・独白
「・・・っ、やっ!明日香さ・・ん」
ぱくぱくと口を動かしてみても、ほとんどあえぎ声しか出そうにない。
「ねぇ‥‥幽花、どこがいいの?教えてよ‥‥」
明日香さんの声。酷く明るいその声はそう、楽しんでいるのだ。
私が限界なことも、なにをして欲しいかも、それから今どんなことを考えているかまできっとわかっている。
「ん・・・・‥っわ‥かってるくせに‥意地が悪いわっ」
お互いの肌の温もりを、直に感じて上がる息と、上がる鼓動。
その部分を穿つ明日香さんの指は緩慢な動きと性急な動きを繰り返して内側を擦るけれども…
わざと一番感じる場所だけを外してる。
空いた方の指が、私の濡れて額にかかる髪をそっと払って、そのまま輪郭を辿って、親指で下唇をなぞる。
私を覗き込む明日香さんの瞳は今は、その奥で欲望の熱が灯って見え隠れしている。
「‥‥幽花‥・どうしたいの?言わなきゃ分からないよ」
「‥‥っぅん‥やっ、明日香さ、おねがっ‥‥‥」
呼吸と共に吐き出すことが出来たのはたったのこれだけで。
嬉しそうに笑う明日香さんの吐息にすら追い詰められて目尻からは涙が伝う。
明日香さんはそれを舐めてはくれるのに肝心なところには手を出さない。
羞恥心とうずきがせめぎあう。
理性が。
押し流されそうになる。
「お願いっ…!!」
ようやく言えたと思った瞬間、明日香さんの指が熱く濡れた私に突き入れられ、容赦なく奥へと進められる。
はしたないほどに溢れる蜜。
腿を伝い、足首まで到達する。
「……や……あっ…ぁあっ……!!」
「可愛いよ、幽花」
もう絶対に出せないと思っていたのにまた声が漏れ出して。
限界を押し広げて暴れ出す体を鎮められない私。
反射的に明日香さんに縋りつく腕に力が込められる。
達するときの、圧倒される快感と恐怖。
未だに身体が強張ってしまう。
「大丈夫だよ…」
明日香さんはいつも、安心させるように耳元で囁いてくれる。
「……ん…く……ぅっ…!」
私を粉々にするために、明日香さんが指を動かし始めるともう何も考えられなくなってしまう。
「っ……ぁああああっ!!!!」
無理矢理に声を絞り出させられて。
視界は真っ白に。
今日だけでもう何度目になるかわからない絶頂に、私は半ば意識を飛ばしていた。
――温かい明日香さんの乳房を頬に感じる。
いつも、した後は明日香さんに抱きしめられて二人でシーツを分け合う。
「幽花…よかった?」
明日香さんは悪戯っぽくそんなことを聞く。
恥ずかしくて答えられず、私はかろうじて頷く。
触れた皮膚と皮膚の間から、伝わる体温が、とても心地いい。
明日香さんは私の身体を知り尽くしている。
もう、何度貪られたのか、覚えていない。
幾度涙を流したのかも。
明日香さんはとても優しくて、私を大切にしてくれているのがわかる。
でも、この秘め事の時は全く容赦はしてくれない…。
いつも足腰が立たなくなるまで愛されて、這うように逃れようとしても、明日香さんは私の腰を掴んでベッドへ引き戻す。
いやいやをするように首を振り許しを願っても、返事の代わりにキスの嵐。
そして気絶寸前になるまで、その部分を責め続けられる。
やがて、私の息が整い、回復してくると明日香さんが、私の上に身体を重ねる。
「あ、明日香さん…も、もう?」
次をはじめるの?
私の問いに、明日香さんは素敵な笑顔で恐ろしいことを口にする。
「明日は休みだから…今日は一晩中できるね」
一晩中…。
想像をして羞恥と恐怖と期待に、胸が早鐘を打ちはじめる。
「一晩中なんて…身体が持たないわ…」
「それは、幽花がすぐにイっちゃうからだよ。本当に堪え性がないんだから…。私がこれから鍛えてあげるからね!」
言うなり、明日香さんのキスが鎖骨に落ちる。
私の弱いところ。
「あぁ、そんな…そんな……っ」
でも、逆らえない。
貪る者と貪られる者。
どんなに浅ましい姿を晒そうとも、私は明日香さんを愛してしまっているから。
そして、彼女が与える快楽から逃れられないから…。
また、恥ずかしいほどに熱い蜜が漏れ、明日香さんの指を濡らす。
明日は寝込んでしまうかもしれないと覚悟しながら…。
私はまた、熱い涙を溢れさせて枕を濡らした。