ぴくの〜ほかんこ

物語

【ぴくし〜のーと】 【ほかんこいちらん】 【みんなの感想】

[665] ミココのダイアリー

バットントン #1★2005.04/03(日)16:47
頭の赤いつのがピクリと反応する。特に周りに人気はないのだが、それは彼女にとっては”何者かの接近”を意味していた。
その”何者か”の姿形が何なのかは分からない。ただ、それは今、とてもリラックスしていることが彼女には理解できた。
”それ”と自分以外、回りには誰もいないみたいだ。空からスバメ達が急降下してくる、ということもあるかも知れないけど、彼らは私たちを食べるということはないから私に攻撃はしてこない。

ふっと、興味がわいた。

ちょっと、見てみようかな。危なくなったらテレポートで逃げればいい。
彼女はテレポートを使って音を立てずに”それ”の近くの茂みへ移動すると

―突然身動きがとれなくなった。それに頭がくらくらする。
”それ”はそうして動けなくなった私に振り向き、赤と白の色をしたボールを投げる。

ボールは私に当たって。私は何故か、私よりずっと小さかった筈のボールに吸い込まれて。


ボールの赤くすけた部分からボールを投げた”それ”を見上げると、その肩には丁度クロバットがとまるところだった。
そうして”それ”はボールを拾い上げて小さくつぶやく。

「おーし、ラルトスゲット♪」、と。
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バットントン #2★2005.04/17(日)09:43
あれからしばらくしてから、町の入り口近くで私はボールから出された。
「はじめまして、お嬢さん。俺の言ってることが分かるかな?」
私が頷くと”それ”は満足げにうんうん、と頷き
「俺の名前はユウマ、これからよろしくな。」と挨拶をした。

どうやら私は”ポケモントレーナー”に捕まったらしい。

彼、ユウマによると、彼は捕まえられたポケモン自身が彼についていく、と言わなければポケモンはみんな逃がしてあげるらしい。
そのために彼は2年近くの旅でたった4匹のポケモンしか「手持ち」として加えていないのだそうだ。。
「、というわけなんだけど、君は俺についてきたいかい?」
どうしようか。
この人は多分、いい人だ。
でも、正直不安も一杯あるし…
「迷うのなら、1日待ってあげるからそれまでに決めなよ。」

驚いた。

こんな人間は見たことがない。
いつザングースが襲い掛かってくるか分からない森の中で無防備で。
しかも1匹のポケモンに選択の期間として1日を託したりして。

それに、この人の感情は”分からない”。

ついていって見よう。
私は地面に木の枝で文字を書いた。

『いっしょにいっていいですか?』

彼は驚いて私を見た。
それからしゃがみこんで私に聞いた。
「君、文字が書けるの?」
頷く私。
しばらく興味深げに文字を見つめた後、彼は私にこう告げる。
「どうぞこれからよろしくお願いしまーす」

それからさらにこう言う。
「君の名前は”ミココ”でいいかな?御心の精、ミココ。」
嬉しい。私は大きく、何度も頷いた。

その日、私は”ミココ”になった。
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バットントン #3☆2005.04/06(水)10:52
最初にユウマが私を連れて行ったのは、ハジツゲタウンのはずれにある家だった。
家の中は本がいっぱいで、本がないのはキッチンと広くて何にもない部屋くらい。
そんな家の主が若い女の人だったのはすこし驚いた。
「はい、言ってた子のボール開けて。」
そう言われてユウマは私を外に出した。
私が彼を見ると、
「ちょっといいモンをあげるからちょっと待ってなよ。」
と微笑んでいった。

私のボールに何かの機械をつないでいる。
「これでよし、と。しばらくかかるからその間何かする?」
「つまりポケモンバトルがしたいと。」
「うん。」
「いつもの事だがそうならはっきり言おうな?マユミサン?」

ぐーりぐーり。

マユミさんの頭にぐりぐりをかますユウマ。
あぁ、こういう間柄なんだなぁと思った。


「ルールは2対2のシングルバトルでいいよね。」
「了解〜っ。」
ユウマは少々気だるそうに答える。
「がんばれっ!スコール!!」
そういってマユミさんはボールを投げる。
ボールから放たれる光と共に、そこにルンパッパが繰り出された。
「おーし、んならヒテン、頼んだぞ!」
対してユウマはヒテンと名づけられたダーテングを繰り出した。
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バットントン #4★2005.04/09(土)17:02
広く何もない、ポケモンバトル用の部屋で戦いが始まった。
さっきまで気のない表情だったユウマも既にやる気満々だ。
「スコール、まずはしろいきり!」
マユミのルンパッパ、スコールはそういわれると陽気にステップを踏み始めた。すると体の周囲からどんどん白い霧が発生してきた。
「そうはさせるか!ねこだまし!」
途端にユウマの前にいたダーテングの姿が消える。次の瞬間、彼はルンパッパの顔めがけて正確な張り手を繰り出していた。
声を上げて倒れこむルンパッパ。「ナイス、スコール♪」
どういうことだ…見ると、ダーテングもよろめいている。
「ひっさぁーつ、なきごえ!!」
実は、ねこだましを受けたルンパッパが出した声はただの声ではなく、”なきごえ”だったのだ。
”なきごえ”には相手を惑わし、攻撃力を下げさせる効果がある。
「そのまま霧を広げながら攻撃用意!」
「ヒテン、相手の様子を見るんだ。」
ルンパッパがダーテングの周りを回り始める。しかし、明らかにダーテングを超えるほど素早い。
(しまった、”すいすい”か…)
マユミは白い霧をルンパッパの行動力を高めるために使ったのだ。”すいすい”は本来水中で効果を発揮する特性だが、ルンパッパやカブトプスなどの陸上で活動できるポケモンはこんな風に湿度が高い状況でも素早く動くことができるのだ。
「…ヒテン、”かまいたち”用意…」
「かわらわり!!」
「かまいたち!!」
瞬間、ダーテングを起点にして激しい衝撃波が発生した。
「でんこうせっか――ツバメがえし!!」
ダーテングは攻撃を受けたルンパッパの隙を見逃さず、一瞬のうちにルンパッパを受け止めて浮かせ、地面にたたきつけた。
攻撃力が下がっているとはいえ、効果は抜群。ルンパッパはあえなくダウンした。

「さすがユウマねー。次はトロっち、お願い!」
「よくやった、ヒテン。次は…クロレンス、頼む!」
マユミのボールから放たれたのはかなり大きめなトロピウス、
ユウマが繰り出したのは、ミココをあっという間に捕獲した、あのクロバットだった。
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バットントン #5★2005.04/09(土)17:51
「あーっ、草使いの私にクロバットを当てるかコイツはー!」
「わざわざ草使い様の前にサンドパンやドククラゲは出しませんですよ普通。」
「仕方ないなぁ…トロっち、じしん!」
トロピウスがその巨体でスタジアムを揺らす。
「何やってんの。こっちは…かげぶんしんだ、クロレンス」
「まだまだよー、じしん!」
「じゃあこっちももっとかげぶんしん。」
どんどんクロバットの分身が現れ、トロピウスがじしんを止めるまでにはその数は6体になっていた。
「そろそろいいかな…トロっち、攻撃行くよ!」
トロピウスが踏ん張り始める…これは”かまいたち”…
”かまいたち”は自分を中心に強力な衝撃波を発生させる技だ。しかし高いところには衝撃は飛んでこない。つまり、
「クロレンス、高度を上げてくれ」
こうすれば安全ということだ。
「かまいたち!」
予想どうり衝撃波が発生する。しかし―
「鋼の翼で打ち上げ!かっとばせー!!」
なんと、大量の岩がクロバットに向かって飛んできた。
(そうか、ここって流星の滝の近くだからなぁ…)
ホウエンの北、特に煙突山と流星の滝付近の地質はほとんど硬い岩と粘土で出来ている。化石の産地になっているのが証拠だ。その為、ここで”じしん”を使うと地面が液状化して岩が地表に浮き出てくるのだ。そして”かまいたち”で岩を浮かせ、打ち上げる。
まさに科学者であり、何よりこの地方の住人であるマユミならではの戦術といえる。
そしてその戦術はクロバットの体力を見事に削っていた。
「くそ、真上からエアカッター!」
「かぜおこしではねかえしちゃえ!!」
しかし、今度はそうも上手くは行かない。エアカッターは同じ風で跳ね返すには鋭すぎ、トロピウスに命中した。


「あっちゃー。トロっち、ありがと」
「お疲れ。」
二人はそれぞれポケモンをボールに戻す。
「でもさ、こんな簡単に液状化起こすような地盤で地震連発したら、家危なくないか?」
「少なくともウチは大丈夫。だてに開発室兼ねてないから。」
そんな会話をしながら、マユミは今度は私に話しかけてきた。
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バットントン #6☆2005.04/13(水)16:34
「さて、ミココちゃん、そろそろ終わった頃だからいこっか。」
2人と1匹はさっきの部屋へ戻る。
そこにはさっきと同じ、ミココのボールがあった。
特に変わったところは無い。つないでいる機械は既に作業が終わったらしく、ついていたランプが消えている。そのくらいだ。
「ん、入ってみ。」
コードを外し、ユウマが私の前にボールを置いて促す。
私はボールのスイッチを押して、その光に身を委ねた。


適度な広さの部屋。そこには寝床になる場所と台が置いてある。そして、赤い半透明のドーム天井がいっぱいに広がっている。
これがボールの中。私は普段ここで生活しているのだ。
私は台の上に何かがのっているのを見つけた。

1冊の、日記帳。

表紙を開くと、最初のページにこんなことが書かれていた。
「これはミココへのプレゼント。
 この日記は特別製でボールの外にも出せるし中にも戻せる。
 良かったらこれから使ってくれ。

                       ユウマより」

他のトレーナーにはこんなことは出来ないんだろうなぁと私は思った。
私はそれから次のページに、一言だけ、こう書いておいた。

「ユウマ ありがとう」
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バットントン #7★2005.04/16(土)16:33
「さて、と。ここからはミココはボールに戻っててくれ。」
ミココと呼ばれたラルトスをボールに戻す男が一人。
真夏だというのにコートを着込み、顔にゴーグルを付けている。
「じゃあ行くか、頼んだぞグライリー。」
放たれたボールから出てきたのはサンドパン。但し、真っ白な体をしていて、目は赤い。
「今日は砂嵐もきついし、格好の天気だな。それじゃ、先導頼む。」
ロープの両端をそれぞれの体に結びつけ、2人は砂嵐の中に突入した。


ここは111番道路。太陽がギラギラと砂漠を焼き、時には砂嵐が吹き荒れるホウエンの難所だ。
ここには2つ、伝説として語られている建物が存在する。
1つは砂漠の遺跡。中にあるたった一つの部屋には何も―祭壇すらなく、小島の横穴、古代塚と同じく何のために使われていたのかは今でも不明だ。
そしてもう1つ。それが今回この男、ユウマの目指している幻影の塔といわれている建物だ。
この塔は晴れているとき、砂によって反射する太陽光によってその姿が見えなくなってしまう。
そして砂嵐の日は砂漠に入ることからして困難だ。
つまり、もともと知らない人間を中に入れないようにしているのだ。


「ふぅ、やっとついたな。ミココ、出るか?」
私は頷き、ユウマが投げたボールから出てくる。
「こいつはサンドパンのグライリー。二人とも仲良くしてやってくれな。」
あわてて私はお辞儀をする。グライリーもお辞儀を返してくれた。
「おーし、グライリー。2階への階段はわかるか?」
どうやらグライリーは昔ここに来たことがあるらしい。彼は頷いて案内を始めた。
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バットントン #8☆2005.04/22(金)20:34
塔は比較的簡単な構造だった。目を引くのは人やポケモンの姿を模した柱や、壁に描かれている数々の絵。ユウマはそれらを一つ一つ丹念に撮影していった。
私は数々の装飾に驚きながらも身長が低いから、フロアに溜まった膨大な量の砂埃に悩まされていた。
2、3、4階と階段を上り、調査を進めていく。
そして、それはいよいよ最上階である5階へと歩を進めようとしたときだった。

「!!…」突然、グライリーが足を止め、ユウマの方を見返した。
「…分かった。」ユウマは頷いてボールにグライリーを戻す。 そして、代わりにクロバットのクロレンスを呼び出した。
「クロレンス、超音波で5階を探ってみてくれ。」
言いつつユウマが取り出したのは”P★DA”と呼ばれる機械。
この機械はもともと砂漠の世界、オーレ地方で用いられていたのだが、メール機能や、砂埃や気温に対する高い耐性が評価されてポケモン以外のものを研究する人たちの間で使われるようになったのだ。
”ちょうおんぱ”の観測結果をP★DAの画面が映し出す。
正方形のフロア。そこには太陽のような形をした影と巨大な何かの影があった。

「熱源も多数あり、か。なるほど。何故かは知らんがとにかく5階はソルロックだらけみたいだな。クロレンス、戦闘準備だ。」

ユウマは5階へ続く階段に足をかけ、
「…蹴散らせ、ヒテン!」
中の部屋へモンスターボールを投げ込んだ。
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バットントン #9★2005.04/27(水)19:13
「クロレンス、ちょうおんぱ!!」
ボールからダーテングのヒテンが放たれる直前、クロバットのちょうおんぱがソルロックたちを襲った。
そしてボールから登場するダーテング。彼が真っ先に見たものは、神々しい光を放つ大きな石とそれを取り囲むように浮遊している大量のソルロックだった。
「ソーラービーム!」
石から放たれる光によって力が促進されたダーテングの体が光り、強烈な光線を放つ。
光線は一直線に伸び、”ちょうおんぱ”によって目標を掌握出来ていないソルロック達にヒットした。
「ミココ、ソルロックが炎を出したらそれをトレース出来るか?」
私は急に声をかけられて、すぐに反応しそこなったが頷いて返す。
次の瞬間、混乱が解けた何体かのソルロックの頭上に炎の塊が発生した。草タイプのダーテングを狙って、そしてユウマの読み通りに。
「あれだ、トレース!」
私の体が光り、トレースを完了した。
「ふういん!!」
突如、炎が揺らめきを止め、消滅していく。
「よくやったミココ、そのまま封印を維持!ヒテンは”シャドーボール”、クロレンスは”くろいきり”だ!」
クロバットが霧を発生させ、ダーテングの作り出すシャドーボールは霧を取り込みながらどんどん大きさを増していく。そして、シャドーボールは余りに大きくなった。ソルロックたちや石をも取り込んで。


ややあって。
「”シャドーボール”をキャンセル。皆、お疲れ様。」
シャドーボールが霧散したその後には気絶し、地面に落下したソルロック達が転がっていた。
「ヒテンは”シャドーボール”のキャンセルが満点、
 クロレンスは”ちょうおんぱ”がいい調子だったぞ。
 それからミココ。よく”ふういん”を成功させてくれた。
  みんな本当によくやってくれた。」
ユウマはそれぞれをねぎらう。

私はそれがまた嬉しかった。

私たちはやはり最上階を調査し、石を少し削り取って塔を後にした。
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バットントン #10★2005.04/28(木)21:56
#ユウマのレポート

・幻影の塔と文化
今回、前回の調査で達成できなかった最上階の調査を成功させた。天井に星宿図、側面にそれぞれ何かのマークのようなものが書かれていた。
巨大な”太陽の石”であろう石については、天井の中央に穴が開いており、そこから日光が漏れるために石が成長したものと思われる。
石が成長する、という点から見てもこれが”太陽の石”だということは間違いなさそうだ。

・ソルロックの鎮静化
ソルロックは体内のエネルギーを消耗すると一時的に自ら仮死状態になり、エネルギー充填を行う。この習性を踏まえ、”くろいきり”によって”シャドーボール”を膨らませ、内部でソルロックのエネルギーを奪う方法を採った。
ここで注意すべきことは、建造物の破壊を防ぐため”シャドーボール”を途中で消滅させることである。ソルロックが充填期間に入ってから再び活動を再開するまでには約1時間を要するので、速やかに調査を行ってその場を退出することが理想的である。


#ミココのダイアリー

今日は”幻影の塔”というところまで調査に行った。
中は砂埃だらけだったけど、柱や壁がとても神秘的で素敵だった。
調査をしているときのユウマはすごく真剣で、ちょっと近づきにくい。でも、すごく楽しんでるのがわかる。
5階のソルロックと戦ったときはちょっと怖かった。あんなに大勢と戦ったのは初めてだったから。
”ふういん”が成功して、後でユウマに誉められたときはとっても嬉しかった。
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バットントン #11☆2005.05/01(日)13:44
幻影の塔を出ると、さっきまでの砂嵐はすっかり止んでいてジリジリと太陽が砂漠を照らしていた。
ユウマは今度はグライリーや私を出さずに砂漠を進む。

しばらくして、一人の少年に出会った。

少年は岩陰でうずくまって泣いていた。
ユウマは彼に直接関わろうとしないで通り過ぎようとした。
しかし、少年はユウマの姿を見受けるとユウマの前に飛び出して、願った。「助けてくれ」、と。

彼はボールから一匹のポケモン―ビブラーバを出した。
ビブラーバは私もユウマも、一目見て判る位衰弱していた。
ユウマは尋ねる。
「こいつがビブラーバに進化してから、何日経った?」
「今日で3日目なんですけど…」
「お前、ナックラーがこんなにあちこちにいるのにフライゴンが 殆んど居ない訳を知ってるか?」

「いえ…全然知りません」
そんな返答が帰ってくるやいなや、ユウマは少年を殴り飛ばした。


「っ…!何をするんですか!!」
「フライゴンの個体数が非常に少ない訳を、教えてやる…!
 それは、ビブラーバの寿命が非常に短いからだ。」
「!!?」
少年は言葉を失った。構わずユウマは続ける。
「昔、トレーナーが一般的でなかった時代はビブラーバの姿で一生を終えるのが普通だったんだ。進化するとき、移動力が飛躍的に上昇するのは交尾と産卵のため。役割を終えると彼らは一生を終えるだけだ。」
「そんな…じゃあ僕はどうすればいいんですか…」
「知らん!!甘えるな!!」
「…」

「野生のフライゴンが最も多く確認されている場所はファウンスという森と、幻影の塔周辺。両者に共通する点は、太陽の石などのエネルギーが検出されるという点だ。」
一言、それだけ言うと、ユウマはその場を立ち去った。
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バットントン #12☆2005.05/25(水)19:29
「くそっ!」
少年の位置から見えない岩陰まで歩き、腰をおろしたユウマの第一声がコレだった。
そのまま彼はさっき採取したばかりの「太陽の石」を取り出し、無言で潰して粉にし始める。
ボールに入っていた私にはその一部始終を完全に見ることが出来たのだが―
普段ならありえないあのユウマの怒り方、突然ユウマがこんなところで石なんかを粉にしだした理由、分からない事だらけだった。

再び砂嵐が起こり始める頃、粉は水に溶かされて薄いオレンジ色の綺麗な液体が出来上がった。ここでやっとユウマが口を開く。
「グライリー、クロレンス、頼む。」
そう言いつつ彼は白いサンドパン、グライリーとクロバットのクロレンスを呼び出した。
「クロレンスはさっきの少年の位置を探ってくれ、ここから向こうの岩壁にちょうおんぱを当てればワンバウンドでいける。グライリー、さっきの少年にこの薬を渡して来い。ただし…、な。」
ユウマの思惑が分かったのか、グライリーはコクリと頷く。
クロレンスがちょうおんぱを発信し始めた。ユウマはすかさず反射してきた音波をP★DAで受信する。
「流石に受信悪いな…おっし、まだ居やがるばかりかビブラーバも外に出てる。…グライリー、頼んだ。」

首から一枚のメモと液体をぶら下げ、白いサンドパンは少年の元へと向かった。
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バットントン #13★2005.05/31(火)22:12
少年はもうどうしたら良いのか分からず、岩壁にあいたくぼみにビブラーバと身を寄せ合っていた。さっきからまた吹き始めた砂嵐が暗鬱な気分を一層強くする。

あの僕を殴りつけたヒトは何だったんだろうか。もしかして僕のビブラーバを助ける方法を知ってたんじゃないだろうか。でもあのヒトは僕にどうすれば良いのか教えてくれなかった。何故?それとももう手遅れで、みんな僕が悪いっていうことだろうか?きっとそうだ。みんな僕が悪いんだ。こいつを助けてやれない僕の責任だ。
みんな僕が僕が僕が僕が僕が僕が
僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕
が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が
僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕
が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が
僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が…

そのときだ。彼の脇を何かがかすめた。
「あ…う・・」
サンドパンの、まるで竜の装甲のような大きさを持つトゲだった。但し、それは真っ白だった。トゲによって彼は戦慄したが、同時に正気も取り戻した。
砂嵐の中に幽かに見える真っ白いサンドパン。白き悪魔の覇気に気圧されて少年は視線をそらしたが、その視線の先には瀕死状態のビブラーバがいた。
そうだ、僕がこいつを守ってやらなきゃ。でもこいつが僕の唯一のポケモン、他に手持ちはいない。いったいどうすれば…?

じりじりと距離を縮め、やがて飛び掛るサンドパン。
「うわぁぁっ!」
そのときだった、彼がさっき飛んできたトゲをサンドパンに向けて必死で振り回したのは。
トゲはサンドパンの首にかかっていたビンにあたり、
ビンは割れ、
中から結晶化した”太陽の石”が現れ、
砂嵐は止み、
日光が降り注ぎ―
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[665]

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