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Rob Halford、Judas Priest、Metal God
2009/09/11(Fri)
 Rob Halford、言わずと知れた、自称他称ともにMetal God、Judas Priestのボーカル。
 出会いは背徳の掟ことDefender Of The Faithだったけど、こんなに長い間、変わらずに好きでいられるとは思わなかった。
 いずれアルバムがCDで手元に来たら実況レビューをやるので、音についてはその時に思う存分語るとして、とりあえずRobさんという人について語ってみたい。
 主には過去の記憶に頼って、単なる噂だったり、ゴシップだったり、誰かがどこかで垂れ流した憶測だったり、そういうものも交えて、信憑性のないRobさんそしてJudas萌え語り。
 Robさんがいかに神かという話。多分。

 Wikipediaで見たら、Turbo以降、休止時期も長かったせいか、あんまりアルバムは数出てなくてびっくり。そしてDrのScottももう在籍20年になるのか・・・早いなあ。
 そしてDaveのことが気になってこれもWikipediaで見てみたら、やっぱり今は刑務所なのか。17歳の知的障害のある少年を強姦した容疑がどーのというニュース見た時はほんとにリアルで○| ̄|_だったけど、いまだ無実を主張してるのを、あーあーもうと痛々しく思えばいいのか、やっぱりそうか!って思えばいいのかよくわからない。
 そしてDaveがGlennと年が変わらないという事実にちょっとショックを受けている。そんな歳で刑務所って、あの人生きて出て来れるのかなあ。何か改めて○| ̄|_

 さて、そういうわけでRobさん。
 出会った時にはすでに30半ばを過ぎてて、まだガキだったこいつには当然まぶしい大人だったわけで、GのGlennは親父と歳が変わらない、そもそもJudas自体がすでにベテランバンド、と言うわけで、完全に後追いだったこいつは、その時点ですでに10枚出てたアルバムを、輸入盤屋やら、地理もわからない新宿を巡って、何とかかんとか手に入れた。もちろん全部レコード。
 Robさんは自分でも聞きたくないと言ってる1st(レコード会社の移籍やら何やらで、彼らが1stと言う時は、正確には3枚目のSin After Sinを指すことが多い)のRocka Rollaもけっこう気に入って、Sad Wings of Destinyの美しさにうっとりしたり、なんでこれが日本盤は廃盤なんだよと憤ったり、その後黄金のスペクタルことPoint Of Entryのレコードも廃盤でCD買うしかなかったり、同時期に聞いたIron Maidenにはほとんど心を動かされずに、ひとまずJudasに心を据えて、そこからいろんなバンドを聞くことになった。
 Judasを聞くきっかけになったのは、当時同学年の近所の友人で、彼女はすでにHR/HM系洋楽にハマってて、こいつがLep Zeppelinが好きだと言うので、Zepに似てるよと勧められたのが最初だった。
 生まれて初めて聞いたJudasはFreewheel Buring。ステレオから流れるほんとうにカミソリみたいなG、それから、もっと鋭い、Robさんの声。Plantさんに似てると思ったかどうか、記憶にない。でもZepに似てるとは、確かに思った。
 あの曲が、その後のすべてを決めたとしか思えない。あれこそが、永遠にこいつにとってのHeavy Metalであり続けるんだろう。
 長い長い間、そして今も、Defender Of The Faithはこいつにとっての至高の1枚だ。これ抜きに音楽は語れないし、HMも語れない。Judasの最高傑作であり、非常に正しい意味でHM最高の名盤であり、とにかくこのアルバムの何もかもが最高のレベルだと思う。非の打ち所がなさ過ぎる。完璧すぎて、まさに神の1枚。大袈裟じゃなくて、本気でそう思ってる。
 Judasにハマって最初のリアルタイムのリリースがTurboで、デジタルがどーのポップがどーの、とにかくメディア側の御託の多いアルバムだったけど、Robさんの声の表現という点では、これこそ黙って聴いて惚れろ、話はそれからだって感じで。このアルバムで、官能と言うのが、直接に性的表現とか性的行為によらないのだと言うことを思い知った。当時はガキのたわ言だったけど、今になってもまったく同じことを思う。
 下品な表現で、ほんとうに、●●とか×××とか、Locked Inを聴くとそう感じる。Robさんすげえと思った。心底思った。

 出会いのほぼその瞬間から、誰かから聞いたのか読んだのか、彼がゲイだというのは事実として自分の中で認識されてたので、その後ゲイ雑誌でRobさんの名前を見ても、驚くより先に、そういうところで記事になって語られてる事実に笑いを禁じ得なかった。
 全身革、鋲を山ほどつけて、でもシャープとかセクシーとか、そういうのとはちょっと無縁の感じの、どこかユーモラスな印象のRobさんは正直とっても可愛かった。
 本人はものすごく地味な人なんだろうなと、今は思う。だからこそ、ああいうものを身に着けてステージに上がらなきゃならなかったんだろうなと、今は思う。
 当時のRobさんの印象と言うのは、こいつの周囲では大体きっぱりふたつに分かれてて、ハードゲイなかっこいい大人の男か、気をつけないと仕草が優しくなっちゃうオカマちゃんか、どちらかだった。
 普通にインタビュー記事や写真で見るRobさんは大人な男の印象だったけど、いわゆる生に近いRobさんを見ると、どことなく気の弱そうな、ただひたすらに優しげな儚い印象で、どうも実際は後者に近いらしいというのは、冗談めかして語られるツアーレポの内容から察せられて、Robさんの声を神扱いしてるこいつの心中は、どこか一部で、彼をただただ可愛らしい人として受け入れるのを拒んでたような気がする。
 Judasから突然DrのDaveが脱退した時、こいつの中でこいつの神であるJudasは一度終わってしまった。Ram It Downをどうしても好きになれなかったこいつは、PainkillerでJudasに完全に絶望し、それ以前のJudasは変わらずに大好きだった(愛してたという言い方の方がより正確)けれど、その後のJudasはほぼ完全に無視して数年を過ごした。
 そしてRobさんがJudasを脱け、自分の半分くらいの歳のミュージシャンたちと一緒に演り始め、それは確かにRobさんだったけど、そのRobさんはこいつには神の人ではなかった。
 Daveの後任のScottが新しい恋人なんじゃないかっていう噂もあった。日本にツアーに来る時には、必ず恋人同伴だったし、GのKenちゃんと一緒に暮らしてたのは、あれはただの同居じゃなくて同棲だったって話もあったし、一緒に演ってる若いミュージシャンの中にいたゲイの子たちともあれこれあったとかなかったとか、何と言うか、惑う、という言葉がこれほどぴったりな人もいないなあと、Robさんを見てて思う。
 PanteraのPhilに片思いしてたとかねー。あの頃やたら入れてた刺青はPhilから紹介された彫り師の人のだったとかPhil専属の人のだったとか、そんな話もちらほら聞いた。
 やっと世間にカムアウトしたのも、売名行為的に取られてた部分もあったみたいだし、ゲイだと打ち明けてしまった後のRobさんは、何だかとても痛々しく見える。

 声域が広いとか、高音がすごいとか、でもRobさんのすごさはそれだけじゃなくて、あの、ほんとうに歌うために生まれて来たような喉の靭さとか、呼吸をするように歌うことに対してもう体が反射的に反応してるところとか、ただ歌が上手いとかどうとかを越えて、音楽というものを声で聴かせて感覚的に伝えてくれる、あの表現力の深さと広さとか、Robさんはほんとうに、歌うためにこの世にいる人なんだなあと思う。
 歌うということが、自己表現ですらない、ほんとうに、ただ呼吸をするのと同じだという空気を、Robさんから感じる。呼吸をしないと苦しい、死んでしまう、歌うことも同じ、そういう風に。
 Robさんの幸運は、Judasというバンドにいたこと、いることだと、しみじみ思う。
 音楽の才能に恵まれたことが、Robさんを本当に幸福にしたのかどうかは知らない。その才能のおかげで得られるものは多かったと思うけど、ただの人としてのRobさんは、それはただそういう表情に見えるというだけのことなのか、時々とても淋しそうに見えることがある。
 今現在、あるいは比較的近い過去に、家族に近いレベルの恋人がいたのかどうか、そういうことが気になったりする。 こいつも含めてある種の人たちに、本気で神呼ばわりされるRobさんは、でも賞賛ではなくて単純に愛されることを求めてるように見えて、その辺りは自由主義を享受したらしい例えばFreddy MercuryとかElton JohnとかDavid Bowie辺りと、付き合いがあったのか世代やジャンルの違いでなかったのか、彼らとはまるきり姿勢が違うように見える。
 Robさんは、限りなく神に近いところにいる、けれどとても普通で普通でありたいと思っている人なのか、それとも、人に似せた姿でこっちに来てしまった、神である人なのか、一体どちらなんだろう。
 ゲイであること、音楽の才能があること、どちらも、普通になりたい、普通に愛されたいだけのRobさんをそうさせてくれない障害でしかなくて、でももう歌うことが呼吸することと同義になってしまえばそれを捨てることもできなくて、変わらない声を相変わらず高く張り上げるRobさんは、けれど昔よりもずっと痛々しく見える。

 Robさんの声は、深くていつも淋しげに聞こえる。どれだけ激しく吐き出すように歌っても、それは怒鳴り声ではなくて泣いている声のように聞こえる。
 Layneが苦しみを歌ったように、Robさんは哀しみを歌ってるのだと思う。
 それは歌詞ではなくて、歌い方ではなくて、ただほんもののため息のように、Robさんの声が哀しいのだろうなと思う。
 Robさんに影響されたと思ったことはなかったし、Robさんみたいになりたかったと思ってたという自覚もなかった。でも、ぶっちゃけた話、おじいちゃんと言ってもいい年齢になったRobさんを見て、それでも相変わらずの格好で相変わらずの声で相変わらずの歌を歌うRobさんを見て、こういう風に、常に迷いながらでも前に進めたらいいなと思った。
 こうしたいと思うことをしながら、こうありたいと思う方向とは少しズレた方へ行ってしまっているように見えるRobさんを、淋しそうでどこか哀しそうだと感じながら、でもきっとこの人は、これもまたこれと、どこかで達観して受け入れているように見える。積極的にではなくて、淡々と受身に、自分に求められているイメージに添って、そうやって生きて行くことを、少し苦笑いしながら、ちょっと肩をすくめて受け入れているように見える。
 人とは違うということの哀しさと淋しさを、20年前よりももっと強く全身に滲ませて、だからこそ受ける賞賛を、今は素直に受け入れてるように見える。
 歌うということと同義のようなRobさんが大好きだ。声も、いつまで経ってもイギリス訛りの穏やかな話し方も、誰かが聞いているとかいないとかそんなことは関係なしに、ただほとばしる声を止められないという歌い方も、人を殺せそうな高音も、Robさんがこちらに伝えようとしている形のない何かも、みんな全部大好きだ。
 Robさんをこんなに好きだと知らなかった。
 日本を離れる時に持って来るために選んだカセットテープの中に、もちろんJudasも入ってて、Sin After Sin辺りを聞きながら、JudasとRobさんのすごさを改めて思い知って、出会った時と同じように好きでいられて、また新たに惚れ直せるその音に、ほんとうに心の底から感嘆した。
 そしてまた今、Judasに新たに惚れ直してる。すごさが色褪せるどころか、聞くたびに増す一方で、Rocka Rollaから35年経って、こんな音をあの頃に作り出した彼らというのが、ほんとうに信じられない。Judasすげえよ。
 過去の記憶の中ですら、成長し続けてる彼らと、ほんとうに孫みたいな新たなファンさえ狂喜させる彼らは、ほんとうに文字通りにMetal Godだ。

 最近気づいたけど、とりあえず英語に関して言えば、歌う時にメロディに言葉を乗せるリズムとかタイミングってのも好みとかセンスがあるんだなあと思った。
 Amanda Marshallの曲はすごい好きなのに歌もすごいタイプなのに、なぜか聴いてると、どこかでずれて入れ込むタイミングを外されるような感覚に陥る。Geoff Tateの最近の歌い方もそう。
 メロディに言葉を詰め込むのはともかく、それをリズムの中にきちんと昇華させてない、言葉の音が余ってもたつくのが耳に引っ掛かるらしい。
 この辺りは、下手すると、1語1語きちんと歌おうとする非英語人の方が耳に気持ちよかったりする。ScorpionsのKlausとかVandenbergのBertとか、歌い方が妙に色っぽいところが好みなだけかもだけど、無理せずに歌詞にもたつく感じがないのがいい感じ。
 Maroon 5のWake Up Call辺りは、そこを逆手に取って、淡々とした曲の中で、各パートの複雑なリズムの絡み合いを聞かせてくれる。無自覚にAlice In Chainsもそう。
 Robさんはもう、自分だけの世界にイッちゃってるって言うか、Diamond & Rustのアコースティックバージョンを聞くと、Kenちゃんのリズム感のなさに思わず失笑。それを無視して自分で歌い上げるRobさんとの対比がほとんど冗談。
 Layneも割りと、後ろのリズムを無視気味に勝手にうねって歌うタイプだけど、この辺りはOzzy(Layneが影響されたと公言してた)的ボーカルという点でひとくくりにできるんだろうか。あるいは、もっときちんと、Plantさんタイプと言うべきなのか。
 Robさんが、いわゆるきちんとした音楽の勉強をしたことがあるとは思えないので、歌い方にせよビブラートにせよリズムのセンスにせよ、先人をコピーしてる間に勝手に身に着いたものだろうなと思いつつ、この辺りもオリジナリティという点では反論があることは予想できても、Robさんの天才っぷりを否定することは絶対にできないと思う。
 Robさんがすごいなあとしみじみ思うのは、表現の幅の広さによる、色や形がはっきりと見えそうな、匂いさえわかりそうな、音楽世界の構築の仕方か。
 人見さんも、声でその場の空気を一変させてしまう人だけど、人見さんが酔わせてくれるタイプなら、Robさんはほんとうに、そこで物理的に建築を行って、人をその世界に物理的に引き込んでしまう人だと思う。
 Geoffが、その辺りでちょっと迷走してる印象なのとは対照的に、Robさんはもうその世界に住み切っちゃってると言うのか、ほんとうにやっぱり別世界の住人で、やっぱり神に近い人なのかと思う。
 歌の上手さだけじゃなくて、声域の広さだけではなくて、Robさんは"それ"を演じてるように見せていて、やっぱりそこに生きてる人なんだろうなと思う。好むと好まざるに関わらず、Robさんはまさしく"本物"なのだと思い知る。
 こういうことを伝えたい、見せたいで歌ってるわけじゃなくて、歌ったことを、聞いたこちらが勝手に解釈してるだけのことで、Robさんはただ、呼吸をすると同じ意味で歌ってるだけ。言葉に意味はないし、メロディの展開に意味はない。あるのはただ、Robert Halfordという神が、そこで普通の人間である我々と同じように呼吸してるというだけの話だ。
 Robさんにとって歌うということは、単なる体の反射と反応に過ぎない。歌うことで、そのメロディの中に生きて、そのメロディをよりよく表現するために、手足が動く、Robさんは文字通り表現者であり、表現するために生きていて、表現とは彼にとっては呼吸と同じことだ。
 Robさんそのものが、歌うことそのものだ。

 長い間大っぴらに言えなかったけど、DaveやSimon PhillipsのJudasが大好きなこいつにとっては、Scott Travisは鬼門に近い。ぶっちゃけ、自分では絶対に聞かないタイプのDrだったりする。
 Racer XやPaul Gilbert自体、テク偏重で、今時の言い方だと「萌え」がない。あーすごいねすごいね体力勝負だねハイハイワロスワロス的反応しかできない。Yngwieに萌えはあるけど、Paulにはない。
 そんなわけで、ScottがJudasに入ったって知った時の絶望感ときたら○| ̄|_ あの時のことはいまだ忘れられない。裏切られたというか、絶望の淵に叩き落されたというか、Daveが脱けただけでも心が全治3年くらいのショックだったのに、Scott加入で永遠に完治しない心の傷を負わされる羽目になった。
 そしてPainkillerを聞いた時の、予想通りのあの○| ̄|_っぷり。ほんとうに、心を叩きのめされた。
 しかもRobさんがScottを誘ったとか、メンバー全員で気に入ってるとか(いやもちろん気に入らないなんて言うわけないけど)、その後の、予想もしてなかったRobさんの惑いっぷりとか、何もかもScottのせいだ。Scottは無実だけど、悪いけど責めさせてくれ。
 そして世間的な、Painkillerに対する、「HM至上の名作!Judas的にベストアルバム!」という評価も、同じようにこいつの絶望に、さらなる重みを加えてくれた。
 結局あれは、時代が変わってしまったということだったんだろう。こいつにとってのJudasは、永遠にSad Wings of Destinyであり、Defender Of The Faithだけど、時間がちゃんと進んでる世間ではもっと新しい音があふれてて、そこですら至上のバンドとして君臨できるJudasのすごさを、今なら割と素直に受け入れることができる。
 世間の流れに迎合しつつ、はっきりと新しいファンの好みに媚びながら、それが卑しくならないどころか、まるで国民思いの君主のように、ただひたすらに崇め奉られるJudasの凄みというのは、今はこいつの好みではないにせよ、昔からきっと一向に変わらないJudasの、自分たちの作り出す音楽に対する姿勢に他ならない。
 今のJudasがあるのは、明らかにScottのおかげだ。Scottがいなければ、明らかにPainkillerはなかったし、Painkillerがなければ、今のRobさんもJudasもいない。DaveではなくScottだったからこそ、「何もJudasがやる必要はない極めてTrashに近い今時のHM」的音を、JudasがJudasのままとことん突き詰めたというその凄みが、今のJudasからあふれまくってる。
 迷走した時期はあったにせよ、デビュー以来ほとんどメンバーの移動がないというのは稀有なことだし、Scottが腰掛けではなく、ただのお仕事でもなく、きちんとJudasに惚れ込んでもう20年も一緒にいるのだということは、Judasにとっては何よりの幸運だと思う。
 ツーバスがうるさい、手数のやたら多い、前に突き進むだけのScottの音は、ほぼ全面的に好みではないけれど、ライブで聴く彼の音は、アルバムよりは薄くなりがちな音を下から支えてくれてて、引きずられてか、Ianの音も、昔よりはずっと激しく聞こえる。
 こいつひとりの絶望はともかくも、Scottが、Judasが神として君臨するために必要なメンバーだったことは間違いがない。
 Dave本人か、DaveタイプのDrと交代して、Judasがこいつの神だったJudasに戻ってくれるという希望は、とっくに捨てた。その希望はあまりにもバカらしいし、そうなればきっとJudasは、「古臭い古参バンド」としてどこかの山裾にでも埋もれて、行方知れずになってしまうのが目に見えてるからだ。
 大好きだったバンドが悉く姿を消して、個々のメンバーの行方すらよくわからない中、少なくともJudasは相変わらず、むしろ以前以上に神がかって世界に君臨してるこの状況を、素直に喜ぼうと思う。
 たとえ、街中の店に行っても、最新アルバム2枚しか置いてない状況だったり、AmazonでどうしてかDefender Of The Faithだけは他のアルバムよりも3倍くらい値段が高かったり、在庫がなかったりしても、Judas Priestで検索をかければ、山ほど出てくる情報と、新しいアルバムがちゃんと世界レベルでニュースになる彼らの今の状況を、とてもありがたいと思う。
 Judasは神だ。永遠に神だ。後は、Robさんが、ただの人として幸せになって欲しいと思う。

 Ianが、Robさんの妹と離婚してたってのを初めて知った。彼らはもう義兄弟ではないけれど、Judasの面々は、もうずっと家族以上に強い絆で結ばれてるんだろうなと思う。
 Ianと妹の付き合いをきっかけにJudasに入ったRobさんは、Ianと無関係になったことは関係なく、相変わらずJudasにいて、今日も叫ぶ声で歌ってる。刺青とひげとスキンヘッドと革と鋲で全身を鎧って、その力強い声とは裏腹に、どこか淋しそうに、どこか哀しそうに、Robさんはきっとずっと歌い続けるだろう。
 こいつはそんなRobさんを神と崇めて、ずっとずっと遠くの、世界の端から、上向いて眺め続ける。愛してるという言葉が安っぽく足りないくらい、Robさんが大好きだ。これからもずっと、同じように好きだろうな。



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