ぴくの〜ほかんこ

物語

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[924] シンオウ地方を巡る旅〜始まりの風が吹く

千晴 #1☆2006.11/04(土)16:22
第1話 朝の物語

東の空が、曙色に染まり始めている。
ぱりっとした冷たい空。
早起きな鳥ポケモンは、元気に宙を舞っている。
シンオウ地方の端に位置するフタバタウンでも、静かな朝を迎えようとしていた。
家が数件建っているだけの小さな町。
そんな町の一角で、1人の少女の騒がしい朝が始まる――。

少女はまだ夢の中。
幸せな夢でも見ているのか、気持ち良さそうな寝息が聞こえる。
…コンッ。
そんな物音で、少女は薄目を開けた。
上半身を起こし、眠そうに目をこする。
…コンッ。
2回目で、その音が、窓に何かが当たっている音だと気付く。
その犯人まで見越した少女は、すたすたと窓に歩み寄る。
窓を開け、朝には近所迷惑であろう声で叫ぶ。
「ケイタ!気持ち良く寝てたのに、こんな朝から何?」
見下ろす先では、少女と同い年ぐらいの少年…ケイタが、いたずらっぽく笑った。
その手には、中ぐらいの大きさの石が握られている。
「こうでもしないと、ユナは起きないだろ」
悪びれた様子もなく言うケイタに、少女――ユナは脱力する。
「あたしの質問に答えて。何の用なの?」
「まあ、それはあとで話すけどさ。とりあえず、支度して下りてこいよ」
幼馴染がせっかちで、言い出すと止まらない性格なのは分かっていたので、ユナは諦めたように小さく溜息をつき、窓を閉めた。
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千晴 #2☆2006.11/05(日)13:36
第2話 珍しいポケモンを求めて

数分後、ユナが支度を済ませて外に出ると、ケイタがこちらを見てにんまり笑った。
「お、早かったな!」
「…お待たせ。で、これからどこに行くの?」
「よくぞ訊いてくれました!これから、『シンジ湖の謎を探れ!』を開始するぜ!」

少し間をおいて、おうむ返しにユナが訊いた。
「『シンジ湖の謎を探れ!』〜?何、その面白くなさそうなネーミング」
それに「!」マークがバカっぽいわよ、と小さく付け足す。
ちなみにシンジ湖というのは、シンオウ地方の三大湖に入る、大きな湖である。
「それは無ェだろ!昨日徹夜で考えたんだぜ!」
「……」
バカなこと考える暇があったら、本でも読んでなさいよ!
そんな風に訴えるユナの冷たい視線に、ケイタが咳払いする。
「まあそれは置いといて。今からシンジ湖に行くぞ」
「だから何で!」
当然のような口調に反論すると、ケイタが驚いた表情になる。
「昨日テレビ観なかったのか?特番『赤いギャラドスを追え』」
「何それ」
「どこかの湖で、赤いギャラドスを発見した、って奴」
「ふぅん。…ちょっと待って、まさか赤いギャラドスを探すって言うんじゃ…」
おっ、とケイタが歓声を上げる。
「さっすがユナ!鋭いな」
ユナの叫び声が、早朝の空に再び響いた。

「冗談じゃないわよっ!いるわけないでしょ!あたし帰って寝る!」
踵を返そうとするユナの腕を、ケイタが慌てて掴んだ。
「おい待てよ!これ見つけたら大スクープだぜ!?」
「そんなのどうでもいいわよ!」
「でもほら、シンジ湖には珍しいポケモンもいるかもしれないしさ」
暴れるユナの動きがピタリと止まる。
ポケモンが大好きなユナを、見事に操る手綱さばきだった。
「なぁなぁなぁ〜」
ケイタの腕をグイと引っ張り、ユナがすたすたと歩き始める。
「し、仕方ないわね!行くならさっさと行くわよ!」
「了解〜っ」
そんなこんなで、2人はシンジ湖へ向けて出発するのだった。
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千晴 #3☆2006.11/05(日)14:03
第3話 シンジ湖の忘れ物

朝のシンジ湖は、冷たい空気に包まれていた。
薄く霧に覆われており、静かに水面が揺れている様子は、文句なしに美しい。
「朝のシンジ湖に来たのって初めてだけど、すごく綺麗…」
「なっ?それだけでも、来て良かっただろ?」
ケイタが嬉しそうに笑ったが、事実だったのでユナは何も言わなかった。
湖は透き通っていて、底まではっきりと見えている。
「…これだけ透明なんだから、ギャラドスがいたらすぐに分かると思うけど」
正論を口にしたユナだったが、ケイタは納得しない。
「何言ってんだ!赤いギャラドスだぞ!どこかに隠れてるに決まってるだろ!…ん?」
「?どうしたの?」
一定の方向を見つめていたケイタは、やがて草むらへ歩き始める。
ユナが慌てて声をかけながら、ケイタの腕を掴んだ。
「ちょっと!何なのよ?」
「あそこ」
ケイタが指差す草むらには、こげ茶色のカバンが置いてあった。
「あのカバンがどうかしたの?」
「誰かの忘れ物かもしれない。中、見てみようぜ」
「何か話繋がってないわよ!そのうち取りに来るだろうし、やめた方がいいわよ」
ユナの制止も聞き入れず、草むらを掻き分け、ケイタがカバンをゆっくり開く。

一瞬後、ケイタが少し驚いたように言った。
「…モンスターボールだ」
「え?…本当だわ」
ユナもケイタの後ろから、カバンの中を覗き込む。
中に入っていたのは、たくさんの書類と、3つのモンスターボールだった。
「てことは、このカバンの持ち主はポケモントレーナーなのかしら」
そうかもな、と返事をしながら、ケイタはカバンを閉じる。
「さってと!んじゃ、早速ギャラドス探しを――」
ガサッ…。
2人の動きが止まり、ゆっくり顔を見合わせる。
「ケイタ。さっきの音…聞こえた?」
「聞こえたかも」
ガササッ…。
「聞こえたわよね?」
「あぁ、はっきり」

2人が振り向くと、2匹のムックルが怒ったように翼を広げた。
『クルーッ!』
次の瞬間には、ムックル達は2人に向かって飛びかかっていた。
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千晴 #4☆2006.11/06(月)10:08
第4話 初めてのポケモンバトル

「ムックルの縄張り意識が強いって、本当だったのね〜」
ふむふむと頷くユナを、木の枝で対抗していたケイタが振り向く。
「のんきに確認なんかしてないで、早く何とかしろよっ」
「ん〜、そうね〜。それじゃ――」
ユナがさっき閉じたばかりのカバン(忘れ物)を、再び開ける。
「…何する気だよ」
ケイタが確認のために尋ねると、ユナはいたずらっぽくウインクしてみせた。
「もちろん、戦うのよ!目には目を、歯には歯を。ポケモンにはポケモンを、でしょ?」
ユナは、ためらいなくモンスターボールの1つを手に取る。
ケイタも制止することはせず、木の枝をムックル達の足下に投げつけて時間をかせぐと、モンスターボールを手に取る。
「そうこなくっちゃな!ユナのそういうとこ、男らしいぜ!」
「判断力があると言って!行くわよ!」

2人が、ほぼ同時にモンスターボールを宙に放り投げる。
白い光を帯びて跳び出したのは、ヒコザルとポッチャマだった。
ユナの方から出たのはヒコザル、ケイタはポッチャマだ。
『キィッ!』
『ポチャ!』
「ヒコザルね。何か感動〜!」
「そんな場合かよ…。頼むぜっポッチャマ!」
刹那、ムックル達が再び襲いかかってくる。
「ヒコザル、『ひのこ』よ!」
「ポッチャマ、『あわ』攻撃!」
『キィ――!』ヒコザルの『ひのこ』と、
『ポッチャ――!』ポッチャマの『あわ』が、ムックル達にヒットする。

『クルーッ!』
逃げていくムックル達を見送りながら、2人が安堵の溜息をつく。
「良かったぁ…」
「予想外のハプニングだったな」
しかし、次の困難が2人を待ち受けているのだった。
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[924]

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