紺藍 | #1★2007.03/11(日)21:38 |
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―プロローグ― ここは、古来から不思議な力が宿っているという 「シコン地方」という場所―。 その「不思議な力」とは、 「平和」をもたらすと言う。 これの力のお陰で、この地方、いや世界が平和を 保っている事ができる。 その力は、全てのポケモンにも及ぶ。 しかし、ここシコンのポケモンは―例外だった。 「異常」 だった。その「異常」とは―力が強いという「異常」。 その「異常」とは― ヒトのスガタになってしまう。 それだった。 そう、シコンにいるポケモンは、全て人の姿になる。 そのポケモンの事を「人型ポケモン」と言う。 なので、ここでは人とポケモンはほぼ同じ扱いになる。 人型のポケモンは、人と同じく教育を受け、就職したりと、 色々な活躍をする。 また、人型ポケモンは、通常のポケモンと同じく 「技」を使う事もできる。 その力の為か、人と人型ポケモンは、 同じ場で教育を受ける事ができない。 就職は人と同じ場ですることが出来るけれど。 そのため、このシコン地方には 「ポケモン学園」なる物がある。 人型ポケモンだけが入学する事ができる、 小学生から大学まで一貫した学校。 これは、そのポケモン学園で繰り広げられる物語―。 |
紺藍 | #2★2007.04/01(日)14:38 |
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―第一話 激突したら痛いに決まってる ― 此処は、シコン地方の大都市、シトルシティ。 その町の中の「私立ポケモン学園」の校門の前に、 一人、少年がいた。 暗い藍色の髪に、炎の様な赤い髪。 そして、それと同じ赤い瞳の少年。 「ここだよな…ポケモン学園って… えっと…中等部の職員室に行けばいいよな…」 様子から見て、彼は転校生のようだ。 私立ポケモン学園は、小学生から大学生まで通うものだから、 とにかく広い。その広さは… 「ってどれだけ広いんだよここは!」 と彼が言ってしまう程だった。 なにしろ、校門から中等部まで900メートルもある。 彼は早速、迷ってしまった。 「此処広すぎなんだよ…」 彼がそう愚痴をこぼしていた時、前方からダッシュでこちらに 向かってくる少年が… 赤い髪の少年は地図を見る事に夢中だった。 少年も、彼には全く気づいていなかった。 当然その状況だったら―誰でも分かるだろう。 二人は激突した。…頭を金槌で叩いたような音が響いた。 彼は地面に倒れ、頭を抑えている。 少年も、目を瞑って痛みを堪えていた。 先に口を開いたのは、ぶつかって来た少年の方だった。 少年は、綺麗な青い髪に、赤い髪が少し混ざっていて、 まるで瑠璃のような瞳だった。 「あ…ご、ごめんなさい!つい、つい 寝坊して走ってたら…」 少年が走っていた理由はお約束通り、「寝坊」だ。 謝られ、彼も口を開いた。 「あ…いや、こちらこそ…」 彼は、少年が余りにもお決まり通りだったため、 正直言うと、心の中で笑っていた。 「ていうか、君誰?見かけない顔だけど」 「いや、あの、俺は―」 その時は、あんな事が起こるなんて思ってもいなかった。 |
紺藍 | #3★2007.03/28(水)17:50 |
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―第二話 変人ほど自分を普通と主張する ― 「君、誰なのさ?」 「いや、あの、えーっと…。」 赤い髪の少年はどう答えたらいいのか分からず、 黙りこんでしまった。 (ったく…この状況で転校生だなんて言えるかって…) しかしそこに神の助けが…と言えるのかどうかは別として。 一時間目の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。 青い髪の少年は、チャイムに気づき、 「あ、やばい!ごめん、とにかく 遅刻するんでそれでは!」 「え!?」 そういって青い髪の少年はダッシュで昇降口に向かっていった。 これは、ラッキーだったのかアンラッキーだったのか…。 地図はあるものの、迷ってしまっては、どこに行けばいいのか 全く分からない。 「…ま、とにかくあっちに行けばいいか、 「職員玄関」ってあるみてぇだし。」 しかし彼は開き直り、職員玄関に向かった。 「失礼します…。…しっかし疲れた…。」 あのあとかなり遠かった職員玄関まで歩き、 職員室に入ってみたものの、誰もいない。 「誰もいないな…。ま、当たり前か…。」 そう思って職員室を後にしようと思った時― 「うぇるかむー」 「どわぁっ!」 突然上から紫の髪をした男性が降って―、いや、 落ちてきた。 「あー君が転校生ですねー待ってましたよー とりあえず君は私が担任の1年3組ですねー」 かなり妙な物言いだが、「担任」と言っているあたり、 教師ということが分かった。 (この人が先生なのか?!第一「うぇるかむ」って何だ?! この変な言い方は何なんだ?! ていうかこの人もう授業始まってるのに何でここいるんだ?!) そう心の中で厳しい突っ込みを入れていると、紫の髪の男性に、 「でぇ、君の名前はぁー?あと種族名もねぇー。」 と問われた。 赤い髪の少年は、 「あ、紅蓮です…。マグマラシの…。」 と簡潔に答えた。 「そーですかーならですねーまーとりあえず 私についてきて下さいなー」 「…は、はぁ…。」 そう言われると、一階の教室の前に連れて行かれた。 勿論、かなり距離はあったが…。 「ここですよー、一年三組はー。ちょい待ってて下さいなー。」 変人の教師。…そう思うと、赤い髪の少年―紅蓮の頭に 嫌な考えが浮かんだ。 |
紺藍 | #4★2007.12/02(日)22:09 |
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―第三話 人懐っこい人は便利です 前編 ― 「ちょい待ってて下さいなー。」 そう行ってその教師は教室の中に入っていった。 ガラリ。引き戸から大きな音がした。 もう一つ、大きな音が聞こえた。 …生徒の声が、ざわざわと聞こえる。 ぴしゃり。先生が戸を閉めると、そのざわめきが一瞬にして 収まった。 先生が話し始めたようだ。 戸を閉めても、声が漏れて聞こえてくる。 紅蓮は、その声に聞き耳を立てた。 「おはよーございまーす。」 間の抜けた声。さっきの先生だろう。 その声から間を置いて、「おはようございまーす」と 声が返ってくる。その声はばらばらで、少し可笑しかった。 「ええとですねぇ、みんな知ってると思いますがー、 今日は転校生が一人来まーす。」 そう言った瞬間、再び教室がざわざわと煩くなる。 その様子を見て、紅蓮が呟いた。 「うんうん普通だ普通だ…。」 顔には安心の色が浮かんでいる。 あんな先生で大丈夫なのだろうか、と不安に思っていたからだ。 だから、この普通のやり取りを見て安心感を得た。 そう一人安心していると、いきなり戸が開く。 「入ってぇー。」 「あ、はい!」 そう言われ、緊張しながらも教室に入った。 どんな人が居るのだろう、と思いつつ。 |
紺藍 | #5☆2007.12/02(日)22:09 |
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―第三話 人懐っこい人は便利です 中編 ― 「入ってぇー。」 そう言われて、俺は教室の中に入る。 思ったより広かった。以外に、人数は少ない。 教室は…何故か、シンと静か。 自分に視線が集中してる。 …ああ痛い痛い。 視線が痛い!何だこの痛さは! 何個の目が自分を見ているんだ?! そうか転校生はこんな気分なんだなそうかそうか! …落ち着け、俺。 とにかく先生もまとも(?)だ。 そのまま黒板の前の真ん中にポジショニングして、 先生が何か言ったら間髪入れずに挨拶だ。 ―よし、完璧だ。これで大丈夫大丈夫。 そう自分を安心させる。 こんなんでやっていけるのか不安だ。 そう思案に暮れていると、いつの間にか真ん中の方まで 足を進めていた。そこで止まる。 そして、前を向く。 視線を前に向けていながら、とりあえずクラスの 全員をまんべん無く見渡して置く。 そうしていると、一人、見覚えのある人が居た。 「あ」 げっ。思わず声を出してしまった。 誰も気付いていないのでセーフにして置こう。 もしかして、窓際に居たのは。 さっきの…。ぶつかった人か。 机に突っ伏している。 …寝てるのか。居眠りか。 あの青い髪は絶対さっきのだ。同じクラスだったのか。 その隣の机には誰も座っていない――。 俺の机はそこになるのか。 朝にぶつかった人と隣。 何てドラマチックな…。 ……というより、寝てるなよ。 こんな漫画的なイメージあったらそっちも反応しないと 俺の方がもっと痛いだろ! ああそうか寝坊して寝足りないのな。 てか、先生気付けよ。 「えーと、それで転入生のぉー」 間の抜けた声でハッとする。つい、さっきのに 気を取られていた…。 「紅蓮です、宜しくお願いします」 よし、抜かりない抜かりない。 何とかセーフ。 そうしていると先生の詳しい説明が始まる。 「ええとねぇ、紅蓮君はー、西のアゲートから… 転校して来たんだよねぇー?」 何故疑問口調なんだ。覚えてないのか。 一応合ってはいるが…まあ頷いておこう。 「あ…、はい。」 「じゃあー、とりあえず自己紹介してぇー簡単にぃ。」 …は? 「間違っても好きな物は味噌田楽ですー、とは 言わないようにねぇー。」 何故味噌田楽を?! じゃないじゃない、しまった内容考えてねぇ…! そして視線がより痛くなったのは気のせいか?! アドリブでいいよな…。 「っ、えーと、あ、好きな教科は歴史と」 ゴン。 今、何か物を机にぶつけた音がしたぞ。 その音がした途端、教室の全員の視線が音の主の方に行く。 「浅葱くーん、起きて下さーいー。」 先生がその音の主の名前を呼んだ。 おいおい、さっきの青髪か。 どうやって寝ながら机に頭をぶつけられるんだ。 あ、起きた。 「ふあ…、わ、おはようございます!」 いや、遅いだろ。明らかに遅いだろ! 今はこの転校生の自己紹介まで行ってただろう。 どうするんだこの空気。 自分が話し出したら間違いなく空気を読めないのになる。 どうすればこの雰囲気を打開出来るんだ。 「まー、いいですかねー。とりあえず紅蓮君は あのさっきまで寝てた隣の方に机あるからー、 そこ座っといてねぇー。」 先生、全然良くない気がするのですが。 もう、この先生には何も通じない気がしたので とりあえず机に座った。 |
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