばかりでポケモンもあんまり強くないから、バトルの練習したいんです。」
「フォーア、早速ワザ使ってみる?」
(うん、やってみる。)
「じゃあ、こっちはフォーア…このイーブイを出すよ。」
「あ、はい。ぼくはこれしかいないので。チコリータ!」
(よろしくね。)
チコリータとフォーアがお互い構える。ちょうどあたりに電気がともった。
「それじゃ、フォーア。尻尾を振ってみて。」
(うん。)
(え?なになに?)
フォーアは早速さっきやったとおりに尻尾を振る。チコリータはイキナリ相手が尻尾を振ったのでちょっと構えがゆるくなったようだ。
「チコリータ。えっとね…鳴き声!」
(わかった…チコ〜!)
(わぁっ!大きい声だな。)
思わずフォーアが驚いて耳をふさぐ。
「チコリータ、続けてえっと…たいあたり。」
(当たれ〜!)
チコリータはフォーアにぶつかる。少し勢いで飛ばされる。
(アイタタ…。こっちだって!)
「うん、今みたいにこっちも体当たり!」
(くう…今のは効いたかも…)
お返し!とばかりにフォーアもチコリータにぶつかる。思いのほかうまく当たったようだ。
「大丈夫?チコリータ。」
(うん、まだまだ。)
「よし、覚えたてだけど葉っぱカッター!」
(よ〜し!いくぞ〜。)
チコリータが頭の葉っぱをくるっと回すと、それと同じ形をしたものが飛んできた。
「フォーア!何とか避けて!」
(避けてって言っても…こっちに来ないよ。)
チコリータが飛ばした葉っぱは狙いが正確ではないので軽く避けている。
「油断しちゃダメだよ。フォーア。」
(う〜、当たらないな。今度こそ!)
その後も何度も葉っぱを飛ばす。そのうち1発がちょうどフォーアの正面に飛ぶ。
(わっ。)
思わずダメージを覚悟し、目をつぶり歯をくいしばるがあまり痛みが無い。
(うそっ。口で止められちゃった。)
チコリータの声に目をあけると、ちょうど歯で葉っぱを受け止めていた。
― セ…セーフ。 ―
「大丈夫?それよりチャンスだよ。」
(ん?うん!)
見るとチコリータもハジメもフォーアが歯で受け止めたのを見て動きが止まっていた。
ススムは動けないでいるチコリータに勢いよく向かっていく。
「あっ、来る!こっちも…」
とハジメが指示を出そうとしたところで思いっきりチコリータに体当たりをきめる。
(え〜い!)
(きゅ〜…)― ぱたっ ―
(あれっ、勝っちゃった?)
またもやうまく当たったようでチコリータは少し地面を滑った後、目を回していた。
「うわ〜;負けちゃった…。戻れチコリータ。」
「でも、葉っぱカッターがしっかりしてたらこっちがやられてたよ。」
「練習しないとダメかな…。ありがとうございました。」
「うん、こちらこそ。」
そう言ってハジメはポケモンセンターに入っていく。
(ふう…それにしてももう真っ暗だね。)
「うん、今日はここに泊まる事になりそうだね。」
(そっか…明日こそカティラタウンに行こうね。)
「そうだね。」
ウィグリーとフォーアもポケモンセンターに入っていき、一晩泊まる事にした。
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ユークシュッド #14☆2005.02/26(土)20:32

 〜 Trouble Trabel 第5話:小さな町トラナカタウン 〜
 〜 第1節 静かな町 〜

森の中を歩いている3匹、フルール、ライティ、エイイチ。途中森のポケモンと出会いながら目的の町へ行く。
(結構距離があるな、まだ着かねえのか?)
(もうすぐだよ。)
(オレが住んでた森より広いんだね…。)
(あっ、その橋を通れば森を抜けるよ。)
エイイチがそう言って指を指した先にはツルで出来た橋がある。かなり下の方に川が流れている。
(よしっ!フルール早く行こうよ。)
(お…おうっ。) ― マジかよ… ―
3匹は橋を渡る。フルールはかなり不安だったが、意外と見た目ほど不安定な橋でなくしっかりしていた。
(じゃ、もう町はすぐそこだからオイラは戻るよ。じゃあね。)
(ああ、元気でな!)
(案内ありがとうね!)
エイイチは来た道を手を振りながら戻っていった。2匹も手を振ってしばらく見送っていた。
そして、前の方に目をやると数百メートルくらい先に町が見えた。
(もうすぐだな、町に着いたらこれからどうするか考えねえとな。)
(うん。そうだね。)
町に着いたのはちょうど正午といった頃だろうか。小さな町だったのですぐにポケモンセンターが見つかった。
(静かな感じの町だな。)
(そうだね。こんにちは。)
木でできた扉を押して中に入ると、中にトレーナーは無くジョーイだけがいた。
「あら?久しぶりの利用者ね、どうしたのかしら?」
「まず何から言ったらいいんだろうな…まあ、悪いヤツに捕まりかけて逃げてきたんだ。」
「え?それ本当なの?」
「ああ、で、今オレがどの位遠くに来たのか知りたいんだ。」
「そう…それで、捕まりかけた場所は?」
「ラミィシティって名前だったと思うぜ。」
「この辺りの地名じゃないわね…。ちょっと待って。」
そう言うとジョーイはパソコンに向かいキーボードを打ち始めた。どうやら地図を検索しているようだ。
「それで、ここは何ていう町なんだ?」
「ニイミ地方のトラナカタウンって言うのよ。あ、ラミィシティってミラ地方にあったわ。」
「どのぐらい離れてるんだ?」
「ここから北西のティートシティからリニアで何時間か乗ってミラ地方のヒィミーシティへ行って、そこからしばらく歩くか乗り物に乗っていくのよ。」
「ずいぶんな距離じゃねーか…。」
(うわ…大変そう。)
「ま、しょうがねえ。とりあえずリニアが出てる街に行くしかねえな。」
「あ、そうだ…特殊ポケモンの登録した方がいいわね。」
「ん?何だそれ?」
(あっ、捕まる前に首からそのカードかけてたんだけど、無くしちゃったんだよね。)
ライティが喋った事がわかったようにジョーイは
「あら?そうなの、なら再発行するわね。」
と言ってキーボードを打つ。さすがはジョーイ、ポケモンのいいたい事もわかるようだ。
「それじゃあ、2人とも右手を出してくれる?」
(うん、一応フルールも登録して…いいよね?フルール。)
(登録した方がいいんだろ?)「じゃあ、オレは新しく登録ってことになる。」
2匹が出した右手を青い光がなぞる。
「それじゃあ、違う地方のカードの再発行だから少し時間がかかるから、それまで自由にしてていいわよ。」
「ああ、じゃあ少し散歩してくるぜ。」
(また後で。)
2匹は木の扉を開けて町をうろうろとする事にした。
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ぴくの〜ほかんこ