「起きて、起きてよルナさん!」
「ん…サキ、さん…?」
「カグヤさんの居場所がわかったんだよっ!」
「……ええっ!?」
身体にかけられたタオルケットを剥ぎ取りながらルナは慌てて身を起こした。
顔を見合わせたサキの瞳に嘘や冗談の色はない。
ルナは急いで身だしなみを整えるとサキを引き連れて隣の部屋へと向かう。
そこには、冷静そのものといった表情で二人を待つメイドの姿があった。
「アルテ、カグヤさんは…っ」
「落ち着いてください、お嬢様。まずは、このモニターをご覧ください」
アルテの手元のリモコンのスイッチが押されるとモニターに光が点る。
スクリーンの中央部では赤い光点が点滅している。
トライアングルムーンそれぞれのバイザーマスクには発信機としての役目もあった。
つまり、地図の中で点滅している赤い光点はカグヤがいる場所ということになる。
「ミリオンライトビル…?」
思わぬ場所の名前にルナは首を傾げた。
そこはつい先日自分が招待された場所だ。
確か今日の今頃も先日と同規模のパーティーが行われているはず。
「まさかここが奴らの本拠地ってことはない……よね?」
「はい、それはないでしょうね。そうなると、これはほぼ間違いなく」
「罠、ですね」
細い眉を眉間に寄せながらルナはスクリーンを睨み付ける。
昨夜、やっとの思いで帰還したルナとサキは一人残されたカグヤの身を案じていた。
だが、待てど暮らせどカグヤからの連絡はなく、頼りにしていた発信機の反応もない。
本来ならば夜通しで仲間の帰還を待つつもりの二人だったのだが
休めるときに休んでおかないと身体が持たないというアルテの言に渋々と睡眠を取っていたのだ。
そして翌日の現在、急に現れた発信機の反応が目の前にはある。
「十中八九そうでしょう。先程調べてみたのですが、ミリオンライトビルは数時間前から人の出入りがなくなっています」
「それって…中にいた人たちはブラックサンに捕まってるってこと?」
「状況的に見て、ほぼ間違いないでしょう」
ブレイドはおろか、多人数の人質がとられている可能性が高い状況の場所。
しかしだからといって仲間を見捨てるわけにもいかない。
ルナとサキはお互いに顔を見合わせ、こくりと頷き合う。
アルテはそんな二人の様子に口を挟むことなく、ただ情報を集めることに力を注いでいた。
主人たちの危険を少しでも減らす、それが彼女の役目なのだから。
(うっ……ん…)
少しだけ開いた瞼の下から入ってくる光の感覚にカグヤは僅かに身じろぎをする。
次の感じたのは身体を包み込むようなひんやりとした寒さだった。
暖房が入っているのか、風邪を引いてしまうというほどの温度ではないが、どこか肌寒い。
まるでいつもあるべきものが自分を守ってくれていないような、そんな頼りない感覚による寒さ。
(……ここ、は?)
徐々に意識が覚醒していた女剣士はゆっくりと視線をさまよわせる。
そこは物があまり置かれていない広い部屋だった。
電気はついているらしく、視界は十分確保されている。
カグヤはとりあえず状況を確認するべく手を動かそうとし
「な、に…?」
ピクリとも動かない右手をいぶかしむ。
先程よりも力をこめてみるも、やはり全く動かない。
それは左手も同じで、力を込めるたびに手首に食い込んでくる金属の感触がやけにはっきりと感じ取れる。
「な……!?」
ここに至って少女の目がハッキリと覚めた。
ぼんやりとしていた瞳はぱっちりと大きく見開かる。
両手だけではない、両足もまるで動かない。
首から上は自由に動く。
だが、それがわかったところで四肢が動かせない状況に変わりはない。
カグヤは慌てて状況を把握しようとし、そして絶句した。
「こ、これは…っ」
少女は椅子の上に座らされていた。
座らされている、といってもその格好はかなり珍妙だ。
両手首は頭の後ろの部分に括り付けられ、足は体育座りのように折り曲げられて縛り付けられている。
椅子のデザインも奇妙な造りをしていた。
ゆったりとした傾斜のある背もたれに黒い革でできた表面と四肢を拘束する銀色の金属の拘束輪。
下は普通の椅子にはありえない可動式の足受けが備え付けられ、カグヤの両足を拘束している。
椅子、というよりも女性用の内診台といったところだろうか。
「よう、お目覚めかい?」
「貴様はっ!」
その男の声が聞こえた瞬間、動揺に歪んでいた少女の表情が怒りへと変わる。
後ろから覗き込むように顔を見せたのは気絶する前に戦っていた敵――ジャックだった。
「おお、威勢がいいねぇ! んな格好だってのに勇ましいこった」
「何…あっ、ああっ!?」
ジャックの指摘に改めて自分を格好を見下ろしたカグヤが悲鳴を上げる。
少女の身体は一糸も纏わぬ裸だった。
下半身、上半身、そして素顔を隠す仮面も全て取り払われた生まれたままの姿。
幸い、体勢はピッタリと両膝を閉じた体育座りなので胸も股間も見えはしない。
しかし、横から見れば膝からこぼれる乳肉がはっきりと見える。
乳首は太ももに押し付けられるようにして隠れているためその姿は見えない。
だが、柔らかな肉同士を押し付け合い、むにゅりと変形した巨乳と太ももは見るものに興奮を抱かせずにはいられない。
なまじ全てが見えないことと、折りたたまれるように縮こまらされた身体が逆に豊満な肉体を誇示している。
それが今のカグヤの状態だった。
「ど、どういうつもりだ!?」
「どういうも何も、昨日のことを忘れちまったのか? お前さんは俺にひん剥かれたんだよ」
「あ…」
思い出す。
そうだ、自分は目の前の男に言いように弄られたのだ。
ジャケットを、ズボンを、そして最後には仮面や下着を切り裂かれ、みっともない声を上げた。
途端に怒りと羞恥心が湧き上がってくる。
だが、カグヤは同時に敗北感を覚えていた。
過程はどうであれ、自分が負けたという事実は変わらない。
疲労があったとはいえ、一対一の勝負でだ。
しかも相手はもっとも自分が嫌うタイプの下種な男。
情けなさとやるせなさ、そして屈辱感が女剣士の身体を震わせる。
「ひひっ、思い出したかい? よかったぜぇ、あの時のアンタの表情は! オッパイを見られて恥ずかしそうに染まった頬!
アソコを必死に隠そうとする泣き顔! どれも最高だった!」
「だ、黙れっ!!」
男の卑猥な感想にカグヤの怒りが爆発する。
だが、指一本動かすこともできず、ただ恥じらい混じりに顔を赤らめるだけの少女に迫力などない。
ジャックはそんな女剣士の様子にニヤニヤとした表情を崩さず、背後から一本の剣を取り出した。
「さぁて」
「…っ!? それは、私の剣…! か、返せっ! それはお前のような男が持っていいものではない!」
「ひひっ、いい剣だなぁこれは。逆刃ってのはちょっといただけないが、業物ってのはわかるぜ」
「くっ、その剣をはな……っ!? な、何をしている!?」
愛刀を手にしている男に吼える様に罵声を浴びせるカグヤ。
だが次の瞬間、ジャックがとった行動に少女は目を見開いた。
なんとジャックは、剣をゆっくりとカグヤの太ももの間に差し込んできたのだ。
「動くなよ…動いたら斬れちまうかもしれないぜ?」
「なっ何を…はうっ…」
ピッタリと閉じあわされた柔らかな肌の間を刃物が通り抜ける。
そのヒヤリとした感触にカグヤは思わず身を竦ませて足を震わせる。
ジャックは刃を縦にゆっくりと差し入れているため、肌が切れるということはないだろう。
だが、刃物が無防備な肌の間を潜り抜けていくという感触は少女に本能的な恐怖を与えるには十分だった。
ドスッ。
やがて、床に剣先が突き刺さるのを確認すると、ジャックは剣から手を放した。
「よし、これで最初の準備は終わりっと」
「準備だと…何を言っている!」
「そうギャーギャー騒ぐなって。すぐにわかるさ…すぐにな」
男の口調に不吉なものを感じるカグヤだが、拘束された状態ではどうしようもない。
瞬間、ジャックの姿が視界から消える。
背後に回ったのだろう、背中側からは何かを取り出すゴソゴソとした音が聞こえてきた。
(今度は何をするつもりだ…)
さっぱりわけがわからず、カグヤは疑問符を浮かべることしかできない。
次の刹那、頭の上に何かを乗せられる感覚を女剣士は知覚した。
ジャックは少女の頭を掴むようにして固定すると、乗せていた何かをかぶせていく。
「っ! 今度はなんだ!」
「騒ぐなって言ってるだろ。それにこれはお前さんのためでもあるんだぜ?」
「私のため…? どういうことだ!」
「ひっひ! 前を見てみればわかるぜ!」
「前……なっ、こ、これはっ…!?」
男に従い、前を向いたカグヤの驚愕の悲鳴が部屋に響き渡った。
そこにあったのは一台のテレビカメラだった。
いつの間にか置かれていたそれは無言でレンズをこちらに向けている。
その周りにはライトなどのいくつかの機材が置かれ、何人かの黒服が忙しそうに動き回っていた。
「どうやら気がついていなかったようだなぁ? ま、見ればわかると思うが、コイツはカメラさ。
そして今から始まるのは姉ちゃんのエロエロ撮影会だ!」
「な、なんだって…」
嬉しそうに語る男の言葉にカグヤは愕然とするしかなかった。
ジャックの言い方からして自分の淫らな映像を撮るつもりなのは間違いない。
しかし撮影会ということは、映したものを公開するということだ。
一体どこにその映像を映すつもりなのか。
想像を巡らせるカグヤに楽しそうなジャックの声が降りかかる。
「おっといい忘れていたな、ここはミリオンビルの中の一室さ」
「何…!?」
「知っての通り、このビルの外には巨大スクリーンが取り付けられている。いつもはニュースやらを映してるあれさ。
そしてこのカメラに映る映像はそこを電波ジャックして…ひひ、もうわかったよな?」
「な…何だと…っ」
「だからこれで顔を隠してやろうっていうのさ。まあ姉ちゃんが素顔で出演したいっていうんなら構わんが?」
その言葉にカグヤはぐっと唇を噛むことしかできない。
ミリオンビルは最も人通りの多い都市のど真ん中に立てられている建物だ。
今が何時かはわからないが、外に人がいるのは間違いない。
そんな中、裸で拘束されたままの素顔の映像が映し出されればカグヤの人生は終わったも同然。
二度と日のあたる場所を歩くことはできないだろう。
「ま、ちょっと小さいが我慢してくれや。なんせこれはお前のお友達のパンツだからな」
「っな…」
男の言葉にカグヤは目を見開く。
そして昨夜、ウィッチィがパンツを脱がされていた記憶が蘇ってくる。
今自分にかぶせられようとしているのはまさかそれだというのか。
下着で顔を隠されるなど屈辱にもほどがある。
しかもそれが仲間の下着だとは…
怒りから抗議をするカグヤだが、では素顔のままでいいんだな? と問われると返す言葉がない。
やがて、ふちの部分が鼻に引っ掛けられる。
感触からして恐らくは逆さまに下着を被らされるような格好になっているのだろう。
足を通す部分からは目が覗いているが、とりあえず素顔がバレる心配はなさそうだ。
カグヤはルナに心中で謝罪しつつ、自分のふがいなさに落ち込む。
「よし、後はマイクをつけてっと」
最後にジャックは超小型のマイクを口元に設置する。
これで微かな声ですら拾われてしまうことになり、女剣士は吐息すら迂闊に漏らせなくなった。
「これで下準備は終わりだな。んじゃ始めるか」
ジャックの合図と共に部屋の電気が消え、闇一色に染まる。
すぐさまライトの明かりがつき、カグヤだけを照らした。
闇の向こうからは無機質な透明の瞳が見えるだけ。
カグヤは唾を飲み込みながらも覚悟を決めた。
これから自分は辱めにあうのだろう。
しかし剣士として、怪盗トライアングルムーンとして情けない姿だけは晒すまい、と。
「それじゃあ、ポチッとな!」
そんな少女の決意を嘲笑うかのように、ジャックの手が何かのスイッチを押す。
刹那、機械の稼動音がカグヤの耳に届く。
「な、なんだ…足が……うああっ…」
ウイイーン、と機械質な音を立てて両の足受けが外へと開きだす。
カグヤは抵抗するべく必死に足へと力を込める。
しかし機械の力に勝てるはずもなく、徐々に、だが確実に足は開いていく。
硬く閉じられていた膝が拳大の大きさに開き、胸の谷間と股間の茂みが見え始める。
女剣士は顔を真っ赤にして足を震わせるが、僅かに開脚が遅れるだけ。
男たちの、そしてカメラの視線が容赦なく明らかにされていく少女の中心を捉えていく。
「やっ、やめ…見るな…っ」
毅然と言い放ったつもりだった。
だがその声は女々しく震え、まるでか弱い小動物を髣髴させるものでしかない。
眼光こそかろうじて強い意志の光を保っているものの、既に男たちにとって少女は生贄の雌にすぎなかった。
「ほ〜れ見えちまうぞ〜」
「く、くそっ…うああっ……あっ!」
抵抗むなしく、ついにカグヤの両足は大きく開脚を果たしてしまう。
百五十度ほどに開かれた両足の間からは少女の裸体が惜しげもなく公開される。
太ももの圧迫から解き放たれた乳房がたぷんっと大きく弾む。
贅肉のまるでない腹筋はうっすらと汗をまとわせながら力みにぷるぷると震えている。
その下にある女性自身はピッタリとその入り口を閉じているが、外気にさらされ、怯える様にわななく。
背もたれに背を預け、全身が後ろに傾いているため、お尻の割れ目にある最も恥ずかしい穴がチラチラと覗いていた。
ただ、突き刺された愛刀がその身を張って股間を正面からの視線。
つまりカメラの視線から遮っているのがせめてもの救いだった。
「おおーご開帳!」
「あ、は、ああああっ!」
「ひひひっ、良い悲鳴だ! それにこの身体! 昨日は服を切り裂くのに夢中でよく見てなかったが、ものすげえじゃねえか!」
「いっ、嫌だ。見るな、見るんじゃない!」
いかに覚悟をしようとも、潔癖な乙女にとって裸を見られるという現実は耐え切れるものではなかった。
少しでも男たちの視線から逃れようと右へ左へと身体をよじる。
しかし、拘束台に縛り付けられた状態では精々台をギシギシと鳴らすことしかできない。
むしろ暴れることによってたわわに実っている二つの果実がぶるんぶるんと揺れ動き、男たちの目を楽しませている始末だった。
「いいぜいいぜ! いきなり良い映像を撮らせてくれやがる。外の奴等も今頃は姉ちゃんの裸に生唾ごっくんしてるだろうぜ!」
「な…ぁ…!?」
ジャックの言葉にカグヤは今の自分の格好がこの場の人間以外にも晒されていることを思い出さされる。
男の言が正しければ、自分の身体はあますところなく通りすがりの一般人に見られているかもしれないのだ。
顔こそ仲間の下着によってなんとか隠されてはいるものの、一人の女性としてこれほどの恥はない。
(お、落ち着け…たかが裸を見られたくらいで動揺してどうする…! ここでみっともない態度をとればこいつらの思う壺だ…!)
弱気を見せるわけにはいかない。
その一念だけでカグヤは羞恥心による震えを強引に押しとどめる。
だが、それが虚勢であることは見るものには明らかだった。
ジャックが鈍く輝く円月刀を近づけるのを見て、女剣士の瞳に怯えがはっきりと宿る。
「そんなにビビらなくても傷をつけたりはしねえよ。もっとも、あんまり動くようだとわからんけどなぁ?」
「くぅ…!」
「さぁて、まずはそのでっかい乳を弄るとするか」
刃物の腹の部分が少女の下乳へと触れる。
ジャックはそのまま乳房を持ち上げるとたぷたぷと豊かな乳肉を上下に弾ませていく。
男の手が上下するたびにゴムマリのようなバストがお手玉のように空へと放り出されては重力によって落下する。
「や、やめろっ…! 人の身体で、遊ぶな…っ」
「何言ってるんだ。こんな見事な乳を弄るなってほうが無理な相談だぜ!」
刃物使いの男は刃を滑らせると横乳、上乳と少女の巨乳を満遍なく弄っていく。
だが、金属の冷たい感触は決してその頂点には触れようとはしなかった。
背筋に走る身体を弄り回されるおぞましさ。
刃物によって女性の象徴に触れられる恐怖。
そして胸の奥に無意識のレベルで微かに灯るむずがゆいようなもどかしさ。
カグヤはふるふると頭を振ってそれらを追い出そうとする。
「ひひっ、乳首、触ってほしいか?」
「なっ…バカなことを言うな!」
「我慢するなって。そうかそうか、そんなに触ってほしいか。それなら仕方ないな、リクエストに応えないとな」
「だ、だから違うと……んぁっ」
ぴくんっ!
かすめるようにして桜色のつぼみに触れた刃物の感触にカグヤはおとがいを上げる。
と同時に集音マイクが少女の微細な喘ぎを拾う。
「お、そんなに気持ちよかったのか?」
「ち、違う。そんなことはな……うっ、くっ…んはっ…」
刃が胸の頂点が交差するたびに女剣士の唇から切なそうな声がこぼれ出る。
普通ならば聞こえない程度の大きさの声だが、高性能の集音マイクはそれを逃さない。
鈴の鳴るような少女の喘ぎがマイクによって増幅され、男たちの耳へと鮮明に届いていく。
「ひっひひ…お? 見ろよ、姉ちゃんの乳首がおっ勃ってきたぜ!」
「なっ…何をバカなことを……あっ、嘘だ、そんな…っ!?」
男の嬲りなどに自分の身体が反応するはずがない。
そう一笑して胸を見下ろしたカグヤの目がこれ以上ないほど見開かれた。
刃先でちょんちょんと弄られている乳首は、明らかにその大きさと姿を変え始めていたのだ。
巨大な肉の大地に埋もれていたはずの実はムクムクと育ち、誇らしげに上向いてその存在を主張していくのが見て取れる。
少女は自分の肉体の思わぬ裏切りに呆然とするほかなかった。
だが、それも少しの間のことでしかない。
数瞬後、抑えようのない恥辱が女剣士を襲う。
男の、カメラの前で肌を晒しているだけでも屈辱なのだ。
だというのに、この上勃起した乳首を彼らに披露するなど恥にもほどがある。
例えそれが生理的反応による仕方のないものであるとしても何の慰めにもならない。
男の手によって感じさせられた。
その事実だけがカグヤの心の刃にヒビを刻んでいく。
「ひひっ、それじゃあそろそろ皆お待ちかねの部分に行くとするかね」
「な、何?」
動揺からジャックの言葉を聞き逃したカグヤは不安気な声を上げる。
だが刃物使いの男は容赦なく少女に追い討ちをかけるべく動き出した。
片手は乳首を弄るままに、もう片方の手を女剣士の前に刺さっている剣へと伸ばしていく。
「っ!? 何を…何をする気だ!」
「なぁに、これを使ってお前さんのアソコを弄ってやろうって思ってるだけさ」
「な! なん、だと…!?」
ジャックの発案にカグヤは心臓が止まったかのような衝撃を受ける。
今まで数々の戦場を共に潜り抜けてきた愛用の武器。
その自身の片割れとも言うべき剣で忌むべき女としての部分を弄られる。
その残酷にして外道の所業に対し、女剣士は怒気を露わに叫んだ。
「ふ…ふざけるな! そんな…そんなこと、許さないっ!」
「そんな興奮するなって。どうせ夜な夜なやってんだろ? これを使ったオナニーとかよ」
「っっっ!! 私を…侮辱するかっ!!」
「そんなあからさまな反応だとバレバレだぜ? いいから落ち着けって、そんな暴れるとアソコが丸見えになるぜ?」
「うっ…!?」
男の注意にハッとなったカグヤは咄嗟に怒りによって突き動かされた身体の動きを止めた。
いくら隠されているといっても剣の幅は僅か数センチでしかない。
かろうじて縦筋が隠れているという程度で、実際のところは防壁の役割をほとんど果たしていないのだ。
それゆえに少しでも腰が動けば、それだけで足の付け根が丸見えになってしまう。
後ろから覗き込んでいるジャックには既に見えてしまっているだろう。
だが、カメラに、ひいてはこの映像を見ているであろう赤の他人にその部分を見られるわけにはいかない。
マグマのように煮立っていた激情が羞恥心によって沈静化されていくことにカグヤは歯噛みをすることしかできなかった。
経緯はどうあれ一旦落ち着いた心も、床から抜きさられた愛刀によって再びざわめきを取り戻すことになる。
つい昨日までは己の手に握られていたはずの剣が、他人の手によって握られ股間に押し付けられていく。
その現実にカグヤの心は狼狽するしかない。
ヒヤリとした硬い感触が、もっとも敏感な部分に押し当てられる。
腹の部分を当てられているとはいえ、下手に動けば女性器を傷つけられてしまうかもしれない。
その女性としての本能的な恐怖がカグヤの身体を金縛りにかける。
「う、ううっ…」
「そうそう、大人しくしていればちゃんと気持ちよくしてやるって」
しゅっ…しゅっ…
男の手に連動して少女の愛刀が主人の性器をこする。
時折、割れ目の上にある黒い茂みが刃に触れてかさっと揺れ動く。
なめらかな金属の感覚にカグヤはくすぐったさを感じつつも、ぎゅっと目を閉じて無反応を続けた。
剣士としての誇りにかけて、何があってもこの行為にだけは反応するわけにはいかない。
その頑なな意思が肉体にも通じたのか、カグヤは一分を超えても吐息一つ漏らすことなく責めに耐え続ける。
「ほー、頑張るねぇ」
「これ以上やっても無駄だ。私は決して貴様らには屈しない…!」
「感心感心、この状況でそこまでいえるのは虚勢といえどもすげえな。ふむ、こりゃどうしたもんかね」
弱った、とばかりに溜息をつくジャックにカグヤは勝ち誇った表情を向ける。
こうして耐え続けてさえいればきっと仲間たちが助けに来てくれるに違いない。
そうなれば、この男たちも一網打尽だ。
一時は折れかけていた心が持ち直し、女剣士の強靭な意思がキッとカメラを睨み付ける。
ほぼフルヌードで足をおっぴろげているにもかかわらず、諦めを浮かべないその姿は美しかった。
色欲を浮かべて撮影していた男たちも思わずその眼光にひるみ、我知らず冷や汗を浮かべる。
(やれやれ、調子に乗らせちまったなぁ)
しかしジャックはそれを見ても慌てることはなかった。
ここまでは想定の範囲内でしかない。
責めを耐える理性は確かに驚嘆に値する。
だが、ここまでは小手調べにしか過ぎない。
恥辱の撮影はここからが本番なのだから。
(ひひっ、余裕をかましてるようだが、コイツも耐えられるかな?)
ジャックはポケットの中のソレを握り締め、ニヤリと笑う。
この気高い女が快楽に狂う姿はどんなものなのだろうか。
そしてそれを耐えようとする苦悶の表情はどんなに自分を興奮させてくれるのか。
刃物使いの男は気丈に恥辱を耐え続ける少女を見下ろし、ゆっくりと手を引き抜いた。