ポルノグラフィー
白い膚の異性愛者の群れの中 自己欺瞞を笑顔に塗り込め 彼女は小さな布をまとう 雄を欲情させるための装いの中で 彼女は一度殺される その乳房に触れるのは雄たち その膣に侵入するのは雄たち 彼女を使い、擦り切れさせた後 彼女の子宮は生殖に使われる 彼女はまた殺される 彼女は強制の中にいる 美に追い立てられ 雄たちに所有され 子宮と膣と乳房だけの存在 下等な肉の一片 喰うだけの価値もない ペニスを一時なごませるだけの 腐りやすい肉の塊 雄をあがめ 異教徒を殺し続けたこの国で 世界は彼女に強制する 美と追従と生殖を 皓い笑顔の下に 傲岸不遜な支配者の無知を隠して 世界は彼女を女にする 彼女は猥褻を具現化する 彼女の乳房と性器で 雄たちに使われるために ポルノグラフィーは彼女自身だと 雄たちに誤解させるために 彼女は殺され続けている そして彼女は架空のフィルムの中で 色情狂を演じ続ける |
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通学路 ひるがえるスカートのすそ立ち昇る精液の匂い 駆けてゆく笑い声とともに舗道の真ん中年端もゆかない季節の只中 禁じられた遊びにルールはなく忍び笑いだけが満ちてゆくまた満たされてゆく スカートのすそ染みの広がるひだの間に微行の様子だけが浮かんでゆけば 昨日重ねたくすくす笑いが耳の奥に甦る 唇を重ねるよりたやすくこすり合わせてゆく内臓と粘膜のその奥深く 時は白く膚は紅く唇の端に咬みついて滲んだ緋い鉄の味の記憶 吐き出すことと受け止めることと単純な形の排泄行為水音がその終わりを告げる 昨日の名残りの精液の匂い受け止めることを強いられてゆくそうとは知らずに スカートのすそひるがえし喉の奥に残る白い粘液に空咳が小さくからんでいった 繰り返し繰り返し姦されるために足を開く唇を開く両腕を開く 侵されることがマトモさの証し生殖の咎は女であることの証し 血を流すかさもなくば子どもを抱えろ 血肉を分けるその子宮の奥に卵子が割れる音を聴いた 流れる血と不毛の証しどちらも怯える夜のために また繰り返す微行の様子滑り落ちてゆく思考を止める者はなく 未熟な匂いのする子宮の浮かぶ肉の宇宙が肉の塊に堕とされてゆく スカートのすそ舞い上がりながら 夕べつむんだ苦痛の夢を甘い記憶にすり変えてゆく繰り返される陳腐な手口 スカートのすそその精液の染み喉の奥には吐き気 悦びを強いられて隠れた涙は錯覚を助長してゆくまた垂れ流される精液の夜 |