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ウツとホームシック
2003/07/12(Sat)
 もしかすると、思ったより事態は深刻かもしれないと、思い始めた。
 この時期のウツは、毎度のことだと思うのだけれど、症状が、段々とそれらしくなくなってて、自分で自分の状態が、ヤバくなるまで、よくわからない。
 夏は、いつも帰国の時期だから、また日本に帰れないのかと、そう思うせいなのだと思うけれど、それにしても、何となく、ヤバい感じがする。
 体調が元に戻らないことはもちろんだけれど、体では感じるのに、一応体がきちんと機能してることを知らせてくれることが、なかなか起こらないとか、食欲がまったくないこととか、(たとえお腹が空いてると感じてても)何を食べたいとも思わないとか、食べても全然おいしくないとか、幸せになるのに、ものすごく努力が必要だとか、すべてがうっとうしいとか、すべてを投げ出してしまいたいとか、何もしたくないとか、したって無駄なのに、どうしてしなきゃいけないよだとか、無気力、投げやり、無力感、笑って誰かと話しながら、天井からロープを吊るすところを探してるとか、そんなことはないから、まあ、大丈夫なのだろうとは思うけれど、自分がわりと冷静で、大丈夫なんだろうと、思ってるところがまた怖かったり。
 大丈夫だと、信じ切れない。
 中耳炎らしい耳は、1ヶ月薬を飲み続けた(抗生物質)にも関わらず、まだ完治せず、これもまた、「日本にいれば、耳鼻科にほいっと行って、それで終わりなのに」と思う理由になる。
 こっちだと、まあ、医者(専門医)に予約を取って、その医者に会えるのは早くて1月先になる。救急病院は、抗生物質は処方してくれる(副作用でおそらく死にそうになるおまけつきは、まず間違いなしだけど)けど、治療はしてくれない。
 周りにいる人間たちの話すことと言ったら、誰かの悪口か、お金の話か、フカシばっかりだし・・・読んだ本の話とか見た映画の話とか、好きな音楽の話とか、できる相手がいない。
 どうして、借金抱えてる人に限って、楽にお金の儲かる話しかしないかなあ。そんなうまい話、あるわけないじゃんと、こいつは夢がないから真っ先に思うのだけれど、こうしたらこれだけ(何もせずに)儲かる、こうできたら、(これだけお金が入って)こうなるって、そんな話ばっかり・・・何百万も借金のあるその人は、自覚はないんだろうが、かなりの浪費家だったりする。
 金銭の問題抱えてる人って、それはお金だけの問題じゃないって、わかってないんだろうなあ。
 欲しいものがあるなら、買えばいいじゃないかと言われるけど、欲しいものを、即座に買わないから、こいつは借金がないんだよと言っても、多分わからないんだろうなあ。
 もっとも、ほんとに欲しいものなんて、何もないんだけどさ、ここじゃ。
 品質を考えれば、とてもそれだけのお金を出す気になんかならないものばかりだし、基本的には何を買っても、安物買いの銭失いになるし、高いお金を出したところで、求める品質は絶対に得られない。
 買い物でストレス解消もできない(苦笑)。
 映画見てる時は、話しかけられたくないんだよ。最初の瞬間から、字幕が流れて、完全に終わってしまうまで、意識を逸らしたくないんだよ。字幕が終わって、ほんとうに終わってしまうまでが、1本の映画なんだよ、その間、できるだけ集中してたいんだよ。面白いと思った映画は、何度も見返したいんだよ。ほんとなら、映画館でちゃんと見たいんだよ。でも、とてもじゃないけど、ロクな場所じゃないから、仕方なくテレビで見てるんだよ。映画好きな人の集まる、そういう映画館で、好きな映画を見たいんだよ。こいつが見たいのは、アメリカ映画じゃないんだよ。ヨーロッパとかアジアの、字幕じゃないと見れないような、そういう映画なんだよ。
 だから、うるさい、話しかけるな。申し訳ありませんが、「グレイト・ブルー」を見て泣いてたこいつに、「主人公が死んだからって、泣かなくてもいいだろう」と言ったあなたと、映画の話をする気はございません。
 あの映画が、ただのメロドラマにしか見えないあなたと、映画の話をするのは、巨大な無理です。
 ・・・だから、頼むから、放っておいて。
 楽しみたいことが、色々あっても、邪魔が入ると思っただけで、萎える。映画を1本、1時間半、一言の邪魔も入らずに見切ることさえできないと思うだけで、見る気が失せる。
 アルバム一枚、雑音入れずに聞き込もうとしても、どこかで必ず一度音を止めなきゃならなくなると思うだけで、聞く気が失せる。
 何か書こうと、机に向かっても、集中してる時に限って、5分置きに邪魔をする。
 うるさい。放っておいてくれ。
 あなたが不幸になりたいなら、ひとりでやって下さい。こいつは幸せになりたいんです。
 ああ、めんどくせ。

 何をしても、無駄だと思う。やり遂げたという、満足感へはたどり着けないと、始める前から思う。
 自分を幸せにするのが、また少しずつ、難しくなる。興味が失せたわけではなく、ただ、無気力で、自分のやることなすことがすべて、虚しい。
 自分が明日消えたところで、何が変わるわけではなく、少なくとも自分の見渡せる周囲では、世界はまったく変わらないと思うと、それが現実なのだと、いきなり気づく。
 自分が大事だと思うことが、あまりにも現実感がなくて、膚に感じる現実は、すべてが気の滅入ることばかりで、心地よい方を信じたいのに、そちらがあまりに自分から遠くて、そのギャップに、落ち込む。
 関わりたい人たちは、手の届かない場所にいて、そちら側には、そちら側の、こいつにはわからない現実がある。
 人と、関わりたい形で、関わりたい。
 電源を切れば、ぷっちり切れてしまう繋がりが、時々ひどく悲しい。常に繋がっているのだと自覚できない繋がりが、時々嫌になる。
 そう自覚できないのが、自分の問題だとわかってるから、よけいに、痛い。
 声を聞きたい人たちと、その形で繋がることは滅多になくて、まれに繋がれば、病的にはしゃぐ自分がいる。ガキだなあと思う。声が途切れた途端、落ち込む。
 話したいことは、山ほどある。でも、大半が、聞くことの苦痛なグチになるのがわかってるので、口を開けない。
 グチにならないために、共通の話題を探すと、でもその話題を共有できる人たちと、どう繋がっていいのか、よくわからない。
 繋がってるんだろうとか、そもそも思う。
 優しい会話をしたいのだけれど。けらけら笑ってばかりいるような、そんな会話が欲しいのだけれど。右から左へ流すのではなくて、必死に耳を傾ける会話がしたいのだけれど。相手の内側が見えて、それに対して、敬意を持てる会話が欲しいのだけれど。
 人の話を、意識して聞かない、というのも、ひどく苦痛だったりする。聞けば、一言一言に腹が立つから、意味を遮断して、音だけを聞き流すというのも、これはこれで非常に神経の立つ作業だったりする。
 ごく自然に、流れてくる言葉を、自分の中に滲み込ませることのできる、そんな会話をしたい。
 自分が思うところの、人間らしいすべてのことに、飢えている。
 お腹が空くこと、ゴハンをおいしいと思うこと、生きていて良かったと思うこと、家族に会えること、友達だと思ってる人たちと、繋がっていると、きっちり常に自覚できること、したいことをやって、満足感を得ること、何かについて、優しさと敬意を持って、語り合えること・・・。
 孤独は、今はいらないけれど、ひとりになりたい。
 また、簡単に幸せになれなくなってる。幸せな気分を味わうのに、ものすごい努力が必要になってる。
 死にたいとは思わないから、大したウツではない(と思う)けれど、こういう、普通の気分のウツは、何となく怖い。致命傷ではなくて、じわじわと、失血死してゆく感じ。
 死なないけれど、いつか死ぬのかもしれないと、根拠もなく、漠然と思う。
 そんな感じで、1日が始まって、終わる。何もしないまま、また眠ることになって、落ち込む。
 早く、元に戻りたい。早く、些細なことで、幸せになれるようになりたい。ホームシックはめんどくさい。
 好きな人たちと、大事な人たちと、生で関わりたい。自分の中が満たされる、そういう繋がりが、生で欲しい。
 贅沢なだけだと、わかっちゃいるが・・・。
 早く日本に帰りたいよ。英語の生活はもういいよ・・・。



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