QLOOKアクセス解析

浅草、元鳥越にある出稽古先の道場で、激しい稽古を終えた美冬が四谷見附の自宅へと帰る途中――
「よぅ――これは臥龍館の先生殿」
――そう云って声をかけてきたのは、着流し姿で浪人風の男だった。
「驚いたな。・・・誰かと思えば蓬莱寺か」
美冬がそう答えると、蓬莱寺と呼ばれた男――蓬莱寺京悟は、
「久しぶりだな。少し見ないうちに、こりゃあまぁ・・・また一段と美剣士ぶりに磨きがかかって。相変わらず娘共に騒がれてるんじゃあないか?」
と。彼を知るものには懐かしくもある軽口で返した。
「フ・・・莫迦を言え。これでも今では人の妻だ。昔とは違うさ」
美冬が笑う。
かつては同じ龍閃組という組織に属していたもの同士の気安さか、美冬の口調は美冬自身も気づかぬうち、昔馴染んだ男言葉になっている。
「おーおー。自信に満ち溢れたイイ表情(かお)するぜ。所帯を持つとこうまで変わるもんかねぇ」
京悟が呆れる様に笑った。
だがしかし、その笑みは全く嫌味を感じさせない。
純粋に感心した様子であった。
「女は変わるのさ。殿方はどうか知らないが、な。ましてや母親になろうというのだ。昔の様に自分の弱さに嘆いてなどいられん。――いつ江戸に戻った?」
「昨日さ。少し区切りがついたんで、龍斗に会いにな。――しかし。成る程ねぇ。抱えてた迷いはなくなったかよ」
そう言いながら京悟は、止まっていた足を再び動かし、歩き始めた。
美冬もそれに習う。
「・・・さぁな。いつのまにか、どうでも良くなっていた。それが迷いがなくなったという事なら、そうなのだろうよ。・・・少なくとも自分が男ならば――などとは考えぬようになった。今では女に生まれ良かったと思っている」
美冬はそう言いながら、わずかに膨らみ始めた自らの腹部を愛おしげにさすった。
京悟は微笑を浮かべながら、ただ黙ってその様子を眺めていた。

「そうだ、蓬莱寺。宿は決めてあるのか」
美冬が何か思いついたように口を開いた。
「イヤ、まだ決めてねぇ」
「そうか、ならばウチにきたらどうだ?」
「あん? 臥龍館へか?・・・そりゃ、まぁどうせ龍斗に会いに来たわけだからな。こっちとしても有り難ぇが」
「ならば決まりだな。よければ門弟達に稽古をつけてやってくれ。・・・谷崎め、私が余り稽古をつけられぬからと、指導を任せてみたのだが。・・・あれではただの幇間(ほうかん)稽古だ」
やれやれ――と、首を振る。
「龍斗はどうしてんだ?」
「龍斗様なら朝方から出かけている。・・・王子だ。今日は戻らぬかもしれん」
王子には如月骨董店がある。
店主である奈涸は、最近では店をもっぱら妹の涼浬に任せ、あちらこちらを飛び回っているらしい。
「涼浬んとこか? オイオイ、新妻を放っておいて他の女んトコ泊まってくるのかよ?」
「フ、なに。私が行けと言ったのだ。事情は・・・ま、後で教えてやろう」
「そうかい。けどそれなら世話になるのは遠慮しとくぜ。流石に夫の留守中に上がり込む訳にはいかねぇだろ」
「何、気にするな。――ちょうどな、今日は小鈴殿や葵殿も泊まりに来るのだ」
「へぇ。アイツらも来るのかよ」
「ああ。小鈴殿など、それはもうカンカンでな。『ひーちゃんの性根を叩き直してやる』と息巻いていたよ」
そう言うと美冬はクスクスと可笑しげに笑った。
「ああ?」
――そんな美冬に京悟はただ首を傾げるばかりだった。


                       ◇


夕刻――。
古びた匂いの漂う、静かな客間。
明かりもつけぬままの室内は、黄昏どきの薄暗さが、じんわりと満たしていた。

「んっ・・・んっ・・・・・・んぼっ・・・んっ・・・ずちゅ・・・・・・」
・・・ぴちゃ・・・ぺちゃ・・・。
「ん、んむっ・・・ふぅ・・・ずずず・・・・・・ん・・・」
くぐもった声音と粘ついた水音、そして荒い息遣い。
「ハァ・・・ハァ・・・ん・・・・・・。ど、どうですか・・・龍斗殿・・・」
「・・・・・・・・・ん・・・う、うん」
龍斗の勃起した陰茎は、今――。
龍斗の上に覆い被さっている女の口唇によって、ひたすらに献身的な奉仕を受けていた。
・・・ず・・ず・・・・・・ずちゅるるる・・・。
髪は短く、細身の――しかしそれでいて鍛えあげられた、しなやかな肉体。
その素晴らしい裸身を惜しげもなく晒しながら。
――この如月骨董店の女店主は、着物からまろび出た龍斗のモノを懸命に愛撫していた。
「うぶ・・・んぶっ・・・ん・・・ずずっ」
「く・・・涼・・・浬・・・」
「気持ち・・・いい・・・ですか・・・?」
上目遣いで龍斗の顔を見る。
その一生懸命な表情が、龍斗にとってはこの上なく愛らしかった。
「涼浬・・・」
優しく涼浬の頭を撫でる。
「龍斗殿・・・」
涼浬は嬉しそうに頬を染め、その指に自らの手を添え頬擦りした。
「ちょっと待って・・・服を・・・今」
そう言って龍斗は一旦身体を起こすと、自らの着物を脱ぎ捨てた。

・・・涼浬は既に全裸である。
その股間からは早くも蜜がたらり、と一筋零れていた。
龍斗がゆっくりと畳の上に寝そべる。
「では・・・続きを・・・」
告げて涼浬は再び、龍斗を口に含んだ。
「ふふ・・・相変わらず・・・龍斗殿は濡れやすいのですね」
ぬるりと。
熱い口の奥に、導かれたモノは大量の我慢汁を鈴口から流し、それを受ける涼浬の口からは唾液と合わさって、だらだらと顎先まで垂れていた。
「・・・はぁ・・・龍斗殿のお汁・・・おいしい・・・です」
「ハァ・・・ハァ・・・」
滑るように肉棒が口の中を行ったり来たりする度、涼浬の口の端からは透明な液体が跳ね飛んで。
そして、ぐちゅぐちゅとイヤらしい音が大きくなってゆく。
「ん・・・うぷっ・・・うむぅ」
「ん・・・」
「ふ・・・・ふむぅ・・・ぷはっ・・・ぺろ・・・うんっ」
「・・・・・・も、もう・・・駄目・・・! 涼浬、出そう・・・!」
だが涼浬は口を離そうとしない。
それどころか、いっそう激しく上下にしごく。
「うああ・・・す、涼浬ってば」
「・・・大丈夫です・・・から。・・・そのまま出して・・・」
「き、汚いよ・・・っ」
「そんな・・・事ない・・・です。ふっ・・・それに・・・ん・・・・・もう何度も・・・・ちゅ・・・飲んでるではない・・・ですかっ・・・」
「だ、だけど・・・」
確かに涼浬の言葉の通り、口中射精など何度も経験してはいた。
だが龍斗はどうしても、女性に自分の精液を飲ませる事に抵抗を感じずにはいられなかった。
・・・もっとも。だからこそ得られる快感がとても大きいと、知ってはいたのだが。
「ふ・・・・・ちゅ・・・観念・・・しました・・・か?・・・ふふ」
淫蕩な笑みを浮かべ、悪戯っぽい表情で尋ねる。
涼浬にとっては、龍斗のこの困った様子こそが官能の源。
懸命に奉仕をしているようで、その実、主導権は涼浬にあった。

「腰がぴくぴくしてます・・・。感じてるんですね」
「ん・・・涼浬は・・・結構・・・あっ・・・・・意地悪・・・だよね」
「そんな・・・事・・・は・・・。・・・ん・・・早く、出して・・・」
「くっ・・・出・・・るっ」
もうすでに龍斗の頭の中は、涼浬の口中に、自らの汚濁をぶちまける――その事しか考えられなくなっていた。
「犯して・・・下さい・・・! 私の口を・・・!」
「〜〜〜〜〜〜〜ッッ」
瞬間。
押し寄せる快感に負け、龍斗は一気に放出を開始した。
ビュクククッ、ブビュッ・・・ビュ・・・ビュブルル・・・・!
「んんっ・・・!!」
涼浬が呻いた。
限界ギリギリまで堪えていた分、爆発的な勢いで精液が放たれる。
頭が真っ白くなるような絶頂の中で、龍斗は必死に意識を繋ぐ。
ビュクク・・・ビュル・・・・・・ビュブブッ・・・・・・・!
「ふ・・・!? ふぐっ・・・ごっ・・・くふっ」
あまりに大量の射精に咽(むせ)ながらも、涼浬は決して口を離そうとはしなかった。
それどころか、よりきつく口をすぼめ、龍斗のモノを尚吸い上げて。
うっとりと喉の奥で精を受け止める。
「ごくっ・・・ごくっ・・・んむ・・・・・」
ごくり、と喉を鳴らしながら一滴も零さず飲んでいく。
ビュ・・・ビュブ・・・。
「うん・・・んっ・・・ぷはっ」
ようやく射精が止み、涼浬が口を離した。
「ハァ・・・ハァ・・・だ、大丈夫?」
龍斗が尋ねた。
「・・・ハイ。大丈夫です。・・・龍斗殿の精、美味しかったですよ」
ニッコリと笑みを浮かべ、身体を起こす涼浬。
「・・・・・・ッ」
その優しい笑みに、龍斗の胸が激しく高鳴った。
(心の臓に悪い・・・)
思わず口元を押さえて、顔を背ける。
「龍斗殿・・・? どうしたの・・・です?」
涼浬がやや気遣わしげに顔を覗き込んでくる。
「ご気分が悪いのですか・・・?」
「い、いや何でもないんだ」
慌てて弁解する龍斗。
(まさか、涼浬が美しすぎて緊張したなどと・・・云える訳あるまい)

「本当、ですか?」
「あ、うん。平気だ。気持ちが良すぎて、ちょっとぼうっとしただけ」
「そうですか・・・。では・・・」
安心したように言うと、涼浬は龍斗をまたぐ格好で、龍斗の胴の上にス、と立った。
龍斗の視界には、ヌルヌルに濡れた涼浬の秘所が否応もなく入ってくる。
「す、涼浬・・・? どうしたんだ」
「次は・・・中に・・・」
「え、ええっ! ちょ、ちょっと待って。己(オレ)まだ出したばかり・・・」
「それなら・・・大丈夫です」
そういうと涼浬はそのまましゃがみこんで、用便する姿勢になると、龍斗の胸と下腹部に手を添えた。
ひんやりと冷たい涼浬の手の感触。
と、同時。龍斗は不思議な感覚を味わっていた。
(え・・・何だ、これ・・・)
体内の血流が意思を持って動き始めた様な感覚――。
それが下腹部に急速に集まってくるような――。
「これは――一体?」
「飛水流は水を操る業――。他人ならばいざ知らず・・・自分や、ましてや『黄龍の器』である龍斗殿の血流ぐらいならば簡単に同調できます」
見ると、萎えていた筈の男根が徐々に勢いを取り戻してゆく。
「・・・本来、貴方ほどの氣の持ち主ならば、私の干渉など受け付けないでしょうが・・・今、龍斗殿は私を・・・その・・・受け入れてくれていますから・・・」
照れた様子で語る涼浬。
「・・・おそらくは、雹さんも自分に対してならば近い事ができるのだと思います。・・・少なくとも自分の体内の変化には敏感でしょう」
「そうか・・・それで」
「ハイ、私が自分の・・・その妊娠に気付いたのも・・・それで・・・」
と言って、涼浬はまた顔を赤らめた。
「そうか。それじゃあまだ・・・」
「普通の人間ならば気付かない程、小さなものでしょう。私と雹さんだったからこそ気付いたのだと・・・」
「成る程・・・・」
感心する龍斗。
「それで・・・その・・・どうです・・か?」
「あ、うん。・・・そう、もう少し・・・かな」

「そうですか・・・」
涼浬は少し考え込んだ後、おもむろに片手を自らの秘所に持っていった。
「あ・・あの・・・龍斗、殿・・・その・・・・・こ、これで・・・・・・ど、どうですか・・・?」
そう言って二本の指で自らの秘唇を――。

――割り開いて見せた。

ぱっくりと。
濡れた秘奥が露(あら)わとなる。
龍斗に重みをかけたくないのか、唯でさえ用を足す姿勢で跨っていた涼浬の姿勢。
部屋の中は薄暗いとはいえ、龍斗の目には、ハッキリと濡れそぼった淫孔が見えた。
「ちょ、ちょっと、まった・・・!」
龍斗が慌てて身体を起こす。
「え・・・」
涼浬は怒られた子猫のように、びくりと、体を震わせた。
「だ、駄目だったでしょうか・・・。やはり、私の・・・その・・・アレなんかでは・・・」
「い、いや、違う。そうじゃない。そうじゃないけどさ・・・!」
「では、少しは・・・欲情・・・できましたか・・・?」
「した、した。そりゃもう、間違いなくしたよ」
ほっ。と安堵の溜め息を漏らす涼浬。
龍斗はそんな涼浬の両肩を掴んで抱きしめた。
「え・・・龍斗ど・・・の」
「でもさ、そんな事しなくてもいーんだよ? 涼浬は。・・・今のだって相当恥ずかしかっただろう? さっきも己の精を飲んだり・・・別に無理しなくたっていい。涼浬はそんな事しなくたって十分魅力的だ」
「龍斗殿は・・・嫌・・・なの、ですか?」
涼浬が両手でやんわりと龍斗を押し戻す。
「え?」

「そ、その・・・だから・・・私の女陰(ほと)を見たり・・・私が龍斗殿の精を飲んだりする事が・・・嫌・・・ですか?」
「え? い、いや・・・そんな、そんな事はない、けど・・・むしろ嬉しいんだ、けど・・・でも、さ。涼浬は嫌だろう?」
「私は・・・嫌ではありません」
細く、しかしハッキリと答える。
今度は困ったのは龍斗の方だった。
まさかこんな返答が返ってくるとは”予想だにしていなかった”のだ。
「私は・・・・龍斗殿をお慕い申し上げております。そして、これは私が好きでやっている事・・・。・・・ですから、龍斗殿が嫌ならばともかく・・・私の事を気にしてやめてくれと云うのは・・・その・・・間違いなのです」
思いがけず強い物言いに、龍斗は面食らった。
「じゃ、じゃあ別に無理してる訳じゃ・・・」
「無理はしていません。嫌なら嫌と・・・その・・・そういう時は・・・はっきり言います」
「そ、そうなんだ」
「ハイ。・・・で、ですから、その・・・」
再び先程と同じ体勢を取る涼浬。
「も、もし・・・龍斗殿が見たいのでしたら、もう一度・・・み、見せ、て・・・も」
真っ赤になってごにょごにょと何やら呟く。

その様子に龍斗は――
(ヤバイ・・・。これは・・・きちまった・・・かも)
かつて無い興奮を覚えていた――。

がば、と。
涼浬を押し倒す。
ひゃあ、と可愛い悲鳴があがった。

「た、龍斗・・・殿?」
「・・・もう、止まらないよ?」
「あ・・・」
「腰が立たなくなるくらい、犯しぬいてあげる。――覚悟は・・・いいか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい。・・・犯して・・・下さい」
次の瞬間。
前戯もなく。
龍斗はギンギンに膨れ上がった己のモノを。
――涼浬の中にこじ入れた。
「ひ、ああああああああ・・・・・・ッ!!」
抵抗を感じたのは最初の一瞬だけ。
――ぬるん。
その後はほとんど抵抗もなく、すんなりと収まる。
既に、先程から涼浬の肉壷は龍斗のモノを待ちわびて、びしょびしょに濡れていた。
ようやく訪れた愛するモノの挿入に、涼浬のそこは歓喜の涙を流す。
「涼浬、涼浬・・・!」
培ったものなど、全て忘れ去ったかの如く、龍斗はただひたすらに涼浬を突いた。
童貞の少年であったとしても、もう少しまともな交わりをするだろう。
そう思わせるほど、龍斗の責めは稚拙で、強引で、一直線なものである。
・・・だがしかし。
それでも涼浬にとっては、この上なく甘美なものとして体中に広がった。
「あっああああっ・・・んっ・・・こ、んっなっ・・・お・・・ああっ・・・イイ・・・・」
「ハッ・・・ハッ・・・」
ぬちゃ・・・ぐちゅぐちゅ・・・・じょぶ・・・!
結合部の水音がだんだんと大きくなる。
「ん・・・く・・・! 涼浬・・・!」
龍斗は不意に思い出したかのように、乳房を跡がつくほど、強くもみしだいた。
「はぁっ・・・んっ・・・く・・・イイ・・・・・ッ・・・龍斗殿ッ」
涼浬の喘ぎ声も、際限なく大きくなってゆく。
腰の突き上げと胸への愛撫で、涼浬はもはや、自分でも何が何やら判らぬほどに感じていた。
曖昧な意識で考えるのは、龍斗を求める事のみ。

「あんっ・・・んはぁっ・・・・はっ・・・は・・・っ」
「く」

――ガツン、と子宮口に龍斗の一撃が突き刺さった。

「ひ・・・! か・・・かっ・・・ふっ・・・はぁぁ・・・」
ぷっしゃあぁぁぁ・・・・。
股間が濡れる。
陸に揚げられた魚のように涼浬は口をパクパクとさせていた。
しばらく経つと、涼浬はそのままぐったりと体中の力を抜き――。
(やりすぎたかな)
少し心配した龍斗は、側に置いてあった水差しを取ると、水を口に含み、そのまま口移しで息も絶え絶えの涼浬に含ませてやった。
弛緩しきった涼浬は目を瞑ったままで。こくこく・・・と少しずつ水を飲む。
それを何度か繰り返すと、涼浬は少し落ち着いたようで、龍斗に、
「すみません・・・心配をおかけして」
と言った。
・・・もちろん、これらの間、龍斗のモノはずっと涼浬の中に入っていた。
「ううん。それより、畳を汚してしまったけれど」
ず、・・・チュク・・・
再び小刻みに動き始める。
「いいですよ。後で私が始末しておきますから・・・龍斗殿は心配しないで下さい」
「ん。それならいいけど・・・奈涸なんかに知られたら五月蝿いからさ。気をつけてね」
「ハ、ハイ・・・ふああっ」
嬌声を上げながら、涼浬は自らの股間に目をやった。
グチョグチョのドロドロである。
とばぐちは白く濁った泡でネバつき、自らを貫いてくれる想い人の肉槍さえも、その一突き毎に汚していく。
・・・よくもまぁ、はしたなくこれだけ汚したものだと――自分でも呆れてしまう。
「何、を、みてるのさ」
ズン、と。龍斗の亀頭がもう一度、子宮口を抉った。

「ひあっ!?」
またも意識が飛びかける。
「ご、ごめん・・・なさ・・・ひっ!」
突き上げがどんどんと強くなる。
「涼浬・・・」
「は、はいっ」
「ふっ・・・ふっ・・・そろそろ・・・いくよ・・・」
必死に耐える様子の龍斗の声。
(――我慢をしてる)
涼浬には、その様子が無性に可愛らしく思えた。
「ふっ・・んっ・・・・・・・ああん!」
チュクッ・・・ピチュ・・・チュクチュク・・・グチュッ・・・!
「は・・・んんっ・・・突いて! 我慢なんてしなくて・・・いいです、から・・・・突きまくって中に出してッ」
「ううっ」
龍斗の腰の動きに合わせて、涼浬の腰も大きく振られる。
胸がぶるぶると上下に揺れる。
「ああん! もっと、もっと激しく、動い・・・て・・だ・・さいッ!」
龍斗は無我夢中で腰を突き上げた。
子宮にまで届く肉棒の攻めを、涼浬は感動しながら受け止める。
「・・・す、涼浬」
「お、お、お、お・・・ああんっ!! イイッ・・・イイですからッ・・・! 中に! 中に出して下さいッ!!」
快感が一気にピークに近づき、二人の腰の動きも加速度的に早まってゆく。
「く、出るッ」
「んんんんーーーーーーーーッッ!!」
涼浬が絶叫し、伸ばした四肢を硬直させた。
それに伴い、ぎゅうっ、と肉壷が収縮する。

まるでそれは龍斗の精液を搾り取ろうとでもするかの様に。
そして、その刺激に龍斗の肉棒はびくんと震え――
びゅばっ。
白濁液が噴出された。
ビュブブーーーッ・・・・ビュルル・・・・ブビュル・・・・・・。
「は・・・あ・・・ひゅ・・・・あああ・・・イイ・・・で、す・・・・・・・・こひゅ」
満足に呼吸することも出来ないような状態で、しかしそれでも快感に打ち震える。
ビュブブーー・・・びゅば・・・びゅくん・・・。
「は・・・あぁ」
そうして吹き出される精液のしぶきを子宮の奥で受け止めながら、涼浬はうっとりと恍惚に酔いしれ――

――そのまま気を失った。

                     ◇


――龍が見える。
黄金の龍が。
白い闇の中。黄金の龍がこちらに向かって進んでくる。
(――龍?・・・あれは・・・黄龍? ・・・龍斗殿・・・?)
龍は涼浬の周りをぐるりと泳ぐと、そのまま頭上へ。天高く、天高く――。
(私は・・・確か・・・龍斗殿と・・・・・・)
龍が見えなくなり、何も無い真っ白な空から、雪が降ってくる。
(雪・・・? イヤ・・・違う・・・。これは・・・金色(こんじき)の・・・)
綿雪のように降り続ける金色の雪。

(――黄龍の精・・・?)

――ふと、物音が聞こえて、涼浬は夢から醒めた。



                     ◇



――深夜、子の刻(*12時)。
龍斗は隣で寝ている涼浬を起こさない様、そっと寝床から抜け出すと、静かに縁側まで出た。

雲一つない澄んだ星空を見上げると、中空には真円を描く月が浮かんでいた。
・・・ゆっくりと腰を下ろす。
着物ははだけ、上半身は裸といって差し支えないようなものであったが、ひんやりとした夜気が逆に心地良かった。
一つ息を吐き出すと、龍斗は夜空を見上げながら、ぽつりと。
「綺麗だ・・・」
と呟いた。

「――眠れないのですか?」
そう、後ろから声をかけられる。
龍斗は驚かなかった。
「ごめん、涼浬。起こしちゃったかい?」
涼浬は元は飛水流の忍びである。
忍びとしての生き方を捨てた今でも、彼女の身体には忍びとしての習性と業(わざ)が染み込んでいるのだ。
だから龍斗は、自分が布団から出た事に、彼女ならばきっと気付くだろうとも半ば考えていた。
「大丈夫です。・・・私は元々眠りの浅い性質(たち)ですから・・・龍斗殿のせいでは」
言って、涼浬は座っている龍斗に近づき、そっと龍斗の着物の乱れを直すと、その肩に上掛けを掛けた。
「まだ・・・冷えます」
そう言って龍斗の側に正座する。
「・・・でも風邪を引いたら、しばらく逗留できる」
「それは・・・美冬さんに怒られます」
困ったように答える涼浬。
龍斗はクスリと笑った。
「冗談さ。・・・明日には戻らないといけない。小鈴や葵が来てるハズだからね。気は乗らないけど・・・まぁ、またお説教されてくるよ」
「・・・申し訳ありません・・・」
「涼浬のせいじゃない。・・・コレは全部、己の身から出た錆だよ。だから涼浬は気にしないでいい」
「ですが・・・」
「それにね・・・。このくらいは当たり前だとも思ってるんだ。涼浬や雹には辛い思いさせちゃったからね」

「そんな・・・そんな事はありません」
龍斗は首を振った。
「でも己は涼浬達から、まっとうな妻としての幸せを――」
「――いいんです」
「・・・・・・・・・」
「私は・・・あの時――自分がどう生きれば良いのか分かりませんでした。常に何かに依存していた私は、自分で何一つ決めた事などなかった――」
「涼浬・・・」
「だから貴方が側に居てくれるだけで良かった。それだけで――救われたのです」
「大げさだよ」
そう苦笑する龍斗に、いえ――と。
涼浬は、彼女にしては珍しくきっぱりと答えた。
「貴方がいたから、私は救われた。・・・それはきっと雹さんも同じでしょう。・・・そして、妻にはなれずとも貴方の側に居たいと願ったのは、私の我儘・・・」
涼浬は少しだけ微笑んだ。
「私は・・・初めて自分の意思で道を選びました。・・・それが」
そこで一瞬だけ言葉を切り。
「それが例え・・・”龍斗さん”――貴方を苦しめると分かっていても」
龍斗はぼんやりと月を見上げたままだった。

「さぁ・・・そろそろ部屋に戻りましょう。あまり冷やすと体に毒です」
「うん・・・」
立ち上がりながら、龍斗は考える。
(違う。そうじゃないんだ。・・・己はただ――怖かっただけなんだ)
「何か――?」
「・・・イヤ・・・何でもない」
そう云って龍斗は首を振った。
そして代わりに他の言葉を探す。
「・・・ねぇ涼浬。己は後、何年ぐらい生きられるかな・・・」
ハッ、と。涼浬の顔が強張る。
「涼浬――?」
しかしすぐに、涼浬はフッ、と柔らかい微笑を浮かべた。
「子供たちが一人立ちするまでは、生きて貰わないと困ります。・・・いえ、その先も。・・・私達を可愛がって貰わなければ」
「ハハ、厳しいな。涼浬は」
寝所に向けて歩き出す。
「とりあえず、今夜はもう一度可愛がってください」
「え・・・!? ほ、本当に!?」
「はい。今日はもう少し・・・体が種を欲しがっています」
「種って・・・もう子供は出来て・・・」
「さ、行きましょう。”龍斗さん”」
そう、にこやかに微笑んで、涼浬は龍斗の腕に、自らの腕を絡めた。

「涼浬・・・!? 己を殺す気かーーーーー!?」

・・・次の日。王子から臥龍館へ戻った龍斗は、何故かゲッソリと。

――別人のようにやつれていたのだった。



おしまい