minun | #1★2006.06/10(土)13:39 |
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−プロローグ− それは、今から5、6年前の事だった。 一人の小さなポケモントレーナーが、小さな公園の ベンチに座ってうつむいていた。隣にはケーシィが居る。 「あれ?あなた、ポケモントレーナー?」 公園の前を通りかかった少女が、トレーナーに声をかけた。 そのトレーナーよりも少し年上のようだ。 「…うん」 トレーナーはモンスターボールを握って遠慮がちに笑った。 「いいなぁ!アタシ、まだポケモン持ってなくて… ところで、どうしたの?元気無さそうだったからさ」 「…えっとね…お母さんとけんかしちゃったんだ。 実はこのケーシィ、本当は野生のポケモンで、 寂しそうにしていたから家に連れて帰ったんだけど… お母さんがあなたがトレーナーになるのはまだ早いわよって」 小さなトレーナーは、またうつむいた。 少女も隣に座り、そして両足を軽く揺らし始めた。 「…あー、アタシも家族にそう言われてる。それで?」 「悔しくなってここの公園に行ったらトレーナーが居て、 ポケモンバトルをしてくれたんだけどね… とても楽しかったんだ…!相手は強かったけれど、 テレビで見た対戦みたいにケーシィに指示を出せたんだよ」 そして負けたけどね、と付け足す。でも目が輝いていた。 少女は耳を傾けてトレーナーの話を一生懸命聞いた。 「アタシもやってみたいなぁ、ポケモンバトル… ねぇ、もしもアタシがポケモントレーナーになれたら、 ここで一緒にバトルしようよ!」 「…本当?約束だからね!それじゃ、僕はやっぱり家に帰るよ」 ―だが、トレーナーが少女と再会したのは何年も先だった。 そのことは、これから語ることにしよう。 ―そう、これは7人のトレーナーが集い、 フロンティアブレーンが結成するまでの物語である―― |
minun | #2★2006.05/29(月)18:55 |
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第一話「始まり」 「バトルフロンティア…ですか?」 町で新聞を受け取ったリラは問いかけた。 「そう、今話題になっているんだよ。約1年後にできるんだ」 新聞配りのおじさんは笑って答えた。 幼い頃に公園のベンチでケーシィと座っていた トレーナーのリラは、今はユンゲラーと共に旅をしている。 あの少女と話した日の翌日から色々な人とポケモンバトルを するようになった。 リラは道路の端へ寄って新聞の続きを読んだ。 『バトルフロンティアとは、ポケモンバトルの最前線。 7つの施設がある、テーマパークのような所だ。 オーナーは、あの有名なエニシダ。』… そのころ、ホウエン地方の南では、バトルフロンティア 開園へ向けての工事が順調に進められていた。 「エニシダ様、バトルチューブの入り口が完成しました!」 「ご苦労様。ところで、トレーナー達を楽しませるために あとひと工夫したいのだが、良いアイデアはあるかい?」 エニシダは設計図を見ながら悩んだ。隣には従業員がいる。 「ジムリーダーのような人が居るというのはどうですか?」 「なるほどね。でも、私は今までのバトル施設に無い ことをしてみたいんだよ…」 「最強のトレーナーがそろったら、皆さんのやる気も 出ると思いますよ。また、ジムと違って一般のトレーナーに 何回か勝ち抜いた後に最強のトレーナーと戦えるとか…」 「そうか、そうなると皆が最強のトレーナーの所へ たどり着くのも難しくなるね。よし、採用しよう!」 「ありがとうございます。でも、強いトレーナーを そう簡単に探し出せるのでしょうか…」 「心配は要らないよ。これから募集するさ」 エニシダは自信満々だった。真っ直ぐ前を見て微笑んでいた。 |
minun | #3★2006.06/15(木)21:21 |
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第二話「一つの条件」 そして数日後…『バトルフロンティア・最強トレーナー募集中! 各施設の管理者になってもらいます』という貼り紙が 町中に張り出された。テレビでもその事が放送されている。 一応バトルをしながら旅をしていたリラだが、 特に目的はない。でも貼り紙を見た瞬間、 自分はこれに応募すれば何か変われるのではないかと思った。 あっという間にフロンティアには、施設の管理者に なりたいというトレーナーでいっぱいになった。エニシダは サングラスにアロハシャツ、という変わった格好をしていたので リラや皆はどんな人だろうと緊張していた。だが―― 「やあ、よく来たね。バトルフロンティアへようこそ!」 エニシダが話し始めると、皆の緊張はすぐにほぐれた。 陽気で、親しみやすそうな表情だったからだ。 「それじゃ、早速だがトレーナーカードを見せてくれ」 彼の発言にトレーナー達は疑問に思いつつ トレーナーカードをバッグから取り出して見せた。 目の前にいるトレーナーのゴールドカードを見るエニシダ。 「ジンダイです、よろしくお願いします」 探検家のような服を着た男はそう言った。 エニシダはよろしく、と笑顔で言うとジンダイの隣にいる 青年のトレーナーカードを見た。そして腕組みをして考える。 「うーん…君はフロンティアの最強トレーナーになれないな」 「なっ…なぜですか!?」 「君はまだシルバーカードだよね。まだゴールドカード ではないトレーナーをバトルしても挑戦者はすぐに 勝ってしまうから対戦をする面白味がなくなるだろう? 悔しいと思うけど、これは当然のことなんだよ」 トレーナー達は厳しい現実というものを知り、衝撃を受けた。 |
minun | #4★2006.07/03(月)17:02 |
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第三話「未完成のフロンティア」 ゴールドカード以外の人達はぞろぞろと出口へ向かった。 ―そんな…100人から30人程に減ってしまうなんて…― ゴールドカードであるリラも表情を硬くして立っていた。 その時、リラの斜め前から、どこか懐かしい声が聞こえた。 「こんな事、別にしなくてもいいのに…ねぇブラッキー」 声の主はキャップを深くかぶっていて髪も短いが、 たぶん女性かもしれない。彼女は足元にいるブラッキーに 小声でささやいた。見覚えがあるけど誰だっけ、とリラは考えた。 70人程のトレーナー達の中には、泣きながら帰る人もいた。 「あぁ、ちょっと待った!帰る前に聞いてくれ。 君達は各施設の管理者にはなれない。でも、ここに来る 挑戦者の相手をする一般トレーナーになってもらうからね」 「…ありがとうございます!」 エニシダが言うと、振り向いた皆は涙を拭って笑顔になった。 エニシダは残った30人のトレーナーにこう言った。 「さあ、この中から7人絞り出す前に、見せたいものがあるんだ」 彼が案内した場所は、中に大きなスクリーンがある建物だった。 トレーナー達がスクリーンの前に立ち、エニシダが 壁のスイッチを押すと、立体的なバトルフロンティアの 設計図がスクリーンに映し出された。 ハブネークと呼ばれるポケモンの形をしたバトルチューブ。 ダンジョンのようなバトルピラミッド。 東洋にある建物のようなバトルパレス。 和風で道場みたいなバトルアリーナ。 コンサート会場くらいの大きさのバトルドーム。 近未来的な外観のバトルファクトリー。 そして、天まで届きそうなくらい高いバトルタワー。 「フロンティアがどんな所か分かったかい? そろそろ始めようか、最強トレーナー決定戦を」 エニシダがそう言ったときには、リラ達はすでに燃えていた。 これらの素敵な施設の管理者になれるかもしれないから――。 |
minun | #5☆2006.08/27(日)16:36 |
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第四話「通じる心、通じない心」 「第一回戦は、あのアトリエの穴の中で勝負してもらうよ」 エニシダは、海の近くの洞窟を指差した。 トレーナー達はそこへ向かった。全員、エニシダから 1から30の番号が描かれたバッジをもらい、衣服に付けた。 「準備はできたね。じゃ、パートナーのポケモンを一匹決めて、 入り口のトロッコに5人ずつのグループで乗ってくれ。 トロッコが止まってから、降りて進むと道が分かれるからね」 トレーナー達は、はい、と返事をしてポケモンを出すと、 6台のトロッコに5人ずつ乗り、アトリエの穴の中へ入った。 トロッコはジェットコースター並のスピードで走るので、 所々でトレーナーの悲鳴が洞窟の中に響く。 が、その恐怖はあっという間に終わった。トレーナー達は トロッコから跳び下りると、我先に奥の穴へ走っていった。 コダックと、そのパートナーの強気な少年は、 前へ進んでいくと黒いえんまくに襲われた。 「うわっ!ゲホッゲホッ…コダック、どこにいるんだ?」 辺りが見えるようになると、少年の目の前にはコダックと 自分そっくりのトレーナーがいた。だが何か変だ。 「あ、あの…そのコダックは、僕のポケモン…ですよ?」 違うところは、性格が本物と正反対な所だ。 コダックは首をかしげながら、2人を交互に見る。 「何だよ、偽者!コダックもどっちが本物だか、分かるだろ?」 と少年が言ったがコダックは混乱して偽者の方へ行ってしまった。 すると偽者は、本物の少年の手首をつかんで、微笑んだ。 「モンモン!」 偽者の姿が変化した。実は偽者に化けていたのはメタモンだった。 『そこの3番の君ー、残念ながら失格だね』 エニシダのアナウンスが流れる。少年は入り口へ戻る事になった。 一方、老人トレーナーのウコンは、偽者にこう聞いた。 「お前さんは、ポケモンと心が通じ合えるかね?」 「わしにはできん。だがそういうのは役に立たないと思うな…」 その偽者の発言を聞き、クロバットは本物の方へ近づいた。 偽ウコンはメタモンの姿に戻り、逃げていった。 「その調子じゃぞ、クロバット!次へ進もう」 1つ目の仕掛けをクリアしたトレーナー達は、さらに前へ進んだ。 |
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