疾風 | #1★2005.04/10(日)17:08 |
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それなりに広い草原で、草の上に身を横たえた少年がいた。 流れる雲を目で追いながら、少年は呟いた。 嗚呼、面倒。 不思議な奴の物語・「バトルが好きじゃない少年」・ 『...何が面倒なんだ?』 少年の視界に、雲ではない真っ白なものが広がった。 サラサラとした、心地よい感触の毛並みが、少年の目に映る。 「あー...、何?」 せっかく空を見ていたのに。 目にかかる毛を掻き分けて、少年は再び空を見た。 しかし、今度はズシ。と腹筋辺りに、何かの重みを感じ、視線をずらした。 と、そこに映るのはやはり白い毛並みと、黒く、特徴的な角。 「....おーい?俺、重いんだけど。」 『知るか。人の話を聞け。』 「....お前、人じゃないじゃん。」 『揚げ足を取るな!!』 「うおっ、聞こえたのか?」 『いくら小声でも、ここまで近いと聞こえるに決まっているだろうが。』 「うっわー、地獄耳!てか、耳あんの?お前。」 『..........本気で怒るぞ。』 「げ、悪かったって!解ったから怒るなよ〜。なぁ、アブソル?」 .....ちっ。と軽く舌打ちすると、アブソルは少年の上にのしかかったまま、 ズリズリと上に上ってきた。 そして、少年の目に、アブソルの特徴的な真紅の目が見えた。 アブソルの目の中にも、少年がいる。 「アブソル、何の用?」 『バトル。』 「はァ?」 アブソルは、言いづらそうに口をもごもごさせた後、 少年があまりに嫌な顔をして聞き返してきたので、 多少気分を害した表情で、もう一度、簡潔に主語だけを述べた。 『バトル。』 「俺の言いたいこと、解ってるよな?」 『.....バトル。』 「アブソル?俺、本当に怒るぞ? 」 『....。』 だんだんと、声が低くなってくる少年に、アブソルは最後には何も言わなくなってしまった。 むしろ、無理だ。と、あきらめたのかもしれない。 さっと、少年の体の上からアブソルが退いた。 少年は、黙りこくってしまい、酷く不機嫌そうな顔のアブソルを見て、 溜息混じりに体を起こした。 「解ってくれ。俺、本当にバトルだけはダメなんだ。」 そう言うと、まるで子供をあやすかのように、アブソルの頭をなでた。 アブソルは、それだけじゃ収まらない。といいたげに、頭をふり、手を払った。 そして少年に背を向け、反抗的な態度を取った。 少年は、あー...と、面倒そうに呟いた。 「あぁ、もう...。悪かったって。今度、一緒にバトルの練習なら、やってやるから。」 『...本当か?面倒じゃないのか?』 「...っとおいおい。面倒って意味、解ってたわけ?」 『当然だ。俺はお前のパートナーなのだから。』 「流石だねぇ。まぁ、いいさ。じゃあさっさと練習始めるぞ?」 『了解。でも、いいのか?面倒で嫌いな、ポケモンバトルの練習だぞ?』 少年は、酷く自嘲気味に笑った。 「まぁね。自慢じゃないけど、俺はバトルが大嫌いさ。 大事な仲間が、ボロボロになるのは耐えられない。 それも、俺の指示のせいで傷つくとか、そういうのって辛すぎるし。 でも、練習なら別に良いさ。傷つく奴はいないから。」 アブソルは、微かに悲しげな光を宿す少年の目をみて、 静かに呟いた。 『.......お前は、甘いんだか、優しいんだか...。』 「どっちでもいいさ。天使だろうが、偽善者だろうがさ。 それともやめる?俺はそれでもすっごくいいんだけど。」 『やめるわけがないだろう。』 風そよぐ、静かな草原。 その中を、一筋の白い閃光が駆けぬけた。 一人の黒い少年を連れて。 続くんだか短編だからここで終了なんだか。 |
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