日が落ちるのが早くなってきている。窓から差しこむ西日に龍麻は秋の訪れを感じた。
生徒会室は会長の性格を反映してか整然としていた。龍麻は引継ぎの前に片付けておきたいという葵
を手伝い、不要な資料を箱に詰めていた。他の役員は部活だの予備校だのと忙しいらしい。
そう言えば、この学校は進学校なんだろうかと今更のように考えてみる。京一と醍醐はやっぱり
スポーツ推薦で入学したんだよな……いや、中学時代の醍醐って内申点低そうだし、佐久間もい
るしこんな馬鹿ばっかりの学校で才女って言ってもたかが知れ……と危険な事を考えかけてやめた。
設定厨みたいな考えを振り払おうと葛藤する龍麻は葵の何気ない声で我に帰った。
「あら、時計が……」
つられて見上げた壁掛け時計は止まっていた。
「電池が切れたみたいね」
葵は部屋の片隅に立て掛けていた脚立を据え、歩み寄った龍麻を制して登り始める。
「平気よ。押さえていて」
白いスカートが目の前で翻る。龍麻は無言でそれを見守った。黒いストッキングに包まれた足が脚立を
登って行く。龍麻は黒ストッキングフェチではないが、その妖しさは認めている。
タイツでは分厚すぎて立体感が充分に出ない。肌の色がやや透けて見える程度の濃さのストッキングが
望ましい。白いスカートからすらりと伸びた太腿が淡い黒に包まれ、光が当たる部分だけ透けている。
膝の後ろの窪みも黒ストッキングに包まれて陰影を増す。ふくらはぎは弓形の曲線を描き、引き締まっ
た足首を引き立てている。(如何に太い足の持ち主も黒ストッキングを用いれば相対的に細い足首を手
に入れられるというのは足首フェチには公然の秘密だ)
「埃がすごいわ」
葵の言葉に何気なく顔を上げた龍麻はスカートの中身に釘付けになった。脚部より濃い黒に包まれた丸
みとそれを縦に分ける黒いライン。その下に透けているショーツは光沢のある白だ。細かな模様のレー
スが浮き上がっている。
「電池は・・・・・・きゃ」
バランスを崩しかけた葵の腰を下から両手で掴んだ。葵が龍麻の首に抱きつき、二人は床に倒れた。
「ごめんなさい。大丈夫?」
頷く龍麻の胸に葵が頬を押し付ける。
「初めて会った時から、何故だか判らないけど惹かれていたの・・・・・・」
龍麻は前が張っていることを隠すために慌てて腰を引いた。高校三年生、多感な年頃である。修学旅
行でマリア先生の入浴姿を拝んだ夜は京一とは別の階のトイレに篭って励んだものだ。
「いいのよ・・・・・・」
龍麻の我慢は限界に達した。彼女を抱き上げると部屋の隅の長机に押し倒す。セーラー服が捲れあがり、
白いブラジャーが露になる。ぎこちない手付きでブラジャーの上から胸を揉むと、葵は両手で顔を覆った。
スカートを捲り、黒ストッキングに手を掛ける。透けて見える臍とふんだんにレースのあしらわれたショ
ーツのコントラストが際立つ。ハイウェストの黒ストッキングは手強かった。
「嫌、恥ずかしい」
葵が身を捩じらせたが、容易に脱がせるためだとは龍麻には知る由もない。辛うじて膝まで下ろすと両
脚を抱え上げる。いつの間にか上履きを脱いだ足が宙を泳ぐ。曲げられた爪先は妙に扇情的だ。
葵が龍麻の首に腕を絡め、唇を求めた。龍麻は慌ただしくベルトを外しながら片手で葵の体をまさぐる。
彼女の服を脱がせる余裕などなく、乱暴にブラジャーを押し上げる。ワイヤーで押し潰された乳房を掴み、
揉むと、葵が眉に皺を寄せた。
「お願い、優しくして・・・・・・私、こわいの……」
そのしおらしい声に龍麻は感動した。生憎とよくある台詞と分析できるほどの経験は持ち合わせていない。
龍麻の胸に葵が額を擦りつける。
「あの、来て……」
龍麻の頭が真っ白になった。黒ストッキングで拘束された葵の脚を掴み、足首を肩に担ぐ。剥き出しの太腿
の白さが目に眩しい。彼女の中は熱く、蕩けそうだった。
クリスマスイブ。龍麻のポケットにはティファニーのオープンハートがあった(古ッ)。制服姿の葵が待ち
合わせ場所に現れる。嬉しそうに手を振る龍麻から彼女は目を逸らせた。
「ごめんなさい。いいお友達でいましょう」
「お、俺達付き合ってたんじゃないの?!」
愕然とする龍麻に葵がにっこりと微笑む。
「高校生の付き合いは告白がないと始まらないのよ」
「じゃ、改めて、付き合って欲しい」
「……龍麻はあの時マリア先生を助けに行ったでしょう。うふふ」
笑い声だけを残して彼女は去った。
灰になった龍麻の肩を京一が叩く。
「へへへっ。残念だったな。ラーメンでも食って帰ろうぜ」
ラーメン屋に連行される龍麻の脳裏によぎるのは野郎からの告白オンパレードになる悪夢のような卒業式の
予感だった……。