糸杉美理佳 | #1★2006.09/29(金)16:38 |
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「かぐや姫」をベースにしたお話です。 言っておきますが、ポケモンを擬人化してます。 おまけにかなりキャラがぶっ飛んでます(汗笑) ☆登場人物☆ ♪月岡真白(つきおか ましろ) 物語の主人公であるピクシー(♀)。ポケモンセンターに住む。その美しく愛らしい姿ゆえ、男達のアイドル。 ♪松浦爽介(まつうら そうすけ) 真白に恋するメガニウム(♂)。のほほんとしているが、結構押しの強い性格。 ♪蛍原篤志(ほとばら あつし) 真白に恋するバクフーン(♂)。短気で喧嘩っ早いが、純情な一面も見せる。 ♪川島瑞希(かわしま みずき) 真白に恋するオーダイル(♂)。お調子者で天然ボケなトラブルメーカー。 ♪雨宮雷蔵(あまみや らいぞう) 名門・雨宮家の次期当主であるライチュウ(♂)。陽気でお喋りが大好き。 ♪星山悟流(ほしやま さとる) 真白に恋するフーディン(♂)。知性的で頼れるリーダー的存在だが、意外と小心者。 ♪足柄力弥(あしがら りきや) 真白に恋するカイリキー(♂)。スポーツ万能だが、うっかり屋で忘れっぽい。 ♪赤坂夕太(あかさか ゆうた) 真白の隣人のブラッキー(♂)。格好つけたがりで、男前に思われるのを無上の喜びとしている。 ♪日比谷哲次(ひびや てつじ) 夕太の親友のエアームド(♂)。能天気で楽天家で、ノリのいい音楽が大好き。 ♪謎の青年 物語の後半で登場する。真白と何か係わり合いがあるようだが、果たして…? 第1話「出会い、そして苦悩の始まり」 ここはカントーとシンオウの間に位置する「トーホク地方」(架空の地方です)。 この地の中心部に、一人の美しい女性が住んでいた。 彼女の名は「月岡真白」。穢れなき心の持ち主であるようにと願い、つけられた名前だそうだ。 彼女は幼い時から一人で、このポケモンセンターで暮らしていた。 友達もいないのでさぞや寂しい思いをしているだろうと思ったが、いつも笑顔でジョーイさんや看護ラッキー達の手伝いをしていたり、ポケモンセンターを訪れるトレーナー達と楽しそうに会話したりしているので、そうは見えなかった。 物心が付いて一人前になり、彼女は就職試験に見事合格し、仕事を始めることになった。 実を言うとトーホク地方には、本質はポケモンだが姿が人間、という「ポケ人」が住んでいる。真白もまたその一人だ。ポケ人は日常生活が普通の人間のそれとなんら変わらない(しかし元がポケモンなのでその本来の性質を補う必要が出てくる場合もある)ため、普通の人間と一緒に学校に通ったり会社に勤めたりできるのである。 今日はシルフカンパニー・トーホク支社の入社式。真白は新しく出来た自分の居場所へと、軽い足取りで通勤した。 「…では諸君、『ポケモン、人間、そしてポケ人が共存しあって生きていく』という我らが社訓に恥じないような人材になってくれたまえ!以上でわしの演説は終わりじゃ」 社長の演説が終わるや否や、会場はどっと歓声で沸き立った。入社式の後は人事部による各部門の説明で、真白は製品開発部に所属することになった。 「よお、君が月岡真白ちゃんかい?」 気軽な口調で話しかけてきたのは、黒髪(途中に黄色い帯が入っている)の青年だ。 「は、はい、そうですけど…」 「俺、今度君のポケモンセンターの近くに越してきた赤坂夕太ってんだ。ブラッキーのポケ人だぜ、これからよろしくなっ!」 「こちらこそよろしく。私はピクシーのポケ人なんです」 「へぇー、お互い月に関係するポケモンか。こりゃ奇遇だなぁ。おい哲次、お前も挨拶しろよ」 夕太はやおら振り向くと、後ろで口笛を吹いていた灰色の髪の青年に声をかけた。 「お、おぅ。やぁ真白ちゃん、初めまして!俺は日比谷哲次、エアームドのポケ人さ。よろしく頼むぜ」 「初めまして、よろしく。哲次さんって、夕太さんのお知り合いなんですか?」 「ああ、俺と夕太はガキの頃からの付き合いでな。しょっちゅう悪戯を仕出かしちゃあ説教されてたもんだぜ。おっ、そろそろ部門ごとの説明会が始まるぞ」 「あ、そうだな。君は製品開発部だろ?俺達は営業部なんだ。じゃ、また後でな」 そうして、彼らは自分達の部門の事務所へと向かった。 製品開発部のドアを潜ると、彼女を待っていたのは先輩部員による熱烈歓迎だった。 「やあ真白ちゃん、待ってたよ!君のことはジョーイさんから聞いたぞ、さあさあ!」 「え、えっ…」 困惑する真白をよそに、5人の先輩部員は忽ち彼女を取り囲んでしまった。 そして飛び交う自己紹介の雨嵐。真白は混乱してしまいそうだった。 「初めましてーっ、俺は川島瑞希!製品開発部一の凄腕社員さ!」 「嘘こけ、毎回プロジェクトの足引っ張ってるくせに!あ、俺は蛍原篤志だ、よろしくっ」 「俺は松浦爽介。こいつらは五月蝿くて仕方ないけど、勘弁してやってくれよな」 「おーっす。俺は足柄力弥だ、よろしく!何か困ったことがあったら、何時でも俺に言ってくれ!」 「いや、お前はうっかり屋だから失敗する確率が高いと思うぜ…紹介遅れてすまねぇ、俺は星山悟流。よろしくな」 「は、はぁ…あの、これから色々とお世話になります…」 『なーに、君の世話なら俺達に任せてくれってばよ!』 「あ、ありがとうございます…」 困ったように笑いながら、真白は礼を述べた。しかし内心では、 「(どうしよう、これから毎日こんなのと顔を突き合わせることになるなんて…)」 と悩んでいた。彼女の苦悩と苦労の日々は、今正に幕を開けたばかりなのである。 続く! |
糸杉美理佳 | #2★2006.10/21(土)09:46 |
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第2話「真白の試練、男達の試練」 シルフカンパニー・トーホク支社に就職してからというもの、真白は毎日のように、馴れ馴れしい男達の視線や話しかけてくる声に耐え続けなければならなくなった。 このままではいつかストレスで心身不調を訴える。そう決意した彼女は、終にある結論を出した。 ―そんなに自分に振り向いてほしいのなら、それだけの価値がある男かどうか試してやる。 その夜彼女は、密かにある作戦を練っていた。これならやつらもギャフンと言うに違いない。 夏休みが始まろうというある日、仕事が終わった後に真白は7人の男達を呼びつけた。彼らは当然のことながら「もしかしてデートのお誘いかしらん」などと大喜びしていた。全く男って単純ね、と真白は心の中で冷笑した。 「あなた達の気持ちはよくわかったわ、でも…」 「まあそう難いこと言うなよ真白ちゃん、俺達とっても嬉しいんだぜ?」 「それなら…」 真白の次の言葉に期待の眼差しを送る男達。よし、もう一押し。 「私が欲しいものを持ってきてくれたら、付き合ってやってもいいわよ?」 「え、何が欲しいんだい?君のためならたとえ火の中水の中草の中森の中、何処まででも行ってやるぜ!」 これで決める。そう決意して、真白はこう言った。 「爽介さんには『にじいろのはね』、篤志さんには『ぎんいろのはね』、瑞希さんには『こころのしずく』、悟流さんには『べにいろのたま』、力弥さんには『あいいろのたま』、夕太さんには『とうめいなすず』、そして哲次さんには『しらたま』を持ってきてもらおうかしら」 彼女の発言があまりに思いもよらぬものだったので、全員凍り付いてしまった。 何しろ入手が困難を極め、しかもあの伝説のポケモン達が守っているものばかりだ。下手をすれば神の怒りに触れることになるだろう。 しかも「持って帰ってくるまでは私との連絡は禁止よ」とまで言われた。ピクシーは「おいうち」など覚えないはずなのに。 その夜、男達は寝付かれなかった。一体どうすればよいのだろう。 一方の真白は「上手くいった」とばかりにほくそ笑んでいた。あの男達のことだ、真に受けて悩みぬいているだろう。 上手く知恵を巡らせたところで、私にはお見通し。この後の展開が楽しみだ。願わくば彼らの夏休みが素晴らしいものにならんことを。 続く! |
糸杉美理佳 | #3☆2006.08/14(月)16:22 |
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第3話「男達の悲しき夏休み(前編)」 長かった夏休みも漸く終わり、再び真白達は仕事に戻ることになった。 しかしいつもと様子が違う。普段は喧しい男達が、揃いも揃ってしょげ返っているのだ。 事の顛末は粗方想像できているだろうが、とりあえず真白は事情を聞くことにした。 「どうなさったんですか殿方諸君?随分元気が無いようですわねぇ」 「はい、実を言うと…(涙)」 そして、真白に惚れたばかりに悲しい運命を辿ることになった哀れな男達の、無駄骨折りとも言うべき武勇伝が語られたのである。 まずは爽介。「にじいろのはね」を手に入れようと早速エンジュシティに乗り込んだはよいのだが、「にじいろのはね」とそれを持つホウオウのいるスズの塔に登るにはジムリーダーに勝ちバッジを手にしていなければならず、そこで致し方なしにジムに挑戦したのだが相手はゴーストポケモン使いだらけなので苦戦を強いられた。漸くリーダーのマツバとの対決にこぎつけたが、こてんぱんに伸されたのだという。 お次は篤志。お目当ての「ぎんいろのはね」を持つルギアはうずまき列島の銀岩島の洞窟に生息しているわけなのだが、ほのおタイプである自分は苦手な水タイプの技である「なみのり」や「うずしお」など覚えられるはずもなく、仕方がないのでボートで向かうという暴挙に出たら見事にうずしおに巻き込まれて、タンバシティの海岸に打ち上げられていたところを保護されたという。 今度は瑞希だ。「こころのしずく」はラティアスとラティオスの楽園である「みなみのことう」の何処かに隠されているらしいという情報を聞きつけ、早速「なみのり」でそこへ向かった。そしてあちこちガサゴソ探し回っているうちに漸く見つけた…ところまではよかったのだが、島の住人のラティオス&ラティアス達に不法侵入者(そして島の平和を荒らす悪人)と勘違いされて散々な目に遭ったのであった。 その後も彼らの悲しき物語が続くのだが、今回はここで切り上げさせてもらおう。 続く! |
糸杉美理佳 | #4★2006.10/21(土)09:59 |
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第4話「男達の悲しき夏休み(後編)」 前回の続きである。残る4人の無駄骨折りに終わった武勇伝をお聞きいただこう。 悟流と力弥は求めるものが同じ場所にあったので、二人で揃って二つの宝玉が眠る「おくりびやま」に向かった。旅は道連れというやつである。 「おくりびやま」はポケモンの墓地で、カントー地方でいえばポケモンタワーのような場所である。さらにはポケモンのみならず、トレーナーの墓まであるというのだから驚く。そのただならぬ空気に恐れをなしたのか、一歩踏み入れて二人とも腰が引けてしまった。 幸い、悟流は「シャドーボール」を、力弥は「みやぶる」を覚えていたお陰で、山頂まで辿り着くのは難しくはなかったが、肝心の宝玉が無い。 宝玉が何処に行ったのかと野生のチリーンに問うてみると、「ああ、それなら『りくのどうくつ』と『うみのどうくつ』に移動したよ」と返事が。そこで二人はそれぞれ「りくのどうくつ」と「うみのどうくつ」とやらに向かうことにした。 ところがグラードンもカイオーガも今の二人では到底かなわない相手だったので完膚なきまでにボコられまくり(「ぼうぎょ」の低いフーディンに打撃技、「とくぼう」の低いカイリキーに特殊技を叩き込めば当然である)、満身創痍・半死半生の状態でポケモンセンターに担ぎ込まれたというオチ。 夕太はやはりエンジュシティにいた。彼はあくタイプだったことにも助けられ、あっさりマツバを撃破しバッジを手に入れ、スズの塔に入ることが出来た次第である(これを聞いた爽介は「ならどーして俺と一緒じゃなかったのよ!?」と滝のような涙を流して彼を問い詰めた)。 塔内部に入ってみて、開口一番「うおっ眩しっ」。それもそのはずで、中は洗練された白木で出来ていて、一見して壁やら天井やらが光っているように見える。 「とうめいなすず」は最上階(屋上ではない)に安置されており、それをスイクンが守っているというのだが、果たして夕太に勝ち目はあるのか? そんなわけで愈々スイクンとのバトルにこぎ付け、「サイコキネシス」で撃破…かと思いきや、相手は「ミラーコート」を使ってきた! 「へっ、俺はあくタイプだから、エスパータイプの攻撃なんて効かねーよ!」 ところが、甘かった。スイクンは自分にとって苦手なかくとうタイプの技である「いわくだき」が使えたのだ。 これに意表をつかれた夕太はよけることもままならず、直撃を食らって大ダメージ!そしてとどめの「ハイドロポンプ」で轟沈したのであった。 最後は哲次だ。「しらたま」はシンオウ地方中心部にそびえるテンガン山の頂にある「やりのはしら」に安置されており、パルキアによって守られている。 パルキアは空間の神と呼ばれているだけあって、どんな技を繰り出すかわからない。哲次は「しらたま」と心中する覚悟で、シンオウ地方へと飛び立った。 ひんやりと冷たい空気が立ち込める「やりのはしら」。その頂に、果たしてパルキアはいた。 「来るなら来やがれ!俺も本気だぞ!」 早速パルキアは「あくうせつだん」で攻撃してきた。それを紙一重でかわし、痛烈なる「はがねのつばさ」の一撃を叩き込む! だがこれでマジになったらしく、パルキアは天に向かって一声咆哮をあげた。 すると俄かに黒雲が湧き上がり、空を覆う。 「何だっ!?…『あまごい』か!」 ふと、哲次はある不安に襲われた。「あまごい」を使うと、自分にとって弱点であるでんきタイプの「かみなり」が必ず命中してしまうのだ。 そして悲しいかな、その不安は的中してしまった。パルキアの体が眩く輝いたと思った瞬間、凄まじい電光が哲次を貫き、哀れ彼がそのまま意識を失って墜落、テンガン山の麓で倒れていたのを発見されたとか。 「…つまり、皆私の望んだものを持って帰ってこられなかったというわけね?」 「はい、そうです…(涙)」 「(溜め息)…まあ、仕方ないけど、あなた達は私の心にかなう相手ではなかったということね」 「しくしくしくしく…(滝涙+マジ凹み)」 こうして7人の哀れな男達の恋は、儚く散ったのである。しかし、真白は「作戦大成功!」と言わんばかりにほくそ笑んでいた。 やれやれ、これで以前ほど喧しく騒ぎ立てられることもなくなるわい、と。 続く! |
糸杉美理佳 | #5☆2006.09/03(日)20:19 |
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第5話「たかが玉の輿、されど玉の輿」 夏が過ぎてから、真白にとってはだいぶ過ごしやすくなった。というのも、彼女に無理難題を押し付けられ、結果ことごとく失敗に終わったため、例の7人がいつものテンションではなくなったからだ。 さてある日のこと、いつものように製品開発部の仕事が終わった後、真白は部長から呼び止められた。 「月岡君、実は折り入って頼みがあるんだが」 「何でしょうか?」 すると部長は何かを真白に差し出した。それを見た彼女は一瞬、心臓が凍りついたように感じた。 「それ」の正体は…見合い写真だった。 「かの有名な大財閥・雨宮一族の次期当主、雷蔵君だ。是非君を嫁に迎えたいと言ってたぞ。ライチュウのポケ人で、君とは気が合いそうだと思うんだが、どうかね?」 「…よく考えた上で、お受けしましょう」 真白は内心戸惑っていた。どうしよう、今度はとんでもないところからとんでもない形で、自分に恋心を打ち明けてきた奴が現れたとは。 「悩むことはないさ、自分に素直になればいいんだよ」 割と器量のよさげな青年が写っている写真を手に困惑する真白の肩をぽん、と叩いて夕太は(自分も沈んだ顔をしていたが)言った。 「(そうは言われても…)」 その夜、真白の住むポケモンセンターに電話がかかってきた。 「はい、もしもし…」 『あ、ジョーイさんですか。夜分遅くに申し訳ありませんが、真白はいますか』 「真白ちゃん?今ラッキー達と一緒に薬の整理をしてるわ。ちょっと待っててくださいね、今呼んできます…真白ちゃーん、電話よ!」 「はーい…もしもし。あっ、(今はまだ明かせません)!」 『真白か、元気そうで何よりだな。何、部長から見合い話を持ちかけられたんだって?』 「うん、そうなの。それにどうやら部長はこの縁談が成功すれば、うちの会社もあの一大財閥・雨宮一族の傘下に収まるだろうとかいう下心があるみたいで…それで私、どうすればいいのか悩んでたの…」 真白の翡翠色の瞳に、じわりと涙が浮かんだ。それをモニター越しに見ていた電話の相手は、ふわりと優しく微笑んでこう言った。 『自分の心に素直になればいいんだよ。俺と約束したあの日から、ずっと俺一筋なんだろ?』 「うん…」 『それならその意志をはっきりと、だが相手を傷つけることなく表明するんだ。大丈夫、俺がついてるよ』 「―うん。ありがとう!」 そんなこんなで見合い当日。真白は会社の一応肩を持つことにして、とっておきの着物を着て会場に現れた。 待つこと暫し、写真に写っていたのと寸分違わぬ陽気そうな青年―雨宮雷蔵が現れた。 「や、こんちゃ。君はもう知ってるかもしれないけど、俺が雨宮一族の次期当主・雷蔵だよーん」 随分ノリの軽い奴だ、と真白は思った。彼のことだ、きっと脳みそも心もスポンジ張りに軽いのだろう。こんな奴が当主になったら、一族は1代ともたずに滅びてしまいそうだ。 「初めまして、月岡真白です」 それから会社側と雨宮一族側の人々を交えてのトークを経て、「それではこの後は二人に任せましょう」という流れになった。実は真白はこの瞬間を最も恐れていたのだ。 「さて時に真白ちゃん、俺の第一印象ってどんな感じだった?」 「えー、話し好きそうだなって思いました」 「だろーっ?うひゃひゃひゃひゃ。俺って話のネタには困らないんだ、何しろ俺の一族にはおもしれーやつがいっぱいいるからさ」 うひゃひゃひゃひゃ、と幾度となく軽薄な笑い方をしながら雷蔵は延々と喋り続けた。このまま時間が過ぎ去ってしまえ、と真白は心の底から念じた。 「というわけで真白ちゃん、どうだい?俺のこと好きになれた?」 「え?ええ、まあ…」 「ほんとか!?うわ、やたーっ!」 狂喜乱舞した雷蔵はあろうことかそのまま真白に飛びついた! 「きゃっ!ちょっと、やめてください!(滝汗)」 「何を今更。俺のこと好きになってくれたんだろ?そしたら当然の展開じゃないか〜」 嫌がる真白に構わずじゃれつく雷蔵。さらにエスカレートし、キスを迫る始末である。 「ほらほら真白ちゃん、こっち向いてくれよー」 「(だ、誰か助けて…!!)」 そして雷蔵の唇が真白のそれに重なる、その瞬間。 「!?」 不意に真白の姿が掻き消えた。目を白黒させている雷蔵の前には、愛らしい縫い包みのような彼女の分身が残されているだけ。「みがわり」を使って逃げたのである。 「うおーい、真白ちゃーん!何処にいるんだー!?俺が悪かった、だからもう一遍俺の前に姿を見せてくれよー!」 必死で呼びかける雷蔵。しかし真白は物陰に隠れて泣きながら震えていた。 「(だからやっぱり嫌だったのよ!)」 雷蔵の仕出かした不祥事(笑)で縁談は当然破談に。部長は下心破れてげんなりしていたが、社長に「そんな考えを持つからだ」と一喝されて悔い改めた。そして雷蔵も親族一同からきつ〜いお叱りを受けたという。 『そうか、やっぱりそういう奴だったのか(^^;)よしよし、もう泣くな…』 「ふぇ〜ん、もう嫌!」 『もうこうなったら真実を皆に話すべきなんじゃないか?俺とお前の関係をさ』 「…うん、そうするつもり」 果たして、この青年の正体は?そして彼と真白との関係とは? 続く! |
糸杉美理佳 | #6★2006.09/15(金)12:06 |
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第6話「真実が明かされるとき」 真白にとって地獄のような見合いから1週間。終に真白は決心した、「そろそろ本当のことを明かしてもいい頃合かな」と。そして折りしも彼女の24歳の誕生日が近づいていた。 そこでまたしてもドッキリを仕掛けることにした。まず夏休み以来元気の無い7人と、見合いのときにちゃっかり連絡先を聞き出した雷蔵に「3日後に私の誕生パーティを開きたいのでポケモンセンターでお会いしましょう」と電話を入れ(それを聞いた彼らはたちまち元気を取り戻し、雷蔵も信用回復したと思われた)、例の電話の相手もその日には彼女のもとにやって来るのでそこで彼らに真実を伝えようということになった。 そして3日後、つまり真白の誕生日の夜。約束どおり先に到着していた例の相手には合図があるまで隠れているように言っておき、自分は名前の通りの純白のドレスを着て8人の到着を待った。 「真白ちゃーん!お誕生日おめでとう!!」 程なくして何も知らずに意気揚々と現れた8人の阿呆な男達はこれが最後のチャンスとばかりに着飾り、銘々プレゼントを手にしていた。それを見た真白は彼らのあまりの単純さに呆れを通り越して噴き出したくなった。いいわ、束の間の夢に酔いしれているがいいわ。 「来てくれてありがとう。実を言うと、皆さんに言わなければならないことがあるの」 「え、どんなこと?」 何だろうと胸をわくわくさせる8人。この後一気に奈落の底へ突き落とされるとも知らずに…。 「あのね、私は…」 胸の高鳴りを抑えられない8人を見て、「今だ」とばかりに真白は髪を掻き上げた。それが合図だった。 「何だお前ら、俺の真白に何か用か」 真白の合図を受け、物陰からのそりと現れた人影に、8人は一瞬何が起きたのかと目を疑った。 真白より若干背が高く、彼女と違って艶やかな漆黒の髪(夕太は途中に黄色い帯が入っているが彼は完全に真っ黒だ)にやはり黒曜石のような深い黒色の目。 対する真白は翡翠色の目に薄桃色の長い髪。見た目はまるで違うが、彼もピクシーのポケ人である。 「お、お前こそ何者なんだっ!?俺達の心のマドンナ・真白ちゃんをさも自分のもののように言うだなんて…」 「そう言うのも無理も無い話だ、何故なら俺は真白の婚約者だからな」 婚約者。その単語に、途端に8人は凍りついた。 「紹介が遅れたな。俺は月岡清彦、真白の義理の家族だ」 「へ?義理の家族で婚約者?どーいうことよ?」 「話はややこしくなるけどな…真白の両親は、彼女が生まれた時に大きな事故に巻き込まれてしまったんだ。そこで俺の両親に、真白を養子として託すと遺言を残したんだよ」 「え、大きな事故って…あの団体旅行の帰りのバスが土砂崩れに巻き込まれたっていうやつか!?」 「そうさ。俺の両親は奇跡的に傷が浅かったけど、真白の両親は大量の大きな岩の下敷きになって、救出も困難を極めたために命を落としてしまったんだ。幸い卵はあらかじめポケモンセンターに転送してあったため無事だったんだけど。そうじゃなかったら真白も俺もここにはいなかったしな…」 「そして清彦のご両親が聞いた、私の両親の最期の言葉―『真白を…あの子をお願い…』それを受けて、私は月岡家に養子として迎え入れられた、ってわけ。それから私が3歳になりピィからピッピに進化したとき、義務教育ということでこのポケモンセンターに住むようになったの。ここで暮らしているうちに居心地がよくなっちゃってね、でも連絡は欠かさなかったわ」 「ああ、それで真白が就職試験に合格したと聞いたときは嬉しくてたまらなかったぜ。それからもう一つ、真白と俺が生まれる前にこんな取り決めを交わしていたんだ…『真白が24歳の誕生日を迎えた今日、彼女と俺を結婚させる』ってな。俺の親父はその昔、ロケット団に狙われていたところを真白の親父さんに助けられてな、それから両家の関係は親密になっていったんだよ」 一通りの話を聞き、8人は魂が抜けたような顔をしていた。 「だから、あなた達がいくら私に付きまとっても、私の心を手に入れるなんて土台無理な相談だった、ってことなのよ」 「そ、そんなぁ〜…とほほほほ…_| ̄|○(滝涙)」 哀れ、8人はその場にがっくりと崩れ落ちて泣き濡れていた。 「これで漸く解放されたな、真白…」 「うん!それじゃジョーイさん、式の準備と新婚旅行のプランを練るのを手伝ってくれませんか?」 「ええ、勿論よ!新しい二人の門出を、心から盛大に祝わせてもらうわ!」 しかし、雷蔵達はこれしきのことで諦めるようなポケ人ではなかった。どうにかして式の邪魔をし、あわよくば清彦から真白を奪い取ってやろうとか邪な考えを巡らせていた。 果たして、彼らの計略は成功するのだろうか?そして、真白は無事に幸せな未来に羽ばたけるのだろうか? 続く(次回完結予定)! |
糸杉美理佳 | #7☆2006.09/28(木)13:39 |
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最終話「羽ばたけ真白!輝ける未来へ!」 婚約者の存在が発覚してもなお、男達は諦めがつかなかった。「人生諦めるのも重要だぞ」と上司や親族から言われても、一度惚れ込んだ相手のことはなかなか頭から離れないものである。 そんなわけで、「こうなったら式の最中に乱入して真白を攫って逃げてやろう」、とどうにもベタな作戦を考え付くに至った次第である。 踏み込むタイミングやいかにして清彦から真白を奪い取るかなどと綿密な計略を巡らせ(たちの悪いことに、彼らはこういう悪巧みに関しては異様に頭の回転が速かった)、終に作戦実行の時を迎えた。 幸せの鐘が鳴り響く、トーホク地方のどこかの教会。丁度今しも清彦と真白の結婚式が行われているところである。 ポケモンセンターは市区町村役場のような働きもあるので、そこで既に入籍を済ませてあった。そして今、指輪を交換し誓いの「てんしのキッス」を交わそうという瞬間である。 「では月岡清彦君、あなたはこれから先何時いかなる時でも生涯の伴侶、真白君を愛し守り続けると誓いますか?」 「はい、誓います!」 「よろしい…では月岡真白君、あなたは将来永遠に愛する夫・清彦君に従い支えると誓いますか?」 「勿論誓います!」 「よろしい。では指輪の交換を…」 と、その時である。ばーんっ!と教会の扉を蹴破り、「どけどけ邪魔だ邪魔だー!」と某お笑い芸人のネタ張りに荒々しくその場に乱入する影が。 「きゃぁー!?」 真白は悲鳴をあげ、咄嗟に「ちいさくなる」を使い、清彦の式服の胸ポケットに飛び込んで隠れた。 「な、何ですかあなた方は!?この神聖な儀式の場を汚すことは、神への冒涜に他なりませんよ!」 「そんなことはどうでもいい、それより真白ちゃんをよこせ!」 そう、作戦を実行に移した8人である。 「何だお前ら、まだ諦めてなかったのか?今更何をやっても無駄なことだ!」 「五月蝿いな、俺達はただ真白ちゃんがそばにいてくれればそれでいい、それだけの話だ!」 「おー、それはご大層なこったな。でも遺言は動かせないし、それにとっくに籍も入れた。だから諦めろ」 「そうは言われても黙って引き下がったら男が廃る!こうなりゃ実力行使じゃーっ!」 8人が清彦に飛び掛る。 「甘い!」 清彦が叫んだと同時に、彼の周囲に真珠色の光のバリアが発生し、8人は弾き返された。 「な、な…!?」 「俺は『リフレクター』を、真白は『ひかりのかべ』を使ったんだ。この二つの光のバリアは、『かわらわり』を使っても容易には破壊できないぜ!」 「ど、どーしてなのよ!?」 「まだわからないの?私達二人は共に信頼し、愛し合ってきた。そして今この瞬間、二人の力は一つになっているの!愛する人を守りたい、その思いこそが私達の力になっているのよ!」 「そうだ。それが理解できないようじゃ、異性と付き合うなんて土台無理な話だ!」 「うっ…」 言葉に詰まった様子で8人は俯いていた。 「そんな邪な心を持つ人には、ちょっと天罰を下す必要があるわね…ねっ、清彦!」 「ああ、わかってるさ!」 真白は清彦の胸ポケットから飛び出すと元の大きさに戻った。そして… 『ダブルコメットパーンチ!!』 『ぎゃ〜!!(泣)』 二人の愛の力でかなり強化された「コメットパンチ」をダブルで食らい、哀れ8人は空の彼方へと吹っ飛ばされてしまった。 「これで面倒な奴らと関わることもなくなったな。さあ、続きをしましょう!」 「はい。いやはや、全く今日の式は何ともかんともな顛末ですな(汗)」 そして互いの細い指に結婚指輪が通され、愈々クライマックスへ。 「大好きだよ、真白…」 「私もよ、清彦!」 二人の唇が触れたとき、参列者の感動も最高潮に達した。 こうして真白は長い闘いに終止符を打ち、愛する清彦と共に輝かしい未来へと文字通り羽ばたいていった。 一方、残された8人は… 「ううっ…今回は完全に俺達の負けだ…(涙)でも見てやがれ、俺達も真白ちゃんに負けないくらい立派な彼女を作ってみせるからなー!!」 終幕。 |
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