ごめん



 別に下手じゃないと、承太郎は言うけれど、どうしたらいいのかいまだに迷うばかりだ。
 両手を添えて、口をいっぱいに開いて、もっと奥へ入りたそうな承太郎を、たいていの場合は押しとどめて、でもたまに、そうしていると、もっともっと奥へ 承太郎が欲しくなる。
 吐き気を感じるぎりぎり手前まで、承太郎を誘い込んで、舌の上で飼う。顔を動かして、上目に承太郎の反応を見ながら、精一杯、できることをする。
 上で聞こえる承太郎の声が、とても好きだ。
 熱くて、湿っていて、まるでいたわるように髪を撫でて、それでもその指先に、もう少し乱暴にしたいらしい力が、たまにこもることもある。
 承太郎の声を聞きながら、舌を動かして、承太郎のそれに、口の中の粘膜をすり上げさせる。それがいつのまにか、いやではなくなっていて、気持ちがいいと感じてしまうことさえ、ある。
 一瞬だけ唇を外して、きっと濡れている---唾液だけではなくて---だろうそこを、舌先で舐めながら、承太郎を見た。
 「・・・今日は、口の中に・・・」
 それ以上は恥ずかしくて言えずに、また、承太郎のそこへ向かって顔を伏せた。
 両頬に、承太郎の手が触れて来る。僕の許可をもらって、少しばかり暴走する気になったらしい。少しだけ、承太郎が動く。
 僕を傷つけないように、気を使っているのはわかる、けれど声が少し激しくなる強さで、承太郎のそれが、喉の方へ突き立ってくる。
 不思議なことに、それを嫌がる気持ちは湧かず、承太郎の手と動きに添って、僕は喉を伸ばして、できるだけ深く、承太郎を飲み込もうとする。
 承太郎の息が速くなる。僕の心臓も早くなる。熱がいっそう硬く大きく膨れ上がるのに、僕はただ、流されるように融けてゆくだけだ。
 承太郎の躯に向かって、アメのようにやわらかくなり、承太郎を全部包み込みたくなる。
 音がしそうに、承太郎の腰が、一瞬跳ねた。その動きに、僕は体を引くことをせずに、むしろもっと近く、承太郎の腰を、自分の方へ引き寄せた。
 喉の奥を叩く熱さが、口いっぱいに広がる。舌のつけ根に注がれたそれを、僕は、全部飲み干そうとした。
 承太郎から唇を外し、けれど唇の端から、飲み切れなかったそれが、唾液に薄められて、白くこぼれる。
 汚れた顔が恥ずかしくて、思わず頬を染めた。それを見て承太郎が、ひどくいとおしそうな視線を、僕に当てる。
 引き上げられて、抱きしめられて、承太郎の制服を汚してしまわないかという僕の心配に頓着する様子はなく、承太郎は、優しく僕の髪を撫でた。
 「・・・ごめん、飲み切れなかった。」
 自分から言い出したくせに、きちんとできなかったことを恥じて、けれど承太郎は微笑みに苦笑を混ぜて、いっそう強く僕を抱きしめる。
 「なんでてめーが謝る。」
 僕の濡れた唇を、そっと承太郎の指先が拭う。その指を、引き寄せて噛む。承太郎が、またちょっと声を上げる。
 また欲しくなる自分を、どうしていいかわからず、承太郎の背に腕を回し、できる精一杯で抱きしめた。


* 絵チャにて即興。

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