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天香学園男子寮―――、早朝

普段は何事に対しても好奇心旺盛な熱血漢、葉佩九龍は珍しく疲れきった顔をしていた。
原因は、昨晩のある出来事にある。クラスメイトの皆守と
女子寮を覗きに出かけたものの、運悪く同じクラスメイトの八千穂に見つかり
朝までこってりと搾られていたからだ。文字通り精根尽きるまで。
「ああぁ〜、だりぃ」
昨晩の共犯者皆守の気だるい声がした。
「おはようッ、皆守ッ」
「……」
返答がない。
「……皆守?」
「なんだよ……、ってお前その顔どうしたんだ!?」
葉佩の顔は頬がこけるほどゲッソリとしている。
「色々あるんだよ」
あれから皆守は無事逃げたようだが、葉佩は念の為、聞いてみることにした。
「あの後、お前は無事寮に戻れたみたいだな」
「ああ、朱堂に助けられてな。……お前は無事じゃなかったみたいだが」
葉佩は、何故朱堂がいたのかは問いたださずに、本題に入ることにした。
「今日は、白岐の謎を解明しようと思う」
「俺は付き合わないからな」
即答された。
「ああ、いいさ。必要なのは足じゃなくて頭だ」
「お前まさかッ」
「ああ、知性99だ」
そういうや否や、葉佩は新しく届いたH.A.N.Tと試作品のゴーグルを手に
校舎の方へ向かっていった。

天香学園図書室―――、朝

まだ生徒が登校する前の静まり返った廊下を抜け、
葉佩は図書室へ向かった。とある本を探すためである。
大きな音を立て、勢いよく図書室の扉を開けた。
「七瀬ーッ? いるかーッ?」
「はい、何でしょう……あっ、九龍さん、おはようございます。探し物ですか?」
カウンターに座って作業をしていた七瀬は何故か顔が赤い。
「ああ、秘宝に関する[か行]から始まる黒と金の装丁の本を探してる。あるかな?」
名前で呼ばれた事を気に留めることもなく用件を口にする。
「か行……秘宝、あれですね。ちょっと待ってて貰えますか」
七瀬は奥の書庫室に入っていき、しばらくした後、1冊の本を抱えて戻ってた。
「お探しの本は、これですよね。様々な秘密が書かれた……私のデータは
あまりないですけど、やはり61ページが興味深いですね」
「そうゥッッ!! それだよ!! ありがとう七瀬ッッ」

「それじゃあ、早速見せてくれるかな?パンツ」

「えっ」
「七瀬のデータは載ってないんだから確かめないと。ほら、スカートめくって?」
「えっ、ええッ!? こっここでですか?」
恥らいながらもまんざらでもない様子の七瀬。
沈黙の後、七瀬は両手でスカートの裾を摘み、ゆっくりとたくし上げた。
「わ、分かりました。どうぞ……」
雪のように白く肉付きのよい太ももの付け根には薄紫色の下着が見えていた。
その中央部分は座っていたためか、布地が少し食い込んでしまっている。
(恥ずかしい)
葉佩はその様子を真剣な眼差しで見つめている。
(薄い紫……昨晩と一緒か、よし)
(真面目な顔……かっこいい……い、いけない、濡れて)
<H.A.N.Tに情報を記録しました>
「? 七瀬、濡れてる」
「あ、いや、その……んんっ!!?」
葉佩は七瀬の肩を掴み強引にキスをして、
「月魅、愛してる(ひとまず今日は白岐だな)」
耳元でそう囁いて図書室を後にした。
全身の力が抜け、膝から崩れ落ちた七瀬は恍惚の表情を浮かべていた。
「私、キスだけでイっちゃった……」

天香学園3−C廊下―――、昼休み

「やぁ、お目当てのものは手に入ったかい?」
「夕薙? どうしてそれを?」
「甲太郎から聞いた。何でも白岐の謎を追っているそうじゃないか」
あの馬鹿め、と思いつつも葉佩は微笑を浮かべながら答えた。
「この本の―――、謎を解明する」
「ほう、それは興味深いな」
そこには白岐のラフスケッチとともに、こう書かれていた。

―――そもそもこの人パンツはいているんだろうか、と。

「実物を拝見したいが、どうも僕は嫌われてるみたいでね
後で詳細なデータを頂けないか? 出来れば動画がいいな」
「高いぞ?」
「ああ、金に糸目はつけない。これでどうだ」
夕薙は両の手のひらを葉佩に向けた。
「早速行って来る」

風のように夕薙の元を立ち去った葉佩は白岐を屋上へ続く階段の
踊り場へ呼び出した。
ここなら階下から死角になるし、万一誰かに見つかっても上下、どちらにも
逃げることが出来る。
「それで、話って何かしら? 九龍さん」
「こいつをみてくれ、これは本当か? 真実が知りたい」
本題を切り出す。問題の本のページを驚いた表情で見る白岐の顔を
葉佩は見逃さなかった。
「まさか、はいてないってことないよね、白岐さんに限って」
「……」
(まずったか? いや、答えられないって事ははいてないってことだ。
そしてPHN疑惑を晴らそうとするならばめくってでもその真相を明らかにするはずッ
つまりどちらに転んでも俺のォ勝利ッ……ククク、計画通り)
白岐は本を持ったまま押し黙っている。驚いた表情は消えていた。
「……」
(PHNならばあとはロゼッタに頼んでゴーグルを透視仕様にし、)
「分かったわ、貴方は真実が知りたいのよね」
「え」
「これで……満足かしら」
白岐は少しだけ顔を紅潮させながら、片手でスカートの裾をめくっていった。
透き通るようなふとももがあらわになり、純白の下着が顔を現していた。
「白ッ! 白岐だけに白ッッ」
「九龍さん、妄想が声をついて出ているわ。愚かな人」
「ああ、すまん白岐。つい興奮してしまってな。ありがとう、おかげで謎が解けたよ」
「こんなことしなくても、温室でならゆっくり……」
消え入りそうな声で何かを呟く白岐。
「え? 今なんて?」
その時屋上の扉の向こうから女性の声がした。

「もう、皆守君、どこいったのかしら……」
屋上から雛川先生の声がする。
「ヒナ先生!? まずいッ。こんな場面見られたら非常にまずいッ」
時はすでに遅かった。
屋上の扉を開けた雛川の目には、スカートをたくし上げ、それを葉佩に
見せている白岐の姿がバッチリと映っていた。
「ちょっと、あなたたち!? 何をやってるの!」
チョークが真っ直ぐに葉佩の元へ飛んできた。
化人をも倒す必殺のチョークがH.A.N.Tへと突き刺さった。
恐らくはハードディスクごと貫通しているだろう。
白い煙が辺りを包む。
(くッ、仕方ない、ひとまず逃げるしか……同じ轍を踏まぬように
ゴーグルの内臓メモリに記録できるようにしたからなッ)
葉佩が階下へ逃げようと足を踏み出したとき、白岐から声がかかった。
「大事なことを言い忘れたわ」
「な、何?」
階段を降り始めた葉佩は振り返り、白岐を見る。

「ブラは付けてないわ」

「!!?」
足を豪快に踏み外し階段から転げ落ちる葉佩。ゴーグルは無事のようだ。
……と思いきや、目の前に安っぽい上履きのゴム底が見えた。
グシャリ、と嫌な音がした。
「あれ、葉佩くん、何でそんなとこで寝てるんでしゅか?」
「テメェェェェ肥後ォォォォ!!!!」

階下の絶叫をよそに、踊り場で女性の声がする。
「ふーん、白岐さん、九龍くんにパンツ見せてたの?」
「え、ええ仕方なく。あの人、とても喜んでくれて」
「なるほどなー、そういう手があったかぁ。先生今度参考にしちゃおうかしら」
「な、何のですか?」
「それは秘密よ、うふふ」
雛川は小首を傾げながら、大人の笑みを浮かべていた。


(To Be Continued?)