「はぁ・・」
握り締めた携帯電話にため息を浴びせると彼女は眉をしかめた。
(今日も探索してるのかしら・・・)
メールを送ってまだ五分と立ってない。
しかし文面をまとめるのに三十分
送る決心がつくまでに三十分かかった彼女にとって
五分は耐えがたい長さであった。
(もしかしてあたしだから返事くれないのかな・・・)
ぼんやりとそんな事を考えていたら携帯のライトが消え
双樹は慌ててボタンを押した。
画面が再び明るくなり少し安堵した自分が馬鹿らしくて咲重は笑みを浮べた。
ライトがついていようがいまいがメールの返事には何の関係も無い。
わかっていても暗い画面を見つめて待っているのは寂しすぎる。
コンコン
下らない思考を打ち消すように扉のノックされる音が響く。
双樹は驚いて扉に顔を向けた。
「咲重ちゃん、いる?」
「九龍くん!?」
扉の向こうから聞こえてきたのは男の声。
女子寮で聞こえてはいけないはずの声に双樹は逆に安堵の表情を浮べた。
他の女生徒が訪ねてくるよりもよほど納得できる。
「待って、すぐ開ける」
双樹が慌てて開けたドアの前には
つい最近見慣れたばかりの珍妙な格好の男が立っていた。
「来て・・・くれたの・・・?」
「うん、ちょうど女子寮にいたし」
呆気にとられる双樹に九龍は屈託のない笑顔を見せる。
「あ、あの、入って。
他の子にみつかるといけないわ」
「あ、じゃあ、お邪魔します」
九龍を部屋に入れると双樹はドアを閉めて小さく深呼吸をした。
「まさか、部屋まで来てくれるなんて思わなかったわ。
考えてみればあなたは女子寮だからって遠慮するような人じゃなかったわね」
何とか作り上げた笑みを貼り付けて双樹は部屋を見渡す九龍に近づいた。
しかし、その腕を取ろうとした時
自分がまだ手に携帯を握り締めていた事に気付き慌てて手を引っ込めた。
「はー、さすがに役員の部屋は違うんだね。
広いし流しまであるなんて凄いなー」
呑気に驚いている九龍の様子に胸を撫で下ろし
双樹は汗でぬるついた携帯をベットに放り投げた。
「まあ、部屋の中にお風呂とトイレがあるぐらいだけど・・・。
なんなら一緒に入る?」
からかうような口調でそう言いながら双樹は机の方へ歩いていった。
「紅茶でいい?」
「あ、うん、なんでもいいよ」
背中を向けて九龍が視界から消えると
部屋の中で二人きりという状況を改めて強く意識してしまう。
九龍が突然襲い掛かってくる事は無いとわかってるのに
鼓動が速まるのを抑えられない。
「誰の部屋にいたの?」
ティーポットにお湯を注ぎながら
なるべく平静に聞こえるように双樹は慎重に声をかけた。
「んー、色々。調合できるような材料拾いに来てただけだから」
(誰かの部屋で何かしてたわけじゃないんだ・・・)
双樹は胸を撫で下ろすと机の引出しを開けた。
奥の方に並んでいる一組のティーカップが視界に入り双樹はドキリとした。
いつかこの部屋に阿門が来たら使おうと思っていた一組のティーカップ。
双樹は一瞬伸ばしかけた手を止め、目を閉じた。
「九龍くん、はい。
マグカップでごめんね」
「ううん、いいよ、ありがとう」
九龍は双樹から紅茶を受け取ると
キョロキョロと部屋を見渡しベットに腰を降ろした。
それを見て双樹も九龍の隣に腰掛ける。
「うふふ、いいの?
そんなあっさり飲んじゃって。
毒が入ってるかも・・・」
双樹が蠱惑的な笑みを浮べると九龍はにっこりと笑った。
「咲重ちゃんが入れた毒ってなんだか美味しそうだね」
ふうふう言いながら紅茶をすする九龍を横目で見ながら
双樹は真似するように紅茶をすする。
「咲重ちゃん、どうしたの?」
九龍は中身の無くなったカップを床に置くと双樹に顔を向けた。
「どうしたって・・?」
九龍の視線から守るように双樹はパジャマの袖を伸ばして両手で持ったカップを口につけた。
「最近元気ないみたいだし・・・」
「そんな事無いけど・・心配してくれたの?
嬉しい!」
双樹そう言うとカップを左手に預け空いた右腕を九龍の左腕に絡ませた。
大きな胸が腕に当たり九龍が困惑した表情を浮かべる。
「咲重ちゃん・・・そのそんなにくっついたら・・・」
「迷惑?」
「ちっ、違うよ、そうじゃなくて・・・」
顔を赤くしている九龍を見て満足しながらも
双樹の心の奥ではもやもやとしたものが広がっていた。
「それにそんなにお腹出してたら駄目だよ。
そんな格好じゃお腹冷えちゃうよ」
そんな格好と九龍は言うが
双樹が身に付けているのは至って普通のパジャマだ。
本来は色気も何も無い保温性と着心地だけを考えられた衣服。
ただ、双樹の場合、大きすぎる胸に布が引っ張られ
お腹が露出してしまっているのだ。
「うふふ、九龍くん、あたしのお腹見てたの・・・?」
腕を掴んだまま見上げる双樹の吐息が九龍の顔にかかる。
「九龍くんに暖めて欲しいな」
媚びた声を双樹が出すと九龍は唾を飲み込んだ。
体を動かし上半身だけだが双樹に正対する。
「ねえ、咲重ちゃん。
からかってる?
僕は咲重ちゃんの事好きだからそんな事言ってると本当にしちゃうよ」
まるで遺跡の中にいる時のような表情で九龍に見つめられ双樹は動けなくなる。
見上げたまま動かない双樹に九龍はゆっくりと顔を近づけ唇を奪った。
「・・・・・」
カップが落ちる音で始まったキスは静寂に包まれて終わった。
唇を離しても双樹は呆然と九龍を見つめたままだ。
「・・・ぇって・・・・」
ようやく動いた赤い唇からかすれた音が漏れる。
「・・・帰って・・・・」
双樹の腕が九龍の背中にまわる。
「帰って!」
九龍を抱きしめると双樹は悲鳴のような叫び声をあげた。
「もう・・・かえってよお・・・」
呆気にとられている九龍の肩の顔を押し付け今度は泣き始めた。
すすり泣く声が響く部屋で九龍はただ呆然と双樹の香りに酔いしれていた。
「ごめんね」
落ち着き始めた双樹の背中を撫でながら九龍が謝ると
双樹がまわしていた腕を外しゆっくりと顔を上げた。
「ごめん、本当に。
咲重ちゃんの気持ちも考えないで・・・」
九龍の言葉に双樹は口をとがらせて顔を横に振った。
「違うの・・あたしも九龍くんが好きなの・・・」
まるで九龍の服に話しているかのように双樹はうつむいたままだ。
「でも、・・九龍君いなくなっちゃうんだもん!
いなくなっちゃう人好きになっても寂しいから・・・
だから、これ以上好きにならないようにしようって思ってたのに・・・」
「・・・ごめん」
九龍には謝る事しか出来なかった。
双樹に好きだと言ったことは嘘ではないが
それでもここの遺跡の探索が終われば次の遺跡へと行くつもりでいる。
「んーん・・・仕方ないよね・・・九龍君はトレジャーハンターだから・・・」
暗い顔でうなだれた双樹の顔を覗き込む。
「どこに行っても手紙書くよ」
双樹はうつむいたまま反応しない。
「電話もする」
「日本に来たら会いに来るよ」
やはり双樹は反応してくれない。
どうしたもんかと九龍が悩んでいると双樹が泣き腫らした顔を上げた。
「ね、抱いて。
・・・いつでも思い出せるように・・」
唇を重ねながら互いに服を脱ぎ始めた。
競い合うように唇を舐めあい途切れる一瞬を狙って上着を脱ぐ。
先に脱ぎ終わりパンツ一丁になった九龍は
未だパジャマのボタンをプチプチと外している双樹の頭を両手で挟みこんだ。
涙の跡にキスを浴びせ花の香りのする唇に自らの唾液の匂いをつける。
双樹が少し躊躇しながらブラジャーを取ってしまうと九龍の手が素早く滑り込む。
「あっ・・」
九龍の指が柔らかな山にめり込むと双樹が腰をひいた。
全くお構い無しに九龍は両手ともを双樹の胸に這わせている。
さっきまで持っていたカップよりも滑らかで
布団よりも柔らかな感触に九龍の手は止まらなくなっていた。
「きゃっ・・」
胸を掴んだまま双樹を布団の上に押し倒し、今度は口までも胸に持っていく。
付け根から絞るように揉みながら先端に佇んでいる蕾を口に含む。
「あぅん・・・」
谷間に顔をうずめ頬擦りをし匂いを嗅ぐ。
乳頭を舌で味わい吸い転がし、ほんの少し満足すると九龍は双樹のズボンに手をかけた。
「待って」
何も言わずに耐えていた双樹のまぶたが開く。
「もし・・・もしも、あたしが・・・まだだったって言ったら信じてくれる?」
少し怯えの色が浮かんだ瞳に九龍の笑顔が映った。
「もちろん。
咲重ちゃんの言う事を疑う理由なんか無いよ」
九龍の返事に双樹は再び目を閉じた。
双樹がうっすらと腰を上げた途端に九龍はパンツごとパジャマのズボンを剥ぎ取ってしまう。
「九龍くん・・・いらないから」
九龍が床に落ちたアサルトベルトを拾い上げると
双樹が寝転んだまま声をかけた。
「今日は・・・大丈夫だと思うから・・」
「・・・わかった」
足を閉じたまま立てられた膝を割って九龍は腰を進ませる。
軽い口付けをして双樹の二の腕を抑える。
「いくよ」
そう言ってから腰を動かしあたりをつけると一気に腰を落とした。
「〜〜〜っ!」
双樹が口を開けて身を捩る。
九龍の肉棒が双樹の秘裂の奥へと侵入し、閉じた陰肉を引き裂いていく。
浅い場所までで引き抜きもう一度突く。
「っ・・・っ・・・」
くぐもった音を出して耐える双樹の上で大きな乳房がゆさゆさと揺れ踊る。
「いっ・・くっ・・」
九龍の動きが激しくなるにつれその踊りも激しさを増して
双樹の顔に当たりそうになり九龍は慌てて乳房を掴んだ。
「あぁっ・・あっ・・」
痛みを訴える声ではあるが双樹の口からようやく音が漏れ始める。
気を使いながらの動きを繰り返してきた九龍も
限界に近くなり合わせるように声を出す。
「くうっ・・!」
短い雄叫びを上げ九龍からほとばしった精液が双樹の中へ注ぎ込まれた。
「ね、お願いがあるんだけど」
腕枕をしながらまだ胸をいじっている九龍に双樹は甘えた声を出す。
「なに?」
「明日も来て・・・探索の前でも後でもいいから・・・
五分でもいいから・・」
軽いキスをしてから九龍は返事をする。
「明日も明後日も・・・・この学校からいなくなるまで毎日来てねっ」
訴えるような眼差しを向ける美しい顔にもう一度キスをして承諾する。
うっとりと目を閉じてから今度は双樹から唇を合わせる。
「もう一つ・・・これはハンターとしての九龍くんに」
「なに?」
「お揃いのティーカップ・・・」