せつないふたりに50のお題
CP混在注意。エロ鬼畜混入注意。承花、ウェザ承、ディオジョナ、徐承、スポ花。
65文字、短文で挑戦。
せつないふたりに50のお題


01/ねぇ (承花)
その肩に、精一杯伸びる細い腕を見る。痛む胸のそのわけに、今は気づかない振りをして、振り向く君の横顔が仏頂面なのに、安堵している。

02/水色の傘 (承花)
コンビニで飼った傘を野良猫に渡して、僕らはびしょ濡れで家に帰る。濡れてはいてもあたたかな互いの腕があることに、心から感謝しよう。

03/せつない声 (承花)
噛んだシーツで声を殺す。そそのかすようにもっと躯を開かせる。子犬の鳴く声に、それは似ていて、差し込んだ指先を、濡れた舌が舐めた。

04/ありふれた魔法 (承花)
ある日不意に気づく。いつの間にか落ちてしまっている恋が、世界を彩り、色のあふれたその世界の中で、ひときわ鮮やかに輝いている、君。

05/スロー (承花)
3度目の口づけで、ようやく目を閉じることを覚えた。君に向かうあごの角度は、まだ少し迷う。腕の位置は、いまだに模索中だ。

06/溺れる (承花)
口づけというのは、誰かの呼吸に溺れることだと、初めて知った。溺れて、そのまま溺れ死んでしまいたいと、そう思ったのも初めてだ。

07/靴音 (ウェザ承)
爪先立って、滑るように歩くから、気配に振り向いた時には、もう後ろにいた。唇が触れるぎりぎりまで閉じない瞳に、紫色の影がにじむ。

08/ふりむいて (ディオジョナ)
前を向いてゆこう。君との友情も何もかも、捨て去らなければならなかったことを、後悔しないために。人であった君だけを、憶えておくために。

09/ミルクチョコレート (承花)
甘いのは、口の中で溶けるチョコのせいだけではなくて。最後のひとかけらを分け合うためのキスを、君が盗んでゆく。僕はカカオの匂いに酔う。

10/誰も知らない (承花)
人の来ない場所を見つけては、その陰へ滑り込んでゆく。君は背を丸めて、僕は肩を縮めて、昨日を惜しんで指先を絡める、僕らの秘密。

11/交差点 (承花)
せっかちに歩き出す大きな歩幅を、けれど急がずに追いかけてゆく。先に渡り切って、振り向いて僕を待つ君を見るのが、とても好きだ。

12/背中あわせ (承花)
広い肩、広い背中、それが僕に寄り掛かる。君は煙草を喫い、僕は本を読む。言葉も表情も必要のない、一緒に過ごす、他愛もない時間。

13/プラチナ (承花)
薄青い巨人の膚を包む、白金の光。その巨人にひざまづかせて、広げた大きな掌の上には丸い指輪。君の照れ隠しの悪ふざけに、うっかり笑う。

14/共犯者 (OM承花)
重ねた掌が伝えるぬくもりは、分け合うことを許されないそれだけれど、息を殺して気配をひそめて、十字架に阻まれながら、触れ合わせた唇。

15/手を絡める (承花)
僕はハードカバーの小説を、君は買ったばかりの雑誌を、僕の右手と君の左手がページをくり、その間で、僕らが掌を重ねているのは無意識だ。

16/ 「そんなに幸せそうな顔しないで」 (承花)
さくらんぼのパイとやらを買って帰ると、極上の笑顔を見せてくれる。さくらんぼで機嫌を取り、さくらんぼに嫉妬する自分に自己嫌悪する。

17/ひとり (承花)
ひとりであったことなどなかったけれど、緑の友人とでふたりと数えるのは、少々ためらいがある。僕が完全にふたりなのは、君が初めてだ。

18/ツイラク (承花)
恋に落ちるという感覚を、生まれて初めて知る。失墜感ではない、ひどく満たされた気持ち。愛へは踏み込むものなのだと、柄にもなく思い知る。

19/写真 (承太郎)
無限に続くように思われる、白と灰色の風景と、そこへ広がる砂の地面。あの一粒一粒が、おれたちが救った世界の、ありのままの姿だ。

20/霞み (ウェザ承)
人目をはばかるから、自分たちを覆う。その中で指先を触れ合わせ、こっそりと唇を重ねる。まるで少年のそれのような、熱くてひそやかな恋。

21/いつもそう (徐承)
愛してるなんて言わないし、抱きしめてもくれないし、自分からは手を繋いではくれないし、並んで歩いてさえくれない。けれど肩車はしてくれる。

22/小さな約束 (承花)
先には逝くなと思った。まだ来ないでくれと思う。凍った時間の中で、いつかまたという言葉にしない約束が示す意味に、痛む心を抱えている。

23/missing (承花)
隣りを見る。足元を見る。前に伸びる影の形を、視線でなぞる。もう慣れてしまっている見下ろす角度で、空っぽのそこに微笑みが凍りつく。

24/どうにもならない (ウェザ承)
戸惑っている。手を伸ばして触れたいという気持ちを、止める術などないと、古い記憶で知っている。始まるのではなく、もう始まってしまっている。

25/何が悲しいのかすら (承花)
嘆きが深すぎると、悲しいとすら感じないのだと、十年も経ってから知った。平たくなった心には何も映らず、波立つことのない澱んだ沼のようだ。

26/奇跡 (承花)
出逢えたことの不思議を、また起こそうと思った。青い巨人が、主の必死さを映して、紫色の涙を流す。世界よりも大切な、翠の光を取り戻すために。

27/あいしてる (承花)
若い女が、恋人に励まされて、九死に一生を得た映画を見た。死ぬ時には一緒がいい、世界の終わりのその日には、必ず一緒にいたいと思った。

28/ただひとつ確かなこと (ウェザ承)
ごく普通の人との交わりを絶たれた長い長い時間の後で出逢った、不器用で無口らしいこのひとの笑顔のために、青い空と虹を贈りたいと思った。

29/誰か… (承花)
空気の中に感じる。気配がある。実体のない姿は、まるでスタンドそのもののようだ。振り返る、姿を探す、求めるものは、今は見えないそれだ。

30/滲んでゆく (ウェザ承)
晴れでも雨でも曇りでも、何でも好きにと言ったら、虹が見たいと言う。現した小さな丸い虹の、色の区切りの滲みに、かすかに潤んだ深緑の瞳を凝らす。

31/借りたままのCD (承花)
返せと言わない。返すとも言わない。ひどい喧嘩の後も、それがあれば友達に戻れる。そんな言い訳が必要なくらいに意地を張り合う、まだ幼い僕ら。

32/deep emotion (承花)
突然あふれ出した鮮やかな色。驚きとともに、ひと色ひと色それを自分が選んだ色に変えながら、君の唇の色に迷った時、これは恋なのだと気づいた。

33/「忘れてもいいよ」 (承花)
大丈夫だ。絶対に、片時も忘れ去られることはない自信がある。こんな死に様だ、当然じゃないか。最期の時を自覚しながら、それが最期の強がりだった。

34/すみれ色 (ウェザ承)
唇が触れるようになって、その瞳の色の不思議さに気づいた。茶色にうっすらと滲む紫色の影に、道の端に咲く、すみれの花の可憐さを思い出した。

35/本当は (承花)
コーヒーは好きじゃない。でも君が丁寧に淹れてくれるから飲む。砂糖抜きは、君のための我慢だ。その我慢が楽しいのは、どうしてだろう。

36/色褪せた (承花)
鮮やかだった緋色は、染み込んだ生地の緑色に混ざって黒く変わった。傷んで乾いた布のもろさが、流れた時間の長さを物語る、掌の上の記憶。

37/涙もでない (承花)
血を分けた娘が、あの時の自分よりも年上だと気づいて、そうしてようやく、肩越しに振り返るその自分の頬に、涙が流れているのに気づく。

38/微熱 (ウェザ承)
静かなくせに、何もかもを見透かすような視線。ふと湧いた予感を振り払っても、すれ違いざま触れた肩の位置がよく似ていることに、心が騒めいた。

39/右手 (ゴルゴ承花)
誰にも触れさせないその手が剥き出しになる。触れる。無防備に互いをさらけ出して、誰かを殺したその手で、触れる。いとおしさだけを込めて。

40/逢えない夜 (OM承花)
空が闇の色に沈んでしまう前に、その背中を見送る。その後で、十字架を握りしめ、膝をついて、ただ明日を無事迎えられますようにと祈る。

41/キズあと (ディオジョナ)
太い首に回るそれは、茨の首輪のようにも見える。誰かがどこかで、その端をちゃんと握っていて、だから繋がっているのだという、幻想。

42/失くさないで (承花)
やや白目の勝った、切り裂かれたことのあるその瞳を、片方だけ飲み込んでしまうという幻想。胃から取り込む、血肉に染み込めば消えない記憶。

43/5センチ (承花)
傷だらけの革靴で、精一杯爪先立つ。倒れそうになりながら、それでも君に5センチ足りない。悔しいから、階段を一段飛ばしに駆け上がった。

44/シュガーレス (承花)
書き上がらない論文にいらいらしている君に渡すコーヒーに、こっそり砂糖を入れる。甘い甘いチーズケーキは、書き上がった時のご褒美だ。

45/欲しい (OMスポ花)
舌なめずりの視線の先に横たわる死体のような躯の中を、無理矢理に突っ込んだ腕の先に探りたい。引きずり出した内臓の中にむごく果てたい。

46/きみの夢をみた (承花)
死んでいるのにおかしいなと思ったことそれ自体が夢だという夢かと思ったら父親のような君の体が冷たくて夢の方がましだと思って、泣いた。
* ポラリスさま宛

47/ピアス (OMスポ花)
体に着けるそれは所有のしるし。突き刺す痛みは隷属のあかし。噛み切るようにそこへ絡む淫猥な舌先。それごと皮膚を引きちぎりたい指先には哄笑。

48/焦燥 (ウェザ承)
まだ触れるだけの唇、抱きしめられた腕に逆らうことはせずに、腕を伸ばして抱き返そうかどうか、まだ迷ったままでいる、まだ明るい昼下がり。

49/閉じこもる (ディオジョナ)
文字通り密着した体が繋がるまで百年。海底に横たわる棺の狭さは、ひとり分と首ひとつにちょうどよい大きさだと、胸に抱いた首に笑いかける。

50/この痛みの先にあるもの (OM承花)
傷つけられるためにではなく抱く腕を伸ばす。貶められるためではなくその肩を抱く。耐える痛みの向こうに見える、ただ平凡である日々。


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