(う、嘘だ…)
自分の股間から流れる液体を目に映しながらカグヤは現実を否定するように瞬きを繰り返す。
だが何度目を閉じても開いた視界の先には床にぽたりぽたりと落ちる雫が見える。
汗でもなく、小水でもない。
剣術一筋に生きてきたとはいえ、カグヤも年頃の女性。
当然女性が性的な快感を得たときに起こしてしまう反応が知識として頭の中にある。
いや、正確に言えば少女はそれを実体験として何度か見たことがあった。
普段からストイックで潔癖な気性だと周囲から思われているカグヤだが、実のところ彼女には自慰の経験があった。
彼女の通っている学校は厳格な女子校であり、風紀を乱すような淫らな会話はありえない。
…というのは所詮外からみた思い込みであり、実際は両家の子女が通う女子校といえどその手の会話はある。
勿論高潔なカグヤはそれを注意することはあれども進んで参加するということはない。
しかし、如何に男に興味がなく、嫌悪を抱いているといっても性的なこと全てを否定しているわけではないのも確か。
クラスメートらが話しているあられもない会話は脳に記憶されるわけで、知識が実行に移されるのも自然なことで。
とりわけ、自慰は別段男がいなくてもできるというのがカグヤにとっては魅力的だった。
といっても自慰はあくまでストレス発散の手段の一つであり、快楽に溺れるためのものではない。
少なくともカグヤ本人は頑なにそう信じていた、昔も、今も。
「おお、でっかくなってきたぜ。このオモチャはな、女のエロい汁を吸うとでかくなる。つまり…」
「あっくぁっ…っくぁぅ!」
「責める場所も感じれば感じるほど広がっていくわけだ。ひゃっひゃ」
ジャックの言うとおり股間に張り付いているピンク色の物体は徐々にその身を大きく膨らませていた。
親指大ほどだったそれは今では振動と吸引に震える柔肉全体を覆いつくそうとしている。
だがそれはカグヤが女として感じているという証拠に他ならない。
嘘だと断ずることは簡単だが、実際に愛液をちゅうちゅうと吸って大きくなる物体を前にそんな言葉は強がりにすらならない。
(と、止まれ! 止ま…あふっ…れぇっ)
全身全霊で下半身に力を込めてもれ出る淫らな液体をせきとめようとするカグヤ。
だが一度開いた扉は閉まる気配を見せず、その奥の泉はこんこんと液体を湧かせ続ける。
己の意に従わない身体に恨みを吐くも、状況はどうしようもなかった。
――と。
「はぅんっ」
一際甲高い声が整った口元から発せられる。
それは今までで一番官能を帯びた声音であり、発した本人ですら明確にそれが理解できた。
慌ててカグヤは口を閉じるが、発してしまった声は取り戻せない。
歓声を上げる男たちを無視し、囚われの少女は動揺の中、原因を把握した。
肥大化を続けていたローター生物がついに秘裂上部にある小さな蕾に辿り着いてしまったのだ。
「あ、あああぅあっ!」
ブルブルブル…ッ
細かな振動と吸引が肉の鞘に隠れた恥粒を責め立てる。
健気にも中身を守っていた包皮も二重の責めにかかってはなす術もなく陥落するしかない。
あっという間に身を剥き出しにされたクリトリスは容赦なく生体ローターによって辱められてしまう。
「はっ…あ! くあっ! ふはっ! はぁっ!」
最も敏感な部分を責め立てられ、カグヤはイヤイヤをしながら悲鳴をあげた。
拘束された女体は熱に蕩かされ、汗の入り混じったほのかな匂いを発しながら桜色に染まっていく。
辛うじてつりあがったままの目は力を保ってはいるものの、それすらも何時まで持つかは分からない有様だ。
「ひひっ、ヌレヌレじゃねえか…」
「ああっ、や、やめろぉっ!」
股間からこぼれる恥ずかしい液体を受け止めるように差し出された愛刀にカグヤは悔しさを覚える他ない。
既にお漏らしと見間違わんばかりに吹き零れていた愛液は身体の意思に反して曇り一つなかった刀身を汚していく。
分身ともいえる愛刀が無残に汚れていく光景は正に絶望を覚える光景だった。
ましてや、愛刀を汚しているのが自らの淫らな反応の成果だというのだからやるせない。
「まだイカねえか。なかなか頑張るじゃねえか」
「こっ…の程度、ぁ! で…」
「んじゃ数を増やしてみるか」
「な!? 増やすって…くはあぁッ!?」
快感に流されつつある肉体を叱咤しながらも気丈な意思を保っていた少女にジャックは更なる生体機械を投入する。
双乳の先端に一つずつ、同じ型のローターを取り付けたのだ。
「よ、よせ! これをはず…ひっ、ひぁぁっ!」
一ヶ所だけだった責めが一気に三ヶ所に増える。
今までの三倍、いや相乗効果によってそれ以上の刺激がカグヤを襲う。
胸から愛液が漏れることはないのでローターが肥大化することはないが、取り付いているのはツンと尖った先端である。
既に勃起していた二つの乳頭は硬化したその身をほぐされるように振動と吸引のマッサージを加えられ、歓喜に震えていく。
胸から突き出された豊かな果実が振動によってぶるぶると上下左右にたわみ揺れ、男たちの目を楽しませる。
これにはたまらずカグヤは身体を捩るが当然どのローターも取れることはない。
(こ、こんな…こんなことが…あっ! だ、ダメだ…これ以上は…ッ)
「ほれほれ、素直になれって。一言気持ちいいっていえば今の苦しみから解放されるんだぜ?」
「ぐ……うっ、い、嫌だ…はっ! はっ! はぁっ!」
例え肉体が屈しても精神だけは屈しない。
最早カグヤにできることはそれだけだった。
反射的に漏れそうな喘ぎを唇を噛み締めて我慢する黒髪の少女剣士。
だが、いかに剣術で鍛えた精神力といえども限界は目に見えて間近。
そしてその臨界点を見極めていたジャックはカグヤの耳元へそっと囁いた。
「なあ、耐え続けるのもいいんだけどな。あんまり意地を張り続けられても俺らとしては困るわけよ? わかるぅ?」
「な…にが、はぅ! いい、たい…」
「なぁに、簡単なことさ。あと十秒以内に素直にならないと…コレ、とっちまうぜ?」
ちょんちょん、とつつかれたのはカグヤの素顔を覆うルナの下着だった。
途端に少女の顔色が青ざめる。
それを取られるということは素顔を晒すということだ。
既に目の前の男たちには見られている顔だが、今はこの状況が街頭スクリーンに映し出されている。
つまり、見ず知らずの――あるいは知り合いに満井カグヤを認識されてしまう。
「ば、馬鹿なことはやめろっ! そんなこと…んあっ! はぅ!」
「いーち、にーい、さーん」
これまでで最も狼狽の色を示したカグヤの制止を無視してカウントが進んでいく。
スクリーンの制御はアルテが制圧しているためここで素顔を晒されたところで被害の拡大はない。
しかしそれを知らない少女からすればそのカウントは破滅へのカウントだった。
数字が進むたびにクイックイッと掴まれている薄布の端がめくられる。
その下から覗くのは快感に蕩かされかけている一人の少女の素顔。
「ろーく、なーな、はーち」
迷っている暇は与えられない。
既にカウントは残り二秒。
瞬間、カグヤの頭によぎったのは悪魔の囁きだった。
このまま顔を晒されるのだけは避けなければならない。
どうせ嘘なのだ、それくらいいいではないか――仲間たちに迷惑をかけないためにも。
「きゅーう、じゅ――」
「き、気持ちいいっ! 気持ちいいんだっ!」
ピタリ。
その絶叫のような声とともにジャックの指とカウントが止まる。
だが刃物使いの男はニヤニヤと笑うだけで摘んだ布を放そうとはしない。
男の目は言っていた。
もっとちゃんと言え、と。
「う…ぁ、アソコがっ、股間が切なくてっ! 胸をぶるぶる揺らされると切なくて、たまらない…んぅっ」
「ほほぅ? つまり姉ちゃんは自分が淫乱なメス犬だと認めるんだな?」
「メス…っ! くんっ、み、認めるっ! わ、私は…メス、犬……アアアアッ!」
敗北の言葉を発した少女の身体の反応が見違えるようにいやらしさを帯び始める。
具体的な言葉を発することによって精神的なタガが外れたのか、唯一抵抗の気配を見せていた瞳の光もがうっすらと霞がかっていく。
(わ、私はなんという破廉恥なことを…だが、仕方がなかった、これはやむをえないことだったんだ…!)
頭に浮かぶのは二人の仲間の顔だった。
そう、ここで自分の顔を晒せば彼女たちに迷惑がかかる。
だから仕方なかったのだ。
決して、自分の本心からの言葉ではない、自分はそんな淫乱な女ではないのだから。
「ひひひっ! とうとう本性を表しやがったなこの淫乱女っ!」
「ち、がう…私は、はぁんっ! 淫乱などでは…お前が…っ」
「確かにせかしたのは俺様だけどよ、言ったのは姉ちゃんだぜ? それに俺がいえって言ったのはたったの五文字だしなぁ?」
「そっ、それは…っ!」
追求の声に言葉が詰まる。
態度がそう言わせようとしていた、それは間違いないことだ。
だが、本当に言う必要はあったのか?
ただの勘違いで、自分の本心が出ただけではなかったのか?
これ以上今の状態が続けば与えられる快楽に耐え切れなくなるという怯えを覚えていたからではないのか?
違う、と理性が訴えかける。
しかしその裏で快楽に溺れかけているのを認めている自分がいる。
「違う違う違う違う! 私は、私はっ……んはぁぁぁっ!?」
悦楽に押しつぶされかけようとしている心を叱咤するように否定の言葉をカグヤは吐き続ける。
が、とめどなくローターから伝わる振動と吸引の力に堪らずおとがいをあげてしまう。
「うぁはぁっ…つ、強いぃっ…! 外せっ、止めろっ! 約束はどうした…ぁあっ!」
刺激をなんとか受け流そうと拘束台の上で暴れまわるカグヤ。
一向にローターの動きは止まる気配を見せない。
冷静に考えれば男が約束を守ることに期待すること自体が愚かしいともいえる。
だが、追い詰められていた少女にとってそれは重大な裏切りだった。
しかしことの張本人である刃物使いの男はまるで悪びれた様子を見せない。
むしろ心外だとばかりに首をすくめ、端的に言い放つ。
「おいおい、忘れたのか? 俺様は『今の状態をやめてやる』って言ったんだ。一言も取ってやるとも止めてやるとも言ってねぇぜ?」
「なっ…」
「ちゃんと約束は守るから安心しな。今から全開でいくぜ!」
「え…ま、待てぇっ! それは――ッ!? クハァァァ――ッ!」
男の合図と同時にローターの振動と吸引の強さが一気に跳ね上がった。
今までは手加減していたのだとばかりに暴力的に責めたててくる淫欲の道具に四肢をガクガクと震わせることしかできない。
自分で行う拙い性行為とは比べ物にならない快楽の強襲に剣術少女はなす術もなかった。
「くぁっ、はっ、激しすぎるぅっ! こんらっ、耐えられっ…はひっ!?」
ついに呂律すら回らなくなったカグヤは無意識に腰をゆっくりと動かし始める。
円を描くようなその動きは快感を逃がそうというものではない。
むしろ、より強い刺激を求め、餓えを訴えるような仕草だった。
「あっ、うっ、あっ…だ、駄目らぁっ! これ以上は、もう、もう…」
「お、限界か? 遠慮することはないぜ、思いっきりイッしまえよっ!」
「い、嫌…っ、そんなの…そんなのぉぉぉっ!!」
胸と股間から生み出される快感が一点に収束し、破裂しようとしている。
カグヤはその感覚の果てに何が訪れるのかを知っていた。
それは、それだけはいけない。
それを受け入れるということは自分の体が決定的な敗北を迎えるということなのだから。
だが、歯を食いしばって限界を引き伸ばそうとする剣術少女を一顧だにすることなく
ジャックはトドメとばかりに手に持っていた刀を軽く振り下ろした。
とんっ…
「――っ」
恥液にまみれた愛刀が自分の股間に振り下ろされる瞬間をカグヤはスローモーションのように感じていた。
そして、刀身とローターが接触した瞬間。
硬くて、柔らかくて、ぬるぬるとした何かが割れ目を押し開いて侵入したのを自覚した刹那。
少女の視界は閃光によって覆いつくされた。
「はっ……あああッ!! あっあっ! うぁあ〜〜〜ッ!!」
ビクン! ビクビクッ、ビクンッ!
壊れたようにM字開脚の女体が数度痙攣しながら跳ねる。
ハッキリと見てとれる絶頂の歓喜。
それはカグヤの身体が快楽に完全に敗北したという証だった。
「あッ…! はぁっ! ……はぁ…ぁ…」
たっぷり数十秒の絶頂を経て、カグヤはガックリと頭を落とした。
天井を向いていた視線は壊れた人形のようにガクンと下に落ち、垂れた黒髪が少女の表情を覆い隠す。
快楽の大波が引いていくにつれ、徐々に意識が現実へと戻っていく。
オーガズムに達してしまったというその事実が高潔な女剣士を打ちのめし、反抗の気力を根こそぎ奪い去ろうとジワジワと侵食を始める。
しかし、それすらも待たずに次の波は襲い掛かった。
「…うあっ!? ひっ、ま、まだぁっ!?」
うなだれていた美人顔が勢いよく跳ね上がる。
汗を吸収し、ベッタリと張り付いた下着覆面の下でカグヤの顔が困惑に染まった。
未だ恥場所に張り付いているローターたちは快楽の極みを引きずり出しておきながらその動きを止めてはいなかったのだ。
休ませる暇など与えるものかとばかりに振動と吸引が絶頂直後の女体を襲う。
終わりだと思っていた刺激が再び大波となって襲い掛かってくる感覚に剣術少女はあっけなく敗北。
あっという間に二度目の絶頂を極めさせられてしまう。
「あっ…ふはっ、んはぅあぁああぁぁ……!」
再度黒髪を振り乱しながら少女の身体が踊る。
しかしそれでもピンク色の淫具は更に女体から性感を引きずり出そうと動きを止めようとはしない。
「はっ…くはぁっ! もう、止めてくれぇっ! お、おかしくなるぅっ!」
「別にこっちはそれでも一向に構わねぇんだよ。もうどうせなんだからいっそ楽しもうぜ、な?」
「ひいぃっ! いっ、いやだぁっ! そん…ああぁぁあああっ!? はっ、外してっ…ひはあっ!」
「お、またイッたか。しっかしこりゃこっちも拷問だなぁ、これで挿れるなって酷すぎだろ」
なあ? と周囲の男たちに振られたジャックの問いは全員一致で肯定された。
快楽に乱れる全裸の美少女を前にして見ているだけというのは拷問にも程がある。
中には、ズボンをおろして自慰を始める者すらいる始末だ。
外の市民たちにこの光景を公開できないのが残念で仕方がない。
そんなことを思いながらジャックは今もなおも与えられる快楽に踊らされる少女へと視線を向けた。
「ひっ…く! んひぁぁぁ…くはっ!」
「おうおう気持ちよさそうな顔をしちゃってまあ…もうこれ役にたたねえな。取るぞ」
汗で透け、既に顔を隠す役目をほとんど果たしていなかった純白の下着をジャックは剥ぎ取る。
艶のある黒髪とともにトライアングルムーン・ブレイドの素顔が露わにされた。
しかし素顔を晒されたカグヤの表情には既に反抗の色も動揺の気配もなく
そこにはただ、快楽に抵抗できずに押し流されるだけでありながら、それでもなお性欲を拒否する一人の少女の姿があるだけだった。