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プリ佳 | #1★2007.10/16(火)18:49 |
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〜プロローグ〜 恋をした 失恋をした その日から唄が歌えなくなった でも もういちどあいたい 素唄にあいたい あたしの恋は ただの夢? 〜第一話〜 アイというプリン シンオウ地方の真ん中・ヨスガシティ。 「けっこう遠いところに来ちゃったな…」 そうぶつぶつつぶやいて、アイは、あぶなっかしそうに人や自転車をよける。 「もしもしそこの可愛いプリンちゃん、もしかして迷子かい?」 そう声をかける警察っぽいヨルノズクもアイは無視した。 「ごめんね、アイ」 「アイは何も悪くない、だけど…」 「もう、これ以上アイとはいられない」 どうして素唄はあたしをおいていったの? そう考えると、アイは、道で倒れてしまった。 |
プリ佳 | #2★2007.01/14(日)14:31 |
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〜第2話〜 こちらポケモンあずかりシステム@n管理者の家 「おーい」 … 「おーい」 … 「大丈夫なんか?起きや?」 … 「レア、この子見とって」 「うん。わかった」 アイがおきたのは午後2時、小雨が降っていた。 「…っここどこ??」 「あっおきたぁっミズキ、起きたよっ」 目の前にいるのは小さなイーブイ。 ここは小さな家みたいだ。周りには、本棚、資料、パソコンがある。 「おはようさん。あんたうちの家の前で寝とったんやで。雨が降ってきたから、家ん中入れたったんや。ほら、ミルク。レアも飲み」 …変な言葉をしゃべる人に助けてもらったみたいだ。とりあえず、アイはお礼を言った。 「ありがとうございます、ミルク、いただきます」 「きみ、名前は?ぼくはレア、よろしくね!このおねえちゃんはミズキ。ポケモンあずかるパソコンソフトPOKEMON2とかいうの開発してる」 「ポケモンあずかりシステムや。何すごいことになってんの」 どうやらいい人みたい。アイは、ほっとした。そして、うたを歌おうとした。 「…っ」 声が、出ない。歌おうとすると、歌えなくなる。 「せやけどあんた、この辺じゃ見かけへんなぁ。どこ出身や?」 「ジョウトです」 さっきの失敗が何もなかったようなふりしてアイは答えた。 「ま、しばらくここにおり。好きなときに、出てってええから」 「ぼくといっしょに、ふれあいひろばいこう!あそこ、色んな物が落ちてて、楽しいよ」 少しアイは迷って、でも笑って、 「行くっ」 |
プリ佳 | #3★2007.01/08(月)14:44 |
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〜第3話〜 ヨスガの公園 「ここだよっでも、まって。ここはトレーナーとポケモンがふれあう場所だから、あのおねえさんに見つからないように入るんだ」 きれいなところ。いつか、素唄といったしぜんこうえんと似ている。 「結構スリル満点☆」 「ここを…とおるの?」 レアが行こうとしている場所は、穴の中。 「そうだよ、ぼくが掘ったんだ。あなをほるって技で」 普通ならポケモンセンターまでつなげるんじゃ…そうアイは思った。 「きみとぼくだけ、秘密のちかつうろ」 穴をぬけると、薄暗かった。建物の中みたいだ。 「雨が強くなってきたね…今日は運が悪いみたい。傘さしてる人がいっぱいいるよ」 「これなあに?」 アイは、見たこともないきれいな羽をひろった。 「あ、それめずらしいの!みずいろのはねだ!アイ、つけなよ。似合うよ」 アイと、レアは、しばらくその建物の中で、宝探しをしていた。 「ここってなんかの遺跡だったんだって」 「ふうん」 「きっとお宝がいっぱいあったんだろうね」 2匹は、穴を通って、出口から家に帰った。 「あ、おかえり。また穴ん中通ったな?泥だらけやで。シャワー浴びてき」 「はぁい」 レアは元気良くシャワールームへむかう。アイがそのあとをついてゆく。 「そうそうアイちゃん。ジョウトの知り合いに『マサキ』っつーやつがおるんやけど、そっちいくか?」 …? 「むりせんでえーけど、ちょっと考えといてな」 ジョウトに帰る? |
プリ佳 | #4☆2007.01/09(火)19:50 |
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〜第4話〜 なつかしのジョウト 「またな、元気ですごすんやで」 「はい」 「またあそぼうね☆」 「うん。また今度」 シュン… 「よう、わいがマサキや。話はミズキからきいとるよな。アイちゃんやったっけ?可愛い名前や」 …またこの手のしゃべり方。正直わからない。 「これからよろしくな」 「あっっあの…っ」 「なんや?」 「えと、その…旅にでたいんです。人探しの」 アイがジョウトへ行く決心をしたのは、このためだった。 「旅?人探しの?あんた1人やったら危ないで。なんやったら、わいが探したるし」 「…いいです」 「なんていう名前の人や?ゆうてみ。トレーナーやったらわいのシステムあつこうてるかもしれんし」 …あつこうてる??なにそれ。 「『そうた』ってひとなんですけど…」 「『そうた』?いっぱいおるからなぁそんな名前…探しにくいな…しゃあない、サービスでわいのパソコン見せたるし、どんなポケモンもってたかゆうて」 アイは考えていた。仲間を思い出してるのだ。 たしか…ラブカス。それからホウエンからきたというチルット。 「ラブカスとチルットがいました」 「ほかには?」 カシャッと音をたててマサキが聞いた。 アイは、無言。 「おらんわ、そんな人。ごめんな力になれんくて」 「いえ、こちらこそ、迷惑かけてすみませんでした」 夜明けに、アイは木の実とタオルをもって、マサキの家を出た。 |
プリ佳 | #5☆2007.01/10(水)18:10 |
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〜第5話〜 夢くい・スリープ 「どこに行こう…」 アイは、迷っていた。別に道を忘れたわけじゃない。 コガネシティは、素唄との思い出がいっぱいある街だ。 だから…なおさらここを出たくない。 午前10時。もう何時間も街の中を歩き回った。 アイは、ラジオ局の前で、マサキからもらった手紙を読んだ。 一人旅の心得 くじけない あきらめない 必ずしんじる 自分を 相手を 追伸 風呂には入りや!食料は最低1個は持っとき! ちょっと元気が出た。勇気がわいた。アイは決心した。 「ずっとこの街にいても進歩はない。とりあえず、移動しよう」 道を行く。34番道路。 「ここをまっすぐ行けば、ウバメのもりだ」 自分の記憶を信じるアイ。と、その前にスリープがでてきた。 「ねえ、君。夢…食べさせてください」 パタッ…スリープは寝てしまった。 「これがスリープ?ゆめくいポケモンだったっけ。どうしよう。すごく、ジャマ…なんですけ、ど」 アイは、その場で、寝てしまった。 「よし、あくび作戦成功!早くゆめを食べちゃおうっ」 突然起きたスリープ。アイは、すーっと、夢の中にはいった。 |
プリ佳 | #6☆2007.01/12(金)18:22 |
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〜第6話〜 素唄とアイの夢 夢だ。 ここのところいつも見る夢。 綺麗な噴水のある公園で、 プリンとあの人が俺を待っている… …っ。プリンといえば、アイを手放してから見るようになったんだ。 まさか…アイ、俺のこと探してないよね? アイは夢を見ていた。 昨日まではぼやけてたけど、今日は、はっきり見える。 素唄がいる。あの人がいる。 「アイ、歌ってよ…」 そういう素唄の願いを、きいてあげたかったけど… 今のアイは、歌えなかった。 アイは、苦しくなって目が覚めた。 目の前には、誰もいない。いつのまにか夕焼け。 「寝ちゃったんだ…」 なんか素唄を探す時間がなくなって、損した気がするアイ。 「おきたぁ〜?おなか減ってるでしょ、僕の今のおうちで一緒に食べよう〜、晩ご飯」 向こう側から声が聞こえた。あのスリープだった。 「僕はすりーぷだよ〜」 「いや、見てわかりますが…」 「ひらがななのっ僕のご主人が付けてくれたニックネーム。君はぷりんだねぇ〜」 「アイといいます。ご飯、もらいます」 すりーぷの今の家は、なんと育て屋。 いろんなポケモンがいて、優しい老夫婦がいる。 久しぶりにこんなにたくさんのポケモンとふれあって、アイは、涙が出た。 ずっと、さみしかったから。もっと、トレーナーのポケモンでありたかったから。 |
プリ佳 | #7★2007.01/14(日)14:32 |
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〜第7話〜 すりーぷの悩み アイは眠れなかった。 昼間ずっと寝てたから…というのもあるけど。 隣のすりーぷがずっと話しかけてくるのだ。 「でね〜そのときに、ご主人がモンスタ〜ボールを投げたんだぁ〜」 イラついてきた。 「そしてぼくはすりーぷって名づけられたわけ。初めて行った街は」 むかついてきた。 「なんと、大きなスピアーの群れが!で、ぼくはご主人を守るために」 プチッ…アイはキレた。 「そろそろ寝ませんか?!今はすごく寝たいんです!」 さすがにすりーぷは黙った。でも、大きないびきが聞こえてきた。 「グゴォオ…」 スリープってこんなにいびき大きかったっけ? アイはなんかこいつのご主人がここに預けた理由がわかったような気がした。 「もういい…」 「…っそうだ!アイちゃん。ぼくの悩みきいてよ」 起きるの早いっ。アイはそう思ったけど、無言。 「ぼくの悩みは〜、寝てる人の夢をスグに食べちゃうこと〜」 …じゃああの時苦しかったのはこいつの夢くい?? 「寝ちゃってる?」 「起きてる。…今度は、アイの悩み聞いてください」 きいてほしくなったから、アイは言った。 「アイちゃん悩みなんかあるの?」 失礼な。 普通のプリンはいつでもどこでも歌っているのに、アイが歌ってないことに気づいてないのか。 でも、アイは続けた。 「アイの悩みは、唄が歌えないことなの」 すりーぷは、黙って、きいてくれた。 |
プリ佳 | #8☆2007.01/14(日)14:59 |
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〜第8話〜 眠れない夜に 「要するにその素唄って人が悪いんだね〜」 「素唄は悪くない」 でも、確かに…アイを捨てたのは素唄。その日から歌えなくなった。 素唄のせいかもしれない。でも、アイは素唄を疑いたくない。 ―だって素唄が好きだもの。 アイのこころの中で、誰かがささやいた。 「アイちゃん、まだ10時だよ。よし、今から肝試しいこう!き・も・だ・め・し!他のみんな呼んでくるー!」 …はぁ?どこからそんな発想が。 「返事してないのに決定しないでよ」 アイの空しい独り言だった。 「みんな集まったぁ〜??」 「はぁ〜い!」 なんですりーぷが主導権持ってるんだろう… ここはウバメのもり。一応、アイも来た。集まったポケモンは6匹。 すりーぷ・アイ・オタチのたっちゃん・ニャースのキース・ニョロモのなると・マダツボミのつぼみ。 「しゅっぱ〜つ!」 夜なのに元気な声で、一行は真っ暗な道を進んでいった。 「こわいよ〜」 最初にそういったのはつぼみ。 「まだなんもでてねえって!これぐれえへーキヘーキ」 そんな感じで進んでいった。 そして…出た。お化けが。 |
プリ佳 | #9★2007.01/14(日)20:19 |
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〜第9話〜 ツクシとスピアーの群れで 「出たあぁ!!」 まず先に声を挙げたのはつぼみだった。 臆病なくせに、なんで来たんだ。 「ひょ〜っ本物のお化けだぁっ初めまして!」 お化けに挨拶してるのはたっちゃん。 「ゴーストわざを当てるならこいつにしてください」 「なにするの〜」 …なると、可愛い顔してやることは残酷だな。すりーぷを盾にするなんて。 そしてアイは、何も言わない。 こんなに言われてお化け(?)が黙っているわけなかった。 「君たち、迷子なの?ぼくはお化けなんかじゃないよ。ツクシ。ちなみにヒワダタウンのジムリーダーだよ。クスッ」 …そんな格好じゃ、お化けと言われても仕方ない。 白いロングコート、白い帽子、白いズボン。そしてろうそく。 「なんかスピアーたちが肝試しするってむしのしらせでとどいたんだけど、君たちのことだったのかな?」 「はい。たぶん、そうです」 マトモに答えているのはアイだけ。他はガタガタ震えている。 そのとき… ブンブン音がした。 「ぎゃぁ〜!!スピアーだ!!」 みんな、一目散に元来た道を行った。 アイは取り残された。 「君は戻んなくていいの?」 「はい、ちょっとお世話になっただけですから。それよりも、逃げませんか?」 「大丈夫だよ、なんだ、スピアーたち。そんなにぼくが恋しかったかい??」 「ツクシ〜っ」「ツクシ、こんなとこでなにやってるの?」 「会いたかったよ〜ツクシ!最近来てくれなかったじゃん!」 「アハハ。ごめんごめん。ここんとこチャレンジャーが相次いで」 …何なんだろうこの光景。こんな夜中に子どもとスピアーがたわむれてるよ。 「プリンちゃん、暗いし、どうする?あの子達を追いかける?ぼくんちに来る?」 選択肢2個しかないの? 「あなたの家に、お邪魔させてもらいます」 本当は、チャレンジャーの中に素唄がいないか聞きたかったアイだった。 |
プリ佳 | #10☆2007.01/14(日)20:48 |
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〜第10話〜 1人じゃないから 朝。ポッポの鳴き声がよく聞こえる。 「ツクシさん…?」 部屋には、ツクシの姿はなかった。 近くのジムに行ってみた。 「あ、プリンちゃん。おはよう!」 早起きだね〜…突っ込みたいアイだった。 「昨夜はありがとうございました。もう、出発したいと思います」 「そっか、うんいいよ。行ってらっしゃい!元気でね」 笑顔で、見送ってくれたツクシ。世の中にはいい人がいるものだ。 大きな井戸の前でアイは気がついた。 「素唄のこと聞くの忘れた…」 なんとなく、ポケモンセンターへ行ったアイだった。 「すいません、ここに『そうた』って人、来ませんでしたか?チルットとラブカスを連れている人なんです…」 「ごめんなさいね。たぶん来てないわ。チルットとかラブカスなんて珍しいポケモンがいたら覚えているはずだもの」 「そうですか…」 あきらめて、出ようとしたアイ。 「まって、あなた『アイ』ちゃん?」 「…っ。なんで名前を?」 「昨日連絡がきたわ。アイって名前のプリンがきたらこれをわたしてくれって。マサキさんから」 小さな小包。中にはモンスターボールと手紙。 アイちゃんへ これを受け取ってる可能性はものすご低いけど、マサキや。覚えとるよな? まあ、中身はアイちゃんもよう知ってる通りモンスターボールや。 プリンなんて、珍しいポケモン見つかったらゲットされてまうやろ? そのときはこん中入り。親はわいになってまうけど、出たらしまいやし。 がんばりやー! マサキ 「マサキさん…っ」 また出てこようとする涙をこらえながら、アイは、ジョーイさんにお礼を言った。 道を行く、洞窟を抜けた。 マサキからもらったボールはすでに3回もお世話になっている。 川のそばで、アイは見たこともないポケモン、ミミロルと会った。 |
プリ佳 | #11☆2007.01/21(日)14:25 |
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〜11話〜 カットとの出会い それは数分前… やっと洞窟を抜けたアイはポケモンセンターを探していた。 すると、向こうから声が聞こえる。 「こっちくんな!」 「なにあのポケモン!超可愛いんですけど!」「見たことねえ!」「俺が捕まえるぜ!」 思わずアイはボールを見たことのないポケモンに投げた。 揺れがおさまって…止まった。 トレーナー達は諦めた様子であっちに行った。 「大丈夫?」 そういってアイは、木の陰で出してあげた。 「…大丈夫だからっ…」 草むらに逃げようとするその手をアイはつかんだ。 「あなたも一人なの?」 「アタイのことなんて、ほっといてよ!」 随分照れた顔で言っている。しかも噛み噛み寸前で。 結局、あのこは行ってしまった。 木の陰で寝るアイ。モンスターボールをどこかに置いてきたらしい。 「失くしちゃったかも…」 トントン。茶色い手が、アイを叩く。 「誰?」 アイが目を覚ますと、昼間のポケモンがいた。 「届けにきただけだから…っ」 モンスターボールを置いて、また逃げようとする。 アイは、引き止めた。 「ありがとう。…私はアイって名前なの。あなたは?」 やっぱり喋ってくれない。相当シャイなようだ。 「どこから来たの?一人なの?」 …。アイはちょっととまどって、聞いてみた。 「元はトレーナーのポケモンだった?」 「……………うん」 悲しそうな目をして、答えてくれた。 |
プリ佳 | #12☆2007.01/25(木)20:58 |
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〜第12話〜 REN・AI パリンッ いい音がして、2匹のププリンが産まれた。 「ププー!」「プリュゥ…」 そばには、男の子と女の子とプクリンとピクシー。 「か…可愛い!ねぇ、素唄。この子達の名前はなんにする?」 「う〜んと、そうだね…。2匹ともメスみたいだね。じゃあ、アイ。アイってのは?可愛いだろ?」 「アイかぁ…じゃあ、もう片方はレンね。2匹でレンアイ。丁度、私たちみたいよ」 プクリンも、ピクシーもそれがいいという。 みんな、喜ぶ。アイたちの誕生を。 そのうち、2匹のププリンはプリンになった。 アイは素唄が連れていて、 プクリンとピクシーとレンは、あの人が連れていた。 ―昔は、みんな、幸せだった。 ―アイには家族がいた。 ―ポケモンの運命は人間が決めるの―? ある日、アイは見捨てられた。 もう、みんなと会えないのかな… アイは、船に乗って、知らないところへたどり着いた。 そこが、シンオウ地方。 アイは、ひとりになってしまった。 でも、これからは――― 「…………」 「ねぇ、まだあなたの名前、聞いてないよ?」 「…っ。ゴメン…。アタイは、カット。ミミロル。シンオウ地方から来ました」 カットは、性格が照れ屋なのか、長い耳で顔を隠してしまった。 「寝ようか、そろそろ」 「うん」 カットといると、優しくなれる気がする… アイといると、素直になれるかもしれない… 朝、二人は出発した。 それぞれのご主人を探しに。今までは一人だった。 でも、これからは、ずっと二人。 |
プリ佳 | #13☆2007.01/27(土)19:43 |
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〜第13話〜 パズル!アンノーンの遺跡 道に迷った。 アイは、少し物忘れているようだ。 「たしかこっちでキキョウシティのはずなのに…」 「アイ、しっかりしてよ。アタイはジョウトなんて来たのはじめてなんだから!」 …やっぱり、照れて、噛み噛み。でも、少しずつ、声は大きくなっている。 太陽が照りつき、暑くなってきたので、近くの洞窟に入った。 中は意外に明るい。声がよく響く。 ――ここで歌えたら、気持ちいいだろうな… 「ねぇ」 呼ばれたので、アイが振り向くと、カットがパズルで遊んでいた。 「ここがどうしても分かんない、やって」 「はいはい…!?」 アイが、最後のピースを埋めると、地面が揺れた。下に穴が開いた。 「落ちちゃうよ、アイ!!」 「待って…この壁画…このポケモン…見たことあるの」 ドンッ 二人が落ちた場所は、さっきとあまり変わらないところ。 「い…痛い…」 「ここ…どこ?ねぇ、アイ。知ってる?」 「知らない…けど聞いた事ある…アンノーンっていうポケモン。アルファベットの形で…」 そういう二人の周りを、複数のアンノーンが囲んだ。 KOKOWA WATASHITATINO NAWABARI ANATATATI WA DARE? IMASUGU NI DETEITTE 辺りは眩い光に包まれ、アイとカットは気を失ってしまった。 |
プリ佳 | #14☆2007.02/01(木)20:05 |
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〜第14話〜 夜空のアルファベット 起きると、あの不思議な遺跡の前。まわりには、アンノーンがいる。 「昼はすまなかった」 …。普通に喋れるんじゃん?このアンノーン達。 「私たちの食料が尽きてきて、イライラしていたのだ。仲間達が無礼なことをして、君たちが怒っているかとも思ったが…」 「…っ。そうだ、アタイ達…なんかなんか、えーと」 だんだん記憶が蘇ってくる。 「お詫びに、体力を回復しておいた。…食料をくれたら、何か私たちにできることなら、してあげよう」 アイ達は少し迷った。でも、人助けなら――してもいいよね。 「これ、どうぞ」 アイが、荷物の中に入っていた木の実を差し出した。 「こんなにたくさん、もらってもいいのか?」 「いいんです、二人だけだと、結構足りるので」 会話に参加していないのはカットだけだ。やっぱり、照れている。 「お礼…は、別にいいですよ。あなた達の住処に入ってしまったこちらが悪いですから」 「してくれるなら、アイの飼い主を探してあげてよ」 急にカットが口を挟んだので、みんな引いた。 「アイが探してる人。『そうた』って名前なの。見つけてあげてよ」 しばらくの沈黙。そして、アンノーン達が集まって、相談をしている。 いろんな形がいる。A,B,C,D,E…全てアルファベット。の中に、!や?もいたり。 「夜になったら、空を見上げてください」 謎な言葉だったけど、アイ達はお礼を言って、先に進んだ。 その日の夜は、曇っていて、星も月もよく見えない。 アイ達は、キキョウシティにやっとの思いで着いたとこだった。 そして、約束どおり、空を見上げる。 PURIN AI MOTOTOREENAA SOUTA SAGASITEIRU RENRAKUWA KIKYOUSITEINO ISEKIMADE 素唄は見て、知ってしまった。 アイが、自分のことを探していると。 もう、二度と会うことはないのに――― あふれ出てくるこの感情は、なに? |
プリ佳 | #15☆2007.02/03(土)15:24 |
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〜第15話〜 初めての恋は、何味? キキョウシティから、右へ。31番道路。 アイとカットは、とても気が合うようになった。 「アイって、ホントに素唄のことが大好きなんだね」 「うん、ギター弾いてたり、歌を歌ったり、音楽ならなんでもできたの。すごくカッコイイんだぁ」 カットは思う。アイって、愛されて育ったんだなぁ… 「アイにとってはどんな愛?ほら、友愛とか、家族愛とか…そういうの」 「えっと、『恋』、かな。…なーんて」 「きっと恋だよ。ほら、アイの顔、赤いもの」 そう言い合いながら歩く二人。やや、カットの方が声が小さい。 ある虫取り少年がそれを発見した。 「見たことないポケモンだ!俺が一番に捕まえてやる!!」 当然カットのことである。 「アタイも、そういう甘い初恋とかしたいな…」 「ちょっ、甘くないってばっっ。そりゃ、素唄への思いは初恋かもだけどさ、でもアイは捨てられて…っ」 ドドドドドドッッ…後ろから沢山のポケモントレーナーが! 「俺が一番!」「私が捕まえるのよ!」「コイツ見たことねぇ!」「きっとレアだ!」「バリ可愛くね?」 「カットのことだ!こっちにきて!早く!!」 「え!?あ、うんっっ」 焦りすぎて、カットは足元のビードルにつまづいた。 「なに人を起こしとるんじゃゴラァ!逃げる気か?あぁ?」 …どうやらビードルの思わぬ怒りを買ってしまったらしい。 その間に、トレーナーたちが追いついた。 「やっと追いついた!」「は、早い…っ」「こうなったら俺が捕まえてやる!」 アイは、どうしようか迷った。カットを助けたい。でも動けない… 「カットぉ―!!」 ―――その時、黄緑の陰が、トレーナーを蹴散らして、カットを助けてくれた。 「大丈夫か?茶色ちゃん」 それは、とてもカッコイイストライク。 それは、カットの初恋の始まり。 |
プリ佳 | #16☆2007.02/04(日)14:49 |
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〜第16話〜 君の気持ち、大切だよ いつの間にか日が暮れている。 「ありがとうございます…っ。か、か、感謝です…っ」 カットがすごく照れている。やっぱり、かみながら。 「別に…通りすがっただけだし…アンタ、見たことねぇポケモンだ。誰だ?」 ドキ…カットはもう、赤茶色になっている。 しょうがないな…アイが説明することにした。 「すいません、この子シャイなんで。あ、私はアイです。この子はカット。シンオウ地方出身のミミロルという種族です」 「シンオウか…聞いたことはあるが。自己紹介ありがとな。俺はスピリッツ。見ての通りストライクだ」 スピリッツはカットを観察している。 結局、その日は近くの草むらで隠れながら過ごした。 「なぁ、俺眠いんだけど。でも中々寝つけねえしさ、アイ、お前歌ってよ」 「…っ。ごめんなさい。アイは歌えないんです…それが悩みで」 「歌えねえプリンだぁ?初めて見た。悩みねぇ…人は誰だって悩みがあるもんだ。俺だってつい、キレると誰にも止められねぇ」 「そうなんですか」 夜空はキラキラ…今日は晴れだった。星が、綺麗。 「カットは?何か悩みあんのか?」 ドキッ――何だか今日のアタイおかしいよ。スピリッツに会ってから、心臓が… 「アタイは…人とか、ポケモンとか…っと、う、上手く喋れない、の…」 「ほんと、上手く喋れてねぇよ」 「クスッ。でも、そこがカットらしさが出てていいよね。と、アイは思うんだぁ」 「そうだよな。俺もそういうとこ、可愛いからいいと思うぜ。 ま、その悩み、解決するかしないかは人それぞれだけど」 もう…今日、アタイは寝れないじゃん。 スピリッツが、アタイの心臓をノックしてる…? |
プリ佳 | #17☆2007.02/12(月)11:51 |
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〜第17話〜 人は人のために カタカタカタカタ…カシャっ ふー… ため息を漏らしたが、それは徹夜で疲れているだけであって、顔は笑っている。 「できた、できたっと☆」 「何やってるの?こんな夜に。起きちゃったじゃん」 イーブイのレアが、ミズキに話しかける。 「あぁ。あんた起きとったんか。ほれ、見てみ、コレ。徹夜で頑張ったんやで」 「起きてたんじゃなくて、起こされたの!…で、何?それ」 「ほら!ええやろ〜。夜が明けたら、実行するで。ええな??」 「スピリッツっ朝だよ!起きて。朝ご飯食べよ」 「…〜っ。なんだ、アイか」 今日は曇り。少し肌寒い。 朝ご飯は温かいやけたきのみのスープだ。三人は小さな切り株を囲んで食事をする。 「…美味しかった!ごちそう様。よっし。じゃぁ、ここらでお別れだな。礼はするよ。ホレ」 「え…っ」 カットが、不安そうな顔を見せる。 「お別れ、ですね…。あなたはあなたの好きなように行けば良いですもの。お礼なんて、頂いていいんですか?」 「かまわねえよ。じゃ、また会おうな」 カットは、スピリッツが置いていったお礼を拾い上げ、中身を見た。 それは、沢山の珍しいきのみだった。 カットがシンオウ地方で食べた事のある、大好きなきのみ――カイスのみだってある。 「スピリッツったら、こんなにきのみくれたんだ。最後まで、いい人だったよね、カット、――?」 カットが、カイスのみを抱きかかえて泣いている。 「スピリッツ、と…ずっと、一緒にいたかったな…」 アイは、カットのそばにいてあげる。 「大丈夫。きっと、また会えるから。スピリッツもまた会おうって言ってたでしょ。なんで泣くの。そんな泣き顔で会いたいの?」 他の人には分からないかも知れない――でも、分かるかも知れない。 「アタイ、スピリッツと一緒が良かったよぅ…アイも優しいけど、スピリッツもアタイの事考えてくれた…嬉しかったのに。なんで、すぐに居なくなっちゃったの…」 カットの初恋は、曇りで終わった。 『アイというプリンが、「そうた」という人を探しています。見つけた方、心当たりのある方、また、本人はシンオウポケモンあずかりシステムまで』 今朝、こういう広告が、ネット上で沢山見かけられたそうだ。 |
プリ佳 | #18☆2007.02/20(火)19:43 |
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〜第18話〜 みんな、大好き!それとも大嫌い!? 「もうあなたとはいられない。今のこの関係が苦しいから……っ」 そう言って、私から素唄をフッた。 心残りは、ある。 アイ―――今、元気ですか? レンも、アイと離れて寂しそうだった。 すべて、私のせいなのかな…… 最近、アイとレンの親のピクシー、『フィクシー』を手離した。 ……人間にもうつる病気にかかったから。しょうがないじゃない。この事は、私だって辛い。 アイとカットは、長く暗い洞窟の中を進んでいった。 モンスターボールに2匹も入ると窮屈だな…… そう思っていた矢先に、ラプラスが現れた。 「洞窟の出口まで、案内してあげます」 二人は、ラプラスの言うとおりに進んでいった。 「あ、もう出口だ。ありがとうございます、ラプラスさん」 「いえいえ、わたしは洞窟を抜けたがっているポケモンのサポートをしているのですよ。ふふ、プリンさん。さっきあなたによく似たピクシーも案内しました。なんだか本当にすごく似ていましたよ。あら、少し喋りすぎたかしら?では、わたしの案内はここまでですね。お気をつけて!」 ……アイによく似たピクシー? お父さんなの?でも、お父さんはレンといるはずだし。 「ねぇ、アイによく似たピクシーって、前に話してたアイのお父さんなの?」 「知らない。大体、お父さんは今でもあの女のそばにいるはずだもの」 抜けたところは、フスベシティの近くだった。 アイの記憶どおりに進み、こおりのぬけみちもやっとの事で抜けた。 チョウジタウンの入り口――に、ピクシーが立っていた。 「……アイ?……なの、か?」 「お父さん!?」 人は、こういうのを運命の再会とよぶ…? |
プリ佳 | #19☆2007.02/27(火)19:37 |
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〜第19話〜 再見 ――ツァイチェン―― 「アイ…!」 「お父さん!」 アイが、フィクシーに駆け寄ろうとした。 「だめだ、アイ。お父さんに近づいたら…っ」 ピタッと止まるアイ。アイもカットもびっくりした表情だ。 「いいか。お父さんは病気にかかったんだ。だから、お父さんに近づくとアイもその病気になっちゃうんだぞ?」 「そういえば、何でお父さんは1人なの?病気だからなの?」 少しの沈黙。カットは緊張しているみたいだ。 「ああ。そうなんだ。病気になったからだよ」 フィクシーの返事に、アイは黙りこくってしまった。 その日の夜は、チョウジタウンのスリバチやま方面で休んだ。 「アイ…お父さんに会いに行かなくっていいの?」 恐る恐るカットが聞く。 「いいの…お父さんがああ言うのだもの。しょうがないじゃない…」 カットは、ムッとした。 「折角会えたのに?!もったいないよ。あんなちょっとだけで良かったの?」 「お父さんならもう、いかりのみずうみの方へ行ったでしょ。もう今頃みずうみのほとりぐらいまで着いてるわよ」 「アイ…」 カットは、あきらめて寝る事にした。 でも、アイは起きている。 ああカットに言ったものの、やっぱり会いたい。病気だから…それだからあの女はお父さんを手放したんだ。 お父さんは、優しかった。 優しすぎるのが玉に瑕で、時々はお母さんに怒られていた。 でも、アイやレンはそれだけで幸せだったんだ――― 「カット、起きて。ねぇってば」 「…っ?ふあぁあ。まだ夜中だよ…アイ…」 「いいの。今から行くのよ。お父さんに会いに」 |
プリ佳 | #20★2007.03/22(木)19:33 |
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〜第20話〜 目指す場所 「ねえ、アイ。いい加減その女の人の名前、教えてよ。呼びにくくない?」 「言わない。普通の名前だよ。それにキライだから」 ホーホーやヨルノズクの鳴く声が響く。 ――アイは、お父さんがいるからいいな… カットは、自分の親の顔を覚えていない。だから、アイがうらやましい。 「綺麗だなぁ〜…ここに来て良かった」 アイのお父さんのピクシー、フィクシーが湖を眺めている。 「月も星もよく見える……ゴホッゴホッ――今日はもう寝るか…」 「お父さん!!」 「アイ…!お父さんのところに来ちゃダメだと言っただろう?」 ――それでもアイは来たんだ… アイみたいな、勇気が欲しい。 「お父さんが病気にかかっただけで手放す夢さんなんて大嫌いだ!!アイは、ずっとお父さんのそばにいる!!」 カットは、ずっとそばで黙っていたが、口を開いた。 「…アイ、女の人の名前って、夢…っていうの?素敵な名前だね」 「!…言っちゃった」 フィクシーは笑って、2人のことを見ている。 「お父さんは、【心】の病気にかかったんだって。自分じゃわからないがね。このままじゃ他の人にもうつるし、迷惑かかるって」 ちょっと黙ってしまうアイとカット。 そんな三人を、朝日が優しい光で包んだ。 「アイ、それからカットちゃん?だっけ。シンオウ地方に行ってみなよ」 湖の水が、朝日を反射してまぶしい。 「シンオウ地方?アタイが住んでたところ…」 「そうなのか。…あっちには、夢さんもレンも、それに素唄さんもいるぞ」 素唄!!その言葉にアイは反応した。 「…分かった、行く。――カットは、どうする?」 「アイが行くなら、アタイも行くよ!」 雲ひとつ無い青空。 アイとカットは次の目指す場所、アサギシティへ歩いて行った。 |
プリ佳 | #21☆2007.04/21(土)14:30 |
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〜第21話〜 炎の中のお姫様!? アイとカットはエンジュシティに来ていた。 「アタイ、おなか空いたな〜…」 「そうね。道路に入って、木の実を集めよっか」 アイが指した場所には、あかぼんぐりの木と、たくさんの炎タイプのポケモンが居た。 「ねぇ。すみません…少し、木の実を分けてくださいませんか?」 できるだけ丁寧な言葉で、アイがすぐそばに居たガーディの女の子に話しかけた。 「…!あ、ごめんなさいね。ここら辺の食べ物は全てあそこに居る、ローズ姫に渡さなければならないの」 ローズ姫とはすぐに分かった。凄く綺麗なロコンが姫に違いない。 深紅のコートを着ていて、小さな綿の付いているリボンでコートを留めている。 「姫…?ポケモンに姫なんかいたっけ?」 独り言のようにカットがつぶやいた。 「あら…あなた。見たことがないわ。どちら様で?」 ローズ姫がこちらに気付き、話しかけてきた。 「カット…礼儀正しくするの。うつむかないでよ。この人はお姫様なのよ」 アイが、顔を赤くしてうつむいているカットにささやいた。 「は、はぃ…ぇ、ぇえっと。シンオウから来ましきゃ…」 「ほほ…面白い方ですわね。気に入りましたわ。タイプは?種族は何でございますの?」 カットは、噛んでしまったことによりさらに顔が赤くなった。 もうこれ以上は自己紹介ができないな――…そう思ったアイは、カットの代わりに話を続けた。 「この子、シンオウにしか居ない種族で、ミミロルという者です。タイプはノーマルタイプ。あっ自分はアイといいます。見た目どおりプリンです」 「そう。よろしくお願いします。わたくしはローズ。一応この辺りの炎タイプを仕切っておりますの」 そう言って、ローズ姫は向こうへ行ってしまった。 「なんか…凄いね。生粋のお嬢様ってオーラが出てるよ…」 ローズ姫の後姿をみながら、アイが言った。 「うん、それ分かるよ。お姫様って感じだもんね…」 カットも同意した。 今は、まだ平和だった。 後であんな事件が起こるまでは―――… |
プリ佳 | #22☆2007.05/17(木)17:33 |
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〜第22話〜 風に吹かれて 「大変だわ!エンジュシティの民家から……火がっ!」 アイ達が夜、くろぼんぐりの木の下で寝ていた時だった。 火は凄く速いスピードで木々を燃やしていった。 呼吸が苦しくなり、目覚めたアイ達の周りは、炎が囲っていた。 「嘘…火事!?」 「あたい、怖いよ…!アイ、苦しい…っ」 アイは冷静に頭の中で脱出法を考えた。 「助けが来るのを待とうよぉ〜…アタイ達、どうなるの!?」 「バカね、その前に酸欠で死ぬわよ。今は黙ってて。アイも必死で考えているから」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ どのくらい時間がたったのだろう。 ――息ができないかも… カットはそう思った。 向こうから、声がする。 「ちょっと!そこの貴方達!大丈夫じゃないわね、今すぐ運んであげて!」 ローズが、炎の中をくぐり抜けてやってきた。 「ロー…ズ…さん…?」 かすかな記憶の中で、アイはつぶやいた。 アイが目を覚ますと知らない町――ではない、知ってる町だった。 「―――…キキョウシティ…!?どうして…っ」 |
プリ佳 | #23☆2007.06/07(木)17:29 |
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〜第23話〜 事件は暗闇、東には光。 「キキョウシティ?」 「そうなのよ、カット。アイ達――…昨日は確か」 火事に巻き込まれて… 息ができないほど苦しくなって… それから―――… 「…――ローズさん…っ」 「え?アイ、今なんか言った?聞き取れなくって」 「ううん。なんでもないよ。……どうしよっか?このまま、またアサギシティまで行く?」 そこでカットは少し黙りこんで、 「うん。また行こう!」 2匹は、高いマダツボミの塔を背にして、また歩き出した。 「どうしよう。道に迷ってしまった……」 「えぇ!?アイ、しっかりしてよ!!」 「だって、こんなところに別れ道なんて無かったと思うのに…」 「確か、ここには木が植えてあったよね。誰かが切ったんじゃない?」 ゴソ……… 「「?」」 ガサ…ガサゴソ…… 「音がする…カット?」 「え、アタイじゃないよ?」 ゴソゴソ…… 「はろー!えぶりあーん!!」 …………!!?? とび出してきたのはウソッキー。 出てきたと同時にカットはアイの後ろに隠れ、アイは戦闘体制をとった。 「ほわっつ?俺、何もしてないっしょ?」 「あなた、いい人なの?」 3人はしばらく話し合っていた。 「おーいえす!つまり、アサギシティに行きたいわけだね!?」 「ええ。そうよ。やっと話を分かってくれたみたいね」 「それなら良いあいでぃあがあるよ!俺の友達に運んでもらうんだよ!」 そう言うと、謎のウソッキーは空に向かって緑の手を振った。 すると―――… 「誰か俺を呼んだかYO!HEY,ウッキーじゃねぇか!何の用だい?」 やってきたのはノリノリのピジョット。 事に流されながら、アイとカットは今、アサギシティへ向かって空を飛んでいます…… |
プリ佳 | #24☆2007.07/06(金)18:01 |
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〜第24話〜 そばにはいつも君がいるから。 「アサギシティに着いたYO!」 「はいはい。ありがとうございました」 約30分もアイ達はピジョット――JONの話を聞き、もうウンザリしていた。 「じゃ、アディオス!アミーゴス!また会う日まDE!」 ギュイン! 気持ちの良い風を切る音と共にJONは飛び立って行った。 「…いい人なんだろうケドね」 「それより、アイ。ここからどうするワケ?」 「うーん…船に乗ろうか。アサギシティは有名な港町。ポケモンを乗せてくれる船だってあるわ。灯台へ行きましょ」 カットがうなずき、二人が歩く。 「ねぇ、あの人たちに船の出る時間を聞いてみようか」 見ると、桟橋の上で三人のポケモンが、いい争いをしていた。 「どうしてココまでついて来るわけ?!ホント――…どうでもいいじゃない!!」 濡れたオオタチの女の子が、大きな声で怒鳴った。 「いいじゃんか!アミアのことが好きなんだから!」 これはパウワウの男の子。 「………………………………」 無言なのはタッツーの男の子。 「もう…いいわよ…!!」 そう言って、アミアという女の子は去ってしまった。 「あっ待てって!アミアっ!」 「…本人が…ああ言ってるんだし…そっとしとこうよ、アクア」 「うっせ!アリア!アミアは事の重大さを分かってないんだ!これが成功すれば、俺たちはずっと一緒に…」 アイ達が、そばにいる事に気が付いたパウワウ…アクアは口を閉じた。 「旅行ですか…?お客さん…道に迷いましたか…?」 「なんでお前はマイペースなんだ!!」 ケンカしている2人を前に、アイとカットはただ苦笑いをするしかなかった。 |
プリ佳 | #25☆2007.07/08(日)13:03 |
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〜第25話〜 蒼い海の歌 「へぇ…つまり、シンオウ地方へ行きたいのですね…僕のお父さん、船を持ってますので…頼んできましょうか…?」 「あ、はい。よろしくお願いします」 会話に参加してるのはアイ。カットはやっぱり後ろで照れてる。 「なぁ。この茶色の長い耳。誰?」 パウワウのアクアが、カットの事を指差して言った。 「この子はカットっていうの。シャイな子だから、そっとしておいてね」 「へぇ。単なる小心者だよね。そーいうの。アリアみたいな奴だろ?」 ―――ドクン! カットの胸に突き刺さる。 「アクア…人の気持ちも考えて発言しような…」 タッツーのアリアが、カットの方を見ながら言った。 「ごめんね…コイツあほだから…今日はもう…帰ってくれるかな…また明日、来てくださいね…」 カットの目には涙が溜まっていた。 「ほら、カット。気にしないで。大丈夫よ。あなたはこれぐらいではへこたれないわ」 「…うん」 アイが、浜辺でカットの涙をぬぐう。 いつのまにか陽は落ち、すっかり暗くなっていた。 「今日はここで寝る?」 コクン、とカットの顎が動いた。 アイは、野宿用の毛布をカットに掛けて、しばらく海を見ていた。 ♪〜 頭の中で、メロディが流れる。 口が開く、息を吸う… 「……歌えた…」 その時、足音がして、凛とした声が響いた。 「誰?歌っているのは…」 オオタチの、アミアが海から上がってきた。 アイの見たことのないポケモンを抱えて… |
プリ佳 | #26☆2007.07/14(土)17:07 |
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〜第26話〜 愛されたいと願う気持ち、流されないで 濡れたオオタチ――アミアが、長いしっぽを翻してこっちに近づいてきた。 「昼のプリンと知らない子ね。はじめまして。私はアミアよ」 「はじめまして。自分はアイといいます。この子はミミロル。この地方には居ない種族なんで」 カットが、小さな鼻をヒクヒクさせながら、寝ている。 「…そのポケモンは…?」 アイが、アミアの抱えている大きな水色の生き物を指差した。 「ああ。シンオウ地方から来た、『タマンタ』というポケモンよ。私の親子を迎えに来たの」 「迎えに…?」 「そ。家庭の事情で引っ越すのよ。私の家。それで、この子が送られてきたってわけ」 ―――……しばらくの沈黙が続く。 「でも、この子…こっちに来てからここが気に入ったらしくて、中々出発できないの。だから、これを利用してずっとここに居ようかなー…なんて考えちゃって」 「…それで、パウワウ君が『これが成功すればずっと一緒に居られる』って言ってたのね…」 「アクア、ね。私のこと好きなのよ。私は…私は、アリアのことが好きなのに」 ――恋の三角関係かぁ… アイは、ふっと素唄のことを思い浮かべた。 ――レン達…元気かな… 「聞いてる!?」 「…っ。ゴメンなさい」 「私、アリアに好きになってほしいな。わがままなのは分かってる。だけど…愛してる人に、愛されたい…っ」 ―――っ! 「だから、応援してよね。私の恋。もう少しここに居るんでしょ?」 「はぁ…」 「じゃ、私帰るわね。このタマンタはちゃんと海で暮らしてるから安心して」 「…はい」 なぜか…もう少し此処、アサギシティに居る羽目になってしまったアイ達だった。 |
プリ佳 | #27★2007.07/25(水)17:00 |
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〜第27話〜 目に見えなくても…私には分かる ――生まれた時から、ずっと素唄と一緒だった。 ずっとずっと、一緒に生きて行くんだと思ってた。 素唄はミュージシャンを目指していた。 「歌は世界を変える…俺もその内の一人になりたい」 素唄が夢を語る時にいつも言っていた言葉。 アイは、隣で素唄の弾くギターのメロディを聴きながら、歌詞を考えた。 時々、夢も来た。アイの姉、レンも一緒。 夢が歌を歌った。素唄も歌を歌う。レンも、アイも。 先にレンの方がプリンに進化して、その後アイも進化した。 その時は、素唄と夢がお祝いの曲を送ってくれた。 とても嬉しかった。夢よりも、素唄が好きだった。 いつしか、素唄への「好き」はもっと別、恋の「好き」に変わっていった。 それに一番最初に気が付いたのはレンだった。 「いいじゃん。頑張ってみたら?レンは応援するよっ!」 でも、アイが告白する前に引き離されてしまった――… アミアには、そんな目には合わせたくない。 もう、こんな悲しい想いをする恋はアイ一人で充分だから。 だけど、アミアとアリアがくっ付いたら、アミアを好きなアクアはどうなるの…? ああ。世界はどうしてうまくいかない――…? 「カット――…もう少し、アサギシティに居てもいい?」 「…?あ、うん。いいけど」 「ありがとう」 ――― 「ここに、プリンと茶色い長い耳のふわふわが来ませんでした!?」 「そう焦らなくても…くうるだうんだぜ、ローズ姫。…確かに来たけどな」 「!?…ど、どこへ行きましたの!」 「JONが乗せてったぜ、アサギシティへ」 「…私も、連れて行ってください…!!」 |
プリ佳 | #28★2007.07/25(水)19:27 |
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〜第28話〜 限・界・突・破ぁ! 「…おはようございます…船、今出せますけど…?」 朝起きたアイ達は、あの桟橋の所へ行った。 すると、アリアが海底から現れて話しかけてきたのである。 「ううん。ごめんね。もう少し、アサギシティに居たいなと思ったの」 「…構いませんよ…こちらこそ、こんな朝早くにすみませんね…」 「相変わらず優しいのね。おはようっ!アリア」 カットの隣から、ひょっこりアミアが話に入ってきた。 〔昨日の話、ちゃんと聞いててくれてたのね。ありがとっ〕 こっそりアイに耳打ちするアミア。そしてニッコリした。 〔今日、告白してみようと思うんだ〕 夜――… 「で…話って何…?」 「えっと、ちょっとね。聞いてくれるだけでいいんだ」 クルッ。少し後ろを振り返ったアミア。 その目先には、アイとカットが居た。 〔ちょっとっ!なんでアタイたちが見てなきゃならないわけ?!〕 〔しーっ静かにしなさいよ、カット〕 「…私ね、アリアのことが好き」 「え…っ」 波の音だけが、静かに聞こえる。 〔なんか気まずいよ?アイ、もう帰ろう〕 〔どっちにしろここで寝ればいいじゃない。…まだ、起きててね〕 アリアが、溜息をついた。 「…本当は、アミアとアクアが上手くいくことを願っていたのにな…」 アミアは、涙を目に溜めてたけど、笑った。 「ありがとう、アリア」 |
プリ佳 | #29★2007.10/14(日)12:55 |
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〜第29話〜 良いことと悪いこと。見分けられることが偉大なの 「正直、アイ達が居てくれてて良かったよ。ありがとう」 「え?アイ達は見てただけなのに…?」 アリアが海に戻って行った後、アイ、カット、アミアは砂浜で話していた。 「応援してくれる人がいるってさ、思うだけで嬉しくなるの。…今度は、あなた達が頑張りなよ」 アミアの小さな目には、また涙が。 「…うん」 「じゃ、おやすみ」 「おやすみなさい」 「じゃあ…船を出しますよ…お父さんよろしくお願いします…」 「おう。行ってくるよ、アリア」 海の底から響いてくる振動。離れていく陸。 眩しい朝日をいっぱい受けながら、アイとカットは今、船に乗っている。 「…ねぇ、アイ。あのロコン…ローズ姫じゃない?」 カットが指をさしたその先には、ローズ姫が息を切らした様子で立っていた。 「ごめんなさいっ!!」 突然ローズ姫が叫んだ。 カットはびっくりした様子で、両耳がピンと立ってしまっている。 …ちなみにアイは平常。 「船、とめてくれますか?」 船が静かにとまる。 「ごめんなさい…っ!…コレ、あなたのでしょう?」 そう言ってローズ姫が取り出したもの―… アイが、素唄に、別れる直前に貰った、ピック。 「これが、最後のプレゼント」――素唄がくれた、最後の贈り物。 アイは、船上と陸が離れているのにも関わらずジャンプした。 「アイ!!」 ふわふわふわふわ…ストッ。 一同唖然。プリンは軽いという事を忘れていたのでしょうか。 「ありがとう。わざわざ届けに来てくれたの…嬉しいです」 「…違うんですの。私はそれを綺麗だから欲しいと思って、火事を起こしてまで貴女から奪ってしまったの…」 「!?…でも、あなたは返してくれた。そうでしょう?そんなに悔やまなくていいわ」 「いいえ。物を盗むのは良くない事ですわ。その事に私は気付いて…これからは、少しワガママを控えますわ」 そう言って、ローズ姫は去って行った… 「あの人、何しにきたんだろうね?アイ」 「アイにコレを返しに来てくれたのよ。感謝しないと♪」 ―――素唄からの贈り物…すっかり忘れてた。 アイは、ギュッとピックを握り締めて、蒼い水平線を眺めていた。 |
プリ佳 | #30☆2007.08/05(日)11:42 |
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〜第30話〜 ここから始まった、君との思い出 ザザ…ザザン… 静かに響く、水が流れる音。 アイ達は、シンオウで最も西の街―…ミオシティに着いた。 「ミオシティ…懐かしいな」 カットが呟く。そして笑った。 「こっちだよ、アイ。ジョウト地方はサッパリ分かんなかったけど、シンオウはアタイの方がよく知ってる」 「うん…道案内、よろしくねッ」 「ここが図書館、シンオウ一大きいの。こっちはミオジム、鋼使いが集まってる」 そう話ながら歩くカットはとても楽しそうだ。 「カット…この街が好きなの?」 「…うん。だって、アタイ此処で…」 カットが悲しそうな顔をした。きっと以前のことを考えたのだろう。 「ごめんね。じゃ、次のところ行かない?」 アイ達がゲートを抜けると…大きな河があった。 「忘れてた…ここには大きな河があったんだ」 「ええ?!じゃあ、どうやって向こう岸に行くの?」 ・ ・ ・ その時、草むらからポケモンが現れた。 「あれぇ?カットじゃん。何してんのぉ?」 「…っ!ミガ…?」 現れたのはオスのフローゼル。 「久しぶりだね、カット」 続いて、草陰から現れたのは――… 「由宇……」 そう呟いた後、カットは元来た道を走っていった。 「カット――…!?どこへ行くの…?!」 アイの叫びも虚しく、カットはミオシティへ行ってしまった。 |
プリ佳 | #31★2007.08/10(金)11:18 |
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〜第31話〜 大事にしてね、私の事 「あなた…カットとどんな関係なんですかっ?!」 知らない街中に走っていって、迷子になるのは分かりきっている。 そうなら、此処で待っていたほうが良さそうだ…そう思ったアイは、由宇とやら人物に話しかけた。 「ああ。カットね…オレはカットの元トレーナー。少しの間だけ一緒に居たんだけど、逃がしたよ」 ――!! この人がカットの元トレーナー!? 「あの子の姉妹の、もう1人の方がカットより強かったんだ。だから、そっちの子をバトルに使う事にした」 アイは、黙って聞いている。 フローゼルのミガは、ザボンという音と共に河に潜った。…かなり速いスピード。鍛えられている証拠だ。 「ところで、お前の名前は?種族はプリン…か。この辺じゃあまり見かけないな。カットの友達か?」 「…アイといいます。ジョウト出身です。カットとは…友達で、仲間です」 「へぇ。ジョウト…あんまり知らないな。カットの奴、そんなに此処から離れたかったのかな」 微笑を浮かべながら話す由宇に、アイはだんだん怒りを覚えてきた。 「まぁ、あの子の照れ屋なところは可愛かったけどな。それなりに強かったけど…やっぱあっちの方が」 「強いとか、弱いとか、そういうの決め付けないでくださいよ」 アイの口から出た言葉。それは普段のソプラノの声ではなく、暗く、重かった。 「こっちは強くないから逃がす。こっちは強いから逃がさない…そんなのポケモンを馬鹿にしてる」 「な…っ」 「バトルに使う使わないとか、そういうので可哀想な、孤独なポケモンを増やさないでください。カットは、タマゴから生まれたって言ってました。野生の生活を知らないんですよ。そんな…突然手放されてもあの子が困るの、分かりきってるじゃないですかっ」 由宇とは初対面なのに、怒りの言葉が出てくる。 「バトルに拘るだけが、全てじゃない。バトルに拘っても、ポケモンの事をちゃんと考えてあげてください」 「はっ?こっちだって…こっちだって、バトルで生活してるんだ。生活がかかっているんだよ」 睨み合った二人。 「ん?どうしたの、由宇とピンクボール」 河から上がってきたミガが、話かける。 …っていうか、ピンクボールって何よ?!と思ったアイだった。 |
プリ佳 | #32☆2007.08/16(木)11:40 |
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〜第32話〜 巡り会う二人は結ばれてるの。 睨みあった二人。そしてお互いに背を向けた後も、その場から動かなかった。 ミガはしっぽをくるくる回して遊びながら、木の実を食べている。 どのくらい時間がたっただろうか。 もうお昼は過ぎて、 ――カット…何処に居るのかな。もう、アイ達会えないのかな… アイの頭に、そんな不安がよぎった。 ガサ… 「アイ…由宇…ミガ…」 「カット!!」 草むらから、カットが出てきた。 「やっぱり、ここに居たんだ…」 「カット…良かった。また会えて、嬉しいよ」 アイが、寂しかったよとでも言うように、カットを抱きしめた。 「うん…アイ、ありがとう。ゴメンね。…由宇。少し話があるの」 普段なら、恥ずかしがって自ら話しかけることのないカットが、由宇に話しかけた。 「あ?なんの用だよ、カット。早めに終わらせろよ」 目を閉じて、深呼吸をするカット。 そして、円らな目を由宇に向けて、はっきりと言った。 「アタイとバトルして」 由宇、アイ、ミガが驚いた顔をする。そして、 「いいよ」 少し笑って、由宇が答えた。 「ただし、ダブルバトル。戦うのはカット、お前とそこのプリンな。あと、何故勝負をするんだ?」 「…か、勝ったらミガに乗せてもらう…その河渡るために。由宇が普通に乗せてくれないのは分かってるから」 後ろを振り向いて、アイに言った。 「ごめんね」 「構わないよ。…でも、アイはバトルするの、慣れてないよ」 「いいけど、さっさと始めようぜ?陽が暮れる前に、決着付けよう。一つ言っておくが、俺が勝ったら金か飯くれよ」 太陽がどんどん傾いてくる…由宇のくっきりした言葉が耳に届いた。 「行くぞッミガ、ラッシュ!!」 ボールから新たに出てきたのはミミロップ。 アイとカットは、戦闘隊形をとった。 |
プリ佳 | #33★2007.08/18(土)19:08 |
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〜第33話〜 眠くなったらここにおいで 「ミガ、アクアジェット!ラッシュはみがわり!」 指令されたミガは素早く水をまとい、カットにぶつかった。 メスのミミロップのラッシュは、みがわりを繰り出す。 カットは戦いに慣れてるせいか、すぐに立ち上がる。 そして、ラッシュのみがわりにとびげりするカット。みがわりは消えた。 あまりのスピードに呆然とするアイに、カットが活を入れた。 「アイ!ぼぅっとしてないで、何か、技出して。このまま負けるの嫌でしょ?!」 「あ、うん…」 技…そういえば、アイはあまりバトルをしていない。だから、何の技が使えるか… ――とりあえず歌ってみよう…また歌えるかな、少し不安だけど。 ラッシュがまもる。ミガがなみのりした。 「アイ!!」 カットが、アイを庇って近くの草むらに逃げ込む。水はギリギリ当たらなかった。 「かわされたか…次、ラッシュはみがわり。ミガはかみくだくでカットを狙え」 ミガのするどいキバがカットに刺さる。が、あまりダメージは無いようだ。 そして、カットは高くとびはねた。 ――…っ!歌えない…どうして?アイ、あの海で歌えたのに…! 少し焦るアイ。そのアイを、ミガのかみくだく、ラッシュのきあいパンチが襲う。 「アイ、危ない!何か、技…!「まもる」とか使えないの!?」 「あ…わ、わからない…けど」 後ずさりしながら、アイは息を大きく吸った。 あのアサギシティの綺麗な海…ピック…素唄。 ♪〜♪〜♪♪〜 そのまま、ミガは眠ってしまったが、ラッシュは眠らなかった。 ラッシュの大きな拳がアイに当たる。 体の軽いアイは、上へ高く飛んで…そのまま、草むらに落ちた。 |
プリ佳 | #34★2007.08/27(月)11:58 |
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〜第34話〜 優しい眼差しの見つめる先 空中に高く跳び上がっていたカットは、ミガに向かって急降下、とびはねる成功。 「アイ!」 綺麗に着地した後、ラッシュのきあいパンチをひらりとかわして アイの様子を見に走った。 「…カット、たぶんそいつは瀕死状態だと思うぞ?効果抜群の技だったし…」 由宇の補足。 分かってることだけど、アイがやられたなんて信じたくなかった――… カットは、目の前で倒れているアイを見て…耳が垂れ下がる。 「…アイが戦えなくても、まだ…アタイは戦えるよ」 知らず流れていた涙をふわふわの毛で拭いて、カットは立ち上がった。 「よし、試合再開ってとこだな。ミガが起きてくれたら…ラッシュ、カットにきあいパンチ!」 「ラジャっ」 初めてラッシュが喋った…ううん、今はそんなこと関係ない。 カットはまず、短い足でとびげり。みがわりを消した。 すると、ラッシュのきあいパンチが襲い掛かる。それを読んだかのようにカットはまもる。 「中々いいんじゃねーの?腕、なまってなかったんだな」 由宇が褒めた。いつの間にか、由宇もカットもラッシュも、寝ているミガもきっとこのバトルを楽しんでいた。 でも、そんな楽しい時間も束の間―…ミガが目覚めた。 さすがに2体の攻撃に耐えることもできず、カットはたきのぼりで倒れた。 「俺の勝ち――…だな。ミガ、ラッシュ、お疲れさま」 ミガとラッシュが、疲れを隠す為か少し笑顔を見せる。その後ボールに戻った。 「さて…カットと、アイ、だっけ?…」 戦いに疲れた顔をしていても、幸せそうな顔をしているアイとカット。 「―――…っ」 由宇は、ボール2個とアイとカットを抱き上げ、ミオシティのポケモンセンターに向かって静かに歩いた。 |
プリ佳 | #35☆2007.08/27(月)11:58 |
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〜第35話〜 サイダーの泡のように儚いけど、君は近い ポケモンセンターではラッキーが今日も忙しそうに働いている。 「治療は終わりましたよ♪今はすやすやと眠ってますので、起きましたらもう帰って結構です」 ミオシティのジョーイさんが爽やかな笑顔で由宇に話しかける。 「ありがとうございます」 少し疲れた顔で、ベッドに横たわる4匹のポケモンを見た。 「…ありがとう」 アイは起きた。 「ん――…あれ、ここ、どこ…?」 「起きたか」 由宇が、ヘッドフォンをつけたままアイに寄って来た。 「ほら、まだ皆寝てるからこれ聴いとけ」 そう言って、優しくアイの耳にヘッドフォンを当てる。 「俺はちょっと出かけてくるから、ミガ達起きたら相手してやれ。アイツはまだ少し子供だから」 由宇はドアを静かに開けて、出て行った。 「…なんでアイなの」 渋々了解するアイ。 でも、このヘッドフォンから流れてくる曲には聴き覚えがある自分に気付いた。 ♪〜♪♪〜♪〜 ギターのリズムにのって流れてくる、綺麗で、少し独特の声…女の人の声がする。 「夢の声…」 ――確か、素唄はミュージシャンになりたいとは言ってたけど、アルバムとかは作らないって言ってた。 ということは、コレは実際に録ったってこと。 じゃあ、由宇って人、夢と知り合いなの? もしかして…もしかして、 素唄の友達なの…? |
プリ佳 | #36☆2007.09/07(金)07:00 |
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〜第36話〜 夢限大の夢 またアイの夢を見た――… 本気で探してるの? 「ぁああぁ〜っ」 ミガが、大きなあくびをして、起きた。 「起きたのね、おはよう」 「うん。おはよぉ…」 その時、ピョンっと何か飛び跳ねる音がした。 アイが振り返ると、ラッシュが飛び跳ねている。 「みんなおはよう!さ、今日もやるよ、ミガ!」 「おうよっ!」 一体何を始める気…?とアイが思う。 「…あー。その前に、あなたの名前を聞かないとね。シンオウ地方ではあまり見かけないけど…?」 「アイっていいます。種族はプリンです」 「そう。アタシはラッシュよ。ミミロップ。よろしくね」 「俺ミガ。で、フローゼル」 なんか…昨日のバトルとは雰囲気が違う。特にラッシュの方。 「行くよ!覚悟しな、ミガっ!」 そう言いだすと、二人はバトルを始めた。 「え…?えっ!ちょっと待ちなさいよ、ここ、病院――!」 アイの声は、既に二人の耳には入らない。 ここでアイは思い出した。 ――ミガ達起きたら相手してやれって…このことだったの!? その後、アイは止めに入ったが、ベッドに突っ込まれたという。。。 由宇が帰ってきたら、病室は枕や布団の羽が華麗に舞っていた。 |
プリ佳 | #37☆2007.09/14(金)18:36 |
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〜第37話〜 みんながいればこわくない! 「どうしてお前らは、場所も分からずにバトルを始めるんだ!?」 由宇の怒声が鳴り響く。 「患者さま!ここは病院ですよっ!」 ジョーイさんもかなり慌てているようだ。 ――…常識的に考えると、病院ではバトルしないからね… 少し腫れた頭をさすりながら、ベッドの隅に座っているアイ。 ちなみに、この騒動によりカットも目覚めた。 怒られている二人は、何も言い返せない。 「もう朝起きてからのバトルは禁止!これからはボールの中で寝させるぞ!」 「あの、お客様も少し声のトーンを…」 「あ、すみません」 ジョーイさんに頭を下げる由宇。 「じゃ、迷惑かけてしまったので帰りますね」 「はい、またご利用ください」 「さ、帰るぞ」 由宇は静かに頷いたラッシュをミガをボールにいれ、アイとカットを抱き上げた。 「ごめんなさい、アイが止め切れなくて…」 ポケモンセンターを出て、218番道路へ向かう由宇にアイが話しかけた。 「別に構わないさ。…カットの奴、寝てやがる…」 笑うアイと由宇。 アイは、最初にケンカ腰で話しかけたことを悔いるぐらい、由宇のことを良い人だと思った。 そして、素唄の事を聞いてみようと思った。 でも…もし、勘違いだったら。そう思うと聞けない。 「ほら、この河渡りたいんだろう?」 ミガをボールから出し、アイとカットを抱えたまま乗り込む由宇。 「ミガ、できるだけ速くこの河を渡ってくれ」 「あいよ」 凄いスピード。その風の抵抗に受けきれなかったアイは、由宇の腕から離れて北へ飛ばされてしまった。 |
プリ佳 | #38☆2007.10/08(月)20:08 |
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〜第38話〜 炎と氷の山 ――私、このまま下に墜落して死んじゃうのかな… 太陽が沈む方向に、大きな山が見えた。 高く舞い上がってたアイの体は、風の波から落ちて雪の中に入っていった。 「のんた、あのピンクのボールなんだろうね?」 「さあ〜……!?ポケモンだよ!」 のんたと呼ばれた赤い猿のようなポケモンは、一気に山の斜面を駆け上ってアイをキャッチした。 「だいじょうぶ?きみ、高い所から落ちてきたんだよ」 「…?っは!こ、ここは?!」 「まぁ、そう焦らないで。ここは地面が斜めだから危ないよ。下にぼくの主人が居るから、そこに行こう」 と言って、そのままアイを抱えたまま斜面を滑り降りた。 「ねぇ、主人さま、このポケモンは何ていう種類?」 「ああ…シンオウ地方じゃあまり見かけないポケモンだね」 アイは、それを聞いて少しほっとした。 ――ここは、まだシンオウ地方なんだ… 「あ、ありがとうございます。私はアイという名前で、種族はプリンです」 「ふぅん、きみって可愛いんだね。ぼくはのんた。モウカザルって種類で、炎タイプなんだよ」 「のんた、早く登ろう」 のんたが主人…格好はやまおとこの人を振り向いた。 「うん、わかった。…きみはどうする?」 「あ、アイは…」 元来た道、なんて、ほとんど空を見てたからわからない。 でも、この人たちは太陽に向かって進む…飛んできた方向と逆。 「アイはここに残って、頑張って友達を探します」 「友達?誰のこと?」 「のーんた。早く行かないと置いてくぞ?その子は安全な場所に置いておけば大丈夫だろう」 「薄情な主人とぼくでごめんね、もう行くよ――…また、会えたらいっぱい話をしよっ!」 アイは、笑ってのんたに手を振った。 温かい空気が離れて、冷たい風がアイの横を通った。 「寒ッ」 ――どうしよう。これから、本当にどうしよう…カット、素唄に会えるの…? |
プリ佳 | #39☆2007.10/12(金)18:05 |
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〜第39話〜 例え一歩先が谷底でも 「アイ…北だけど…テンガンざん方面に飛んで行ったよな?」 「うん…」 不安そうにコトブキシティ上空を見上げる由宇とカットとミガ。 「テンガンざんに…行ってみるか?」 吹雪の真っ只中。アイは一歩先すら見えない雪道を歩いていた。 「寒い…」 すでに、意識が薄れてきている。 ――素唄… パチパチパチ…と暖炉の音がする。 人が喋る声。ポケモンの鳴き声。足音。 ――ここは…? 「起きました?ここはポケモンセンターです。わたくしはメリィ。ユキメノコという種族ですのよ」 アイの思った疑問に次々と答えていく。 「あなた…エスパータイプ?」 アイは、自分の紹介を忘れて聞いてみた。 「いいえ、わたくしは占いをする者です。こおり・ゴーストタイプです」 「そうですか…アイといいます。プリンです」 「あなた、道に倒れてたのよ。もう少しで凍死するところよ」 そういえば…ミズキさんも、アイが道で倒れてたところを拾ってくれたっけ。 あの時、とても優しく接してくれたミズキさん、マサキさん、レア… 理由は知らないけど、自然に涙がこぼれた。 「あの…無理にとは言わないです。アイの、探してる人が今、何処に居るか占ってください…!」 |
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