スー | #1★2007.02/20(火)00:39 |
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〜プロローグ〜 目をつぶって三歩 そして三回深呼吸 目を開けたならそれは素敵な夢の世界 素敵な素敵な幻の世界 争いはなくって いじめもなくって 皆皆仲良し 種族の壁を越えお互いを尊重しあう そんな世界があったらいいのに― 「こんにちは」 目を開けたら君が居た。 |
スー | #2☆2007.02/12(月)21:34 |
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第一話 空想上の生き物 「こんにちは」 目を開けたら君が居た。 「あ、こんにちは…」 僕も呟く。 「あんた誰さ。何か倒れてるからビックリしたんだけど」 君は言う。 緑色。お腹に赤いラインがあって、腕に葉っぱ。 目は黄色で目の下にも赤いライン。つり目と言うよりたれ目に近いかも。 見たことあるはず。確か…なんだっけ。 僕が答えずに考えてるから君は溜息をついた。 そして仕方なく自己紹介。 「俺はジュカイン。名前はバジル。 バジルって呼べよ。他ので呼んだら斬るからな」 ああそうだ。ジュカインだ。 ポケットモンスターってやつのキャラクター。 僕の好きなポケモンだ。―ん? ポケモンって想像上のじゃないっけ? 「早く答えろよ。あんた誰だって」 疑問に思う僕を君―バジルって呼ばなきゃ駄目なんだっけ―は急かす。 僕は仕方なく答えた。 「レイン」 バジルは嫌そうな顔をする。 「雨ってことか? 暗い名前だな。俺、お日さんの方が好きなんだけど」 「だって、仕方ないじゃんか…」 僕は思わずそう呟いた。 「雨だってなくちゃ駄目なんだよ。君―バジルも草タイプでしょ? 雨がないと植物は成長できないんだから…」 バジルはふんと鼻を鳴らすと呟いた。 「残念ですけど、俺はトカゲでしてね! 植物じゃないんです。 雨降ってたらソーラービームもまともにうてやしないでしょ!」 変な敬語が馬鹿にしてるみたいだ。 僕は少し腹が立ったが、バジルは怒りっぽそう。 何か言ったら斬られちゃうから黙っといた。 でも気になる事が無いわけじゃない。 それに僕も人間だからそれを口にしてしまう。 「ポケモンって、空想上のじゃないの?」 「ああ?」 バジルが瞬間的に呟く。 そんなに早く呟かれたら怖いよ…。 バジルは怒鳴る様に言った。 「俺等にしちゃあね、あんた等人間の方が空想上のもんだよ。 自分の考えで押し通してんじゃねえよ全く」 人間の方が空想上? つまり、ここはポケモンの世界ってこと? 正直何でそうなるのか分からないけど、僕はそんな結論を出した。 「じゃ、僕は…ポケモンの世界に来たんだね?」 僕が言うとバジルは頷きながら―僕の頬をつねった。 「痛っ!」 僕は思わず叫ぶ。 何するんだいきなり。何でつねるのさ。 バジルは馬鹿にした様に微笑みながら言った。 「ほーら痛かったろ。夢じゃねえんだわ」 ―! そうだ、痛かったんだ。これは夢じゃない。 僕は本当にポケモンの世界に来てしまったんだ! 「まあそういうこった。現実を受け止めな」 バジルはそう言うとドサリと横になった。 「じゃ、俺はちょっくら眠るわあ。誰か来たら起こせや」 僕はどうしたらいいのかと思ったけど、バジルが寝たいんだから寝かせればいいんだ。 それより僕は来てしまったんだポケモンの世界に。 ポケモンは人間ほど愚かじゃないからきっと皆平等。 素敵な世界なんだろうな。 ああ嬉しい! もう人間の世界になんて返ってやるもんか! |
スー | #3★2007.03/04(日)21:58 |
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第二話 ケシとバジル 僕が喜んでいると、やがて何か来た。 遠くから見ると人っぽい。 人っぽいけど毛がフサフサで長い。 それに真っ赤。あれは― 「おーい、バジルー」 そしてそいつは近づいてきた。 正体が分かった。 そいつは…バシャーモだ。 「おいバジ…」 バシャーモはバジルを呼びかける。 でも僕は彼と目が合った。 ひえー、実物は大きいな…。 百九十超えてる奴に見下ろされてみなよ。恐ろしいのなんの。 それがね「モンスター!」て奴ならいいけどね。 すっごい人に近いもん。さらに怖いんだ。 「えーあー、人間?」 バシャーモは呟いた。 僕が頷くとバジルが起き上がって言う。 「よう。これ俺の息子」 「え!」 僕は思わず叫んだ。 息子なんてとんでもない。 バジルを親に持ったら大変だ! 毎日競馬に行かれそうだもの…! 僕は恐ろしく驚く。 でもバシャーモは大声で笑う。 「バジルに嫁なんて出来るかよ」 バジルはバシャーモに言われて少しムッとした。 でもすぐに笑い出す。 「ハッ、まず人間かよってなるよな」 この二人、相当仲が良いみたい。 本当に楽しそうに笑ってるもん。 ちょっと羨ましいぐらいだ。 人間てそう言うのあんまりつくれないからね…。 「僕はケシってんだけどね。君は?」 バシャーモは僕に聞いた。 バジルはまた寝ようとしている。 僕はそんな彼を見ながら呟いた。 「僕はレイン。よろしくね、えっと…ケシ」 ケシはニッコリ頷いた。 「で、何の用だ。ケシ」 バジルが眠そうに呟く。 ケシは「あ、そうだ」と思い出した様に呟くと話し始めた。 「王が変わったらね、君みたいなのが殺されるんじゃないかなって。うん、だから考えを…」 「変えろってか?」 バジルが上から呟く。 すごい迷惑だと思うんだけど…。 でもケシは怒らずに頷いた。 なのにバジルは怒ったんだ。 「俺は考えは変えねえよ! 現に、こうして考え押し付けてる時点で俺等の考えは正しいんだ。 平和な世界言うなら考え自由に持たせろや!」 バジルは怒鳴る。 でもケシはやっぱり怒らない。 凄いよね、ケシ。こんな我慢できるなんて。 僕は…怒鳴り返すことは出来ないけどすぐにいじけるだろうな。 既にもういじけてるよ。バジル怖いし。 「でもねバジル」 ケシは優しく言った。 「まずは考えからだ。願えばいつか叶うよ」 「そうかね!」 バジルはすぐに叫んだ。 気が短いな、本当に。 ケシとの精神年齢の差は凄いんだろうな…。 大人なケシはバジルがいくら叫んでも怒らなかった。 「帰れ裏切り者! 二度と会ってやるもんか!」 バジルは怒鳴りながら歩いて行った。 僕、ケシと居ようかな。ケシいい人だし。 そう思った時だった。 「レイン行くぞ! 俺といた方が楽しいだろ!」 バジルが早く来いと叫ぶ。 僕は仕方なくそっちへ行った。 ケシは僕が一緒に居たいだけ。 でもバジルは僕を呼ぶ。 この場合バジルを優先するべきかな。 そう思ったんだ。 僕は度々振り返ったけどやっぱりケシは怒っていなかった。 ただ困ったように笑っていた。 |
スー | #4☆2007.02/20(火)00:38 |
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第三話 汚す者 「<汚す者>…?」 僕は呟いた。 彼は頷く。そして話した。 「『平和な世界はありえない』そう考える奴等の事だ。 俺もその中に含まれるけどな」 平和な世界はありえない…? 僕の中で無駄に木霊する。 僕は夢見た。 平和な世界を。 そしてそれはポケモンの世界だと。 でもそのポケモンが否定する。 平和な世界を。 傷ついた。とても、とても傷ついた。 「何で平和な世界がありえないの…?」 僕は呟く。 これが呟くんじゃなくて叫ぶとか、普通に喋るだけでも駄目だ。 何か悲しいんだもの。きっと泣いてしまうよ。 バジルは相変わらず馬鹿にした様に笑った。 そして「当たり前だろ」と話し始めた。 「信じる奴等は信じない奴等を消そうとする。 するとどうだ。『殺す』という行為が起こるだろう。 殺すという行為があって平和と言えんのか? 言えねえだろが。そういう事だ。奴等はとんでもない自己中なんだ」 「なんで自己中な考えが正しい考えなの?」 僕はまた聞いた。 驚いた。いくらでも疑問が出てくる。 バジルは低い声で答える。 「そりゃあ綺麗事がいい方に決まってるさ」 綺麗事―僕はそれから逃げたかった。 なのにまだ逃げれないんだ。 いつまでも追いかけてくるんだ。 本当、嫌になる。 でも彼の言ってる事本当なのかな。 そんな疑問が生まれた。 もしかすると嘘なんじゃないかな。 言い訳とか戯言とか…。 どうも僕はケシを気に入ったみたい。 凄く感じの良い彼を。 彼の所へ逃げてしまおうか。 僕はそう思った。でもそれは無理だろうな。 ジュカインって素早いし、きっと斬られる。 彼がもし来たらその時―来るか分からないけど―助けて貰おう。 僕はそう決めた。 |
スー | #5☆2007.02/24(土)16:54 |
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第四話 自分勝手 「人間の世界に戻りたいか」 暑い良く晴れた昼。 バジルは呟くように僕に聞いた。 僕は突然の事で少し戸惑った。 でも即答。答えは決まってる。 「戻りたくない」 そうさ戻ってやるもんか、あんな世界に。 平和な世界が無いと言われても此処に居座ってやる。 僕はそう思ったんだ。 「それをこれからも言い続けられるか」 バジルはまた聞いた。 僕もまた即答。 「言い続けられるよ。人間の世界は最低だから」 バジルはそれを聞いて少し笑った。 でも馬鹿にした様な笑い。 何、何がおかしいのさ。僕は腹が立つ。 バジルはやっぱり笑いながら言った。 「じゃあ俺の手伝いしてもらおうか!」 「手伝い!」 僕は思わず叫ぶ。 手伝いなんてとんでもない。 何でそんな面倒な事…! 学校でもうんざりするほどしてたのに! でも僕の気持ちをバジルが読み取れたりするわけない。 バジルは遠慮無しに喋り続ける。 「とりあえず買い物。これは絶対な。俺町嫌いだから」 買い物! 僕の嫌いな事だ…。 買い物は面倒すぎる。 品物は規則正しく並んでる。 その中から一つ選んでカゴに入れるの繰り返し。 値段に神経質になっちゃうし。 全く疲れる事なんだ。 だから僕は買い物が嫌いなのに…。 なのにバジルは絶対に買い物させようとしてる。 そうは思うものの反論できない僕に僕は呆れた。 「ま、今日は行かなくてもいいけど」 バジルはそう吐き捨てると寝転んだ。 とりあえず今日はいいんだ。 そんな風に僕は安心した。 今度は僕が聞いた。 「町が嫌いだから森にいるの?」 バジルは寝転んだまま頷いた。 「でも…町が嫌いでも暮らせるでしょ?」 よせばいいのに僕はまた聞いた。 言った直後「しまった」と僕は思う。 案の定、彼は機嫌悪く話した。 「奴等の顔なんて見たくねえよ。時間気にして歩き回って…見てるだけで疲れる。 それに此処に居たら働かなくていいし。 まず森の方が俺には合ってんの。町の汚い空気なんて吸ってられるか」 彼は散々町を貶す。 嫌だ、自分勝手だ。 誰でもそうな様に僕は自分勝手な人が嫌いだ。 僕がそんな事を考えていると彼はニヤリと微笑んだ。 そして呟く。 「とりあえず木の実とってこい」 僕は彼に命令を下された。 |
スー | #6☆2007.03/13(火)18:07 |
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第五話 紅玉翡翠 やっぱり暑い。 もうすぐ夜なのに。 僕は用事を思い出すと前に目を向けた。 とりあえず歩かなきゃ。 そして早く帰ろう。暗くなって来た。 僕はバジルに頼まれた。 木の実を集めて来いと。 その間彼は何してるのかと言えば寝てるって。 もう馬鹿じゃないかな。こんな事本人には言えないけど。 「えー、後はー」 僕は上を向いて思い出した。 オボンとオレンとナナシは集めた。 後は―モモンだ。 僕は何を集めるのかを思い出し、再び歩き始めた。 しばらく歩く。 すると桃色の実が見えた。モモンだ。 僕は手を伸ばしモモンを取ろうとする。 しかしその時。 体が動かなくなった。 手を伸ばしてモモンを取りたい。 なのに体が動かない。 何でだろう。 僕が考えようとした時声が聞こえた。 「そんなに木の実を持っているならもういらんだろう」 男にしては少し高い声。 でも喋り方は男。 どっちだろう…。 そう考えてたら後ろから翡翠色の手が伸びて来た。 「うわあ!」 僕は思わず叫ぶ。 その瞬間体が動いてしりもちをついてしまった。 「あ、すまんな」 上から声。 僕が上を見上げるとそこにはマントをかぶったのが立っていた。 顔はよく見えない。 でも手は翡翠色。そして目はルビーみたいに真っ赤だ。 誰だろう。よく分からない。 マント取ってくれなきゃ。 「人間か…?」 そいつは呟いた。僕は黙って頷く。 するとそいつは手を僕に向けた。 「消えろ余所者」 そしてそいつの手に黒い玉が出来る。 黒い玉は渦巻いていてゴウゴウ音がした。 あ、これ多分シャドーボールだ…。 僕がそう思ったと同時シャドーボールは発射された。 ―と思った。 そいつは発射させない。 どうしたのかとそいつを見てみればただ前を見て驚いている。 僕はそいつが見ている方を見てみた。 でも誰も居ない。 「ねえ誰が…」 僕がそう呟きながら元の方を見た時、既にそいつは消えていた。 |
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