『次のニュースです、先日逮捕された塔亜風見容疑者の自宅から多数の女性が…』
街頭のテレビからニュースが流れる。
取り上げられているのはウインドルの元所持者、塔亜風見だった。
あの後、服を求めて屋敷を探索した美音はとんでもない部屋を発見した。
それは監禁された女性たちが集められている色欲の部屋。
薬と暴力によって目をうつろにし、正気を失っていた女性たちの姿がそこにはあったのだ。
美音はすぐさま匿名で警察に連絡。
すぐに駆けつけた警察(警察は風見に警備を断られていたが、すぐ近くで待機していた)によって風見は逮捕されたのである。
「ふう、この前は大変だった…」
流れる風見の罪状を険しい目で見つめながら美音は事件後の苦労を思い出していた。
仮面も衣装も破損した状態で自宅へ辿り着くのは美音にとって今までで最大の試練だった。
ほぼ丸裸という格好。
誰かに見つかれば一歩間違えなくても痴女のそしりを免れないその状況の中で
美音は羞恥のドキドキと数々のハプニングに苛まれながらもなんとか帰宅を果たしたのだ。
「物陰から物陰に素早く移っての移動…もう二度としたくないわ…」
トホホ、と呟きながら美音は画面に映る風見をにらみつけた。
元はといえば全ての原因はこの男にあるのだ。
この男のせいで、自分は恥ずかしい目にあった。
犬にスカートを脱がされそうになり。
風でスカートをめくられ。
服をボロボロに破られ。
そして胸を露出させられ、あまつさえ揉まれ。
最後には軽くとはいえイカされてしまったのだ。
(やだ…思い出したら顔が…)
赤くなった頬を隠すように美音は両手で顔を押さえた。
と、ニュースが次のネタへと移る。
「……っ!?」
画面に映し出されたその男を見た瞬間、美音の背筋に凍えるような冷気が走った。
理由はわからない。
だが、美音の精神がしきりに警報を告げていた。
この男は危険だと。
『ついにアクアメロディ逮捕へと特別チームが切り札を投入! 彼の名は梶夜暗警視』
流れるテロップがその男の名を告げる。
美音にはその名前に聞き覚えがあった。
梶夜暗、警察の中でも現場からの出世という希少さで有名な男。
その手腕は烈腕でありながらも完璧で、今まで彼に狙われて捕まらなかった犯罪者はいないといわれている。
そんな大物が自分の逮捕へと乗り出したのだ。
美音の驚きを感じると共に気を引き締めた。
どちらにしろ残るジュエルは後一つ。
相手がどんな大物だろうと引くわけにはいかない。
「けど、最後の一つ…ダークは一体どこに?」
ダークだけは所在が判明していない。
それゆえに美音は警察に期待していた。
美音は所詮個人なので情報の収集にも限界がある。
だが、警察ならば自分を逮捕するためにダークを探し出してくれる、そう考えていたのだ。
そういう意味では美音はこの警視にに期待せずにはいられなかった。
『必ずアクアメロディはこの手で捕まえて見せます…そう、必ず』
テレビの中の夜暗はまるで美音がそこにいるのがわかっているかのように少女の瞳を見つめ、そう宣言した。