オニイチャンへ。
いらいしたおやこドンとどきまシタ。
それにいっしょにおくってくれたメンタイコありがとう。
あんなにいっぱいクレテみんなもよろこんでマス。
どうしてこんなにヤサシクしてくれるの?
ほんとうにアリガトウ。
・・・イライがなくてもテガミおくっていいデスか?
Hopeより
オニイチャンヘ。
このテガミはムラでじゃなくてワタシだけのテガミです。
ミンナにみつからないようにこっそりだしまシタ。
オニイチャンとのテガミをワタシだけのタカラモノに
したかったからデス。
オトウトはさいきんオニイチャンみたいなハンターになり
タイといってマス。
Hopeより
オニイチャンへ。
いらいしてもいいデスか?
オニイチャンのシャシンがほしいデス。
オマモリにしてだいじにしマス。
それとワタシのなりたいシゴトは
オニイチャンのオヨメさんデス。
ユメみてるダケならゆるしてくれマスか・・・?
Hopeより。
オニイチャンヘ。
テガミのことほんとうデスか?
まだむねがどきどきしてマス。
ほんとにほんとデスか?
これはユメではないのデスか?
へんじはもちろん"はい"デス。
Hopeより。
H・A・N・Tの特殊着メロが鳴ると、待ち構えていた九龍はすぐにドアを開けた。
大きなダンボールを黒装束の男二人が音も無く部屋に運び入れる。
慎重に床に置くと素早く立ち去る。
この間わずか三十秒。
一際大きな荷物であったにも関わらず
いつも通りの手際の良さを見せた男達に九龍は心の中で喝采を送った。
「・・・・ね、これがあの娘だよね?」
不安そうな顔で尋ねる八千穂に九龍は小声でうなずいた。
「ん・・・」
まるで八千穂に返事をするかのようなタイミングでダンボールの中から音が漏れる。
少し驚いた九龍はそれを表情に出す事なくしゃがみこんだ。
持てる技能の限りを尽くし静かに素早くダンボールを剥くと、八千穂と共に中を覗き込んだ。
ぎっしり詰まったクッションの真中に浅黒い肌の少女がすやすやと寝息を立てている。
九龍と八千穂はほっとため息を吐くと、その安らかな寝姿を眺め始めた。
おそらく睡眠導入剤でも飲んでいるのだろう。
荷物として運ばれてきた事など気付きもしない様子で気持ちよさそうに眠っている。
八千穂と顔を見合わせ微笑むと九龍は腕をダンボールの中へと伸ばした。
少女のあまりの軽さと体の熱さに戸惑いながら
ゆっくりと抱え上げるとそっとベッドの上に横たえる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
声も無く二人の視線が少女の上で重なり合う。
「・・・来ちゃったね」
「そりゃ、呼んだんだから来るさ」
「うん・・楽しんでいってくれるかな・・?」
「一番乗り気だったのに・・不安になった?」
ふるふると八千穂の顔が横に振られると九龍は微笑んで唇を寄せた。
カカッと適当なノックが響くと乱暴に扉が開かれた。
「おう、九ちゃんいる?」
「そういう事はドアを開ける前に聞くもんだ」
皆守は遠慮のかけらも見せずに部屋の中へ入ってくるとベッドの上を見て立ち止まった。
「まあ、そうかもな。
それよりどうしたんだ、その娘は。
それになんで八千穂は体操服なんだ?
いくらお前でも風邪引くぞ」
「こ、これは・・九ちゃんがブルマ好きだって言うから・・・」
露出した太ももを隠すようにしゃがむと八千穂は顔を赤くしてうつむいた。
「なるほど、九ちゃんの趣味だったか」
「・・・ブルマ姿の女の子が部屋の中にいる。
これは夢、そして浪漫だよ」
皆守はにやりと口角を上げるとアロマを咥えライターを取り出した。
「まさかとは思うがその子どもも・・・」
「そんなわけねえだろ!」
「冗談だよ、冗談。
でも、せっかくだから美味いもんでも食わせてやろうぜ。
カレーとかカツカレーとかカレー定食とかさ」
九龍が否定するのを見てくくっと笑うと皆守はラベンダーの香りを吐き出した。
「カレーか・・・
カレー自体悪くないけど、どうせなら天丼とか寿司とか日本ならではの物がよくないか?」
「カレーは既に日本食だ。
無理にとはいわんが、あの究極カレーならこの子だって喜ぶ」
「皆守クンが食べたいだけでしょ」
「何を言うか、あれこそは至高の・・・・おい、起きたみたいだぞ」
皆守の言葉に振り返ると少女が入っている布団がもそもそと動いている。
「ン・・・・」
三人が見守る中、ゆっくりと布団がめくれ浅黒い顔の少女が顔を出した。
ぼんやりと焦点のあってない目が部屋の中を彷徨い皆守、八千穂を捕らえる。
更に移って九龍を視界に捕らえたとき、不意に少女の動きが止まった。
「・・・オニイチャン・・・・・?
ほんものの、ほんもののオニイチャンだ!
オニイチャンだよね!オニイチャン・・・!」
少女は九龍の顔を認めると強烈な力で抱きついた。
この貧弱な身体のどこに蓄えられているのかと思わせるほどの力で
九龍を苦しめながらも安心させる。
「ああ、本物のオニイチャンだよ。
よく来てくれたね・・・」
「オニイチャンにあえるとおもったから・・・」
抱きついたまま少女はぽろぽろと涙を流し始め九龍の肩が熱く濡れていく。
信頼できる輸送機関とはいえ幼い少女が一人で密航してくるのは
とても心細くつらかったに違いない。
「えへへ、よかったねッ、あたしも嬉しい・・・」
「おい、八千穂。
お前が泣いてどうする」
皆守がぼやくように言うと九龍が笑い八千穂がむくれる。
そんな三人の様子を見た少女の顔には日本で始めての笑顔が浮かぶのだった。
「何が食べたい?」
九龍なりに子供向けの口調で問い掛ける。
「あの、なんでもいいです・・・」
少女は少し遠慮がちに言葉を出す。
「ならカレーだな」
「皆守は黙ってて。
何でもいいよ、何でも作れるんだ?何がいい?」
「んーっと・・・」
一瞬だけ考えると少女はおずおずと口を開いた。
「あの・・・本当になんでもいいです。
それより、一緒にいてお話して欲しい・・・」
完全に予想外だった答えに九龍は一瞬、呆け、八千穂はぎゅーっと少女を抱きしめた。
「可愛いッ!」
「キャッ!」
ベッドの上に押し倒された少女の頭に八千穂はすりすりと頬擦りし始めた。
「かわいい〜」
「やっちー、手加減しなよ。
やっちーの力で思いっきり抱きしめたら、それはアクティブスキルだ」
声も出せずにいる少女を気遣うと九龍は暇そうにしている皆守に振り返った。
「皆守、カレーでいいから作ってくれ」
「カレーでいいとか言うな。
カレーがいいと言え。
まあいい、八千穂に殺されかけている哀れな少女の為に
地上最強カレー皆守スペシャルを作ってやるとしよう」
九龍がキッチンと呼んでいる部屋の一角(ただ単に冷蔵不要な食材と器具が置いてあるだけ)
に皆守が向かうとようやく八千穂は少女を解放した。
「プハーっ」
「ごめん、苦しかった?」
「ううん」
少しびっくりした顔を見せた後、少女はにこにこと微笑んで首を振った。
「あ、あたしは八千穂明日香。
このオニイチャンの友達なの、よろしくね」
「ハイ!ワタシこそよろしくです!」
女の子同士の握手。
それを嬉しそうに見ていた九龍は部屋の隅でカレーを作っている男を指差した。
「で、あそこにいるのがカレーだ。
あだ名は皆守、よろしくしてやってもいいかなと思えるようならよろしくしてやって欲しい」
「誰がカレーだ。
適当な事言ってるとお前だけ納豆カレーにするぞ」
「それにしても日本語上手だね。
勉強したの?」
「おい、無視をするな」
「あのね、オニイチャンに会ったら言いたい事いっぱい。
伝えたい事いっぱいいっぱいあって、長老やギルドの人に教えてもらったの。
・・・でも、何から言っていいかわかんなくなってきちゃった」
「いいんだよ、ゆっくりで、どれからでも」
そういって微笑むと今度は九龍が少女を抱きしめた。
今度は優しくだったからなのか、少女の顔にははにかんだ笑顔が浮かんでいた。
部屋中に香ばしい匂いが漂いはじめ胃袋を苦しめる。
キュルル〜・・・
小さな身体から可愛い音がすると少女は恥ずかしそうに布団をかぶった。
「ごめんなさい・・・・ちがうの、あの・・・」
「どうして謝るの?僕もお腹減ったよ」
「あたしもー!」
屈託の無い八千穂の笑顔と九龍の暖かな視線を見て、少女はこっくりと頷いた。
「ワタシもお腹スイタ・・・」
まだ恥ずかしそうにつぶやくと、計ったかのようなタイミングで皆守がガスコンロの火を消した。
「おら、出来たぜ、この世で最も美味い部類のカレーがよ」
「待ってました!
九ちゃん、テーブル出す?」
「そうだね、出して。
こう見えてもこの男、カレーに関しては間違いないから安心していいよ」
ベッドの上に折りたたみテーブルが広げられると、
その上を電子ジャーと鍋が占領する。
嫌が応にも期待感の高まる香りが空気を染め上げる。
「九ちゃん、この米って遺跡米?」
キャンプ用の小さいが深い皿に注ぎながら皆守が尋ねる。
「ううん、食堂米」
「なら、安心だ。
遠慮せずに食えよ」
白いご飯にルーをかけ、完成した地上最強カレー。
片手で持って食うという行儀の悪い食べ方だが九龍達は慣れっこらしい。
戸惑っている少女を見て逆に戸惑っている。
「あー・・ごめんね。
食べれる?」
「あ、ハイ、ダイジョウブです」
そういって少女はスプーンをそっと口の中へ運び入れた。
「代わりといっちゃなんだがオカワリは自由だ。
遠慮はするな。
すれば全て八千穂に食べられるからな」
「なんでよォ、あたしそんな食べないでしょ」
「・・・・・」
「ほら、九ちゃんがフォローに困ってる。
これが真実だ」
「九ちゃん!あたしそんな食べる!?」
「僕はやっちーの食べる姿、可愛くて好きだよ」
「えへへ。ほんと?」
可愛いという言葉を食事量に関するコメントに使う九龍。
性質が悪い男だと思いつつも相手が八千穂ならまあいいか、と流す皆守。
誤魔化された事に気付く気配すらない八千穂。
基本的にツッコミ不在なのが天香学園スタイルである。
少女もまた初対面で会話に割り込めるようなメンタリティは持っておらず
ふるまわれた夕飯を食べる事にした。
「・・・っ!」
「いいリアクションだ!
どうやらこいつの凄さがわかったらしいな」
スプーンを口にいれたまま動きを止めた少女を見て皆守が微笑んだ。
カレー好きの仲間と認められた者だけが見れるその笑顔は
希少性の割に今ひとつ喜ぶ者のいないものだという事は明記しておく。
「じゃあ、あたし食器洗ってくるね」
全員が食べ終わると空になった鍋に食器を入れ八千穂が風呂場へと向かう。
その光景を見ていた皆守が不意に言葉を漏らした。
「お前はどこの王様だ」
部屋着を体操服にブルマという素敵な衣装にしている同級生の女の子を
男子寮の部屋にいれ風呂場で食器を洗わせている。
皆守でなくとも「なんなんだ、お前は」と言いたくなるだろう。
「何だよ、いきなり」
皆守が何を言っているのか分からず九龍はそっけなく切り捨てる。
皆守が呆れてため息を吐こうとした時、九龍のH・A・N・Tが鳴った。
「あ、リカちゃん。
いいよ、入って」
「では、お邪魔いたしますわ」
声と同時にドアが開くと人形のような少女がドアから入ってきた。
たっぷりとした白いコートを羽織り優雅に微笑む姿にhopeは同性ながら見惚れてしまった。
年上なのだろうが「可愛い」という感情が溢れてくる。
「こんばんは、九サマ」
「うん、ありがとね」
リカはナチュナルに皆守を無視し白いコートを脱ぎ捨てた。
中に着ていたのはピンクのベビードール。
下着まで透けて見える格好に皆守は口をぽかーんと開き
少女はますます瞳を輝かせた。
「カワイイッ!」
「ふふ、正直ですわね。
好感が持てます事よ」
なんだか百合の香りのする空間が発生しようとしている。
そう思った皆守はアロマに火をつけそっと九龍の部屋を後にした。
なにより、これから起こるであろうリカと八千穂の女の戦いに巻き込まれたくなかった。
皆守は相も変らぬ日和見主義であった。
「あ、椎名さん・・・」
「あら、あなたは・・・」
風呂場から顔を出した八千穂と現れたばかりの椎名リカが互いの顔を見つめあう。
そして視線はそのまま下の方へと下がっていった。
(体操服にブルマだなんて・・はしたない。
あなたの体でそんな格好するといかがわしいですのよ?
内面に魅力が乏しいからそのような格好で
九サマからお情けを頂戴しようというのでしょうけど露骨すぎますわ)
(うわ〜・・椎名さん、えっちい格好・・・
ブラもパンツも透けちゃってるよぉ
ああ、もう可愛い〜!
ぎゅうってしたら変に思われるかな?
ちょっとくらいいいよね?)
「リカちゃん?」
リカとしては好敵手を警戒して睨んでるつもりなのだろうが
八千穂にしてみればリカはご馳走である。
八千穂の視線にリカの危険を察知した九龍がさりげなく声を出した。
「あっ、申し訳ございません。
私とした事が・・・
頼まれていた物はこちらですわ」
打って変わって、とは正にこの事だろうか。
コートの裏に仕込んで持ち込んだ衣類を九龍に差し出すリカは剣呑さのかけらも無い。
声はシロップを混ぜたように甘く
見上げる瞳はキャンディのように輝き、八千穂を見ていた目とは材質から違うかのようだ。
かがみ、立ち上がり、差し出す、その一連の動作が可憐で
その上さりげなく九龍に擦り寄っている。
「ありがとう。
リカちゃんがいて助かったよ」
九龍は微笑みそっとリカの肩に手を置いた。
「はぅ・・九サマ・・・」
「これ、リカちゃんに頼んで作ってもらった服。
サイズは目分量なんで適当だけど多分入ると思うから」
リカを抱き寄せ衣類を受け取ると九龍はそれを少女に手渡した。
小脇に抱えられたリカは真っ赤になりながらも九龍の鎖骨辺りをすりすりと頬擦りしている。
「あ、そんな・・ワルイです・・」
「悪くなんか無い。
これは君の為に作られた服なんだ。
着ない方が悪いよ」
膝を床につけ、九龍は少女と目線の高さを合わせた。
その上でにっこりと微笑んでいる。
「それに、見たいんだ。
君がこの服を着たところ」
その言葉で少女は撃沈した。
どこまでも優しい声が頭の中を白く染めあげる。
褒美とばかりに抱き寄せているリカを含め二人同時に落とす腕前、
これが葉佩九龍という男の実力である。
α波発生装置が体内に埋め込まれているとか
汗として媚薬を分泌しているという噂まであるのだ。
「は、はい!ミセマス!ミテください!」
突然、大きな声を上げると少女は着ていた服に手をかけた。
だが、九龍は慌てもせずにそっとその手を握り動きを止めた。
「まずはお風呂に入ってから」
そう言って軽く微笑むと九龍はむぅ〜っと拗ねている八千穂に目をやった。
その対象はリカを抱きしめている九龍か、九龍に頬擦りしているリカなのか。
もしかすると両方なのかもしれないが九龍は面倒な事になる前に、と
生贄を差し出す事にした。
「やっちー、一緒にお風呂入ってあげなよ」
「あっ、そうだね、うん。
ね、お姉ちゃんとお風呂はいろ?」
「あ、ハイ・・」
八千穂の声に頷き、少女は軽くうつむいた。
「オニイチャン・・おフロはいったらミテ・・くれますか?」
「勿論だよ。
見て欲しくないなんて言っても見ちゃうよ。
僕は可愛い女の子に目が無いからね」
その返事を聞くと少女は顔を綻ばせ八千穂の方へと駆けていった。
八千穂も彼女に対してそう無茶はすまい。
せいぜい裸を見まくったあげく不自然な程、体を触りまくるぐらいだろう。
そうであって欲しいなぁと九龍は心の中でため息を吐いた。
少女が八千穂とお風呂場へと消えると九龍はおもむろにリカをぎゅっと抱きしめた。
「あっ・・九サマ・・・」
「リカ・・今日も可愛いね。
それにいい匂いがする。
これは香水かな?」
九龍が抱いたまま立ち上がると小さなリカではどうしようもない。
されるがままにベッドに寝かされたリカの首筋へと九龍は顔を埋めた。
「んっ・・こ、香水はつけてませんわ・・・」
「じゃあ、これはリカの匂い?
こんなに芳しいのなら香水としても売れるかもしれないね?」
「や、やですわ・・そんな・・からかわないでください」
首、頬、顎、とキスをしながら九龍は甘く囁く。
「あ、でも、やっぱり駄目だな」
「え・・」
「だってこんなに愛しい香りを嗅がされて
目の前にリカがいないなんて僕には耐えられそうにも無いもの」
「やぁん、そんなぁ・・・」
にやにやする九龍を「もうバカバカ、知らない」なんて言いそうな勢いでぽかぽかと叩くリカ。
「あはは、ごめんごめん。
お詫びにリカの好きなようにキスしてあげる」
「えっ・・?」
「どんなのがいいかな?」
もう、既に触れそうなほど唇に近い位置で囁かれたリカは
九龍の首に回した腕にぎゅっと力を込めた。
「ぎゅってして・・そのままいっぱいして下さい・・」
熱に浮かされたような瞳でリカは乞う。
九龍は承諾の証にちゅっと唇を吸うとリカを強く抱きしめた。
「いっぱい、だよね?
じゃあ、いっぱい、リカの口の中を舐めてあげる。
舌も歯茎も歯もほっぺたもね」
「はい・・いっぱい、いっぱい、リカのお口を舐めてください!」
宣言通りにリカの口の中を九龍の舌が這い回る。
口の中を蹂躙されるリカは九龍の手がベビードールの中に入ってきても
やはりされるがままに体をまさぐられていた。
「お待たせ〜」
体操服にブルマは変わらずの八千穂が風呂場から姿を現した。
八千穂の服装が変わってないのは別に着替えが無いからではない。
下着と寝巻きは自分の部屋よりもここに置いてあるのだ。
だがブルマという戦闘服が湯上りに着る事でパワーを増す事を知っての行動である。
その作戦は間違いではなく、普段の九龍なら
うっすらと桃色に茹で上がった太腿に飛び掛り押し倒していただろう。
だが、今日は少女がいる。
九龍は心の中で血の涙を流しながら八千穂の攻撃に耐えるしかなかった。
「あれ?」
「ちょっと待ってて。
恥ずかしがっちゃってさ。
ほら、おいで?お兄ちゃんも待ってるから」
八千穂にうながされ少女はおずおずと後ろから出てきた。
薄い赤色のワンピースが浅黒い肌に似合い少女の清楚な感じを引き立てている。
「おおー!可愛い!
すげえ似合ってる!」
「えへへ・・ありがとうオニイチャン。
・・あのオネエチャンは?
まだオレイ言ってない」
「あっとリカちゃんは疲れてたみたいでもう寝ちゃったよ。
お礼はまた明日でいいんじゃないかな?」
九龍の言うとおり、リカは九龍の布団で幸せそうに眠っていた。
ぴくぴくとかすかに痙攣していたり小さく息を荒げてたりするが気にしてはいけない。
「服のお礼はお兄ちゃんの方でしてくれたみたいね?」
「やっちー、目が怖いよ。
してくれた事にお礼を言うのは当然だろう?」
九龍の言外に述べている要求に八千穂は火照った顔を更に赤くした。
自分が九龍にお礼を言わねばならない立場である事を思い出したのだ。
そして、九龍が喜ぶお礼といったら一つしかない。
「ぁ・・そんなもう・・九ちゃんってば・・・そりゃあたしだって・・でも・・
いつかみたいに立てなくなったりすると困るし・・・その・・嫌とかじゃなくてぇ・・・
・・でもお礼はしなきゃだよね・・・うん・・がんばっちゃう・・」
胸の前で指を突き合わせもじもじと小声で呟き出した八千穂に華麗にスルーすると
九龍は少女のお尻の下へ腕を回し抱え上げた。
片手版お姫様だっこという奴である。
「今日は疲れただろう、もう寝る?
僕と一緒の布団でもいいかな?」
「ハイ!イッショがいいです!オニイチャンとイッショにねたいです」
「だ、駄目だよ、九ちゃん!
まだ子供だよ!?」
壮絶に勘違いする八千穂の頭に九龍はぺしっと軽く手刀を降ろした。
「やっちー、そろそろ戻ってきてくれる?
もう寝るから」
「あ・・・ごめん、先に寝てて」
髪を解き始めた八千穂を置いて九龍はベッドへと近づいた。
さっきまで余韻に浸って悶えていたリカは本当に寝てしまっているようだ。
その寝姿に九龍は頬を緩ませそっと布団をめくった。
そこへゆっくりと少女を降ろす。
少女は九龍の腕の中が名残惜しそうであったが素直に体を横たえた。
「狭いかもしれないけど・・」
「ウウン、そんなことないデス」
そう言いつつも少女は落ち着かない様子でベッドを手で押したりしている。
「お待たせ、ってどうかしたの?」
「ナ、ナンデモないです。
こんなフカフカなところにネルのはじめてだから・・」
「あー、分かるなぁそれ。
九ちゃんのベッドっておっきいし柔いしで戸惑うよね」
「よくココでネルんですか?」
「そ、そーいうわけじゃないけどさ。
た、たまにね、あはは、は、は・・・で、電気消すね?」
笑顔を張り付かせたまま八千穂は明かりを消すと九龍の隣へ潜り込んだ。
キングサイズのベッドとはいえさすがに四人目という事で少し狭い。
九龍へ体を押し付けるようにしているのはそういう理由からであり
そうしたいからではないのだ。
九龍が喜ぶからとか、二人だけの時も似たような距離とかそんな事は関係ないはずである。
おそらく。
「おやすみ」
「おやすみなさーい」
「オヤスミナサイ・・」
枕として提供された腕の温もりに少女はうっとりと目を閉じた。
凄くドキドキするのに安心する。
父親ではない男の人と一緒の布団で寝るというのに全く嫌悪感も警戒心も感じない。
叫び出したいような嬉しさの中、少女は胸に秘めた決意を新たにしていた。
その夜――静まり返った部屋の中で
八千穂は九龍の上へと覆いかぶさり一人悶えていた。
(やーん、もぉ・・・二人とも可愛いよぉ・・・)
視線は二人の少女へと熱く注がれている。
ブルマの中に九龍の手が伸びている事もあり
八千穂は静かに荒げた息を九龍の胸へとかけていた。
(だめだよ、やっちー。
手は出さないって約束だよ)
とろんとした目つきで少女を見つめる八千穂に九龍が囁く。
同時に中指を排泄器官へとねじ込み意識をこちらへと向けさせる。
「はぅっ!」
(声だしちゃ駄目)
ぴくんと背を張らせる八千穂へ九龍がいじわるな指示を出す。
「んっ・・」
指はぐにぐにと強引に押し入り八千穂の中を柔らかに掻きはじめた。
「んっくぅぅ・・」
(キスしてやっちー。
口を塞いで上げる)
言われた通りに口を繋ぐと九龍の指は更に激しく動き始めた。
舌の絡まる水音と弄くられる肉の音が静かな夜に響き渡る。
その淫靡な静寂が破られたのは思いがけない一言だった。
「オニイチャン・・・?」
「「っ!」」
九龍の片腕はまだ少女の枕に貸したままだったのだ。
その上であんな事を至近距離でされては起きて当然である。
慌てる九龍と八千穂とは対照的に少女は脅えもしなければそれほど驚いた様子でもない。
「オネエチャン、オニイチャンのおヨメさんですか?」
「へ?」
「あ、あはは、そうね。
まあお嫁さんの一人みたいなもんかな」
暗闇の中、八千穂の言葉に少女の瞳が鈍く輝いた。
「オニイチャン、おヨメさんいっぱいいるんですか?」
「え、いや・・・」
「いるよ。
あたしの他に椎名さん、双樹さん、月魅と雛センセで五人かな」
一瞬、ぽかんと口を開けた少女はすぐにゴクリと息を飲み込んだ。
ほとんど諦めかけていた夢がもしかすると叶うかもしれない。
少女は八千穂の下に敷かれている九龍の顔へゆっくりと顔を近づけていった。
「オニイチャン・・ワタシもおヨメさんのヒトリにしてください!」
「な、何を・・」
「ワタシじゃダメですか?
ワタシほかにナニもいりません。
オニイチャンのコドモがほしいです」
間近に迫る黒い瞳。
暗闇の中でもその覚悟の色がはっきりと見えた。
「やっちー、電気点けて」
「う、うん」
言われるがままに八千穂は立ち上がり電気を点けた。
夜の闇から真昼の中へ放り込まれ少女は眩しそうに目をしかめた。
「よく見てるんだよ」
九龍はそれだけを言うと八千穂へと向き直った。
「やっちー、お手本を見せるからお尻出して」
「え、あ・・・・・・・・・・・・うん・・・・・」
戸惑い、狼狽え、八千穂はゆっくりとブルマを脱いだ。
九龍が突然発情しスルのは珍しくもないけれど、人前でというのは経験がない。
だが、それは止めたり九龍を嫌いになったりする事にはならなかった。
むしろ、八千穂は好みの少女の前で犯されるというシチュエーションに
股から体液を分泌させている。
「膝に手をついてお尻をこっちに向けるんだ」
「・・はい」
ベッドに座る九龍の前にむき出しのお尻を差し出す。
丸見えになった白い秘所はてらてらと輝き汁を滴らせている。
「あんまり他人のって見たことないよね?」
「は、はい・・・」
「君のもこうなってるんだよ。
いや、やっちーは特別にスケベだからちょっと違うかもしれないな」
八千穂のお尻の穴がひくひくと震える。
九龍の言葉を肯定するように触ってもいない恥丘がかすかに蠢いている。
まるでそこだけが別の生き物のように。
「普通はこっちにいれるんだけど今日はこっち。
さっきまで弄ってほぐしてたし、やっちーそろそろ危険日だしね」
九龍は立ち上がるとおもむろにズボンを脱いだ。
腹に当たる程反り返った剛剣に少女の目が大きく開かれる。
九龍はその視線に気付いて微笑むと八千穂の尻へとそれをあてがった。
「〜っ・・・!」
少女の見ている前で八千穂の尻穴は九龍を飲み込んでいく。
衝撃と驚愕で少女は声も出なかった。
ソコでする事も知らなかったし、あんなに広がるなんて思いもよらなかった。
「じゃあ、やっちー。
見てもらおっか?」
九龍はそう言うとはめたままゆっくりと動き、八千穂を軸にして少女と向かい合った。
「オネエチャン・・・」
間近で見る事になった八千穂の顔は苦しそうに息を吐きながらも
嬉しそうに細められた目は悦びに蕩けている。
「動くよ」
「ぁっ・・ぁぁああ」
九龍がずんずんと突きはじめると八千穂が泣いているような声を上げ始めた。
「んんっ・・・・!」
突然、声が已んだ。
九龍はまだ突き上げているが八千穂は声をかみ殺したように震えている。
「もうイッたのかい?やっちー」
「え、イッタって・・・」
少女が声を出そうとすると、布団を握り締めていた手が襲い掛かった。
「きゃっ!」
突然抱きしめられ脅える少女に八千穂は頬をくっつける。
「あっあっあっあっ」
九龍の動きに合わせて漏れる八千穂の甘い声。
それを耳元で囁かれ少女は高ぶる胸の鼓動に目を閉じた。
(オニイチャンこんなふうにうごくんだ・・・
こんなふうにされるんだ・・)
卑猥な匂いが少女の鼻を刺激する。
突かれているのはオネエチャンのはずなのに揺さぶられている内に
自分がされているような錯覚に包まれてくる。
「そろそろいくよ、やっちー」
「あぅん、あ、あ・・・」
少女を強く抱きしめ、八千穂は頷いた。
それが九龍への返事だと気付いたのは少女だけだっただろう。
「んくっ」
「あぁぁ・・・」
九龍の動きが止まり、八千穂が歓喜に満ちた声を上げる。
少女はコトの終わりを知り、ゆっくりと目を開けた。
「・・・これと同じコトをされる覚悟はある?」
八千穂の尻を掴んだまま、九龍が視線を寄越す。
こんなにもいやらしい事をした直後だというのに
九龍はいつものように爽やかな微笑みをたたえていた。
「・・・オニイチャン・・」
少女の答えは決まっていた。
はじめから決まっていて、その思いは更に加速している。
少女はゆっくりと八千穂を引き剥がすと
貰ったばかりの服へと手をかけた。