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・儚い想い



そっと寄り添ってみる。
あくまでも、自然に。緊張しないように。
それから、肩に手を置く。
そうすると幽花は絶対に、明日香の想いを裏切らない。
肩に置かれた明日香の手を、幽花はそっと握ってくれる。
白くて、細くて、硝子細工みたいに綺麗な指。
だけど、ちゃんと血が通っていて、明日香の手にぬくもりを伝えてくれる。

最初に美術室を訪れたのはいつだっただろう。
明日香は、気になる「白岐サン」に不思議な思いを抱いている。
仲良くしたい。
それももちろんあるけれど、理由がわからない何かがあった。
ひっそりと、静かに絵を描く彼女はとても神秘的で冒しがたい空気がある。
それでも勇気を出して話しかけた明日香に、幽花は快く応じてくれた。
それから、二人の仲は急速に進展した。
一緒に休み時間を過ごしたり、お昼を食べたり。
やがて明日香は何よりも二人の時間を大切にするようになった。
幽花はおよそ無条件に、明日香の全てを受け入れてくれる。
そして、明日香も幽花の全てを受け入れる。
いつしか、明日香の呼びかけは「白岐サン」から「幽花」に変わった。
幽花の呼びかけも「八千穂さん」から「明日香さん」に。

寮でもお互いの部屋を行き来するようになった。
幽花はとても博識で、明日香の知らない世界を広げてくれる。
幽花は明日香の純粋な心に触れて、笑うことが多くなった。
明日香は直情的に気持ちを伝えてくれる。
それが心地よくて、愛しくて、氷ついた心が溶かされていく。


―――やがてお互いに、はっきりと自分たちの関係は「特殊」なものであると気づいた。
クラスで噂されるようになった、幽花との関係。
(八千穂さんと白岐さんって―――)
(―――すごく仲良くなったよね―――)
(でも)
(――ちょっとおかしくない?)
(なんか――――)

(あやしいよね)

その噂には根拠はない。
何を見たわけでもないのだろう。
でも、間違いなく的を射ていた。

「幽花」
呼びかけてみる。
「明日香さん…」
あまりに優しく、そしてあまりに哀しい声音。
そんな悲哀が篭もるようになったのはいつからか、二人が口唇を重ねるようになってから。
はじめて口唇を重ねたのは、大胆にも放課後の美術室だった。
はっきりと憶えているあの瞬間。
静まりかえった美術室の中で、誰にも邪魔されずにお互いを感じていた。
最初は額に。
そして耳に、顎の下にくすぐったいような、柔らかな動きで、明日香はその口唇で幽花にキスをする。
そして。そして、ゆっくりと時間をかけて、口唇と口唇が重なる。
暖かな、柔らかな感触。
確かなものはこの感触と鼓動と温度と吐息だけだった。


二人とも自分のしていることが間違っているとか、悪いことだとか思ったことは一度もない。
そもそも自分たちのしていることは、善悪で判断がつかない、とても難しいこと。
でもきっと、他人に知れたら好奇の目に晒される。
そんな後暗さが不安を掻き立てるのだろう。
キスをする明日香の腰に、幽花の腕が絡みつく。
明日香も折れそうに華奢な幽花の肢体を抱きしめる。
もう何度、口唇を重ねただろう。
初めてしたときは軽く触れる程度で、お互い激しく赤面して瞳をそらしたけど。
喉がカラカラに渇いて、鼓動が速まって。
一生、忘れられない瞬間になった。

そんなことを思い出していると、幽花の長い髪がサラリと頬を撫でる。
今度は幽花からのキス。
「ふぁ……ん…っ」
鼻腔に薫る、幽花の甘い吐息。
舌が積極的に、大胆に絡まってくる。
重なり合った二人の唇の間から、熱い吐息が漏れる。
灼けつくように熱くて、そしていつまでも唇に残る錯覚。
「「ん…!……ふ、んうぅ………」」
舌を絡めて、息も出来ないくらいお互いを追い詰める。
「ん……あ、明日香さん……っ」
息が続かなくて、たまらず唇を放す幽花。
荒い息をついた二人の唇の間には透明な架け橋ができて、プツリと切れた。
「幽花…好き…」
そう言って明日香は再び唇を重ねる。今度は、そっと。
陶然とした表情でキスを受けとめてくれる幽花が愛しくてたまらない。
「私も…好きよ、明日香さん…」
キスの後、彼女はそう言って微笑んだ。
それで、止まれなくなった。
「幽花………、幽花ッ」
名前を呼びながら乱暴に引き寄せ再び唇を重ね、制服の胸元から手を差し入れる。
解けて滑り落ちるスカーフ、サイドジッパーを下げる手が震える。

やがてシャツのボタンを外すと、痛々しいほどに白い肌が剥き出しになる。
何故か感じる、微かな背徳感。
その、幽花の肌を隠すように手を伸ばすと小さくて柔らかな膨らみが、指の間で形を変える。
背中に指を這わせ、そのまま腰、臀部へと撫で下ろす。
プリーツの間に隠れたジッパーを下げると、あっけなくスカートは床に落ちて形を崩す。
清楚な白の下着を下ろし、両足の間へ差し入れると、敏感な部分に指が触れる。
薄い茂みの奥はすでに熱い蜜でしっとりと濡れていた。
「……濡れてる。うれしい。感じてくれて」
そういって、身体を傾け、幽花の胸の上に頭をもっていく。
右胸に唇を更に押しつけ、 堅く尖っているそれを舌先で弾き音を立てて強く吸い付いた。
「は……あぁッ…明日香さん…」
幽花の喉は声を絞り出してしまう。
明日香の肩に必死で掴まっている華奢な手。
間隔を置きながら何度も吸い、舌先でそれを上下に弾くと 幽花の様子が変わってきた。
微かに首を振り、肩に置いた手で突き放そうとしている。
様子を伺おうと唇を離すと、幽花が濡れ光る瞳で訴えてきた。
――許して。
何を意味しているかはすぐに察知できたが、 明日香は幽花の視線を無視して右胸への愛撫を再開した。
「はッ、ん、明日香さ…っ」
小指の先ほどに膨らんだそれを歯を立てて挟み、舌先で左右に弾く。
幽花の体が左右に捩れる。だが愛撫を弱める事無く、更に激しく責め立てる。
「ひぁ!あッ、んッ!」
悲鳴に近い声が喉から漏れる。肩を掴む手に力が入ってくる。
「あ、明日香、さ…お、お願い…私…これ以上…は、ぁ」
余程堪えているのか、目尻に涙を浮かべていた。
思わず息が詰まるほど可愛い幽花。
明日香はやっと右胸の愛撫を止め、幽花の目尻にキスをして涙をすくう。
幽花は待ち焦がれていた左胸への愛撫を迎え入れた。

明日香は左胸を口に含み、舌の表側を使いゆっくりと舐める。
「…あ、ん、…んッ」
左胸から甘い刺激が伝わってくる。
腕を上げ、幽花の臀部を撫でる。そこから腿へと濡れた手を移動させ、
そのまま腹部の辺りへ滑らせる。
「ん、く……明日香さん」
「…私以外の事は何も考えないで…」
「……んん…」
幽花が頷くのを確認すると、明日香は一気に手を下腹部に潜り込ませた。
「あ、ぁ、…ん!」
中指の先に当たる突起を見つけると、両脇の指を使い秘烈を広げ
包皮を剥ぎ、その部分を直接中指で触れて愛撫した。
「……ッ!!くぁ、あん、明日香さ…ッ!?ふあぁ…」
強い快感が幽花の体を硬直させ、必死に明日香にしがみ付こうと腕に力を込める。
指で抑え付けている突起が微動した。重ねている唇の隙間から幽花の声が漏れる。
「や、ぁ!……ふ」
明日香は指を離しそのまま手を奥へ滑り込ませ、 浅いところでの出し入れを続ける。
そして熱く熟れているそこへ中指を付き立てた。
「ひあッ、ぁ…」
「幽花、…好き、大好き…ッ」
少しずつその濡れた中へ指を飲み込ませていく。
幽花が感じている。
感じて、喘いで、明日香に全てを見せてくれている。
根元まで入れ終えると、幽花が大きく溜め息を吐いた。
少し行きすぎた愛撫のせいなのか、既に中は熟しきって柔らかくなっていた。
指を大きく動かす。幽花腰が遠慮がちに少し引く。
その仕草が可愛くて、腰を掴んで引き戻してやる。
「あ、明日香さん…!?」
「だめだよ、幽花…ちゃんと…ッ、私を感じて…」
親指の腹で手前にある突起をゆっくり潰すように撫でる。
明日香はその指を何度も幽花に入れたり出したりと抜き差ししながら、自分の秘所も片手で激しく愛撫していた。

「! や、だ…めッ、あ、ん」
幽花の身体が限界に近づく。
それを見て明日香の手がいっそう激しく動き始めた。
「あぁっ!」
反応してしまう腰を動かすまいとして、幽花はすがる様にして抱きつく。
額に掛かる明日香の息は熱い。
「ふ、…あぁ!」
中で暴れるように動く指についていけず、奥が喘ぐようにひくつく。
「明日香……は、やぁ、も…」
幽花が限界に近い事を悟り、 明日香は周囲が激しく収縮し、動かしにくくなった指の動きを早めた。
「くぅ、んッ!」
ふと目をやると幽花の耳が真っ赤になっている。
なんだか、たまらなく可愛く思えて、耳元にわざと息を吹き掛け、指を内壁に擦り付ける。
幽花の腰全体が震えてきた。
快感の波が次から次へと襲っているのだろう、幽花が登っていくのがわかる。
そうして、やがて。前兆もなく、突然にそのときがきた。
「…ふあああああッ!!!」
激しく痙攣する幽花の身体を抱きしめ、明日香は指を思い切り奥まで突き入れる。
熱い蜜が断続的に噴出して、明日香の指をしとどに濡らす…。



茜色の静まりかえった美術室。
ふたりは静かに涙を流す。
激情をはらしてしまうと、いつも後悔と無力感に襲われる。
それに潰されないよう、痛いほどにお互いを抱きしめ合う。

「ねえ、幽花…」

「明日香さん…」


――――ずっと、一緒に。

想いは同じ。
実現の可能性は低い、儚い希望。
無邪気に永遠を信じられない、つまり、「大人」に近づいているのだろう。

それでも、明日香は囁く。
「ずっと一緒にいようね」と。

それでも幽花は答える。
「ええ、ずっと一緒よ。明日香さん…」と。