SAKI | #1★2005.07/03(日)12:03 |
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≪序章≫ 森閑の決意 舞台は、ポケットモンスター、通称ポケモンの歴史が刻まれる「ジョウト地方」。 名も無き森閑の村で、今1人の少女が旅立とうとしていた――… 「…じゃあ、行ってくるね」 少女が、寂しそうに微笑む。そのとき、少女の若草色の髪を、風が乱した。 「ハヅキ、本当に大丈夫?1人で旅なんて、出来る?」 少女――「ハヅキ」の母親が、何度も娘の顔を心配そうに覗き込む。 「大丈夫だってば。母さんは心配性なんだから…それに、1人じゃないよ」 ハヅキは、傍らにいるポポッコの頭を、ぽんぽんと叩いた。 『ポポッ!』 ポポッコは、母親を安心させるように笑って見せた。 「そうだったわね。セピアがいるのよね」 母親が微笑みながら、ポポッコの「セピア」の頭を撫でた。 「ハヅキ」 父親が、娘の瞳を真っ直ぐに見つめる。娘もまた、父親の瞳を見つめ返した。 「父さん…」 「ハヅキ、ここはお前の家だ。疲れたら、いつでも帰って来いよ」 ハヅキの瞳が揺れた。 「…うんっ!じゃあ、行ってきます!父さん、母さん!」 ハヅキは、長い髪を揺らしながら手を振り、歩き出した。 セピアも、ハヅキの横をふわふわと飛んで行った。 「…行っちゃったわね」 「ああ」 娘が見えなくなった道を、じっと見、振っていた手を下ろす。 「今は、祈ろう。ハヅキに幸多からんことを」 「そう、ね」 母親は微笑むと、2人で一緒に家の中へ戻った。 |
SAKI | #2★2005.07/04(月)19:48 |
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≪第1章≫ 新しい世界 そろそろ村の出口に差し掛かると言うとき、ハヅキは後ろを振り返った。 そして、モンスターボールの中にいるセピアに視線を移す。 ハヅキは、ずっと昔に父親から貰った、「PLT」のスイッチを入れた。 PLTは、ポケモンの言葉を訳してくれる、ポケモントレーナーのお役立ちアイテムだ。 「…セピア、聞こえる?」 『うん、聞こえるよ。ねえ、ハヅキ。早く村の外に出ようよ!』 セピアの好奇心が、ハヅキの背を押す。 ハヅキは、思い切って外へ飛び出す。今まで14年間、村の外へ出るのは、これが初めてだ。 「うわ、眩しい…!」 溢れんばかりの太陽の光に、ハヅキは目を細める。 『明るいねぇー♪』 「ほんと。…でもここ、どこなんだろ…」 見たことの無い風景に、ハヅキとセピアは目を丸くする。 潮の香りがする。どうやら、海に面しているようだ。 『誰かに訊いてみよーよ!』 「それがいいわね!…ねぇ、キミ。ちょっといい?」 ハヅキは、近くを通りかかった少年に声をかける。 瑠璃色の髪を、額に付けている緑色のバンダナで止めている。 少年の深い青の瞳は、真っ直ぐにハヅキを捉えている。 「…何だ?」 「あの…ここ、何て言う町なの?」 その質問に、少年は表情を変えずに答えた。 「ここはヨシノシティだ」 「ふーん。そう言う名前なの」 聞いたことの無い町の名前に、ハヅキは考え込んだ。 「…お前、ヨソモノか。どこから来た?」 今度は少年が尋ねてきた。 ハヅキは戸惑った。あの村に名前は無い上、「村のことは内密に」となっている。 「言えない」 「…まあ良い。ついて来い、オレがいろいろと教えてやる」 少年は、黙って顎で杓った。 「あ、ありがとう。えっと…」 「…ヒロ」 「ヒロって言うの?あたしはハヅキ。よろしくね」 ヒロが黙って歩き出し、前方でこっちを見て立っている。 ハヅキも慌てて、ヒロの後を追いかけた。 そんなこんなで、ハヅキはヒロに、いろいろと教えてもらうことにした。 「…それにしてもヒロってば、何も話さないのね」 |
SAKI | #3★2005.07/04(月)19:57 |
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≪第2章≫ 夢への旅路 美しい海が見渡せる浜辺。 2人の少年少女が、砂浜で話し入っている。 「…つまり、ポケモントレーナーの目的は、ポケモンチャンピオンを倒すことなのね」 「…そんなところだ」 ハヅキは、ヒロから「ポケモントレーナーの心構え」を教わっているところだった。 ポケモントレーナーの主な目的は、ポケモン界の頂点に立つ「ポケモンチャンピオン」を倒すこと。 そして、そのためには、世界各地にいるジムリーダーを倒し、ジムバッジを手に入れなければならない――… それが、「ポケモントレーナーの名誉」と言うものだった。 「じゃあ、あたしもジムバッジを集めようかなー」 「オレもそれを勧める。トレーナーとして一人前になりたいのなら、な」 ヒロが、淡々と言った。 『面白そう!ハヅキ、そうしようよ!ねっねっ?』 モンスターボールの中で、セピア(ポポッコ)が同意を求めている。 『絶対にそれがいいって♪』 「そうねぇ…」 セピアの強い希望により、ハヅキのポケモンジム挑戦が決まった。 「…ところでアンタ、トレーナーとしての腕前はどうなんだ?」 「えっ…」 唐突に話題を変えられ、ハヅキが意味を理解するのには、暫くかかった。 腕前は、村では中の上と言うところだった。 「どうかなァ…強くもないし、弱くもないし…」 「…すなわち普通と言うことか」 ハヅキは、こくりと頷いた。 「そのままでは、ジムリーダーに勝つことは難しいだろうな」 そう言うと、ヒロは少し離れた位置まで歩いて行き、止まった。 「出番だ、スィング!」 ヒロが宙高く投げたモンスターボールから出てきたのは、ピジョンだった。 「アンタもポケモンを出せ。アンタの腕前を試してやる」 「…っ」 ハヅキは迷ったが、モンスターボールを手に取り、中央のボタンを押して大きくする。 「出てきて、セピア!」 青白い光を帯びて、セピアが飛び出す。 『久しぶりのバトルだー♪腕がなるぅーっ!』 『ポポッコか。全力で行くぞ!』 スィングの視線はセピアに注がれ、両者既に戦闘体勢にはいっている。 「…始めるぞ。本気を出せよ」 「もちろん!望むところよ!」 |
SAKI | #4★2005.07/05(火)20:55 |
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≪第3章≫ 初めてのバトル!そして… 「先手を打たせてもらうぞ。スィング、『でんこうせっか』だ」 『了解だ。…『でんこうせっか』!』 スィング(ピジョン)が、目に見えない速さで突進してくる。 「あのピジョン…スィングだっけ?スピードは伊達じゃないわね」 『ハヅキったらぁ!そんな呑気なこと、言ってる場合じゃないよぉ!』 そうこう言いながら、セピア(ポポッコ)はスィングの攻撃を、ひらりとかわす。 「セピア、『メガドレイン』で相手の様子を窺うのよ!」 『分かった!行くよっ、『メガドレイン』!』 セピアが攻撃を仕掛ける。 『オレに、こんな子供騙しの攻撃は通じねェぞ』 相手にはヒットしたようだが、その効果は薄いようだ。 スィングは、「余裕」の表情を浮かべている。 「…やっぱり、相性的にも不利、か」 ハヅキは、顎に手を当てる。 「さあ、どうする?アンタに勝ち目は無い…」 ヒロが挑発するように言ったが、 「それはどうかしら?勝負はまだ始まったばかりよ」 と、ハヅキが遮った。 (とは言ったものの、反撃は難しいわね。…そうだ!) 「…勝負はここまでだ。スィング、『つばさでうつ』で決めろ!」 ハヅキが、パッと顔を上げたのと、ヒロが指示を出すのとは、ほぼ同時だった。 『終わりだっ!』 スィングの翼が、セピアへと迫って来る。 『ハヅキぃっ!』 「セピア、『はねる』のよ!」 ハヅキのとっさの指示で、セピアは空高く跳び上がった。 「…何だ?」 「セピア、今よ!『しびれごな』!」 スィングが、勢い余って地面へ激突する。体勢を立て直す前に、『しびれごな』が降り落ちて来る。 『!しまった…!』 スィングが苦しそうにもがく。 「スィングっ…」 「貴方のスィングのスピードは、確かに速い。…でも反対にそこを抑えれば、あたしにチャンスが来る、ってわけよ!」 ハヅキが勝ち誇ったように言い放った。 「く…!」 『やったぁ♪ハヅキ、あったま良いー♪』 セピアが、ぴょんぴょんと跳ねている。頭の花が、左右に揺れる。 「さあ、トドメよ!セピア、『たいあた』…」 「『つばさでうつ』っ!」 その瞬間、勝負がついた。スィングには、まだ動く力が残っていたのだ。 相性が悪いこともあって、セピアは力尽きた。5メートル程飛ばされた後、目を回している。 「セピア…ごめんね。ゆっくり休んでて」 ハヅキはモンスターボールを取り出す。赤い光線を浴びたセピアは、中へと戻された。 「負けちゃった、か。あたしは…油断しちゃってたのね」 困ったように、ハヅキは笑みをこぼした。 「アンタが強くなったときに、また戦おうぜ。ここから一番近いジムは、キキョウシティのキキョウジムだ」 |
SAKI | #5★2005.07/06(水)17:46 |
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≪第4章≫ ポケモンの生命(いのち) ヨシノシティを後にしたハヅキは、次の目的地「キキョウシティ」を目指していた。 ヒロからもらった地図によれば、町はまだまだ先らしい。 「…あれ?」 ヨシノシティを離れて1時間ほどしたとき、ハヅキは足を止めた。 モンスターボールの中で、セピア(ポポッコ)が鳴き声を上げた。 「ほら見てセピア、家が建ってる。…誰か住んでるのかな?」 ハヅキの視線の先には、確かに山小屋のような家が建っている。 屋根に突き出た煙突から煙が上がっているのを見ると、人が住んでいるらしい。 「セピア、休憩がてらに寄ってみようか!」 『うん♪いいよ、行こう!』 セピアが言い終わる前に、ハヅキは家に向かって走り始めていた。 コンコン☆ ハヅキが手の甲で、ドアをノックした。 ほどなく、人がドアに寄って来る足音が聞こえてきた。 ドアが開くと、そこには40代前半辺りと思われる男性が顔を出した。 「おや、キミたちは?」 「いきなりごめんなさい。少しだけ休ませてもらえませんか?」 ハヅキが、上目遣いで男性の顔を覗き込んだ。 「キミたち、旅の人だね?いいよ、遠慮なく上がっておいで」 男性は、快く家へ招いてくれる。少し横へどいてくれた。 「ありがとうございます!…おじゃまします」 ハヅキは、一歩家へと踏み込んだ。 家の中は、実にシンプルだ。 本当に生活に必要なものしか、置かれていないのだろう。 そんな中、ハヅキは、ふと家を眺める視線を止めた。 「あのぅ…セツさん、あれ、何ですか?」 ハヅキが、大切そうに置かれているタマゴを指差す。 「あぁ、それはポケモンのタマゴだよ。何のポケモンかは、現段階では分からないのだけれど」 「セツ」と名乗った男性が、微笑みながら言った。 「ポケモンのタマゴ!?すごい、これが…?」 『すごい、私も初めて見たよぉ』 ハヅキはタマゴの前まで行き、その神秘にため息をついた。 モンスターボールの中で、セピアもタマゴに見入っている。 「私はポケモンのタマゴを研究しているんだ。今は、そのタマゴを孵そうとしているんだけど…」 「…何か、あったんですね?」 セツの深刻そうな顔を見て、ハヅキが言った。 「あぁ。研究の結果、タマゴは『心の温かいトレーナーのそばに居ないと孵らない』ことが分かったんだよ」 「『心の温かいトレーナーのそば』…?」 「つまりタマゴは、『心の温かさ』で孵るということなんだ」 セツが頷きながら言う。 「しかし私は、ここを離れるわけにもいかない。誰かに…そうだ!」 セツは、ハヅキの肩を、ぐわっとつかむ。 「ひゃっ!?」 「頼む。ハヅキちゃん…と言ったね。このタマゴを預かってくれないか?」 「えぇっ!?」 「キミならタマゴを大切にしてくれそうだし、安心だ。孵ったポケモンは、キミに育ててもらってもいい」 その言葉に、ハヅキは、ぴくりと反応した。 ポケモンが孵る瞬間を見たいし、何より仲間に出来るなら申し分ない。 「分かりました!私が預かります!」 「おぉ、そうか!助かるよ。じゃぁ…はい」 セツがタマゴを手渡してきた。タマゴの温もりを感じる。 「お、重…!」 「ちょっと重いが、このケースに入れれば、持ち運びも便利だし大丈夫」 そう言うとセツはタマゴをケースの中に入れてくれた。案外、安定しているようだ。 「ありがとうございます。それじゃぁ…」 「お礼を言うのは私の方だ。本当にありがとう。タマゴが孵ったら、いつでもいいから戻ってきてくれるか?」 「分かりました」 セツが手を振っているのを横目に、ハヅキはキキョウシティへの旅路を急いだ。 |
SAKI | #6☆2005.07/07(木)20:19 |
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≪第5章≫ いきなり登場!フリージャーナリスト、リコ! お日様が、ちょうど頭の真上で照っている。 ハヅキは一休みして、昼食タイムをとっていたところだった。 「ん〜っvこのモモンの実、最高♪」 モモンの実をほおばって、ハヅキはほほに手をあてた。 『でしょ?私が見つけてきたんだよ〜♪』 セピア(ポポッコ)が、えっへん、と胸を張って見せた。 「えらいえらい。あたしの好みをよく知ってたわね、セピア」 『とーぜんだよ♪』 セピアの頭を、ぽんぽん、と叩いた後、自分の傍らにあるタマゴケースに視線を移した。 ケースの中には、不思議な模様のタマゴが置いてある。 『…このタマゴ、どんなポケモンが孵るんだろうね』 ハヅキの心中を察したのか、セピアが言った。 「この際、どんなポケモンが産まれてもいいわ。…無事に孵ってくれれば」 『…ハヅキらしいね』 セピアが『くすっ♪』と笑った。 「…さぁ、そろそろ出発しましょ」 セピアをモンスターボールに戻した後、ハヅキはタマゴケースを抱えた。 「ちょっと待ってくださいっ!ハヅキさん!!」 声をかけられたかと思うと、ハヅキの前にマイクが差し出された。 「ひゃっ!?」 「あ、いきなり失礼しました。私、フリージャーナリストのリコと言います!」 いきなり現れた、「リコ」と名乗る女性。 髪は黒のセミロング。服装は、オレンジのシャツに水色ジーパンなサンダル履きだ。 「フリー…ジャーナリスト?」 ハヅキが、おうむ返しに訊(たず)ねた。 「えぇ。各地のトレーナーを取材して回ってるんです。あなたを取材してもよろしいでしょうか?」 「…えぇ、いいですよ」 ハヅキは快く承諾した。 どんなことでも、取材されることに悪い気はしない。 「ありがとうございます!それでは早速…ジュン!」 リコがいきなりポケモン、「ジュカイン」を出したものだから、ハヅキはびっくりだ。 「え…えぇ!?」 「ハヅキさんも、ポケモンポケモン!フリージャーナリストたるもの、バトルでトレーナーの実力を確かめなければいけません」 リコは戦う気まんまんだ。 (取材を受けちゃったんだし、やらなきゃダメよね…) 1つため息をつくと、ハヅキはモンスターボールを握り締めた。 |
SAKI | #7☆2005.07/08(金)18:01 |
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≪第6章≫ VSリコ!白星なるか―― 「出番よ、セピア!」 セピア(ポポッコ)が、高い鳴き声を上げて登場する。 「ハヅキさんのポケモンはポポッコなんですね。メモメモ」 リコは、ポケットからメモを取り出して、何やら書きつづっている。 「…さあ、ハヅキさん!全力で来てください!」 「もちろんよ!…セピア、『フラッシュ』!」 セピアから、明るすぎる光が放たれる。秘伝技、「フラッシュ」だ。 『っ…何も見えない…!』 ジュン(ジュカイン)が、手で顔をおおう。 「あのポポッコ…『フラッシュ』が使えるんですね」 リコは、忙しくペンを動かしている。 『お前…メモなんかしてないで、さっさと指示を出せ!』 ジュンがイライラと言った。 「分かってますよ!…さあ、一気に行きます!」 「ジュン、『リーフブレード』!」 剣(つるぎ)となった葉っぱが、セピアへ向かってくる。 「『はねる』のよ!」 『おっけ〜♪そぉれっ!』 セピアが空高く跳ね上がる。お得意の「はねる」だ。 太陽の光とセピアの体とが、ピッタリと重なった。 「そのまま『たいあたり』!」 『…!?』 不意をつかれたジュンは、バッタリと倒れこんだ。 「ジュン…!」 『大丈夫だ。まだやれる』 すくっと立ち上がったジュンを見て、リコが胸をなで下ろした。 「さすがハヅキさん。私が目をつけただけはあります。ですが…」 リコの表情が、余裕の表れとなった。 「ジュン、『でんこうせっか』!」 その指示が飛んだとたん、ジュンの姿が見えなくなる。 「なっ…どこに行ったの!?」 「は〜い♪前にご注意くださぁ〜い♪」 リコが笑ったとき、ジュンの姿が現れた。…セピアの真ん前に。 『きゃっ…!』 セピアが悲鳴を上げる。「でんこうせっか」がヒットした。 「セピア!大丈夫?『こうごうせい』よ!」 セピアの体が輝いて、みるみるうちに回復していく。 「トドメよ。『たいあたり』っ!」 セピアの全ての力をこめた「たいあたり」がヒット。ジュンは鈍い音を立てて倒れた。 「ジュン…!私の負けです。素晴しい戦略でした」 目を回しているジュンをモンスターボールに戻しながら、リコが言った。 「勝った…!」 ハヅキが、よろこびの歓声を上げた。 |
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