鈴守 | #1★2005.08/26(金)21:00 |
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第1話〜ポケモン研究所、検査時間に〜 ここはポケモン研究所。 数多くあるポケモン研究所のなかでも特に大きく、地上50階までのビルだ。 ただ、大きいだけではなく、やはりそれなりに技術も高い。 あまり、よく思われていないことなのだが、ポケモンを幼い頃から隔離して、薬や機械を使って検査、実験をすることで、ポケモンについて詳しく調べることができている。 もちろんポケモンは嫌がって暴れたりするのだが、その暴れたポケモンは次の日からは、自我をなくす。 ただ、おとなしく検査や実験を受け続けるだけ。 これがどういうことか知っているのは、ここの研究所の研究員と隔離されているポケモンのみ。 ポケモンは4匹ずつグループにしてある。 そのグループで同じ部屋の檻に1匹ずついれておく。 モンスターボールは使っていなくとも、自由にはなれないのだ。 研究員たちにとってのポケモンは実験材料、または金稼ぎのための道具でしかなくなっていた。 30階のD室。 ここにはマリル♀のルマ、ピカチュウ♂のピカチ、プリン♀のププリ、オタチ♂のオタタがいた。 この4匹は自我をなくしてはいないが、精神的にはだいぶ前から疲れが来ていた。 しかし、これが当たり前の生活。 そう、諦めてきた。 研究員のある話を聞くまでは。 それは、オタタの検査時間のことだった。 研究員A「おい、知ってるか?」 研究員B「ああ、制御システムのことか?この間近くに雷が落ちたからな、そのせいだろ。」 研究員A「まあ、でも止まらなくてよかったよな。」 研究員B「そうだな。止まったら、自我があるポケモンは全部にげるだろうし。」 研究員A「そうすれば、研究も進まなくなるしな。」 オタタ(制御…システムだって?) −2話に続く− |
鈴守 | #2☆2005.08/08(月)19:48 |
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第2話〜少しの可能性〜 30階D室。 さきほどオタタが検査から帰ってきたばかりだ。 オタタは研究員が部屋から出て行くなり、話を始めた。 オタタ「おい!very goodニュースなんだけど!!」 ピカチ「え、お前ベリーグッドって単語、英語で書けたんだ? 」 オタタ「わざわざ、作者に英語にしてもらったんだぜ!英語ができるってことを証明するために!!」 作者(え、そんなことのために英語にしたんだっけかな?) ピカチ「…15歳でベリーグッドくらい書けないとやばいし。ここの研究員に授業してもらってんだから。」 ププリ「で、そのvery goodニュースって?」 オタタ「えー。ふうせんには言いたくないなあ…。」 ププリ「うるさい、タヌキ。」 オタタ「俺、タヌキじゃねーんだけど。」 ルマ「あの、ベリーグッドニュースは?」 オタタ「え。ルマまでカタカナなの?…まあ、いいや。」 オタタはさっきの研究員の話を3人にした。 話が終わると真っ先に声を上げたのは、珍しくルマだった。 ルマ「それ、すごいねっ。ここから出れるかもってことだよね?」 オタタ「おーうっ!な、very goodニュースだろ?」 ピカチ「うん。まあ。」 ププリ「…でも、ここから制御システム壊せないじゃん。」 オタタ「…そりゃ…そうだけど…。」 オタタは檻のなかにいる自分と、3匹を見た。 どう考えても、ここからでるなんて自分たちの力では不可能だった。 ルマ「システム壊す前に騒ぎ起こせば、すぐばれて…洗脳電波…だしね。」 ピカチ「それがあるから、みんな逃げらんないわけだし。」 オタタ「…わかってるよ。言ってみただけだって…。」 オタタのいつもの元気な声がなくなった。 ここから出ることに対しての期待を一気に裏切られた気分だった。 3匹に対しての負の感情はまったく無かったのだが、自分に対しては負の感情があるよう。 仲間を少しでも期待させてしまったから。 ルマ「で、でも。いい情報だと思うよ、もしかしたら出れるかもしれないわけだし!」 ピカチ「可能性はあるってことで。」 ププリ「たまにはいい情報もって来るよね、オタタも。」 オタタ「…もっと確かな情報ならよかったな!」 ルマ「うん。そうだね…。」 ルマは少しうつむいて考えていたが、思いついたように3匹の顔をみる。 そして、さっきの暗い表情とは正反対の笑顔を見せた。 ルマ「もしかしたら、このメンバーなら…出れるかもしれないよ?」 その笑顔につられたかのように、日差しが部屋の中に入り込んだ。 曇っていた空がいつの間にか晴れている。 まだ、諦めるのは早いという知らせだったのかもしれない。 −第3話に続く− |
鈴守 | #3☆2005.08/10(水)19:16 |
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第3話〜外へ出るために〜 ルマの急な発言に驚く3匹。 オタタ「え!なんでだよ?」 ルマ「私たちに洗脳電波が流れなければいいわけでしょ? 」 ププリ「そうだけど…。直接制御システムを壊すのは無理だよ?」 ルマ「うん。…作戦は考えてあるよ、一応。」 ププリ「え、何?どうするの?」 ルマ「えーっと…あの…ピカチじゃないとできないことなんだけど…。」 少し言いづらそうに、ルマがそう言った。 ピカチはそれを聞くと、何かを思いついたかのように頷いた。 ピカチ「ああ、なるほどね。なんとなくわかった。」 オタタ「マジ?どういうことだよ?」 ピカチ「俺が検査の時間に、制御システムに通じる機械に微電流を流すわけ。洗脳電波は他の機械を通して流れるから、逆にこっちから微電流を流して調子を悪くすれば、洗脳電波は使えないし、研究員はパニックになるじゃん。」 ルマ「うん、そう。さすがピカチだね!」 ピカチが説明しなくてもわかったことが嬉しいのだろう。 ルマはニコニコ笑顔でピカチを見た。 その視線に気づき、ちらっとルマをみるピカチだが、すぐに目を逸らしてしまう。 照れているためか、うつむいたままピカチが言った。 ピカチ「そ、そのあとはわかんねーから…バトンタッチ…。」 ルマ「あ、うん。そのあとは…。」 ルマが計画を話しはじめた。 3匹は補足をしたり、反対したりしながら聞いていた。 最終的な計画はこうなった。 1:ピカチの検査時間に、制御システムへつながっている機械に微電流を流し、洗脳電波を使用不可にする。 2:その間に、ルマたちがその辺にいる研究員からエレベーターキーを頂く。(盗るってことだけど。) 3:エレベーターを使って検査室に行って、ピカチと合流。 4:合流した後にまたエレベーターを使い、50階へいって制御システムを破壊。自我をなくしたポケモンたちに自我が戻る。 5:みんなで脱走。 オタタ「全然楽じゃねーよな、この作戦…。」 ルマ「こんな大きいところから、楽して逃げれるわけないもん…。」 ププリ「途中で研究員のやつらが邪魔してくるだろうし…。」 ピカチ「まあ、なんとかなるんじゃないの。俺ら、戦闘能力低くないみたいだし。」 確かにこの4匹の戦闘能力は低いものではなかった。 ルマは基本能力も高めで、技の制御に関しては上級者。 ピカチは基本能力が研究所全体でも1番か2番くらいに高い。 ププリは基本能力はそこそこだが、いざとなったときの大技がとんでもなく強い。 オタタは基本能力はそんなに高くはないが、技が豊富でどんな相手にも対抗できる。 この4匹ならば、なんとかなりそうな気はする。 あとは、その他のポケモンたちが逃げる勇気を持つかどうか。 そこが1番、難しい問題ではあるのだが…。 この作戦を実行するのは、明日の午後。 ピカチの検査時間となる。 −第4話に続く− |
鈴守 | #4★2005.08/17(水)19:39 |
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第4話〜脱出と技の制御〜 次の日。 ピカチの検査時間になり、研究員が部屋に入ってきた。 ルマたちはピカチを見てお互いにうなずいた。 研究員が不思議そうな顔で、4匹を見る。 研究員A「なんだ?いつもと何か様子が違うな…。」 研究員は一人でぶつぶつ呟きながら部屋を出て行った。 ルマたちは目を合わせて、にっと笑った。 オタタ「よし。じゃあ俺らはここから出て…ってちょっと待て!」 ルマ「どうしたの?」 オタタ「どうやってでるんだよ?」 ルマ「ああ〜…。大丈夫、私が出た後に2匹とも出してあげるから。」 ププリ「え?」 ルマは檻に手を当てる。 すると少しずつ、檻が凍っていった。 冷気のせいで自然と部屋の気温も下がった。 オタタ「すげー。こんなこともできんのか〜。」 ププリ「技の制御レベルはトップクラスだからね、ルマちゃん。」 ルマ「あはは、ありがとー。…もういいかな。」 ルマはそういうと手に力をこめる。 『冷凍パンチ』の応用版といったところだろう。 檻にはルマが出れるくらいの穴が開いた。 ルマはにっこり笑うと、2匹の檻にも同じようにして穴を開けてやる。 ルマ「じゃあ、ピカチのところまでレッツゴーだね。」 ププリ「あーあ。研究員と会わなきゃいいなあ…。」 オタタ「お前の大技だったら、研究員が即終了だけどな。」 ププリ「…なんかムカつく。」 その頃のピカチ。 検査台に寝かされて、いろいろな機械につながれている状態だ。 研究員C「うむ…以前よりも安定した状態だな…。」 研究員B「これなら進化も今週中にはさせられるのでは?」 研究員A「それはどうだろう、もう少し安定してからのほうがいいと思うが。」 ピカチ(…進化したくないっつーの…。) 研究員C「しかし、なぜこれほどまでに安定したのだ?今までの結果からみると、不思議だが…。」 研究員A「…そういえば。今日のこいつとルームメイトはいつもと様子が違ったな。」 ピカチ(だって逃げる気だったもん、仕方ねーだろ。…もう微電流、流していいかな。) ピカチはほんの少しずつ、電流を流す。 ほんの少しずつならば、ばれるまでに時間がかかる。 その間にルマたちが来れば、ばれたとしてもここにいる研究員だけは、なんとか倒せるだろう。 ピカチ(…あいつら、上手く部屋から出たのかな…。) ピカチがそう思っているとき、ルマたちは研究員と戦っていた。 −第5話に続く− |
鈴守 | #5☆2005.08/18(木)14:02 |
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第5話〜戦闘開始〜 今、ルマたちの目の前には一人の研究員と、一匹のペルシアンがいる。 もちろん、脱走したことがバレたからである。 研究員D「ペルシアン、こいつらを動けなくするんだ。」 ペルシアン「了解。…脱走者というのだから、それなりの力はあるのでしょうね?」 オタタ「少なくても、お前を倒すくらいの力はあるな〜。」 ペルシアン「…言ってくれるじゃない。私の力、甘く見ないほうがいいわよ?」 ペルシアンはそういうと、戦闘態勢入る。 ルマたちも戦闘態勢に入った。 が、その瞬間だった。 いつの間にかペルシアンが目の前にいない。 ペルシアン「…遅いわね。」 ルマ「え…!!」 いつのまにかペルシアンはルマの真後ろにいた。 そしてルマが振り返ったと同時に、尖った爪がルマに襲い掛かった。 ルマはなんとか手で押さえたが、手には深い傷ができていた。 ププリたちが急いで駆け寄る。 オタタ「お、おいっ。ルマ、手…。」 ププリ「大丈夫?こんな深くて、戦える?」 ルマ「…痛いけど…早くピカチのところにいかないと、ピカチも危ないから。」 ルマは無理に笑って見せた。 しかし、その顔にも口調にも、迷いはないようだった。 自分よりも、ピカチを優先したがっていることは、ププリにもオタタにもわかっていた。 3匹は改めて、ペルシアンに向き合う。 ペルシアン「私の力がわかったかしら?…でも、これからが本番よ。」 ププリ「…いいよ。面倒だけど、こっちも本気ださせてもらうからね。」 オタタ「俺らを相手にしたことは確実に後悔するからな、覚悟しろよ?」 ルマ「これくらい、どうってことないからね。」 ペルシアン「…あら、それは誤算ね。」 ペルシアンはつぶやくと高くジャンプした。 ププリもそれを目掛けて浮き上がった。 ペルシアンはそれを確認すると、爪をププリに向けた。 降りてきたペルシアンの爪がププリに当たろうとした。 しかし。 ププリ「直撃…だね。」 ペルシアン「…なっ?!」 ププリは両手を前に出して、にっと笑った。 手から出てきたのは、炎。 つまり『火炎放射』だ。 ペルシアンはまともに受けて、地面に落ちる。 それを研究員はあわてる様子もなく黙って見ている。 ペルシアン「…まだよ。…まだ、私は本気を出してないわ。」 ペルシアンの体が光りだす。 電気のせいだ。 ペルシアンは電気で体をつつみ、立ち上がった。 オタタ「…じゅ、10万ボルト?!」 ププリ「そうみたい。本気モードだね。」 ルマ「すごい、電気を感じる…。」 ペルシアン「当たり前よ。私の本当の力を見せてあげるわ。」 ペルシアンはそういうと、一気に電気をルマたちに向けて放出した。 ルマはその電気を避けれるとは思っていなかった。 しかし、ルマの水の防御では電気をさえぎることはできない。 オタタやププリも防ぐ手立てはない。 ルマたちの目の前に電気が襲い掛かった。 その瞬間。 3匹の目の前には、大きな星の盾が出現していた。 驚く2匹に対し、ルマは冷静だった。 ルマだけは、この盾を見たことがあったのだ。 ルマ「もしかして…。」 ルマが振り返ると、そこにいたのは昔のルームメイトだった。 −第6話に続く− |
鈴守 | #6☆2005.08/20(土)10:30 |
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第6話〜再会とエレベーターキー〜 ルマ「メグマくんっ!」 メグマ「あ。ルマさん、久しぶりだね〜。」 メグマはヒメグマの少年で、ルマの昔のルームメイト。 星の盾は『スピードスター』の応用技で、ルマは昔にも見たことがあったのだ。 ププリとオタタは関わりを持っていなかったため、不思議そうな顔で2匹を見ている。 それに気がついたメグマが2匹にペコっと礼をする。 メグマ「はじめまして。おいら、メグマっていいます。」 ルマ「メグマくん…今、戦闘中…。」 メグマ「あ、そうだったねっ!」 オタタ(なんか、のんびりしたやつだなあ。) ププリ(癒し系…?) ペルシアンの攻撃は、メグマの星の盾によってすべて防がれた。 しかし、ペルシアンはまだ戦闘態勢を崩さない。 ペルシアン「…こんな盾に、私が負けるわけがないわ!」 メグマ「ええ〜。こんな盾って…。おいらの自慢の盾なのに…。」 メグマがしょぼんと肩を落とす。 そこを狙ったペルシアンはメグマに爪を向ける。 しかし。 ペルシアンがメグマだけを狙っていたことを見切ったオタタが、ペルシアンの後ろに回っていた。 オタタ「俺、結構な大技持ってるんだぜ?」 ペルシアン「っ!!」 オタタ「吹っ飛べ〜っ!!」 オタタは拳に力を入れて、思いっきりペルシアンを殴る。 オタタの大技、『爆裂パンチ』。 相手にスキがない限り、当てるのは難しいが当たればすごい威力だ。 ペルシアンはオタタの言葉通り吹っ飛んだ。 オタタ「ふー。もうさすがに諦めただろ、あいつも。」 ルマ「オタタくん、すごかった!」 オタタ「え。そう?」 ププリ「あんたにしては珍しく、反応が早かったね。」 オタタ「…いつもは遅いって言いたいのか、お前。」 ププリ「えー、別に?…あ。忘れないうちに。」 ププリはオタタを軽く流すと、研究員のほうに向かっていく。 研究員はその様子に1歩後ろに下がった。 ププリ「ねえ、エレベーターキー持ってるでしょ?」 研究員D「な…。俺はそんなもの持っていない…。」 ププリ「嘘だね。」 研究員D「う、嘘なんかじゃないさ…。」 ププリが粘るが、研究員はまったく動じない。 その様子を見て、ルマも研究員の近くに行く。 ルマ「エレベーターキー、持ってないんですか?」 研究員D「ああ。俺は持っていないぞ。だから、このまま…。」 ルマ「…研究員全員が持ってるはずですよね〜?」 研究員D「なぜ知っている?!」 ルマ「他の研究員さんから聞いた〜。」 研究員はまた1歩後ろへと下がった。 ルマは笑顔だが、後ろに黒いオーラが出ている。 ルマ「渡したほうが身のためだと思いますけど。それとも、あのペルシアンみたいになりたいとか?」 研究員D「そ、それだけは勘弁してくれ!!キーは渡すから!」 研究員がごそごそと白衣のポケットからエレベーターキーを出す。 そしてルマに手渡す。 受け取った瞬間ルマは、 ルマ「…脱走したこと、誰かに言ったら…吹っ飛んじゃうかもね。」 と、小声で言ったが、それは研究員以外には聞こえていない。 研究員は震えながら、走り去っていった。 −第7話に続く− |
鈴守 | #7☆2005.08/22(月)20:07 |
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第7話〜遠いものを見る瞳〜 オタタ「じゃあ、さっそくエレベーターに乗って…10階に行くんだっけ?」 メグマ「10階ってことは…検査室?」 ルマ「あ。あのね、メグマくん…。」 この計画を知らないメグマに、ルマが説明する。 メグマはふーん、と頷くと笑顔になった。 メグマ「おいらも協力していい?」 ルマ「え、本当?」 メグマ「ただ、助けてもらうっていうのも申し訳ないから〜。」 ルマ「うん。ありがと。」 2匹が盛り上がっているうちに、エレベーターの扉が開いた。 4匹は急いで乗り込んだ。 誰か人が来ないうちに扉を閉めようと、閉ボタンを連打するオタタ。 壊れたらどうするのだろう…。 その様子を見てププリは軽くため息をついた。 ププリ「何してんの?そんなの1回押せばいいじゃん。」 オタタ「いや、だって早く閉めたいからさー…。」 ププリ「連打しても早く閉まる事はないんだよねー。」 オタタ「もしかしたら、って考えねーのかよ、お前は〜。」 オタタがププリにあきれる。 ププリもオタタにあきれているのだが。 そんな2匹をみて、メグマが笑顔で言った。 メグマ「ププリさんとオタタくん、仲いいね〜。」 ププリ「え。やだし、こんなやつ。」 オタタ「俺だって、風船なんかやだね〜…。」 ププリ「うるさいってば、タヌキ。」 オタタ「うるせーのはお前だっ。」 ププリ「あんただから。」 オタタ「お前だって!」 ププリ「あんただって!」 2匹はムキになってにらみ合う。 メグマはオロオロして2匹を止めようとしている。 そんな中、ルマだけは隅でぼーっと立っていた。 オタタもププリもそのことは、視界に入っていない様子。 そしてまた、いろいろと悪口を言い始める。 その様子にいいかげん呆れたメグマは、ふとルマのほうを向いた。 外の景色が見えるわけでもないのに、遠いものを見るかのような瞳。 横から見てもわかる、どこか寂しそうな表情。 メグマ「…何、見てるの?」 ルマ「…え。あ、いや…ただ、ぼーっとしてただけだよ。」 メグマ「そう?なんか遠くにあるもの、見てたような気がしたんだけど。」 ルマ「遠くにあるもの?…そうかも…。」 ルマは、オタタと話している(悪口かもしれないが。)ププリをちらっと見る。 そして、目を伏せた。 ゴトゴトと揺れるエレベーター。 もうすぐ20階。 20階を過ぎようとしたとき、ルマが口を開いた。 ルマ「…遅いよね、このエレベーター。」 メグマ「え?そうかなあ…。」 ルマ「もうちょっと早ければよかったのに。」 メグマ「…ねえ、どうしたの?」 ルマ「…え?」 エレベーターが早ければいい、と苦笑いをしたルマにメグマは真剣に問いかけた。 ルマは少し戸惑いながら、また苦笑いをした。 そして口を開いた。 その時だった。 エレベーターの揺れが止まった。 つまり…エレベーター、停止。 オタタ「…え。」 ププリ「止まった…?」 メグマ「え、どうしよ〜…。」 ルマ「…早くいかないといけないのに〜っ…。」 ルマの瞳にさらに不安そうな色がかかった。 −第8話へ続く− |
鈴守 | #8☆2005.09/01(木)19:33 |
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第8話〜止まったエレベーター〜 4匹はなんとか動かないものかと、ボタンをいろいろと押してみるが効果なし。 はあ、と4匹はため息をつく。 何とかしてでなければ、そろそろピカチのことも心配だ。 落ち着いていられないオタタが、キョロキョロを辺りを見回す。 すると、何かを見つけたらしく、3匹に知らせる。 オタタ「お?なあ、これって非常ボタンだよな〜?」 オタタは深く考えずにポチっとボタンを押した。 扉が開く。 しかし、扉の向こうには黒い壁しかなく、出口など見当たらなかった。 オタタ「あれ、出口は?」 ププリ「多分、緊急の出口はどっかにあると思うけど、ちょうど無い場所に停止したってことだねー。」 ルマ「上は?あの〜、エレベーターの上。…行けないん?」 ルマの言葉に3匹は同時に上を見る。 飛行能力のあるププリが、ためしに扉から出てみた。 そして、上からトンっと物音がした。 ププリが上に乗った音だ。 ププリの声が響いてルマたちに伝わる。 ププリ「なんか、もうちょっと上に穴っぽいのあるよー。」 オタタ「お、いいんじゃねーの?そこからでよーぜ。」 ププリ「エレベーターについてるロープを使えば…いけるかも。」 ププリの言葉を聞いて、3匹も上にあがろうとする。 しかし、飛行をできるわけでもない3匹はだいぶ苦戦していた。 オタタはしっぽで立てれば余裕なのだが、過去に飲まされた薬のせいでしっぽで立つことは不可能。 しばらくして、ルマが何かを思いついたように手をポンと叩いた。 ルマ「あ。そうだ。メグマくん、スピードスターできるよね?」 メグマ「え?うん。できるけど…。」 ルマ「それ、階段にしていこうよ。」 メグマ「あ、そっか〜。じゃあ…それっ!」 メグマが『スピードスター』を出して階段を作る。 ちょうど乗りやすい大きさになっていて、ルマたちは落ちる心配も無く上へあがれた。 上へあがると、ププリが言っていたとおり、穴があった。 ただ、飛び移れる高さではなくロープをつたっていかないといけない状態だ。 ププリ「どうする?うちは飛んでいける高さだけど…。」 オタタ「ロープで行けばいいじゃんか。」 メグマ「ええ〜。危ないよ〜。」 オタタ「そんなことねーって。こんな太いロープ、切れるわけないし。」 ルマ「でも、これいろいろコードとか入ってるから…危ないよ?」 オタタ「心配性だなー。じゃあ俺が先にのぼって、大丈夫そうだったらお前ら呼ぶからさ。」 オタタはそういうと、ロープにしがみついてのぼり始める。 ププリはふわふわと飛んで穴に向かう。 ププリはすぐに穴に着いたが、そのときオタタは半分くらいのところにいた。 その2分くらい後にオタタもようやく穴に着く。 そして大声で叫んだ。 オタタ「おーい!大丈夫そうだから、お前らも来いよ〜っ。」 メグマ「うん、わかった〜っ。」 メグマが大声で返事をする。 ルマは上を見上げていたが、なにやら下からガタガタと音がすることに気がついて、下を見る。 メグマも、音に気がついて下を見てみる。 なにやら…エレベーターが動いている…? ルマ「う、動きそう…。」 メグマ「と、とりあえず中に入ろうよ。このまま動いたら、おいらたちあぶないよ。」 ルマ「うん…。」 2匹は、また『スピードスター』の階段でエレベーターの中まで移動する。 ちょうど中に入ったときだった。 エレベーターが下に降り始めたのだった。 −第9話に続く− |
鈴守 | #9☆2005.09/03(土)21:14 |
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第9話〜大切な存在だから〜 ルマとメグマは、エレベーターが動いたことにより、一気に下まで降りることができた。 なぜ、エレベーターが動いたかというと、多分オタタがロープを使ったことにより、接触が良くなったのだろう。 …しかし。 ルマ「ここ、1階だよね〜?」 メグマ「本当だ〜。じゃあ、またあがらないとね。」 …ということらしい。 メグマが10階のボタンを押す。 が、またしてもハプニング。 いくらボタンを押しても動く気配がないのだ。 扉を開けようとボタンを押しても、扉さえ開かない。 2匹は同時にため息をついた。 ルマ「早く、いきたいなあ…。」 メグマ「…ルマ、さん?。」 ルマは、ぼそっとつぶやくとしゃがみこんだ。 エレベーターが止まる前の瞳と同じ。 遠い何かを見ている瞳。 そしてどこか不安そうな。 メグマはルマの様子がおかしいと思い、隣にしゃがみこんだ。 メグマ「どうしたの?エレベーターに乗ったときから、なんか不安そう…。」 ルマ「そう…かな?」 メグマ「そうだよ〜?」 ルマ「だ、大丈夫だよ。そんな気にしなくても…。」 ルマはメグマに笑いながら言った。 しかし、その笑いかたに影があることはメグマにはちゃんとわかっていた。 メグマ「ピカチくん…だっけ?」 ルマ「ぴ、ピカチっ?ピカチがどうかしたのっ?」 メグマ「心配なんでしょ?ピカチくん…のこと。」 ルマ「え、あ…うん…。」 メグマ「なんでそんなに心配なの?」 ルマ「…私にとって…本当に大切な存在、だからね〜。」 ルマの瞳は嬉しそうであり悲しそうな…どちらともとれる色をしていた。 メグマが心配そうな顔でルマの顔を覗き込むと、ルマは小さく微笑んだ。 メグマ「ねえ、なんで大切な存在なの?」 ルマ「…私、すっごく暗くなってるときあって…。そのときに話してくれた、それだけなんだけどね。本当に…支えになった気がしてるんよね。」 メグマ「そうなんだ…。」 メグマは目を伏せた。 ここ−研究所−にいるかぎりは、暗く…絶望している時期があってもおかしくはない。 メグマもそれは十分に理解していた。 しかし、すぐに顔を上げていつもの笑顔でルマを見た。 ルマもつられて笑顔になる。 メグマ「良い子なんだね、ピカチくんって。」 ルマ「うん、すごく良い子。」 メグマ「…ルマさんの理由は…自分じゃないんだね。」 ルマ「え、何それ?」 メグマ「…ここを、出ようと思った理由。」 ルマ「えっ?べ、別にピカチの為にこの計画したわけじゃ…。」 ふと真顔になったメグマからの指摘に、オロオロするルマ。 かあっと顔が赤くなっていく。 それを見て、メグマは不思議そうな表情になった。 ルマが恥ずかしがる理由がわからないのだろう。 メグマ「顔、赤いよ?」 ルマ「や、き、気にしないでっ?」 メグマ「?…でも、熱あったら大変だし…。」 ルマ「あの、そういうんじゃなくて…と、とにかく平気。」 メグマ「そう?なら…よかった〜。」 ルマ「う、うん…。」 メグマの本当に安心したような笑顔。 この笑顔にルマは、ピカチを思い出していた。 検査が終わった時、いつも見せる笑顔に、どことなく似ていたから…。 −第10話に続く− |
鈴守 | #10☆2005.09/04(日)15:47 |
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第10話〜電気の音〜 何をしても開かないエレベーターの扉に、2匹はため息をつく。 ルマの『冷凍パンチ』では凍らせられず、メグマの『スピードスター』も星が割れていくだけ。 2匹の大技をすれば流石に壊せるだろう、と思ったが…。 ルマの『ハイドロポンプ』はエレベーターの中が狭く、使えない。 メグマの『地震』は説明必要なし。 ルマ「こんなとき、ピカチがいたら…よかったのに。」 メグマ「そんなにピカチくんのこと好きなの?」 ルマ「えっ、あ、いや、そ、そーじゃなくてっ。」 ルマがあわてて否定しようとした、その時。 なにやらバチバチと電気の音が聞こえた。 どんどん音が大きくなっていく。 メグマは危険を感じてか、とっさに『スピードスター』で盾を作る。 その判断は正解だった。 次の瞬間、エレベーターの扉は粉々に砕けていたのだ。 まだ、パチパチと電気の音が聞こえている。 メグマの大きな盾が消えると、さっきの電撃を放ったポケモンの姿が見えた。 その姿に、ルマは目を見開く。 ルマ「…ピカチっ!」 メグマ「え?…この子が?」 ピカチ「…あれ。だれ、こいつ?」 ルマがお互いを知らない2匹に紹介する。 紹介が終わるとメグマがピカチに手を差し出した。 ピカチは黙って、その手を取る。 ルマは本当に嬉しそうな笑顔でその様子を見ていたが、思い出したようにポン、と手を叩く。 ルマ「でも、なんでここにピカチがいるん…?」 ピカチ「ああー、検査室でさ…。」 ピカチの話によると、検査中に微電流を流したことがバレて仕方が無いから、検査室の研究員を全員倒した。 ということらしい。 メグマ「え、1匹で全員…?」 ルマ「ピカチは能力高いからね〜。…そのせいで進化も勧められてきたんだけど…。」 ルマは目を伏せた。 さっき、メグマの笑顔に重ねてしまった、ピカチの安心したときの笑顔。 進化をさせられなかった喜びと、次の検査への不安。 ルマにはそれがよくわかっていた。 ルマが自分の代わりに落ち込んでいることが、なんとなくわかったのだろう。 ピカチが話を戻した。 ピカチ「まあ、早く行かないと、まずい事は確かなんだけど。」 ルマ「あ、うん。…?」 表情を堅くして、壁の影のほうを見るルマ。 あきらかに、壁の影じゃない、別の何者かの影がある。 ピカチとメグマも気がつく。 チーク「おー。俺のこと気がついた?俺はチークっていうんだ。お前らは?」 ルマ「あ、私ルマです。」 メグマ「おいらはメグマっていいます〜。」 ピカチ「…ピカチ。」 3匹は聞かれたとおり、とりあえず名前は名乗ってみた。 チークとかいうクチートは、ニッコリと笑って見せた。 チーク「へえ〜。せっかくだから友達になりたいところなんだけどさー。」 メグマ「え?友達になろうよ〜。なんか事情?」 チーク「だって、お前らのことを倒すのが俺の役目なんだよ。」 チークが言い放った言葉に3匹は体を堅くした。 −第11話へ続く− |
鈴守 | #11★2005.09/10(土)13:26 |
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第11話〜譲れないモノ〜 先に戦闘態勢に入ったのはチークのほうだった。 チーク「俺だって、こういう状況じゃなきゃ戦ってねーよ。でも、主人の命令を無視するなんて出来ねーんだよ。」 ピカチ「…まさか、俺たち3匹相手に1匹で戦うってことは無いよな?」 チーク「3匹相手でもいい!俺は負けられねーんだよ、絶対。」 その言葉のあと、バチバチと電気の音がし始めた。 ルマとメグマが驚いた表情で、ピカチを見た。 ピカチは下を向いて、2匹に言う。 ピカチ「こういうやつからは、逃げ切れないから…。」 ルマ「…わかった。」 メグマ「しかた…ないね…。」 ルマとメグマも戦闘態勢に入った。 チークは3匹のほうに向かってくる。 一見、そのまま攻撃をしてくるのかと思ったが、そうではなかった。 チークが急に後ろを向くと、ツノが大きな口をあけていた。 そのようすにビクっとした3匹だが、その中で早く行動が出来たのは、以外にもルマだった。 ルマ「近くにいなきゃ、問題ないよね〜。」 ルマはそういって、『バブル光線』を放つ。 が、この攻撃は、チークがツノを一振りしただけで消されてしまった。 その様子に驚くルマ。 接近戦は危険なため、ルマは今度は『ハイドロポンプ』を放とうと、もう一度態勢を立て直した。 しかし。 チーク「俺にも攻撃させてくれないと困るんだけどっ!」 メグマ「ルマさん、あぶないっ!!」 ルマが態勢を立て直している間に、チークのほうが接近していた。 メグマが危険を察知して、叫んだ声が響いた。 ルマが避けようとしたときは、すでに遅く、チークの『かみくだく』が決まろうとしていた。 ルマ(もう、避けれないっ…。) 目をつぶるルマ。 しかし、次の瞬間、痛みはなかった。 おそるおそる目を開けてみると、目の前にいたのはチークではなかった。 電気に身を包んだ、ルマの大切な存在。 ピカチ「あぶねー…。」 ルマ「ピ…カチ?」 ピカチ「ん、平気?」 ルマ「…うん。ありがとう…。」 チークはピカチの『雷パンチ』によって、吹っ飛んでいた。 かと思ったが…。 チーク「…どこ見てんの?」 ピカチ「後ろ…?いつの間に…」 チーク「俺の得意技だからね。」 チークの『だましうち』がルマに決まる。 ルマも軽く飛んだが、上手く『バブル光線』でクッションを作っていたので、衝撃は少ない。 チークはそれをみて、ふーん、とでも言いたそうに頷いた。 チーク「やるじゃん?さっきのピカチが前に出てきたときの速さといい、今のといい…。」 ピカチ「感心してる暇なんて、無いと思うけど?」 ピカチが『10万ボルト』を放つ。 それと同時にメグマも、動く。 チークはまともに『10万ボルト』を受けて、フラっとしているところにメグマの『穴を掘る』がヒット。 だいぶ大きなダメージを受けた。 それでも、諦めた様子は無く、立ち上がるチーク。 チーク「これくらいで…。俺には譲れないモノがあるんだよ!」 チークの声には、強い意志がこめられていた。 窓から、少しだけ光がこぼれている。 チークの決意のように、小さくともはっきりとした光だった。 −第12話へ続く− |
鈴守 | #12☆2005.09/20(火)21:47 |
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第12話〜同じ気持ち〜 ピカチ「それは、俺たちも同じだし。」 チーク「俺のことと比べたら、小さいことだろっ?!俺は、大切なパートナーがいるんだよっ。」 ルマ「ちがうっ!変わらない、大切なものの大きさなんて!私だって大切な存在、いるもんっ!」 チーク「うるせーっ!小さいことで、大切だなんて言うなっ。」 チークの体が光る。 ルマたちは今さら気がついたが、さっきから窓からこぼれていた光がチートに集まっていた気がする。 ピカチはルマの前に立ち、メグマは『スピードスター』を集め始めた。 ピカチ「…もっと下がってたほうがいいんじゃない?」 ルマ「ぴ、ピカチは?」 ピカチ「お前、水タイプじゃん。」 ルマ「そうだけど…ピカチがダメージ受けちゃうっ。」 ピカチ「…いいんじゃない?俺は、別に問題ないけど。」 ルマ「私が嫌だよ、そんなのっ。」 ルマは下がろうとはしなかった。 多分、チークが放とうとしているのは『ソーラービーム』。 しかも、今のチークの心境からすると威力は相当大きくなっていることが予想できた。 そんな攻撃を受けたら、いくらピカチでも危険である。 ルマには、そのことがわかっていた。 それよりも、大切な人が傷つくのが、何よりも嫌なのだ。 ピカチ「いいから、下がってろってば。メグマ、後ろに連れてって、こいつ。」 ルマ「絶対動かないから。大切な人を犠牲にして助かっても嬉しいと思わないもん。」 ピカチ「…え…。」 チーク「…俺の決意は、絶対曲げらんねーんだよ。」 チークのさっきよりも低い声が聞こえたと思うと、目の前には大きな光線が向かってきていた。 それくらいチークの決意が込められているのだろう。 ルマは前にいるピカチを、後ろに引っ張った。 ピカチがバランスを崩して、後ろに引かれたとき、ルマは前に出ていた。 ピカチが止めようとしたときはすでに遅く、『ソーラービーム』はメグマの盾を壊し、ルマに触れるところだった。 衝撃で4匹全員−放った本人まで−が吹っ飛んだ。 ピカチは、吹っ飛んだものの、たいした怪我も無かった。 メグマも同じようだ。 チークは倒れている。 そうとう無理をしたのだろう。 ピカチ「…あいつは?!」 メグマ「え。る、ルマさん!!」 ルマもやはり倒れていた。 ピカチたちはルマのところに駆け寄る。 途中、なぜか水が体にはねたが、そんなことはまったく気にしなかった。 メグマ「生きてる…よね?」 ピカチ「…ん。大丈夫そう…。」 メグマ「よかった〜。でも、なんであれだけ大きいソーラービームを受けても、大丈夫なんだろ…?」 ピカチ「…そっか。さっきはねた水って…こいつが…。」 メグマ「え?どういうこと?」 メグマがピカチに尋ねるが、ピカチはそれには答えなかった。 ピカチは、ふと苦笑いをして、メグマに言った。 ピカチ「ごめん。お前も同じかもしれないけど。」 メグマ「何が?」 ピカチ「俺…ここを出たい理由、変わったみたい。」 メグマ「え〜?何?全然意味わかんないよ〜。」 ピカチ「だって、わかんないように言ってるんだもん。」 ピカチがいたずらっぽく笑う。 メグマは、ぷうっと頬を膨らました。 ピカチはルマに向かってつぶやいた。 ピカチ「お前、わかりやすすぎじゃねーの?」 メグマ「何いってんの?さっきから変だよ、ピカチくん。」 メグマが不思議そうな表情で、ピカチを見たがピカチは何も言わなかった。 ピカチ(大切な人とか、言われたほうの身にもなってみろって。) −第13話に続く− |
鈴守 | #13☆2005.09/25(日)11:36 |
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第13話〜関係と想い〜 なかなかルマは目を覚まさない。 離れたところに倒れているチークも。 ピカチは2匹を見て、ため息をついた。 ピカチ「無茶しすぎだし、こいつら。」 メグマ「でも、ルマさんはピカチくんを助けようとしてっ…。」 ピカチ「そんなのわかってるっつーの。そうじゃなくて…」 メグマ「ルマさんは…良い子だよ。」 いつもとは違う、メグマの真剣な眼差し。 ピカチはつい、視線を逸らしたが、すぐに言葉を発した。 ピカチ「なんなの、お前。」 メグマ「メグマだよ?」 ピカチ「そうじゃなくて!…ルマの…なんなの。」 メグマ「…幼馴染かなあ。」 ピカチ「それだけ?」 メグマ「え?」 メグマが不思議そうな表情で聞き返す。 ピカチは、あ、と口元を押さえた。 ピカチ「な、なんでもない…。」 メグマ「そう?それにしても、ルマさん起きないね〜。」 メグマが話を流したことに、内心ホッとするピカチ。 だいたい、メグマがルマの何であろうと自分には関係ないことのはずなのに。 頭ではわかっているのに、なぜかメグマに対してイライラしている。 ルマのことを大切に想っていることは、悪いことじゃない。 誰が誰をどう想ったっていい、そんなの個人の勝手。 それはわかってるのに、なんでこんな気持ちになるのか、ピカチには理解できなかった。 ルマ「ん…。」 メグマ「あ、ルマさん!」 ルマ「あれ、私…。」 ピカチが考えている間に、ルマがようやく目を覚ました。 まだぼーっとしているようで、目をこすりながら倒れる前の記憶をたどっている様子。 しばらく考えていたが、突然ポンっと手を叩いた。 ルマ「あ!そういえばチークくんが…。メグマくんたち、怪我ないっ?!」 メグマ「うん、おいらたちは平気〜。ルマさんがハイドロポンプしてくれたから、ほとんど相殺して…。」 ルマ「そっか、よかった…。」 ルマがいつもの笑顔を見せる。 ただ、疲れのせいか、多少ぎこちない。 しかし、その疲れも飛ばすかのようにポンっと立ち上がった。 ルマ「ごめんなさい、私のせいで時間ロスしちゃったよね…。」 メグマ「え、そんなことないよ。それに、仕方ないことだもん。」 ルマ「これから、ロスした分取り返すから…急ごう?」 メグマ「うんっ。…ピカチくん?」 ピカチ「…ああ、うん。」 ぼーっとしていたピカチも、ゆっくり立ち上がった。 立ってからもぼーっとした様子に、メグマとルマは顔を見合わせる。 本当はその2匹の様子が影響しているのだけれど。 3匹は急いで階段を上る。 エレベーターは壊れてしまっているからだ。 これから目指すのは50階。 制御システムを破壊するために。 そのころのオタタとププリは49階で敵と遭遇していた。 −第14話へ続く− |
鈴守 | #14☆2005.10/02(日)14:10 |
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第14話〜姉弟コンビネーション〜 オタタとププリの目の前には二ドリーナとニドラン♂がいた。 両者ともバトル態勢に入っている。 なぜ、こういう状況になったのかというと…。 オタタとププリはルマたちと別れたあとに相談して、先に制御システムを破壊しに行った方が効率がいいと考えたのだ。 それで、49階まで上がってきたのだが、そう簡単に50回までいけるわけも無く、この2匹に遭遇してしまったというわけだ。 様子を見る限りでは、ここに隔離されているポケモンではなく、研究員のポケモンであろうことがわかる。 ラピス「…あ。そういえば自己紹介がまだだったよね?」 ラン「姉ちゃん、こんなときに…。」 ラピス「まあまあ。私はラピスといいます。この子はラン。」 ラピスは戦闘態勢をやめて、礼をした。 その様子に3匹は呆れていた。 ププリ「ん〜…。じゃあ、一応うちらもする?」 オタタ「だな〜。俺はオタタ。こいつがププリ。」 ププリ「よろしく…はできないけど、うん。」 ラピス「そうだね〜。私たち敵同士だからね。」 にっこり微笑んだラピスを見て、ププリは悪寒を感じた。 どこかで見たような笑顔だったからだ。 ププリ(…る、ルマちゃんに似た笑い方…。) オタタ「おい、ププリ?ぼーっとしてんなよ〜。」 ププリ「あ、うん。わかってるってば。」 ラン「もういいだろ?そろそろバトルしない?」 ラピス「あんまり戦いたくないけど…。ご主人の命令だから、逆らえないの。」 改めて戦闘態勢にはいる4匹。 先手をとったのはランだった。 オタタとププリを目掛けて無数の『毒針』を放つ。 オタタとププリはかろうじて、全部避けきった様子だ。 その様子を見て、ランとラピスは顔を見合わせた。 ラン「へえ〜。なかなかやるじゃん?」 ラピス「ってことは、私たちのコンビネーションで倒すしかないってことかな?」 ラピスはそういうとププリに向かって走っていく。 ププリは何か攻撃をされると思い、空中に浮かぼうとしたがその前にラピスの『噛み付く』がきまっていた。 足を噛み付かれているため、身動きできないププリ。 ププリ「痛〜っ!放してよ、このバカ〜。」 ラピス「ごめんね、仕方ないの。ご主人の命令、聞かないわけにいかないから。」 ラピスはランに向かって意味ありげに頷いた。 ランが頷き返した直後、無数の『毒針』がププリにむかって放たれていた。 ププリは自分が避けれないことを、すぐに理解する。 足に噛み付かれていては、動けないのだ。 ププリは目を瞑る。 ププリ(…もう…避けれない…。) オタタ「ププリっ!」 ラン「まず1匹戦闘不能…か。」 ランがそうつぶやいた。 ラピスもそのつぶやきに頷いた。 …しかし。 この2匹の予想外のことが起きていたのだ。 −第15話へ続く− |
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