ぴくの〜ほかんこ

物語

【ぴくし〜のーと】 【ほかんこいちらん】 【みんなの感想】

[691] Another World ―光と闇―

リクト #1★2005.05/14(土)20:51
第1話  蝕みの夢

「…最近、同じ夢ばかり見る。…それも悪い夢を」
「1日だけだったらまだいい方ですけど…1週間も続くと、流石に不吉な予感がしますよね」
会話しているのは、2人の男女。
「ところで、どんな夢だったんですか?」
少年は、少し表情を固くした。
「それが…今から3年後に、3年後のオレ自身によって、オレの人生が…」
「3年後のリクに、今のリクが…? そんな! 私信じられませんよそんなの!」
「だけど、それが事実だ、リコ。こんな夢が1週間も続いたとなると、健康しか取り得の無いオレでも不眠症にもなる」
リクと呼ばれた少年は眠そうな顔をして答え、リコと呼ばれた少女は、少し考えてから言った。
「だけど、もし私がそんな夢見たら、精神的にも良くないですよ。私まだ16年しか生きてないんですよ?」
「オレだってまだ17年しか生きてねーよ。だけどオレ自身にオレの命が絶たれるって…矛盾してねーか?」
「そうですよね。それは今、ウルフさんが調べてくれているハズです」
『ウルフ』という名を聞いて、リクの表情が少し変わった。
「ああ、確かトラウマを持つ男だっけ。すんなり協力してくれた事には驚いたけど」
「いい所、ありますよね」
「…人間嫌いだって話だけどな」
リクは若干苦笑して言った。そして続ける。
「ところで、前に取材に来た時は敬称付けてたのに、今度はいきなり呼び捨てなんだな」
「あなたの名前、敬称つけると微妙に呼びにくい気がするんですよ。ウルフさんの場合は逆ですけど」

リクは、カントー地方に住む少年。
そんなリクの前に、リコとウルフが立て続けにやってきたのは数日前だった。
以前リクはこの2人に追われていたので、逃げようとしたのだが、向こうは追う気は無かったらしい。
そんなリクは安心したが、例の夢のせいで精神状態は悪かった。
リコとウルフにその話をすると、ウルフはこう言った。
「…どこかで似た話を聞いた事がある。私が少し調べてみる」
そしてウルフは現在、色々な書物を調べているのだ。

「あ、戻ってきた」
リクは、向こうから走ってくるウルフの姿を認めた。
「…調べてきてやったぞ」
それだけ言うとウルフは、調べた書物を要約したレポート用紙をリクに渡した。
「さて、私は眠い。ラーフォス、ショウロウ。それにリュート、サティア。私は暫く寝る」
それだけ言うとウルフは、少し離れた所まで言って、芝生の上に寝転がった。

「…どうです? 何か分かりました?」
リコが聞いた。
「なんだと…光と…影の存在?」
リクが呟く。
「何ですか? それ」
「そうだな…簡単に言うと、今のこの現実が光だとする。そして、この世界と対になっているのが影」
リクは分かり易く説明したつもりだったが、リコには意味がはっきり伝わらなかったらしい。
その様子を察したリクは、しばらく考えたのち、
「つまり、影の世界には、影のオレとか影のアンタ、影のウルフとかも居るって事だな」
「影の…私?」
まだ意味が分からないらしいリコに、リクは、
「うーん、どう説明すれば分かって…」
そこまで言って、突然リクは頭を抑えて顔を下に向けた。同時に膝もつく。
「リク!?」
「…心配ない。…例の発作だ」
心配ないと言いながらも、リクの表情は、苦しみに耐えているような表情だった。
「おそらくコレも…影のオレが関連してるんだろうな」

リクの仮説を聞いたウルフは、腕を組んで何やら考え込んでいた。
「ならば、その『影のリク』とやらを倒すしかあるまい。今から3年後の世界に、その反応があるのは既に調査済みだ」
「だけど、どうやって3年後に行けってんだ?」
リクが聞いた。
「時空の扉の遺跡があるのは知っているだろう。そこから行けばいい」
「あぁ、あそこか…」
「それと、その3年後の未来の『影』の世界もそうだが、今から15年前の『光』の世界が危機にあるらしい」
「15年前というと…オレがまだ2歳の時か。その世界がどうかしたのか?」
「実は以前、私の頭の中に語りかけてきた人物がいた。過去の世界が危ない、と」
「で、それは誰が語りかけてきたんだ?」
「確か…『フィラネス』という女だったか」
リクは、その名前に何か覚えがあると感じたが、思い出せなかった。
「じゃあ、どうするか。過去の光世界も未来の影世界も放っておけないんじゃないのか?」
「…過去には私が行こう。貴様は未来で影の自分との決着を付けるがいい」

「次の日に行くなんて、相当無茶しますね、リク」
「善は急げっつーだろ。オレだって、発作の原因を絶ちたいんだしよ」
リクがさも当然の事のように言った。
「…私は頼まれたら断れない性格でもあるからな。不本意だが行くしかあるまい」
ウルフも言う。すると、リク達の方に向かってくる人物が。
「えー!? あたしが一番遅かったの!?」
「そういう事だ。アンタが一番遅かったぞ、ナツキ」
少女をビシッと指差してリクが言った。ナツキと呼ばれた少女は、
「そっちが早すぎるの。もう少し余裕持っていいんじゃない?」
「あのな。こんな状況で余裕持てって言われたってオレが余裕持つと思うか?」
ナツキの言葉に、リクがチェックを入れる。
「あー、言われてみればそうね。リクってそんな性格だし」
「…どういう意味だ」
「で、行く分担だが、私は過去、貴様は未来へ向かう事が確定している。残ったお前らはどうする」
リコとナツキを交互に見てウルフが言った。
「…リクもウルフも、どっちも不安要素多大なのよね」
ナツキが言うと、
「どういう意味だ、オイ」
リクとウルフが同時に言い返した。
そんなこんなで、4人の時空を越えた戦いがはじまろうとしていた…

           To Be Continued…
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リクト #2☆2005.05/14(土)21:50
第2話   リクの力

結局どのような組み合わせて行くか、議論しても決着が付かず、籤引きで決める事になった。
その結果、過去に向かうのはウルフとリコ、未来へはリクとナツキが向かう事になった。
ちなみにリコとナツキは、それぞれリクとウルフのお目付け役も兼ねている。リク達は「何故お目付け役なんだ」と反論したのだが。
彼女達曰く、「2人は何をやらかすか分からないから」らしい。

「…着いたぜ。時空の扉」
「ここには、過去へ向かう扉と未来へ向かう扉がある。左が過去、右が未来」
ウルフが説明する。事前に調査したのだろう。
「で、扉は何時開くの?」
ナツキが聞くと、
「私に聞かれても分かるハズがない。この扉の開閉は不定期なのだからな」
ウルフはそれだけ言うと、その場に腰を下ろした。
どうやら、扉が開くまでここで待つつもりらしい。
「…あ、でも私達は待つ必要無いみたいですね」
リコが言い、扉を指差す。
過去への扉が開いたのだ。
「…待つ手間が省けたか。我々は先に行かせてもらう」
「待つのはオレの性に合わないけど、まぁ仕方ないか。そっちは任せた」
リクはそれだけ言うと、過去へ向かう2人は扉に入る。

「さーて、こうなってくるとこっちは面白くねぇな」
過去組が行って早々、リクが退屈そうに言った。
「そうよね。どうせなら同時に開いてくれるとよかったんだけど」
「そうもいかないみたいだな。ウルフが調べた資料によると、開くのは不定期なんだとさ」
心底面白くなさそうな口調でリクが言う。彼は待つのも待たされるのも嫌いなのだ。
「…いいや。暇潰しになるかは知らねぇが、オレが持ってる『力』の話でもするか」
「『力』って、たまに使うあの剣みたいなのでしょ?」
ナツキが聞くと、
「『剣みたい』じゃなくてアレはちゃんとした剣だっての…」

「…光と闇の力の存在は、知ってるな?」
「前に聞いた事あるけど…どんな条件で持つようになってるの?」
「条件は知らないが、普通は1人の人間が光と闇、2つの力を持つ事はまずあり得ない」
リクが言い切ると、
「それはどうして?」
「光と闇は、対になってるだろ。だからだ。例えば、ある日自分が光の力を手に入れたとする。その後に闇の力を手に入れる事は無い」
「でも、リクの場合は両方使ってるじゃない。あれはどうして?」
「オレの場合は特異なケースらしい。光と闇の力が同時に、それこそコンマ1秒も違わずにオレに入り込んだからだ。その場合は両方使える。だが…」
リクはそこで言葉を切る。
「なるほど。制御がとても難しいのね」
「その通りだ。元々対になっているから、同時に入り込んだ時点でオレの中では光と闇の戦いが起こっている。…こうやってアンタと話してる今も、な」
ナツキは、何も言う事が出来なかった。リクは続ける。
「そして、オレの剣技…セイバー・オブ・リクの発動は、極めて微妙なバランスで行われている。精神を集中していれば問題無いが、少しでも集中力が途切れると…」
「制御不能に…なる…?」
ナツキの言葉に、リクは軽く頷いて答える。
「ただ、光と闇の剣は、単体で発動させる時は何ら問題は無いが。同時に使うとなると、精神力と体力の消費が激しい。…セイバー・オブ・リクの連続使用は、15分が限界だ」
「…今回はその究極剣技が使われないのを祈るしかないわね」
「出来る事なら使いたくはない。…だけど」
「使わざるを得なくなるかも知れない、と?」
「…もしかしたら、その究極剣技を上回る超究極剣技の封印を、解く事になるかも知れない」

「…随分暗い話になっちまったな。忘れてくれていいぞ」
リクは言うが、
「こんな話、忘れたくても忘れられないよ。…かなり深刻な話だったし」
「ま、それもそうだ。…おい、開くんじゃねーか?」
「…ホントだ!」
ようやく未来の扉も開き始めたのだ。
「さーて、オレ達も一暴れしてくるか」
「オッケー! いこっ!」

さて、その頃、過去に向かった2人は…
「なるほど。2つの珠を狙っている人達がいるんですね?」
リコは過去に着いた時に出会った人物に、話を聞いていた。
「おうよ、その通りだ。で、俺の話聞いたからにはテメーらにも協力してもらうぜ」
「…目指す敵が同じなのであれば、手を貸してもいいがな」
ウルフが言う。
「多分同じだろうな。この俺、アーサーはな、フィラネスとかいう女に頼まれたんだからよ」
アーサーと名乗っている人物が言うと、ウルフの表情が少し変わった。
「フィラネス…まさか」
ウルフが呟くと、
「…その女の所に案内しろ。もしやと思うが、何か分かるかもしれん」
「任せな。俺だってハナっからそつもりだったしよ」

        To Be Continued…
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リクト #3☆2005.05/15(日)18:52
第3話   守護者フィラネス

「で、私らは具体的に何をすればいい」
ウルフがアーサーに聞いた。アーサーは、この15年前の世界の人物だ。
「そうだな、まずは状況説明からか」
アーサーは、上空を見上げながら言った。
「…今から18年後の未来から、影の世界のヤローがこの世界に侵入してきた時から、この世界の歴史のバランスが崩れ始めた」
「18年後というと…私達の時代からすれば、3年後って事ですね。…リクとナツキが向かう時代か…」
呟くようにリコが言う。
「影の未来の奴らが何考えてるかは知らねぇが、ろくでもない事に違いないだろーな」
「ですね」

「…そうだ、一応俺の実態を教えておくか」
「実態…?」
ウルフは、多少興味深そうに聞いた。
「俺は、強さを求めるために自らをサイボーグとした」
「サ、サイボーグ!?」
リコが驚く。
「…俺は、過去に大切な人を守れなかった。…そんな過去の自分自身を断ち切る為にこの道を選んだ。そして、力を求めた」
アーサーは、その時の様子を思い出したのか、顔を伏せた。
「だけど、後悔はしていない。人為的とはいえ、弱さを断ち切る事は出来たんだからな」
「でも…」
リコは何か言いたそうだったが、言わなかった。

「着いたぞ。あそこだ」
アーサーが指差す先には、祭壇が見えていた。
その側に、1人の女性が立っている。
「…私の夢に出て来た人物だ」
ウルフが言った。
「とにかく、行くぞ」
アーサーを先頭に、ウルフ、リコが続く。

「あなたがフィラネスさん、ですか?」
祭壇にたどり着くや、リコがいきなり聞いた。
「確かに私はフィラネスですが…あなた方は?」
「…私に見覚えが無いか」
ウルフが前に進み出て言った。
「あぁ、あなたは…」
フィラネスは思い出したように言った。
「ウルフさんの話によると、この世界が危機にさらされているとか」
「はい。…この『あいいろのたま』と『べにいろのたま』を狙って、影の未来の者が」
フィラネスが声を落として言う。そして続けた。
「ですが、たとえ珠が奪われたとしても、この子だけは必ず守り抜くつもりです。…母親として」
「娘さん、ですか?」
リコが聞いた。
「ええ。…たった一人の、大切な娘です」
「可愛いですね。…何ていう名前なんですか?」
「…フィーユ」
その名前に、リコは聞き覚えがあった。表情が変わっていくのを彼女自身も感じていた。
フィーユといえば、この過去の世界から見て13年後、ナナシマで起こったミュウツー暴走事件を解決したトレーナーのうちの1人だったハズだ。
そしてそのミュウツーのトレーナーは…
リコは、自分の中に渦巻く記憶を振り払おうと、何度も頭を横に振った。
そしてよく考えてみれば、ここでフィーユの命が絶たれたら、仲間となる少年達と出会う事は無い。歴史が変わってしまうのだ。
所謂『タイムパラドックス』というモノである。
フィラネスは、それを知っているからこそ、「珠を奪われてもこの子だけは守り抜く」と言ったのであろう。
普通過去の人間が未来を知る事は無いが、2つの珠にはその様な力が秘められている事はリコも聞いた事があった。
そして未来の通りならば、フィーユの母親フィラネスは…
表しようも無い恐怖が、心を襲ってくる。
「おい、何だアレは!?」
突然アーサーが叫ぶ。
「どうした」
ウルフの表情も変わる。
「…どうやら、敵みたいですね。行動開始したようです」
フィラネスが言った。
「…では、丁重におもてなしをしてやるとしよう」
ウルフが呟いた。

「そろそろ、準備にかかった方がいいな」
アーサーが言った。
その言葉に、ウルフ、リコ、アーサーがボールを1つずつ取る。
しかし3人は、向かって来た敵に驚いた。
数は相手も3人だったが、その姿は、紛れも無く3人と同じだった。
「お前ら何者だ!」
アーサーが3人に向かって怒鳴る。
「へっ。見ての通り俺はアーサー。この世界から見て、2年後のお前の影の存在だ」
「…そして私は、この過去の時代から見て18年後、つまり人間年齢で言う20歳の貴様の影の存在だ、ウルフ」
「さらに私は、同じくこの時代から見て18年後、つまり19歳のあなたの影の存在。…私達はあなた達のDS(ダークソウル)」
やはり、名前も同じだった。
「ふざけないで下さい!」
リコが叫ぶ。
「文句があるなら、私達を倒してから言えば? …ま、未来の私達が負ける事はまずないけど」
リコDSは、明らかに挑発している。
「いいだろう。貴様らの挑戦、受けて立ってやろうではないか」
ウルフが言う。
「…後悔するぞ」
ウルフDSは、にやりと笑って言った。

             To Be Continued…
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リクト #4☆2005.05/16(月)23:38
第4話    宝珠守護開始    

(まずは、2つの宝珠の警備を固める事が、最優先か)
ウルフは、まずは狙われている物の安全を確保する事にする。
「リュート、サティア。珠を守れ」
『…任せろ』
『が、頑張ります…!』
静かに答えるリュート(アブソル)と、緊張気味に答えるサティア(サーナイト)は、珠の方に向かっていく。
「ウツセミ! あのアブソルとサーナイトを援護!」
『よっしゃ、任せときな!』
先に祭壇へ向かったリュートとサティアを追い、アーサーのウツセミ(テッカニン)が驚異的にスピードで祭壇に向かう。
「おっと、そうはさせねェ!」
アーサーDSは、ボールを1つ投げる。
そのボールが開いた瞬間、ウツセミが打ち落とされた。
『お、俺のスピードに追いつき…攻撃を食らわすだと…』
「まさか…相手もテッカニンか!?」
まさしくそうだった。驚異的素早さを持つテッカニンには、同じくテッカニンで挑むしかない。
「ちっ…なら、今度はお前だ、ヒグラシ!」
『はいよー。任せといてー』
続いてボールから登場したヒグラシ(ヌケニン)は、ゆったりとテッカニンに向かっていく。
「へっ。一撃で片付けてやる!」
相手のテッカニンが、ヒグラシに攻撃を仕掛ける。「つばめがえし」だ。
しかし、アーサーは余裕の表情を崩さない。彼は、リコと共にある作戦を慣行しようとしていたのだ。
「ジュン! そこで『みきり』使用!」
リコが自分のジュカインに命令を出す。テッカニンは、ヒグラシの目前でジュンに攻撃を止められた。
「よし、作戦通り! ヒグラシ! 至近距離から『シャドーボール』だ!」
『あいよー!』
ヒグラシが「シャドーボール」を放つ。予め「つるぎのまい」で攻撃力を上げておいたので、威力は高い。
「うっし! 1匹撃破!」
アーサーがガッツポーズをする。しかしその途端、
『きゃああっ!』
相手のヌケニンに、祭壇死守組のサティアが攻撃を受けた。
「ちっ。俺達がテッカニンに気をとられているうちに、ヌケニンが向かうとは…陽動作戦か!」
アーサーが舌打ちする。
「リュート。…シャドーボール」
ウルフが指示を出す。
ウルフがいい終わるのを待たずに、リュートは「シャドーボール」をヌケニンに命中させた。
それを見届けると、再びウルフは自分と対峙する『もう1人の自分』に視線を戻す。

「よーし、残るはテメーだけだ」
「くっ…ちょっと油断しすぎたみたいね。アーサー! 何やってんのよ!」
リコDSがアーサーDSに説教を始めた。
「…何だか向こうの私、物凄く気が強いですねぇ…」
「二十歳近くなると、変わるモンなのかねー…」
「さぁ。今の私には分かりませんが」
リコとアーサーは、呆れた様子で見ていた。
「ま、暫く向こうは戦えねーみてーだ。後はウルフの野郎に任せるか」

さて、そのウルフはというと、相手のポケモンに苦戦していた。
ウルフが使用しているのは、ルギアのラーフォスとスイクンのショウロウなのだが、相手はホウオウとライコウ。
対になるポケモンと、弱点となるポケモンを使用していたのだ。
『ウルフ。このままでは我々が先に力尽きてしまうぞ…』
『そうなったら、アンタどう責任取るつもり?』
2匹の同時質問に、
「少し黙っていろ。今考えているところだ」
「フン。私のポケモンに手も足も出ないか」
ウルフDS、極めて余裕である。その態度が、ウルフにとっては気に食わない。
「…さて、充分時間稼ぎは出来た。…引くぞ、リコ! アーサー!」
突然ウルフDSはライコウを戻し、走り去っていく。
「ホウオウ。足止めは任せた」
「あ、この! アイツら、逃げるつもりだぜ!?」
アーサーが言うと、
「私が追います! 宝珠の方と、足止めの相手はお願いします。…いくよ、ルルス!」
自身のチルタリスに乗り、リコは1人で3人を追い始めた。

「ど、何処に行くつもりなんでしょう…」
確かに3人の行き先は見当が付いていない。
「…あ、そうだ。ルルスの技でちょっとからかってあげますか」
リコはいたずらっぽく笑うと、からかいの準備に入った。

         To Be Continued…
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リクト #5☆2005.05/22(日)20:00
第5話      からかい作戦始動

「さて、始めますか。…ルルス! まずはウルフさんのニセモノに『りゅうのいぶき』!」
リコが指示を出すと、ルルスは「りゅうのいぶき」を放った。
それは狙いを寸分も違わずに、ウルフDSに直撃。
「…追っ手か。相手も用意周到というワケか」
「じゃ、次は私のニセモノに『れいとうビーム』発車オーライ…じゃなくって、発射!」
狙ったのは、リコDSの足。足が凍らされたので、身動きが取れない。
「ちょっとアンタ、何するのよ! 動けないじゃない!」
(あれあれ〜? これってひょっとして、私1人だけで勝てちゃうんじゃないですかぁ…?)
少しずつその思いが強くなってきたリコは、さらに調子…ではなく勢いに乗る。
「では、最後に…」
ルルスに指示を出そうとした時、自身の背に激痛が走った。
「えっ…?」
「後ろに俺様のテッカニンが居る事に、気付かなかったようだな」
アーサーDSのテッカニンが後ろに回り込み、隙だらけのリコに攻撃をしかけていたのだ。
「…追っ手は封じたか」
「どうする? コイツ連れてっちゃう?」
「ま、珠を手に入れる時に使えそうだし、連れてって損はねーだろ」

さて、その頃のウルフとアーサーはというと、足止めとして残されたホウオウとの対決に手間取っていた。
「…アーサー。貴様のテッカニンで、ホウオウを撹乱しろ」
「命令口調が気にいらねぇが、ここは仕方ねェ。ウツセミ、行け!」
『よっしゃ、任せろ!』
ウツセミは、ホウオウの回りをグルグル回り始めた。かなりのスピードで。
その動きに必死で着いていこうとするホウオウだが、遂には目を回してしまった。
「…よし、これでいい。後は私がやる」
そう言うや、ウルフは剣を構える。
「…風よ。我と我携帯獣に、力を与えよ。…ラーフォス、『エアロブラスト』発動!」

「…さて、片付いたか。久々に汗をかいた」
「つーワケでフィラネスさんよ。とりあえず珠は安全だぜ」
しかしフィラネスの表情は、緊張で溢れていた。
「…そう簡単にはいかないようです。珠の力で知ったのですが…皆さんの仲間の方が連れ去られました」
フィラネスの言葉を聞き、ウルフは「はぁ」と溜め息をついた。
「…どこかでボロが出るかとは思ったが…こうなるとはな」
「こうなってくると、奴らのやってきそうな事は見当が付くぜ。解放する代わりに珠差し出せとか言うんだろうよ」
「我々の当面の目的は珠の守護。条件を呑むワケにもいかない」
「じゃあ何か!? テメーは仲間を見殺しにする気なのかよ!?」
アーサーが怒鳴る。
「…別に人間など、どうでも良い。私自身人間ではないのだからな」
「…はぁ?」
「私は竜族。部類は風竜。普段は通常人間の姿をとって生活しているが」

「ここは…?」
次にリコが目を覚ましたのは、何処かの牢獄のような所だった。
「…何で私、こんな所にいるんでしょうか…?」
リコはこれまでの記憶を辿ってみた。
――そうだ、あの時…
「あの時相手の攻撃を受けて、それで気を失って…」
そこまで思い出すと、ため息をついた。
「はぁ…何やってるんでしょうね私。こんな簡単に捕まっちゃうなんて」
勿論牢には鍵が掛かっているので、出る事は出来ない。
錠開けの特技があれば脱出は可能だが、あいにくその様な特技は持ち合わせていなかった。
「…そういえばこの牢屋、人工的な感じがしませんね…という事は…」
おそらくこの場所は、かつて使われていた場所をそのまま使っているのだろう。
それならば、以前捕まった人が抜け道を作っている可能性もある。
「とりあえず、抜け道を探してみますか…」

それから暫くの間、リコは牢屋の壁を全て丹念に調べたが、抜け道は見つからなかった。
「ありませんね…そう都合よくいかないって事ですか…」
他に何かいい案はないものかと、牢を歩き回るが、突破口となる案は浮かんでこない。
その時である。
「…? なんかこの床、他の所と音が違うような…」
一ヶ所だけ、足音が違う部分があったのだ。
「ひょっとすると…」
リコは、その床板を持ち上げてみる。
「あった…! これで何とか…」

「…よっ…と。あ、出口みたいですね」
しかし、こんなに簡単に出られるなんて、敵は思っていたのだろうか。
「そうだ、少しでもここから離れないと…!」

さて、逃げられたとも知らず、敵たちは何をやっているかは置いておくとして。
「ありゃ。アイツ、捕まったのにもう戻ってきてやがる」
ルルスに乗って戻って来たリコに対してアーサーが放った第一声は、それだった。
「何ですかその言い方。まるで私に戻ってきてもらいたくないような言い方じゃないですか」
リコがムキになってアーサーに言う。
「騒ぐのは後にしろ。何時相手が来るのか分からんのだぞ」
「そ、そうでした。私が逃げ出したというのに気付くのも、時間の問題ですし…」
「そうだ。俺にいい考えがあるぜ。…ちょっと耳かせ」

「…ええ? いくら何でも、そんな変な作戦に相手が引っ掛かるとは思えませんよぉ…」
「ぶつくさ言わない! さっさと準備に取り掛かる!」

      To Be Continued…
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リクト #6☆2005.05/24(火)01:03
第6話    反撃開始

「よーし。じゃあ、改めて俺の作戦を説明しよう」
アーサーが立ち上がって言った。
「さっきの戦闘で、俺達のポケモンも傷付いている。今まともに戦っても、恐らく勝ち目はねぇ」
「確かにその通りだ。回復している暇もあるのかどうかも分からんのだからな」
「そーこーでーだ。罠を仕掛けて、相手を一網打尽にするってワケよぉ」
「罠っていっても…具体的にはどうするんですか?」
確かにそれはもっともな質問である。
「ただ罠を仕掛けるだけじゃ面白くねぇからな。迷路を作るんだよ」
アーサーの目は、これまで以上に輝いている。
作りたくてたまらないような表情だった。
「作るのはいいとして、どうやって作るんですか? 材料なんて無いですよ?」
「迷路自体を作るのは問題ねぇだろ。テメーのルギアなら、何かしらの技をブッ放せば迷路くらい簡単に作れるだろ」
「…私のラーフォスはそのような役割の為のポケモンではないのだが」

「…結局、ラーフォスは迷路を作らされてしまったか」
「まーまー。細かい事は気にしねーで。次はトラップの案を練ろうや」
アーサーは、手帳とペンを出す。
「面白い案があったら、言ってくれや」
「じゃあ、何か押すとタライが降ってくるなんてのはどうです?」
「…相手も馬鹿ではない事は知っているだろう。警戒して押さなかったらどうするのだ」
ウルフの意見はもっともである。興味本位で押す事は確かにあるだろうが、多少は警戒するハズだ。
「なら、警戒していない状況…それこそ足元にその装置を設置した方が成功率は高いだろーぜ」
「そんな装置、作れるんですか?」
「俺を誰だと思ってやがる。天才技マシン職人、アーサー様だぜ。トラップ作るなんて、ちょろい、ちょろい」
アーサーは得意げに言った。

「どうですか? 調子の方は」
様子を見に来たフィラネスが聞いた。
「順調ッスね。そろそろ完成しますよ」
「この人、本当に凄いですよ。発明のエキスパートとも呼べるくらいです」
「…少し、私にも見せてもらえませんか?」

「…で、コレを踏むとタライが落ちてくるんですよ」
アーサーが説明する。
「なるほど…ですが、それだけですか?」
「それだけ、とは?」
アーサーが怪訝そうに聞く。
「何と言いますか、もう少し、こう…ひねった方が面白いかも知れません」
「具体的には?」
「そうですね…それと一緒のタイミング、若しくはそれより若干早めに、左右どちらかからパンチを食らわせる仕掛けというのは…理にかなってませんね」
フィラネスは苦笑した。
「…」
「どうかしましたか?」
「フィラネスさん…案外イタズラが好きなんスねぇ」

さて、所変わって、例の敵アジト。
「さて、そろそろ宝珠を頂きに行くとするか」
ウルフDSは、もうこっちの勝ちだというような表情をして言った。
まぁ、理屈からすればそうだが。先の戦闘で、相手にはかなりのダメージを与えたハズだし、人質も取っている。
自分達には負ける要素は何も無い。そう思っていた。
しかしその余裕は、慌しく飛び込んできたリコDSによって粉々に打ち砕かれる結果となった。
「ちょっと! 捕まえてたあの子、何時の間にか逃げてるわよ!」
「何だと?」
まさかそんなハズは無いと思いながらも、ウルフDSはリコDSの後について牢屋に向かう。
そこは、リコDSの言う通り、既にもぬけの殻だった。
「…どうやって逃げたのだ。この脱出不能の空間から」
「おい。コレを見な」
アーサーDSが床を指差す。
見ると、床を持ち上げた形跡があった。
ウルフDSが床を持ち上げると、人が1人通れるくらいの空間が現れた。
「…ここから逃げ出したという事か」
「あーもう! こんな事ならちゃんと自分達で用意した牢屋に閉じ込めておくんだった!」
「今更言ったとしても後の祭りだ。…後を追う」
本気で悔しがるリコDSに、ウルフDSはさらりと言葉を返した。


「なるほど。敵のアジトがその敵のものでなかったのが幸いしたという事か」
「そんなワケで、私は助かったって事ですよ」
今までリコは、捕まってから脱出するまでの経緯をウルフとアーサーに話していた。
「そうなると、この後我々はどのような行動を取るべきか考えねば」
ウルフは腕組みして言った。
「さっさとズラかればいいじゃねぇか」
「そうはいかん。我々は、まだあの3人組を倒してはいないのだぞ」
「敵なら、多分来ますよ。そろそろ私が逃げ出しているのに気付いてる頃でしょうから」
リコが言うと、
「…では、その前に我々のポケモン達を回復し、相手がやって来たら、再び丁重にもてなしてやるとしよう」
ウルフが言った。
「てー事は、いよいよ『もう1人の自分』との決戦ってワケだな」
アーサーが続ける。
「それなら尚更、準備は万全にしておかないといけませんね。私達は勝たなければいけませんから」
リコが言うと、ウルフとアーサーも軽く頷いた。

             To Be Continued…
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リクト #7☆2005.05/26(木)21:21
第7話     自分自身との戦い1

「折角迷路作ったのによ。無駄になっちまうじゃねぇか」
アーサーが残念がった。
メカニックに自信を持つ彼にとっては、自身の製作したものが無駄になるというのは悲しい事なのであろう。
「まぁまぁ。それなら、この祭壇への侵入者撃退用として残しておけばいいじゃないですか」
「ま、それもそうだけどよ」
…立ち直りが早い人だ。

ウルフDS達が追いついてきたのは、それから少し経ってからだった。
「見つけたぞ、テメー! 勝手に逃げ出しやがって!」
アーサーDSが怒鳴った。
「あら。こっそり逃げ出すのにわざわざ『すみませーん、今から逃げますのでー』なんて言う人なんて居ると思います?」
「居るかもしれねぇじゃねーかよ」
「確実に居ないと思いますよ、私は」
それはそうだ。
「ちょっとアンタ! こんな事してタダで済むと思ってるの?」
「…思ってないって言ったらどうします? バトルで決着つけますか?」
「…当たり前よ」
リコDSの言葉を合図に、2人もボールを手に持った。
「見た所、今アンタは1人きりみたいだし、私達3人でなら一網打尽ね」
「…本当に私が今、1人きりだと思います?」
その言葉を合図に、ウルフとアーサーも登場した。2人共上から登場。中々カッコイイ登場の仕方である。
「これを見ても、まだ一網打尽だって言えます? 『未来』の私?」
「言えそうにないわね。アンタ達、何がしたいワケ?」
「…我々は、今ここで、貴様らと決着を付ける。そう決めた」

「使用ポケモンは、各自2匹。ダブルバトル。先に2回勝った側の勝利とする。依存はあるか」
ウルフDSが言う。どちらも納得したようだ。
「…では、出場の順番を決めてもらおう」
「そっちに合わせますよ。私達は『自分自身』と決着をつけたいんですからね」

「覚悟はいい?」
「…それは私のセリフですよ。負けても文句言わないで下さいね」
「その言葉、そっくりそのままアンタにお返しするわ」
売り言葉に買い言葉。まさしくそうなのかもしれない。
「試合開始!」
アーサーの合図で、2人は同時にボールを投げる。
リコの使用するのは、先程相手を迎え撃った時に使用したジュカインのジュン。そして尾行に使ったチルタリスのルルスである。
相手はどのようなポケモンを使ってるかはまだ分からないので、警戒は怠れない状況だ。
「いくよ! ジェイドにクロウ!」
「えぇ!?」
リコが驚くのも無理は無い。相手もジュカインとチルタリスだった。しかも色違い。
そういえば、アーサーDSもアーサーと同じく、テッカニンとヌケニンを使っていたハズだ。
唯一リコのポケモンと違う所といえば、両方色違いだという事である。
「…驚いてるみたいね。アンタは私で、私はアンタ」
「あの、もうちょっと分かりやすく説明を…」
「まぁよく分かんないだろうけど、今言える事は、こっちのポケモンは、アンタのよりスピードもパワーも上だって事」
詳しい説明を求めたのに、それには全然触れず、逆に腹の立つ事をさらっと言われたので、普段は温厚なリコは腹が立った。
まぁ、そんな事を言われれば、誰でも腹を立てると思うが。
「スキあり! ジェイド、『いやなおと』攻撃!」
『いやなおと』は、相手の防御力を下げる技。それと同時に、その音でトレーナーの判断をも鈍らせる役割も持つ。
この場合、リコDSは、相手の防御力を下げるためではなく、相手トレーナーの判断を鈍らせるために使用したのである。
「その間にクロウは『りゅうのいぶき』で攻撃!」
ジェイドの『いやなおと』で相手の動きを封じ、クロウの『りゅうのいぶき』で少しずつダメージを与えていく。
時間は掛かるが、確実に相手を苦しめる戦い方だ。
『くそっ…おい、早く指示を!』
「く…あ、ああっ…!」
『駄目だ。相手の技のせいでリコには俺の言葉が聞こえてない! それ以前に、音に苦しんでいて指示どころじゃないらしい』
『どうします!? 指示が無いと私達は何も出来ませんよ!?』
『とりあえず今は耐える。まずはこの音を何とかしなければ』
「無理無理。アンタ達もこの技を受けて、普通じゃいられないでしょ?」
確かにその通りだ。指示を貰おうとしても、この音のせいで貰えず、仮に指示を受けたとしても、この音に惑わされるだろう。
『な、何故相手は平気でいられるんだっ!』
それを感じ取ったのか、リコDSは自分の耳を見せた。
『み、耳栓!?』
つまり、相手は平気、苦しんでいるのはリコ達だけという事になる。

「おい! 何とかしないとマジでヤバイぞ!」
アーサーが怒鳴る。
「無駄だ。今のヤツには、ポケモンの声どころか、我々の声も届いていないだろう」
「ちっ…何か打つ手はねーのかよ!」

            To Be Continued…
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リクト #8☆2005.06/01(水)00:04
第8話   自分自身との戦い2

「さあ。アンタ達のご主人があれじゃ、戦えないでしょ?」
現在の戦況は、完全にリコDSに傾いている。
それもそのハズ。今のリコは、相手のジェイドの『いやなおと』で動きを封じられているのだ。
(方向が…分からない! ジュン! ルルス! どこ!?)
『ちっ。どうやらリコは俺達の位置が把握出来ていないようだ』
『それじゃ私達には勝ち目無いじゃないですか!」
この状況では、完全にジュンとルルスはお手上げである。
「う…くうっ…」
『こうしている間にも、相手のチルタリスの攻撃が…』
『何とかして、この音を止められれば…』
その言葉に、ジュンの仲にある策が。
――音を止める…そうか!
『ルルス。下がれ』
『えっ? 一体何を?』
『説明している暇は無い。とにかく下がれ!』
ジュンに怒鳴られ、ルルスは言われた通りに下がる。
『近づけない。尚且つ指示も貰えない。この状況を打開するには…相手の行動を『一瞬でも』封じ込める!』
ジュンはそのまま、腕を大きく振った。
「無駄なあがきね。そんな事をしても…」
しかし、ほんの一瞬、相手の『いやなおと』が止まった。相手のジェイドが仰け反ったのだ。
リーフブレードで風を起こしたのである。
『今だ! リコ、指示を!』
「了解! ジュン! お返しに『いやなおと』!」
先程リコDSが使った戦法を、今度はリコがそのまま返す。
「さあ。今まで私が受けた苦しみ、今度はあなたに味わってもらいますよ!」

「おー。形勢逆転したじゃねぇか」
アーサーが言った。
「今はそうだが、また何時返されるかは分からん。私の見た限り相手のポケモンは、我々よりパワーもスピードも上のようだ」
「気は抜けない…っつー事か」

――このままいけば、時間は掛かってもこっちの勝ちにもっていける!
…その油断はバトル中においては命取りである。
そして、相手の体力が残り僅かになったその時だった。
いきなりジュンとルルスが同時に倒れたのだ。
間を置かず、相手のジェイドとクロウも倒れる。
「これはまさか…『ほろびのうた』!?」
「そう。このままいったらこっちが負けそうだったし、アンタに勝たせたくないから、不本意だけど引き分けを狙ったワケ」
「でも、公式ルールでは『ほろびのうた』を使ったら、使った側が負けに…」
リコが言うが、
「…いや、細かなルールは何も決めていない。…この場合は、引き分けになる」
ウルフが言った。
「…という事で、この試合…引き分け!」
「もう少しだったのに…」
「貴様、最後で気を抜いたな。その油断が勝ちを逃す事もあるという事を忘れるな」

「次は俺だ。そっちも出せよ。俺のニセモノをよ」
アーサーが言う。
「ンだとテメー。ニセモノはそっちだろーが!」
「やんのか、コラ」
これではポケモンバトルではなく、ただのケンカになってしまう。
「あ、あのー、バトルは…」
リコが間に入ろうとするが、
「うっせー! 黙ってろ!」
見事に怒鳴られてしまった。
「こうなったら、俺達はポケモン同士じゃなくてトレーナー同士で決着付けようじゃねぇか」
「あーっ、ケンカは駄目ですよぉ!」
「その決着方法は…マラソンだっ!」
「マ…マラソン?」
目を点にして驚くリコ。この状況にも関わらず、ウルフは普段の表情のまま。
「トレーナーには体力も重要になってくる。これは体力勝負だ!」
2人のアーサーは完全に燃えているらしい。

「位置に付いて…よーい…スタート!」
止める間もなく、勝手にスタートしていったアーサーとアーサーDS。
唖然とした様子で見送る事しか出来ない、2人のウルフと2人のリコ。
さて、この勝負、どうなる事やら…

        To Be Continued…
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リクト #9☆2005.06/02(木)02:12
第9話    体力勝負! 危険?なマラソン対決

「でも、何でいきなりマラソン対決になっちゃうんでしょうかね」
リコが言った。確かにその場のノリでそうなったとはいえ、マラソン対決というのは異例だ。
「…こうなると思って、超危険な障害物を2ヶ所仕掛けておいた」
「…はぁ!?」
ウルフの発言に驚いたリコ、リコDS、そしてウルフDS。
「この様なネタ対決は、私のネタ魂を強く揺るがすのだ」
こんな一面を持つのが、ウルフなのである。
つか、ネタ魂って何だネタ魂って。

そのころ、2人のアーサーはお互い全力、尚且つ横並び状態で疾走していた。
2人の行く先に、何かが書いてある立て札が見える。
それには、こう書いてあった。

『マラソンコース この先右折せよ byウルフ』

「…ってコースあるのかよ!」
「変な所で用意が周到じゃねぇか」
2人はそのまま我武者羅に走っていく。
しかし2人は、その少し先の立て札は見過ごしてしまっていた。
それには、こう書いてあった。

『この先、恐怖の障害物ゾーン』


2人のアーサーの見据える先。
それは、約数キロ先にうっすらと見えているゴール地点の巨木。
もちろん全力疾走中。足元は見ていない。

ベチャッ!

「な、なんだぁ!?」
「おい、動けねぇぞ!」
すると、左前方にまたも立て札が。
『第一関門。恐怖のゴキブリホイホイエリア 設置者・ウルフ』
「…あのヤロー…」
「オイ! テメーの連れはどんな神経してやがんだ!」
「知るか、ンな事!」
確かに、ウルフは普段は無表情だし、心の中はなかなか読めない。
「こんなバカバカしい仕掛け…っ!」
何という執念だろう。2人同時に抜け出した。

さて。気を取り直して走り続ける2人。
巨木は既に目と鼻の先の場所。
また障害物エリアに出て来た。
「…ったく。次はどんな仕掛けを用意してやがんだ」
『第二関門。恐怖の弓矢乱れ撃ちエリア 設置者・ウルフ』
「…試しに、石投げてみるか」
そう言ってアーサーは、落ちていた石を投げる。
すると、無数の矢がすっ飛び、硬い石を粉々に砕いてしまった。
「…普通に通ると、間違いなく命がねぇぞ、こりゃ」
アーサーDSが言った。軍隊でよく見る匍匐(ほふく)前進をしようとしても、矢の設置位置は上から下までと抜け目が無い。
しかも、撃った後に矢の補充を瞬時に済ませるらしく、連続で打ち出す仕組みにもなっていた。
「よし。直進するのが駄目なら迂回すれば…」
アーサーDSがコースを外れようとすると、何かにぶつかった。
どうやら、見えない壁に阻まれているようだった。
「くそー。このままじゃ決着がつかねぇ」
「…何ボサッとしてんだ?」
アーサーDSが声のする方を見ると、そこにはアーサーの姿が!
「テ、テメー、どうやって!?」
「俺のテッカニン、ウツセミは『あなをほる』を覚えてる。地上が駄目なら、地下からってな。おっ先に〜」
アーサーは、もうゴールが近いので悠々と歩く。
「待て! 待てって! 待ちやがれコラ!」
「待たねぇよ。…ほい。俺の勝ち、っと」
アーサーは、ゴールになっている巨木を平手で軽く1回叩いた。

『あ、勝負…付いたみたい…です』
ウルフのサーナイト、サティアが呟いた。
「で、結果は?」
『勝ったのは…アーサーさんです』
「まったく。ポケモンで戦ってればこっちが勝ってたのに」
リコDSは呆れている。
「…さて、形勢はこちらに有利となったが…まだやる気か」
「こうなっては、我々は負けるか引き分けにしかならんな。ここは未来に引き下がるとするか」
ウルフDSが言う。
「逃がさん…!」
ウルフが止めようとするが、3人は消えていく。
「…逃げられたか」
「大変な事になりましたよ。おそらく未来にも、リクやナツキのDSが居るハズです。それに私達のDSが加わったら…」
「私が察するに、光と闇、両方の力を持つ…リクDSが大将だろう」
「あれ? でも、影の存在のDSでも、光の力って使えるものなんでしょうか?」
「いくら影の存在でも、リクと同じ…いや、それ以上の力を持っているものと考えた方がいい」
「それじゃ、下手をすると…」
リコはそこで言葉を切る。
「奴は未来の自分自身によって…倒される」

           To Be Continued…
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リクト #10☆2005.06/04(土)11:19
第10話    留守を預かるポケモン

「そんなワケで、私達のDSは、ウルフさんとの対決をせずして、逃げていきました…」
リコがフィラネスに説明する。
「そうですか…たった今、過去の修復が確認されましたが、そういう事だったのですね」
「だが、敵を逃がしたのは失敗だったなー」
先程戻って来たアーサーが言った。
「放っておけ。リク達が何とかするであろう」
「でも、いくらリクが光と闇の両方の力を持っているからといって、複数のDS相手では…」
「…それでも何とかするのが、奴だ」

「んじゃま、俺は元々この世界の奴だし、ここに残るわ」
「はい。色々お世話になりました」
「いやいや。俺は別に礼を言われるような事はしてねぇよ」
アーサーは首を振って言った。
「でも、あなたがいなかったら勝てなかったかも知れません」
「…ま、テメーらがそう思ってくれたなら、俺も力を貸した甲斐があったってモンか」
「そろそろいいですか? 元の世界に戻る入口を開きますよ」
フィラネスが言った。
「あ、ハイ」

「ここから、あなた達の世界に戻れます。…お気をつけて」
「…世話になった」
「それでは…失礼します」

「…戻って…きましたね」
懐かしそうにリコが言った。
「さて、早速で悪いが、私は旅に戻らせてもらおう」
「え? リク達が戻るまで待たないんですか?」
「私は奴に協力しようとして協力した覚えは無い。自分の役目を果たした以上、ここに長居は無用」
ウルフは、そのまま歩いていく。一度振り返り、言った。
「…貴様はどうするのだ」
「私は、もう少しここに残ります。状況をしっかりと報告するのが、ジャーナリストの務めですから」

「…とは言ったものの、暇ですね」
確かにそこにはリコ以外誰も居ないし、情報処理も既に終了してしまっている。
「リクの家に言っても、誰も居そうも無いですしねぇ…」
そう言いながらも、他にする事が何もないので、何時の間にか行先をリクの家に決めて歩いていた。
リクの家は、ここからそう遠くない町にある。
「インターホンを押しても、誰も出るハズないですけど、一応…」
リクの家に着いたリコは、インターホンを押す。
『はい。どちら様ですか?』
以外にも声が聞こえて来た。
「え? 誰か居るんですか?」
『あの、失礼ですけど、どちら様でしょうか』
やけに礼儀正しい口調だった。
「えっと…リコ…って言っても分からないですよね」
『あ、この前リクを取材した事がある、あの…』
「ところで、あなたは?」
『リクの留守を預かっています。とにかく、どうぞ』

「あなたは確か…あの時居た、ラティオスですよね?」
『はい。覚えててくれたんですね』
ラティオスは頷いた。
「でも、何であなたがここに? リクと一緒に行ったんじゃないんですか?」
『リクは、家をある期間留守にする時は、必ず最低2匹は留守番のポケモンを残していくんです。防犯のために』
「じゃあ、今あなたの他に居るのは?」
『俺です。ダンナの留守は、俺達がしっかり守っていく所存ですぜ』
リザードンだった。やけに古風な話し方をする。
『あ、今お茶入れますね』
随分マジメなラティオスである。リクよりマジメなのは言うまでもなさそうだ。
『まぁホント言うと、俺達も戦いたかったんですがね。リクはあのダブルラブラブカップルを連れてくって聞かなかったんですよ』
『まぁ、妹とミュウツーさんは、そんな風には見えないですけどね』
台所の方からラティオスの声が。
「じゃあ、リクが連れて行ったのは、バシャーモにキュウコン、それにミュウツーとラティアス…というワケですね?」
『まぁそういう事になりますね。ただ、リクは最初からミュウツーだけは絶対連れてくと決めてたらしいですぜ』
『リクとミュウツーさんは、一番付き合いが長いですから、頼りにしているんでしょう。…はい。お茶をどうぞ』
お茶を持って来たラティオスが言った。
「あ、どうも」
本当に礼儀がしっかりしているポケモンである。
『リクが行ってから、2日経ってますけど、まだ戻ってはきてません。…どこかで足止めを食らっているんでしょうかね…』
ラティオスは心配そうに言った。
『心配しなさんな、ラティよぉ。ダンナはそう簡単にやられる奴じゃねぇって』
「そうですね。ちゃんとお目付け役…じゃなくて、味方も付いているんですし」

              To Be Continued…
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リクト #11☆2005.06/08(水)00:04
第11話     初めての未来

さて、ここで時間を戻してみよう。
ウルフ達が過去に向かった少し後までさかのぼる。

「…ここが未来か。オレ達の時代とは随分違うな。たった3年で、こんなにも変わるのか…」
着いて早々、リクが言った。
「当たり前じゃない。なんたって未来なんだから。未来のあたしって、どんななのかなぁ…」
「…ナツキ。遊びに来たワケじゃないんだぞ」
リクは呆れて言った。
「分かってる。分かってはいるんだけど…ちょっとした好奇心が…」
「…あのな。未来といったって、仮にもここは影世界なんだぞ。オレやアンタのニセモノが居たって、おかしくない場所なんだぞ」
この調子で行くと、自分はナツキに振り回されそうだ。
リクは、早くも不安になってきたようだ。

「ところで、ずっと気になってたんだけどさ、背中に背負ってるのって、それ、剣?」
「まぁな。オレ専用の特注品だ」
リクにとっては、自慢の剣らしい。
「合戦とかやってる時代じゃないんだし、別に剣なんて持ってなくったっていいんじゃない?」
「この剣はオレの力も凝縮されてんだよ。だから手放すワケにはいかねーんだ」
「随分上物みたいだから、売ったらお金になるかもなーとか思ったのに」
「…斬られたいのか?」
リクにはそれが冗談に聞こえなかったらしい。
「あの、すみません。ちょっと頼まれてくれませんか?」
リク達が話し掛けられたのは、それからすぐの事だった。
情報を求めて町を探索していたのだが、呼び止められて足を止める。
「オレに何か用か」
「あの、手伝ってほしい事があるんです」
「…急いでいる。他をあたってくれ」
リクはさっさと行こうとしたが、
「どうせ暇なんでしょ?」
「あだだっ! 襟を引っ張るな!」
ナツキに後ろから襟を引っ張られたので、前に進むと自分の首を絞めてしまう事になる。
つまり、話を聞かずにはいられないという事だ。

「なるほど。アンタはセツナといって、この町に住んでると」
「はい」
影の世界といっても、まともな人はまともらしい。
「で、最近、未来で流行ってるバーチャルポケモンバトルで、凄まじい腕を振るってる奴がいる、と」
「はい」
「で、オレにソイツを倒して下さい、と」
「はい」
珍しくリクは笑顔である。しかし、普通の笑顔ではない。完全に作り笑いだ。
「断る」
リクは笑顔のままで言った。
すると、いきなりナツキはリクを引っ張り、
「ちょっと! ひょっとしたら、あなたが探してる例の敵かも知れないじゃない!」
「そんな都合よくいくか。大体アンタはいっつも強引で…」
「…あのー、どうかされました?」
セツナは不思議そうに聞いた。
「セツナ、だったよね。安心して。そんな奴、この人がやっつけちゃってくれるから」
「オイ、勝手に決めるな!」

「あたしはナツキ。で、こっちが…」
「…リクだ」
結局ナツキによって無理矢理セツナの頼みを引き受けさせられ、リク達はバーチャルバトルの会場に向かっていた。
「で、どんな奴なんだ、ソイツは」
嫌々やらされる事になっているリクは、不服ながらもセツナに相手の特徴を聞いた。
「えーと、ボクも話にしか聞いていないんですけど、ゴーグル着けてて、マントみたいなの羽織っているんです。男の人みたいですよ」
「なんだそりゃ。スーパーマンじゃあるまいし」
リクが呆れて言った。

「で、ここがその会場か」
リクは辺りを見回した。
「セツナ! またアイツが戦ってるぞ!」
「もうこれで50人抜きだ!」
「50人も…!?」
セツナは心底驚いている様子。
「聞いた通りです。では、リクさん、お願いします!」
「え、オレ!?」
「他に誰がいるって言うんですか! ほら!」
セツナは、リクを無理矢理押して対戦台に向かわせる。
リクはバトルは嫌いではない。ただ、面倒な事が嫌いなだけである。
今回の場合、無理矢理やらされるので面倒だと感じているのだろう。

相手と対峙したリクは、やっぱり面倒そうだ。
「…相変わらず面倒臭そうな顔をしているな。…リク」
「オレの名を…知っている!? 何者だ!」
「見ればすぐ分かる。…ボクの事は」
それだけ言うと、その人物はゴーグルを外した。
その人物を見て、リクは言葉を失った。
「お前は、確か…」
そして、その人物の名前を呼ぶ。
「何故お前がここに居るんだ。…グランッ!」

             To Be Continued…
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リクト #12☆2005.06/13(月)23:50
第12話   この世界に来た理由

「アンタはまさか…オレと同じ時代のグラン…何故ここに!」
「それはボクの方が聞きたい。お前が何故ここに居るんだ」
グランに言われ、リクは返答に戸惑った。
暫く前に会った時と、服の見た目が変わっている。
前に会った時は、全体的に赤が多かったが、今の彼は暗めの服になっている。
なので、大人っぽさが含まれているように見えた。
「それより、何でアンタがここに居るんだよ」
「…1週間前、フィーユの行方が分からなくなった。フーディンの念で、未来の影世界に居るという事までは突き止めたんだが…」
「じゃあ、ここでいつもバトルをしていたのは…?」
セツナが聞くと、
「対戦相手の中に、フィーユ本人、若しくは何か情報を持っている人物が居るかも知れないと思って、このイベントに参加していた」
グランはそこで言葉を切り、
「だけど、まだ決定的な情報は掴めてない。…そうだ。お前たち、何か知らないか?」
「いや。オレ達はついさっき来たばかりだから何も知らない」
「ボクも、そのような話は…聞いてないです」
「そうか。…ところでリク。お前がここに来た目的は何だ?」
グランが聞くと、
「…オレの目的…」
「あれ? 影の自分を倒すって事じゃなかったの?」
ナツキが聞いた。
「…倒して、それで何になるんだろう」
「え?」
「自分の影を断ち切って、それで…何か得るモノってあるのか?」
「それは…」
ナツキは何も言えない。
「…しばらく、1人にしてくれ。場合によっては、オレはこの戦いを降りるかも知れない」
「ちょ、ちょっと! 最初に言い出したのはあなたじゃない!」
「…何とでも言え」
それだけ言うと、リクは3人の前から姿を消した。

「…まったく、しょうがない奴だな」
グランが呆れて言った。
「だけどリクさん、いきなりどうしたんでしょう…」
「さて、ボクは自分の行動に戻るけど、キミらはどうするんだ?」
「どうします? ナツキさん」
セツナが聞く。
「ここに居たって、何か情報を得られるかどうかも分からないし、かと言ってじっとしているワケにもいかない…か」
「ナツキっていうのか。じゃあどうする。暫く一緒に行動するか?」
「そうね。もしかしたら、あたし達が欲しがってる情報も、あなたが欲しがってる情報も得られるかも知れないし」
「でも、リクさんはどうします?」
「放っておけば、そのうち戻ってくるでしょ。そういう人だし」
「ところで、キミは?」
「あ、ボクはセツナっていいます」

「何なんだろうな。…オレの本当の目的って」
市街地から離れた場所で、リクは1人呟いた。
「オレが戦うのは…何の為なんだ。…誰の為なんだっ…」
その時、リクの頭に1つの疑問が浮かんだ。
――何故オレは、ここに居るんだ?
分からない。完全に目的を失ってしまった。
「…っ!」
また、あの発作だ。
「前より…ひどくなっているような気が…する…」

「で、ここは何だ?」
街で一番高い建物を見上げて、グランが言った。
「ここは…街の人の立入を禁じているらしいんです。なので、中で何をしているのかは誰も知りません」
セツナが説明する。
「それは…ちょっと怪しいわね」
「ちょっとどころじゃない。物凄く怪しい」
「確かに『ここは怪しい研究とかしてますよー』って外見ですからね」
「で、入れるのか?」
グランが聞いた。さっき入れないって言われたばかりなのに。
「正確には、エントランスまでは入れます。待ち合わせ場所として開放してますから。ですが、その先に入ろうとすると、即刻追い出されます」
「よし。それなら何とかなる」
グランが言った。
「何とかなるって…?」
「普通に通れないなら…強行突破さ」

さて、グランは自信満々で。ナツキとセツナは完全に不安そうにビルの中に入った。
先頭を行くグランは、悠々と進んでいく。
案の定、警備員達に取り囲まれた。
「この先は立入禁止だ」
「じゃ、その理由を聞かせてもらおうか?」
「話す必要など…ない!」
やはり、戦闘は避けられないらしい。
「ま、仕方ないか。ボクとしても、最初からそのつもりだったし」
グランは、モンスターボールを手に取った。
「ここはボクに任せてもらおう。先に行け!」

ナツキとセツナを見送り、ただ1人残されたグラン。
「…とは言ったものの、流石にこの人数相手にするのは、ちょっとキツいか…」
そして、グランの思考は、満場一致で1つの結論を出した。左右の手には、各3個ずつモンスターボールが。
「まぁいいや。…みんなまとめてかかってきな!」

「グランさん、大丈夫でしょうかね…」
セツナが心配そうに言った。ナツキは、
「…あの人が、そう簡単にやられる人じゃないって事は気配で分かるわ。大丈夫でしょ」
そして続ける。
「それよりも、まずはこのビルの機能を停止させないと。どこかにコントロールルームがあるハズよ」
「でも、このビル大きいですよ。どうやって探すつもりですか?」
「どこかに、このビルの見取り図でもあればいいんだけど…」
「あの。これ、見取り図っていうんじゃないですか?」
セツナが指差したものは、誰がどう見てもこのビルの見取り図だった。
「かなり複雑な作りになってるわね…覚えられない」
「…えっと、暗記完了っと」
「え? まさかコレ、もう全部覚えたの!?」
「よく、記憶力はいいって言われてるんですよ。さ、行きましょう」

         To Be Continued…
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リクト #13☆2005.06/18(土)15:50
第13話   戦う意味

「オレの戦う意味…なんなんだ…?」
先程からリクは、その事しか考えていなかった。
『…コォン?』
手持ちのキュウコンが心配そうに見ている。
(…キュウコンの言葉が分からない…戦う意味を失うと、こうなるのか…)
『戦う意味を失ったお前は、もはや魂の抜けた、人の形をした塊だな』
ミュウツーはテレパシーで話しているので、分からない事は無い。恐らくラティアスも同様だろう。
「…言ってろ」
リクは、ミュウツーにそう返した。

「ここですね。制御室」
その頃、ナツキとセツナは制御室に到着していた。
「凄い…一度も迷わなかったわ」
ナツキはセツナの記憶力に驚き、そして感心した。
「制御装置は…あ、あれね!」
ナツキとセツナは、制御装置に駆け寄る。
「うっわー…これはかなり複雑ね」
「ボクは、こういうのはサッパリです…」
「マズイわね…あたし達のどっちも操作出来ないか…」
ナツキとセツナは困り果てる。
「…その装置に手を出させるワケにはいかない」
声のする方に振り向く。
「…え、リ、リクさん!?」
「待って! …あれはリクじゃない」
「ほう。俺が『リクであってリクではない』と、即座に見抜くとは。…何者だ」
「ニセモノに答える名前なんて、あいにくあたしは持ち合わせてないわ。…リクDSね?」
ナツキが聞くと、聞かれた相手はフッと笑い、
「そこまで気付いているとはな。…タダ者ではないという事か」
「あたし達は、ここの装置を解除させてもらうわ。…邪魔するようなら…」
「…この俺が、お前達に装置を解除させるだと? …笑止!」
リクDSは、突然ナツキとセツナに突っ込んで来た。
(ポケモンを…使わない!?)
ナツキとセツナはその思考に気を取られ、反応が一瞬遅れた。
「バカめ! 隙だらけだ!」
リクDSは、それぞれの腕でナツキとセツナの腕を同時に掴み、後方に投げ飛ばした。
「きゃあ!」
「うわぁ!」
これにより、装置側にリクDSが。一気に形勢逆転されてしまった。
「つ、強い…!」
上手く着地したナツキが呟く。
「普段のリクさんって、こんな強いんですか!?」
「…それは無いわね」
…リクが聞いたら怒り狂いそうである。
「2人とも無事か!?」
「グランさん! 無事だったんですね!」
「当たり前だ。あんな下っ端なんかに、ボクが負けるとでも?」
グランはそういうと、リクDSに視線をやった。
「…アイツを…何処に閉じ込めているんだ」
「それは教えられんな。あの小娘が持つ『藍色の宝珠』は、俺の計画に必要なのだからな」
「…あの宝珠狙いか」
グランが呟くのと同時に、リクDSはモンスターボールを取った。戦闘態勢に入る。
「あの装置は、ボクが解除する。…キミ達は、相手の足止めを頼む」
「でも、装置に近づけないこの状況、一体どうするのよ?」
「…オイ。2人のうちどっちでもいい。『ふきとばし』を覚えたポケモンを持っていないか」
突然言われ、2人は呆然。
「それなら、あたしが…ピジョットのゼットを」
「よし。なら何とかなる。ボクが合図をしたら、ボールから出して技を使うんだ。…タイミングをしくじるな」
「どうするつもりなんですか?」
「答えてる時間は無い。とにかく、やるぞ!」

「フーディン! 『テレポート』だ!」
普通、テレポートは戦闘を離脱する時に使う技である。
「な、なんだと!?」
リクDSが驚くのも無理はない。いきなり自身の背後に3人が現れたのだから。
「よし、今だ!」
「ゼット! 『ふきとばし』よ!」
タイミングは絶妙だった。リクDSは吹き飛ばされ、またもや位置関係が変わった。
「凄い! またボク達が装置側に行けましたよ!」
(この人…かなり戦い慣れてる…!)
グランの機転に驚きつつも、油断して先程のように投げ飛ばされてはかなわない。
「よし。解除を始める。その間の守備は任せた」
そう言うとグランは、装置の解除を開始した。
「さて…と。解除するまでは、手出しはさせないわよ」
「さあ、覚悟してください!」
「…やれやれ。仕方ない奴らだ。…まぁいい。相手をしてやる」
リクDSは、ボールを手に取る。但し、2個だけ。
「いけ、デオキシス!」
「…デオキシスだと!?」
グランは突然振り向く。
「気をつけろ! ソイツは戦況に応じて姿を変えるポケモンだ!」
「…ところで、なんでそんな事知ってるんですか?」
「前に聞いたんだよ! ボクの仲間…フィーユからな!」
「戦況に応じて…姿を変えるポケモン、か…」
ナツキが呟く。
「驚くのはまだ早い。…いけ、ルカリオ!」
「…!?」
今度は、今までに見た事もないポケモンが現れた。新種だろうか?
「あ、あれは…?」
「まさか、新種…?」
「…さあ。コイツらに勝てるか?」

           To Be Continued…
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リクト #14☆2005.06/21(火)19:13
第14話  未知との戦い

「デオキシスと…ルカリオ…」
「どっちも未知のポケモンですね…どう戦います?」
呟くナツキにセツナが尋ねる。
「まずは、相手の能力を見極めるのが先決ね。まずは守備に回るわよ」
「…わかりました」

「ライカ! アイリス! 任せたわ!」
「ジェイル! カヅキ! 頼む!」
ナツキが使うのは、ライチュウとキレイハナ。そしてセツナはテッポウオとフライゴン。
「…恐れるに足らない。…やれ」
リクDSの言葉を合図に、デオキシスはライカに。ルカリオはジェイルに攻撃を仕掛ける。
すると、攻撃を受けた2匹は一撃で倒れてしまった。
「ライカ!」
「ジェイル!」
いきなりポケモンを倒され、2人はただ驚くばかり。
「オイ、何をしてる!」
グランの方も、解除に手間取っているらしく、言葉に苛立ちが窺える。
「駄目です、グランさん! 相手が強すぎます! 押し切られるのは時間の問題です!」
「ちっ。ボクの方は解析中で動けない。相手は強すぎる。…どう対処すれば…」
「とりあえず、相手の弱点を突いて攻撃しないと駄目ね。…出て来て、アッシュ!」
「じゃあ、ボクも! ユウ!」
ナツキは色違いのサンドパン。セツナはミロカロス。
「悪いけど、ルカリオのタイプはボクには分からない。…ただ、デオキシスはエスパータイプだという事は確実だ!」
グランの言葉にナツキは頷き、
「分かったわ。じゃあ先に、物理攻撃に弱いエスパーを叩く。それでいい?」
「分かりました!」

「…いい? 時間差で『じしん』攻撃をするわよ」
「ハイ。…タイミングが重要ですね」
「だけど、無理だけはするな。ここは建物の中だからな」
後ろからグランが口を挟む。
「分かってる。…さあ、アッシュ! 『じしん』攻撃!」
『おうよ、食らいな!』
建物の中にも関わらず、アッシュは強烈な攻撃をする。無理はするなと言われているのに。
「アッシュ! フライゴンの技に備えて!」
『おっしゃ! ディフェンス開始だ!』
そして、続いてやってくるフライゴンの攻撃に備えた。
「よし。カヅキ、『じしん』だ!」
続いて発生するフライゴンの『じしん』攻撃。
他のポケモン達には防御を指示してあるので、ダメージは最小限に抑えられるハズである。
「…ちいっ。フォルムチェンジが遅れたか」
「これで、かなりのダメージを与えられたハズね」
「ハイ。もう一息で倒せそうです」
「…それはどうかな。『じこさいせい』だ」
途端に、デオキシスの傷は、あっという間に回復してしまった。
「…先程『リフレクター』を使用しておいた。…お前達の攻撃は、無駄だ」
攻撃しても回復される。しかも相手のパワーは底知れぬもの。
どう考えても、今のままでは勝てない。
『ア、アイリスのアネさん…マズイですぜ』
『慌てないで下さい。…まだ何か突破口があるハズです』
「で、でもアイリス。この状況を打開出来るような策なんてあるワケ…」
そこまで言って、ナツキはある事を思い出した。
「…そうだ、リクがいたわ! 目には目を。リクにはリクよ!」
…いろんな意味でツッコミを入れられそうだ。
「でも今のリクさんは、とても戦えるような状態じゃないですよ!」
「それならあたしが『説得』するまでよ」
「…駄目だったら?」
「その時は、その時よ」

「…ゼット。隙を見て逃げ出せる?」
『…私のスピードを甘く見てもらっては困る』
ゼットは短く返す。
「セツナ。悪いけど、暫くアッシュとアイリスを頼むわ」
「…分かりました」

「…今です、ナツキさん!」
「ゼット、ゴー!」
ナツキの声を合図に、ゼットはナツキと共に猛スピードで部屋を出る。
「…ちっ。逃げられたか」
『追いますか、マスター?』
「…放っておけ」
ルカリオの問いに、リクDSはそう答えた。

          To Be Continued…
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リクト #15☆2005.06/23(木)22:03
第15話   理由なんて…

「オッケー…何とか建物の外に出られた…」
コントロールルームから逃げ出したはいいが、エントランスで警備員達に足止めを食らったのだ。
アッシュとアイリスはコントロールルームに残したまま。ライカは先程のバトルで戦闘不能になっていたため、まともに戦えるのはゼットのみ。
しかも、そのゼットで脱出するので、大それた戦いは出来ない。
なのでひたすら逃げに徹したのだが、ゼットもナツキ自身も相手のポケモンの攻撃でダメージを受けてしまっていた。
「…ゼットはもう限界ね」
ナツキはゼットをボールに戻し、小さく溜め息をついた。
「さてと。探すのは骨が折れるわね、これは」

その頃の街外れ。
「…っ!」
トレーニングの為に、ボールを投げようとするリクの姿があった。
「駄目だ。…手に力が入らない」
投げたいのに投げられない。トレーナーとして、こんなに致命的な事はないだろう。
「やっぱりオレは…どうかしちまったんだな。…ははっ」
多少自嘲気味に笑った。
「…仕方ない。剣の訓練でもするか」
リクは、剣の柄に手をかけ、剣を抜こうとした。
しかし、ボールを持つ時と同じく、柄を持つ手が震え、抜く事が出来ない。
「剣まで…抜けなくなってるのか」

さて、その頃のコントロールルーム。
「グ、グランさん、まだですか!?」
セツナが焦っている。
「ボクだって急いでいる! だけどシステムがかなり複雑で難しいんだ!」
「このシステムは、そう簡単に解除出来るようなモンじゃない。やれるものならやってみな」
「くっ! 馬鹿にするな!」
「…リクさんが来るか、グランさんが装置を解除するまで、何とか持ちこたえないと…」
しかし、現在対峙している相手には、おそらく勝つ事は難しいという事をセツナは何となくだが察していた。
しかし、ここで持ちこたえなければ、もう打つ手は無い。
「ボクが…ボクがやらないと…!」

「全く…こんな時に何処うろついてるのよ」
ナツキはまだリクを捜索していた。
この街はそれなりに大きく、また人の出入りもかなり多いので、探すのは至難の技である。
空から探したくても、現在ゼットはとても飛べる状態ではない。
「…あれ?」
すると、ナツキの視線の先に、見覚えのある人物が。
普段から面倒臭そうな表情をさらに面倒臭そうにして、棒立ちしている人物。
そしてその表情には、ある種の絶望が窺えた。
「…や、やっと見つけた…」
「オレに…何か用か」
普段と大して変わらない口調でリクが聞くので、ナツキは腹が立った。
「『何か用か』じゃないでしょ!? こっちは大変だっていうのに!」
「つまりどういう事だ。状況が分からない」
「はぁ…」

「そういうワケで、今こっちはピンチなの。分かった?」
「まぁ、一応は」
リクは、分かったような分からないような表情で言った。
「で、オレに何をしろと」
「だから、その…助けて!」
「…無理だな」
リクはあっさり言った。
「ちょっと! どういう事よ!?」
「…見ろよ、この有様…」
リクは、先程街外れでしていたように、ボールを手に取る。
「…どうしたのよ。震えてるじゃない!」
続いて、剣の柄にも手を伸ばす。
柄は握っているのだが、手が震えていて剣が抜けない。
「…これが、無理だと言った理由(わけ)だ」
「ポケモンが使えず、剣も使えなくなったというの…?」
「簡単に要約すると、そうなる。…おそらく、戦う理由を失ったから…かな。…戦いたいんだけどさ」
「どっちでもいいから、とにかく来て!」
ナツキはリクの腕を掴み、強引に連れていこうとする。
「離せ! オレはもうこれ以上自分を傷付けたくな…」
「バカ!」
いきなり平手で叩かれた。
「…! ゴメン、痛かった!?」
反射的にとった行動だったので、即座に謝る。
しかし、リクは答えない。
「…ありがとよ」
「えっ?」
平手で殴られたのに、礼を言われるとは予想していなかったので、ナツキは呆気に取られていた。
「アンタに叩かれて、目ェ覚めたぜ。ようやく分かった。戦うのに理由なんていらねー。…オレは戦いたいから戦う!」
リクは剣に手を伸ばす。今度は剣は普通に抜けた。
「…この感覚、随分久しぶりのような気がする」
続いて今度は、モンスターボールを4つ投げる。
出てきたのは、バシャーモとキュウコン。そしてミュウツーとラティアス。
炎とエスパーのチームである。
『…ようやく元に戻ったか』
『やりましたね、ご主人様』
バシャーモは多少皮肉気味に。キュウコンは普段と変わらぬ口調で言う。
「…分かる。お前らの言ってる事が分かる!」
どうやら、現在のリクのコンディションは絶好調のようだ。
『では、行動に移すのだな』
『…行くんですね』
「ああ。やってやろうじゃねーか」
リクは、ポケモン達の前で決意表明し、ポケモン達をボールに戻す。そして、剣を背中の鞘に。
「ナツキ!」
「えっ?」
いきなり呼ばれて反応が少し遅れたが、返事を返す。
「その例の建物に案内しろ。…オレのニセモノは、このオレがとっちめてやる!」

         To Be Continued…
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リクト #16☆2005.06/29(水)00:26
第16話  復活

「グランさん、もう耐えられません!」
セツナが叫ぶ。かなり持たせてはきたが、そろそろ限界が近づいてきている。
リクを探しに出て行ったナツキもまだ戻ってきていない。
「…」

「ここが、そのビルよ」
「はー。やたらと大きいんだな」
リクはビルを見上げて言った。
「とにかく、あの2人に合流しないと」
「…待て。アイツ…グランの言葉を思い出せ」
「何て言ってたっけ?」
何を言っていたのか、既に忘れてしまっているらしい。
「仲間が行方不明…おそらく、このビルの中にいるな」
「そういえば、あのリクもそれらしい事言ってたっけ…」
「オレのニセモノの事だな?」
「このビルのどこかに閉じ込めてるみたい。助け出さないと」
ナツキが言うと、
「その前に、エントランスの団体さんは一体何だよ」
リクは、エントランスの奥に続く通路に立つ、大勢の人物軍団を見て言った。
「あー、そういえば警備がキツイんだった」
「…ま、いいや。…ミュウツー!」
『…ふむ。事情は大体飲み込めた』
「そういうワケだから、念力でコイツら全員どっかに飛ばしちゃってくれ」
リクが集団を指差して言った。
『…サイコキネシス!』
一瞬で全員の姿が消えた。
「…先にアイツらのトコに戻っててもらえるか?」
警備員達を飛ばした後、いきなりリクが言った。
「え、どうして?」
「何と言うか、ちょっと気になる事がある。必ず後で合流する」
「…分かったわ」
「そうだ。ポケモンの回復してないんだろ。回復道具幾つか渡しておくから、回復しとけ」

その頃のコントロールルーム。
セツナは、デオキシスとルカリオを相手に奮戦していた。
しかし、もう既に限界は超えている。
「ここまで…なのか」
セツナが呟く。その時だった。
「セツナ! 無事!?」
コントロールルームにナツキが飛び込んできた。
そして、この場所で戦っていた時と同じ位置に立つ。
「ナツキさん! リクさんは…?」
「ええ。リクなら…」
そこまで行った時、いきなりナツキは口を塞がれた。
「ナツキさ…」
「おっと、動くな」
リクDSが言った。
「…どういう事ですか。グランさん」
セツナが聞く。
「…すまない。これも、アイツを助けるためなんだ」
その表情から、本当はこんな事はしたくないという気持ちが伝わってくる。
「もし動いたら、そこにいる奴も、捕らえてる奴も命は無いぜ?」
「くっ…卑怯な!」
セツナの怒りは頂点に達した。
「コイツはな。捕らえてる奴を助けるために単身このビルに乗り込み、俺と戦い、負けてるんだぜ」
「…!? グランさんが、負けただって!?」
「そうだ。そしてコイツは、もう俺の言いなりだ。コイツは最初からお前らをハメてたんだよ」
こちらのポケモンは体力の限界。さらにナツキは身動きが取れず、まともに動けるのはセツナのみ。
…このままでは負ける。そう覚悟した瞬間だった。
「…ハメられたのはどっちだろうな。ニセモノ」
「何ッ!? 誰だ!」
リクDSが辺りを見回す。
すると、上で何かを踏み抜く音が聞こえ、1人の人間が天井裏から部屋に飛び降りてきた。
「…リクさん!」
通風口を踏み抜いて部屋に下りてきたリクは親指を立て、
「よぉ。待たせちまったな」
「何故だ! 精神的苦痛を受け、戦えないという事は調査済みだったハズ…」
「そこに居るナツキにブッ叩かれて目ェ覚めたんだよ。とんだ誤算だったな。『3年後』のオレのニセモノさんよ」
そして、グランに向き直って言う。
「そんな事する必要はもう無いぜ。アンタの仲間が閉じ込められてる場所のカギを解除する装置は、別の所にあった」
「本当か!? …っと、すまない、ナツキ」
「…あー、一時はどうなるかと思ったわ…」
「オレがやったのは、開ける所までだ。『あの子』を助けるってオイシイ場面は、アンタに任せる」
「…分かった。感謝する」
「それからナツキにセツナ。アンタらもコイツと一緒に行ってくれ。…ニセモノとは、サシで決着付けてやりたいからな」
その言葉に、ナツキとセツナはそう言われるのを分かっていたらしく、
「そう言うと思ったわ」
「リクさんがそう言うなら、ボク達は邪魔をしませんよ」
「だけど…負けたら承知しないわよ!」
「負けるつもりなんて、最初っから全く全然心の底からねぇよ」
「ちっ! ここで『藍色の宝珠』を奪われたら俺の計画は台無しだ。行かせはしない!」
「…おっと! アンタの相手はこのオレだぜ」
その間にグラン達は、コントロールルームを出ていた。
「ちっ。逃げられたか」
「…さーてと。かーなり久々に本気出すとするか。…このビルをブッ壊すつもりで戦うから、そっちもそのつもりでかかってきな」
「…過去のお前が、未来の俺に勝てるワケない。こっちは3年分お前より強い」
「言ってろ。…オレを怒らせた代償は、高くつくぜ」

           To Be Continued
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リクト #17☆2005.07/04(月)14:29
第17話    対決! リクVSリクDS

「ここか。リクが言っていた部屋は」
扉の前に到着したグランが言った。
「ここに、グランさんの仲間が?」
セツナが聞く。
「ああ。…よし、開けるぞ」
「何があるか分からないから、慎重にね」
ナツキが念を押す。
「分かってる」
それだけ言うと、グランは一気に扉を開けた。
「オイ、無事か!?」
「…あれが、グランさんの仲間ですか」
青い服に、白い上着。少し短めのスカートに、黒の中に若干茶色が混じっている長い髪。
「あたし、噂には聞いてたけど…何か仲間の子、想像より物凄く可愛いじゃない」
「いや、ナツキさん。この場合は『美人』の方があの人には似合う形容詞かと…」
「それを言うなら、あたしからすれば、あの人にはどっちも似合うと思うけど?」
ナツキとセツナがあーだこーだ言っていると、後ろから物音が。
「誰っ!?」
そのまま振り向くと、意外な人物2人が。
「どうした!?」
その時グランは、仲間のフィーユを縛っていた縄を解き終わっていたところだった。
そして、その2人を見て、グランとフィーユは絶句。
「…ボクが、もう1人?」
「どうして…? どうして私が2人もいるの!?」
「おそらく、リクさんの場合と同じですよ。影のグランさん達です、多分」
セツナが言う。
「あれ? でも、もう1人のあたし達は見てないけど…」
「おそらく、出現する人としない人がいるんでしょう。出ないだけこっちに有利じゃないですが」
ナツキの疑問に、セツナは普段どおりの口調で返す。
「…なるほど。つまりコイツらを倒さないと、この部屋出れないって事か」
「みたいね」
「じゃ、ここはボクが…!」
「待って。…私も戦う」

「さて。始めるか」
リクは、右手と左手、それぞれにボールを1つずつ取る。
「キュウコン、ラティアス! 行ってくれ!」
『…あれ? ご主人様。私の隣、バシャーモさんじゃないんですか?』
『あのー、私の隣、ミュウツーさんじゃないんですけど…』
普段リクは、ダブルにおいてはキュウコンはバシャーモと。ラティアスはミュウツーとタッグで出している。
なので、2匹の♀ポケモンは、少し違和感があるらしい。
「ちょっとな。こっちには秘策がある。仮にお前ら倒されたら、その時にどういう事が分かるさ」
今回のリクは、何故か自信満々である。
「もっとも、その策を使う前にカタを付けてくれた方がいいんだけど」
『私達、もとからそのつもりですよ。ご主人様』
『そうそう。男どもの手を煩わせるまでもないですよ。最近は女の方が強いって言うじゃないですか』
「…それ聞いたら、バシャーモもミュウツーもキレるぞ、多分」
リクは苦笑した。
「ま、いいや。準備はいいな?」
『完了です』
『いつでも行けます!』
「…フン。この未知なるポケモン、ルカリオのタイプを知らぬ限り、お前に勝ち目は無い」
リクDSが言う。
「…オレが、そのポケモンのタイプに気付いてないとでも? キュウコン、オーバーヒート!」
『はい、任せて下さい!』
(…まさかコイツ、このルカリオのタイプを知っているのか!?)
「アンタはオレ自身故、オレの事は知っている。逆を言えば、オレはアンタの事はよーく知ってるぜ」
「ぐ…ルカリオ、やれ!」
『はっ!』
ルカリオは素早い動作でキュウコンの後ろに回りこんでオーバーヒートをかわし、蹴りを食らわせる。
『くうっ…やりますね』
クリーンヒットしていたら、間違いなく一撃で倒されていた威力だった。
「キュウコン! そいつの蹴りは強力だ! 油断するな!」
『分かってます! それより、ラティアスの方は…』
「…っ! そうだ、ラティアスは!?」
リクは慌ててラティアスの方を見る。
『ダ、ダメです! このままじゃ撃沈されます!』
デオキシスのパワーは、かなり強大らしい。
(…マズイな)
「一気に終わらせてやる。…サイコブーストだ!」
「ちっ…『ひかりのかべ』だ!」
『は、はい! …ダメです! 受け止めきれな…きゃああっ!』
「ラティアス!」
『ひかりのかべ』は、特殊攻撃のダメージを軽減する技だが、それを突き破ってあれほどのダメージを食らわせるという事は、リクには予想出来なかった。
「こうなったらキュウコンで何とか攻め…」
リクがキュウコンに向き直った時、いきなりキュウコンがリクめがけてすっ飛んで来た。
「うわキュウコンちょっと待てオイ…」
キュウコン、リクに直撃。
『うう… はっ、ご主人様!?』
「どーゆー事だ、キュウコン。何故オレの方にすっ飛んできた」
『いや、その、ルカリオに蹴り飛ばされてしまいました…もうダメです』
「…はぁ。しょうがねぇな」
リクは、倒れているキュウコンとラティアスをボールに戻す。
「…んじゃ、作戦始動させますか」
そう言いながら、リクはボールを2つ投げる。
『ようやくオレの出番か。…オイ、キュウコンはどうした』
『…あの五月蝿い娘が居ないようだが』
何か、さっきの2匹と似た様な事を言っている。
「あー、いや、アイツら、今さっき倒されちまって」
『…なに?』
『それは真実か』
「真実だ」
それを聞くと、バシャーモとミュウツーの目の色が変わっていく。
『あの狐を倒したのは、どっちだ』
「そこに居る2本足の青い奴」
『…五月蝿い娘を倒したのは、奴か』
「そ。つーワケで、思い切りやっちゃってくれ」
リクは考えていた。大切な存在を倒されたとなれば、2匹は黙っていないハズだと。
「…さてと、第2ラウンドの開始といくか。…ニセモノさんよ」

         To Be Continued…
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リクト #18☆2005.07/04(月)16:04
第18話   想うが故の力

「…今のバシャーモとミュウツーは、もう怒りの限界だ。手加減はしてくれねーぜ」
リクがそういうのも無理は無い。
バシャーモはキュウコンを倒された事で。ミュウツーはラティアスを倒された事で怒りは頂点に達しているのだから。
「どんな状況だろうが関係無い。やれ! デオキシス、ルカリオ!」
デオキシスはミュウツーに、ルカリオはバシャーモに攻撃を仕掛ける。
「ルカリオはメガトンキック、デオキシスはサイコブースト!」
ちなみに相手のデオキシスは、先のラティアスとの戦いでサイコブーストを使っているが「しろいハーブ」で下がった特攻を元に戻している。
「さあ、この攻撃をかわせるか!」
「かわす? バカ言え!」
リクの言葉を受け、バシャーモとミュウツーはかわすどころか攻撃態勢に入る。
「バシャーモ! 最大パワーで『ブレイズキック』!」
『任せろ。…食らえ!』
強大な力で炎の蹴りを放つ。しかもスピードもケタ違いだ。
鋭い蹴りは瞬時にルカリオを捉え、蹴りをまともに受けたルカリオは壁に叩きつけられた。
「なんだと…」
リクDSは動揺している。
「まだまだ! ミュウツー!」
『…承知した』
バシャーモに負けじと、ミュウツーは『シャドーボール』を放った。
「ふん。シャドーボールこどきにこのサイコブーストを破れるハズが…」
「どうかな」
ただのシャドーボールではなかった。普通のシャドーボールとは大きさが違う。
「これがオレの…本気だ。…って、まだ最大パワー出してないから本気って言えないか」
正確には、バシャーモとミュウツーの「大切な存在を想う力」であるが。
この時点で、コントロールルームは殆ど機能しなくなっていた。
「過去の俺に…未来の俺が…」
「過去とか未来とかなんて、関係ねーんだよ。…オレの勝ちだ!」

「…ちょっと待て」
目の前にいるもう1人の自分と対峙するグランが言った。
「おかしい。攻撃してくる様子が無い。どういう事だ?」
「…ひょっとして、ボク達を足止めするために出てきたんじゃ…」
セツナが呟く。
「なら、強行突破しかないわね」
ナツキが言うのと同時に、4人が移動体制を取る。
「…あれ?」
突然、何かに気付いたような口調でフィーユが呟く。
「どうした?」
「何かが…おかしいわ。ひょっとしたらだけど…」
その直後、フィーユが軽く前に進み出て、軽くジャンプしたかと思うと、
「はっ!」
短い掛け声と共に『もう1人の自分達』に回し蹴りを食らわせた。
それを受けると『もう1人の自分達』は、ガシャン、と音を立てて倒れる。
そして、着地。
「おー。蹴りのキレが前より良くなってる」
ナツキとセツナは、それを見てただ絶句するばかり。
「…やっぱりね。生気が感じられなかったからまさかとは思ったけど、やっぱりロボットだったわね」
普段と変わらない目で、2体のロボット達を見下ろしながらフィーユが言った。
「…ボク達2人の影なんて、最初からいなかったんだ」
グランが呟く。
「じゃあ、リクとか、過去に行ったウルフとかの影も?」
「…いや、彼らの場合はちゃんとした人間だろう。ボクが来る事は、あいつは予想していたものの、ボク達の影の存在は居ないから、このビルの技術でロボットを作って対応させたんだろうな」
「…それにしても、フィーユさん強いんですね…」
セツナが言うと、
「やっぱり今の蹴り…見てた? あんな手荒な事したくはなかったんだけど…」
「前に、自分の身を守る為に、何か体術を身に付けたいっていうから、ボクが教えたんだよ」
グランが言う。
「で、いろいろ試してみたら、コイツには『蹴り』が向いているって分かってさ。どうもコイツ、元から蹴り技の才能があったみたいで」
「…滅多な事じゃ使わないけどね。今回は特別」
苦笑気味にフィーユが言う。
その表情に、ナツキは彼女に『大人っぽいけど無邪気』な面を見出していた。
セツナも、グランを羨ましそうに見ている。
その時、ビルが大きく揺れた。
「…! マズイ。ビルが崩れる!」
「…間に合う? グラン」
「分からない。…だけど、お前はボクが必ず守る。…命に代えてもな」
その様子を見ていたナツキとセツナは、
「いいわねー。あたしもそういう事言われてみたいわ…」
「守るべき人が居るって事は、いい事ですからね。どっかのひねくれてる二刀流の誰かさんとはえらい違いですよ。…っと、早く逃げないと」

「うわ、ちょっとやり過ぎたか。…だけど壊すつもりで戦うって言ったし、ま、いいか」
リクが呟く。
「…そうだ、ニセモノのヤロー、何処いきやがった!」
辺りを見回すが、リクDSの姿は見当たらない。
「逃げたか…それとも…」
リクはしばし考えていたが、
「考えていても仕方ないか。オレも脱出しねーと」
バシャーモとミュウツーをボールに戻し、リクは外へと急いだ。

「…俺は…まだ…終わらない…」

           To Be Continued…
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リクト #19☆2005.07/05(火)13:34
第19話  最後の直接対決

「急げ! ビルが崩れるぞ!」
グランが叫ぶ。
「それより…リクさん、大丈夫でしょうか?」
セツナが呟くと、
「ボクが知る限り、アイツはしぶといからな。むざむざやられはしないだろう」
「だけど、もしも脱出出来てなかったら…?」
フィーユが聞くと、
「…さあな。何とかするだろ」

「…戻って来ないわね」
ナツキが言う。
「まさか…本当にビルの下敷きに…」
セツナも声が低い。
「…」
グランは目を閉じ、腕を組んでいるだけ。
するとその時、何かが砕ける様な音が聞こえて来た。
「…ほら、来た」
グランが呟くと同時に姿を見せたのは、リク。全身埃だらけだった。
「あー、今度ばかりは死ぬかと思ったぜ…」
埃を払いながらリクが言った。
「リクさん、やりましたね!」
「あたし達…勝ったのね!」
「…おう。オレ達の勝ちだ」
「…それはどうかな」
いきらり聞こえた声。
「リク、何か言った?」
「いや、オレは何も」
ナツキの問いに、首を振ってリクは答える。
「まさか…」
グランが辺りを見回した。
「あっ…みんな、あれを!」
フィーユが指差した先には、禍々しいオーラに包まれたリクDSが立っていた。
「このヤロ…往生際が悪いぞ、ニセモノ!」
「俺はここで負けるワケにはいかない。…この闇の世界を、光の世界に代わり、真の世界にするまでは!」
リクDSは、両腰の鞘から何かを抜いた。
「まさか、あっちのリクも剣を…!?」
「いや、アレは剣じゃなくって、刀だな」
「刀…」
「俺の『輝光刀』と『闇魔刀』に斬れぬ物は無い」
「それだったらオレの『レイジングセイバー』と『ソウルイーター』にも、斬れないモンは無いぜ」
この状況、まさに一触即発。
「…アンタら、どっか安全なトコに逃げてろ」
リクが呟く。
「何言ってるんですか! 危険です!」
「だからだ。どうしても行かないと言うなら…」
リクはミュウツーを出す。
「ミュウツー。4人を、安全な場所に飛ばしてやってくれ」
ミュウツーは頷くと、グラン、フィーユ、ナツキ、セツナを飛ばした。
「…戻れ、ミュウツー」


「…ここは?」
「どうやら、街外れみたいですね」
「みんな、ケガは無いか?」
「私は…大丈夫」
全員無事のようだった。しかし、4人はリクの真意が分からなかった。
「リクが何を考えていたのか…あたしには分からない」
「私もよく分からないわ。…何考えてたのかしら…」
「これはボクの推測なんだけど…」
グランが口を開く。
「グランさん、分かるんですか?」
「…何となくだけどな。もしボクの推測が正しいのであれば…アイツは相当無茶をしている」
「だから、その推測って何よ!」
ナツキが苛立って聞いた。
「アイツは…リクは、本気で倒すつもりなんだと思う。それこそ…刺し違えてでも」
「そんな…まさか!」

「オレの剣と、アンタの刀、どっちが強いか…今ここで決める」
「俺の刀は無敵だ。俺の刀は…」
「『融合する事で絶大なる威力をもたらす』んだろ。あいにくと、こっちもそうだ」
「それならば…話が早い」
リクDSは、自身の刀を空に掲げる。
「出でよ…『輝魔刀』!」
リクDSの前に、一本の刀が。存在しているだけで力が伝わってくる。
「オレは…負けない」
対するリクも、同じ様に剣を空に掲げる。
「行くぞ。アンタの『輝魔刀』とオレの『ソウルセイバー』のどっちが本当に強いか…勝負だ!」

            To Be Continued…
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リクト #20☆2005.07/06(水)01:44
最終話   時を越えた戦いの果てに

剣と刀。それぞれを構えた2人が、一気に間合いを詰めた。
そこから、同時に武器を振る。
金属がぶつかり合った時の独特な音を立て、押し合いに入った。
「さっさと降参したらどうだ、ニセモノ」
「それは俺の言うべき事。負けを認め、闇に心を委ねろ」
「イヤだね。そんなのはオレはゴメンだな」
「…ならば仕方が無い。ここで倒すまで!」
直後、2人は間合いを取る。
「秘儀…『輝魔波動剣』!」
リクDSが離れた所から斬撃を放つ。
それはとてつもなく大きな衝撃破となり、一気にリクへと向かって来た。
「さあ、避けられるか!」
「…っ!」
リクは何とか間一髪で避けた。
「あんなの食らったら…一撃でやられる…」
「…次は外さない」
――来る!
「終わりだ! 輝魔波動…」
「そんな事…させるか―――ッ!」
叫んだ直後、リクの足元から、光が一直線に空へと伸びる。
「…! 消えた!?」
リクDSが戸惑う。
「消えてなんかいない。…高速移動だ」
リクは剣を振るう。
衝撃破、斬撃による真空波で、相手の体力を減らしていった。
そして、リクは飛び上がる。最後の一撃が放たれようとしていた。
「これで終わりだ!」
リクDSは自身の秘儀を放とうとするが、もう遅かった。
『ソウルセイバー』に光が集まっていく。
「見せてやる! 聖魔! 蒼、破、斬ッ!」


「…はぁ…はぁ…」
先程の技で、かなり体力を消耗してしまった。究極技であるが故である。
「…」
攻撃を受けて倒れたリクDSは、起き上がる事すら出来ない。
「…この刀の力が無い状態じゃ…俺はもう…生きて…いないな」
「ああ。…相手がアンタ…オレ以外じゃ、今の技は絶対使わなかったよ」
「へっ。俺の計画も…ここまで…か」
「オレは、自分と戦う事になるって分かった時、やっぱり躊躇った。…自分を倒していいのか、って」
リクが声を低くして言った。
「…俺だって、正直な所迷いはあった。計画の為とはいえ…自分と戦う事に」
「ホント、バカバカしいな。自分同士で醜く戦うなんて」
リクが言った時、リクDSの体が掠れ始めた。
「…!?」
「俺が消えるって事は…歴史が元通りになったって証拠だな…おそらく…この世界も、今よりかは平和に…なるだろ」
リクDSは、そして続ける。
「…俺が消えたら…俺は…どうなるんだ…ろう…な…」
「アンタが消えても…オレが居る限り、オレの心の中の闇として、オレの中に還ると思う」
「…つまり…俺はお前の中で…生きるって事かよ…」
リクDSは苦笑し、
「なるほどな…もっと早く…その事に…気付いて…いれ…ば…」
「もっと別の道も…あっただろうにな」
「だろうな…それじゃ…待ってるぜ…3年前の…光の…お…れ…」
「…分かった。『3年後』に…心の中で会おう」
「それまで…絶対に…死ぬんじゃ…ねぇ…ぞ。…いいな…」
その直後、リクDSは心の中に戻っていった。

「何か…大きな力の反応が1つ消えた」
フィーユが突然言った。
「って事は…どっちかが倒されたって事か!?」
「ええ、多分…」
「よし、行こう」

「…終わった…全部…」
リクはその場に座り込んだ。
「…約束する。3年後に、また会うって」
自身の心に向かって、リクは呟いた。


「それじゃ、セツナ。元気で」
「ええ。皆さんも。あ、グランさん。…お幸せに」
「…はぁ?」
グランは首を傾げる。
「もう…噂には聞いてたけど、ほんっとに鈍いわね。こんな人で大丈夫なの?」
ナツキがフィーユに聞いた。
「もう慣れちゃった。それに、欠点も見方を変えれば、よく見える事だってあるものよ」
「そんなモノなのかしらねー」
「…」
「どうした? 浮かない顔だな」
「え、あ、いや、何でもない。じゃ、そろそろ帰るか。オレ達の時代に」
「それじゃ、皆さんお元気でー!」
セツナの見送りを受け、リク達は自分達の時代へと戻っていった。


それから、1カ月後…
「こうして今思うと、オレがオレと戦ってたなんて、ウソみてーだな」
『だけどご主人様。紛れも無い事実なんですから、受け入れるしか無いんしゃないですか?』
横からキュウコンが口を挟む。
「まぁそりゃそうだけど。どうもちょっと納得いかないんだよな」
『ところで、あれから例の発作はどうなりました?』
「それはもう平気だ。ただ、相変わらず精神を集中しないと力は使いこなせないけどな」
リクが苦笑して言うと、
『…過ぎた事をとやかく言っても始まらないぞ、ダメトレ』
バシャーモがいきなりトゲのある一言。
「あ? ダメトレって何だよ!」
『ダメトレーナーの略だ。文句あるのかコノヤロウ』
「なんだとテメ。300の3乗を5000で割っただけのパワーしか無いクセに!」
『…パワー5400…何とも微妙な数値』
…そんなこんなでいつもの日常に戻っていくのだが、この毒舌合戦だけは控えて欲しいと切に願うキュウコンなのであった。

…光と闇。それは、相反する存在。
しかし、それは思わぬ所で繋がっているのかもしれない…
『2人のリク』と同じ様に…

     Another world ―光と闇―   完
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ぴくの〜ほかんこ