ぴくの〜ほかんこ

物語

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[746] ひとりたび

香織 #1★2005.07/18(月)17:19
ちきゅう  それは共存の場
あい    それは生きる力
にんげん  それは愚かな生き物


1話
 いつの日だったろう、兄が家を出て行ったのは。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
兄が好きで好きでたまらなかったあの頃。
何でも知っている兄。何でも出来る兄。何でも解る兄。
自分に対しての態度は冷たかったが、それでも俺はこよなく兄を
したっていた。
そんな兄が10歳になった時のことだった。
「レッド、気をつけるのよー!必ず何かあったら帰ってきなさーい!忘れ物はない?ないわね!ほら、ブルーが起きる前に行 きなさい!」
母の声で目が覚めた。それから小さく兄が何か言う声も聞こえた。きっとそんな大きな声を出したら、ばれないものもばれるとか何とか言ったのだろう。今だからわかるけど。
「行ってらっしゃい!」
(え?いってらっしゃい・・?)
ハッとした。そういえば今日は
(お兄ちゃんの誕生日だ!)
まさしくそうだった。兄は優秀だから、10歳になってすぐ学校で補習も何も受けずに旅にでたのだった。
小さかった俺は急いで階段を転がるように降りてった。いつもの階段がとても長い。そしてリビング、母はテーブルでテレビを見ていた。
「あ。」
母が何かまずいものでも見てしまったような顔をした。
「起きちゃ
「お兄ちゃんは!?」
母の言葉をさえぎって叫んだ。
「お兄ちゃんは?どこ?お兄ちゃん!?」
俺は玄関に向かって走った。
「あ、ダメッ!」
母に腕をつかまれたが、振りほどいて扉を開けた。
目の前に、リュックを背負った兄を後姿。
「お兄ちゃん!!」
もうそこで涙目になってたかもしれない
「お兄ちゃん!もう行っちゃうの!?何でぼくを起こしてくれなかったの?ぼくも、ぼくも一緒に行く」
兄は足を止めた。こちらに背を向けたまま突っ立った。
1話終
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香織 #2☆2005.07/21(木)20:45
2話
 
自分に背を向けたまま兄は言った。
「ついてくるな。」
そういう兄の声は冷ややかで残忍だった。彼の連れのヒトカゲが軽く、くうう〜とうなった。続けて兄は言った。
「ついてこないで、追いかけてこい。」
と。今思うとたかが10歳の子供が自分の弟に対しての言葉かと思うとありえないように聞こえるが、確かに彼はそう言ったのだった。”追いかけてこい”と。まだ5歳の俺にはわかんなかった。その言葉の重みとその本当の意味が。
それから俺はポケモンの勉強という勉強にひたすら励んだ。まだ5歳からだったが、兄を思う気持ちが後押ししてどんどんポケモンの知識を身につけた。お陰で学校では成績も良好だったし、先生たちからは将来のポケモントレーナーへの専門的な道も期待された。だから俺も5年前の兄と同じように10歳補習なしでひとりたびへ出ることが許されたのだった。
もうみんなもわかってると思うが、俺の名前はブルー。俺の兄はレッドだ。そして、もう1人。みんなに紹介しなきゃならない大切な友達がいる。名前はクリス。俺が9歳の時に隣に引っ越してきた女の子だ。
彼女もまた、ポケモンに関しては素晴らしい成績の持ち主で、俺はいつもどこか心の奥で彼女をライバル視しては止まなかった。それは今になっても変わらないかもしれないけど。
まあ、紹介はこんなところにしてそろそろ俺たちの物語を話そうと思う。物語といっても、俺が今まで体験してきた話だが。
俺の兄のこと。幻のポケモンのこと。クリスのこと。

まず俺の話は、10歳になった朝から始まる。
10歳の誕生日の朝。昨夜はどきどきしてろくに寝れたもんじゃなかったが、なんとか気合で自分を起こしリビングへ向かった。
いつも通り母がテレビを見てる。俺はもうた旅のしたくを済ませていたのでそのまま母に話しかけた。
「母さん、今日で俺、10歳だよ。だから・・」
「わかってる」
母は静かに言った。まるでこの日を待ち望んでたようだった・・。かな。あくまで俺が感じただけだけど。
「言うことはレッドと何も変わらないわ。行ってらっしゃい。お母さん、こんな優秀な子供に恵まれて幸せよ。ただロケット団には気をつけなさい。最近、妙に力をつけ始めたみたいなの。テレビで言ってたから。もう警察もあてになんないのよ。だからね、自分の身は自分で守るのよ。何かあったらすぐ帰ってきなさい。ここは何があろうと、あなたの家に変わりはないんだから。わかった?」
「うん。」
ちょっと涙ぐんだけどなんとかこらえた・・つもりなんだけど、やっぱり里離れというのは悲しいもので、いや、ホントにけっこう寂しいんだよ、これ。だから、その、まあ結局、泣いちゃったんだけど、ほら、それはね、まだ10歳ってこともあって、まあ、つまり泣いちゃったのだ。バレないよう下を見た。それがすごく恥ずかしかった。
「行ってきます。」
なんとか持ちこたえられた。
「あ、ちょっと待って!」
なんとか持ちこたえるハズなのだが・・
「オーキド博士が用があるって。出かける前に研究所に寄って行きなさい。クリスちゃんも一緒みたいだから」
まじかよ。クリスを越えたと思っていたが、やっぱりそんなことはなかった。てゆうか、そもそも彼女と奇跡的に誕生日が同じ事で絶対そうくるとは予想はついていたけどね…。はぁ。
「わかった。」
ふいに顔をあげてしまった。しまったと思ったが、もう遅かった。
「あら、あんた泣いてんの?もう男の子が情けないわねえ」ふふふと母は笑った。
( ´,_ノ` )ああ、やってしまった。
俺は顔を赤く染めつつ、家をでた。
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