Eminem
2003/05/10(Sat)
白人のラッパーで、いまだ名前がよくわからない(スペルも覚えられないし、発音もよくわからない) 、Eminem。一説によると、M&M(チョコレートか?)から来た名前だとか何とか。
彼については、全然個人的なことは、興味がないので知らないのだけれど、何というか、いろいろ、言ってみたいことはあったり。
最初に耳に飛び込んで来たのは、歌詞が非常に暴力的で、女性嫌悪や同性愛者嫌いを、隠しもせずに歌ってるとか何とか。
その後、エルトン・ジョンと共演したりで、汚名(?)を晴らそうとしてるとか何とか。
周囲は、アンチ彼ばかりで、好きだとはとても言えない雰囲気(笑)。
好きとは言っても、アルバム買うわけでもないし、わざわざ雑誌買うとかもしませんが、なんていうか、共感できるって言うのかなあ。もちろん、彼の書いた歌詞を、完全に理解してないこと前提で。
一応読んで、「そんなに腹が立ったのかい?」と言いたくなる歌詞もあるし、別れた奥さん(なのかな)の実名を出して、あのクソ女とか言ってるのは、痛いヤツだな〜と思うし、そんなことを全世界に向けて歌われた奥さんもたまったものではないと思うけれど、それでも、何と言うか、歌詞にこもる彼の負の感情に、実は共感してたり。
ラップはよくわからないので、彼がラッパーとして、どの程度の実力があるのかわかりませんが、こいつは彼の声とか曲が好きです。
どれ聞いても、わりと同じに聞こえるラップっていうジャンルで、まあ、白人というせいなのか、聞けばとりあえず彼とわかる声と個性はすごいなあと思うし、全部が全部素晴らしい曲ではなくても、少なくとも、フレーズが耳に残る、インパクトの強い曲がある。
主役をやった映画の、主題歌は、特に好きだ。
人生に、一度だけのチャンスを逃すな、と繰り返すあの歌が、とても好き。
歌全体に漂う、拭いようのない負け犬くささと、けれど這いつくばってても、頭を必死で高くかかげようとしてる、そういう底辺の人間の(少なくともプライドはまだ生き残ってる)姿が、浮かぶ。
そういう姿に、こいつは、共感する。
彼は多分、底辺の人間としては、かなり幸運な方なんだろうな。お金と名声だけは、とりあえず手に入れた。もっとも、それで幸せは買えないんだけれど。
ラッキーではあっても、ハッピーだとは、あまり思えない。
でもこいつは、その彼の、あのハッピーになれない救いようのなさが、好きなんだろうな。
こいつの周りの大人たちは、彼のあの、過激な歌詞で、「ロクでなしだ」と彼のことを言うけれど、こいつは、正直に自分のことを語ってる彼に、少なくとも好感を持ってる。
オレは(この)女が嫌いだ、殺してやりたい、オレは、ゲイの連中が嫌いだ、気持ち悪い、そう、正直に言うことが、良いというわけではないけれど、少なくとも、そう口に出さずに、フェミニストやゲイ擁護を気取って、人を差別してる連中より、よっぽどこいつは、素直でいいと思うんだが。
えせフェミニストとか、えせ平等主義者とか、こいつは、吐き気がするほど、そういう連中が嫌いだ。
自分は差別をしないと思い込んでる差別主義者は、死ぬほどたちが悪い。
どうして、いちいち、膚の色を、話題に上げなきゃいけないんだろう。「オレは、君の膚が黒いからって、差別なんかしない」って、どうして、わざわざ言うんだろう。口にするってことは、常にそれが頭の中にあるってことだって、どうしてわからないんだろう。
オレの娘は、相手が黒人だろうが何だろうが、全然気にしない、すごいだろうって、どうしていちいち、言わなきゃいけないんだろう。
しかも、恥ずかしげもなく。
そして彼は、Eminemが大嫌い。
こいつは、彼の前では、決して、Eminemの正直さが好きで、彼の負の感情に共感するなんて、口が裂けても言わない。わかってもらえないのが、わかってるから。説明するのも、時間の無駄だから。
白人でもなくて、女で、ヘテロでもないこいつがEminemを許容できて、体のデカい白人で、実のところ、女嫌いで、人種差別大好きな彼が、Eminemを受け入れられない。同類嫌悪かい?って、言ってみたいな、いつか。
こいつは、Eminemみたいな、痛々しい人間が、好きらしい。ラッキーさを最大限利用しても、ハッピーになれない、ああいう救いようのない人に、無性に魅かれるらしい。
Eminemに、みんながヒステリックに反応するのは、まあ、あれを聞くお子ちゃまたちへの影響ももちろんだけど、ようするに、醜い自分たちのほんとうの姿を、彼が見せつけるからなんだろうな。
ふりしたって、疲れるだけだって、思うんだけど。もちろん、声高に、差別主義を主張されても、困るんだけどさ。
Eminemに、ひそかにエールを送ってみたり。
若死にしそうな人だから、できれば、吐き出して、穏やかになって、愛する娘と、きちんと大事にできる人と(女でも男でも)、ハッピーになってほしいなあ。もし、できるなら。
長生きするのが、必ずしもいいことではないにせよ、もう少し、狂言回しで楽しませてほしい。そしていつか彼が、あんなことを歌った彼自身に、照れ笑いとか苦笑いができるような、そんな時代が来るといいな。