「龍斗殿・・そんなに飲まれると、身体に毒です・・」
「涼里ー、固いこと言ってないで一緒に飲もうぜ」
「いえ、私は明日も店がありますので・・」
まだ日が完全に暮れていない時間から、龍斗はずっと酒を飲み続けていた。
(今日の龍斗殿は、何か変だ・・。一体どうなさったのだろう・・)
涼里は龍斗と出会い、長い間彼を見てきたが、あまり彼自身が酒を飲んでいる所を
見たことが無かった。
それ故、お酒を持って如月骨董店に訪れた彼を見たときは自然と違和感が沸いたのだ。
店に来てからは、黙々と酒を飲んでいた龍斗だったがここにきて
先ほどから、何かを言いだしては躊躇うを繰り返すようになっていた。
「なあ、涼里・・」
「なんでしょう?龍斗殿?」
「ん・・あのさあ、奈涸にその・・聞いたんだけどさ」
「兄上に・・?一体何をお聞きになったのですか?」
「あー、その・・」
長い間、この繰り返しだったのだが龍斗は何かを決心したかのように
酒を口に一気に流し込んだ。
「えっ?た、龍斗ど・・んっ!」
そしてそのまま心配して、龍斗を覗き込んでいた涼里の唇を奪った。
「んっ・・あっ・・んんっ」(し、舌が・・!)
長い間、龍斗は涼里の口を味わっていた。
初めてのキス。
涼里は想い人からこのようにされる事をどこか心の中で願っていたのかもしれない。
「はあ・・す、涼里・・」
「た、龍斗殿・・い、一体どうされたのですか。酔っていらっしゃるのですか・・」
龍斗は涼里から顔を離すと、じっと涼里の顔を見ていた。
龍斗の顔は真っ赤だったが、お酒のせいなのか照れからなのかが分かりづらかった。
だが、動揺をしていた涼里は前者だと思い込んでいた。
「あ、あの・・。今日は、その・・もうお酒はおやめになった方が・・」
あくまで冷静に、冷静を装う。
(忍びの教えが、愛しい人からの求愛にも素直に喜べなくしているとは・・)
涼里は、自分の女らしさの無さに半ば呆れていた。
(本当は、もっと、もっと、龍斗殿に・・)
「・・っぱり・・」
「え?」
「やっぱり・・。奈涸の言った通りじゃねーか・・」
「兄上が何を・・?きゃっ!!」
龍斗に背を向けて龍斗が寝る用の布団の用意をしていた涼里だったが、
龍斗に目を向けようとした瞬間、その視界が真っ暗になった。
「な、なにを!龍斗ど「うるさい。」
顔に触れている感触から何かの布―つまり自分は目隠しをされているのだ。
それは分かったのだが、何故自分がそんな状態になっているのか・・。
「っ!!い、痛い!!」
身体を突き飛ばされ布団に倒れこんだ涼里だったが、
さらに腕を後ろで縛られ、身動きが取れない。
そして真っ暗な視界の中、信じられない言葉を聞いた。
「おい。涼里・・おまえ・・何人とやったんだ」
「っ!な、なにを言っているのですか・・!?」
「お前、任務で何人とやったって聞いてるんだよ」
「わ、私は・・一度も・・ひっ!?」
次の瞬間、身体が外の寒さに震えた。服を脱がされたのだ。
「あっ・・ああ・・」
寒さによって涼里の身体が震える。だが、それだけではない
(み、見られている・・私の・・龍斗殿に・・!)
想い人に見られている状況に喜んでいる自分がいるーー
認めたくない。認めたくはない。でもーー
「乳首・・たってきたぞ?」
目隠し越しに龍斗が笑っているような気がした。
続く