膝に腰掛ける比良坂の重みと温もりに俺は静かに感動していた。
風祭のくしゃみだろうが、九角の高笑いのお陰であろうが、あの雪崩に感謝したい気分だ。
比良坂の彫りの深い横顔が炎に照らし出される。先程から彼女は俺の顔を指でなぞっている。
「これが、龍斗の……」細い指が俺の唇に触れ、顎から咽喉へと滑っていく。
着物の前が開かれ、彼女の手が下帯に落ちる。情けないことに俺は硬直していた。
修行に明け暮れ、江戸に出てきたものの妙な戦いに巻き込まれ、折角行った吉原では亡者を掴
まされた俺に女を知る機会はなかった。
「そう、初めてなの……心配しないで」自然な手付きで比良坂が俺の着物を剥ぎ取る。
唇が押し付けられ、歯の間から生暖かいものが挿し入れられ、生き物のように俺の口腔で動いた。
耳たぶが噛まれ、彼女の唇が首筋を吸う間も彼女の手は休みなく、俺を擦り続けている。
「一度、出して。その方が長く保つわ」その言葉の終わらないうちに、俺は精を放っていた。
「素直ね」比良坂は微笑むと、服を脱いだ。上向きに突き上げられた乳首と炎に映えて輝く栗色の
茂みに俺の手が自然に動いた。汗ばんだ掌に柔らかい肌が吸い付いてくる。不意に彼女の両腕が俺
の首の後ろに回され、押し倒された。唇を貪りながら、尖った両乳首が俺の胸をくすぐる。彼女の
体を撫で回していた俺の右手が掴まれ、彼女の茂みの奥に導かれる。人差し指が熱い花弁を掻き分
ける。俺の上で比良坂の体が跳ね上がった。指にねっとりとした液体が絡みつく。
「来て……」比良坂は硬くなった俺自身の根元に手を添えると浮かせた腰を落とした。
入り口は拒むかのように抵抗したが、内部は熱く潤み、逆に逃がすまいとするかのように締め付け
てきた。俺は狂ったように下から彼女を突き上げ、彼女は円を描くように腰をくねらせた。彼女は
片手で自分の胸を揉みしごき、もう一方の手は花芯を刺激しつづけている。彼女が幾度も締め上げ、
湧き起こる衝動に耐え切れず、俺は彼女の尻を掴み、中に放った。
比良坂の指が汗で張り付いた俺の前髪をかきあげる。「龍斗……つかまえた」
覆い被さる彼女の肩を抱きながら、何となく俺は不安なものを感じていた……。