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オレの名はメフィスト。マリィたんを主とする世界で最も幸せな猫だ、過去にはおぎんという幸せな猫
もいたらしいがな。そんなことより、今日オレはドルバッキーとなって緋勇とやらの秘密を暴くために
真神学園にやって来た。霊研の裏密とは話がついている。オレのヒゲ三本と引き換えに30分だけ人間語
を話せるようになる薬をもらうのだ。鬼道書には熊と話せる術も載っていたと裏密は残念がっていたが
オレには関係ない。
オレの口をこじ開け、裏密が錠剤をほりこむ。オレはしないが、馬鹿な猫だと薬を呑む時に人間の手を
噛んでしまう。爪に穴が開くから皆気を付けろよ。
さて、緋勇が来たようだ。
「やい、緋勇!この女誑しのロリコンの変態野郎!!」
「うわっ!」
オレは滑らかに動く自分の舌に驚いた。同じく驚いた緋勇が裏密と何やら話している。
「う〜ふ〜ふ〜、判ったわ〜席を外してあげる〜。その代わり、後で採血させてね〜」
影のように裏密が去った。血と引き換えに秘密を守ったか。……一滴残らず採られるぞ。
「緋勇、明日は葵は模試、両親は外出……そんなところに来てマリィたんに何をする気だ?」
奴が口の端を上げる。あ、黒い黄龍の器の予感……って矛盾してるな。
「俺が何かするわけじゃないぞ。マリィが、アロママッサージをしてくれるって」
「アロママッサージ?・・・・・・何だそりゃ?」
緋勇の手がオレの頭に触れる。
「こう、香料を塗った手で全身をマッサージするんだ。リラックス効果があるらしい」
オレの鼻がひくつく。前足がよろめいた。こ、この香りは……。
「市販品じゃない野生のマタタビだ。ライオンにも効くぞ」
緋勇の手がオレの耳の後ろを擦り、指の先で首根っこをくすぐる。オレの咽喉が鳴る。口が半開きに
なってしまう。よ、よだれが・・・・・・。

「この・・・・・・卑怯者」
「まだ、そんな口が叩けるか。ここならどうだ?」
オレの咽喉を撫でていた手が背骨に沿って這わされる。奴が腰の付け根を押さえつけるように撫で始め
た。オレの前足は前に投げ出され、腰が持ち上がる。あ、オレの恥ずかしい所が露に……っていつもか。
「ほらほら、身体は正直だなー」
緋勇の手から棒切れが投げ出される。魯班尺?違った、マタタビの小枝だ。オレはそれにむしゃぶりつ
いた。前足で抱えて口に咥え、腹を見せてのた打ち回った。
緋勇がオレの前足を掴む。親指の腹で肉球を押し、指の間を広げられ、オレはニギニギと前足を丸めた。
普段は仕舞っている爪が出し入れされるが、尻尾の先まで走る快楽に酔ったオレに抵抗の術はなかった。
どれくらいの時間が経ったのだろう。唐突にオレは醒めた。緋勇はニヤニヤ笑いを浮かべながら見下ろ
している。裏密が眼鏡を持ち上げてオレの目を覗き込んだ。この……!
「にゃにゃにゃ・・・・・・!?」
「どうだった〜?」
こうなったら、最後の手段。オレはインク壺に手を突っ込み、紙に前足を叩きつけた。
足跡がオレの無念を訴える筈だ。裏密が読み上げる。
「助けて助けてトラ」
・・・・・・オレは雨降りサーカスなんかに逝く気はねー。スレ違いなオチにオレの目の前が暗くなった。