ぴくの〜ほかんこ

物語

【ぴくし〜のーと】 【ほかんこいちらん】 【みんなの感想】

完結[971] 誰が為に鈴は鳴る

だめいぬ #1☆2007.02/25(日)00:15
あらすじ…

とあるホウエン地方の小さな森に小さなポチエナの住処がありました…
そこはとても小さな森でしたが温暖で心地よい風が常時吹いていて近くには古い洋館があり様々なポケモンが住んでました…

そこの森に住んでいる小さなポチエナの家族…
何気ない平和な毎日、ただ暇な時間だけが流れていく…
そんな平凡な日々からこの物語は始まります…
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だめいぬ #2☆2007.02/25(日)01:29
沢山のポチエナ(20〜30くらい)の中に『ポチ』というポチエナがいました
ポチはみんなより体力も無く、攻撃力も皆無でした…
それゆえ他のポチエナから馬鹿にされていました
『おまえってほんと弱いよなぁ〜』
『アンタ、本当はキャタピーに生まれたらよかったんじゃない?』

しかし、彼には誰よりも早い逃げ足がありました
その為かけっこではいつも一位でした
そして彼には良き理解者もいました
同じポチエナのシエラと呼ばれる子です
ポチが虐められている時に彼を助けるのも彼女でした

ある日の午後

寝ているポチの顔をつんつんする子がいました
シエラ「ほら起きてよ!もうすぐ長老の話が始まっちゃうよ〜!」
ポチ「ぅぁ…もうそんな時間なの…?」
眠そうな瞳で答えるポチ…
シエラ「ほらぁ!早くってばぁ!」
ポチの背中に横からのしかかるシエラ
ポチ「うげぇ、苦しい…わかったから!降りて降りて!」
冷や汗をかき一瞬あっちの世界を垣間見たポチ
すくっと立ち上がり二匹は長老のいる場所へと歩き出しました…
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だめいぬ #3☆2007.02/27(火)11:43
長老の家の前は彼らにとって広場であり既に何匹かのポチエナがいました
話というのは長老の話す物語であって子供たちに人気(らしい)でした
時には壮大なファンタジー、恋愛ストーリー、心温まるストーリー…など
どっから仕入れてんだこのジジイとか思うこともしばしば
何故毎週木曜なのかがそもそも意味がわからない…
ポチ自身もちょくちょく来るがあまり興味は無い様子

みんなが集まった頃…木の穴から古ぼけたグラエナが出てきた
一応これでも長老…通称、グラじい
グラじい「ほほぅ、今日も仰山いっぱいいるのぅ…」
にこやかに笑いながら喋るグラじい
ざわめいていた空間が一瞬で静かになる、
みんなの瞳はキラキラと一点に集中している

グラじい「では、今日の物語は『伝説のポケモン』と一匹のハクリューの物語じゃ」
…ゴホン…と咳を一発かましたグラじい…
『あるところにホウオウという伝説のポケモンがいました…
ホウオウの火はどんな傷や万病も治癒すると言われました
 そして山で休んでいるホウオウに一匹のハクリューが尋ねてきました…
=私の知り合いが高熱で倒れてしまいました、貴方様の炎で治してくれ=と
しかし下界へ行けばハンターの餌食になるのは目に見えていました…
 迷った挙句、ホウオウは自らの治癒の力をひとつの鈴に分け与えました
そしてホウオウは言いました
=この鈴を貴方の知人に向けて鳴らしなさい、そうすれば一度だけ貴方の知人を癒すでしょう=
そう言い残しホウオウはまた何処かへ飛び去ってしまいました…
 その後、ハクリューの友達は元気になったとさ…めでたしめでたし…』

グラじいが自慢げに物語を言い終わる…

あちこちでしょーもない雑談が聞こえてくる
シエラ「面白かったねー、ね、ポチ!」
満面の笑みでふってくるシエラ
ポチ「え…あ、うん、そだね」
ポチはあまり聞いてなかったがとりあえず流す
気付けばもう辺りは少し薄暗くなっていた…
シエラ「…じゃ、帰ろっか」
縦に首を振るポチ、しかしそこへ三匹のポチエナが近づいてきた…
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だめいぬ #4☆2007.02/28(水)13:42

ポチ「…あいつらまた来たよ…」
あいつらとはこの辺りでは有名な悪ガキ三匹組である
悪ガキ三匹組とはポチエナの{キバ、ゲン}ゴースの{ボゥ}の三人である
常にスリルを求める少し…いやかなり危ない三匹である
過去にやった悪戯で一番ヤヴァかったのは長老の入り口に小便を撒いた事
そのおかげで長老しばらく引きこもって大騒動…
…要するに馬鹿丸出し三匹組である

キバ「おや?ポチ『様』がお通りだ!」
嫌味っぽくキバが言う
シエラ「馬鹿は無視よ、無視」
ぼそっとシエラがポチに語りかける
ゲン「お前懲りねぇなぁ〜」
ボゥ「弱いのによくいきられるよなぁ」
ゲン「弱いからきっと特別扱いされてるんだろうぜ?」
うわぁ〜と三匹揃ってシメる
ポチ「……」
ポチも我慢して対抗する、少し歩く速度を速める…
ゲン「うわ、無視かよ…ポチのくせに生意気だぞ!」

ポチの足が止まる
シエラ「ポチ、ちょっと?」
キバ「おや、怖気づいて動けないのか?情けないナァ〜」
ケラケラ笑う三匹
ポチのいかりのボルテージが上がっていく
瞬間、キバに向かって突進するポチ!
結果は…秒殺でキバがWIN、ポチはキバの前足で踏まれてぐったり…
キバ「やっぱよえぇわ、コイツ」
ボゥ「やっぱコイツ絶対キャタピーだぜ!?」

小さく唸るポチ、それが最後の抵抗だった
キバ「まぁ、もし幻の鈴を見つけてきたらお前をポチエナと認めてやってもいいけどなぁ」
無論、無理な話である…それはキバも承知の上だった
それにポチが持ってくるなら尚更無理な話である
ポチ「そんなもんすぐに持って来れるさ!」
…一同あ然

キバ「い、いってくれるじゃねぇか…じゃあいますぐ持って来いよ!」
ポチ「…くッ…」
足から抜け出し疾風の如く走り去るポチ
シエラ「あ、ポチ!…」
シエラが後を追いかける
ゲン「いっちまった」
キバ「どうせもって来れるわけねぇよ…チッ、気分わりぃ…俺帰るわ」
ボゥ「…だな」
そう言い残し3匹はその場を後にした
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だめいぬ #5☆2007.03/02(金)11:26

ズサァー
ポチが滑り込んで入ってくる
母「あら早かったじゃない、まだ夕食できてないけど?」
ポチ「お母さん!俺鈴取りに行って来る!」
駆け出そうとするポチを掴む母

母「ちょっとまった、何処へ行く気なの!?」
驚く母、
ポチ「そんなの何処だっていいじゃんか!」
母「よくなぁーい!第一行き先くらい教えてよ!」
ポチ「そんなの知らないよ!ジョウトかもしんないしカントーかもしんないし!」
ポチの母、絶句、しばらくの沈黙
母「まさかあんた…馬鹿じゃないの!?どれだけ遠いかわかってるの!?」
当然の如く激怒する母
ポチ「わかってる!俺だってもう旅くらい出来るさ!父さんだってきっと…」
母「やめなさいっ!」

右ストレート炸裂、ポチの視界が一瞬グラリと揺れた、
次にポチが見たのは母の涙であった…

ポチ「……」
母「外にはポケモンだけじゃないのよ!?人間に捕まったらどうするの!」
黙りこむポチ
母「私は貴方が心配で言っていr」
ポチ「それが余計なんだよッ!いつもいつもそうやって、父さんが亡くなってから俺の自由まで奪って…」
母「…それは……」
ポチ「…母さんなんて…大嫌いだ…」

家を飛び出すポチ…
すれ違うシエラ
シエラ「うわぁ!ってポチどこにいk…いっちゃった…」
母「ポチっ…」
後からポチの母親が出てくる
シエラ「ど、どうしたんですか?」
母「…ううん、ちょっとね…シエラちゃん…頼んでいいかしら…」
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だめいぬ #6☆2007.03/04(日)23:11

ポチ「…ウゥ…」
水溜りに反射する月を見て小さく唸るポチ
ポチ「………」
シエラ「ポチ、ここにいたんだ…」
シエラが隣に座り星を眺める…
ポチ「なんだよ…」
シエラ「はぁ…伝言、戻って来いってさ…」
横目で見るシエラ
ポチ「……」
シエラ「きっとポチを失いたくないんだよ、だからついやりすぎちゃう」
ポチ「でも、なんで旅どころか外すら行かしてくれないのさ…」
すねながらポチが言った

シエラ「それくらい大切ってことだよ…」
優しく返答するシエラ
ポチ「どれくらいだと思う…?」
ポチがシエラを見る
シエラ「うーん、自分の命より…かな?」
ポチがなんだそりゃと言わんばかりに顔をしかめる
シエラ「ごめん、分かりづらかった?」
ポチ「いや、なんとなくわかった」

ポチの父親は勇敢であった…
それゆえ仲間からの信頼も深く、群れを取り締まっていた事もあった…
しかし、突然ハンターとポケモンが森へやってきた
ポチの父親も前線で戦い、リーダーのポケモンに深い傷を負わせた
ハンター達は逃げていったがその代わり命という代償を失った…

ポチは複雑な心境であった…
鈴を取れば、ホウオウに会えれば…父さんも帰ってくるかも…
良かれと思って言った事、しかし今思えば無理な話なのかもしれない…

シエラ「帰ろう?きっとお母さん待ってるよ?」
ポチは縦に頷く、その目にはうっすら涙がにじんでいた…
来た道を戻る二匹…
シエラ「それじゃ…またね…?」
ポチに軽く手を振ると闇に消えていくシエラ
ポチの家の前には母親が座って待っていた…

母「寒かったでしょ?さぁ、早くしないと夕食さめちゃうよ?」
ポチはそのまま引き込まれるように家に入っていった…
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だめいぬ #7☆2007.03/15(木)02:01

静かな夕食、というより喋る空気ではない
ただ黙々と食べ物を口に入れていく
スパイスのきいた木の実も今では味の無い草のような感じだった

母が先に食べ終わる…
母「ごちそうさま…」
悩ましげな声で言う母
ポチ「…」
もう食べきれないポチ、というより気が進まない
母「…その…鈴を探してどうしたいの?」
重い空気を吹き飛ばすように母が問い掛ける

ポチ「…父さんが帰ってくるかもしれないから…」
うつむくポチ、ふぅ・・とため息をつく母
母「貴方は本当に鈴を探したいの?」
さらに問う母
ポチ「…ぅん」
小声で反応するポチ、もちろん無理だと心の中では思っていた
少しの沈黙が流れる…
ふと母が口を開く
母「…旅というのは常に危険が隣り合わせなのよ?それでも行く?」
ポチ「行きたい、けど…俺じゃ無理だよ…さっきは、、ごめんなさい」
母「いいのよ、別に…それに、貴方一人では無理だもの」
ガックリするポチ、直に言われた、しかも親に
母「…いらっしゃい、シエラちゃん」
母の呼びかけと同時にシエラが入ってくる
驚くポチ、というより盗み聞きかよ!?

シエラ「…こんばんわ…かな?」
ポチ「−−−ッ!?」
もはやポチ絶句
母「♪」
ポチ「いや、『♪』じゃねーよ!なんでシエラがいるんだってーの!」
母「言ったでしょ?貴方一匹じゃまともに旅できないってw」
母親の考えがやっと理解できた
 俺とシエラの二匹でなら森の外へ外出OKと言いたいらしい
ポチ「ちょっ、俺にシエラを連れてけと?無理だって!俺守れる保証無いって!」
母「え?その逆よ?」
あーそう、と納得しガクリとうつむく
シエラ「…ポチ?大丈夫?」
ポチ「うん、平気、全然平気だよ…多分」
もはや泣きながら笑うしかない…
しかしこれでまだ見ぬ森の外へ行ける
期待と興奮が既に感じるほど全身を駆け巡る

母「ポチ、念の為これを持っていきなさい…」
奥の物置から母が取り出してきたのは木の実みたいのがついたリストバンドだった
それをポチの右足につける母
ポチ「これは?」
母「お父さんの形見よ…それには森の神様の守護の力があるの、
 それがあればボールの力を無効化できるわ、きっと役に立つはずよ?」
ポチ「母さん…ありがとう、大事にするよ」
母が深呼吸してポチを見る

母「ねぇ、ポチ…約束して」
真剣な眼差しでポチを見る母
ポチ「…何?」
母「…絶対に帰ってきて…危ない事はしちゃだめ、一応男の子なんだから
  シエラちゃんを守りなさい?」
ポチは静かに頷く…
…いってきます…
そう言い残し、森を後にするポチ…そして、
『これはまだ危険な物語の序章でしかない事を、彼らは知らない』
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だめいぬ #8☆2007.03/27(火)00:06
第二章 旅立ち、辿りついたのは…


真夜中、森を出発した二匹…
二匹は雑談をしながら道なりに歩いていた

ポチ「そういえばシエラの親は了解してくれたのか?」
シエラにたずねるポチ
シエラ「えぇ、ポチ君となら尚更行ってあげなさいって…」
ポチ「…そぅ…ならいいや…」
ため息一つ…
シエラ「これからどうするの?」
ポチ「え?…うーん…とりあえずカントー行って…ジョウト…かな?」
アバウトな…シエラは不安そうに地平線の先を見つめる
辺りはやや明るく、静かな空気が漂っていた
森とはまた違う新鮮な空気、それをポチは存分に嗅いでいた

シエラ「一応ジョウトまでは一週間くらいだと思うけど…」
ポチ「ホウオウのいる場所ってジョウトなんだろ?」
シエラ「…多分、でもホウオウって常に飛び回ってるんでしょ?会えるのかな?」
シエラが問う
ポチ「きっと会えるさ!あぁー、ホウオウに会ったらどうしよう!」
ポチが目を輝かせて少し顔を出したお日様を見る
シエラ「…大丈夫かなぁ…こんなんで」
しばらく歩き続ける二匹、既に太陽はやや真上に上っていた
暑い日差しは容赦なく二匹を襲う

ポチ「あつー…なんでこんな暑いんだよー」
ポチが汗だくで呟く
シエラ「私達の森は影が多かったから…きっと涼しかったんだよ…」
ポチ「も、もう無理…あの木陰で少し休もうよ…」
へばりこむポチ
シエラ「しょうがないなぁ…」
二匹は木陰で休息を取る事にした
改めて見渡すと遠くにうっすらと町が見える、人間の住居…ヒワマキシティ
やや危険を感じながら二人は風を感じながら目を閉じた
風に揺れる木の葉、ムックルの泣き声がうっすらと聞こえる…

そこへ、一台の中型トラックが走ってきた…
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だめいぬ #9☆2007.05/18(金)22:50
うぅん…?

鼻が曲がりそうな油の臭い…
薄暗い部屋、時差ガタゴトと揺れる一室…
ポチ「どこだろ…ここ」
足に何か絡み付いている。。。革ベルト・・?

シエラ「…ぁ、起きてる?」
ポチ「え、あぁ、何処だろ…ココ」
シエラの右ストレートが飛ぶっ

シエラ「馬鹿!私達は誘拐されたのよ!ユ・ウ・カ・イ!」
ブッと噴き出すポチ
ポチ「何処向かってるんだよっ!?」
シエラ「知らないよ!…もぅ」

その場にへたれ込む二匹、
ふとシエラが自分を束縛している物に噛み付く
ポチ「お、おい…頭だいじょうb(殴)」
シエラ「あのねぇ、こいつ外さなきゃ何も出来ないでしょ!」

ポチ「あぁ、納得w」

また二匹は噛み千切りにかかる
カリカリカリカリ…ぷっちん
ポチ「ぜぇ、ぜぇ…やった!」
シエラ「でも、これからどうしよう…」
不安そうに隙間から外を覗く、
辺りはもう日が落ち漆黒の闇が満ちている、
ポチ「…大分時間経ったんだ…」

シエラ「…ぅーん…そうだ」
何かを閃くシエラ
ポチ「何か手があるの?」
シエラ「危険だけど、脱出する方法があるけど…」
ポチ「うぇ…危ないのはやばいよぉ」
顔をしかめるポチ
シエラ「でもそうしないと売り飛ばされるよ?」
ポチ「うぅ…」

荷物の前に移動するシエラ
シエラ「これを落とすだけ、簡単でしょ?」
ポチ「…?」
訳がわからないまま荷物を押すポチ
シエラ「いい?一度しか言わないよ?」
ポチ「…」
シエラ「荷物を落として彼らがやってくる…
     油断して扉を開けたときに一気に飛び出す、いい?」
ポチ「強行突破っすか…」
シエラ「つべこべ言わない!行くよ!」

二匹の体当たりで大きな音と共に一気に荷物が崩れる
ハンター「何だ?」
揺れが止まる、静かな空気が余計に緊張させる
二匹は扉に神経を集中させる…
ガチャリ。。。っ!
ハンターが扉を開けた瞬間黒い影がシュパっっと横切る!
二匹は近くの森へと逃げ去る…
ハンター「ッ!出来るだけ無傷が良かったが、ヘルガー、行け!」
後に続くヘルガーとハンター…
徐々に二匹との距離は縮まってゆく…そして…
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だめいぬ #10★2007.05/18(金)23:45
ヘルガー「逃げられると思ったか?」

ポチ「っ!」
シエラ「まずい…ポチ!私が食い止めるっ!その間に」
ポチ「逃げられるかアホっ!」
ゴチャゴチャともめる二匹…

ヘルガー「残念だ、あのまま大人しくして
  いれば痛くないものを…」
ポチ「捕まってたまるかよ!」
ヘルガー「小僧が生意気に…?貴様、そのリストバンド…」
ポチ「隙ありっ!」
勢い良く泥をかけるポチ!
ヘルガー「ぐぁ!?」
ハンター「はぁはぁ…おぃ!なんだこのザマはっ!」
ポチ「人間っ!?」

ハンター「クソッ、人間様をなめるなよ?」
ベルトからモンスターボールを取り出すハンター
ハンター「コレでも食らえ!」
彼の投げたボールがシエラに飛んでゆく!
ポチ「危ない!」
シエラをかばうポチ!
ガスッ! 鈍い音がこだまする
シエラ「ポチっ!」
ポチ「いってぇ〜…」

ハンター「馬鹿な、ボールが効いてない!?」
ポチ「食らえ!」
二発目の泥かけ!見事ハンターに命中!
シエラ「今のうちに早く!」
ポチ「え、あぁ!」
ハンター「待て!くぅ…畜生!糞野郎…
  この俺をコケにするとはぁ…ぜってぇ許さねぇ…」

ヘルガー「ボール…ククッ、そうか…あいつが…」
ハンター「おぃ!チンタラしてねぇで行くぞ!役立たず!」
小走りでトラックへと戻るハンター
ヘルガー「まぁ…いずれ会うだろうな、その時は…」
その夜…静かな森にただ奇妙な笑い声だけが響いた…
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だめいぬ #11☆2007.05/20(日)01:44
ポチ「ぜぇ…ぜぇ…」
その場でクニャリと倒れるポチ
シエラ「ちょ、大丈夫!?」
シエラが慌てて駆け寄る
ポチ「ははは…死ぬかと…」
もはや放心状態のポチ、やれやれとシエラがその場で座る
シエラ「もう、今日はここで休むから…」
ポチ「サンキュ…」
ゆっくりと瞳を閉じるポチ
シエラが寄り添うように隣で寝る…

木々の森のさえずりが遠くなってゆく…

…まぶしい…というより…
ポチ「あちぃ…」
その一言でシエラが起き上がる
シエラ「うぅ…ん?もう朝…?」
ポチ「なんでこーいう時に限って晴天なんだ…」
細目で太陽を睨みつけながら言い放つ
シエラ「いいじゃない、嵐よりはよっぽどマシよ…」
ふぅ、とシエラがため息一つ
ポチ「…むぅ…」
シエラ「そろそろ行こう…もしかしたらまだ近くにいるかも」
辺りを見回すシエラ
ポチ「どうするのさ…」
シエラ「太陽があっちだから…こっち!」
指をさすシエラ
ポチ「本当かよ…?」
少々疑いながらシエラについていくポチ…
やがて浅い草むらへ出る…

ポチ「ここは…?」
シエラ「わかるわけないでしょ…とりあえず…あっち」
進行方向には大きな町、ガタゴトと何か巨大な蛇が居座っている
ポチ「ちょっと…まさかあの街を通り抜けろと?」
シエラ「馬鹿、堂々と行くわけないでしょ!」
ポチ(何を言い出すんだコイツは…)
シエラ「街の裏道を通って進めばいいでしょ?」
ポチ「道知ってんのかよ」
シエラ「え、まぁ…そこは根性で何とかしてさ」
うわぁとか思いつつしぶしぶシエラについて行くポチ

…辺りが少し薄暗く表の活気はどこへやら
裏に回りこむまでは人間の声が絶えず響いていたが
どうやら街の裏路地らしき場所へと出たようであった…
ポチ「ふぅ、なんとか来れたな」
シエラ「早く行こう…じゃないと人間が来るかも」
ガララッ!
ビクンと体を震わせる二匹、おそるおそる音の方を向く

ガサガサ…
ゴミ箱の中からひょっこりとコラッタが出てくる
コラッタ「あら、新入りかい?」
ポチ・シエラ「?」
ぽかーんとする二匹
コラッタ「で、あんたも捨てられたクチかい?」
意味深な質問を問いかける
ポチ「いや、ただ僕らはちょっと行く場所があって…」
コラッタ「ほぅ…そりゃ楽しそうだな、で行き先は?」
ポチ「ぇ」
コラッタ「無いって訳じゃないだろ?」
シエラ「あ、私達ジョウトへ行くハズだったんですけど…」
目線をそらすシエラ

ポチ「ちょっと事情があって迷子に…」
コラッタ「そうか…でも良かったな、ジョウトはもうすぐさ」
二匹は意味不明と言わんばかりに首を傾げる
コラッタ「この街にはジョウト行きのリニアがあるんだよ」
ポチ「ジョウト行きのリニア!?…てなに?」
コラッタ「えぇ…リニア知らないのか…」
シエラ「ところでここは何処なの?」

問いかけるシエラ
コラッタ「ここかい?ここはヤマブキシテイさ」
ポチ・シエラ「へぇ、そう…ってえぇー!?」
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だめいぬ #12☆2007.05/21(月)00:16
シエラ「ヤマブキって…相当遠くへ来たわね…」
戸惑うシエラ
ポチ「えぇと、つまり…得したって事なのか?」
首をかきながらポチが問う
コラッタ「ところで…君たちどこから来たんだい?」
シエラ「ホウエン地方から来たんです」
ブッとコラッタが吹く
コラッタ「すっごい遠くじゃないか!さぞかし大変だったろ?」

ポチ「いえ、実は…」
二匹は今までの事を話した、何が目的で、何があったのか…
コラッタ「そうか、人間に…大変だったな」
シエラ「はぃ、あっ親切にありがとうございました えぇと」

コラッタ「あっごめん、俺は『コラル』って言うんだ」
シエラ「コラルさん、ありがと」
にっこりと微笑むシエラ
コラル「いいよ呼び捨てで、それにしても鈴…ねぇ」
ポチ「はい、何か知ってるんですか?」
目を輝かせて聞くポチ
コラル「いや、そんなの聞いた事が無いなぁ…」
ポチ「そか…ごめん」
残念そうにうつむく二匹
コラル「でももしあるなら是非見てみたいな…
        一緒に行っちゃ駄目かな?」

シエラ「え、でも危ないよ…もしかしたらまたあの人間が」
ポチ「いいじゃん!多いほうが楽しいって!」
コラル「よし!決まりだ!」
楽しそうに笑うコラルとポチ、
シエラ「ふぅ…で、そのリニアって何処なの?」
コラル「リニアは今夜と明日の朝に出るから…どちらでも」
ポチ「うぅーん、やっぱ少し休んでから乗りたいな…」
のんきにポチが言う
シエラ「もう、いつもそればっか!」
コラル「まぁまぁ、どの道忍び込む形になるんだし…」
あはは、と苦笑いしながらコラルが言う
ポチ「そうか…やっぱ堂々と行くわけにはいかないよな」
シエラ「それじゃ明日の早朝に出発って事?」

ポチを横目で見ながら問いかける
コラル「あぁ、適当に人混みに紛れて行く!」
シエラ「でも今夜乗ってから休んでもいいんじゃ…」
ポチ「そか、それもいいな…」
コラル「いや、夜は人が少ないから逆に危ないんだ」
ふぅん、と二匹がうなずく
コラル「それまでこっちで休んでよ、ちょっと狭いけどさ」

案内させられたのは住宅との間の小さな窪みであった
ボロボロのタオルやバケツなどがそこに置かれていた
ポチ「ここで暮らしてるのかい?」
コラル「あぁ、見た目はアレだけど案外すみやすいんだ」
三匹はそこで横になり休息を取る…
少し曇が浮かぶ夜空を見上げながら語りつつ時間は過ぎていった
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だめいぬ #13☆2007.05/24(木)15:38
〜裏通り・広場〜
ポチ(いよいよ…明日かぁ)
夜空を見上げるポチ
ポチ(ホウオウに会えるかな…)
シエラ「どうしたの?」
後ろからシエラが歩いてくる
ポチ「え、あぁ、眠れなくて…さ」

シエラ「…」
ポチ「…」
シエラ「あのさ、昔聞いたんだけどね…死んだ命は星になるんだって」
沈黙を破るようにシエラが口を開く
ポチ「…星?」
シエラ「うん、星」
ポチがぽかーんと夜空を見上げる

ポチ「いっぱいすぎてわからないよ…」
シエラ「お母さんがね、ご先祖様はみんなあそこから見守ってくれてるって言ってた」
ポチ「じゃあお父さんもあそこから見てるのかな?」
空を見上げながら聞くポチ
シエラ「きっと見守ってる…」
優しくシエラが答える
ポチ「ふぅん…」
シエラ「ポチが危なっかしいからきっと目が離せないよ」
笑いながらシエラがからかう
ポチ「なんだよそれ!ひどいなぁ〜!」

コラル「うぅん?どうしたんだい?」
眠そうなコラルがやってくる
ポチ「いや、ちょっと眠れなくてさ…」
あはは、とポチが笑う
コラル「そうか、でもしっかり休んどけよ?少し長旅になるからな」
縦にうなずく二匹
遠くでリニアのアナウンス音が今日の終わりを告げるかのように鳴る…
この楽しい時間がいつまでも続けばいいのに…
そう思ったポチであった
…しかし…
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だめいぬ #14☆2007.06/03(日)13:54
ハンター「チィ、今日の収穫は5匹か…」
トラックを覗きながら呟くハンター
ハンター「それにしても、あのポチエナ…上手くすれば高値がつくか…?
いや、高くても2・3万か、しかし調教すれば倍か…?」
そんなやり取りを横目であくびをしながら見ているヘルガー
ピクッ、ヘルガーが何かを感じる様に立ち上がる

ヘルガー「この臭い…ッ、まさか…」
とぼとぼ嗅ぎ歩くヘルガー
ハンター「?」
後を追うハンター、やがて少し暗い裏道へと出る…
ヘルガー(…近いな)

ポチ「…そろそろ、戻る?明日の事もあるし」
あはは、と笑いながらシエラに聞く
シエラ「そうだね…明日寝坊したら大変だよ」
コラル「なぁに、そんときゃ俺が起こしてやるさ」
和やかな雰囲気が辺りを包む、今までの事を忘れさせてくれるかのように…
ポチ(さて、戻るか…ん?)
後ろを振り向くポチ
ヘルガー「小僧…また会ったな」
ポチエナ「お、お前っ!何でココが!?」
驚き戸惑う二匹
ヘルガー「俺は特殊な訓練を受けててな、臭いに敏感なんだ…特にテメェみたいな雑種にはな…」
ニヤリと笑うヘルガー

コラル「誰なんだ、こいつ」
シエラ「さっき言ってた奴らよ…」
じりじりと距離が縮まる…
ヘルガー「そういやぁお前の親父には世話になったぜ…」
ポチ「っ、知ってるのか!?」
ヘルガー「あぁ、思い出すだけで反吐が出る…」
苦虫を噛んだ様にひきつらせるヘルガー
ハンター「もういい、用はない…さっさと殺せ!」

ポチ「クソッ…」
一歩、また一歩後ろに下がる三匹
遠くで最終アナウンスが鳴り響く
コラル「仕方ない、リニアに行くぞ!」
シエラ「でも明日じゃ…!?」
コラル「最終にはまだ間に合う!それともここで殺られるか?」
ポチ「決まってるだろ!」
一斉に振り向きリニアに駆け出す三匹!
ヘルガー「させるかっ!」
全速力で追いかけるヘルガー

コラル「見えた!あれだっ!」
まだ光がこぼれる駅のホームへと駆け込む三匹
ほぼ無人のホームを駆け抜け一番にポチがリニアに駆け込む!
ポチ「二人とも!早く!」
シエラ「他人のスピードも考えてよ!」
後ろからヘルガーがやってくる!
コラル「マズイ、このまま乗れても奴らも入ってくる…そうなったら逃げ場は無いぞっ」
シエラ「じゃあ降りて逃げるの!?」
コラル「先に乗れ!」

プルルルルル…リニアの発車の音が鳴る
コラルが同時にクイッと逆を向く
ヘルガー「!?」
ポチ「コラルッ!」
そのままコラルが体当たりを食らわした
コラルはヘルガーもろともその場に倒れる…
ハンター「何ッ!」
プシュー…リニアのドアが閉まる
ゆっくりとリニアが走り出す
シエラ「嘘…開いてよ!ねぇ!まだコラルが外に!」
ポチ「ふざけるなよ!おい!止まれ!止まれってば!」
ドアを叩くポチとシエラ
しかしリニアはどんどん加速してゆく
やがてコラル達の姿はまったく見えなくなってしまった…

ヘルガー「糞鼠が生意気に…!」
ハンター「やれ!そいつを潰せ!」
ヘルガーが一気に右足で切り裂く、
ぐったりしているコラルを口でくわえ放り投げる…
駅員「お前達!何をしているっ!」
夜間勤務の駅員が駆け寄ってハンターを押さえる!
ハンター「邪魔だ!ヘルガー、突進だ!」
突進が駅員にHITして駅員が気を失いその場に倒れる
ハンター「ッ…ヘルガー、トラックに戻るぞ…」
急いでトラックに乗り線路沿いに走り出す一人と一匹であった…
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だめいぬ #15☆2007.06/07(木)21:06
ポチ「…」
ドアに寄り添いただ過ぎ行く景色を眺めるポチ
シエラ「…ポチ」
かける言葉が見つからない…
しばらくの沈黙が続く

ポチ「…コラル…どうして…」
ポロリと雫がこぼれる
シエラ「…」
ポチ「もう、嫌だよ…こんなの」
うつむき涙をながすポチをシエラがはたく
シエラ「コラルさんは頑張ったのにポチが頑張らなくてどうするの!
     私達を行かせてくれたのにそれを無駄にするの!?」
半泣きでシエラが言い放つ
その後しばらく何も語らず、ただ時間だけが過ぎていった
これが全て夢であって欲しいと願いつつ…
意識は暗黙の中へと消えていった…

ふとポチが目を覚ます
辺りを見回すと昨夜と変わらない光景、外からは既に日差しが差し込んでいる
車内にはニ・三名の老人、若者とイーブイが寄り添って寝ている
少し奥には小さい子供が親と朝食をとっていた

シエラ「…あ、起きたんだ…」
ポチ(ビクッ!)
一瞬驚いて後ろを向くポチ
シエラ「朝…だね」
ポチ「…うん」
重苦しい空気が包む
ふとポチが口を開く
ポチ「あのさ…昨日は、その…ごめん…」
斜め下を向くポチ
シエラ「いいの、気にしてない…」
しばらくの沈黙

シエラ「きっと…大丈夫だよ」
ポチ「?」
ポチが顔をあげる
シエラ「コラルさん、きっと大丈夫だよ…駅員さんもいるし、
   あのくらいの街だったらビョーインの一つくらいあるよ、
  だからさ…これ以上振り返るのはやめよう?コラルさんにも悪いしさ…」
シエラが優しい口調でポチに言う
ポチ「…うん」
静かにポチが頷く、
二匹が改めて見た窓の外には見たことも無い広大な世界が広がっていた…
その名は、『ジョウト地方』
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だめいぬ #16☆2007.12/12(水)22:55
二匹は2〜3人の乗客が降りた事を確認して後に続いた
新鮮な空気、ではなかった

どこか、どんよりとして、暗く、重い…そんな感じだった

旅立つ前はこんな事になるなんて考えもしなかった
ましてやあの時の『ニンゲン』が生きていたなど
『ニンゲン』の寿命は長いと聞いた事はあったが、ここまでとは思いもしなかった…
父を亡き者にしたヤツが目の前に現れた…ただ、それだけ
ただ『それ』を考えると言葉にならない怒りがこみ上げる

『何故、ニンゲンはポケモンを追い払うのか?』
『何故、ヒトは自然を破壊するのか?』
『何故、彼らはボクらを道具みたいに使うのか?』
そんな言葉が次々にポチの脳裏に浮かんでくる
「…違う」
混乱している自分に言い聞かせる
『なにが違うの?』
言葉が響く
「確かにヒトは怖い、けど…違う」
『ヒトはポケモンの命を奪うのに?』
「でも幸せに暮らしているポケモンもいる」
『小さな世界に閉じ込められて…か?』
「ッ…」
少しポチの顔がひきつる

心の隙間をつつくように言葉が浮かぶ
『キミ自身も-ヒト-に殺意を抱いているんだろう?』
ピクリと目が震える
「うるさい…」
静かに威嚇するポチ
『こらえなくてもいい、本能のままに行動すればいい』
「黙れ、それ以上喋るな」
段々口調が荒くなる
「お前は一体何なんだ、何故ボクに関わる」
少々キレっぽく問うポチ
『ボクは…キミが一番知っている人物』
?「…ぇ、…チ!、・:てるの…ッ?」
ポチ「一番…知っている?」
?「…ぇ…ねぇ!!」

はっ!と視界が広がる、目の前には呆れた表情でシエラが見つめていた
シエラ「どうしたの?苦虫を噛んだような顔してさ」
覗くようにポチの目を見るシエラ

ポチ「ううん、大丈夫…寝ぼけてた」
直後シエラの左ストレートが炸裂、天地が反転する
シエラ「もう、心配して損したよ…目、覚めた?」
ポチ「ぅ…寝そう、次こそ目覚めないかも」
シエラがもう一発目を構える
ポチ「っ!?ちがっ、起きた!もう覚めたよ!」
急いで立ち上がるポチ
物陰で暗い為、余計にシエラが怖く見える
シエラ「早く行こう?少し話しながらさ…」

一瞬、申し訳なさそうな視線を向け歩き出すシエラ
後ろに急いでポチが続く
遠くに見える大きな山を目指して…

誰が為に鈴は鳴る-前編〜完〜-
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[971]

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ぴくの〜ほかんこ