Vivian Campbell
2009/08/09(Sun)
Vivian Campbellというギタリストの名を初めて意識したのは、彼がWhitesnakeに入ってから。
Sweet Savege時代から、すでに地元ではギターヒーロー的扱い、その後は元RainbowのRonnieに見出されてDio加入という経歴は知ってたけれど、Dioがまったく好みアンテナに引っ掛からず、おまけに当時はYngwieだのJohn Sykesだの、もっときらびやか(音だけではなくて、メディアの露出的に)なギタリストがいっぱいいて、正直Vivはその中に完全に埋もれてた印象だった。
John SykesからWhitesnake、ちょうど知った当時にSykes脱退とかクビとか、そんな流れだったか、地味なおっさんバンドだったWhitesnakeが、とってもアメリカの匂いのするバンドになって、そこにVivがかのAdrian Vandenbergと一緒に並んでいた。
Adrianがどういう立場のギターヒーローだったのかはよく覚えてないけど、オランダという、HR/HMはおよそ似合わない国で、自分のバンドを率いてて来日したこともあって、ジャケットの絵も自分で描いたし、何しろ身長194cmってのでインパクト抜群(ああそれに、最初のギターは自作だったとか、そういうのもあったよね)、日本人の好みに合う音だったせいか、音作りの面でも評価は高かったということで、隣りに立ったVivはこれまた印象薄くてちょっと可哀想だった記憶。
ぶっちゃけた話、当時から背の高い男に弱かったこいつはAdrianに興味を引かれて、それからVandenbergを気に入って、そのAdrianとペアのギタリストとしてVivを意識し始めたんだったような気がする。
いくらルックスが好みとは言っても、Gが好みじゃなければそこで終わる話なわけで、残念ながらDioが好みでなかったので、VivについてはWhitesnakeで一生懸命Gを弾いてる姿に惚れたと言うのか、まああんまり大声では言えない類いの恋みたいなものだった。
当時のVivは、Whitesnakeでは最年少、奥さん連中含めても最年少、みんなからBabyって呼ばれてるって記事を読んで萌え狂った記憶。Dioをクビになった経緯も、Ronnieの不愉快っぷりが逆にVivに対して憐れを誘う形で、何と言うか、不憫な弟を見守るような、そういう心持ちだった。
アイルランド人であると言うことを、機会があれば口にするのも、今思えばあの国(と言うのにも、いろいろと含みがあるとして)出身であるということをとにかく誇りたかったんだろうなと、そこもまた涙を誘う。
YngwieやSykesと比べられ、彼らに比べればテクばかりに先走った音の情緒のなさをこき下ろされたり、Ronnieに押さえつけられてたせいなのか曲作りの面で評価されることも少なかったり、ある意味、大物ミュージシャンに見出され続けたばっかりに、不遇を囲つ羽目になったという、あの頃のVivにとっては良かったのかどうか。
Vivの不憫さはともかくも、確かに音的には今ひとつ好みだ!と叫ぶには決め手に欠けてたというのが正直な感想。とは言え、それでも何か引っ掛かるものがあったからこそ、Whitesnakeでの、彼のこれからの音に期待するぜ、次のアルバムはばっちし自分の音でソロ弾いてくれよ!と思ってた矢先に脱退。ものすごい脱力だった。マジで泣いた。
Vivのことを、ミュージシャンという人間として大好きだったから、これでまた活躍する場を奪われちゃったのかと、Whitesnakeで名前は売れたとは言え、アルバム自体にはまったく関わってない立場では、ギタリストとしての評価にはまったく繋がらないという、何かほんとにいいように使われて捨てられちゃったのかと、ひとりで絶望した。
当時25、6だったVivは、今なら「まだまだ若い! まだまだ先がある!」と言えるけど、こいつにとってはすでにとっくに大人だった人で、それこそ目の前の道をすべて塞がれてしまったような、そんな感覚に陥ってた。実際にVivがあの時の状況をどう感じてたかはともかく、こいつにとってはVivはあそこで一度終わってしまったも同然だった。
当時まだRonnieとは和解してなかったし(すんな!と思ってたけど)、David Coverdaleとも円満なわけもなかったし、大物ボーカルににらまれてこれからどうするんだろう、とひとり戦々恐々。
ForeignerのLou Grammと何かやってるらしいと聞いた後で、小さなニュースはぽろぽろ耳に届く中、ある日突然静かにRiverdogsというバンドでアルバムが出た。
メンバーの名前も顔もまったく知らない。なんでこんなところにVivが?と面食らった。誰かに請われて、ゲスト的に参加したんだろうかと思ったけど、ちゃんとメンバーだし、ひとまず正式にVivがいるバンドらしい。ジャケットから伺えるバンドのイメージの地味さ加減が、WhitesnakeやDioとまったく重ならない。いやほんとにどうしちゃったんだVivと、思いながらアルバムをとりあえず聞いた。
1990年のことだった。それ以後、そのRiverdogsのアルバムは、こいつの中で「絶対に聞け!」的アルバムのリストから外れたことがない。これからも、きっと外れることはないと思う。
地味と言えば地味な、でも素直にいいと言える音だった。すべてのバランスの良い、メンバーみんなが楽しんで演ってるのがありありとわかる中身だった。バンドと言うのは、本来こうあるべきだと言う、そのまんま辞書にでも載っけたいような、ものすごくあたたかな空気の漂う内容だった。楽しそうなVivが、とても幸せそうに見えた。こいつも幸せだった。
結局派手に売れることはなく、でもいまだ好きだと言う人が意外と多いバンドで、VivがGだったと言うよりも、リーダーでVoのRobがひそかに人気の高い、知る人ぞ知るバンド。
Vivが伸び伸びとGを弾いて、歌って、とても楽しげに等身大で演ってる、それがRiverdogsだった。誰かに遠慮することもなく、誰かを意識して気負うこともなく、Vivian Campbellというミュージシャンが、本来の彼らしさだけで好きなことをしている、そういう音を聞かせてくれた、いまだ唯一のアルバムだと思ってる。
ミュージシャンであるVivに本気で惚れさせてくれた1枚だった。
そしてまったく売れなかったけれどバンドとしてはうまく行ってたRiverdogsに心を残しつつ、Lou GrammとShadow Kingでアルバム発売。これも悪くないアルバムだった。声が好みかどうか、正直ノーコメントとして、曲やGソロは好き。これも素直にいいアルバムだと思う。
残念ながらバカ売れするようなアルバムではなかったし(PVはちゃんとあるけど)、少なくとも日本のメディアが騒ぐようなバンドではなくて、Vivがアルバム製作以外でどうしてたのか、この辺り動向は一切不明。
そして1991年、Def LeppardのSteamin'が薬とお酒過剰摂取で急死。翌年新しいGとして加入したのがVivだった。
ある意味順当な人選でもあったし、ものすごいショックなニュースでもあった。
Defのメンバーとは、Sweet Savageの頃から知り合いだったし、年の頃も同じ、して来た苦労も似たようなもの、Gが欲しいバンドと、バンドに入りたいGと、完全に利害が一致したんだろうけど、個人的にはVivをギターヒーローだと思ってたこいつにとってのDef加入は、WhitesnakeにVaiさんが入った時くらいの、「・・・宝の持ち腐れ?」だった(Defに対してどうこうはない。単に音とか方向性が合わなくね?という素直な疑問の結果)。後、Riverdogs再開って夢があったし。
正直なところ、10代からずっと一緒にやってる、すでに血の繋がった兄弟みたいな英国人バンドに、アイルランド人がひとりぽつんと入るっていうのも心配だったし、Def Leppardという売れ売れバンドに入ったことでメディアの露出が増えるということは単純にうれしかったけど(実際テレビでライブとか見れるようになったし)、とにかくVivがやってけるのかどうか、ものすごい心配だった。
こちらの心配をよそに(当たり前だ)、テレビで見るVivは楽しそうにステージを駆け回り、やっと腰を落ち着けられる場所を得たと言う風で、とにかくとても幸せそうに見えた。
Phil辺りとの、何だかピリピリしてるっぽい空気はあったものの、とりあえずは新しいバンドメンバーとして受け入れられてるのだと言う風には見えた。
Philの音が、たまたまだったのかどうか、やたらと気負ってる、Vivを意識してるように見えて、Defの中でとにかく溶け込もうとそれなりに肩の力を抜いて後ろに引いた印象のプレイをしてるVivと、ひどく対照的だった。
その後Unpluggedを見て、Philの対抗意識のあまりの強さに、元々Defファンではない(アルバムは好きだけど、メンバーには興味がない)こいつはちょっとげんなり。
やたら速く弾こうとしてみたり、無駄に手数を多くしてみたり、とにかくVivよりいいGなんだ!というのを証明しよう証明しようとしてる感じで、「いやいいからDefらしい音で弾いてくれればいいから」と、JoeとSavを間に置いて向こうの端にいるVivが、本人の印象は薄げに、でもG的にはしっかり印象深いフレーズでプレイしてるのが何ともこう、Phil的に可哀想な感じだった。
元々Sweet Savageの頃も比べられたって言ってたもんなあ。当時からすごいG!呼ばわりだったVivのことを、当時からひそかにPhilがライバル視してたとしても不思議はない。
そもそも音的にタイプが違うし、Philはテクだの速弾きだのには興味なさそうなGだし、比べるもへったくれもないんだけど、PhilはどうもViv加入に心穏やかではなかった様子。
個人的には、イギリス人対アイルランド人という図式もあるんだろうし、Vivひとり、あの中では兄弟的絆も築けずにひとりぼっちでも全然不思議はない。Vivはそういうことも含めて、Defを永住するバンドとして、そして仕事として、きちんと受け入れているように見える。
Defに入ってから、作曲面でどのくらい貢献してるとかさせてもらってるとか、Gソロはどうよとか、正直なところVivの活躍には期待してない。しようにも、させてくれないだろ?という先入観で。
Defにいる限り、仕事の面では心配はないけど、ミュージシャンとしての本領を発揮するVivを見ることはないだろうと勝手に思ってる。
だからこそ、VivがいまだRiverdogsのメンバーと親しくしてて、サイドでライブやったり、あるいは好きなミュージシャンと一緒にソロアルバム作ったり、そういうところで彼らしさを発揮してるのをいいことだと思ってる。あれも、Defのメンバーとしての基盤があるからできることだろうし。そういう点で、Defにはとても感謝してる。感謝の方向が間違ってるかもだけど。
Sykesみたいな華やかな艶やかさとか、Yngwieのとにかくすげえよという音作りとか、そういうぱっと目につく派手さはないかもだけど、Vivの音はとても深くて、心の中に染みとおって来る音だと思う。
Vivの音は、大音量でみんなで一斉にどたどた演る時よりも、生のGと声だけでやってくれる時に、いちばん美しさが際立つ音だと思う。年を重ねるにつれて、ただひたすらに深みが増してると言うのか、どんどん魅力の増してるVivの音だなあと思う。
今はさすがにないけど、ほんとに数年前まで、Vivに対しては息子を見守るようなそんな気持ちだったから、Defに落ち着いてくれて、すでに17年過ぎて、Vivian Campbellという名前ではなくて、DefのGという形で語られることが当たり前になって、そんなにもう一挙一動を心配して見つめ続けなくてもいいと言うのは、正直少し淋しい。
Defに入って10年目を迎えた辺りで、Vivはもう誰からも心配されなくていい、自分の好きなことをやるスペースをきちんと確保した、大人のミュージシャンになったんだなあと、そんなことを思う。
こんなに長い間、好きでいられるGになるとは思わなかった。死ぬまで好きな人たちとライブやって、アルバム作ってて欲しいなあ。Riverdogsの面々とずっと仲良くやってて欲しい。
RiverdogsいいバンドだよRiverdogs。
Defがいつか、ツアーをやめて落ち着いて、もうそろそろいいかってことになったら、Riverdogsの面子と、アルバム作ってくれないかな。RiverdogsUとか、そんな感じに。そしてまた、非売品のアコバージョン集めたCD出してくれるといいよ。一生懸命探して手に入れるよ。
そしていつか、またAdrianと一緒にやってくれないかな。再結成したVandenbergに入ってもいいよ。Adrianと、思う存分ソロ合戦するといいよ。
そんな夢。