サクラ | #1★2006.08/14(月)17:25 |
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第1章『旅立ちの音 №1』 「アヤセ!アヤセはどこ!?」 「木の上で、お昼ねです。多分。」 甘い香りを放つ腐葉土から、新たな命が空を見上げて背をのばす4月の半ば頃。メバエ島では希望や期待を背中にしょって、島を離れる子供たちであふれていた。 彼等は未来をつかまえに、旅にでるのだ。 何しろ離れ小島のこの島。子供たちは物資を運ぶ船に乗らなければこの島から出ることはできない。それも月に1度。今日だけ。 さてここは、島を一望できる丘の上。一匹のイーブイとニューラが目を細めて木漏れ日のまぶしい木を見上げていた。 「アヤセ!船きたわよ!はやくおきんか!馬鹿!」 「あー。うるさいうるさいうるさい。聞こえないー」 威勢のいいイーブイがアヤセと呼ばれる少女を木の上からゆすり落とした。耳をふさいでぶつぶついってるが、バックを背負っている所から一様聞こえたようだ。 「しかたない。走ろうか。」 軽く肩をまわしてから少女は走り出す。あわてて二匹は彼女をおいかけた。 つづく |
サクラ | #2★2006.08/08(火)10:16 |
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第1章『旅立ちの音 №2』 ガッガッガッガ 丘のしたの森を素早くぬける1人と2匹。 アヤセは面倒だとぼやきながらも、軽やかな足取りで木々の横を通り過ぎた。 イーブイ、テトラもその四肢でせかせかと走っている。 ニューラのラピスはというと、元々運動は苦手なのと息が乱れ始めた。 ラピスの洞察力はすばらしいが、この1匹と1人にどうもついていけない。 「アヤセ!もっとはやくはしりなさいよ!なんでこう、計画性がないの!お母さんはもう港にいるじゃない。いつもいつも私たちに迷惑かけて!」 なぜこのペアが、これまで長くやってこれたか…。それもラピスは謎に思っていた。 「あ、うん。もうなっちゃってるね、出発の音。」 港がみえてくると、ブーッと出発のあいずがなっている。 テトラは目を白黒させて、怒鳴った。 「馬鹿!どうすんのよ!」 「えと、どっちか上に乗って、ロープ下ろしてきてよ。つたって上までいくから。」 バックからヒョイとロープをだし、後ろのラピスに投げ渡す。 ラピスはぜーぜーいいながらもそのロープをしっかりと掴んだ。 「大丈夫?わたしがやろうか?」 「だい、大丈夫です。ぜんぜん平気ですから。」 全然平気じゃないのは一目瞭然だが、何気にいじっぱりな彼女はすでに速度を上げていた。 ニューラの身軽な体で甲板に跳躍するとロープをアヤセの方に投げる。 アヤセはそれをしっかりつかむと、テトラを肩に船へとびのった。 船が進みだす。 彼女は宙ぶらりんで左右にゆれていた。 母のため息も、船のエンジン音でもう聞こえない。 なんとか船に乗ることができたのだ。 つづく |
サクラ | #3★2005.05/22(日)16:45 |
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第1章 『旅立ちの音 3』 >ステキなキャラクター、ビズ(君)は、ピカ画さんが作ってくださいました 「ねね。紅茶のみたいよ~」 ざわつく船の中、アヤセはものすごいマイペースにラピスに話し掛ける。 ラピスは「そうですね~」「ちょっとまっててくださいね」と、アヤセの相手をし、テトラは… 「もうしわけありません…。」 「あのね~こおゆうことされると困るんだけど。それにクレマチスパスのポイントがたりませんよ?」 アヤセの保護者をつとめていた。 たまに「おまえのせいで」と、ゆうようにアヤセをにらみ、船員にあやまるとゆう繰り返しをやる。 「すいません、俺のポイントじゃいけませんか。」 テトラの前に立った、黒髪の少年。 顔は、とても美しく周りの女の子たちがキャーキャーいっている。 船員は、ホッとした顔をするが、アヤセへの注意をまだしようとする。 が、そこにはアヤセ一向と、黒髪の少年は消えてしまった。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「ありがとうございました。ビズ君。アヤセ!のんきに紅茶なんかのんでんじゃないよ!」 「別に…。」 605号室。黒髪の少年、ビズの部屋だ。 アヤセは自分でもってきた紅茶セットでくつろいでいた。 「アヤセさん。ビズ君にお礼をいってほうがいいですよ。」 「あ、うん。どもども。今度、紅茶つくろか?美味しいよ~」 「…いらん。」 ビズは目をそむけ、ムスっとしバックを探っている。 ドアの外からは、「ビズ様ラヴ」と、叫び声が聞こえる。 「これ、アヤセのお母さんからの手紙だ。で、俺は寝るからでっててくれないか。紅茶をこぼされたらたまったもんじゃない。」 「あいよ。じゃあ、ごゆっくり。」 アヤセは、紅茶カップを片手に外へ出て行った。 「ビズさんは、ステキですよね。旅の目的が、自分探しですって。」 「うわ…。カッコイイ。」 「ふ~ん。うちわねーうちわねー♪」 「だまってな。アヤセ」 アヤセが、自分の目的を言おうとすると、テトラが声をさえぎった。 そしてそのあと、テトラのきついお説教をくらうのでした。 つづく |
サクラ | #4★2005.07/05(火)22:40 |
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第1章『旅の音』おまけ ―+ラピスの日記+― のはずなんですが、量がおおくて圧縮されるかもしれないので、これはなしです。ごめんなさい; |
サクラ | #5★2006.08/13(日)22:45 |
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第2章『トレーナー №1』 それから三日後…。 アヤセ一向は、ティル地方へやっとのおもいでつくことが出来た。 この三日間、彼女等は快適な旅をすることができた。 しかしそれはあくまでも「彼女等」であり「彼等」ではない。 アヤセは、1時間に1回、確実にビズの部屋に入る。 断ろうとする間もなく、パートナーであるブラッキーのムーンがしゃべりだすのだ。 ムーンはとても人当たりのいい性格のため話は長くなる。ビズの疲れは錘のごとく肩にのしかかる。 そんな悪夢、もとい船旅が終了することが心から嬉しいらしく顔も心なしかさっぱりしている。 アヤセたちが船から下りると、彼の姿を影も形ものこっていない。 「逃げたな」などと小言をはくアヤセがそこにいた。 「こっからどうする?私たち、いきさき聞いてないんだけど。」 「えと。近くの町…たしかカリウタウンに、叔母さんが宿を開いてるから。まずそこに行こう」 自転車を持ってない彼女は、自分の足で地を踏みしめる。 体力だけが自慢なので、そこまで苦ではないのだがうろうろうろうろとしているため、時間は水が流れるようにすばやくすぎてゆく。 「私が昼寝してるあいだに、なんてことしてくれたのよ!」 町につくはずの彼女達は、夜空の下喧嘩をするのであった。 つづく |
サクラ | #6★2006.08/13(日)23:02 |
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第2章『トレーナー №2』 >ステキなキャラクター、リク(君)は、リクトさんが作ってくださいました。 「テトラ寝袋…。」 「おだまり、けだまり、みずたまり!」 「あの、えと…。」 「一度ならず二度までも!」と、堪忍袋(かんにんぶくろ)のおが切れたテトラは、アヤセを寝袋から追放した。 寝袋は今、テトラの寝床になっている。 ザッザッザッ 草を書き分ける音に、ガハッとラピスが目を覚ました。 爪をグッと出し、青い目がこうこうと光った。 「耳がいい」とは、時に知らなくていいものを知ってしまう。 「あんたたちなにやってんの?」 「おまえ視力なんだっけ…。野宿してるってわかんないのかよ」 黒髪の成年は、一度アヤセを疑い深くみつめるが、隣のバシャーモに痛いところを突っ込まれ、顔に冷静さをなくした。 「は?両目とも通常だし。普通、こんなところで子供が寝てたら聞くだろ馬鹿」(リクトさんすみません) 「だったらなぜ野宿してるか聞けばいいだろアホ。おまえの脳はなんのためにあるんだよ。」(リクトさんたびたびすみません) 「このくらいのことで、脳をフル回転させないしっ。」 「へぇ~。おまえとゆう人種は、小さいことでは頭をフル回転させねーんだな。」 言い合いの結果、バシャーモのこの一言で、黒髪の成年はムッツリとしたまま、アヤセに目をうつした。 「子供。なぜここにいる。」 「その前にひとつ」 ラピスはついっと目を細めて青年をまじまじとみた。 「貴方はいい人?」 「は?」 「悪い人。俺は天使のごとく純情だけど」 「おまえっ!」 「信頼しあってるんですね。二人ともいい人です」などと、ラピスが呟いたがそれも気がついてないようだ。 成年は、バシャーモでラピスをおいはらおうとしたが、自分よりはるかに強そうな相手に向かうラピスを見て、おもしろげにフッと笑った。 「この毛布をかけてやってくれ。明日、クレハ湖でまっている。」 成年は、アヤセに毛布をかけるとその場をあとにした。 のこされたラピスは、成年が見えなくなると、眠気でふらふらたおれてしまった。 つづく |
サクラ | #7★2006.08/14(月)17:25 |
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第2章 『トレーナー №3』 「おい。なんでおれがおまえの朝飯をたべなきゃいけないんだ…。」 「え?いいじゃんいいじゃん。リクさんったらテーレーヤー」 「っぷ」 ゴガンッ 朝、ラピスが目を覚ますと昨晩みた成年がたっていた。 成年は、隣のバシャーモに一発かましていた。 が、ボーっとするラピスはその成年をみてポワポワとした顔をしていた。 「よっ。おきたか。」 「だれですかぁ…。うにょ!?」 ラピスは、目をちかちかさせた。 やっときずいたのだろう。 今、昨日あった成年が会いに来てるのだ。 名はリクと言うらしく、アヤセが隣にたつと兄弟のように見える。 すっかりうちとけた2人は外でつくった目玉焼きをあらそっていた。 「昨晩はどうもです。その件ではおせわさまに…?」 「あぁ、はいはい。リクさんだめですよ。健全な乙女を夜中におこしちゃ。」 「自分でめざめたんだ。俺は起こしてない」 トローンとした目で、スープを飲みだした。 アヤセは目玉焼きを彼女の足元におきにこにこしている。 「なんか…二日酔いってかんじですか?」 「お疲れ様、ラピス」 二人のやりとりが面白かったらしくリクはクスクスと笑う。 そして、後ろにおいておいたリュックを担ぎ、スクっと立ち上がった。 「そろそろでる。おまえたちと戦いたかったが…。今は無理だろ。弱すぎる。」 「おまえがつよいんじゃない。『おれが』つよいんだよ。馬鹿」 「バシャーモさん、よくわかってる~。今度は、リクさんの朝食もらいにいくねん♪」 リクはむっとするが、すぐに気をとりなおし歩いていった。 うしろからアヤセが「朝食はステーキがいいっ!」とのんきなことを言ってるのを無視して。 つづく |
サクラ | #8★2006.08/14(月)17:29 |
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第3章 『灰色の髪の少女』 「で、ここのポケモンをなんとかすればいいわけね?」 テトラが冷たい目で、アヤセを見た。 アヤセは、エヘへっといった顔でテトラを見る。 ラピスは、いつもどうりになりおろおろしていた。 話の種は、1時間前。 アヤセたちがカリウタウンに来たときのことだ。 …… 「君がアヤセちゃんだね?私は町長のダレン。まってたんだよ。」 ラピスとテトラが熟睡してるとき。 やっと町についたアヤセは、大歓迎を受けていた。 町長のとなりには、アヤセの叔母がる。 周りには、たくさんの踊り子がいて、華やかな踊りを見せていた。 「じつはな、この町はあまり裕福な暮らしができないのじゃよ。町をささえているものといえば、このカリセの実だけ。これを隣の大きな町に運ばなきゃいけないのだが…。」 確かに裕福な暮らしはしてないように見えた。 土はからからのサラサラで、雑草さえ生えていない。 「紺色のオオスバメが行く手をはばむのじゃ…。あと1ヶ月この状態がつづいたら、わしらは…。アヤセちゃんのバトルの腕はそうとうだと聞いている。ここは、ひとつひきうけてくれないだろうか?なぁに、ただたんにオオスバメをたおしてくれればいいのじゃよ。」 町長は、顔をしかめていた。 しかし能天気なアヤセの回答は 「バトル、嫌いなんです。」 だった。 町長はあっけにとられていたが、叔母はニッコリと笑った。 「今、入手困難な月光葉の紅茶を手に入れたのよ。これをこの町のカリセの実をたべているミルタンクのミルクとあわせた紅茶があるんだけど。」 「そういえば、紅茶の葉が…。わかりました、やらせてください。」 叔母はうれしそうに数回うなずいた。 つづく |
サクラ | #9★2006.08/14(月)17:36 |
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第3章 『灰色の髪の少女 №2』 「もちろん、私は戦わないからね。バトルなんて大嫌いよ。まったく紅茶ひとつで…。」 「わかってるもーんっだ。ねぇラッピス。」 「はい!早くアヤセさんたちにおいつけるようがんばります!」 テトラはエグエグと苦虫を噛み潰したような顔をした。 まったく、やる気はない。 「!?なにあれ…。」 この砂地のような土地にどうやって根をはったか分からない大木。 それもおどろくが、それ以上に、太い枝の上にある大きな巣。 その中にいるのは、紺色のオオスバメだった。 ただのオオスバメではない。 普通のオオスバメの二倍ほどの大きさだ。 ついでに紺色の羽の周りは、うすく青い光がまとっている。 「うわぁ…。手ごわい。」 「あんたは何にもやんないんでしょ。」 「テトラもじゃんっ。」 オオスバメはアヤセたちをかるく一べつし、目を細めた。 馬鹿にしてるようではないが、ラピスは何が気に食わないのか、鋭く輝くつめをさっとだした。 「ビュビー!」 「勝負!」 言い合いをしていたアヤセは目を丸くし、慌てて指示をだす。 「風きり羽にれいとうパンチ!」 オオスバメのほうが1枚上手らしい。 素早く上にあがり、キリっとにらんだ。 「あれ、本当に野生なんですか!?」 「ラピス!足にれいとうビーム!」 今度は上手く当たった。 オオスバメはゴンッという鈍い音をたて下に落ちた。 「ビエー!ビービー!」 「あばれないでね…。」 バシッ オオスバメの口を紐でかるく括った。 オオスバメは、そうとう驚いたらしく、鳴くのも、抵抗するのもやめた。 「アヤセさん!上!上!」 ラピスがさす、爪の先には、巣からオオスバメを心配そうにみつめる、灰色の髪をした少女だった。 つづく |
サクラ | #10★2006.08/14(月)17:39 |
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第3章 『灰色の髪の少女 №3』 「こんなところになんで上るかな。そしてなんでわたしがいかなきゃいけないのかな」 アヤセは、高い木にのぼりながらブツブツとつぶやいていた。 灰色の髪の少女は、びくびくとしていた。 「ビービー!」 「うるさいんだよね。」 テトラは、口に石をくわえたままオオスバメの腹につっこんだ。 あくまでも、これは技ではない。 「お名前はなんてゆうの?」 「人に名前をたずねるときは、自分からなんですって」 アヤセはアーラとゆう少女を見て驚いた。 白い肌。紺色の瞳。灰色の髪は、洗えばブルーグレーになるだろう。 とてもととのった顔をしている。 「アヤセ。あなたは?」 「わたしはアーラ。の、影かしら?ううん、いいの私はアーラよ。よろしくね」 そっとアヤセの首に手を回して抱きつく少女、アーラの白い肌は、少々傷がついている。 アヤセは、静かにアーラをお姫様だっこをして下に飛び降りた。 「ちょっと。そこのオオスバメ。この子、かついでくんない。気絶してるんだけど。あ、もちろんそのまま逃げても追っかけるし、その時は…。」 「ピルルゥ」 オオスバメは素直にアーラを背にのせアヤセについていった。 つづく |
サクラ | #11★2006.08/14(月)17:43 |
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第3章 『灰色(ブルーグレー)の髪の少女№4』 「この子といっしょに旅したい!」 「は…?」 アヤセがオオスバメを手なずけると、あたりのかまいかたが、あけたばかりの炭酸ジュースが3日たったときのように変わった。 さっさと出てけと、おいだされ 叔母さんから紅茶はもらえずじまい。 土がしっかりしてないと人が崩れる。母がたまに言う言葉を頭の中でころがした。 一瞬時がとまったようで、 風がフゥっとアヤセとテトラの間をとおりぬけた。 たった20秒が、1時間も2時間もたったように感じたのは、テトラだけのようだ。 「アヤセなんて…。アヤセなんて…。抹殺してやr…。」 「テトラさんストップストップ!」 ぎゃーぎゃーさわぐテトラをとめたのはラピスだった。 アーラは、?マークを頭にうかべ、アヤセはにっこにっこしている。 「平気平気。じゃあ、前進前進!」 「アヤセなんて!…っ」 「大嫌いっていえないんだ~。あははw」 テトラは目をうるませた。 彼女の前足のわきをかかえてたラピスは、 テトラをみながらため息をついた。 「えと、私のこと…嫌いですか?」 アーラの潤んだ瞳が、テトラの瞳を見つめる。 先ほどと180度性格が違うのはなぜだろうか? ポケモンの技でいえば、甘えるかメロメロだろう。 「…。はやくいかないと、また野宿になるよ…。」 照れ隠ししながらだが、テトラなりのOKをくだした。 アーラの顔にパァっと笑顔がもどる。 上から見ていたオオスバメはニッコリと笑うような表情をした。 そして紺色の光をもっと輝かせ、北のほうへとんでいった。 ずっとずっと北へ…。 つづく |
サクラ | #12★2006.08/14(月)17:45 |
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第4章『誕生日は白月の下で№1』 「あはは~。キャモメと追いかけっこ♪」 「あんたころs…。」 「テトラさんおちついて!」 アヤセたちは、今…キャモメにおわれていしる。 理由は、ひとつ。 アーラがものすごく好かれているのだ。 アーラは、キャモメを肩にのせ、ニコニコしていた。 「あ~でも、歩くの面倒だよね…。あ、走ってるけど」 「一発やりますか?私は、全然平気ですが。」 「やっぱりあんたは…」 テトラのおしゃべりは途中でとぎれた。 皆が走る中、テトラだけがポツンととまった。まるで小石のように。 「エクレス!スピードスターだ!」 キャモメの1匹1匹に、スピードスターがあたった。 そこにいたのは、一匹のエーフィと1人の男だった。 青いかみに赤い瞳。 無表情な顔が印象的だ。 「これで、姉ちゃんのエーフィもすこしはレベルがあがったか…。」 アヤセは、顔をしかめた。 アーラは、しょぼんとしている。 重傷なのは、テトラだ。 テトラは、魂がぬけたような姿だった。 アヤセは、テトラをモンスターボールにいれ、ぺコリと頭をさげた。 態度が悪い。人として。 「君、勝負しない?」 それは、悪魔のささやき。 つづく |
サクラ | #13★2006.08/14(月)17:48 |
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私の真後ろには、真っ黒な手が追ってくる。 私が追ってるのは、針のように細い光 ―にげるな…光はいつか消える― 冷たい言葉が耳をささやく 自分をしばりつける冷たい鎖が、走るのを邪魔する ―私はいなくなったほうがいいの?あの光は消えてしまうの?― ―光なんていつかきえてしまう― かみ合わない会話 耳にかかる息 彼女は、足をとめた 第4章『誕生日は白月の下で№2』 テトラが目をあけた場所は、白月がかがやく丘の上。 丘の周りは、雑木林で、怖くもあり、優しい光を感じる。 (夢だった。そう…また白色の新月なんだ…。) 目を細めて新月を見た。 真っ白な新月は、丘をあかるくする光さえも出せない。 テトラは尻尾でシロツメクサにたわむれながら、ボォっとしていた。 (白月なんて嫌い。生まれたばかりの新月はもっと嫌い。) 「テトラ。おきた?」 静かな、暖かい声がテトラの耳をかすめた。 アヤセの声だ。 テトラの後ろにはニッコリと寂しい笑みをみせるアヤセがいた。 「今何時?」 「一時ちょっとかな。アーラはレイさん…さっきいた人といっしょだよ。」 となりにちょこんとアヤセが座った。 おもむろにシロツメクサをぶきような手で懸命に編み始めた。 そして、ごろんとよこになった。 「白月の新月って、消えないようにがんばってるようにみえない?闇にのみこまれそうな自分を懸命に見つめてるみたいでさぁ。」 がたがたのシロツメクサの冠をテトラの頭にのっけて、さびしそうにまた空を見つめる。 「だれも見てくれなくたって、自分が自分を見てれば、この世から消えることはない。それを白月の新月はしってるのよ。まるで、テトラ見たいっていつも思うんだよね。」 「私は、自分をみてないや。そのうち闇にとけこんじゃうかな?」 「う~ん。多分、私が見てるからテトラは消えないよ。」 アヤセは笑って、雑木林に消えていった。 つづく |
サクラ | #14★2006.08/14(月)17:57 |
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第4章『誕生日は白月の下で№3』 「こんばんは。」 「っ!」 アヤセがさってたから、すぐ。 空からの訪問者がやってきた。 黒い翼に、真っ赤な目。 闇の住人、ヤミカラスだ。 「あら失礼。私(わたくし)の名はスラー。みてのとおり闇の住人よ。」 「何のようですか?スラーさん…。」 テトラは、彼女の美しい姿に息をのんだ。 黒い羽がキラキラと光っている。 「闇はステキなものよテトラちゃん。貴方の夢じゃ、悪いイメージがあるようだけど…。ビスケットもらってもいいかしら?」 「あ、はい。どうぞもらってください。名前よくわかりましたね。」 スラーは「感よ。」といいながらほほ笑んだ。 そして、足元のビスケット(アヤセがおいたのだろう)を口にくわえると、カリカリと音をたてて食べ出した。 食べ終わると、またニッコリとほほ笑んで言った。 「あなたは時追い人なのかもね」 「はい?」 「私の族…といってもいつも単独行動なんだけど、そこではあなたみたいな人をそう呼ぶの。」 温かい目は、闇をたたえるその翼と違い、穏やかな陽だまりだった。 「見えなくなるの。夜は、光をつつむの。怖いわね。私は見えるけど、でも怖いわ。光も同じぐらい、怖いの。同じなのかもしれない、それは」 スラーは 「おやすみなさい。貴女が貴女でいられることを願っているわ。」 とポツリといった。 それが何かはわかない。テトラは寝ていた。 「おやすみなさい。」 もう一度、くりかえす「おやすみ」。 「アーラ様をまもってさしあげてね。」 バサっと羽を広げると、はばたきだした。 ちゃっかり一枚ビスケットを口にくわえていたが。 「私も、もう一度人間に飼われてみようかしら?」 白月の下、1つの物語。 もうひとつ、テトラが目覚めるとはじめる 白月の下の、2つ目の物語。 つづく |
サクラ | #15★2006.08/14(月)18:00 |
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第4章『誕生日は白月の下で№4』 「みつけなきゃ!はやく出て来い…。」 シロツメクサの中を泳ぐように走ったり、立ち止まったり。 小兎が飛びまわるような姿のテトラは、かなりあわてていた…。 ―ハッピーバースデー!― ―わぁ。ママありがとう!― テトラが見た夢は、まだテトラが小さかったときの夢だった。 そこは、アヤセがよくねてる木の下。 どうやらパーティーが開かれてるらしい。 ―アヤセちゃんどうしたの?― ―なんでもないよ― 無理に笑うアヤセを見たテトラは、つい暗い顔になる。 しばらくたつと場面はかわり、朱色が空をそめた。 ―私、誕生日しらないんだぁ…。だからね、お祝いしてもらえないの。誕生日。― 目をほそめて空をあおぐ彼女は、ひどく寂しそうだった。 ―じゃあつくっちゃいなよ!― ―え?― ―明日!明日がアヤセの誕生日!紫陽花祭りがアヤセの誕生日!― (無理してる。やだな、こんなことしてる自分が) そういえば…。 「ごめんアヤセ!」 自分の声で目をさましたテトラは、サッとシロツメクサ畑に飛び込んだ。 つづく |
サクラ | #16★2006.08/14(月)18:01 |
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『ちょっとした言い訳を…』 昔の私の未熟もの…。 こんばんは、こんにちは、おはようございます。 ものすごく間があいたので、文がくずれすぎました(汗) 読んでて目がつぶれそうです。あーいたい! ――――――― 軽く修正しました。これからまた作ります・ お騒がせしました。 |
サクラ | #17☆2006.08/14(月)18:39 |
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第4章『誕生日は白月の下で№5』 どこぞの絵本のタッチのような、あたたかい光に満ちていた。 大嫌いで、憎くて、目をそむけたくなるその新月が主役に、夜の行進曲が奏でられている。 風は満ちていた。その言葉に意味はない。ただそれが一番あっている、透き通る風だった。 プレゼントは私なんて、そんなことはばかげてる。大嫌いよ。甘い言葉なんて。 だから、物をあげたい。過ぎ去ることのない物を。 テトラはシロツメ草を泳いだ。正しくはむさぼるようにはっていた。 彼女は気がついているのだろうか?そのシロツメ草が薄く光っていることを。彼女は、気がついているのだろうか?その、光のわけを。 「あった…」 そのやわらかい手にはきっと大きなシロツメ草がのっているだろう。 この地方の草花は、子孫を確実に残すために数個の「クイーン」を残す。クイーンは確実に種をつけられる「絶対的」を意味する花。 闇で見えない視界を、自分の鼻で追っかける。 彼女の音が、匂いが、体に届くまでがむしゃらにはしるテトラは時間にとけていた。 (アヤセのにおいだ!) 木々をくぐる。一直線に彼女は進む。 あと50メートル、火は見えないけど求めてる者はきっといる。 あたたかい光が目に入るまで、後、少し。 つづく |
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