え〜ふぃ | #1★2006.04/25(火)20:11 |
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序章 近未来国家「ラジカル」。 ここでは希少金属「オリハルコン」が採掘される事から、近年急速に発展してきた国であり、世界的にも有数の巨大国家へとなっていった。 オリハルコンは、ありとあらゆる金属の硬度や資質を上回り、あらゆる金属の代用として使用出来るほか、工業やエネルギー開発にも使用出来る、言わば「奇跡の物質」とされていた。 オリハルコンは、ラジカルに住む人々にとってなくてはならないものとなっていたが、一方では高価な金属としてオリハルコンを巡っての犯罪も増えていった。 今では、世界規模でオリハルコンの密売や裏取引が行われているとまで言われている。 使い方次第では、非常に危険な兵器をも作れてしまうオリハルコンは、奇跡の物質でありながら一方で人々の欲望を掻き立てる負の産物でもあった。 政府は、こうした犯罪を未然に防ぐために様々な対策を立ててきたが、年々増加するオリハルコンに関する犯罪に対処しきれていなかった。 これは、過去のロケット団やアクア・マグマ団等の組織とは比較にならないほどの巨大組織が動いているとの噂もあり、世界的な社会問題にまでなっていた。 自体を重く見た政府は、こうした事件を食い止めるべく、特殊部隊を編成する事を決断した。 数週間後、世界各地から素質のあるトレーナーが召集され…、その中には、かつてラジカルでも名を馳せた「ツバキ・ヒカリ」の姿があった。 |
え〜ふぃ | #2★2006.04/19(水)22:32 |
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第1章 「ツバキ・ヒカリ」。 ラジカルのポケモン対戦施設「ラジカルタワー」での功績を認められ、ここに招かれた。 しかし、実力が特に秀でているわけでもなかった。 これから、ツバキが訓練を受けるのはラジカルタワーの最上階。 最上階は、ほとんど登った事がないと言われており、どんなつくりになっているのか知っている者はごく一部であった。 そもそも、ラジカルタワーは前バトルタワーの正当な後継ポケモン対戦施設として設立された。 以前のような対戦のみを行う施設ではなく、対戦の訓練施設としても機能していた。 だが、政府の要請でタワーを使用するのは今回が初めてであった。 世界各地に特殊部隊配属要請を呼びかけ、腕利きのトレーナーに通知した政府だったが、犯罪に多く関わるオリハルコンが絡んでいるとあり、集まった人数は少なかった。 ラジカルタワーには、ツバキより腕利きのトレーナーも数多くいた。 だが、タワー管理者はツバキを推薦した。 ツバキも、部隊配属にはさほど興味がなかったが、自分が強くなるためのいい経験にはなると思い、今回参加した。 特殊部隊配属の訓練に参加したのは20名。 その20名はラジカルタワー最上階へと案内された。 そこは、今までツバキが見てきたタワーとは全く違う光景があった。 今までツバキが見てきたのは、普通の闘技場。 何階か上に登った事はあったが、最上階は思ったより広く、様々な仕掛けがある。 自然を再現している箇所も見られた。 これは、様々な状況での戦闘を考慮した上での闘技場なのだろう。 「では、早速だが訓練を始める。最初は私が2名、名前を挙げるので、その2人で試合をしてもらいたい。」 参加者に訓練を行うのは、ラジカルタワー管理者の「サツキ」。 ツバキを今回の訓練の参加に推薦した張本人でもある。 「まずは…ツバキ・ヒカリとサクラ・レイ!」 「…!?」 ツバキもいきなり名前を呼ばれるとは思っていなかったようで、多少驚いたようだ。 そして、全く未知の最上階闘技場…。 ツバキの対戦相手は、「サクラ・レイ」。 隣国ではかなり名の知れた実力派である。 ツバキは、チラッとサツキの方を見た。 正直、自分にはそれほど大した実力があるとは思っていない自分を、あんな強力なトレーナーとぶつけてどういうつもりなのか知りたかった。 だが、サツキはツバキには何も語りかけはしなかった。 「使用ポケモンは1体のみ。戦う場所はこのフロアのどこであろうと自由。先に相手ポケモンを戦闘不能にした者の勝利とする。」 「じゃあ、行くよっ!」 サクラはサーナイトを出した。 (あれは…サーナイト…。) ツバキは同じエスパータイプのエーフィを出した。 両者とも、ポケモンの属性(タイプ)は同じ。 つまり、お互いの駆け引きが重要な戦いとなる。 「サーナイト、サイコキネシス!」 サーナイトにサイコキネシスを指示するサクラ。 「じゃあ、こっちもサイコキネシス!」 お互い、同時にサイコキネシスを繰り出した。 だが、エーフィのサイコキネシスはサーナイトの攻撃に簡単にかき消されてしまい、エーフィに直撃する。 「あ、エーフィ!」 エスパー攻撃には耐久力があるため、大きなダメージには至らなかったが、桁違いの威力である。 「冗談でしょ…こんな実力差のある相手に…どう戦えって…。」 「どうやら、君のエーフィはそれほどでもなさそうだね。今ので分かったよ。」 「…逃げるよ、エーフィ…。」 ツバキとエーフィは湖の方へと走り出した。 「逃がさないよ…。」 「冗談じゃあないよ…あんなバケモノ、勝てるワケないし…。」 湖のほとりにひとまず身を隠すツバキとエーフィ。 「ここは…とりあえず隠れて…と。」 「隠れるって…どこに…?ここですか?」 「え?」 ツバキが振り返るとサーナイトがいた。 「私たちからは…逃げられませんよ。」 サーナイトは、「テレポート」でここまで瞬間移動してきたのだ。 また、サーナイトには生物の気配を念力で感じ取る事が出来る。 「うかつだったね…ボクとサーナイトはお互いにテレパシーで話が出来る。相手がどこにいても、サーナイトが離れていても戦う事は出来る。」 「エーフィ…!」 エーフィは怯えていた。 「さあ、サーナイト。トドメだ…。」 サーナイトは再びサイコキネシスの構えに入った。 (…私のエーフィがやられる…。エーフィが…エーフィが…。) 「やめてーっ!」 「そこまでだ!」 サツキが試合を止めに入った。 「もうツバキには戦う気はないようだ…。よって勝者サクラ・レイ!」 「サツキさん…。」 「…。」 サクラはサーナイトをボールに戻し、立ち去った。 「ツバキ…。」 「ねえ、どうしてです…?どうして私がこんな訓練を受けなくちゃならないんですか…ねえ…。」 ツバキは涙を流しながらサツキに問いただした。 だが、サツキは何も答えてはくれなかった…。 TO BE CONTENUED |
え〜ふぃ | #3★2006.04/25(火)20:11 |
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第2章 その夜…ツバキは1人考え込んでいた。 (なんで私なんかが…。) 確かに、サツキに推薦された事は嬉しかった。 戦いは好まないが、強くなりたいという気持ちもあったからである。 だが、やはり自分は戦いは好きにはなれない。 強くなりたい気持ちと戦いを拒む気持ちがツバキを葛藤させていた。 数日後…。 特殊部隊訓練生はサツキによりすでに決定されていた。 その中にはツバキと対戦したサクラもいた。 選ばれたトレーナーは全部で3名。 その中の1人は、「スミレ・クロード」という女性トレーナー。 サクラと同様隣国では名の知れたトレーナーの1人であった。 そして後1人…選ばれたトレーナーの名を書き記したボードには「ツバキ・ヒカリ」の名があったという。 (やはりこの3名しかいないだろう…。) サツキはボードの前で考え込むような表情で立っていた。 「おはようございます、サツキさん。」 選ばれたトレーナーの1人「スミレ」がやってきた。 「おはよう。」 「感激です、私はあなたのようなトレーナーに憧れて今回の訓練に参加したんです。」 「…。」 「…どうかされたんですか?」 サツキは相変わらず何か悩んでいる表情のままだった。 「…これは…?」 スミレはボードにある1人の名前を見た。 「ツバキ・ヒカリ…。私は最初からこの子を選ぶつもりではなかったが…。」 「この子は…確か初戦でサクラって子に負けた子でしたっけ?」 「ああ、だが、他のトレーナーの戦いを見比べても、やはり彼女の才能には及ばないだろう。今回、私はこれからさらに成長する可能性がある者を選び抜いたつもりだ。すでに完成された強さを得ている者にこの部隊は任せられない…。」 「成長する可能性…ですか…。」 「おはようございます…。」 ツバキが2人の元へとやってきた。 「ん、ツバキか…。」 「サツキさん、この間はすみませんでした。やっぱり私なんか…ダメですよね…。トレーナー失格ですね…。」 ツバキはまだ立ち直れていない様子だ。 「君も明日からの修行に参加してもらう。ここにいるのは合格者の1人スミレ君だ。」 「え…?」 ツバキはサツキの言っている事がよく分からなかった。 「あなたも…私たちと一緒に修行するのよ。試験合格だって。」 「え…?でも私は負けちゃったんですよ…。」 ツバキには何が何だかサッパリだった。 「ツバキ…半年前の事を覚えているか?私は勝ち負けとかで今回君を選んだわけじゃない。色んなトレーナーを見てきたが、やはり君の才能を伸ばしていかなければと思ったんだ。」 「半年前…?何かあったんですか?」 スミレはサツキにたずねた。 「ああ、この子の才能が素晴らしいと分かった出来事があったんだ…。」 TO BE CONTENUED |
え〜ふぃ | #4★2006.05/23(火)12:05 |
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第3話 それは半年前…。 ツバキは初めてタワー管理者のサツキと模擬試合をする事となった。 「遅れてすみません…。」 試合開始は午前11時。 ツバキが到着したのは11時30分を過ぎた頃だった。 「どうした?また朝寝坊か?」 サツキが問いただす。 「いえ…その…。」 ツバキは慌てている様子だ。 「何かあったのか?」 「実は…。」 ツバキは手持ちのボールを投げる。 すると、中からはエーフィが出てきた。 「…これは…君のポケモンが進化している…。」 「はい…。朝起きてみたら…イーブイが…。」 サツキも驚いていた。 (信じられないな…この子にイーブイを渡したのは、ほんの数日前…。進化の難しいイーブイをいとも簡単に進化させるとは…。) 「…分かった。今回は許そう。早速模擬試合を始めよう。」 「はい、よろしくお願いします。」 「そうだったんですか。あの子がイーブイを…。」 「ああ、だがそれだけじゃなかった。君も知っていると思う。半年前の、ラジカルで起こったあの事件を…。」 半年前。 (進化させたばかりのハズなのに、わざのキレは悪くない。模擬試合でこれだけの力が出せれば…。) 「サツキさん…。」 「今日はここまでだ。その調子でこれからも精進してくれ。」 「はい、ありがとうございます。…それと、今日は遅れてしまい、すみませんでした。」 サツキは微笑みながらうなづいた。 ツバキは元気良く走ってタワーを後にした。 この、わずか1時間後の事だった。 あの事件が起きたのは…。 「大変です、サツキさん!ツバキが…。」 タワーのオーナーがサツキの元へと慌ててやってきた。 「どうした?ツバキに何かあったのか?」 「とにかく…すぐに現場に来て下さい!」 10分後、サツキが現場に到着。 そこでは、町の一部が廃墟になったかのような光景が広がっていた。 「ここで何があった?ツバキは…。」 「あなたは?」 警官に呼び止められるサツキ。 「私はラジカルタワー管理者のサツキだ。ここでツバキという女の子がいたと聞いている。彼女はウチの施設で預かっている子だ。彼女に会いたい。」 「女の子ですか。その子なら今事情聴衆をするため、ウチの署に来てもらっています。確か名前がツバキ…とか言ってました。」 「そうですか…しかしここで何があったんですか?」 「ツバキさんのお知り合いなら…貴方も署にご同行願えないでしょうか。話はそこで…。」 「ツバキ!」 署についたサツキが見たもの…それは変わり果てたツバキの姿あった。 「サツキさん…。」 「さあ、話してくれ。何があった。ツバキは…何も悪い事はしていないんだろう?」 サツキは動揺していた。 町の変わり果てた姿、何故そんなところでいつも大人しいツバキが関係しているのかが分からなかった。 ツバキは、決して犯罪に手を出すような子ではない事は、サツキ自身が一番理解していた。 「あの現場でツバキさんはオリハルコンの密売されているところを偶然見てしまったようなんです。」 「え?何故ツバキが…。」 「ツバキさんは、あの近くのポケモンセンターにいたそうです。そこで偶然見てしまったと話しています。」 「本当なのか?ツバキ…。」 ツバキはうつむいたまま、何も答えなかった。 「ツバキさんは、その時、数名に取り囲まれてしまったそうです。」 「私、怖くなってそれで…エーフィを…。」 ツバキがようやく口を開いた。 エーフィのわざで、その場から逃げようとしたらしい。 しかし、エーフィはその時おびえていた。 だから、わざを何も出せなかったとツバキは話す。 TO BE CONTENUED |
え〜ふぃ | #5★2006.05/23(火)16:49 |
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最終話 「でも、その時私のこのペンダントが…急に光り出したんです。」 ツバキは語り始めた。 「これは…私のペンダントが…。」 「な…まさかそれはオリハルコン?」 ツバキを取り囲む集団のリーダー格の黒装束の男も驚いていたようだ。 「これは…私の両親の形見です…。」 すると、エーフィの体が光り出した。 「これは…オリハルコンと共鳴しているとでも言うのか…?そのエーフィのサイコパワーとペンダントが…互いに反応している…。」 「でも、なんで私のエーフィが…。」 ツバキには、訳の分からない事だった。 「そうか…お前は古代の一族「オレイカルコス族」の末裔…。オリハルコンは、希少価値が高い鉱物と今ではされているが、古代ではその性質を利用した一族が存在していた。その一族は、生まれ持ってオリハルコンの性質を引き出す才能をも持っていたという…。」 「何ですか、それ…。何の事か分からない…。」 すぐに黒装束の男は集団を引き連れて撤退を命じた。 「ここは一旦引き上げる。我々は、ただ単にオリハルコンを密売するだけの輩とは訳が違う。いずれまた会う事になろう…。」 「エーフィ…しっかりして。」 エーフィは苦しそうにもがいていた。 オリハルコンの巨大なパワーがエーフィの中から目覚めようとしていたのだ。 「…ここは危ないです!みんな逃げて下さい!」 ただ事ではないと感じたツバキは、周囲の人に呼びかけた。 「エーフィ…。」 そして数分後、ポケモンセンターから周囲数十メートルで爆発が起こった。 エーフィは意識不明、ツバキはかろうじて無事であった。 「こんな話、私にはとても信じられませんよ…。」 「…。」 サツキも呆然としていた。 だが、オレイカルコスという古代の民族の話はサツキも聞いた事があった。 「とにかく、今日はこの子を連れて帰ります。お世話になりました。」 この事件は、1人の少女が密売を阻止、という事で幕をおろした。 結果として、名を馳せる事となったツバキだが、それ以来ツバキはポケモンバトルをする事を避ける事が多くなったという。 「そうだったんですか…。そんな事が…。」 「ああ、スミレ。これからツバキの事を、よろしく頼む。彼女はオリハルコンを守る使命を時を越えて受け継いだ、たった1人の人間だ…。だが、まだツバキは未熟。君のような支えが必要だ。」 「…はい!」 「2人とも、いつまで話してるんですかー?」 ツバキが遠くから2人を呼ぶ。 「やれやれ…まだあんな子どもなのに、この先どうなるんでしょうね。」 スミレは嘲笑した。 「君たちなら、任せられるさ。私が保証する。明日の修行、頑張ってくれたまえ。」 「さっき、サツキさんと何話してたんですか?」 (見た感じは、あどけない普通の子ども…。でも、この子は修行の中で、自分を鍛えるとともに私の手で育てなくては…。) 「ええ…ああ明日からの修行、頑張れってさ。」 「でも、私は訓練審査ですぐに負けたんですよ…。」 すると、スミレは表情を変えて言った。 「あなたには才能がある事を、サツキさんは見抜いてる。自信を持ちなさい。」 ツバキは、自分のペンダントを見つめながら言った。 「私に両親は、2人とも世界的に有名なトレーナーだったって、サツキさんが言ってました。でも…。」 「なら、今から私と勝負しない?あなたが本当に大した事なかったら…私がサツキさんに修行を断ってあげる。」 それを聞いたツバキは、 「そんな…。私だって、やる時はやりますよう…。」 「じゃあ、今ココで勝負よ。」 お互いに構える2人。 しかし、これは2人が世界を導くトレーナーになるための、ほんの入り口であった。 ツバキの本当の試練と戦いは…これからである。 THE END |
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