ぴくの〜ほかんこ

物語

【ぴくし〜のーと】 【ほかんこいちらん】 【みんなの感想】

[86] 全ての夢は…

とびかめ #1☆2003.11/28(金)22:25
〜プロローグ〜

…長い間、深い闇の中にいたような気がする。
誰もいない、何もない、呼んでも誰も返事をしない。いや、声が出ているのかも分からない。
見えるのは、見ているというのかも分からないが、ただただ漆黒の闇だけ。
そしてそこから僕を救い出してくれたあれは…ポケモン?

僕はマサキ。ごく普通の中2…のつもりだ。
小学生のころ、一度「ポケモン」をやってからというものの、その面白さから抜け出せず、
クラスではもう「マニア」をこえて「オタク」だとか何とか言われている。
たまに「この年になって…」とか馬鹿にされることもあるが、もう気にしていない。
それほど好きで、そして何度となく「ポケモンが本当にいたらいいな」と思ったりする。
しかし一方では「結局ゲームなんだし、ほんとにいるわけないよな…」という思いもある。
「いたらいたにこしたことはないけど、夢は夢のままでもいいよな」それがいつもたどり着く結論だ。
しかしこんな妄想じみたことが、まさか本当になろうとは夢にも思っていなかった…

気がつくと、そこは広い高原…らしき場所だった。
霧が出ていてあまり広い範囲は見渡せない。何故こんなところにいるのかも思い出せない。
この高原は、どこまでもどこまでも、永遠に続いているのではないかという気がした。
そう、霧が晴れるまでは…
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とびかめ #2☆2003.12/06(土)22:39
第一話 「知っているけど知らない世界」

だんだんと霧が晴れ始め、それとともに僕の心も何故だかはずみ始めた。
何か予感がする。知らないはずなのに、なぜか懐かしい感じがする。
そして、霧が完全に晴れた。そこはやはり高原のような場所だったが、永遠ではなかった。
遠くのほうに町が見えたが…それどころではなかった。
上を見れば、飛び交うスバメにバルビート、イルミーゼ。
下を見れば、走り回るラクライやポチエナ、ジグザグマ。
足元に生えている草は動いている…ナゾノクサのようだし、他にもポケモンらしき鳴き声が聞こえる。
ポケモンが、そこらじゅうにいる!しばらくあっけにとられていたが、思い切って近づいてみた。
が、みんな一目散に逃げていってしまった。
(ははは…当たり前だよな)
そうしてあたりが少し静かになった瞬間、思い出した。
(あれ、そういえばなんで僕はこんなところに…?)
なんでここにいるのか、それがどうしても思い出せない。
確か、どこかに出かけて、そのあとは… そこだけの記憶が抜けている感じだ。
僕の名前はフルジマサキ、14歳、とそういうことは思い出せる。
…14歳?そうか、あの日は誕生日だったのか。プレゼントとしては、最高だよな。
そういえば、妹や弟はどうしたかな。それに親も… いなくなると寂しいもんだな。
僕は…どうなるんだろうか。帰れるんだろうか。
…ってこんなとこでくよくよ考えててもしょうがないよな。
持ち前のプラス思考で、さっき見えた町へと向かった。
そして着いたその町は…シダケタウン。
散歩していた人に聞いてみたが、不思議そうな顔でそう言った。
ここはホウエン地方だったのだ。あのルビーサファイアの冒険の舞台、ホウエン。
僕はポケモンの世界に入り込んでしまったのだ!
驚きと喜びが同時にこみ上げてきた。気持ちの整理がつかない。
とりあえず町に着いたらまずやること、ポケモンセンターを探すことにした。
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とびかめ #3☆2003.12/26(金)21:26
第二話「ホウエンの現実」

町中歩き回り、やっとポケモンセンターを見つけた。
ポケモンセンターというのは、町に入り口からすぐ見えるところにあるはずだ。
どうやら僕は、町の入り口とは程遠いところから出てきたらしい。
そんなことを考えながら、僕は自動ドアの前に立った。
扉が開く、と同時にガヤガヤと騒がしい声の嵐に飲み込まれた。
おそるおそる入ってみると、なんとどこをみても人、
そしてポケモン、完全に満員の状態だったのだ。
あ然としていると、その中をかきわけてナースのような人―ジョーイさんだ―が来た。
「見ての通り、いっぱいなんだけど…泊まっていくの?」
「あの、なんでこんなに混んでるんですか?あ、それともいつものことなんでしょうか。」
「いえ…あなた、ポケモンも荷物も何も持っていないようだけど、何か訳ありなのね。
あのね、最近このホウエン地方全域が異常気象に見舞われているの。
このあたりはずっと日照りが続いて、町から一歩出ればもう砂漠なのよ。」
「え!?キンセツの北の砂漠がここまで、ってことですか?」
「そうね。だからみんなこの町にとどまっちゃってるのよ。
それで、あなたはどうするの?ここはこんな感じだし…」
「…じゃあ僕、キンセツまで行ってみます。あそこはすいてますかね?」
僕は少し考えてそう言った。
「そうね、多分砂漠の中だから。
でもただでさえ砂漠だし、それに今からだと日が暮れるまでに着くか着かないか、微妙なところだわ。
でも…それでも行くみたいね。」
ジョーイさんは僕の顔を見てそう言った。そして旅の必需品が入ったリュックを渡してくれた。

見渡す限り砂、砂、砂。まるで海のようだ。そして暑い。
シダケを出て一時間くらいだろうか?太陽が南中しているようだ。
あれは昼前のことだったのか。道具の中に時計は無かったので正確な時間は分からないが。
と、そのとき人影と、もう一つ小さな影が遠くに見えた。
胸騒ぎがする。僕は暑さも忘れて走っていった。
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とびかめ #4☆2004.01/29(木)21:47
第三話「パートナー」

無我夢中で走っていくと、二つの影のうち大きいほうは人間…大柄な男のように見えた。
もう一つの小さな影はポケモンのようだが、しかし何か様子がおかしかった。
そして走ってくる僕に気づいたのか、男のほうはあわてて逃げ出したように見えた。
しかしポケモンはついて行くそぶりもない。野生のポケモンだったようだ。
そして僕は目を見張った。その野生のポケモンはナックラー…その体はボロボロだったのだ。
おそらくさっきの男のせいなのだろう。すぐ辺りを見回し、目をこらしたがもうその男の姿は見えなかった。
と、そんなことをしているうちにナックラーは弱りきった体で砂にもぐり、逃げ出してしまった。
…あとに緑色のボール、おそらく「フレンドボール」を残して…
ナックラーが気になるものの、とりあえず急いでキンセツを目指すことにした。

日も沈み、辺りも次第に闇に包まれて、このままではまずいと思ったそのとき、
ようやくキンセツシティらしき街明かりが見えてきた。
が、話に聞いたとおり、この街も砂でうめつくされ、砂漠になっていた。
街に到着しても夜だからなのか、それともこの砂漠化の影響なのか、人気はなく風の音だけが聞こえる。
そんな静かな街の中、つかれきった体を意地で動かして、
そしてついにポケモンセンターを見つけたときだった。
突然黒い影が目の前に立ちはだかった。それは…
「お前は、もしかして昼間ナックラーのところにいた…!」
「ほう、覚えているんだな。なら話は早い。」
そう、ナックラーをボロボロにした、あの男だったのだ。
「お前、あのナックラーが残したもの、持ってるよな?」
「ナックラーが残したもの…?もしかしてこのボールか?」
「そう。その『フレンドボール』、このホウエンでは値打ちものだろう?
 それは俺のものだ。渡せ!」
「フレンドボール」はジョウト地方のボール職人ガンテツがつくることの出来るボールだ。
だからこのホウエンではある種のレアグッズなのだろう。
「お前、これをうばうためにあのナックラーをあそこまで痛めつけたのか!?」
「あいつがなかなか渡さないのがいけないのさ。
 まるで宝物か自分の子供かのようになかなかはなさねぇ。
 だがお前の邪魔が入らなければうばえるところだったんだよ!」
「この…なんてヤツだ!ナックラーが必死に守ってたこのボール…渡せるかよ!」
「なら、その生意気な口をきけなくしてやる!」
男はボールを構えた。
(まずい…僕はまだポケモンを持ってないんだった!この世界ではそれは命取り…)
僕は一歩後ろへ下がった。そのときだった。
突然男の足元がくずれ、すなじごくができ、一瞬にして男を飲み込んでしまった。
…顔だけは出ており、命に別状はないようだったが…
そして砂の中から現れたのは…ボロボロのナックラー、昼に僕が偶然助けたポケモンだ!
「ナックラー!お前、僕を助けてくれたのか?」
ナックラーはそれを聞いていたのかいないのか、フラフラと歩き、そのまま倒れてしまった。
「ナックラー!」

「大丈夫よ。明日になればもうすっかり元気になるわ。」
夜も更け、ポケモンセンターの時計は真夜中を指していた。
あの後、僕はすぐにナックラーをポケモンセンターへと運び、治療をしてもらったのだ。
ついでにあの男のことも通報しておいた。
「そうですか…
 ありがとうございます、ジョーイさん。」
と、その安心感からかふと力が抜け、ソファーに倒れこんでしまった。
「今日ずっと砂漠を歩き続けてきたんでしょう?
 今まで立ってられたのがすごいわ。さあ、もう休んだほうが身のためよ。」
「そう…します…」
答えたときにはもう意識は半分なく、そのまま僕はぐっすりと寝入った。
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[86]

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