とびかめ | #1☆2003.11/28(金)22:25 |
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〜プロローグ〜 …長い間、深い闇の中にいたような気がする。 誰もいない、何もない、呼んでも誰も返事をしない。いや、声が出ているのかも分からない。 見えるのは、見ているというのかも分からないが、ただただ漆黒の闇だけ。 そしてそこから僕を救い出してくれたあれは…ポケモン? 僕はマサキ。ごく普通の中2…のつもりだ。 小学生のころ、一度「ポケモン」をやってからというものの、その面白さから抜け出せず、 クラスではもう「マニア」をこえて「オタク」だとか何とか言われている。 たまに「この年になって…」とか馬鹿にされることもあるが、もう気にしていない。 それほど好きで、そして何度となく「ポケモンが本当にいたらいいな」と思ったりする。 しかし一方では「結局ゲームなんだし、ほんとにいるわけないよな…」という思いもある。 「いたらいたにこしたことはないけど、夢は夢のままでもいいよな」それがいつもたどり着く結論だ。 しかしこんな妄想じみたことが、まさか本当になろうとは夢にも思っていなかった… 気がつくと、そこは広い高原…らしき場所だった。 霧が出ていてあまり広い範囲は見渡せない。何故こんなところにいるのかも思い出せない。 この高原は、どこまでもどこまでも、永遠に続いているのではないかという気がした。 そう、霧が晴れるまでは… |
とびかめ | #2☆2003.12/06(土)22:39 |
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第一話 「知っているけど知らない世界」 だんだんと霧が晴れ始め、それとともに僕の心も何故だかはずみ始めた。 何か予感がする。知らないはずなのに、なぜか懐かしい感じがする。 そして、霧が完全に晴れた。そこはやはり高原のような場所だったが、永遠ではなかった。 遠くのほうに町が見えたが…それどころではなかった。 上を見れば、飛び交うスバメにバルビート、イルミーゼ。 下を見れば、走り回るラクライやポチエナ、ジグザグマ。 足元に生えている草は動いている…ナゾノクサのようだし、他にもポケモンらしき鳴き声が聞こえる。 ポケモンが、そこらじゅうにいる!しばらくあっけにとられていたが、思い切って近づいてみた。 が、みんな一目散に逃げていってしまった。 (ははは…当たり前だよな) そうしてあたりが少し静かになった瞬間、思い出した。 (あれ、そういえばなんで僕はこんなところに…?) なんでここにいるのか、それがどうしても思い出せない。 確か、どこかに出かけて、そのあとは… そこだけの記憶が抜けている感じだ。 僕の名前はフルジマサキ、14歳、とそういうことは思い出せる。 …14歳?そうか、あの日は誕生日だったのか。プレゼントとしては、最高だよな。 そういえば、妹や弟はどうしたかな。それに親も… いなくなると寂しいもんだな。 僕は…どうなるんだろうか。帰れるんだろうか。 …ってこんなとこでくよくよ考えててもしょうがないよな。 持ち前のプラス思考で、さっき見えた町へと向かった。 そして着いたその町は…シダケタウン。 散歩していた人に聞いてみたが、不思議そうな顔でそう言った。 ここはホウエン地方だったのだ。あのルビーサファイアの冒険の舞台、ホウエン。 僕はポケモンの世界に入り込んでしまったのだ! 驚きと喜びが同時にこみ上げてきた。気持ちの整理がつかない。 とりあえず町に着いたらまずやること、ポケモンセンターを探すことにした。 |
とびかめ | #3☆2003.12/26(金)21:26 |
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第二話「ホウエンの現実」 町中歩き回り、やっとポケモンセンターを見つけた。 ポケモンセンターというのは、町に入り口からすぐ見えるところにあるはずだ。 どうやら僕は、町の入り口とは程遠いところから出てきたらしい。 そんなことを考えながら、僕は自動ドアの前に立った。 扉が開く、と同時にガヤガヤと騒がしい声の嵐に飲み込まれた。 おそるおそる入ってみると、なんとどこをみても人、 そしてポケモン、完全に満員の状態だったのだ。 あ然としていると、その中をかきわけてナースのような人―ジョーイさんだ―が来た。 「見ての通り、いっぱいなんだけど…泊まっていくの?」 「あの、なんでこんなに混んでるんですか?あ、それともいつものことなんでしょうか。」 「いえ…あなた、ポケモンも荷物も何も持っていないようだけど、何か訳ありなのね。 あのね、最近このホウエン地方全域が異常気象に見舞われているの。 このあたりはずっと日照りが続いて、町から一歩出ればもう砂漠なのよ。」 「え!?キンセツの北の砂漠がここまで、ってことですか?」 「そうね。だからみんなこの町にとどまっちゃってるのよ。 それで、あなたはどうするの?ここはこんな感じだし…」 「…じゃあ僕、キンセツまで行ってみます。あそこはすいてますかね?」 僕は少し考えてそう言った。 「そうね、多分砂漠の中だから。 でもただでさえ砂漠だし、それに今からだと日が暮れるまでに着くか着かないか、微妙なところだわ。 でも…それでも行くみたいね。」 ジョーイさんは僕の顔を見てそう言った。そして旅の必需品が入ったリュックを渡してくれた。 見渡す限り砂、砂、砂。まるで海のようだ。そして暑い。 シダケを出て一時間くらいだろうか?太陽が南中しているようだ。 あれは昼前のことだったのか。道具の中に時計は無かったので正確な時間は分からないが。 と、そのとき人影と、もう一つ小さな影が遠くに見えた。 胸騒ぎがする。僕は暑さも忘れて走っていった。 |
とびかめ | #4☆2004.01/29(木)21:47 |
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第三話「パートナー」 無我夢中で走っていくと、二つの影のうち大きいほうは人間…大柄な男のように見えた。 もう一つの小さな影はポケモンのようだが、しかし何か様子がおかしかった。 そして走ってくる僕に気づいたのか、男のほうはあわてて逃げ出したように見えた。 しかしポケモンはついて行くそぶりもない。野生のポケモンだったようだ。 そして僕は目を見張った。その野生のポケモンはナックラー…その体はボロボロだったのだ。 おそらくさっきの男のせいなのだろう。すぐ辺りを見回し、目をこらしたがもうその男の姿は見えなかった。 と、そんなことをしているうちにナックラーは弱りきった体で砂にもぐり、逃げ出してしまった。 …あとに緑色のボール、おそらく「フレンドボール」を残して… ナックラーが気になるものの、とりあえず急いでキンセツを目指すことにした。 日も沈み、辺りも次第に闇に包まれて、このままではまずいと思ったそのとき、 ようやくキンセツシティらしき街明かりが見えてきた。 が、話に聞いたとおり、この街も砂でうめつくされ、砂漠になっていた。 街に到着しても夜だからなのか、それともこの砂漠化の影響なのか、人気はなく風の音だけが聞こえる。 そんな静かな街の中、つかれきった体を意地で動かして、 そしてついにポケモンセンターを見つけたときだった。 突然黒い影が目の前に立ちはだかった。それは… 「お前は、もしかして昼間ナックラーのところにいた…!」 「ほう、覚えているんだな。なら話は早い。」 そう、ナックラーをボロボロにした、あの男だったのだ。 「お前、あのナックラーが残したもの、持ってるよな?」 「ナックラーが残したもの…?もしかしてこのボールか?」 「そう。その『フレンドボール』、このホウエンでは値打ちものだろう? それは俺のものだ。渡せ!」 「フレンドボール」はジョウト地方のボール職人ガンテツがつくることの出来るボールだ。 だからこのホウエンではある種のレアグッズなのだろう。 「お前、これをうばうためにあのナックラーをあそこまで痛めつけたのか!?」 「あいつがなかなか渡さないのがいけないのさ。 まるで宝物か自分の子供かのようになかなかはなさねぇ。 だがお前の邪魔が入らなければうばえるところだったんだよ!」 「この…なんてヤツだ!ナックラーが必死に守ってたこのボール…渡せるかよ!」 「なら、その生意気な口をきけなくしてやる!」 男はボールを構えた。 (まずい…僕はまだポケモンを持ってないんだった!この世界ではそれは命取り…) 僕は一歩後ろへ下がった。そのときだった。 突然男の足元がくずれ、すなじごくができ、一瞬にして男を飲み込んでしまった。 …顔だけは出ており、命に別状はないようだったが… そして砂の中から現れたのは…ボロボロのナックラー、昼に僕が偶然助けたポケモンだ! 「ナックラー!お前、僕を助けてくれたのか?」 ナックラーはそれを聞いていたのかいないのか、フラフラと歩き、そのまま倒れてしまった。 「ナックラー!」 「大丈夫よ。明日になればもうすっかり元気になるわ。」 夜も更け、ポケモンセンターの時計は真夜中を指していた。 あの後、僕はすぐにナックラーをポケモンセンターへと運び、治療をしてもらったのだ。 ついでにあの男のことも通報しておいた。 「そうですか… ありがとうございます、ジョーイさん。」 と、その安心感からかふと力が抜け、ソファーに倒れこんでしまった。 「今日ずっと砂漠を歩き続けてきたんでしょう? 今まで立ってられたのがすごいわ。さあ、もう休んだほうが身のためよ。」 「そう…します…」 答えたときにはもう意識は半分なく、そのまま僕はぐっすりと寝入った。 |
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