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* 承花でクリスマスカウントダウン *

2011 / December12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
選択式お題@loca

12/12 - 011.背中合わせ

一緒に過ごす週末、同じ部屋で、君はギターを弾き、僕は本を読む。
交わす言葉をわざわざ探すことはせず、同じ空間にただいると言うことに絶大な信頼を置いて、僕らは永遠にでもこんな風に過ごしてしまえるだろう。

12/13 - 022.向日葵ときみ

どの花よりも背高く、太陽に真っ直ぐに向くひまわりの君が、地面に作る影にひっそりと咲く、花もつかない雑草でいい。
地中にもぐる根が触れ合うほど、枯れた後で、君の落とす種の養分になれるほど、君の傍にいたい。

12/14 - 101.返却期限

「ああああ、図書館の本を返すのを忘れてた!」
「おれのスタープラチナで──」
「図書館は踏み切りの向こうだ。」
「じゃあてめーのハイエロファ──」
「僕のハイエロファントを万能だと思うな。全力疾走だ承太郎!」

12/15 - 012.キスの温度

思ったよりも乾いていて、春の頃にぬるんだ海の水と同じ温度だと、なぜか思った。
図書館の奥の、本棚の間。人の気配はあっても、ここまではやって来ない。
紙とインクと埃の匂いの間に、漂う君の、スタンドの匂い。

12/16 - 039.夏がまた来る

誕生日を数える。世界を救って生き延びた後で、それはとても大切な日になった。
後50回か60回か、一体何度一緒に同じ夏を過ごせるだろう。
生まれて来たことそれだけではなく、その日を迎えられることに感謝する。

12/17 - 096.文庫本二冊

純文学のその本に挟んだ和紙の栞には、優しい色合いの紐がついていた。
翻訳ミステリーの方には、どこから来たのか、紙ナプキンが挟んであった。
最寄り駅まで後1時間。取り替えた本に、そのまま目を落とすふたり。

12/18 - 112.三分砂時計

小さな白木の、緑の砂の砂時計。
さらさらとこぼれるかすかな音に混じる、紅茶の葉の開く気配。
落ちる砂に目を凝らして、まるでそのひと粒ひと粒を数えるように。
大事な人のために、いっそう美味しい紅茶のために。

12/19 - 139.プロポーズに代えて

「家を買うぞ。庭付きで、プールはいるか?」
「いらないな。手入れが面倒だ。ネットは絶対にケーブルだ。」
「おう、おれ用とてめー用の書斎が別々にいるな。」
「ドアに鍵つきだとありがたい。」
「・・・・・・。」

12/20 - 222.甘くない飴

咳が1日中続いた翌日、教室までやって来た承太郎が差し出したのは、ハッカ味ののど飴だった。
ありがとうと、まだ咳の途中に答えて、花京院の頬が染まる。
手渡す指先が触れる2秒は、ふたりだけの秘密だった。

12/21 - 146.しあわせ120円

ポケットの小銭を数えて、夏ならポカリ、冬ならコーヒー、分け合う通学路の途中。
昨日は承太郎が百円出した。今日は花京院が千円札を出す。
2本は買わないふたりの主義。
煙草1本分の間、ささやかに続く幸せ。

12/22 - 162.水彩絵の具

深く濃い緑の、そして透き通る瞳の色を出そうとして、どの色をどれだけ混ぜたものかとパレットの前で思案する。
そうやって色も塗れないまま、線だけの絵が山ほどある。
知れば知るほど、紙の上には収まらない君。

12/23 - 384.いたみだけがのこる

恋と言うのは楽しくて幸せなものだと思っていたけれど、案外と苦しいばかりなのだと、初めて知った。
耐えるために絵を描いて、そうして色の塗れないままの絵に、ため息ばかりが積もってゆく。
吐く息すら苦しいだけ。

12/24 - 415.抱きしめればわかる

不慣れなのはお互いさまだ。どこへ落ち着こうかと迷う腕と掌と、そうしてやっと息を吸い込む、互いの体温の中。心臓の音が重なる。触れ合うためにこそある、互いの腕の長さ。
こもる力の強さが、何より素直だった。

12/25 - 349.終わりのときは

口にすれば陳腐なだけだったから、無言で向き合って、そうして、別れの言葉は避けたままだった。
逃げるように海に向かって、あれ以来空を見ない振りをしている。
輝く緑の海の水が、あの日流し損ねた涙の代わりだ。

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