僕たちの小さな戦争



 「何だか、今日は寒いな承太郎。」
 「そうだな。」
 「何か熱いコーヒーでも飲みたくないかい。」
 「そうだな。」
 「確か冷蔵庫に、アップルパイの残りがあるはずなんだが。」
 「そうだな。」
 「何なら、残りは君が全部食べてもいいんだが。」
 「そうか。」
 「熱いコーヒーとアップルパイだぞ、考えただけで体があったかくなるじゃないか。」
 「そうだな。」
 「だから承太郎、少しはこたつから離れないか。」
 「無理だな。離れたかったらてめーが離れろ。」
 「それこそ無理だ承太郎。大体君の方が台所に近いじゃないか。」
 「夕べはおれが紅茶をいれたじゃねえか。」
 「僕のチェリーパイを全部食べたのも君だったな。」
 「・・・おれのアップルパイを食え。」
 「僕はチェリーパイが食べたかったんだ。」
 「・・・アイスクリームも乗せるか。」
 「いや、コーヒーだけでいいよ。」
 「・・・おう。」
 コーヒーの香りが漂う部屋の中で、花京院は、承太郎が座っていた座布団へ移動し、テレビの真正面のその位置からもう絶対に動くもんかと決意して、ファーストガンダムの第35話を再生するために、DVDプレイヤーのリモートの再生ボタンを押した。


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