ぴくの〜ほかんこ

物語

【ぴくし〜のーと】 【ほかんこいちらん】 【みんなの感想】

連載中[784] 気の向くままに――ホウエンの旅

チッチル☆ #1★2006.12/14(木)18:48
〜プロローグ〜
ここはミシロタウン。静かで小さな町だ。
いつもは静かなこの町に大きな声が響く。
「ユイッ!起きて!起ーきーてー!もう朝だよっ!」
大きな声を出すのはチルット。こんな声出したら、歌が歌えなくなってしまうぐらい大きな声。
チルットの側には爆睡中の少女。
セミロングの髪が、乱れまくっている。
なんか幸せそうな寝顔。
「もう8時だよっ!7時半に出発の予定じゃなかったの!?」
「ふに…」
「なんかムカつく」
チルットは小さな足を少女の頬に乗せ、グリングリンと回す。
「え〜まだ8時でしょ。平気平気…って、え!?」
いきなり飛び起きる少女――ユイ。
そしてチルットに文句を言う。
「シトラスッ何でもっと早く起こしてくれなかったの!?」
「起こしても起きなかったよ!」
「むぅ。じゃ、出発は明日にしよう。お休み!」
「絶対今日がいい!って言ったのは誰だ!」
言い返すチルット――シトラス。
「ふん。いらん事だけは覚えてんな」
「るっさい。――で、準備はできてるの?」
「聞いて驚け。もう出来てる」
「…やるじゃん。でも!寝癖は直せ!パートナーとして恥ずかしい!」
感心した直後ぶち切れるシトラスを華麗に無視し、ユイは階段を駆け下りる。
そして、
「いってきまぁす!」
勢いよくドアを開けた。
「朝御飯は〜?」
間延びした声で聞いてくるお母さんと、
「そういえば今日だったネ!」
バタバタと飛び回るやかましいキャモメ――とんび(母命名)をシトラスと同じく無視して。
――こんな騒々しい朝、ユイとシトラスの旅が始まった。

多分続く(ぇ)
p2058-ipbf1504marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp
チッチル☆ #2★2006.12/14(木)20:02
「ポケモンがいっぱいいるね〜w」
ユイが嬉しそうに言う。
そんな彼女の目の前には、ジグザグマやポチエナ等のポケモンが集まっている。
「ユイ、ポケモン見つめてないで早く行こうよ。今、モンスターボール持ってないから捕まえられないし」
「分かってる…あっ可愛いw」
ユイがそばにきたポチエナを見て立ち止まる。
「クウ〜ン」
ア○フルの犬のような声を出すポチエナ。
「うわ〜このコ凄い可愛い!」
ユイがポチエナを撫で撫でし始める。
寝坊のせいで予定が狂っているのでシトラスは不満そうだ。
「ユイ。早くして。蹴っ飛ばすぞ」
「凶暴だねまったく。…でもさ、こういうポケモンと触れ合う事が初心者には大事な訳で」
「るっさい。ホントに蹴っ飛ばすぞ」
「クゥ〜ン」
まだ行かないで、と言いたいのだろうか。
淋しそうな声だ。
「もきゃ〜wかーわいいw」
ユイはさらに撫で回す。
「やめなよ。こういう野生のポケモンは何するか分かんないよ?」
どんどん不満が高まってきたシトラスは、ポチエナを睨みつけた。
要は、お前どっか行け。というサイン。ユイが駄目ならポチエナに。それがシトラス戦法(意味不明)
さらに「グルルルル」と、唸っている。犬かお前は。
どうやらポチエナは、このサイン(というかガン付け)にすぐ気づいたようだ。
…が、その後が酷かった。
ダラダラしくさってるオメェのせいで俺が睨まれてんだけど。と言わんばかりにユイに噛み付く。
「痛ぁ!え!ちょっと!さっきまで可愛かったのに!」
「だから言ったんだよ!野生は何するか分からないって!」
そうこうしている間に、ポチエナはユイをひっくり返して鞄を漁ると、黒い物を持ち去って行った。
「…ユイってさ。財布の色、黒だっけ?」
「痛ぁ…。そうだよ。黒」
「なんか、持って行かれたっぽいけど」
「…嘘ぉ!?なんで止めてくれなかっt」
ユイは、シトラスのドス黒いオーラを感じたので、途中で文句を止めた。
その後、鞄を漁りまくったが(おかげで中はめちゃくちゃ)財布は見付からなかったらしい。
p2058-ipbf1504marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp
チッチル☆ #3★2006.02/27(月)22:04
ユイとシトラスはコトキタウンを通り過ぎ、
トウカシティに向かって歩いていた。
「何かトレーナーがいっぱいいるな〜バトル申し込まれそう」
シトラスが心配そうに言う。
「いいじゃん。勝てばお金稼げるし」
ユイはあまり不安ではないようだ。
「でもさ、ユイはバトルの経験あんまりないでしょ」
「平気平気。経験があんまりない人って結構いると思うよ」
「ユイって気楽でいいね。憧れるよ」
シトラスが皮肉っぽく言った。
「ありがとうございます」
ユイも皮肉っぽく返した。
それから二人はしばらく無言で進み続ける。
「バトル仕掛けてくる人いないね。私達弱そうなのかな」
沈黙を破ったのはユイだ。
「弱い方が賞金取りやすいから結構声かかると思うよ」
ユイの意見はあっさり退けられた。
「てことは…私達強そうなんだ!」
「そんな嬉しそうに言わなくてm」
「おいお前ら、俺とバトルしないか」
シトラスの言葉を遮って、後ろから声がかかった。
p18076-adsan11honb5-acca.tokyo.ocn.ne.jp
チッチル☆ #4☆2005.09/28(水)14:58
「オイラは虫取り少年のカンタ!お前は?」
「えっと……ミシロタウンのユイ」
カンタのような自己紹介など考えていなかったので、とりあえずユイは自分の出身と名前を言う。
「ふ〜ん、ユイか。じゃあバトルすっか。1対1でいいよな?」
「いいよ。」
「そっか。いくぜ、ユイ!オイラはコイツだ!ケムッソ!」
カンタがボールを投げる。
ポン!と言う音がして中からケムッソが出てくる。
「(呼び捨てかよ……)シトラス!」
ユイの肩からシトラスがふわっと地面に降りた。
「あ〜コイツ、飛行タイプかな?だとしたら負けるかも。
ま、いいや。出しちゃったんだし。ケムッソ!糸をはく!」
諦めたように指示を出すカンタ。
ケムッソの口からかなり速いスピードで糸がはき出される。
「え、ちょ、待って……いきなりってアリ?!」
「ユイ!早く指示を出して!」
ユイがおろおろしている間に、糸はシトラスに伸びてくる。
「わわわ……シトラス!避けてつつく!」
間一髪、シトラスは糸を避けてケムッソに突進していく。
「ぐぎゃっ」
シトラスのつつくはケムッソにヒットし、ケムッソは吹っ飛ばされてしまった。
「あっ、ケムッソ大丈夫か?」
カンタがかけよるが、ケムッソは目をぐるぐるマークにしてダウンしていた。
「負けちゃったか。相性が悪かったからな……これ賞金」
カンタがダウンしたケムッソをボールに戻しながら賞金を渡す。
「相性って何?」
賞金を受け取りながらユイが聞く。
相性も知らないトレーナーはユイの他にいるのだろうか?
「相性ってのはポケモンのタイプの強い弱いの関係の事だ。
もうオイラはいくぜ。じゃあな」
「うん、じゃあね。またバトルしようよ」
「次はユイが負けると思う……」
シトラスが突っ込む。
「うっさいな。早く行こうよ」
ユイはトウカシティに向かってもう歩き出していた。
p11242-adsan11honb5-acca.tokyo.ocn.ne.jp
チッチル☆ #5★2006.02/24(金)16:55
ユイとシトラスはトウカシティにとうちゃーく☆
ユイは手にお金を持ちながらニコニコ笑っている。
「ここがトウカシティか〜でっかいね〜」
「ミシロタウンよりでかい町はたくさんあると思う…」
シトラスは疲れているようだ。あっさり勝てたとはいえ、経験があまりないのだから無理もない。
「それにお金も貰えたし♪天国だね天国♪」
「ユイは天国かもしれないけど私は…」
「あれ?シトラス疲れてない?ポケモンセンターで休む?」
「うんありがと。そうすr「ヒッヅッキー!くふふっ」へ?何?」
大きな声とともにキノガッサが現れ、ユイを突き飛ばしていった。
「ちょっお金がっ」
ユイの手からお金が飛び散る。
ユイを突き飛ばしたキノガッサはユイの後ろにいた青年の背中にへばりついていた。
「スバル…何度も言っただろう。後ろから飛びつくなって。
それに人を突き飛ばすな」
ヒヅキと呼ばれた青年がキノガッサを怒っている。
「んも〜怒ると体に毒ですよ?謝ってくるからもう怒らないでよ」
スバルと呼ばれたキノガッサがヒヅキをなだめて(なだめながらもくすくす笑っていた)、ユイのほうに歩いてくる。
「さっきは突き飛ばしてしまってすみませんでしたっ
ついでに言うと僕はスバルって名前であっちのトレーナーがヒヅキ。よろしくねっ」
スバルがぺこりと頭を下げる。
「あ、べつに平気ですから」
飛び散ったお金の真ん中にいるユイの目はぐるぐるマークだ。
本当に平気かどうかはかなり言い難い。
ユイの周りをうろうろしながらスバルはお金を拾ってあげていた。
p18076-adsan11honb5-acca.tokyo.ocn.ne.jp
チッチル☆ #6★2006.03/12(日)19:56
「お金はこれでOKね。なんでお財布に入れないの?
こんな人って見たことないなぁ。ふふふっ☆
あとさ、名前も聞いてないよね。教えてくれる?」
ニコニコ笑いながらスバルが言う。
さっきからヒヅキはだんまり。
「じゃあ、初めに自己紹介から。私はユイでこっちはシトラス。
んでもって、お財布にお金入れないのはポチエナにお財布取られたから」
「へえ、じゃあユイとシトラスって呼ぶね。
で、お財布にお金入れないのはポチエナに取られたから?
…あはははははははは!!」
一つ一つ確かめるように言ったあと、急に大笑いするスバル。
その横でヒヅキもクスクス笑っている。
「ちょっと、そんなに笑うことはないんじゃ…」
「あーはははは、うひゃひゃひゃひゃ、にゃははははは!!」
さっきからスバルは大爆笑している。
変な笑い方も混じっているし、シトラスがふくれっ面をしているが気にしない。
「スバル…もうやめた方が…」
ヒヅキがストップをかけるがヒヅキだってまだ笑っている。
「あははははははは!だって、うくくくく、本当に面白いんだもん、くくくく…」
スバルはまだ笑っているが、だんだん笑いが収まってきている。
「この先不安だ…これ、使え」
ヒヅキが小さな袋とモンスターボールを数個、渡す。
「あ、良いんですか?ありがとうございます☆」
笑われた事なんか全然気にしていないようなユイの言い方。
早速袋にお金を入れ、モンスターボールを腰につける。
「ありがとうございますっ♪」
ユイが再びお礼を言い、感謝の目で見つめた途端、ヒヅキが赤面した。
そして脱兎の如く逃げ出す。
「じゃ、じゃあなっ」
「じゃね〜グッバイ☆」
手を振るスバル。ヒヅキは振り向かずに逃走している。
しばらくして、「ヒヅキ〜!」と言う声としかる声が聞こえた。
p7070-adsah09honb5-acca.tokyo.ocn.ne.jp
チッチル☆ #7★2006.02/18(土)13:47
「私は朝ご飯も昼ご飯も食べて無い…と思う」
「そうだよ。今気付いたの?」
ぐ〜ぐるきゅ〜。ユイのお腹がなる。
「いや、だって…先急いでて忘れてたし…」
「虫取り少年から貰ったお金だけでご飯食べられると思ってんの?」
信じられないという顔をするシトラス。
ただいまのユイの所持金―250円。
ジュースが1本と10円ガムが数個買えるくらいだ。
「やっぱ…無理?」
「ガムとジュースで足りるなら良いけど」
ぐるるる〜。お腹の音がむなしく響いた。

「ひえっ助けて下さい!」
「黙れっ!一生俺のためにボール作れんのか!」
「無理です!」
「この付け髭を超強力ボンドで付けるぞ!」
「やめてください!」
ここはトウカの森。
ヒヅキが呆れた目で目の前のコントっぽいもの?(脅迫事件)を見ている(スバルは笑っていた)
「何だ…これ…」
「コントッ☆うふふっ、面白いね〜これ。きゃははっ」
少なくともコントではない
「スバル…」
「くふふふふっ、だって脅しに見えないじゃんっ」
はっきり言って助ける気配0%(ヒヅキは助けるかもしれない)
「この〜!そこのボールを渡せっ、さもないと…」
脅迫していた男が懐からナイフを出した。
サバイバルナイフのようだ。
「あ…!」
「うわっ物凄いヤバイじゃん!」
血相を変え、ヒヅキとスバルは駆け出していった。
p18076-adsan11honb5-acca.tokyo.ocn.ne.jp
チッチル☆ #8★2006.02/18(土)09:13
「この先はトウカの森か。ここに行けば木の実とかあるかも」
「じゃあ行く?」
「もっちろん!行くに決まってるでしょ!」
いつの間にかポケモンセンターに移動していたユイとシトラスは
地図の前で話している。
「でもさ…木の実とか、本当にあるのかな?」
「あるの!絶対あるの!」
心配そうなシトラスに向かってユイが大きな声で言う。
「私、森の中で野宿しなくちゃいけないって言われてもしないk」
「ハイハイシトラスちゃんグダグダ言ってないで行こーねー」
ユイはシトラスの言葉を遮り、強引にポケモンセンターを出た。
夜は少しずつ近寄ってきている。

「おい、そのナイフをしまえ」
「やなこった!しまえと言われて素直にナイフをしまうヤツがどこにいるっ」
にらみつけるヒヅキに男が反抗する。
「それに、俺の好きなタイプは飛行なんだ!
だから手持ちも飛行タイプばかりだ!お前のキノガッサなんて楽々勝てる!」
なおも反抗を続ける男。
その口調はみんなの前で威張り散らすガキ大将みたいだ。
「それでもまだ俺に言うのか?言わない方が良いと思うなぁ。
もう一回言うがキノガッサなんて楽々勝てr」
「…ウラアァアァアァア!」
今まで黙っていたスバルが爆発した。
目の前でいろいろ言われてニコニコしている人は滅多にいないだろう。
スバルは、ものすごい勢いで男に飛び掛って頬にパンチを打ち込んだ。
男とナイフが吹っ飛ぶ。
それを研究員がびっくりして見ている。
「ポ、ポケモンが人間に暴力ふるっちゃいけないんだ…ゲフッゲフッ」
「おい、スバル…ちょっと強すぎたんじゃ…」
スバルは答えず、むくれている
「怒るといつもこれだからな…」
ヒヅキがため息をついた。
p18076-adsan11honb5-acca.tokyo.ocn.ne.jp
チッチル☆ #9☆2006.03/17(金)17:30
トウカの森の中。
「木の実結構集まったね!」
ユイが10個程の木の実を持っている。
今にも手の上から落ちそうだ。
その横ではシトラスがクラボの実を突いている。
「どう?私こんなに木の実集めたんだよ♪」
誇らしそうにシトラスの方を向いて―――仰天する。
「なんでそんなに持ってるの?」
シトラスの横には15個程の木の実があった。
ユイの負けだ。
「これくらいあった方が後で食べられると思って」
シトラスはユイのリュックを引っぺがし、木の実を詰め始める。
ユイは手伝わない。負けたのがショックらしい。
「どうせシトラスには勝てないよ…」
「走る事だったら勝てるよ。私は走れない」
「そうだねっ!」
ユイの顔がパアッと明るくなる。
「後ね、出口も見つけておいたんだ。すぐそこ。飛んでたら見つけるのは楽だよ」
「じゃ、出よ!」
そして、意気揚々と出口を目指す―――

「あふぅ…」
「あのぉ…大丈夫ですか?」
男を研究員が心配する。
「今すぐ救急車を呼びますn」
「ちょっと待ったぁ!前科バリバリのこの人を刑務所に連れて行く気なのぉ?!」
男の腰のボールからスバメやキャモメ等の飛行ポケモンが出てきた。
そして力を合わせ、「せ〜の!」の掛け声で飛び立つ。
あっという間に姿が見えなくなった。
「ありがとうございました。あの…少ないですが、これ」
研究員がボールを出す。最新型だ。
「…どうも」
「じゃ、ボクはこれで」
研究員は一礼した後立ち去る。
「…俺達も行くか」
「うん!」
ヒヅキとスバルも歩き出す。
p4136-adsan10honb5-acca.tokyo.ocn.ne.jp
チッチル☆ #10☆2006.03/21(火)18:48
チュンチュン―――
どのポケモンかは判別できないが、鳥ポケモンが鳴いている。
いつにも増して爽やかな朝だ。
そして、カナズミシティのポケモンセンターにユイ達は居た。
毛布に包まってピクリとも動かないユイを、シトラスは呆れ顔で見つめている。
「朝だよ〜!」
呼びかけても「ふに…」としか言わないのは承知の上だが、とりあえず声をかけてみる。
「ふに…」
予想通りの声が返ってきた。
シトラスのトレーナーは今日も生きているようだ。
「朝だって」
もう一度声をかけて見るが、今度は反応が無かった。
「あ〜あ…。こんなに気持ち良いのにね…。
ユイ!私散歩に行って来るからね!」
聞こえているかは分からないが、ユイはくるりと寝返りを打った。
「ま、聞こえて無くても起きる頃には帰ってくるし…」
シトラスはポケモンセンターの窓を開け、飛び立っていった。
すぐに見えてくるのは、家などが建ち並んだ賑やかな風景。
ミシロタウンに住んでいたシトラスにとっては新鮮な風景だ。
たくさんの人々が出てきたシトラスを珍しそうに見ている。
人々の目を気にせず、シトラスは右に進路を変えた。
同じく賑やかな風景。たくさんの人々。
そこでシトラスは見つけた。
とある家の塀に寄りかかって座っているクチートを。
p13212-adsah09honb5-acca.tokyo.ocn.ne.jp
チッチル☆ #11☆2006.03/29(水)17:03
「ふに…」
ユイが本日二度目の言葉を発する。
そして、いきなりむくりと起き上がって、辺りをキョロキョロ見回す。
―――シトラスが居ない(ユイ視点)
一般なら多少の心配はする筈なのにユイは、
「ま、いいや。寝よ」
あっさり毛布にもぐりこんでしまった。
自分の眠りを邪魔する者がいなくなっているのでこの機会に二度寝しようと思ったのだ。
しかし、二度寝をする事はできなかった。
シトラスが帰ってきたからだ。
「ただいまー」
「…ちっ」
軽く舌打ちして、もう一度起き上がる。
運良く舌打ちは聞こえなかったようだ。
シトラスの隣に見た事の無いポケモンが居るのが見えた。
「ん…何?その子」
「クチートって種族らしいよ。
どっかの家の塀に座ってて、トレーナー募集中だって言うから連れてきた」
ユイの問いにシトラスが事務的な口調で答えた。
「えっと…シトラスさんが私のトレーナーなら絶対拾ってくれるって仰りましたので来ました…
もし良ければ…拾って下さい」
クチートは丁寧な口調で話し、ペコリと頭を下げた。
ユイは黙っている。が、目はキラキラと輝いている。
「すっごい可愛い!連れてくの、OKに決まってるじゃん!」
嬉しそうにしているユイを見ながら、シトラスは「ほらね」とクチートの方を見て笑う。
「ありがとうございます!えっと、私はチェロと言います。
これから宜しくお願いします!」
再び頭を下げるクチート―――チェロ。
こうしてユイとシトラスの旅に新しい仲間が加わった。
p13250-adsan10honb5-acca.tokyo.ocn.ne.jp
チッチル☆ #12☆2006.04/04(火)12:28
…で(何)
チェロを仲間にするという発言の後、ユイは再び毛布にもぐりこんでしまった。
そしてすぐに寝息を立て始める。
「まだ寝るか…」
流石のシトラスも、唖然。
「推定10時間は寝てらっしゃるのではないですか…?」
「お、当たり。何故分かった?」
「何故って…寝すぎでボーっとしたような顔してますし…」
「いつもこんな顔だよ…」
「2度寝を始める事から、寝るのは嫌いじゃない方だと感じたんです…」
「ユイは今のご時世に珍しく11時以降まで起きていた事無いよ」
「凄いですね…私、読書してて夜中の1時まで起きてた事があります…」
「これで早起きだったら最高なんだけど…」
「遅起きですね」
「はぁ…」
「寝すぎると頭がふらふらして良くないそうです」
「何処でそんな情報を…?」
「事典です」
このようなやり取りの間もユイは幸せそうな顔で眠っている。
「…さてと。今の会話で何分か経っただろうから起こすか。寝すぎは良くないとの情報もあるし」
シトラスは言いながらすうっと息を大きく吸い込み―――
「起きろ!!」
とてもとても大きな声だった。
「起きろっつってんだろ!」
チェロはあまりの大音響で、ふらふらしている。
が、ユイは起きない。
「いつにも増してしぶとい…いつもなら『ふに…』って反応するのに…」
「それじゃ、ちょっと良いですか?」
チェロはユイの方へ歩んで行った。
そして―――ガチン!
後ろにあるもう一つの口が勢い良く閉じられた。
2回、3回、4回…口を開けたり閉じたりが続く。
今度はシトラスがふらふらしている。
5回目でユイの目が薄く開いた。
それを二匹は見逃さない。
「起きろ〜!!」
「起きて下さい!」
大音響の合唱により、ユイはやっとこさ起きたのだった。

しばらくしてジョーイさんがユイ達の部屋を訪ねてきたそうだ。
p9011-adsan11honb5-acca.tokyo.ocn.ne.jp
チッチル☆ #13☆2006.04/05(水)13:34
カナズミシティのポケモンセンター内のテーブルにて。
「なんで起こすかなぁ…心優しくて誠実なパートナーなら起こさないでしょ…」
「何故起こすかという疑問にお答えしましょうか?それは私達が心優しくなくて誠実でないパートナーだからですよ」
ユイの文句をチェロがあっさり切り捨てた。
「二度寝をする事から考えて疲れてるな…って想像できるものじゃない?」
「ふ〜ん…ミシロじゃ何もしないのに二度寝してたよね」
今度はシトラスが切り捨てた。
もう反抗する手が見つからないのでユイは諦めた。
そして、リュックから木の実を数個取り出しながら
「ポケモンセンターって何するところなの?」
と、チェロに聞いた。
「ポケモンの回復が主です。他にも寝泊りできたりご飯を貰えたり…」
「木の実よりちゃんとしたご飯のほうが良いな…」
「じゃあ有料ですが今から頼みます?」
シトラスの顔が青くなった(元々青いじゃないかという疑問はナシ!)
「じゃ、一番安いの頼む!」
「ブラックコーヒー…値段は250円ですね」
所持金全部じゃないか…
シトラスの顔がもっと青くなった。
「うえ…コーヒーは苦手だな…他h」
「待った!ユイ、所持金を確認!」
ユイは渋々ヒヅキから貰った財布を確認する。
「いくらだった?」
「250円」
「だから何も頼んじゃダメ!頼むのはバトルでお金を稼いでから!」
250円…
チェロの顔も青くなる。
「ユイさん…?なんでこんなに少ないんですか?」
「ポチエナに財布盗られちゃった☆1000円ぐらい入ってたのにね」
ユイはえへへと笑う。
笑い事じゃない。
「で、今稼ぎ中…なんだけど一人しかバトルしてないんだよね…」
「じゃあ、ジム戦はどうですか?レベルは高いですけどそこそこお金を貰えますよ」
チェロの提案に、
「うん、そうする!」
ユイはあっさり賛成した。
一方シトラスは、
「ジム戦…嫌だな…」
ハァ、とため息をついた。
p9011-adsan11honb5-acca.tokyo.ocn.ne.jp
チッチル☆ #14☆2006.07/18(火)17:44
「んじゃ、そうと決まったらジムに直行だぁっ!」
食堂とか寝室とかが色々混じっているが、一応ここは病院なのでユイの声はボリュームを落としてある。
「今更ボリューム落としても遅いと思います…」
控えめにチェロが言う。
が、その声や表情からしてとてもジム戦が楽しみなようだ。
(もしかしたら好戦的ってヤツ…?)
シトラスは自分の考えが恐ろしくなり、ブルブルと身震いした。
その様子に気付いたチェロは、怪訝そうな顔をしてシトラスを見つめてくる。
「シトラスさん、寒いんですか?」
「おっかしいな。馬鹿は風邪引かないっていうんd」
ユイを蹴り飛ばしておいてから、シトラスは笑いながら言った。
「ううん、何でもない」
その時、シトラスの言葉尻にかぶさって、自動ドアが静かに開いた。
入って来た青い服に青い帽子という出で立ちの集団が場違いな声を張り上げる。
「警察だ!全員連れているポケモンを出せ!」
「は…?」
その場に居た全員が唖然とする中、若い警官が老人の肩に乗っていたジグザグマを捕まえる。
「放せぇ!放せってばぁ!」
ジグザグマがもがくが、頭と尻尾を捕まれて警官が持っていた袋に放り込まれてしまう。
「警官さん。その子を放してやってくれ!」
老人の言葉をさも聞いてなかったかのように無視し、今度はピカチュウを捕まえる。
そして、別の警官がユイ達の所にもやってきた。
「さぁ、そのチルットとクチートを渡せ」
p2185-adsau12honb5-acca.tokyo.ocn.ne.jp
チッチル☆ #15☆2006.11/05(日)13:50
「…ドッキリだ。コレはドッキリなんだよ」
普段と変わらない感じがするが、ユイは明らかに動転している。「な訳あるかッ!」
「…やっぱり?…でもさ、警察って平和を守るために活動するんでしょ?」
「ですよね。私も前のご主人様と居た時にテレビを一緒に見ていたんですけど、こんな事無かったです」
「私も見たこと無い」
「仮に野性ポケモンが暴れたとしても家庭にいるポケモンを奪ったりはしないと思うのですが…」
「おい、早くしろ」
一人の警官が割り込んできて、彼女達はやっと我に帰った。
チェロは、キッと警察を睨みつけ、訊いた。
「どんな問題があって、このような対処をする事になったのか、教えて下さい。教えてくれたら、私達もそっちに行きましょう」
「私達って…!ちょっと酷いよチェロ!私そっちに行きたくないんだけど!」
「シトラスさん、ちょっと黙っていて下さい。すぐに分かりますから」
チェロの怪しげな笑みに惑わされつつ、シトラスは黙った。
何だか妙に迫力があって、コワイ。
「…この辺りに居る野生のグラエナが人に噛み付いたからだ」
警官の答えに、
「この辺りに野生のグラエナは生息していませんが?」
チェロの反論。
確かにグラエナはこの辺りに生息していない。
墓穴を掘ってしまった。と警官の顔はみるみる青ざめていく。
「予想通りでした。ユイさん。この方々、警察では無いです」
「やっぱりドッキリ?」
「偽造っていうか…化けてたんでしょ」
嬉々とした表情のユイにシトラスが冷静に言う。
「ま、そんな感じです。…覚悟はいいだろうなぁ、テメェら」
突然口調の変わったチェロに一同が驚く中、
「燃え尽きろ!『火炎放射』!」
怒声と共に後ろの大顎から色鮮やかな炎が発射される。
p4052-ipbf901marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp
[784]

このページは http://www1.interq.or.jp/kokke/pokemon/commu/story/784.htm のアーカイブです。

ぴくの〜ほかんこ