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 ちらちらと雪のような花弁の舞う、浜離宮庭園。
 薄く開いた襖の側を通り掛った芙蓉は、中を覗き込んで眉を顰めた。
 『華』一文字が縫い込まれた制服を掛け、腕を枕にして畳に寝転がる男が一人。閉ざされた瞼と僅かに上下する胸許で、眠っているのは明らかだ。

 秋月マサキの護衛であり、芙蓉の主・御門晴明の旧知の友、村雨祇孔が此処に居る事は珍しくない。
 柳生の一件以降、世間も至って平穏な物で、マサキの護衛としての任務に、若干の余裕が生まれているのも事実。
 しかし肝心のマサキは、今日は御門と共に、政府官僚達との面会のため、浜離宮を留守にしている。
 わざわざ午睡のためだけに、此処を訪れたような村雨の様子に、芙蓉は眉間の皺を深くした。

 襖に手を掛け開く。
 村雨の側に歩み寄った芙蓉は、音もなく腰を下ろした。
 日頃から何かをはぐらかすような、薄い笑みを浮かべている男の寝顔を見るのは初めての事。鍔の割れた帽子も今は無く、艶のある黒い前髪が、僅かに目許に掛っている。

 何故、そうしようと思ったのか。
 人ではないと、常日頃から口にする芙蓉には分からない。
 しかし、芙蓉はそっと白い指を伸ばすと、村雨の瞼に掛る髪を払い除けた。指はそのまま、滑るように村雨の髪を撫でつける。
 村雨を見つめる眼差しに憂いが含まれている事に、芙蓉自身も気付いてはいなかった。

「ん……」

 どれ程そうしていただろうか。
 低い声を漏らした村雨が寝返りを打つ。
 そこでようやく、自身の行動に気付いた芙蓉は、慌てて村雨の髪から手を離した。

 否。

 離そうとした華奢な手は、武骨な手に掴まれる。
 やましい、などと言う感情は持ち合わせていない筈なのに、酷く居心地の悪い状況に、芙蓉は戸惑ったように掴まれた手に視線を落とした。


「起きていたのですか」
「いや、今、目が覚めた」

 芙蓉の手を握り締めたまま、目を開けた村雨が笑う。
 いつもと変わらない、皮肉めいた薄い笑み。
 芙蓉は村雨の顔へと視線を移すと、感情のない声音で呟いた。

「離しなさい、村雨」
「嫌だと言ったら」
「離すのです」

 頑なまでに解放を願う言葉に芙蓉の行動は伴わない。
 握られた手を振り払う事は簡単な筈なのに、身動き一つ出来ない。

 村雨の眼差しのせいだと、芙蓉は思う。

「夢を、見ていた」

 表情はいつもと同じなのに、真っ直ぐに芙蓉を見つめる瞳は真摯。
 村雨は少しだけ、眉尻を落として目を細めた。

「遠い未来。俺がヨボヨボの爺になって、お前に看取られる……そんな夢だ」
「……」
「夢の中でも、お前は今の姿のまま。……何一つ、変わりゃしねぇ」

 握られた手に力が篭る。
 芙蓉は目を伏せて、自身の手を包む村雨の手を見つめた。

「何を今更。私は人ではありません。老いる事もなければ、死ぬ事もない」

 当然の事です。
 そう告げた声には力が無かった。

 御門の繰る『式神』として、芙蓉はこの世に存在している。
 自分は『人形』なのだと芙蓉は思う。主の命を聞き、与えられた使命をこなすだけの『人形』なのだと。
 それを苦痛に思った事はない。思う感情も持ち合わせてはいない。

──なのに、何故。

「だったら、どうしてそんな顔をする」

 繋いだ手を強く引かれ、芙蓉は村雨の上に倒れ込む。
 抗議の声を上げようとするより早く、村雨の手が芙蓉の背中に回された。

「自分は人間じゃないって言うなら、何でそんなに泣きそうな顔をする。『人形』は、そんな風に泣いたりはしねェ」
「村雨……ッ」
「お前は人間だ、芙蓉。その証拠に、ちゃんと感情があるじゃねェか」
「な、何を戯言を」

 抱き寄せられた胸許からは、命ある証である鼓動が、規則正しく聞こえて来る。
 自分の中にはないそれは、男と自分を大きく隔てる壁のようで、芙蓉は慌てて顔を上げた。

「俺はお前が好きだ」

 事も無げに言い放った村雨と、芙蓉の視線が交差する。
 『人』ならば、こう言う時、どんな表情を返すのだろうか。
 ふとそんな事を考えた芙蓉に、村雨は笑い掛けた。


「だが、お前は違うんだろ? 「私はお前が嫌いです」なんて言ってくれやがるしな」
「その通りです。……いい加減に離しなさい」
「けどな、芙蓉」

 芙蓉の言葉を無視し、村雨は背中に回す腕に力を込めた。

「その『嫌い』って感情は、いったい何処から産まれて来るんだ」

 思わず、息を飲んだ。

 単なる言葉の上の事だ。
 ただ、それだけ。深い意味などある訳がない。
 否、意味を持ってはいけないのだと、芙蓉は自分でも気付かぬうちに、その事実から目を背けていた。
 村雨に対する想いだけは他の誰とも違う物。理解出来ない。
 だからこそ「嫌い」の一言で、全てを突き放して居た事に、今更になって気付く。

 それと同時に、目の前の男に対する何かが、胸の奥深くから沸き上がる。
 決して心地良くはない。逆に、この場から離れたいと考えてしまう。
 そう思う事すらも「感情の一種」なのだと、見せ付けられているようで、芙蓉はただ村雨を見つめていた。

 村雨の手が背中を上がり、首筋から後頭部へと上る。

「例えお前が俺を嫌いでも構わねェ。その感情がある限り、俺はお前を一人の女として見続ける」

 優しく笑い掛ける村雨の言葉に、芙蓉の中で何かが渦巻く。
 甘く匂い立つ花のようで、それでいて、締め付けられるような感覚は、芙蓉の存在を揺るがす。

 ──恐れだ、と。
 真っ直ぐな眼差しを受けながら、芙蓉はその単語に思い当たった。

 自分は、恐れている。
 理解出来ない「感情」と言う代物に。それを知らしめようとする目の前の男に。
 そして、いつか受け入れなければならない、この男との別離に。

 自覚は一瞬だった。
 ほんの僅かに目を伏せた芙蓉は、力を無くして村雨の胸に頭を乗せた。

「何故、お前は……笑っていられるのです」

 それは、《黄龍の器》である緋勇龍麻と出会ってから、芙蓉が一番理解したかった事だ。


「村雨は、怖くはないのですか。お前の夢は嘘ではありません。いつかは死ぬ。けれど私は──」
「怖いさ」

 呟きを遮られ芙蓉は再び顔を上げた。

「死ぬのも、別れるのも怖い。だがそれ以上に、今こうしてお前の側にいられる事の方が幸せだ。だから、俺は笑っていられる」
「……しあわせ」
「あァ。惚れた女を失う辛さが無い分、俺は他の男よりも運が良い。そう言う事だ」

 そう言って笑った村雨は、芙蓉の頭を引き寄せると、ゆっくりと唇を重ねた。
 不思議と自然な事に思えて、芙蓉は躊躇いがちに目を閉じる。
 いつの間にか繋いでいた手は解かれ、芙蓉の頬に村雨の手が沿えられる。
 顎を下ろされ反射的に開かれた唇の隙間から、熱い物が差し込まれた。

 翻弄される。
 改めて教えられた感情にも。自分の中を蠢く熱にも。与えられる刺激にも。
 胸の奥に渦巻く感情は色を変え、頭の芯を白く塗り込めて行く。
 口付けを交しながら芙蓉は苦しいと思った。
 体が、ではない。感情を自覚したばかりの心が、張り裂けるように痛む。

──なのに、何故。

 この苦しみを、もっと味わいたいと思うのだろう。

 薄く目を開けると、同じように目を開けていた村雨の視線とかち合う。
 その途端、芙蓉の口の中で蠢めいていた何かは動きを止め、ゆっくりと村雨が唇を離した。

「……どうしたのです」
「いや。……あのな、芙蓉」
「はい」

 先程とはうって変わって、所在無さげに村雨が眉を寄せる。
 その変化に芙蓉は僅かに首を傾げて見せたが、村雨は苦い笑みを浮かべると、小さな吐息を漏らした。


「いや。何でもねェ」
「……そう、ですか」

 また一つ。
 はぐらかされた事を寂しいと思い芙蓉は目を伏せる。
 村雨は体を起こして芙蓉の頬に両手を沿えると、今度は優しく唇を重ねた。

 重ねられた唇は柔らかい。
 頬に沿えられた手の温もりは、単純に村雨の熱のせいばかりではない。
 自我の目覚めに戸惑いながら、それでも芙蓉は村雨の行為を受け入れる。
 再び舌を差し込まれ絡め取られる。
 息苦しさに口の端から漏れた吐息は、熱を孕んで村雨の頬に降り掛る。

 首筋から肩へ。着物の襟を村雨の手が伝う。
 その感触に、芙蓉は身震いをする程、心が波立つのを感じた。
 片手は帯を解こうと腰へ。もう片手はゆるゆると着物の襟を開けていく。
 その手を止める事も出来ず、芙蓉はただ村雨の制服を握り締める。
 外気が肌に触れる。寒いとは思わなかった。
 唇を離した村雨が笑う。
 これから先の行為が何なのか、分からない訳ではなかったが、止める気にはなれなかった。
 だが。

「芙蓉」
「村雨、お前は……後悔はしないのですか」

 普通の女性ならば、胸を開けられれば隠そうとするだろう。
 しかし芙蓉は、白い肌を惜し気もなく晒したまま、真っ直ぐに村雨の視線を捕え、村雨の言葉を遮った。

「抱けば慕情は募る。それだけお前は、私に触れられないと、自覚する事になるかも知れません。それでも良いのですか」

 芙蓉にとって、これは最後の砦。
 男女の営みの中で何が産まれるのか、実際の所は何も知らない。けれど、恐らくは事実となって降り掛る。
 少なくとも、芙蓉には。

 そうなる事が寂しいと、今の芙蓉には分かってしまっている。
 だからこそ、訊いておかなければならない。

 村雨は少し考えるように目を眇めたが、やがてフッと小さく笑った。

「構わねェ」
「村雨ッ」
「惚れた女を抱くのに理由が要るか。例えお前が何者だろうと、俺は絶対に後悔なんざしねェ。だからお前も、足掻いて見せろ。そのためなら、俺の命を賭けたって構わねェ」

 芙蓉の声は叱責にも似ていたが、村雨は淡々と言葉を紡ぐ。自信に満ち溢れた言葉は、芙蓉の体全体を巡り、また一つ感情を呼び起こす。

「村雨……お前と言う男は……」

 目を伏せた芙蓉は村雨の肩に頭を埋める。
 胸の奥が綻ぶ。暖かい感情は嬉しいと呼ぶ物なのだろうか。


 村雨は芙蓉の頭を優しく撫でながら、ゆっくりと彼女を横たわらせた。
 黒髪が広がり、白い肌が映える。
 赤い唇に一つ、口付けを落とした村雨は、ゆっくりと唇を滑らせる。
 首筋から耳元へ。耳たぶを優しく噛まれ、芙蓉の喉が震える。
 武骨な手は優しく胸を揉みしだき、硬くなり始めた頂きを指の腹がなぞる。

 芙蓉は村雨の頭を掻き抱くと、与えられる熱に目を閉じた。

 自分は人ではない。
 けれど、沸き上がる想いは、決して嘘ではない。

 熱の篭った吐息が芙蓉の口から溢れ落ちる。
 村雨の唇は鎖骨を這い、やんわりと歯が立てられる。熱い舌先は、浮かび上がった骨を撫で、強く其処を吸い上げられる。

 優しく、力強く。徐々に朱に色付く双丘を揉まれ、芙蓉は薄く唇を開く。男の名を呼ぼうとしても、喉の奥で言葉は途切れる。

 村雨の動きに遠慮は無かった。
 唇で硬く色付いた頂きを挟み、舌先で其処をチロチロと舐める。かと思えば音をたてて吸い上げられ、喉を反らし仰退いてしまう。
 両の手は村雨の髪を柔らかく握り、震える喉の隙間を縫って、言葉にならない声が溢れた。

 いつの間にか、帯は解かれ、着物は畳へと広がる。
 芙蓉の足の間に、村雨の体が割り込んだ。
 脇腹から太股へと伝う手。その指の一本一本、爪の形すらも感じ取れるような錯覚に、芙蓉の眉間に皺が刻まれる。

「ああッ」

 一際熱く甘い声が、芙蓉の口を吐いた。
 顔は胸に埋めたままの村雨の手が、足の付け根へと伸ばされたせいだ。
 くちと微かな水音が耳に届き、芙蓉は益々眉を寄せる。


 羞恥心、なのかも知れない。
 しかし、そうと自覚をする暇も与えられず、村雨の指先は陰核を探り当てた。

「ひ……ッ」

 ぞわりと背骨を伝う感覚に翻弄され、芙蓉は思わず腰を浮かす。
 唾液に塗れた胸から村雨が顔を上げる。
 その動きに気付いて目を開けると、薄く笑う村雨の視線とかち合った。

「ん、……んッ」

 ある筈のない心臓を掴まれたようで、芙蓉は身を固くするが、村雨の指の動きは容赦ない。
 ぐにぐにと芙蓉の陰核を弄び、時折その指を体の中心へと滑らせる。
 その動きにぬるりとした物を感じる。限りなく人に近い自身の肉体が、人と同じ反応を示す事に、芙蓉は僅かに目を見開いたが、それも一瞬。
 ごつごつとした男を感じさせる指が、ゆっくりと差し込まれた。

 荒くなる呼吸。
 はくはくと喘ぐ芙蓉の姿を村雨が見つめる。
 熱い眼差しに、より羞恥心を煽られて、芙蓉は唇を噛み締めた。

 粘ついた水音が耳に届く。
 中に埋められた指は、堅い肉を解そうと、角度を変え、何度も壁を擦る。
 同時に陰核を押し潰されて、芙蓉は眉をしかめて刺激に耐える。

 胸を締め付ける想いは、いっそう強くなる。

 愛しいと、頭の片隅で想えば想うほど、体は刺激に対して素直になり、噛み締めていた唇が解けた。

「むら、さめ……」

 熱を帯た眼差しが絡む。
 笑みを浮かべたままの村雨の顔が近付き、深い口付けが与えられる。
 腕を伸ばして村雨の体を抱き締める。
 舌を絡め、吸い、時折優しく歯を立てる。

 与え、与えられる。その刺激は酷く甘美で、『欲望』と言う言葉の意味を、芙蓉は初めて知った。

 いつしか体内に埋められた指は数を増し、激しさを増した水音が、室内に広がる。

「芙蓉、もう……」

 唇を離した村雨の意図は、考えずとも分かった。

 初めての交わりは肉体的な苦痛を伴うと聞いた事がある。
 けれど、それよりも、目の前の男に近付きたいと、芙蓉は想う。

 人になりたい。
 他の誰のためでもなく、感情を教えてくれた、ただ一人の男のために。

「構いません。お前ならば私は……」

 ひたりと見据えたまま告げれば、村雨の頬が緩むのが分かる。

「最高の殺し文句だ」

 体を起こした村雨がシャツを脱ぐ。
 引き締まった体は程良く日に焼け、綺麗だと思った。
 剥ぎ取るようにして衣服を脱ぎ捨て、村雨は芙蓉の体を大きく割り開く。
 全てが村雨の元に晒されていると言うのに、それが芙蓉には嬉しかった。
 固くそそり立つ熱が蜜壺に当てがわれる。
 ぐっ、と胸許に膝を押し付けるように体を折られたかと思うと、次の瞬間、強い圧迫感が芙蓉を襲う。

 体が軋む。

 解されたとは言え、指と陰茎では、受ける質量は比較にならない。
 息を顰め、声を殺しながらも、じりじりと焼けるような痛みに喉が震える。
 それでも耐えられるのは、他ならぬ村雨だからに違いない。

 自身の中から次々と溢れる感情に戸惑いを感じていたが、その感情を欲したのは自分自身。
 そして、その事に気付かせてくれた村雨の為ならば、この痛みすらも甘んじて受ける。
 否、痛みすらも、愛しいと想える。

 ぷつりと、体の奥で何かが切れたような錯覚を感じる。それと同時に急激に押し入る熱の激しさに、芙蓉は強く瞼を閉じた。

「大丈夫か」

 そんな声と共に、芙蓉の頬に村雨の手が触れる。
 ゆるゆると瞼を開けると、困惑にも似た村雨の表情が目に入った。


「今更、何を言うのですか」

 敢えて問いには答えずに告げた声は、力無く弱々しかったが、芙蓉は真っ直ぐに村雨の瞳を捉えていた。

「そりゃそうだが……」

 益々困惑の色を深めた村雨が、芙蓉の頬を優しく撫でる。
 その手に自身の手を沿えた芙蓉は、いまだ襲う圧迫感を忘れるように、一つ大きな吐息を吐いた。

「良いのです。私が……自ら望んだ事なのですから」

 その言葉に、村雨の目が大きく見開かれる。

 驚きを隠せぬ村雨の目に写るのは、微かに口許を綻ばせた芙蓉の表情。
 それは確かに笑みと呼べたが、芙蓉はまだ、その事に気付いてはいなかった。

 村雨はフと頬を緩めると、芙蓉の額に唇を落とした。

「やっぱり、お前は人間だ、芙蓉」
「え……」
「ちゃんと望みがあるじゃねェか」

 つくりと胸を刺した言葉に、芙蓉は思わず息を飲む。
 言われて初めて気が付いたのだ。
 自身の中に『望み』があった事に。

「なら、もう遠慮はいらねェな」

 薄く笑った村雨は芙蓉の頬から手を引くと、体の中に埋めていた陰茎を引き抜いた。

「や、あ、ああァッ」

 突然の事に、芙蓉の口から悲鳴にも似た声が上がる。
 ずるりと引き抜かれた熱は、間髪入れず再び体内へと侵入する。
 繰り返される抽挿に、芙蓉は声を殺すのも忘れ、村雨の腕を掴む。
 ぐづぐづと篭った水音は耐え間無く耳を打ち、その度に体の芯をえぐられるような錯覚が襲う。

 何度も。何度も。
 体の中に蠢めく熱に、いつしか芙蓉は思考を失う。
 ただ、共に在りたい。
 許されるならば──男が見た夢のように──彼が最後の刻を迎えるまで、側に居たい。
 それが自身の描く『幸せ』なのだ。

 快感や苦痛を越えた先にあるのは、たった一つの想いだけ。

 体の中で、一際大きく質量を増した熱が弾けた瞬間。
 芙蓉は己の望みをしっかりと抱きながら、意識を手放した。