ぴくの〜ほかんこ

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完結[980] 【短篇】ある氷ポケモンのお話

バットントン #1☆2007.03/23(金)23:03
今日も私のお気に入りの氷山の、その一番高いところから見える夕陽は一日の締めくくりに相応しい、とてもとても綺麗な景色で、私はそれが大好きだった。
私がこの氷山を見つけたのは三年前。そのときも氷山はいつもと同じ形で、同じ場所にあった。だから三年前のあの日、私が見つけたときにも既に氷山は同じ形のままで、同じ場所に何十年、いや、それよりももっと多くの時を過ごしながら、ずーっとこの夕陽が沈むとても素敵な光景を見つめてきたんだろうなって思った。

ここは私と、そしてこの氷山だけが知っている秘密の場所。

そんなことを思うと、私はたまらなくこの氷山が愛おしくなる。これはもしかしたら変なことかもしれないのだけれど、その感情は恋愛のそれにちょっとだけ似ていた。

今日も陽は沈んでいく。
いつもと同じ風景。ううん、ほんのわずかな違いだけれど、どの日も全く同じもののない風景。
明日はどんな景色が見えるんだろう。そんなことを思いつつ、私は氷山にお別れを告げて家路についた。

   * * *

眠っている私の耳に、とても悲しい音が聞こえた。   気がした。

   * * *

私は白の中を泳いでいる。
白は大好き。氷山の色、私の世界の色。

私は白の中を泳いでいる。
白、白、白。
…あれ? これは……白じゃない。
白じゃない、…って、どういうことだろう。
白…って、……何?

私は白の中を泳いでいた。
白が、なくなっていく…。

…怖い…。

…黒の中を、泳ぎ続ける。

   * * *

昨日も私のお気に入りの氷山の、その一番高いところから見える夕陽は一日の締めくくりに相応しい、とてもとても綺麗な景色で、私はそれが大好きだった。
私がこの氷山を見つけたのは三年前。そのときも氷山はいつもと同じ形で、同じ場所にあった。だから三年前のあの日、私が見つけたときにも既に氷山は同じ形のままで、同じ場所に何十年、いや、それよりももっと多くの時を過ごしながら、ずーっとこの夕陽が沈むとても素敵な光景を見つめてきたんだろうなって思った。

私も氷山も。

溶けて。


なくなった。
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[980]

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