葵さんは悩んでいた。
とてもとても悩んでいた。
可愛い妹が何か自分に隠し事をしている。
なんでも相談してくれていると思っていたのに。
自分は頼りない姉なのだろうか。
「ふぅ……」
ため息を一つ吐く。
マリィが龍麻のアパートに遊びに行くと言って出かけたのが先週の日曜日。
その夜、帰ってきたマリィはあきらかに朝とは違っていた。
どこか嬉しそうで、なにか恥ずかしそうで、そして葵の顔を見ると何故か
申し訳なさそうな顔をする。
まさか龍麻の部屋でなにかあったのだろうか。
いやいや、そんなはずはない。たぶん。きっと。おそらく。
しかし龍麻の守備範囲はとてつもなく広い。ロリコン趣味だという話は聞いた
ことがないが、そうではないという話も聞いたことはない。
それにマリィだって中学生だ。それなりに出るところは出てきてるし徐々にで
はあるが『女』の身体へと変わってきている。
もちろんまだ幼さを残してはいるが、ひょっとしたらそういうところが逆に
そそるのかもしれない。
現に自分だって一緒にお風呂に入っているときにマリィのツルツルのお肌に
思わずジュルリと……いや、なんでもない。
ひょっとしたら。ひょっとしたら龍麻とそういう関係になったのだろうか。
そんな、マリィはまだ中学生だ。
龍麻が嫌がる中学生を無理矢理てごめにするような真似は決してしまい。
でも同意の上だったら?
マリィが龍麻を好いているのは誰の目に見ても明らかだ。
それが男として好きなのかお兄ちゃんとして好きなのかは微妙だが、いずれに
せよ龍麻が迫ってきた場合、受け入れる可能性は高いのではないか。
そんな、自分だってまだそこまでしてもらったことがないのに。ずるい。
……じゃなくて。
仮にそうだとしたらどうしよう。マリィにどう接すればいいのだろうか。
「あらあら、マリィったら開通式済ませちゃったのねー。
それじゃあどうなってるかご拝見〜」
とセクハラしてやればいいのだろうか。いやいや、
「マリィ…、私の龍麻を奪ったわね。呪ってやる……呪ってやるわ」
と壁の影から呟くのはどうだろうか。昼メロチックでいいかもしれない。
「あらマリィ、男の味を知ったようね。今度は女の味を教えて上げるわ」
これもなかなかだ。禁断の姉妹愛。実に萌える。
マリィの幼い乳房に舌を丹念かつ執拗に這わせるのだ。
続いて首筋、お腹、背中、足、手、最後に顔。
マリィの全身を自分の唾液まみれに。考えただけでもゾクゾクする。
そしてマリィを通して自分も龍麻に召し上がっていただく。まさに一石二鳥。
マリィと一緒に龍麻に責められ、時には龍麻と一緒にマリィを弄び、そして
マリィと龍麻に屈服させられる。
そんな日常もいいかもしれない。うん、それに決定。
そうと決まったらさっそく今夜にでも。ああ、待っててね龍麻。
「アオイお姉ちゃん?」
「な、なななななな、なにかしらぁ?」
突然話しかけられてどっかのプロレス馬鹿よろしく声が裏返ってしまった。
「どうかしたの?」
「べ、別にどうもしてないわよマリィ」
なんとか菩薩スマイルで誤魔化す。
「それより何か用?」
「うん、あのね…」
「ごめんなさい、アオイお姉ちゃん!」
マリィは突然頭を下げた。
「ど、どうしたの、急に?」
「龍麻は内緒だよって言ってたけど、マリィやっぱりお姉ちゃんに嘘つきたく
ないの」
「嘘…?」
「うん、この間の日曜日に龍麻のところに遊びにいったときなんだけどね」
「あらマリィ、そのことならいいのよ」
これから一緒に龍麻に抱かれるんだから、と心の中で付け加える。
「えっ、お姉ちゃん知ってたの!?」
「うふふ、私はマリィのことならなんでもわかるのよ」
どこが感じるかとかはこれから知るんだけどね、と心の中でニヤリと笑う。
「なぁんだ、プレゼントのこと知ってたんだ」
「そうよ、プレゼ………え?」
「龍麻はアオイお姉ちゃんに誕生プレゼントのことは秘密だって言ってたけど、
それなら内緒にすることなかったね」
「……………」
「でも凄いな、お姉ちゃん。本当にマリィのことならなんでもわかるんだね」
「う、うふふふふふふふふふふふ。そうよ、わかるのよぉ」
内心、汗ダクダクな葵さん。自分の妄想癖をちょっぴり後悔。
「これならきっとマリィの良い奴隷さんになれるね」
「そうよぉ、なれるの……………YO?」
葵さんは知らなかった。
自分の妄想が、実はそんなに事実と離れていなかったことを。
マリィは確かに龍麻に抱かれ、そして葵を性奴隷にするために『首輪』を誕生
プレゼントとして買ったのだ。
葵さんがそのことを知り、ついでにマリィに屈服させられるのはそれから
数時間後のことだったとさ。
おわる